というわけで、現在日比谷の東京宝塚劇場で絶賛上演中の花組公演を、昨日、久しぶりに平日夜の回で観てきた。
 いつも一緒に観に行くヅカ友の若い娘っ子たちは、立派な社畜なので、キミたちは平日の18時に日比谷にいることが可能なのかい? と聞いてみたところ、「何をおいても絶対に行きます(意訳)」的なことを揃って言っていたので、さいですか、なら遅れるなよ、と思っていたら、ちゃんと開演20分前には現れた。感心感心、まったくもって社畜乙、である。つか、何をおいてもヅカ優先、という態度はわたし個人としては大変好ましいが、オレが君たちの上司だったら、若干仕事ぶりが心配である。ま、優秀と言われる若者なので、大丈夫と信じたい。
  というわけで、昨日観た花組の演目は、『ME AND MY GIRL』である。
 ヅカファンには大変おなじみで、もう何度も再演されている有名な作品だが、ヅカ歴6年のわたしは今回が初めてである。Wikiによると、わたしがヅカにはまってからの6年間にも再演されているそうで、あれっ!? じゃあ、なんでオレ、観てねえのかしら? と思ったら、どうやら大劇場公演としては8年ぶりらしく、一番最近の2013年月組版は、梅田芸術劇場公演だったようで、ああ、じゃあ観てねえわ、とさっき知った。なるほど。ついでに言うと、元々はブロードウェーではなくて、ロンドン・ミュージカルらしいですな。へえ~。
 そしてわたし的に初めてとなった『ME AND MY GIRL』であるが、有名作品だけあって、やはり一度はどこかで聞いたことのあるような楽曲が多く、実に明るく楽しい物語で、当然歌も素晴らしく、また、現在の花組による役者陣の熱演も大変良くて、結論から言うと非常に満足だったのである。が、しかし……今回はちょっとだけ、文句があり、若干残念に思うこともあったのが、わたし的結論だ。

 宝塚歌劇団は、毎公演、結構多くの動画をYou Tube上にUPしてくれるのだが、今回はこの動画を貼りつけておこう。
 まず物語は、男版『My Fairlady』と呼ばれているように、とある高貴な血を引く、けれど、下町暮らしの青年が、その血ゆえに裕福な家系の遺産相続人となってしまい、その血にふさわしい立ち振る舞いやマナーなどを叩き込まれ、そして、予期せず身分違いの恋となってしまった同じく下町暮らしの女性との恋模様も描かれるものである。
 しかし、正直に言えば、わたしの予想とは全然違う物語で、わたしはズバリ、主人公の青年ビルには最後まで共感できなかった。なにしろ、最後までほとんど何も努力もしないし覚悟もしない。ほぼすべてテキトーというか、ちゃらんぽらん系のゆとり青年だからだ。だが、一方、恋のお相手のサリーは非常に健気でいじらしく、わたしは今回、わたしはほとんどずっと、サリーの味方として、ビルには甚だしく説教したい気分であった。お前、ちょっとまず黙れ、そしてここに来て正座しろ!! と怒鳴りつけたい気分である。わたしはてっきり、ビルが一生懸命努力して頑張る話かと思ってたのに、全然違ってました。この、ビルというキャラクターへの反感? というか、どうも好きになれなかったのが、わたしの文句その(1)である。
 が、ビルはまあズバリどうでもいいとして、今回はとにかく歌がいい!! ついうっかり、周りを気にせずいつの間にか鼻歌を歌ってしまいそうな、危険なレベルの明るい曲である。その点ではやっぱり楽しくて素晴らしい作品であったと思う。
 
 というわけで、本作は主人公の青年ビルはとんでもないゆとり乙なクソガキだったわけだが、もちろん演じるのは、当然現在の花組TOPスター、明日海りおさん(通称:みりおちゃん)である。いや、ほんとにみりおちゃんは可愛いし、いいんすよ。ギャグも非常に頑張っていたし、帽子を使った細かい芸もさまざまに見せてくれる。しかし、みりおちゃんはとてもいいんだけれど、今回はなんかずっとふざけっぱなしで、正直、真面目に生きることを旨とするわたしには、ギャグがくどいというか長すぎて、残念ながらあまり笑えなかった。何度も、いいからちゃんと話を聞けよこの野郎!! と思ってしまったのは、わたしがクソ真面目すぎるからなんだろうか?
 わたしは過去の公演と比較できないので、過去のビルがどんなだったかわからない。ただ、思うに、この作品は普通に男性キャストも入る普通のミュージカルも上演されているわけで、ビルを普通に男が演じたらどうなんだろうというのは、どうにも想像がつかない。男が、あのテキトー男、ビルを演じたらどうなるんだろう? 面白いのかな? 男版を観たことがないので、ちょっと想像がつかないが、現時点のわたしが言えることは、テキトー男を実際に男が演じたら、わたしはますますイラついていたのではないかと言う気がする。テキトー男というものは、高田純次氏のようなおっさんならばアリ、なのだが、若い男が演じたらふざけんなコノヤロー!! と思ってしまうのではなかろうか。なので、あくまで可愛らしく女性が演じる宝塚版だからこそ、やっぱり楽しいのではなかろうか。くれぐれも言っておきたいが、みりおちゃんは最高です。1幕ラストでの客席降りで、わたしのすぐ横を駆け抜けていったみりおちゃんは、失神ものの可愛さであった。ホントに顔がちいせえなこの人、とまあ、天使クラスであったのはもう、言うまでもなかろうと思う。

