サニー千葉と呼ばれる男がいる。
 知ってる人は知ってるだろうけど、知らない人は知らないので(そりゃ当たり前か)説明すると、80年代のTVや映画で恐ろしくカッコイイ男を演じ続けた千葉真一氏のことである。80年代、わたしは小学生から高校生であったわけだが、当時、わたしは、例えばテレビの『影の軍団』だとか、映画では『伊賀忍法帳』や『里見八犬伝』のような当時の角川映画でよくあったトンデモ時代劇が好きすぎてたまらなかったわけだが、ほぼすべての場合、リーダー的なキャラクターは常に千葉真一氏であった。そしてその弟子的な若い主人公はたいていの場合、真田広之氏(か、または黒崎輝氏)で、彼は今のハリウッド進出を果たした国際スター真田広之氏とはある意味別人のバリバリアクション野郎だったわけである。
 で、それらのTVドラマや映画でアクションを一手に担当していたのが、千葉真一氏率いる「Japan Action Club」通称「JAC」である。実はわたしは高校3年の夏休み前に、 JACに入ろうとしたことがあった。当時、JACの事務所が代官山と恵比寿の真ん中、いや、恵比寿のほうが全然近かったかな、とにかくその辺りにあって、一度入所申込書をもらいに行ったことがある。そして帰ってきて、申込書をよく読んでみると、どうやら入所にあたって、前金でたしか60万ぐらいだったかな、入所金30万+月謝?が5万×半年分前払い、みたいな感じだったと思うが、とにかく当時のわたしにはとても出せるような金額でなかったと記憶しているけれど、結構な大金が必要なことがわかった。ので、ちょっと母親に話してみたところ、まあ国立大学に合格したら考えてやってもよいという約束を取り付け、ようし、やったるぜ! とそれなりの努力をしたものの、わたしは見事第一志望の国立大学に落ち、無事にJAC入りは出来なかったわけだが、あの時、本当にJACに入っていたら、今頃どうしてただろう……と、たまーに思うことがある。 

 そしてここに、わたし同様にサニー千葉の大ファンだというハリウッドスターがいる。その名もKeanu Reeves氏。Web上ではボッチ野郎として大人気の、あの男である。彼は、わたしの知る限り今年に入って3回、日本にやって来ている。どうも彼は日本が、本当に大好きらしいのだ。
 1回目は、2月ぐらいだったと思うが、なんとKeanu氏がロケだかロケハンだかで、日本に現れ、秋葉原や皇居周辺等での目撃情報がWeb上に寄せられ、一時大変な話題になったことがあった。彼はWikipediaによると、帝国ホテルと味噌ラーメンをこよなく愛しているそうで、来日したら必ずラーメン屋に出かけるそうだ。なにやってんすかKeanuさんw !! ちょっとWeb検索すると、そんな写真がいっぱい出てくる、愛すべきおかしな野郎である。
 2回目は、かの鈴鹿8時間耐久レースが開催された7月の末のことである。バイク好きとしても知られるKeanu氏は、自らがプロデュースするバイクを持って来日し、鈴鹿を爆走したのだ。なにやってんだこの人w ちょっとおかしいでしょ。詳しい記事はこちらを見てください。Web上でまことしやかに語られる数々の「ボッチ伝説」が本当なのか知らないけど、バイクとKeanu氏はよく似合う。やっぱりイケメンはボッチであろうと絵になる。ニクイ奴だ。(※注:一応解説しておくと、「ボッチ」とは、一人ぼっち、の略で、まあ要するに、友達のいない、いつも一人でいる人のことを意味する言葉である。まあ、わたしもたいがいボッチですけどね)
 そして3回目が、今月10月頭の新作映画のプロモーションでの来日である。この来日では、日テレの「Zip」の取材に応えているのだが、日テレが気を利かせて、サニー千葉をその取材の現場に呼び、Keanu氏にドッキリご対面をセッティングしたのである。これもWeb上で非常に話題を呼んだのだが、その時の彼のテンションの上がりっぷりは、非常にほほえましく、わたしもYouTubeにUPされていた違法動画でその姿を見たが、まさしく少年のようにはしゃぎ、サニー千葉こと千葉真一氏に対面した彼は「ハジメマシテ! マエストロ!!」と挨拶し、大興奮であったのが印象的であった。これも、ちょっと検索すればその時の映像が見つかると思うので、観ていない人はぜひチェックしていただきたい。

