いやー。マジで泣けたというか、これは「感動」だろうな。
 悲しいのではなくて、何か熱いものがこみ上げるというか、……何かとてつもなく大切なものを感じ、心が動かされたわけで、わたしはこの作品が大好きだと全世界に宣言したい気分である。本当にラストは泣けました。最高です。


  わたしは、この上橋菜穂子先生による『守り人』シリーズと呼ばれる一連の作品を、存在は知っていたが、実際に読んだのは今年の春である。紙の本は、もう10年?近く前に刊行されている作品なので、もはや世の中的にはお馴染みだろうし、アニメにもなった作品なので、大勢のファンがいるだろうと思う。だから、わたしがこうして感動に打ち震えているのも、実のところ、超いまさら、な話ではあろう。わたしはこの『守り人』シリーズを読むよりだいぶ前に、『獣の奏者』や『鹿の王』などを読んで、これまたいたく感動していたので、上橋先生の作品が素晴らしいことはもちろん分かっていたつもりだが、この『守り人』シリーズも、ホントにまあ、素晴らしく、心に残る作品であった。
 わたしが読み始めたきっかけは、実のところNHKの実写ドラマ化だ。そのドラマ化に合わせて、電子書籍化もなされたため、それじゃ読んでみるか、と今年の春に買ってみたわけである。
 しかし、春の段階では、まだ電子書籍では全巻発売になっておらず、最後の完結編である『天と地の守り人』の3部作だけはおあずけ状態となっていたのだ。なので、早く出ないかなー、つかもう紙の本で買っちまおうかしら、と何度も悩んでいたところ、ようやく先週、わたしが愛用する電子書籍販売サイトBOOK☆WALKERから、「新刊が出ましたよ~」とお知らせが来たのである。このときは、わたしはものすごくうれしくて、すぐさま購入し、読み始めたわけである。
 一応、この完結篇たる三部作以外は、このBlogでもいちいち記事を書いたので、ちょっと自分用にまとめてリンクを貼っておくとしよう。
 1作目の『精霊の守り人』の記事はこちら
 2作目の『闇の守り人』の記事はこちら
 3作目の『夢の守り人』の記事はこちら
 4作目の『虚空の旅人』んぼ記事はこちら
 5作目の『神の守り人<来訪編><帰還編>』の記事はこちら
 6作目の『蒼路の旅人』の記事はこちら

