というわけで、映画『バクマン。』の続報である。
 さっき映画『バクマン。』の2週目の興行収入について、興行通信社のWebサイトで情報が上がってた。あと何者か分からないが業界人らしき人がTweetしているのも見かけた。それらの情報によれば、2週目の週末興行収入は2.1億円だったらしい。パッと見では公開週末の2.5億から83.6%落ちなので、おお、頑張ってるじゃん、と嬉しくなったのだが、10/3(土)の公開から10/11(日)までの9日間の累計興行収入の数字を見て、ちょっとドキッとした。わずか、6.6億円だというのだ。ホントかこれ?
 わたしには本当かインチキか確かめるすべはないのだが、この数字が本当だとすると、これは、かなり悪いと思う。今まで興行成績をウォッチしてきた経験からすると、コイツはマズイ数字だ。はっきり言って、相当ヤバイ。ひじょーに心配だ。

 ちなみに、この週末は『図書館戦争 The Last Mission』が1位で、3.29億だったそうだ。この数字は、手元の資料をさかのぼってみると、2013年に公開された前作の公開初週末が2.16億だったので、つまりその152%と、かなりいい数字だと思う。まあ、TVでの前作放送と、スペシャルドラマ放送があったし、かなりキャストを動員した番宣も頑張っていたと、わたしの目には映っていたので、素直に、よく頑張った、おめでとう、と申し上げたい。なお、前作は最終的に17.2億の興収だった。もちろん、初動が今回良かったからといって、最終興収もそのまま150%になるほど単純でないので、まあ、少なくとも現時点では15億以上は確定、うまく行けば、前作同様の数字にはなると思う。前作を超えるという事は、今の映画興行市場において非常に難しいのが現実ではあるが、前作以上の20億に届くかどうか、今後の動静を見守りたい。売れるといいな。わたしも明日14日(トーフォーの日w)の夜に観に行って興行収入に貢献してこようと思っている。あと、わたしの大好きなヒーロー映画である『Fanastic Four』は、公開週末で1億届かずだったそうだ。はあ。残念だのう……。

 で、『バクマン。』である。
 なぜわたしが心配しているかというと……参考として、『バクマン。』の2週前に公開された2つの漫画原作映画と比較してみよう。その2本とは『ヒロイン失格』と何かと話題の『進撃の巨人:後編』である。
 まず『ヒロイン失格』はどうなっているかというと、
  公開週末 2.6億
 2週目週末 2.3億   9日間累計10.9億
 3週目週末 1.7億 16日間累計15.0億
 4週目週末 1.3億  23日間累計17.9億 である。
 ちなみに、この成績は、相当いい部類だと思う。なにより、落ちが少ないのが特徴で、実際のところ近年の映画興行は、週を追うごとに、もっとガタっと落ちるのが普通だ。この調子であれば、最終的に20億を超えるのはほぼ間違いなかろうと思う。
 一方、いろいろなレビューにさらされた話題の『進撃の巨人:後編』はどうかというと、
  公開週末 3.2億
 2週目週末 1.5億   9日間累計10.0億
 3週目週末0.99億 16日間累計12.6億
 4週目週末0.69億  23日間累計14.2億 である。
 公開週末は非常に勢いがあったが、なんと2週目の週末で、あっさり半分以下に落ち、累計でも『ヒロイン失格』に抜かれてしまった。わたしはこの『巨人』は観ていないのでコメントはしないが、まあ、あれだけ変な話題になってしまっては、こうした興行成績になってしまうのも、むべなるかなという気がする。が、『巨人』の名誉のために一言言っておくと、実のところ、こういった落ち方は別に異常ではなくて、よくあるパターンでもある。なので一概に、ネット上の評判だけと言うわけでもない。続編であれば、観たい人が最初にわーっと行くのは当然なので、初動がいいのは当たり前のことで、2週目にガクッと落ちることは実際によくあることだ。まあ、『巨人』の場合は1作目の初動と比較するとかなり悪いけれど(※1作目は公開週末は6億まで行った。けど、やっぱり1作目も2週目は半分以下に落ちた)。この『巨人:後編』は、既に上映回数も激減しているので、今後20億以上まで伸びるとはちょっと思えない。かなり厳しい情勢だと思う。ああ、でも引っ張るのかな……どうだろうな……ちょっと自信がないが、20億は無理かな……と現段階では予想しておく。

