というわけで、毎週月曜日は恒例の週末映画興行データです。
 今週末は洋画の公開がいくつかあったものの、金額レベルでは相変わらずちょっと厳しい状況が続いています。とはいえ、『オデッセイ』が2週連続1位なのは大変うれしいことです。 後半では、日本の3大メジャー映画会社の第3四半期決算をちょっと振り返っておきます。

 ではさっそく、いつもの興行通信社の大本営発表から。
 1位:『オデッセイ』:11日間累計で 16億を超えたか。何度も書きますが、大変素晴らしかったので、ぜひご覧いただきたい。先週、30億±2億ぐらいかなと予想しましたが、とりあえず変更なしとしておきます。
 2位:『信長協奏曲』:23日間合計で32億まで行ったそうです。先週35億~40億ぐらいと予想しましたが、すみません。これはもうチョイ行きそうですね。4週目の数字は去年の『HERO(最終46.37億)』と同レベル。凄い!!
 3位:『さらば あぶない刑事』:16日間合計で10億超えたらしい。 最終予測は前回ママの20億に届くかどうかぐらい。
 4位:『スターウォーズ/フォースの覚醒』:59日間合計で108億ぐらいか? やはり最終的に110億近辺という最初の予測通りかも……。
 5位:『Born in the EXILE 三代目J Soul Brothersの奇跡』が1.9億稼いで5位。いわゆるODS扱いなのかな。凄い人気だなあ。
 6位:『残穢――住んではいけない部屋』:16日間合計で4億届かずぐらいだと思う。厳しいかも。
 7位:『妖怪ウォッチ』:58日間合計で53億台ママか? さすがに勢いも止まったか……。
 8位:『ブラック・スキャンダル』:16日間合計でこちらも4億届かずか。厳しいかも。
 9位:『パディントン』:31日間合計で6億は突破したか?これは粘った!
 10位: 手裏剣戦隊ニンニンジャーVSトッキュウジャー』:23日累計で3億チョイ?
 ほか、
 11位:『キャロル』:公開からの4日間で0.5億。鑑賞済み。超おススメ。非常に良かった。公開規模も小さく、数字的に大変厳しいので、皆さん観に行きましょう!!
 13位:『スティーブ・ジョブス』:公開週末で0.3億程度? これも厳しい……。
  『ドラゴン・ブレイド』は圏外で数字不明。公式サイトで数えたら公開規模は現状62Scrらしい。オレの愛するジャッキーが……つらい……。観に行かないと!!

 とまあ、今週末は以上のような感じだったようです。
 なお、US本国でのこの週末の数字なのですが、いろいろなサイトでも取り上げられている通り、あの映画が公開されて、かなりの数字を稼いだようです。あの映画とは……『DEAD POOL』のことです。アメコミ好きならお馴染みですが、普通の方のために説明しておくと、かの「X-MEN」に登場するイカレたミュータントのことで(見かけは「変態仮面」っぽいw)、実は『X-MEN ZERO:WOLVALINE』にも登場していたのですが、そこでも同じ役を演じたRyan Reynoldsによって単独映画化された作品です。これまた血まみれなんだよな……なので「R指定」作品ですが、記録的なヒットとなったようで、US本国は大盛り上がりだそうです。日本公開は6月予定だそうですが、まあ日本じゃ全く売れないだろうな……。