 さて、今回、わたしが一番注目だぜ、と事前にチェックしていたのは、実はTOPスターのみりおちゃんではなく、3番手(?)スターの柚香 光さん(ゆずか れい、通称:れいちゃん)である。前回の花組公演の時にも書いたが、まあとにかく美形であり、現在の花組ではTOPのみりおちゃんに次ぐ小顔の美形だと思うが、いつも男役の彼女が、今回は完全に女性のジャッキー役である(ちなみに役替わりで、別Verでは髭ダンディな弁護士役。そしてちなみに前回の『新源氏物語』でも六条御息所という女性を演じた)。なので、れいちゃんの女子振りも堪能してくれるわ!! という勢いで昨日は劇場に向かったわけだが、まあ、これが恐ろしく綺麗で、期待以上の素晴らしさでだった。たしかにデカい(171cm)けど、いいですなあ。非常に色気アリで、大変眼福でありました。元々声が低く、大変極上のハスキー美女ですね。しかもなんというか彫が深いというのか、長身もあいまって、ハリウッド女優のようでした。なんとなく、Anne Hathaway嬢に似ているような気がしますな。最高です。れいちゃんは、わたしイチオシの星組の礼 真琴ちゃん(通称:ことちゃん)と同期の95期。今後大変期待できますね。二人が揃ってTOPとなる日が楽しみですな。
 また、今回一番わたしのハートをつかんだのは、上にも書いた通り、超健気なヒロイン・サラを演じた花乃まりあさん(通称:かのちゃん)でありました。かのちゃんは歌もいいですね。今回彼女の歌のほうが断然目立っていたと思う。また、2幕のクライマックス(?)の、ロンドンまでサラを追ってきたビルが、サラの家の前で観る幻のあのダンス、せりから上がってきてぐるーーりと回る、あのシーンがわたし的に一番グッと来ました。今の各組娘役TOPの皆さんは、全員とてもイイですな。大変それぞれの個性があって、中でもかのちゃんについてはわたしは今まであまり注目していなかったのだが、『カリスタ』の時や、今回のような、若干育ちが悪い、けど、主人公を想う健気な少女を演じたらTOPクラスに可愛いと思います。大変よい芝居振りでした。
 それから、いつもあまり触れないけれど、2番手の元・星組の芹香斗亜さん(通称:キキちゃん)は、初めての老け役なのかな、ちょっと微妙に面白おじさんのジョン卿を非常に堅実にそして楽しく演じてくれていたし、あと、弁護士のパーチェスターを演じた鳳真由さんも、今回が退団公演となってしまったけれど、大変笑わせてもらった。今回、パーチェスターが一番笑えて面白かったと思う。
 ただ、これはわたしの文句その(2)なのだが……今回はですね、SS席5列目での観劇だったわけなんですが、せっかく超いい席だったのにですね……今回、「銀橋」がほとんど使われてない!!! ことが大変残念に思うわけです。はーーーせっかく5列目なのに……銀橋で歌うシーンがほぼなかったのが、超残念で、ここは大変僭越ながら、なんだよ……ちぇっ。と、文句を言わせていただくこととしたい。残念でした……。
 それでは最後に、毎度お馴染みの、今回のイケ台詞の発表です。
 ※イケ台詞=わたしが「かーっ!! カッコええ!!」と思った台詞のこと。
 「残念だが、わたしはこれから戦争を始めるところなのさ
 今回はビルに感情移入できず、ラスト近くのジョン卿のさりげなくカッコイイ台詞をチョイスしました。これは、サラの家の前から立ち去るときに、娼婦めいた女性の誘惑をさらっとかわす時の台詞で、さあ、これから、サラのためにいっちょ一肌脱ぐか。という決意の台詞です。キキちゃん、大変良かったと思います。ところで、ジョン卿がサラの上流階級暮らしのコーチとしてある男を紹介しよう、名は「ヒギンス教授」とういうのだがね、なんていうシーンは、ちょっと驚きのギャグでした。えっ!! あんたヒギンス教授と友達なんだ!? とびっくりしたわw

 というわけで、結論。
 はっきり言って主人公ビルはダメなゆとり小僧ですが、ヒロイン・サラはとても可愛いし、とにかく楽曲がノリノリである。1幕ラストや、カーテンコールの時の劇場全体を包むノリノリ感は、非常に楽しく、結果としてビルのテキトーな調子の良さがこの雰囲気を作り上げていることは間違いないので、まあ、いっか。と最終的にはわたしも許してやることにしたい。散々文句を言っといてアレですが。ま、わたしの好みとしては、コメディーとしては『こうもり』の方が面白かったっす。以上。

↓ 予約しました。もう何度でも観たいすね。最高です。早く発売日になんねーかな。