 で。以上の2本の例を見ると、『バクマン。』の何がまずいかが分かると思う。ズバリ、「平日に客が入っていない」のだ。どういう計算をしてみればいいかというと、
 【9日間累計値】-【公開週末】-【2週目週末】で、最初の平日5日間の興収が分かる。この計算式で比べてみると、こうなる。
『ヒロイン失格』:最初の平日5日間で(10.9-2.6-2.3=)6.0億→1.2億/日
『巨人:後編』:最初の平日5日間で(10.0-3.2-1.5=)5.3億→1.06億/日
『バクマン。』:最初の5日間で(6.6-2.5-2.1=)2.0億→0.4億/日
 で、平均単価を映連が発表している去年の平均値1,285円で0.4億を割ると、31,128人/日ということになる。で、スクリーン数が325Scrで、1日に5回上映があるとすると、31,128÷325÷5=1回の上映あたり19.2人。ということになる。まあ、これはホントに適当な算数レベルの割り算なので、実際の単価はもうちょっと高いようだから、まあ、毎回日本全国の『バクマン。』を上映している映画館は、1回当たり19人は入っていないんじゃないかという推測が成り立つ。これは……少ないだろうな……。やっぱり。同じ計算をしてみると、『ヒロイン失格』は1回の上映あたり69.7人になる。こりゃあ、相当な差だといえるだろう。(※10/16追記:『ヒロイン失格』『巨人・後編』は、公開初日後の平日は、いわゆるシルバーウィークなので、厳密には平日ではない。なので比較するのはちょっとかわいそうかもな、という気がしてきた)
 たぶん、テコ入れとしてキャストの舞台挨拶なんかが企画されても、その劇場以外には効果はないだろうし、はっきり言ってもはや、興収がググッと上向くことは通常ありえない。仮に平日が80%で落ちて行き、週末が70%で落ちていくとすると(その想定落ち率もかなり甘めで、本当はもっとキツイかもしれない)、
 16日経過=6.6+(2×0.8)+(2.1×0.7)=9.67億。10億超えない。
 23日経過=9.67+(2×0.8×0.8)+(2.1×0.7×0.7)=11.98億。
 そしてこれ以降は、『ギャラクシー街道』が公開されてしまっているので、おそらく上映回数は激減するはず。となると……残念ながら本当にギリギリ15億ぐらいかも? という予測が成り立ってしまう。これは、先週の時点でのわたしの予想よりも、かなり厳しい数字だ。ここまで悪いと、本当にマズイ。一体どのくらいの製作費とPAをかけているか想像できないが、製作費とPAの合計で8億以上使っていたら、アウト。完全に赤字になる。ああ、でもそうか、『バクマン。』は東宝製作か。となると、ギリでトントンぐらいかも。いずれにせよ、続編はもうありえない成績になってしまう。しかしこれって本当かな? イマイチ信じられないのだが……。

 こうなってしまった要因は何なのだろう。
 時期が悪かった? そうかもしれない。
 ストーリーが原作と微妙に違うから? それもあるかもしれない。
 だが、わたしが一番疑問なのは、この実写版『バクマン。』は、一体誰を想定観客として作られたのか、ということだ。元々、原作の『バクマン。』という漫画は、オタクが喜ぶ作品のようないわゆる「萌え」作品ではない。大体アニメがNHKで放送されたことからしても、オタクコンテンツではなかろう。また、少年誌の王道を行く、小・中学生が喜ぶ漫画……でもない。さらに言えば、いわゆる(腐)女子向け、とも違う(まあ、勝手に妄想するのは自由ですけどw)。そして、どう考えてもシニア向けでもない。一方で、漫画が大好きな人間や、ある種の業界人には、グイグイひきこまれる魅力がある。どうも、そういう若干特殊な読者層を持つのではないかと想像するが、果たして、そういう『バクマン。』を面白いと思う人々にとって、実写映画化とは嬉しい出来事だったのだろうか? 実写映画化と聞いて、うおー! 観たい! と思ったのだろうか? そして、ジャンプを全く知らないような人が観て、面白いと思う映画に仕上がっていたのだろうか? なんというか、そもそもの企画として「誰に観てもらうか」をどう設定していたのか、それを知りたいものだ。

 実のところ、わたしは以前書いたとおり、30年以上買い続けているジャンプよりも、今はチャンピオンのほうが好きだ。映画の冒頭に、ジャンプの歴史を描いたシーンがあったが、はっきり言っておく。凄かったのはつまり20年前で、日本最高の発行部数を誇った時から、もうずっとその記録を抜けないでいるんでしょ? それって、つまりそれ以降ずっと落ち続けているってことだよね。先週書いたとおり、わたしは実写映画版『バクマン。』が、ジャンプのPVっぽく思えたと書いた。そういう過去の栄光を誇らしく見せられても……。今現在のジャンプの現実を、映画製作サイドは分かっているのだろうか? なんとなく、この映画の問題点の根源はそこにあるような気がする。
 まあ、ちょっと売れればすぐ映像化ってのは、どっかの三流四流の出版社に任せて、ジャンプはジャンプらしく、常に過去なんかぶっ飛ばす作品作りに頑張って欲しいと思う。
 じゃないと、ホントにもう、毎週買うのやめちゃうよ。

 というわけで、結論。
 実写映画版『バクマン。』の興行は、どうやら予測よりもかなり厳しい展開だ。これでは続編が作られることはないだろうと思う。どうかわたしのこんなインチキ予測が外れることを祈ります。 
 (※10/19追記:3週目の数字が出たみたいです。→●こちらをどうぞ)

 ↓Webの「ジャンプ+」には、結構活きのいい漫画があるんだけどな。。。今のわたしのイチオシはこの漫画。エロギャグ。本誌じゃ無理かな……。かの『監獄学園』に通じる下品な笑いがある(←褒め言葉)。●ここでこれまでの話が読めます。