以前も書いた通り、恐らくは誰もがその存在を知っている「宝塚歌劇」というものは、そのネームバリューの割には、その詳細についてはあまり一般的には知られていない部分がたくさんあると思う。例えば、宝塚市にある「宝塚大劇場」と日比谷にある「東京宝塚劇場」だけで公演を行っているわけではなく、他の劇場でも精力的に公演を行っているのだが、ご存知だろうか? その中には「全国ツアー」と呼ばれる公演というものがあり、その名の通り、日本各地の劇場を1日とか2日の公演で回るもので、我が地元の市川文化会館も、その全国ツアーがやってくる定番劇場のひとつとなっている。
 市川は、東京から1時間かからないぐらいの程近い場所にあり、年に1回か2回は必ず「全国ツアー」がやってくるのだが、わたしも地元民として、ああ、今度来るんだ、と思ってもチケットを取るのが非常に難しく、一度も地元で観たことはなかった。 が、今回、わたしのヅカ友の美しいお姉さまから、「チケット余っちゃったんだけど、どうかしら?」というお誘いがあり、おっと、市川ならオレ、地元なんで、チャリでいけるっす。買わせていただくっす。というわけで、なんの努力もせず、チケットを入手したわけである。それが、昨日の夜観てきた月組全国ツアー公演、『激情~ホセとカルメン/Apasionado!! III』である。
gekijoh
 ↑動画を探したのだが、ないっすなあ……というわけでポスター画像はこんな感じです。
 さて。今回は、わたし的には雪組に次いであまり縁のない月組である。月組は、現在TOPスターである龍 真咲さん(通称:まさお)が次の大劇場公演をもって退団することを発表しており、そのまさおちゃんは現在、ソロコンサート公演を梅田芸術劇場で行っているので(先月まで赤坂ACTシアター)、今回の全国ツアーには参加していない。そして今回の全国ツアーの主役を演じる珠城りょうさん(通称:たまきち)が、次の月組TOPスターに就任することも、既に宝塚歌劇団から発表されている。なので、事実上のTOPお披露目公演と言っていいだろう。そういう意味では、月組ファンの皆さんとしては、まさおちゃんのコンサートも、たまきちの全国ツアーも両方行かないと!! と嬉しい悲鳴であるのではなかろうか。
 しかし、星組を愛するわたしとしては、たまきちくんは94期生と非常に若く、確か、お相手の娘役月組TOPの愛希れいかちゃん(通称:ちゃぴちゃん)が95期生だから、これほど近い期のTOPコンビって珍しいのではないかなーと漠然と思う次第である。なにしろ、我が星組は、TOPスター北翔海莉さん(通称みっちゃん)が84期、娘TOPの妃海風ちゃん(通称:ふうちゃん)が95期と、歳の差カップルである。ちょっと気になったので、一覧にしてまとめてみよう。 
TOPスター 娘役TOP
星組 北翔海莉さん(84期) 妃海風ちゃん(95期)
花組 明日海りおさん(89期) 花乃まりあちゃん(96期)
宙組 朝夏まなとさん(88期) 実咲凛音ちゃん(95期)
月組 龍 真咲さん(87期)
→珠城りょうさん(94期)
愛希れいかちゃん(95期)
雪組 早霧せいなさん(87期)咲妃みゆちゃん(96期)
 とまあこんな感じなので、たまきちくんの若さはかなり目立つ存在である。わたしは月組公演に関しては、ここ数公演はずっと観ているが、毎回必ず観ているわけではないので、たまきちくんについても、あまり以前の活躍ぶりを意識していなかったので、今回のTOP指名で、へえ、それはちょっとチェックしないといけないなと思っていた。なので、今回の主役を張る全国ツアーは大変楽しみにしていたのである。
 しかし改めてまとめてみると、現在のTOPの中では、現・花組のみりおちゃんが最古参TOPスターか……はーーー時が過ぎたのう……かつて月組でまさきちゃんとともに、切磋琢磨していた二人だが、まさきちゃんが退団して、みりおちゃんが最古参TOPとは……。そして94期のたまきちくんがTOPになるということは、わたしが愛してやまない星組の礼 真琴ちゃん(95期)も、TOPになれる日が近づいているかもしれないっすな。その日が来ることを楽しみに待っていよう。
 