 さて。
 先々週から予告していた、日本の映画御三家である東宝・東映・松竹の第3四半期決算が発表されたので、自分用メモとして以下まとめておきます。まずは数字をずらっと並べておこう。なお、東宝と松竹は2月決算なので、第3四半期=2015/03~2015/11の9ヶ月で、1月には数字が出てました。東映が3月決算で2015/04~2
015/12間での数字で、つい先週公開されました。
 ※Tableタグで書いてもどうやっても見にくいので、いっそ画像にした。クリックで拡大。toho_dat
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 この3社はご存知の通り歴史も古く、映画だけにとどまらずいろいろな事業を展開している会社だが、それぞれセグメントのくくり方が微妙に違うため、なかなか比較がしにくくて、ちょっと厄介。
 東宝と松竹はほぼ同じで、映画事業と不動産事業と演劇事業が3本柱になっている。演劇について一応言っておくと、東宝は帝劇をはじめとしたミュージカルメインの演劇ラインナップがあって、それなりに高稼働で年間150億に届かないぐらいの売上を上げている。営業利益率も20%近くあって非常に優秀。ハコを持ってる=ロングラン可能というのは強いですな。松竹の演劇は、誰もがご存知の歌舞伎がメイン。歌舞伎座や新橋演舞場、大阪松竹座、京都南座を中心に、これまたシニア&団体中心に高稼働を誇っている。FY2012からFY2013の松竹の演劇が超伸びているのは、歌舞伎座が新築落成したため(工事中は当然売上ナシだった)。
 で、ちょっと独自のセグメント設計をしているのが東映。「映像関連事業」は誰でも分かるだろうからいいとして、「興行関連事業」とは何かというと、決算短信によると、これは要するに東映の運営する映画館・シネコンのことらしい。要するに「T-JOY」ですな。東宝も松竹も、それぞれ「TOHO-シネマズ」「MOVIX、ピカデリー」という映画館・シネコンを持っているけれど、この2社は、映画館の業績は「映画事業」に含めているのです。ここがちょっと違う。実のところ、現代の映画館は非常に苦しい経営で、赤字のところも全然普通に存在しているはず。東映の「興行関連事業」の営業利益率が低いのはある意味当然で、むしろ今回の第3四半期で10%以上の営業利益率をたたき出しているのは相当頑張ったとみることができる。今回の第3四半期は、東宝と松竹が2015/03~2015/11まで、東映が2015/04~2015/12まで、の9カ月なので、まあ春から夏の大ヒット映画が貢献してくれたのだろうということは容易に想像できる。おそらく、通期決算になれば、年末の『スター・ウォーズ』や『妖怪ウォッチ』なども含まれてくるので、映画館の経営的にはもっと良くなるであろうと思います。
 さてと。
 実は今回、なんでまたこの3社の決算比較をしてみようと思ったか、というとですね。東宝の「映画事業」の数字に注目してほしいのです。松竹はずっと、「映画事業」の営業利益率は10%届かず。東映の「映像関連事業」+「興行関連事業」の営業利益率は、今回は特別良くて14.8%、それ以前はずっと10%前後だった。けど東宝の「映画事業」はずっと14%程度を維持していて、今回の第3四半期は18%を超える超優良事業になっている。これだけ違う理由は何か。
 第1の理由は、以前年間ランクで挙げた通り、ヒット作がダントツに多いから。これは当然。
 そして第2の理由としてわたしが推測しているのは、「東宝がアニメに本気になったため」だと考えている。なお、わたしが言う「アニメ」は、劇場アニメではなく、主にTVアニメのことで、2013年から、東宝はいわゆる「コアアニメ」(=深夜放送の、マニア向けアニメ)に本気になり始め、『弱虫ペダル』や『ハイキュー!』『PHYCO-PASS』『血界戦線』といったヒットを順調にかましていて、イベントやお皿(BDとかDVD。最近はあまり売れないけど)や権利許諾の売上も急激に伸びた点が大きい。これが今やすっかり柱の一つになって稼いでくれているのが、東映や松竹と違うところだと思う。
 実はこれだけ言いたくて今回数字をまとめてみました。
 なお、もちろん、東映には古豪の「東映アニメ」があって、『ドラゴンボール』『ワンピース』という巨大IPを持っているのだが、これらはもうずっと以前から数字には入っていて、その分、松竹より利益率が高かったのだと思う。まあ、東映アニメ系の作品は、お皿が売れるようなコア層向けではなく、基本は権利系の売上で、利益率的にはコア層向けよりは低いことが想像できると思う。なお、東映のそういったキッズコンテンツは、特撮モノ(仮面ライダーとか)を含め、今後は配信での収入がどんどん伸びると思うので、たぶん、東映の映像関連事業はもっと利益率が向上していくと思う。過去のキッズIPが配信でガンガン稼ぐというのは、東映だけの強みと言えそうな気がします。松竹のアニメは、単発ではデカイ作品が多いけれど(『けいおん!』とか『ラブライブ』とか)、シリーズ展開がちょっとさびしいですね。もちろん『ガンダム』は松竹だけど、劇場配給だけで他の権利は持ってないからね……。

 というわけで、なんだか数字の投げっぱなしですが、結論。
 『オデッセイ』をまだ観ていない方は、今すぐ劇場へGO!! でお願いします。そしてわたしとしては『CAROL』を強くおススメします。そして、東宝は本当に強いですな。脱帽です。以上。 

※今日はおススメ商材特になし。