 というわけで、わたしも非常に、勝手に親近感を抱いている男、そして、なにげにその動静が気になるKeanu Reeves氏の最新作『John Wick』を昨日の夜、観て来た。

 すでに、予告で散々示されているように、ストーリーはごく単純で、元凄腕殺し屋たるKeanu氏が、愛する妻を亡くし、亡くなる間際にプレゼントしてくれたわんこと静かに人生を送ろうとしているのに、トラブルに巻き込まれ、怒り心頭に達し悪党をぶっ殺しまくるという話である。なんか最近そういう映画が多いと思うが、あきらかにそれは、戦うお父さんでおなじみの『Taken』(邦題:96時間)の大ヒットの影響であろうと思う。わたしが知るだけでも、そんな映画はここ最近でも3つある。
 1つ目の『Taken』は、マスター・クワイ=ガン・ジン、あるいはラーズ・アル・グールやオスカー・シンドラーでおなじみのLiam Neeson氏がスーパー親バカぶりを発揮して暴れまくる映画だ。原題『Taken』の通り、「誘拐された」娘や奥さんを助けようとするスーパー・ダディ大活躍ムービーである。3作目まで作られたこのシリーズで、Liam Neeson氏は主人公・ブライアン・ミルズをカッコ良く演じてくれたわけだが、設定としては、元CIA局員である。まあ、一応正義側、と言ってよかろう(まあ、CIAなので極めてグレーだけど)。今は引退して静かに暮らしている主人公だが、家族のために、今また、伝説の男がよみがえる!! 的な話だ。実際最高に面白いです。
 2つ目は、「狼と踊る男」ことKevin Costner氏主演の『3 Days to Kill』(邦題:ラストミッション)である。ま、実際のところ『Taken』と同じような話なので詳細は割愛するが、やはり主人公はCIA局員で、はっきり言ってよく覚えていないのだが、確か現役なんだけど、余命いくばくもないと知って、娘と仲直りするために引退しようとして、最後の任務を引き受ける話じゃなかったかな。 で、また娘が拉致されて、父親大激怒&大暴れ、みたいな。ま、この映画ははっきり言ってどうでもいい出来で、あまり面白くない。
 3つ目が、これは非常に面白かったのだが、オスカー俳優Denzel Washington氏主演の『The Equalizer』だ。ここでの主人公はやっぱり元CIAの超敏腕エージェント。過去を捨て、ホームセンターで真面目に働きながら静かに人生を送る男が、不眠症に悩みながらも毎夜通うカフェで出会った少女を助けるために、自らの持つすべてのスキルと人脈を生かして、少女が隷属させられているロシアン・マフィアと大喧嘩する話である。この映画は、元々アメリカのTVドラマ「ザ・シークレット・ハンター」を映画化したものらしいが、ヒロインたる薄幸の少女を、天下のブサカワ・ガールとして大人気のとChloe Grace Moretzちゃんが可憐に演じており、また主人公Denzel Washington氏もやたらとカッコ良く、非常にわたしとしては楽しめた映画であった。
 よく考えると、そういえばかのArnold Schwarzenegger氏主演の伝説の名作『COMMANDO』も、娘と静かに暮らす元軍人が、娘を誘拐されて大激怒&スーパー大暴れする映画であった。やっぱりこういった系譜の元祖は、この映画かもしれないね。何しろその大暴れぶりは「一体何が起こるんです!?」「第三次世界大戦だ!!」という名セリフでも明らかなように、ま、ありゃあ戦争だなw この映画は、ぜひとも日本語吹き替え版で見ていただきたい。超・名言の宝庫で、いまだにWeb上ではそのセリフ回しが様々に引用されている、レジェンド・ムービーである。