 というわけで、今回の『天と地の守り人』は、シリーズ7作目にあたる。そして3分冊になっていて、ボリュームとしてはシリーズ最大の読みごたえがあり、物語としても非常に濃厚かつ劇的で、そして結末としては(ほぼ)すべてに明確な回答が描かれ、完結編として完璧な完成度であるといってよいのではないかと思う。
 シリーズを読み続けてきた人(そうじゃない人でいきなりこの7作目を読む人はいないよね?)であれば、間違いなく喜び、悲しみ、怒り、楽しんで、そしてラストは非常にすがすがしいものを感じるだろうと思う。これまで出てきたほぼ全てのキャラが今回総出演だし、何といっても、チャグムのまっすぐでりりしい成長には、誰しも目を細めることだろうと思う。
 そもそも、本作は、明確に前作『蒼路の旅人』のラストシーンからの続きである。1作目でまだ幼かったチャグム、バルサと出会い、成長し、バルサとの別れにしょんぼりするチャグム。あの少年がすっかり成長し、外交官的な役割をもって周辺諸国に赴き、世界を知っていく過程は、読者も一緒にこの物語世界を体験していくことにシンクロするわけだが、前作でとうとう戦争が起こり、囚われの身として南の大陸にあるタルシュ帝国の帝都に連行され、その後、海に一人飛び込み、行方不明になったわけで、もう読者としては心配で心配でならなかったわけだ。本書はそこからのスタートである。
 ここで、関係各国の思惑を簡単にまとめておこう。
 ◆タルシュ帝国
 領土拡大でどんどん栄えている新興軍事国家。南の大陸はほぼ手中にしており、侵略した国々を「枝国」として併合し、現地人を徴兵し、税を徴収することで国家を運営している。ただし、とりわけひどい圧政というわけではなく、有能な人間なら枝国出身者でも重要ポストに出世できる柔軟性を持っている(実際、皇帝の右腕である宰相や兄王子の右腕も被侵略国出身)。そして現在はもう拡大の余地は北の大陸しかない、という状況でもある。なんとなく、豊臣家的な、家臣に与える土地がなく朝鮮出兵するしかない的な状況だったり、M&Aで外見的には成長を続けているように見える(けど実際の本丸は何も変わらずシナジーとやらもまるで生み出していない)、よくある大企業のパターンと少しだけ似ているかもしれない。そしてこの国の皇帝は、もはや余命いくばくもなく、二人の王子が手柄を競って次期皇帝の座を狙っていて、実は一枚岩ではないという状況にある。
 前作で、チャグムが出会ったのは、「南翼」と呼ばれる弟王子の方で、北の大陸侵攻軍の総司令官的な立場にあるが、本作では「北翼」の兄王子も登場。その関係性が結構大きなポイントでもある。あ、各キャラクターにつていは、上記の過去の記事を参照してください。
 ◆ロタ王国
 第5作目の舞台となった国。騎馬民族。聡明な王がいるが病弱で、王弟が政務を任されている。国は実際のところ南部の富裕層と、北部の貧困層に分かれていて、その溝は深い。王弟は悪い奴ではないし、話の分かる男だけれど、北部に肩入れをしているため、南部では人気がない。タルシュ帝国の北の大陸侵攻に際しても、意見が分かれたままであり、あまつさえ、南部の富裕層は密かに「北翼」側のスパイたちと共謀していて……という状況。そんなことは知らないチャグムは、まずはロタ王国へ向かい、同盟を求めるが……。
 ◆サンガル王国
 第4作目の舞台となった国。すでにタルシュに下っている。海洋国家で、王はあくまで最も強く影響力のある人間=その人間について行けば利益がある、というような存在とみなされていて、悪い言葉で言えば日和見な国民性があり、この国も一枚岩ではない。ある意味ビジネスライクな国民性のため、利に聡いし、交渉力も強くしたたか。今のところ、おとなしくタルシュに従う体ではあるが、内心では、従うつもりはない。本作ではほとんど出てこない。
 ◆カンバル王国
 第2作目の舞台となった国。バルサの故国。高地民族。北の山の向こう側の痩せた地に住み、豊かではない。現王はまだ若く経験不足であり、王としての器も若干問題アリ。「王の槍」と呼ばれる屈強な男たちがいる。その「王の槍」の筆頭であるカームは、もはやタルシュに隷属するしかないと考えていたが、彼もまた「北翼」側のスパイにいい話しか聞かされておらず、チャグムとバルサの到来で、事件の背景を知るに至り――てな展開。
 ◆新ヨゴ皇国
 シャグムの故国。元々は200年前に南の大陸から侵攻・移住してきた人たちの国。設定として、帝=神の子であるとされていて、実に古めかしい政治体系を採っている。この国では、皇太子チャグムを追い落とそうとする勢力があって、そいつらは、基本的に戦争さえも神の力で何とかなると考えており、そんなのんきな連中が牛耳っている。もはや征服される一歩手前で状況は極めて切迫しているが、愚かなことばかりしていて、さっさとチャグムは死んだものとして盛大な葬式までやっちゃった。戦争に対しては、民間人を徴用して場当たり的にしのごうとしていて、タンダも草兵として徴兵されてしまうが――と、超ハラハラする展開が待ってます。
 
