最初に、自白しておかなくてはならないことがある。
 わたしは、現在のアメコミヒーロー映画が大好きだが、実は……恥ずかしながらちゃんと原作アメコミをきっちり読んだことのある作品はごくわずかで、真面目に読んだのは『WATCHMEN』と『SPAWN』ぐらいしかなく、ほかのIronmanやBatman,Captain Americaなどは、ほんの1冊2冊を読んだだけの、実際のところ全くのニワカである。X-MENなどは、そもそもはカプコンの格闘ゲームから入ったクチで、映画では主役のWolverineなんかは、黄色いスーツの、爪のあいつでしょ、ぐらいな知識しかなかった。X-MENの映画第1作が公開されたときは、主役ってCyclopsじゃないんだ、でもこのWolverineの役者(まだ当時のHugh Jackmanは大人気になる前だった)、髪型とかすげえ再現してんなー、なんて思ったぐらいのド素人オタである。ほかにも、CAPやIronmanも、ゲームでその姿を知って、いろいろ調べてちょっとだけ詳しくなっただけ、というのが真相だ。なお、Hulkだけは、わたしが中学か高校の時に、テレ東の昼ぐらいに(ひょっとしたらテレ朝の夕方の「スタートレック」や「事件記者コルチャック」が放送されてた枠だったかも?)やっていた『超人ハルク』を観ていたので、よく知ってるつもり。「僕を怒らせるなよマクギー君!」という冒頭のあらすじは大好きだった。が、残念ながら、原典であるコミックは全くと言っていいほど読んでないのです。本物のファンの人々にはホントにサーセン。
 ただ、映画はおそらくはほぼすべて観ている。観る前に、いろいろ調べて、へーそうなんだ、なるほど、深いのう……とか予習をしてから映画を観ているので、毎回非常に楽しめるわけだが、今をさかのぼること10年前、2005年に公開された『Fantastic Four』(邦題:ファンタスティック・フォー:超能力ユニット)については、事前予習で、ははあ、なるほど、要するファンタスティック・フォーとやらはチーム、つまりは戦隊モノか、そいつは楽しみだぜ! とやや間違った期待をして観に行ったものの、あまりにリーダーのMr.Fantasticことリード博士がイケてないおっさんだったのに失望し、2年後に公開された2作目の『Fantastic Four : Rise of The Silver Surfer』(邦題:ファンタスティック・フォー:銀河の危機)は、劇場で観るのをさぼってしまい、後にWOWOW放送で観て、ああ、やっぱ劇場で観るべきだった、と後悔したのであった。
 前置きがいつも通り長くなったが、そんな『Fantastic Four』が、昨今のヒーロー映画の波に乗り、また、20th Century FOXが権利を所有する貴重なMARVEL-IPとして、再びスクリーンに登場することになった。わたしも、前シリーズをぞんざいに扱った謝罪の意味も込めて、今日の初日にわくわくしながら劇場へ赴いたわけである。

 予告の出来は非常にいいと思う。わたしとしては、超観たい映画決定だったわけだが、本国US国内での評価はひでえ、という噂は聞いていた。格付けサイトでおなじみのRottenTomatoesでは、なんとTOMATOMETERで9%、AUDIENCE SCOREは20%と、相当なクソ映画として評価されてしまっている。ちなみに、『The Dark Knight』は、87%-90%と高評価だ。もう一つの格付けサイトmetacriticでのMetascoreは27点。これもまたひどい点しかついていない。同じくこっちでもDark Knightの点を見てみると82点で、非常に高い評価を受けている。なので、これは……ちょっとやばい予感がするぜ……? とほんのり怪しい空気を感じてはいた。ちなみに、前シリーズも、両サイトであまり評価は高くないのだが、今回の作品よりはマシなスコアが付いている。
 だが、どうやらこの低い評価には、明確な理由があって、原作改変が結構はなはだしいのである。原作知識のぜんぜん甘いわたしでも、キャストを知って、アレッ!? と思ったことがいくつかあった。その最大のポイントは、Fantastic4の一人であるHumanTorch(その名の通り、全身から火を噴いていて、飛べるアイツ)は、Invisible Womanの弟で、前シリーズでは現在のMCUでCAPを演じているChris Evansが演じていたのだが、なんと今回は、黒人青年である。それって、アリなの? とそれほど詳しくないわたしも、若干不安がよぎった。しかし、監督は、わたしが超・激賞している『Chronicle』を撮った若き天才Josh Trankである。そんな、あんなに素晴らしい『Chronicle』でデビューしたあいつが、2作目でそんなクソ映画撮るわけない……よね? という微かな想いを秘めて、劇場へ向かった。ちなみに、その『Chronicle』は、RottenTomatoesでは85%-71%と非常に高評価だったし、metacriticでも69点とまずまずである。