 というわけで、こういう【怒らせた相手を間違えました、サーセン】ムービーは、わたしとしては非常に好きであるし、なにより主人公が強くて、いわゆるカタルシス、「観終わってすっきりする」映画がやっぱり観客としては最高であろうと思う。今、ふと思い出したが、日本の、かの白土三平先生による名作漫画『カムイ外伝』なんかも、意外とこの系統に入る作品だと言っていいのかもしれないな。要するに、古来からある伝統的なモチーフであると言えるのではなかろうか。
 で、今回の『John Wick』も、まさしく【怒らせた相手を間違えました、サーセン】という映画である。ちょっと先に挙げたハリウッド映画と違うのは、主人公ジョン・ウィックは、元CIAや軍人といった正義サイドの人間ではない。詳細は良くわからないが、プロの殺し屋、である。そういう意味では、純然たるBADGUYだ。しかも、殺し屋を殺す男で、劇中に出てくる殺し屋ギルド的な(?)組織で最上位に位置していた男、らしい。なので、主人公を狙う連中は、主人公が何者か分かってて襲ってくる。敵わないってわかってるのに、なんでまあ、無駄な戦いを挑むのかな……とわたしは観ていて思っていたのだが、案の定、基本瞬殺で返り討ちである。やめときゃいいのに……一番悪い奴は、ジョン・ウィックに喧嘩を売ったチャラ男だって、みんな分かってるんだから、素直に差し出してやれば、みんな死なずに済んだのに……バカなチャラ男はそのボス的な男の息子なわけだけど、最初はボスも、ジョンに手を出したバカ息子に激怒して、いやあ、うちのバカ息子が申し訳ない、と謝ろうとするシーンがあるから、さっさと引き渡すのかと思ったのだが、ま、そうなったら映画はそこで終わっちゃいますわな。まあ、ボスとしてのプライドなのかわからないけど、死んじまったらお終いでしょうに。なので、物語的には、若干無理矢理感が強く、脚本には問題アリ、ではあると思う。だが、キャラは非常に立っており、Keanu氏のアクションのキレや、競演陣の渋さ、また演出も結構光るものがあって、基本的にはわたしは大満足です。面白かった。
 ところで、この映画では、ちょっと面白い設定がいくつかあって、その殺し屋ギルド的な組織(?)が所有するホテルがマンハッタンにあり、そのホテル内での「仕事(=殺し)」はダメ、という掟があるのだが、そこのホテルでのやり取りは非常に面白かった。オーナーやフロントの男が非常にイイ味を出している。あと、Keanu氏扮する主人公が、「あれっ!? ジョンさん、ちっす!! 復帰っすか!?」といろんなところで昔なじみに聞かれまくるのも、なんかちょっと面白い。その度ごとに、「いや、ちょっと立ち寄っただけさ」みたいな返答を律儀にするKeanuもイカしてます。また、主人公ジョン・ウィックの親友として出てくる男をWillem DaFore氏が恐ろしく渋く演じていて、大変カッコ良かった。この人は本当にいい感じに年齢を重ねていると毎回思うが、こういった軍人や殺し屋役以外にも、いろんな役ができる優れた俳優だと思う。もともとは舞台の方が好きみたいですな、この人は。だからなのか、なにげに演技派だと思う。あと、ボスを演じた俳優は、Mikael Nyqvist氏というスウェーデン人の役者で、この人はかの大ベストセラー『ミレニアム』シリーズ3部作の、スウェーデン版映画で主役を務めた男である。ハリウッドリメイク版では007ことDaniel Craig氏が演じた主人公だが、まあ、もちろんビジュアルはDaniel Craig氏の方がカッコイイのは間違いないけれど、原作の雰囲気はやっぱりスウェーデン版のMikael Nyqvist氏の方が合ってると思うな。

 というわけで、結論。
 『John Wick』は、まあちょっとした物語上の無理矢理感がアレですが、基本的には観終わってすっきりできる、王道の映画であったと思う。日々、イラつくことの多い方は、心の中で、死ね! と叫びながらKeanu氏になったつもりで映画に没入していただきたい。すっきりすると思うよ。

↓ 全然関係ないが、Liam Neeson氏主演で一番好きな映画はこれです。最高。でもマイナー? なのかな、Blu-rayは出てないっぽい。くそう、超・最高なのに!!
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2012-05-09