 というわけで、物語は、まず、バルサはチャグムと無事に再会できるのか(そりゃできるに決まってる)、そして北の大陸の各国は同盟が組めるのか(そりゃ組めるに決まってる)、そして、タルシュとの戦いの趨勢は――という点が重要なのだが、結論が分かっていても、その過程は非常に読みごたえがある。とにかくですね、チャグムはかなり傷だらけ&血まみれになるし、バルサももちろんいつも通り全身傷だらけ&血まみれだし、もうとにかく一瞬たりとも飽きさせないペースで、読者としてはもうずっとハラハラドキドキであった。
 今回、わたしが一番素晴らしいと感じたのは、やっぱり故国に凱旋したチャグムと、父である帝とのやり取りであろうと思う。このやり取りで、本作のタイトル「天と地の守り人」の意味もはっきり分かる仕掛けになっていて、わたしはいたく感動した。チャグムは、まったく現実を直視しようとしない父=帝に対して、もはや弑するしかないのか、と悩むわけですが、この葛藤はとでもグッときましたね。この国の現実的な人々はみな、もう帝をぶっ殺すしかない、と思っている中での、チャグムと帝のそれぞれの決断は、実にまっすぐで美しく、これしかない、と納得の結末であった。
 また、バルサとタンダの関係も、非常に良かったすねえ……。一兵卒として戦場に駆り出されたタンダ、そしてチャグムを見送った後に、戦場に消えたタンダを探すバルサ。この二人の最終的な結末も、読者として本当に良かったね、と心から安心したし、二人に幸あれと心からの祝福を贈りたいと思った。
 上橋先生の作品は、常に「まっとうに」生きる主人公が、時にひどい目に遭ったり、あるいは過去に苦しむことがあっても、真正面からそういった苦難に向き合い、逃げることなく、最後にはその「心にやましさのない、まっとうさ」故に救われるお話だと思う。そういう意味では、チャグムやバルサは、上橋作品の主人公たる資質を最後まで失うことなく、読者としては共感してしまうわけで、実に読後感も心地よいと思う。
 それから、サブキャラでは、やっぱりヒュウゴが光ってますね。命を懸けて、タルシュ帝国を変えようとするヒュウゴも、今回大活躍だったし、ヒュウゴがいなければ、この物語は成立しなかった大功績者ですよ。
 チラッとしか出てこなくて、若干残念だったのは、第5作目で出てきてバルサと戦ったシハナと、同じく5作目のキーキャラであるチキサとアスラの兄妹かな。シハナは、ロタ王国内でバルサとチャグムを助けてくれるけれど、あまり活躍の場はなかったし、結局どういう立場にいるのか、の明確な説明はなかったかも。チキサとアスラは、冒頭でタンダのところにやって来るけれど、物語的な役割としては特に重要ではなかったかな。どうせなら、サンガルのタルサンや、女海賊のセナも出てきてくれたら嬉しかったのだが、まあそれは贅沢というものかな。

 つーかですね、わたしは読み終わって、ますます来春放送予定のNHKでの映像化セカンドシーズンが楽しみになってきました。シハナを真木よう子さんが演じることが発表されているけれど、綾瀬バルサVS真木シハナは相当かっこいいでしょうな。大人になったチャグムにも、早く会いたいと思います。詳しいキャストは、NHKのWebサイトに載ってます。超期待すね。

 探したけれど、セカンドシーズンの予告動画はyoutubeにはアップされてないな……なのでDVD&Blu-rayセールス用の予告でも貼っとくか。NHKの公式Webサイトhttp://www.nhk.or.jp/moribito/には、一つだけ、30秒の短い動画が置いてあります。そちらでは、ちらっとだけ、綾瀬バルサVS真木シハナが収録されてますので、それを観てテンションを上げておくのが良いと思います。また、上橋先生のセカンドシーズンへ向けたお言葉なども掲載されているので、必見かと存じます。うおー、楽しみだ!

 というわけで、なんかまるで取り留めないけれど結論。
 上橋菜緒子先生による「守り人」シリーズは最高である! そしてその完結編、『天と地の守り人』三部作は感動のフィナーレであり、物語はすべて収まるところに収まり、美しくて心にグッとくる見事な作品であった。わたし的には、『守り人』『獣の奏者』『鹿の王』は甲乙つけがたく、どれも最高だと思います。読んだこののない人は、ぜひ一度読んでもらいたいものです。マジ最高です。以上。

↓ 後はこれだけ、外伝が1冊残ってますが、勿論すでに購入済み。正月ゆっくり読むんだ……