John Favreau氏と言えば、わたしとしては一番馴染みがあるのは『IRONMAN』の監督というよりも、トニー・スタークの忠実な運転手兼ボディガードの「ハッピー」を演じた役者としての顔の方で、まあ、太った気のいいおっさん的な男であるが、監督としても多くの作品を撮っている才能あふれた男である。
 その彼が作り上げた最新作、『The JUNGLE BOOK』は、主演の少年以外全部CGというすさまじい作品で、おとといわたしも劇場で観てきたが、まあとにかく凄かったのである。お話的には、実際のところ別に感動して泣けるというほどではなく(?)、普通に面白かった、というものであるが、とにかく映像が凄い。これをわたしは2D字幕版で見てしまったのだが、これはやはり3Dで観るべきであった、と深く後悔している。くそー。3D字幕版での上映が全然ないんだよな……IMAX3D字幕に行くべきだった……。たぶん、3Dだと、さらにすさまじいんだろうな、と思った。ちなみに、すでに全世界で947M$(=約975億円)稼いでいて、製作費も175M$と高いけれど、十分に黒字なんでしょうな、すげえわ。

 物語は、原作を読んだことがないので未確認ですが、たぶんノーベル文学賞受賞作家、Rudyard Kipling氏の原作の通り、おおむね有名なお話そのままと言っていいと思う。ジャングルで父を亡くした人間の赤ん坊モーグリ。彼は黒ヒョウのバギーラに助けられるが、子育ての出来ないバギーラは、狼の群れにモーグリを託す。そしてすくすくと育ち成長するが、人間に恨みを持つ虎のシア・カーンは、モーグリが気に入らない。もはやシア・カーンの脅威からモーグリを守ることはジャングルの仲間の動物たちには荷が重く、やむなくモーグリを人間の村へ送り届けようとするが、シア・カーンの追跡はしつこく、戦いは不可避に――とまあそんなお話である。
 ちなみに、Kipling氏はイギリス人であり、当時のイギリス領インドで生まれ育ったわけで、この物語で描かれる、いわゆるジャングルは、南米的なジャングルではなく、植生や動物たちからしても明らかにアジアのジャングルなのだと思われる。虎もいるし。決して、ターザン的なアフリカではない。けど、象はアフリカゾウのような気もするのだが、どうなんだろう……あ、なるほど、耳の形とかいろいろ違うわけか。あーこれ、ちゃんと予習して観に行けばはっきりわかったのにな。アフリカゾウは耳が三角、アジアゾウは耳が四角、なんですと。どっちだったかなあ……。そう言われると、ちゃんとアジアゾウだったような気もしますな。その点は抜かりない、か。
 ちなみに、この物語では動物たちも普通にしゃべる。そして、その動物たちはみな、CGによって描かれているわけだが、とにかくまったくもって生きた本物にしか見えないし、なによりも、しゃべるその表情が恐ろしく人間臭いのに動物そのもの、という、どうにも言葉では説明できない素晴らしいもので、その豊かな表情と毛皮の本物感がとにかく仰天モノなのだ。主な動物たちとその声を担当した役者を紹介すると、こんな感じである。
 ◆黒ヒョウの「バギーラ」:声を担当したのはSir Ben Kingsley。 超シブイくてカッコイイ。モーグリをいつも見守る優しい男。毛皮の光沢感や歩き方、鼻の具合など、もう本物そのもの。虎には勝てないので若干弱いけど、男ですよ、この黒ヒョウは。とにかく、シブイ。
 ◆母オオカミの「ラクシャ」:声を担当したのは『SW』のマズ・カナタでお馴染みのLupita Nyongoさん。最近ホントに活躍している女優ですな。わたしはあまり興味なし。ただ、このモーグリの育ての母であるオオカミの表情がもの凄く良くて、びっくりした。怒っている顔、優しい顔、など表情豊か。比較的良く喋る。別れに際して、素晴らしい名言が彼女にはあった。
 No matter where you go or what they may call you, you will always be my son.
 「どこへ行こうと、なんという名になろうと、いつだってお前は、わたしの息子よ」
 この時の表情が、もうオオカミとは思えない慈愛に満ちていてグッと来ます!! 
 ◆クマの「バルー」:声を担当したのはBill Murray氏。このクマさんは……穏やかな性格ではちみつが大好きで、これまた非常に表情豊かで、まさしくクマのPoohさんなわけだが、種類が良くわからない。ヒグマ、かな? 毛色的に。良くわからないけれど、濡れた毛皮なんかも、とにかくこれまた本物の質感そのもの。
 ◆オランウータン(?)の「キング・ルイ」:声を担当したのは、わたしも大好きなChristopher Walken氏。モーグリたちの森からはちょっと離れたところの古代文明(?)の遺跡をねぐらとする親分。あまり物語進行には関係ないけれど、存在感のある怖~いボス。わたしはかなりの声フェチで、Walken氏の声は良く知ってるつもりだが、正直すぐには分からなかった。この人、映画版『Jersey Boys』のエンディングで歌って踊るところを見せてくれたけれど、歌える人なんすね。今回も一曲、歌ってくれます。
 ◆トラの「シア・カーン」:声を担当したのは、Idris Elba氏。『THOR』の門番ヘイムダル役でお馴染みですね。彼は、『ZOOTPIA』でもバッファローの警察署長も演じていて、動物役2連発ですな。あ、そうなんだ、この人、『Finding Dory』でもアシカのフルークというキャラを演じてるんすね。動物役3連発だ。このシア・カーンというトラはかつて人間(=モーグリの父)の使う「火」で痛い目に遭っていて、人間嫌いというわけで、それにしても彼には家族はいなかったんでしょうか……ちょっと気の毒な気はします。とにかく、しつこいですが、このトラも表情が凄いです。非常におっかない。
 ◆大蛇(ニシキヘビ?)の「カー」:声を担当したのは、ハスキーボイスがセクシーなことでお馴染みのScarlett Johansson嬢。相変わらず素晴らしくいい声で、たまらんですな。今回、出番はほんのちょっとしかないのですが……驚いたことにですね、ラストのエンドクレジットで、4曲ぐらいかかる曲の中の一つ「Trust in Me」を歌ってました。わたしは声で、一発で「アレッ!? この声、スカージョじゃね!?」 と大興奮。歌のクレジットはほぼラストにやっと出てくるのだが、ちゃんとPerformed by Scarlett Johanssonと表示されるのを確認しました。そういやこの人、歌手デビューもしてるんだっけと、改めて、歌える人なんだ、と認識しました。超セクシーな美声で最高です。あっ!? ちゃんとDISNEY公式でその歌声がYouTubeにUPされてら。貼っとこう。上手いどうかは微妙……かも。それでもいいの!!