 で。今回の公演である。結論から言えば、かなり良かった。たまきちくん、若干ガタイが良い系の男役としては比較的王道といって良いのではないかと思う。歌もダンスも、いいじゃないですか。「カルメン」だけに、フラメンコがダンスの基本になるわけですが、かなり良いですね。これなら安心ですな、と上から目線で思うわたしは月組ファンのお姉さまたちに殺されるのは必至だが、ともかく非常に良かったと思う。しかし本当に若さあふれてますね。もう少し貫禄と、なんというか色気のあるエモーショナルな芝居? が身に付いてくればもう完璧だと思う。
 そんな風にわたしが偉そうに言うのはひとつだけ理由がありまして。
 実はこの、『激情~ホセとカルメン』という作品は、2回目の再演で、初演が1999年の宙組で、このときのTOPスターが姿月あさとさん&花總まりさん。この公演はわたしは観ていない。で、1回目の再演が、わが星組の柚希礼音さん&夢咲ねねちゃんのLEGENDコンビで、わたしはこの公演は観た。先週も書いたとおり、わたしは柚希礼音さん、通称ちえちゃんが大好きだということもあるのは間違いないのだが、この『激情』のちえちゃんがスーパー・ウルトラ・カッコイイんすよね。そしてねねちゃんの芝居も本当に素晴らしい大傑作だとわたしは思っているのだが、特に、もう怒鳴ってんじゃね? というぐらいの「ジェラシー」の熱唱シーンは失神モノである。比較するのは、たまきちくんに対して大変失礼であることは承知しているが、やっぱりちえちゃんの超絶なカッコよさが脳に鮮明に焼き付いているので、今回偉そうなことを申し上げた次第です。サーセン。でも、ほんと、たまきちくんも大変よかったと思います。ちょっと今後は月組も応援していきたい所存である。そういえば、ちえちゃんVerのときに星組生として出演していた早乙女わかばちゃんは、おととし月組に異動になって、今回も出ているので、唯一の前回との連続出演キャストかな、ひょっとして? 彼女も大変可愛いです。
 お話の方は、ビゼーのオペラや、映画にも何度もなっているProsper Merimeeの小説『カルメン』が原作である。これは、月組の前回の大劇場公演『舞音』とちょっと話が似ている。ともに、いわゆるファム・ファタールと出会ってしまった男の破滅の物語だ。なので、主役はある意味、そのファム・ファタールを演じる娘役とも言える。文学史上非常に有名なファム・ファタールとして名高いマノンとカルメンの二人をを演じたちゃぴちゃん。彼女は娘役としては非常に背が高いなーと思っていたら、どうも一度、男役をやっていたこともあるそうですね。へえ。なるほど。しかしやはり、非常にスタイルが良く、顔も小さく、非常に別嬪さんである。とてもいいですな。
 というわけで、毎度お馴染みの、今回のイケ台詞の発表です。
 ※イケ台詞=わたしが「かーっ!! カッコええ!!」と思った台詞のこと。
 「あたいは……あんたに惚れたわ!!」(そしてブチューーとキス)
 今回は、初めて娘役からのイケ台詞ですが、カルメンのこの台詞が、今回わたし的に一番グッときました。あたい……いいすね、あたい……現実世界では、まだわたしは、「あたい」という一人称を使う女子に出会ったことがないが、出会ったら100%惚れると思います。オレもお前に惚れたぜ!!
 最後に、自分用備忘録。初めての全国ツアーは大変楽しめた。ショーでの手拍子なんかは、大劇場公演より盛り上がってたのでは? と思うぐらい会場ノリノリであった。そして噂で聞いてた「5段しかない大階段」も初めて観た。いいすね、アレも。チャリで行ける場所でヅカ鑑賞というのも大変有り難しである。車は置けないかなと思ってたのに、余裕で駐車場に置けるようだったので、次は車で行こっと。駅から微妙に遠いので、車で行けばお姉さまたちを駅まで送れるしな。

 というわけで、結論。
 月組全国ツアー『激情~ホセとカルメン』はわたしとしては思わずちえちゃんVerと比べてしまったのだが、お許しいただきたい。しかしそれでも、たまきちの次期TOPとしての熱演は非常によかったと思います。カッコイイのは間違いナシです。ちゃぴちゃんもわたしとしては大変気に入りました。もちろん、ねねちゃんVerも素晴らしかったですけどね。ねねちゃんVerの方がもっと悪女っぽかったかな。久しぶりにまたBlu-rayでちえちゃんVerも観てみたくなりました。お話的に分かりやすいし、ヅカ初心者にもおすすめっすね。以上。

↓映画も数多くあるけれど、基本はオペラですね。 
ジョルジュ・ビゼー:歌劇《カルメン》[Blu-ray Disc]
クリスティーネ・ライス
OPUS ARTE
2016-03-30

↓ そして原作はこちらっす。大学2年か3年の頃に読んだ。わたしも持ってる岩波文庫版は非常に読みにくい。
カルメン (岩波文庫 赤 534-3)
プロスペル・メリメ
岩波書店
1960-12-05