というわけで、先日電子書籍で全巻まとめ買いした漫画『野田ともうします』。
 わたしとしては実に面白く、何度も笑わせてもらった愉快な漫画であり、大変気に入ったわけで、ならばその著者、柘植 文先生の他の作品も読んでみようと思い、タイトル的にこれは面白そう、と直感的に思って買ったのが、本書『中年女子画報』である。

 わたしもすっかりおっさんで、柘植先生よりちょっと年上のようなのだが、女性が40歳を過ぎるとこういう感じなんだろうな、つか、男のオレも実に思い当たることがあるわ、というようなエピソード満載で、本作も実に楽しく読ませてもらった。柘植先生は、1973年生まれという事で、今年の誕生日で43歳になるようだが、先生が40歳を迎えた時にこの漫画は始まったらしい。第1話の、冒頭の先生の言葉を引用すると、
 <というわけで今年40歳になって、「あれ? 私ってもう中高年!? 昔でいったら初老!?」とビックリしてあたふたしちゃってるので 正しい中高年になっていこうというマンガです>
 とのことだ。
 いわゆる、「コミックエッセイ」というジャンルに分類されるこの漫画は、柘植先生が「正しい中高年」って、こういうことかしら、こうあるべきかしら、と、いろいろなところへ行ったり、さまざまなことに挑戦したりする様子をレポートしてたもので、実に楽しい漫画であった。なので、基本的には、
 【世の中的に一般的な40代女性のイメージ像】
 【世の中的に一般的な40代女性に求められる常識】
 【世の中的に一般的な40代女性の行動】
 と、柘植先生自らのあり方とのギャップに笑いがあるわけで、ある意味自虐ネタになるのだが、それが行きすぎたり、あるいは批判的だったり、逆に何も知らなくてすみません的に卑屈な印象を与えてしまうと、残念ながら痛々しくなってしまう危険性があると思う。しかし、この柘植先生による漫画は、そういう痛々しさは全くなく、実に朗らか? と言えばいいのかわからないけれど、明るく楽しいのだ。
 おそらく、いわゆるエッセイというものを読んで面白いと感じる場合に、なくてはならない必須のポイントとして、書いている作者自身の人格の良さがあげられると思う。つまり、その人自身が面白くて魅力あふれる人でない限り、エッセイは読んでいて面白いモノにはなりえない。それはコミックエッセイでも同じで、自慢気だったり、批判的だったり、卑屈だったり、それでは読んでいる読者としてはまるで共感できないものになるのがオチであろうと思う。わたしはこの作品を読んで、ああ、柘植先生はきっと、楽しくて魅力的な40代女性なんだろうととても好感を抱いた。たぶん、女性が読むと、より身近になるというか、思い当たる話が満載なのではないかと思われる。しかし、なんでまたこの漫画が竹書房の「まんがライフオリジナル」で連載されてたのか、良くわからんというか……確実に読者はおっさんだと思うのだが、いいのだろうか……? ま、実際のところ、男が読んでも面白く、むしろ男に向けて、「40歳になっても女子は女子なのよ」的なメッセージもあるのかもしれない。いや、そりゃ無理矢理かな? どうでしょうか。とにかく、女性であろうと男であろうと、楽しめることは間違いないと思う。

 本作は24本の連載時エピソード+1本の単行本描き下ろしから構成されているのだが、どれも面白くて……どれを紹介したものか……そうだ、いっそ全エピソードのタイトルだけ紹介してみようかな。
 ◆正しい中年を目指します……中高年向け雑誌を片っ端から買ってみる話。
 ◆不惑を目指して自分を知る……1話で買った雑誌を切り抜いて「ビジョンマップ」を作ってみる話。
 ◆大人の夏の過ごし方……都内ホテルのプールに行ってみる話。
 ◆そうだ、高尾山に行こう……タイトル通りです。とても笑える。
 ◆大人ファッションの必須アイテム……ストッキングの話。
 ◆芸術はおばさんを招く……美術館に行ってみる話。
 ◆アイドルは綾野ならぬ綾小路……きみまろライブに行ってみる話。
 ◆惑ったら神様の言うとおりっ?……大阪・瓢箪山の稲荷神社の辻占に行ってみる話。
 ◆大阪で生まれた女に大接近……「オバチャーン」のCD発売イベントへ通天閣に行ってみる話。
 ◆踊る!大中高年!……六本木マハラジャに行ってみる話。
 ◆背中に哀愁の脂肪が……ダイエットの話。
 ◆ババアにババアと言って何が悪い?……毒蝮三太夫のラジオ公録に行ってみる話。
 ◆正しいお正月の過ごし方……皇居へ新年一般参賀に行ってみる話。
 ◆愛でます、愛でるんです、蘭の世界……世界らん展に行ってみる話。
 ◆伝統芸能鑑賞は大人のたしなみ……国立能楽堂へ能・狂言を観に行く話。
 ◆女ひとり旅、日本海~♪……日本海を一人で見に行く話。糸魚川~親不知へ。しかも日帰り。
 ◆話は尽きぬ!中年女子座談会……同世代でワイワイやる話。
 ◆相田みつをで絵手紙修行!……みつを美術館へ行き、自分で描いてみる話。
 ◆中年下着問題考察……オーダーブラを作ってみる話。
 ◆ひとり海水浴に行ってみたら……鎌倉でシュノーケリング体験会に参加してみる話。
 ◆中高年は筋肉が命!……近所の公園のラジオ体操サークルに参加してみる話。
 ◆再び!聖地大坂へ!……大阪の中年スポッめぐりの話。船場センタービルとか。
 ◆髪のおしゃれウィッグ検証……レディスアデランス銀座へ行ってみる話。
 ◆ときめき求めて恋活だ!……街コンに行ってみる話。
 ◆けじめの中年式(描き下ろし)……成人式ならぬ中年式を執り行ってみる話。写真を撮ったり、東京大神宮で御祈祷を受けたり。これ、大変面白い。わたしもやろうかとひそかに思ってますw
 
 てな感じです。どうでしょう、ちょっと読みたくなるのでは? どれも、1エピソード当たり10ページもないぐらいなので、気楽に読めます。上に書いた通り、どのエピソードも、柘植先生の人柄が伝わる楽しい話になっていて、ヤバいな……もう柘植先生が好きになってきた。しかし、わたしも実際そうだけれど、40を過ぎると、周りはみんな子供や家族が中心で、ちょっと遊ぶとか旅に出るとか、もう全然誘えなくて、必然的にぼっち行動をとらざるを得なくなるわけで、たぶん、わたしが思うに、中高年になっても元気でいる最大のコツは、とにかく出かけることだと思う。一人ででも。その行動力が活力になって、心身ともに、とりあえず自分的には若くいられるコツなのではなかろうか。ま、他人から見ると全然若くないんでしょうが、少なくとも自分自身では、オレはまだ若い、という気持ちでいられると思う。とにかくですね、家に引きこもっていてはダメですよ。そして、思ったことは即実行。それがわたし的なオレがオレでいるためのスタイルっすな。

 というわけで、結論。
 わたしも完全なおっさんですが、女性もやはり、明るく元気で活動的であれば、まあ何とか生きていけますよ。そしてそのためには、行動あるのみ、ですな。大変面白いコミックエッセイでありました。若い人が読んで面白いか分からんけれど。以上。

↓ わたしは既に「ぼっちレベル」99まで達していますが、レベル100になる最後の関門は、「一人ディズニー」を実行することなんだが……さすがにまだ、オレにはどうしても出来ねえ……くそう……!