現在GW真っ只中の日本であるが、わたしは昨日、やりかけの請負仕事が気になって、ちょっと出社して軽く片付けるか、と思っていたのだが、いざ取り掛かるとまるでデータの統一性のないひどい状態で、データを整え、データベース化し、さてようやく準備ができたぜ、というところでまたいろいろなデータが欠けていたりフラグ付けが中途半端だったりとめんどくさいことが判明し、上等だこの野郎!と半ばキレ気味で分析をしていたらあっというまに7時間が経過し、大体の見通しがついたところで、もう今日はここまで、と打ち切って家に帰った。わたしだから7時間で済んだが、依頼主が力技でやったらおそらく50時間はかかるであろうと思う。やれやれ。
 で。夜、なんか映画でも見ようとHDD内にWOWOWで録りためた一覧を眺めていたところ、つい最近、『THE 5TH WAVE』(邦題:フィフス・ウェイブ)という作品が録画されていることに気が付いた。あ、これ、あれだ、ブサカワでおなじみのChloë Grace Moretzちゃん主演のラノベ原作モノだ、と、わたしにしては珍しく、タイトルですぐに内容を思い出したので、さっそく視聴を開始することにした。そして結論から言うと、ま、予想よりもずっと面白くなかったすね……かなりがっかりというか、なんじゃこりゃ、であった。というわけで、以下ネタバレ満載につき、読む方は自己責任でお願いします。

 大体の物語の進行は、上記予告の通りと言ってよさそうだ。ある日突然、謎の宇宙船が地球に飛来する。数日間、なんのアクションも見せない宇宙船。人々はそれを「THE OTHERS」と呼び、一体全体なんなんだ、と思いつつも、日常生活を送るが、突如「第1波=The 1st Wave」と呼ばれる攻撃を受ける。それは電磁パルスによる電子機器の破壊で、これで地球は電力消失、スマホも車も飛行機も何もかもぶっ壊れる。続く「The 2nd Wave」は、大地震で、これで沿岸都市および島など海に近い都市はすべて津波で消失する。さらにやってきた「The 3rd Wave」は、強力なインフルエンザ(?)ウィルスの蔓延で、具体的な数字はなかったような気がするけどとにかく相当数の人類は死亡。こういう展開が冒頭でざっと描写され、生き残った女子高生、キャシーは父と弟とともに、難民キャンプ的なところへ避難するが、そこにやってきた軍人たちの指示で、子供たちだけ基地へ連行される、のだが、弟(推定10歳以下)が、うえーん、おねえちゃん、ぼく、大切なクマのぬいぐるみをベッドにわすれてきちゃったよぅ……!というので、仕方ないわね私がとってくるわ、とバスを降りダッシュでぬいぐるみをとって戻るが、一足先にバスは出発、弟と生き別れてしまうというお約束の展開が炸裂する。どうしよう、と一旦父と合流しようとするも、大人たちは一カ所に集められ、軍人からなにやら話を聞いていて、どうやら「The 4th Wave」が発動しており、とうとうTHE OTHERSは自ら人体に寄生して、その肉体を乗っ取っているらしい、そしてこの中にもTHE OTHERSに乗っ取られたやつがいるはずだ! ということが明かされ、バカな、俺は人間だ、ここから解放しろ!的な騒動から、銃乱射パーティーに発展、全員死亡となり、残った数名の軍人だけ、さっさと基地へ戻る。そして取り残されたキャシーは、弟を取り戻すため、80マイル(約130㎞)離れた陸軍基地へ向かう。道中、謎のイケメンと出会い、警戒しながらもあっさりFall in Love、そして驚愕の「The 5th Wave」の正体を知るのであった――的なお話であった。
 もういろいろ突っ込みがいのある、なかなか安いお話である。
 すべての電子機器がイカれ、車も走っていないはずなのに、やたらと装備のしっかりした軍人が出てきた時点で、普通なら、なるほど、こいつら自身が……と誰でもわかると思うが、まあ要するにそういうことです。物語もキャラクターも、ともにこれが新人賞の応募原稿だったらなら、わたしなら2次選考で落とすだろうな……と思いながら観ていたのだが、最終的なオチも、えっ!? ここで終わりなんだ!? というぶった切りで、なんというか……こりゃあかんわ……としか感想は出てこない。
 というわけで、さっそく原作を調べてみたところ、やはり、アメリカン・ラノベお約束の3部作のようで、続きはちゃんとあるらしい。だが、正直この先の物語が面白くなるかどうかは相当怪しく、わたしとしても読んでみたいとは現状思わない。おっと、一応、この映画の原作に当たる1作目だけは日本語訳が出ているみたいですな。
フィフス・ウェイブ (集英社文庫)
リック ヤンシー
集英社
2016-03-18

