宝塚歌劇、と聞くと、おそらくフツーの人は、ベルばら的な華やかな衣装と絢爛なステージを思い浮かべることと思う。しかし、宝塚歌劇の演目には、当然「和モノ」と呼ばれる純日本な時代劇作品も数多いのだが、実は、全く現代日本を舞台とした作品すらあることは、あまり知られていないのではなかろうか。まあ、そう思うわたしも、別に根拠があるわけではなく、単に宝塚歌劇を観るようになる前は勝手にそう思い込んでいただけなので、実際はよくわからない。
 今日、わたしが東京宝塚劇場で観てきた作品、『カンパニー』は、フツーの現代日本のサラリーマンが主人公という点でも珍しいと思うし、さらにショー(?)『BADDY』は、そのビジュアルからしてかなり異色作で、わたしは観る前から相当期待して今日は日比谷へ推参した次第である。
 結論から言うと、もう最高過ぎて、これは久しぶりにBlu-rayを買うしかねえじゃねえか! と大興奮であったのである。いやー、それにしても月組はイイすねえ! わたしがイチオシで応援しているのは星組なのだが、今の月組は非常に充実してますなあ! ホント最高でした。コイツはもう、Blu-ray購入決定す。

 というわけで、上記動画はご覧いただけましたか? 6分もある長い動画だけど、この映像を観たら超そそられることは確定的に明らかだろう。特に、後半の『BADDY』のビジュアルが超ヤバイす。わたしはこれを観て、もう完全に松方弘樹じゃねえか! と笑っていいのかよくわからないけど、大興奮しました。
 さてと。まずはミュージカル・プレイ『カンパニー』である。この作品は、伊吹有喜先生による小説が原作なのだが、わたしは原作を読んでいないので、内容的に同じなのかどうか知らないし、小説が面白いのかも存じ上げない。だが、間違いなく宝塚版『カンパニー』は超面白かった。
 物語は、とある製薬会社の総務部総務課長、青柳という男が主人公だ。彼は妻を2年前に亡くし、いまだ妻を忘れられず(そりゃそうだ)、しょんぼりな毎日を送っているが、それでも仕事には一生懸命で、イイ奴としておなじみらしい。そんな彼が務める製薬会社は、M&Aにより会社が合併、社名も変わってリストラやら早期退職やらの合理化が進むのだが、青柳はとある事件(?)で、自分の周りにはイエスマンしか重用しない専務に盾突いてしまったことで、会社が支援するバレエ団への出向を命じられてしまう。折しもそのバレエ団は、プリマである社長の娘の引退公演のために世界的に有名バレエダンサーを招聘して「白鳥の湖」を上演するところで、文化事業としてもその公演を成功させることを会社から求められる。そんな中、全くのド素人である青柳は、一癖も二癖もあるダンサーたちに対して、持ち前の誠実さで困難に立ち向かい、成功を目指すのだが―――てなお話である。
 わたしは経営企画としての経験が長いし、出向も経験があるので、こういった会社の合併や合理化は超身近な話だし、いきなり全く未知の世界へ出向として放り込まれる状況も、よーく知っている。ついでに言うと、イエスマンしか周りに置かない無能なくせに役職の高い人間が多いことも嫌になるほど見てきている。まあ、わたしの場合は親会社への出向を命じられ、そのまま親会社に転籍になったので、はたから見ると栄転だったのだが、誰にも理解されないつらさも数多く経験したわけで、今回の物語の主人公、青柳くんには実に共感できた。
 ずーっと同じ部署で同じ仕事しかしてないボンクラには全く理解できないだろうけど、前の部署でエースとして活躍していた自分が、新しい部署ではまったくの一兵卒となってやり直しになるので、部署異動や出向というのはかなりのエネルギーと、自分で言うのもアレだが、かなりの努力が必要になることを実際の経験としてよく知っている。そんなわたしであるので、今回の主人公、青柳くんには、その真面目さにはとても好感が持てたし、がんばれ!と応援したくなった。