 というわけで、新生『Fantastic Four』である。
 物語は、わたしが知っているものと全然違ったものだった。が、わたしが知っているのは、前シリーズの物語で、4人の科学者が宇宙で謎の宇宙線(?)を浴び、地球に返ってきたら謎能力が身についていて、その能力を使ってヒーロー活動を行うというものだった。その4人は、手足が伸びるゴム人間になっちゃった「Mr.Fantastic」(なんかイケてないおっさん)をリーダーに、透明になれる「Invisible Woman(演じたのはJessica Alba)」と全身火だるま野郎「HumanTorch(さっきも書いたけど、演じたのはCAPことChris Evans)」の姉弟、そして唯一、平常の人間体に戻れないでずっと異形のままとなってしまった岩石男こと「The Thing」の4人で、たしか、わたしはこの前作を見たときは、ゴム人間ってルフィかよ! とか思ったし、また、InvisibleWomanは、自分の体だけ透明になるので、いそいそと服を脱ぐシーンがあり、能力に慣れていない段階では透明化が解けて姿(素っ裸)が現れちゃってイヤーン的なシーンもあって、ははあ、お色気担当ですな、なんて思ったし、HumanTorchは、唯一、自分の体の変化を大歓迎していて、これでモテモテだぜヒャッハーというキャラ造形だったので、なるほど、こいつはアホキャラかと思っていた。そして、人間時の姿を喪失してしまったThe Thingは、たしか、その姿に絶望した奥さんに怖がられ、そして逃げられ、代わって、目の見えない女性との心の交流なんかが描写されて、何とか気持ちの折り合いを付けようとする、そんなキャラに描かれていた。
 一方、今回の新生F4メンバーはというと、みんなガキである。学生さんである。そして、謎能力(能力自体は前シリーズと同じ)を身に付けるに至った過程も違う。まあ、実際のところ、それは事前の予習で知ってたわけだが、どうやら前シリーズが、原作の正伝で、今回のお話は、原作の別シリーズと言えばいいのかな、『Ultimate Fantastic Four』に準拠しているらしい。そのUltimate視点から言えば、「原作通り」ではあるそうだ。なるほどね。ちなみに、アメコミは、ずっと同じ世界観で話が続いているものとは限らず、今回のUltimateのようなパラレルワールド的な別のお話が作られる場合が非常に多く、残念ながらそこまではわたしは詳しくないので、頻繁にへー、そうなんだ、ということに出会う。
 しかし、である。じゃあ、一体なんでUS国内ではそんなに評価低いのだろう? 一応、原作通りの設定なんでしょ? と思っていたのだが……まさかそりゃ、HumanTorchが黒人に変わっちゃったから、とか、そんな理由であってほしくなかったのだが、観終わった今でも、正直、わたしには良くわからない。なぜなら、わたしは今回の新生F4はアリだと思ってしまったからだ。
 映像は最新CGを駆使し、非常に美しく洗練されている。また、物語的な矛盾や変な展開も少ない。実にまっとうなストーリーだった。なんだ、面白かったぞ? という、面白かったのに首をひねるという奇妙な事態にわたしは陥ってしまったのだが、RottenTomatoesで9%は可哀想だろ、というのがわたしの感想である。Josh Trankはやっぱりかなりいいセンスしてんじゃん、とわたしは思う。今回の新生F4は、テーマ的にも、私の大好きな映画、『The Fly』によく似ているような気がする。

 もはや説明の必要はないと思うが、物質転送装置を開発していた孤独な天才が、うっかり自分を転送する実験時にハエが混じっていたことに気付かず(※彼女に振られてやけ酒飲んで酔っ払った末に、じゃあいいよ、オレ一人でやるもんね、そうだ、もう今すぐやろう! という展開なので、うっかりとしか言いようがないw)、DNAレベルでハエと融合してしまうものすごく可哀想な悲劇である。それが『The Fly』という映画で、まあ映画的なジャンルはホラーかもしれないけど、まあ、なんというか気の毒な話であった。わたしはこの映画を、公開時はもちろん劇場に観に行ったし、そのあと、確か上野だったかな、名画座でも2本立てでも観たし(わたしとしたことが何と2本立てだったか全く思い出せない)、さらにVideoやDVDでも何回も観ているほど好きな映画の一つだが、今回の新生F4も、もともとは天才少年である主人公が作った物質移転装置で、謎の異世界(?)へと行き、そこで、良くわからない謎エネルギーに触れたことで能力が発現する展開だ。その転送装置も、なんだか『The Fly』を思わせるような感じで、おそらく、Josh Trankが子供のころに観たはずの『The Fly』へのオマージュめいた雰囲気も感じた。
 ところで、もちろん、主人公リード君は、元の体に治すことを最優先に考えるが、研究に散々金を投資した大人たちはそうはいかないわけで、軍事利用をたくらむ展開は、まあ、ありがと言えばありがちな展開。そして、アメコミ映画で最も重要なVillan(悪役)は、F4で最大の敵であるDr.DOOMを採用している(前シリーズの1作目もVillanはDr.DOOMだった)。ちなみに、このDr.DOOMも設定が若干原作とは違うらしいが、わたしは物語の流れ上は全く問題なく受け入れられた。ただし、わたしが今回の新生F4で問題ありだなと強いて言うとすれば、やっぱりこのDr.DOOMに関する部分で、どうも彼に関する部分が……薄いというか浅いんだな……その点は少々不満に感じた。物語上、Dr.DOOMもまた被害者の一人であり、むしろ一番かわいそうな男なので、リード君はもっと彼も救う方向の心の動きがあってしかるべきなのに、あっさり敵認定してしまうのは、あまりに可哀想だと思う。わたしがこれは……と思ったのはその辺だけで、HumanTorchが黒人でも、わたし的には特に文句はなかった。強引な姉弟設定も、許せなくはない。あと、どうでもいいのだが、予告に使われているいくつかのシーンが本編になかったような気がする。気のせいかな?