 というわけで、声の出演は素晴らしいオールスターキャストで、言う事なし、である。そして、唯一の生身の役者として主演した少年モーグリ役のNeel Sethi君は2003年NYC生まれだそうで、非常に達者な芝居ぶりだったと思う。メイキングをいくつか見たけれど、監督のFavreau氏はまさしくクマのPoohさん的にニコニコしながら演出してましたな。しかし、全てグリーンバックでここまでの芝居をするというのは、難易度も高かっただろうに、ホント、モーグリをお見事に演じ切っていたと思う。素晴らしい才能なんでしょうな。

 というわけで、結論。
 この『The JUNGLE BOOK』はDISNEY謹製のちびっ子向け映画ではあるけれど、そのテクノロジーというか映像技術は素晴らしく、実際のところ大人でも十分に楽しめる良作だと思う。だけど、くれぐれも、字幕で、そして出来れば3Dで見た方がいいのではなかろうか。もちろん、日本語版の声を担当した役者たちも一流ぞろいなので、吹替えでもいいけれど、たぶん、動物たちの口の動きのシンクロ具合を考えると、やはり元の英語版の方がいいんじゃないかと思う。機会があれば、わたしももう一度、IMAX3D字幕版に行こうかしら、と思うぐらい、わたし的には大変気に入りました。以上。

↓ 原作はいろんな出版社から出ている名作です。とりあえず、これを貼っとこう。どうせ読むなら、挿絵もあった方がいいと思うな。