 おまけに、青柳くんを演じた月組TOPスター珠城りょうさん(以下:たまきち)がとてもイイわけですよ。たまきちくんは、ほかの組のTOPスターと若干雰囲気が違っていて、なんとも育ちのいい、品のある王子様キャラだとわたしはいつも思っているのだが、もうひとつ、わたしが思うたまきちくんの特徴?は、等身大、なんすよね。うまく説明できないけれど、この世のものとは思えない的な美しさだとか、夢の世界の住人的な雰囲気よりも、本当にいそうな「等身大スター」といえばいいのかな……そんな点が、男のわたしから見ると、とても共感しやすいんすよね。これは女性にはわからないかもしれない……どうだろうな……。いずれにしても、本作『カンパニー』は、今の月組、今のたまきちくん以外の他の組のTOPスターには絶対できなかった物語ではなかろうか。わたし的には、今回の『カンパニー』は相当な傑作であったと思う。ヤバいすね……星組イチオシのわたしなのに、これを今の星組で上演できただろうか、と考えると、月組の充実がとてもうらやましく、ぐぬぬ、と少し悔しい気持ちになったほどであった。この、「等身大」のたまきちくんが秋にどんなトート閣下を演じるのか、もう今から超楽しみっすわ。
 そして後半はショー・テント『BADDY』だ。ショーといっても今回はセリフも明確なストーリーもあるお芝居といえる不思議な作品で、これがまた途方もなく楽しく、超盛り上がる面白い作品であった。
 物語をざっと説明すると、遠い?未来、地球上からはすべての犯罪は消え(そしてなぜか地球上は完全禁煙)、ピースフルプラネットとして繁栄していたが、月に追放されていた悪党BADDYが、地球では禁じられているたばこを咥えて舞い降りてきてさあ大変! 地球の正義を守るGOODYが出動、BADDY逮捕に向けて大捕物が始まった! てなお話です。もうこれだけで、ええーーっ!? な、なんじゃそりゃあ! と笑えてしまいますな!
 そして当然、BADDYを演じたのがたまきちくんであり、正義のGOODYを演じたのが、月組TOP娘役の愛希れいかさん(以下:ちゃぴ)である。たまきちくんは、前述のように、育ちが良く品のある青年がぴったりなのだが、こちらではビジュアル的にもグラサン&咥えたばこ&大悪党ということで、もう度肝を抜かれたっすね。超カッコよかったす。そして何気に楽しそうでしたなあ。
 また、ちゃぴちゃんもとっても良かった。ちゃぴちゃんは、今の宝塚歌劇団の全組で最長期間TOPに君臨している、最強プリンセスだけれど、とうとう今年の秋の『エリザベート』で退団することを発表し、卒業まであと半年、となってしまった。わたしは、ちゃぴちゃんは歌・芝居・ダンスの中ではダンスが一番すごい娘役だと思っているので(もちろん歌と芝居も素晴らしい!)、実は退団公演が『エリザベート』だと聞いて、そりゃあ、ちゃぴシシィは観たいけれど、退団公演としては、ショーのあるダンスバリバリな作品が観たかった……という気がしていたのです。しかし今回の『BADDY』はちゃぴのダンサーとしての魅力にもあふれていて、ホント最高でした。これでちゃぴの大劇場でのダンサブルなショーが見納めなんて、ほんと寂しいすねえ……。つらいす……。ちゃぴ退団まであと半年。『エリザベート』はムラ遠征もしねえといけねえんじゃね? といような気がします。いくしかねえなあ、こりゃあ……。最後まで、応援するよ! 最後のシシィという大役をやり切ってほしいすね。

