わたしは映画の情報をいろいろなサイトから得ているが、予告編だけを集めたTrailer Addictというサイトは、少なくとも週に一回はチェックしている。公開前の新作は、予告編が公開されるとほぼ必ずこのサイトに登場するので、とりあえずこのサイトをチェックしていれば、大体の映画の予告は観ることができるので重宝している。
 で、たしか2013年の終わりごろ、このサイトにとある映画の予告編が登録され、わたしもすぐに観て、なんじゃあこりゃあ? と思った作品がある。その予告編を観た時は、ははあ、こりゃあエロ&グロのドD級映画で、日本公開はされないだろうな、と思っていたのだが、まったくわたしが知らない間に、2015年2月(?)に公開されていて、先日WOWOWで送されたので、録画してみた。原題は『NURSE 3D』。日本公開タイトルを『マッド・ナース』という作品である。

 上記の日本版予告は、センスゼロのD級臭がぷんぷんするものだが、字幕やキャッチのセンスがひどすぎるが故にそう見える、とも言える。US版予告の方がもうちょっとマシに見えるので一応紹介しておこう。

 どうですか? 比べるとずいぶん印象が違うでしょ? ただ、この映画を、いわゆるおバカムービーとして、世の好事家どもの目を引くために、敢えてセンスゼロの日本語版予告を作った配給の意図も分からないでもない。そうでもしないと、まったく人目につかないだろうし、実際のところ、くっそつまらない作品だからだ。上映時間は100分弱。まさにこれはまったくもって時間の無駄映画であるとわたしは断言してもいい。とにかく、いろいろなところが残念と言うか惜しいのだ。わたしならば、もうちょっとマシな作品に出来たと思う。と、まあ、いつも通りの言うだけ詐欺理論を以下に展開してみようと思います。
 まず、物語。脚本である。実は脚本的には、そんなにひどくない。実際似たような話はよくあるもので、きちんとしている。妙な飛躍や矛盾はなく、小説化したら面白いモノが出来るような気さえする。
 なので、ダメなのは、役者と監督だ。
 まず何と言っても、主役の狂っているナースを演じたPaz de la Huerta嬢が0点であろう。たしかに、そのボディーやファッションは、くっそエロイ。男としては、もうこんなナースがいたら、確実に目をそらさざるをえない。そのエロさ、極めて上物である。が、まず顔と髪型はダメだ。まったく美人でないし、なんか萎えさせるものがある。これは女性の目から観てもそう思うのではないかと思う。どうも、どこかで見た顔だと思っていたのだが、『PLATOON』のバーンズ軍曹でお馴染みのTom Berenger氏に似てるような気がする、とさっき発見した。似てないかな? というわけで、体は凄いけど、顔を見たら、チェンジを願いたい類のものであるので、わたしならこの方を起用しないだろう。そしてもうひとつ、この女優で致命的なのは、演技である。端的に言うと台詞のしゃべり方だ。あまりに下手でたどたどしく、わたしはその名前とひどいしゃべり方から、ああ、この方は英語が母国語じゃないんだろうな、と思った。しかし調べてみると、NY育ちの生粋のメリケン人であった。ということは、結論としては演技はド素人レベルということなのだろう。もし、主役が、このイカレナースに狙われる美人ナースを演じた女優がやっていたなら、もうちょっと違うというか、もっとよりそそる映画になったのではないかと思った。アカン。チェンジで。
 そして監督である。もうめんどくさいので、この監督のことを調べる気にもならないが、演出もまたド素人レベルである。無駄に過剰な露出を多用した光あふれるキラキラ感、無駄にスローモーションを使う安っぽさ、無駄に血まみれなD級感など、もう初めてビデオカメラを買ってもらった高校生が撮るレベルと変わらないものだった。なお、この映画の原題で分かるとおり、US公開時は3D作品として公開されている。こういう題材を3Dで撮ろうとした山師的センスは嫌いじゃない。3Dの飛び出しを意識した、無駄な3D用演出もいっぱいあるが(例えば喉からはさみがジャキーンと飛び出すとか)、いかんせんチープすぎてもうどうしようもない。せっかく、エロシーン満載なのだから、おお、こういう3Dの使い方があったか!! と唸らせるような、もうちょっと斬新な3D演出を考えて欲しかった。日本では3D版の公開はなかったようだが、まあ、わたしとしては3Dで観たかったけれど、この程度の3D演出なら通常公開されただけでもありがたいと監督は思うべきだろう。
 なお、衣装デザインは、フィリピン出身のZaldy Gocoという男が担当しているのだが、ナース服はピツピツの超ミニだし、私服もふくめてとにかく、くっそエロイ。このデザイナーは、マイケル・ジャクソンのステージやシルク・ド・ソレイユ、あるいはLady GAGAちゃんの衣装を担当したこともあるそうで、この映画でも、まあ唯一? の見所であったかもしれない。悪くないです。そのエロさは。

 結局、日本では完全にイロモノ作品として小規模公開にとどまったが、たぶん、まったく同じ脚本でも、主演女優と監督が別であれば、普通に面白いセクシー・サスペンス映画として普通に公開できたと思う。実に残念である。もうひとつついでに残念なことと言えば、WOWOW放送で観たので、R+15レベルに抑えられており、まるで深夜放送のオタク用萌えアニメのような、「謎の光」が多すぎて、非常に興ざめであったことを記録にとどめておこう。まったくもって、勘弁していただきたいものであった。

 というわけで、結論。
 『NURSE 3D』、日本公開タイトル『マッド・ナース』は、実に観る時間がもったいないクソ映画であった。脚本が普通にしっかりしているだけに、主演女優のイマイチさ、演出のチープさが極めて残念であった。一流女優&一流監督なら、間違いなく普通に面白かったと思います。以上。

↓なるほど、Blu-rayでは「謎の光」解禁版があるんですな。ほんと、そんな点もオタクアニメみたいだ。しかしどうせなら、3D版の発売もあってしかるべきだろうに……。
マッド・ナース [無修正版] [Blu-ray]
パス・デ・ラ・ウエルタ
ポニーキャニオン
2015-05-02