 高いなあ……文庫で1,296円だって。こりゃあ売れないでしょうな。それすなわち、第2作第3作の翻訳は望めないだろうな……。というわけで、もはや本作について言いたいことはないので、それよりも、アメリカン・ラノベとわたしが言う、いわゆる「YAノベル」というものについて、書いておこう。
 といっても、わたしもそれほど多くの「YAノベル」を読んでいるわけではないのだが、おそらく、少なくとも映画化されたYAノベルには、以下のような共通点がある。わたしはこれを、いつも三大要素と呼んでいる。
 ◆三部作である場合が多い。ただし、1作目は比較的きっちりとオチも整っていて、続く2作目3作目が前後編的な場合が多い。典型的なのがやっぱり『The Hunger Games』でしょうな。
 ◆主人公は10代女子(で一人称語り)が圧倒的。これはきっと読者層が10代女子だから、なんだと思う。例外的なのが『The Maze Runner』で、アレは男主人公ですな。
 ◆ラブ展開は必須。基本的に主人公女子がイケメン二人の間で三角関係気味になる。ただし、主人公女子は最初は恋愛なんて!と思っている場合が多く、それなのに、あっさり二人の間で揺れ動く。それが多くの場合一人称語りなので(ちなみに本作も原作小説はおそらく主人公キャシーの一人称語り)、要するに私はどうしたらいいの?的なお悩みが延々と綴られる。これも、対象読者のあこがれのシチュエーションなんだと思う。ラブ展開に思いっきり振っているのが『Twilight』シリーズでしょうな。でもあれは4部作か。
 とまあ、こういう作品が多いのだが、しかし、我々日本人からすると、正直キャラも物語も、かなり退屈な場合が多く、日本のライトノベルの方が、ジャンルも幅広く、キャラクターも様々で、物語力でいうとすべてにおいて優っているような気がわたしはする。まあ、近年ではすっかりテンプレ化が進んでしまっているので、日本のライトノベルのクオリティも下がっているのは残念だが、それでもなお、日本のライトノベルが質的にも量的にも進化したのは、日本では漫画が古くから発達していて、物語に慣れているというか、いわば口が肥えているからであろうとわたしはにらんでいる。
 本作、『The 5th Wave』も、日本人が書いたらもっと面白くなっていたと根拠なく思うわたしだが、残念ながら映画作品も、それほどクオリティは高くなかった。CGもかなりチープだし(ただし冒頭の飛行機が墜落するシーンだけは凄い質感)、おそらくロケも1~2週間あれば余裕だろう。どうやら予算規模は38M$(約41億円)、興行成績はUS国内で34M$(約37億円)ということで、残念ながら赤字で終わったものと思われる。Rotten Tomatoesの評価もかなり低い。まあ、これは元の原作のイマイチさを映画ではカバーできなかったということで、主演のブサカワChloë 嬢の責任では全くないと思う。
 ところで、そういえばアメリカン・ラノベと日本のライトノベルで、もう一つ、決定的(?)に違うんじゃないかと思うことがあったのでメモしておこう。それは、作者の年齢だ。日本のラノベ作家は、圧倒的に若い。まあ最近は軒並み年齢も上がってきて、上は40代もかなり増えてしまったが、そもそもは20代でデビューするのが一般的だろう。作者と読者の年齢が近いからこそ、より一層読者の共感も高まる、という部分は無視できまい。しかし、アメリカン・ラノベの著者って……結構歳いってるんすよね。本作の著者Rick Yancey氏は1962年生まれだそうなので55歳か? 55歳のおっさんが10代女子のお悩みを書いて、面白い作品になるとはあんまり思えないすね。
 
 さて、最後に、映画のキャストと監督に触れて終わりにしよう。主人公キャシーを演じたChloë Grace Moretzちゃんについてはもういいすよね? ああ、1997年2月生まれだからもう20歳になったんですなあ。2009年の『(500)Days of Summer』でのおませなちびっこや、2010年の『Kick Ass』でのヒット・ガールは本当にかわいくて天使クラスだったけれど、残念ながら横方向に成長してしまって、まったくのブサカワになってしまったのが残念ですのう……。このほかには、私が知っている役者は二人しかいなかった。一人が、かなり後半だけの登場となる、やけにパンクなおっかない女子を演じたのがMaika Monroeちゃんで、彼女は結構いろいろ映画に出てます。このBlogでも記事を書いた『It Follows』とか、『Independence Day: Resurgence』とか。いつもはブロンドの美人系のかわいい彼女なのに、今回は黒髪&ゴスメイク(?)で最初誰だか分らなかったっす。そしてもう一人が『X-Men Origins: Wolverine』で、セイバートゥースを演じたLiev Schreiber氏。この人は顔に特徴があるので登場時にすぐわかった。
 あとは……主人公キャシーの高校のモテ男で事実上のもう一人の主人公の男の子を演じたのがNick Robinson君22歳。観ているときは全く気が付かなかったけれどさっき調べたら、彼は『Jurassic World』のあの兄弟のお兄ちゃんの方ですな。全然気が付かなかったわ。それと、監督はJ Blakeson氏という方だが、この方は『The Disappearance of Alice Creed』(邦題:アリス・クリードの失踪)を撮った監督でした。へえ~!? あの映画は監督自身のオリジナル脚本で、結構面白かったのに、今回は原作モノで自分で脚本書いてないからなあ……演出的にも、とりわけここがすごいという点はなかったかなあ……。なんか……残念す。

 というわけで、結論。
 アメリカン・ラノベ原作の『THE 5TH WAVE』という映画を観てみたところ、残念ながらキャラクターも物語も、いずれもかなりイマイチであった。わたしは日本のラノベの物語力の高さは相当世界で売れるはずだと思っているが、正直、本作レベルの物語では、日本ではデビューするのも困難なのではなかろうか。しかし……Chloë 嬢の成長ぶりも残念というか……もうちょい縦方向に成長してほしかった……なんつうか、幼児体形なんすよ……もう二十歳なのに。ウエストがないっつーか……ホント残念す。以上。

↓ こちらは大変緊張感あふれた傑作……なんだけど、後半のBL展開は不要だと思います。なぜ急にそんな展開にしたんだ……
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東宝
2012-01-27