いきなりで大変恐縮ですが、「富士額:フジビタイ」って、分かりますよね?
 ↓こういうの。
beji-ta
 まあ、この画像は、わたしが「富士額」と聞いて、真っ先に思い浮かぶキャラクターの画像を、ちょっとそのおでこだけを切り取った違法画像なのだが、要するに、額(ひたい)の真ん中に、ちょろっと髪が侵食? していて、その様が富士山みたいだというビジュアルをイメージしていただければ良いだろう。実際、そういう人はいっぱいいる。わたしの高校時代の友人で、柔道部で、3年間ずっと坊主で、その人を思い浮かべると坊主頭しか浮かばない男がいるのだが、彼も、髪の生え際が一直線なんだけど、なぜか中央部分だけちらっと▼になっていて、富士額の人を見かけると、いつもこの古い友人のことを思い出してしまう。残念ながら、わたしの場合は、近年、髪の生え際が後退していく厳しい状況にあり、たんなるM字ハゲになりかかってるだけなんじゃないかという、もはや人生終了にも等しい極めて深刻な疑惑があるが、ま、とにかくこういうおでこの人はいっぱいいるし、江戸時代の浮世絵においては、富士額は美人女子の条件の一つだったそうな。
 
 なんでこんな話をしているかというと、わたしが昨日の夜、ぼんやりと見ていた映画の主人公が、きわめて立派な富士額であり、この俳優を見かけると、いつもわたしは、その高校の時の富士額の友人のことを思い出すからだ。
 というわけで、問題です。↓ この部分だけで、コイツが誰だかわかりますか?
colin02
 これだけで、この人が誰だか分かったら、十分に、人から「映画好き」と呼ばれる資格はあると思う。ヒントは「富士額」と「超・下がり眉」である。この役者は、実際のところBrad Pittによく似ているとわたしは常々思っているが、Brad Pittではない。髪と眉の色が、Brad Pittはもうちょっと明るいと思う。ここまで濃い色で、クドイ顔ではない。




 というわけで、正解は……↓この人ね。
 colin01
 えっ!? 顔全部見てもわからない? だとしたら、あなたは「映画好き」という看板は今日限りで下ろしてもらおう。この男は、Colin Farrellというハリウッド俳優である。なんかいつも困っている富士額野郎として、わたしの中ではおなじみだ。おそらくColin Farrellは、「下がり眉の困った顔選手権・世界大会」が開催されたとしたら、セクシーハゲでおなじみのNicolas Cageと、優勝を争う事になるのではないかと密かににらんでいる。
 というわけで、昨日わたしが観た映画でも、Colin Farrellは非常に困った顔というか、哀しい顔が印象的な演技を披露してくれたのであった。その映画のタイトルは、『Winter's Tale』(邦題:ニューヨーク・冬物語)である。

 この映画は、2014年5月に日本で公開されたもので、わたしも予告編を観てちょっと気になっていたのだが、残念ながら公開規模が小さくて、あっという間に見逃してしまった。で、今年の5月ぐらいだったかにWOWOWで放送されたのを録画しておいたものの、なんとなくHDDに埋もれてしまっていて、観る機会はなかったのだが、実は来月、ちょっとニューヨークに行くことになったので、そういやタイトルにニューヨークと入った映画があったな……とふと思い出し、ああ、そうそうこの映画だ、ということで、観てみるに至ったわけである。
 この映画は、改めて観てみてちょっと驚いたのだが、バリバリのファンタジーであった。そういえば確かに原題は『Winter's Tale』である。そして物語は、Once upon a time....から始まっており、まったくもっておとぎ話めいた雰囲気を持つ不思議な映画であった。