  はーーーしかし今日は興奮したっすなあ……。それでは主役の二人以外も最高だったので、それぞれ短くメモしておこう。
 ◆美弥るりかさん(以下:みやちゃん):元星組で月組2番手スターのみやちゃんは、『カンパニー』では世界的バレリーナ高野を、そして『BADDY』では、男のような女性のような、不思議なキャラ、スイート・ハートを見事に演じてくださいました。とりわけスイート・ハートという役も、他の組の誰にもできないような、みやちゃんだからこその役柄だったような気がする。最近は色気あふれる系のイケメン役が多いみやちゃん。みやちゃんはTOPのたまきちくんよりも5つも学年が上なわけで、普通に考えて月組でTOPになれる可能性はもはやゼロ、だとは思う。ひょっとしたら、専科に行ってしまうような気もする。でも、わたしとしては、星組にもう一度戻ってきて、短い期間でもいいからTOPスターとして舞台に立ってほしいと願ってます。ダメかなあ……。わたしの愛する星組2番手の礼真琴さんがTOPになる前に、ワンポイントでもいいので、TOPになってほしいなあ……。なんか、ホント今の星組にいてほしいお方ですよ……。
 ◆海乃美月ちゃん(以下:うみちゃん):今回のうみちゃんは、『カンパニー』ではずっとジャージ着用のトレーナー、そして『BADDY』では、BADDY団の一員の美女、を可愛らしく演じてくださいました。わたしが月組で一番好きなのがうみちゃん。もう、次期TOP娘役としてちゃぴの後を継ぐのはうみちゃんでいいんだよね? 組替えとかありうるのかな? もう確定でいいと信じたいところだけど、わたしはうみちゃんの特徴的な口元がとにかく好きっす。とにかくかわいい。芝居ぶりも大変良かったすね。今回も最高でした。どうかうみちゃんが順当にTOP娘になれますように……。
 ◆宇月颯さん(以下:としさん)&早乙女わかばさん(以下:わかばちゃん):はーーーまさかこのお二人が退団とはなあ……この公演で退団を発表したとしさん&わかばちゃん。月組には必要な貴重な人材だけに、とても残念す。いっそ星組に来てほしかった……。わかばちゃんは元星組として、月組に組替えになった時はショックだったけど、退団と聞いて超ショックす……。やっぱり94期生、すなわちたまきちくんと同期なわけで、娘役としてはもうその時が来てしまったんだなあ……TOPになれなくて本当に残念だよ……。そしてとしさんもずっと月組の生え抜きとして貴重な戦力として活躍を続けてほしかったすねえ……専科という選択肢はなかったのかなあ……としさん自身が断ったのかなあ……。ほんと、二人をこれで見納めなんてとても淋しく、今日はその活躍を目に焼き付けてきたよ。二人とも、退団後の活躍を期待します。またどこかで会えることを楽しみにしてるよ!
 ◆月城かなとさん(以下:れいこさん)&暁千星さん(以下:ありちゃん):二人は、今回はそれほど目立つ役柄ではなかった、と言えるような気がする。いや、そんなことないか。雪組からやってきた美貌のれいこさんは、『BADDY』の方では珍しく三枚目的な役で目立っていたし、月組の御曹司ありちゃんも、『カンパニー』ではありちゃんらしい好青年で良かったすね。いずれにしても、この二人は月組の将来を背負う期待の若手なわけで、やっぱりまとうオーラはちょっと別格感はありますな。としさん去りし月組は二人の活躍がとっても重要なので、これからも期待してるぜ!

 とまあ、こんなところかな。もう書きたいことはないかな……。
 では最後に、毎回恒例の今回の「イケ台詞」を発表して終わりたいと思います。
  ※イケ台詞=わたしが「かーっ!! カッコええ!!」と思ったイケてる台詞のこと。
 「メッセンジャーボーイはもう卒業しろ! あんたは会社の奴隷じゃない! カンパニーだ!!」
 今回は、主人公青柳くんへ向けた世界的ダンサー高野のカッコいいセリフを選びました。つうかですね、今回はかなりイケてるカッコいいセリフが多かったので、選ぶのに悩みましたが、やっぱり、世の社畜リーマンすべてにこの言葉を選んでおきます。まったく、会社の奴隷は卒業した方がいいぜ、リーマン諸君!

 というわけで、結論。
 宝塚歌劇として比較的珍しく、現代日本のサラリーマンを主人公とした月組公演『カンパニー』を観てきたのだが、なんつうか、かなり良かったすね。物語的にもグッとくるものがあったし、やっぱりたまきちくんの「等身大ヒーロー」ぶりがなんともイイ! これはホント、たまきちくんならではの作品だったような気がする。そしてショー『BADDY』は楽しくノリノリで、大変楽しめました。ちゃぴのノリノリダンスも大劇場では見納めかと思うとホント淋しいす。としさんもわかばちゃんも見納めだし、つらいすね……。。。なお、わたしはもう、ずっと、「BADDY、BADDY~! 邪魔だ! どけ!」を脳内で口ずさみながら、終演後の混雑する劇場を後にしました。いいすねえ! 口に出したらアレな人なので、脳内限定でお願いします。ホント最高でした。Blu-ray購入決定す。以上。

↓ こちらが原作小説ですが、わたしが一番嫌いな新潮社刊なので、今のところ読む気にはなってないす。どうも、あらすじを読むとちょっと青柳の設定が違うっぽいすね……。
カンパニー
伊吹 有喜
新潮社
2017-05-22