現代の世の中は、なにかと「責任」を取らない、「責任」を回避しようとするゲス野郎が多くて本当にいやな気分になることが多いものだが、こと「個人投資家」なる人種にもその類の人々がいて、もう完全にプロと呼べる人ならそんなことは決してないのだが、金がないくせに、なけなしの金を突っ込んで、損をして、それを人のせいにしようとする素人投資家がたまに見受けられる。わたしもそれなりに株式投資を行っているが、もちろんすべて自己責任なのは言うまでもない。
 今日、わたしが観てきた映画『Money Monster』という映画は、株式投資で購入した株の大暴落により、すっからかんになった青年が、「お前がこの株は安全だっつったんだろーが!!」と逆ギレして、テレビの投資番組生放送中に銃を片手に乱入するお話である。わたしはまた、アホな素人だろうと思って劇場に向かったわけだが、実はその裏には陰謀があって、実際のところ彼は気の毒な被害者であることが分かり、実に彼の味方をしたくなる物語であった。大変面白かったです。アレッ!? サーセン。早くもネタバレしちゃったかな? まあいいや。以下ネタバレ全開です。

 大体の物語は、上記予告の通りである。なので、問題となるのは、この青年のアホさ加減と、Julia Robertsさん演じるディレクターによる救出ミッションになるのだろう、とわたしは思っていたのだが、上に書いた通り、全然展開がわたしの愚かな想像と違っており、実に面白かった。
 大筋としては、やはり銃を持って乱入する青年がそもそもアホであるのは、残念ながら動かしようのない事実であろう。途中で説得役で出てくる彼女が「このバカなにやってんのよ!!」と罵倒するのも無理はない。そして、George Clooney氏演じる主人公(と言っていいのか?)である番組キャスターの、ちょっと調子に乗った男が、それなりに痛い目に遭うのも、ある意味ざまあ、ではある。
 しかし、彼らは物語上ほんの小悪党で、本当の悪意ある純然たる悪党は別にいた。
 そもそもの、とある会社の株式価格大暴落が、実は人為的に仕組まれたものであることが判明するわけである。つまり、青年もキャスターも、二人とも同じ男にだまされた被害者だと言うことが判明するのだ。ここからの展開が、非常に観ていて面白かった。状況を利用して、完全にもう共犯として、そのだました男をぶっ飛ばしてやろうとする二人と、それに協力して見事に状況を仕切るディレクター。そして見事成功、というところまでは実に明確でスカッとする展開であった、のだが……その後に起きる事態は実に痛ましく、やっぱりUSAという国はホントに乱暴な国だなあ……と、実際のところ後味は良くない。この、わたしが乱暴だと思うのは以下の2点においてである。
 ■とにかく「撃て!」なUSA
 まあ、スタジオジャックした青年に対して、即座に射殺指令が下るのは、これはもう残念ながらやむなしだろう。人に銃を向けた時点で、自らも撃たれる覚悟をすべきなのはこれはもう万国共通だ。しかし、わたしがやや驚いたのは、キャスターも撃て、という指令である。要するに青年を射殺するのは簡単だけれど、撃ったら青年が握っている爆弾の起爆装置が発動してドカーーンとなる、ので、爆弾ベストを着せられているキャスターの、起爆信号受信装置を先に撃っちまえ、もちろんキャスターにも当たるけど、なあに、すぐに救命措置をすりゃ死にやしないさ、だから撃て、という命令だ。
 そこでは、警官たちがこんな話をする。まず、見事受信機に命中する確率が80%、で、撃たれたキャスターの命が助かる確率が80%、そうか、じゃあ、ちょっとリスクはあるけど、なあに、大丈夫、よし、撃とう、とまあこんな軽い決断である。おっかねえ……。ラストの悲劇も、もうちょっとだけ頭を使えばよかったのに、問答無用で発砲する警官。まあ、撃たれる前に撃て、はやむなしであろうから、これは警官と言うより、主人公キャスターがもうチョイ頭を使うべきだったと思う。ここはとても痛ましくて、非常に悲しくなったポイントだ。とにかく、US国内では、銃に近づいちゃダメですな、ホント危ねえ国ですよ。
 ■証券監視委員会の目は節穴か?
 今回の事件の大本である、株価暴落が、ちょっと調べればすぐ分かる人為的陰謀だったという事実は、観ていて、おいおい、こんな短時間であっさりバレるなら、そもそもなんで最初から分からなかったんだ!? とわたしはやや驚いた。青年が銃を持って乱入し、事件を起こさなければ、悪党の悪事はずっと藪の中だったわけで、そんなにザルなの、この国は? と、若干唖然とせざるを得まい。
 確かに、US国内の人々の労働意欲は、もちろんみんなちゃんと働いているけれど、はっきり言って、日本のように高いものではなく、さまざまな面できっちりしていないところが目立ち、なんというか、乱暴っつーか、おざなり、だなあ、という場面が非常に目に付く。このあたりのことは去年のNYC滞在記でも散々書いたけれど、空港職員のテキトーさ、街の清掃具合のテキトーさ、など、とにかくなんか、仕事愛が感じられないというか……クオリティが低いんだよな……。もちろん全員ではないけれど、お役人クラスのテキトーさもきっと、まあ乱暴なもんなんだろうな、とは想像がつく。
 ただまあ、映画での出来事だし、映画としての盛り上がりは脚本的にとても良かったので、そこまで邪推するのはわたしの捻じ曲がった性格ゆえだろうから、これ以上はもうやめとこう。とにかく、映画を観ている間は非常にサスペンスフルで面白かった、けど、あとではたと、ちょっとザル過ぎたんじゃね? と何か心に引っかかったことを記録として残しておこうと思う。あと、節穴具合で言うと、銃を持った青年を余裕でスタジオ乱入させたTV局のセキュリティー具合もホントにテキトーで、そもそものビル入退出管理という点においては、もう節穴じゃあ済まないUSクオリティである。