 物語は1895年のNYから始まる。とある夫婦が新天地アメリカに移住してきたのだが、結核にかかっていて入国を拒否される。せっかく夢見たアメリカなのに、強制送還の憂き目にあう若い夫婦は、せめて赤ん坊の我が息子だけでもアメリカに残したい、と、模型の船に赤ん坊を乗せて、帰国してしまう(……ここは突っ込まないでください。わたしも、ええっ!? とびっくりしたけど、ここを否定すると映画は終了です)。で、時は流れ1916年、成長した息子は何とか生き延びており、どうやら泥棒を生業として生きているらしい。そして、どうも所属するギャング団から抜けようとしていて、追われる身らしいという事が描写される。この時点で、観ているときは全く気にならなかったが。改めて考えると主人公は20歳だか21歳だかであるが、演じているのは、Mr.富士額ことColin Farrellである。1976年生まれらしいから、この映画公開時は38歳か? えーと……まあ、細けぇことは気にしないでおこう。
 で、そのギャング団を率いるボスを、Russel Crowが演じている。どうも良くわからないが、ボスは主人公にご執心である。その理由は冒頭ではまだわからない。主人公は逃げ回り、いよいよ万事休す、というところで、非常に美しい、真っ白な馬に出会う。どうやら、乗れ、と言ってるらしい白馬にまたがると、とんでもないジャンプで追っ手を躱し、逃走に成功する。ここでわたしは、あ、この映画はファンタジーなんだ、と気が付いた。何しろ白馬がスーパー大ジャンプをかますときに光の翼が表現されるのだ。なるほど、そういう話なのね、とだんだん分かってきたぞ。
 そして主人公は、とっととNYマンハッタンからおさらばしたいのだが、白馬はとある屋敷の前から動かない。なんだよ、この屋敷に忍び込んでなんか金目のものでも盗んで、路銀の足しにしろとでもいうのか? 白馬の意志を何故かそんな風に解釈した主人公は屋敷に潜入し、物色しようとしたところで、一人の美しい――がしかし、既に死の病に侵されて余命いくばくもない――女子と出会い、恋に落ちる。

 こんな話である。そして物語は後半で、「奇跡」をめぐる天使と悪魔の対立というファンタジックな展開となる。ここは、ちょっと正直分かりにくいのだが、ゲスト出演でちらっと出てくるWil Smithが、「判事」と呼ばれる悪魔(?)を演じていて、その判事のもとにRussel Crowがやって来て、ちょっとした許可を求めシーンがあるのだが、そこは非常に面白かった。ちなみにRussel Crowも魔族らしく、階級的には判事の方が偉いらしいことも描かれる。また、どうやら元天使で、堕天した男なんかもいて、まったくもってライトノベル的なファンタジーだった。

 クライマックスに向けた終盤で、主人公はとある奇跡によって現代の、2014年のNYに送られてしまうのだが、現代に送られた意味が分かる最後のくだりは、ちょっと泣ける。現代パートにしか出てこないJennifer Connellyも非常に良い。この女優は1984年公開の『Once Upon a Time in America』でデビューした別嬪さんだが、歳を重ねて本当に今でもきれいで、わたしは大ファンである。なんとなく、日本人に例えると宮沢りえ的な正統派美人だと思う。旦那はPaul Bettanyで、Ironmanの忠実な執事ジャーヴィスの声を演じ、最新作Age of Ultronでヴィジョンとして生まれ変わったアイツだ。Jennifer Connellyを嫁に持つとはまったくうらやましいというかけしからん野郎である。まあ、そんなことはどうでもいいが、最終的なエンディングもきれいにまとまっており、想像していたのとは全然違っていたが、わたしとしては結構楽しめた作品であった。

 なお、病に侵されているヒロインを演じたのはJessica Brown Findlayという女優で、わたしは全然知らない人だった。が、非常にかわいらしく、また極めて幸薄く、はかなげに演じており、わたしとしてはアリ、である。どうもわたしは、現実世界でも、またフィクションの物語においても、こういう幸の薄い、しょんぼり女子にはどうしても心惹かれてしまうらしい。なんなんでしょう、この謎の心情は。わたし自身にもまったく良くわからないのだが、好きなものは好きなんだからしょうがないっすな。理由はどうでもいいや。
 あと、この作品ではNYのGround Central Stationがちょっとした舞台となる。来月わたしが泊まるのはTimes Squreの近くだが、Ground Central Stationまで歩いて10分ほどなので、ぜひとも現地をも訪れ、しばらくこの映画を思い出しながらぼんやりして来ようと思う。

 というわけで、結論。
 『Winter's Tale』(邦題:ニューヨーク、冬物語)は、わたしとしてはアリです。
 まったくもってファンタジーですので、まあ、細けえことは、どうでもいいんだよ、という広い心で観ていただければ、結構面白いと思います。

 ↓これが原作。ちょっと読んでみたくなってきた。ハヤカワは渋い本を出すなぁ……。お、調べてみたらわたしが愛用している電子書籍サイトBOOK☆WALKERでも売ってるみたいだ。仕方ない……来月買うとするか。
ウィンターズ・テイル(上) (ハヤカワepi文庫)
マーク・ヘルプリン
早川書房
2014-03-20