 というわけで、ところどころ、これは日本ではありえんだろうな、という点はあるものの、物語的にはかなり練られているし、役者陣の芝居振りも極めてよく、演出も緊張感があって、映画としてはかなり良かったと思う。最後にキャストと監督について軽くまとめて終わりにしよう。
 まず、主役は前述の通りGeroge Clooney氏。ちょっと軽薄な、だけど実際まともでいい奴、というキャラクターを好演していたと思う。やっぱりイケメンですな、このおっさんは。カッコイイのは間違いないす。これはモテますよ。ジャック犯の青年と人生を比べて、オレは金はあるよ? だけどもう3回離婚してるんだぜ? 君は可愛い彼女がいるわけで、どう考えたってキミのほうがリア充じゃん!! と、何とか時間稼ぎをしようとする姿は全然説得力なかったっすw
 そしてジャック犯の青年を演じたのが、Jack O'Connell君。まだ25歳だそうで、わたしは全然知らない俳優だが、どうも『300:Rise of Empire』に出ていたみたいですな。まったく記憶にございませんが。しかし今回はかなり熱演で素晴らしかったと思う。非常に悪くない。今後の活躍を期待したい若者だと思った。
 で、番組ディレクターを演じたJulia Robertsさんが今回非常にいい芝居だったのが印象的だった。この人、私より若干年上だけど、まあやっぱり、今でも十分お綺麗ですね。可愛いとさえ思える笑顔だし、プロのディレクターとしての芝居振りも非常にマッチしていて、観ていて、ああ、やっぱりJulia Robertsはいいな、と見とれてしまったぐらいだ。ま、実際の人間としての彼女がどんな人なのかは知るよしもないが、スクリーンで出会う彼女は今後もいい芝居を見せていただきたいと思う。
 最後。本作の監督は、かのJodie Forster女史である。監督何作目だろう……? TVを入れないと、4作目か。わたしは実は全然監督作品は観てなくて、初監督作の『Little Man Tate』以来だから、彼女の監督作品を観るのは25年ぶりか。今回の監督振りは、ズバリ言うと、大変良かった、緊張感もあったし、画づくりも堅実で、奇をてらったようなところはないけれど、しっかり真面目に撮られていたと思う。まあ、わたしとしては、Jodieで一番先に思い浮かぶのは、やはり『The Silence of the Lambs』のクラリス役だろうと思う(いくらわたしがおっさんでも、『TAXI DRIVER』はさすがにTVでしか観てません)。これも1991年だからやっぱり25年前か。えーと、今、Jodieは53歳ぐらい(?)だから……当時28歳か……可愛かったなあ……まあ、十分今でもお綺麗ですが、そろそろJodieが主演の映画も見たいですね。このところご無沙汰なので。

 というわけで、結論。
 Jodie Forster女史監督による『Money Monster』という作品は、わたしとしては大変楽しめた。脚本的にも良いし、キャストの芝居も上等、そして演出もグッド、である。なので、あまり文句はないのだが……強いて言うとですね、今日、わたしが観に行った地元のシネコンでですね、一番大きいスクリーンだったのですが、20人ぐらいしか入っていなくて、その中で、推定60代くらいのクソ親父が2回も携帯で電話し始めやがって、あやうく殺人罪を犯す寸前まで怒りが沸きましたが、何とかグッとこらえられたのは、映画が面白かったため、すぐに映画に集中できた故であると思います。危なかったわ……。以上。

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 ※なお『ハンニバル』と『ハンニバル・ライジング』は、イマイチ好きじゃないのでどうでもいいです。