 最後に、役者たちをちょっと振り返っておこう。主人公のリード君を演じたのは、今年のアカデミー賞で助演男優賞・録音賞・編集賞を獲った『Whiplash』(邦題:セッション)で、J.K.Simmonsのスーパー・スパルタ特訓を受ける主人公を演じたことで大いに名を上げたMiles Teller君である。こいつはイケメンなんだか、パッとしないんだか、微妙な顔をしているが、演技ぶりは非常に良い。わたしが彼を初めて観たのは『Divergent』だが、来週公開になる第2作にも出演しているので、彼が気に入った人はぜひチェックしていただきたい。ただ……役としては、主人公をひどくいじめる嫌な奴なので、ちょっとアレだけどね……。そして、黒人HumanTorchを演じたのが、Josh Trankの名を世界に知らしめた『Chronicle』で、主人公の通う学校の生徒会長(だったかな?)で、主人公とともに謎能力に目覚める男の子を演じたMichael B. Jordan君である。彼はかなりいいと思う。今後応援していきたい若手だが、なんと彼の次回作は『CREED』である。CREEDと聞いてピンと来たら、わたしと友達になれると思う。そう、この映画は、わたしが好きでたまらない映画の一つである『ROCKY』の新作と言っていい作品で、主人公は、ロッキーの永遠のライバル兼親友、アポロ・クリードの息子である。その主役であるアポロJr.をJordan君が演じるのだ。どうやら、年老いたロッキーがコーチする展開のようで、もう、予告編だけで傑作の予感を勝手に感じている。ちょっと↓これ見ておいて。ヤバくない?

 この予告の最後の方にある試合のシーン、アポロJrが、あの星条旗パンツ――元々アポロのもので、「3」でロッキーに貸して以降ずっとロッキーが愛用していたあの星条旗パンツ――をはいて戦ってますな。あのさぁ、わたしはもう、それだけで……確実に、泣くに決まってんだろうが! 超必見ですよこれは。

 おっと、またまったく話は脱線したが、ほかのキャストは、まあ、別にどうでもいいかな。InvisibleWomanを演じたのは、本物のお金持ちでおなじみのKate Mara。イマイチタイプじゃないんで、どうでもいいです。妹さんは言わずと知れたRoony Mara。姉妹二人ともよく活躍してますな。なお、お父さんは、NYジャイアンツの副社長で、彼女たち姉妹はNYジャイアンツ創始者の曾孫なんだだそうだ。ちなみに、ものすごく美しい物語なのに、リアルBL映画としておなじみになってしまった『Brokeback Mountain』で、最後に故Heath Ledger演じるイニスのもとに、娘が「わたし、結婚するの」と報告に来るシーンがあるでしょ? あれがKate Maraですな。他にも、Ironman2にも出てるし、いろんな作品で見かける人だ。
 あと可哀想な岩石男The Thingを演じたのはJamie Bell君。わたしが観た中で印象的だった役は、『Jumper』で、主人公とは別の、先輩ジャンパーとして途中から登場する男がいたけど、あの役をやったのが彼で、結構いい芝居ぶりであったことを覚えている。特徴ある顔なので、どっかで見たなと思ったらJumperだった。しかしあの映画、結構面白かったのに、全然興行的にダメだったね。
 えーっと、ほかのキャストは正直良く知らないです。サーセン。あと、今回は本編終了後のMARVEL恒例のチョイ出し映像はなかったです。せっかくFOXなんだから、X-MENにつながるなんかのシーンが来るかと思ったのだが……最後の研究所は、ひょっとしてX-MENに関係アリなのかな? ま、いずれにせよ、トイレが我慢できない人は、エンドクレジットになったらすぐに席を立って大丈夫です。
 はっ!? あれっ!?? そういえば、おなじみのスタン・リーのカメオ出演って、あったかな? あれっ!? やばい、今回は全然気が付かなかった。どっかに出てるのかな!? うかつだよ……オレ!! 気が付かないとはオタの名が廃るわ……!!

 というわけで、なんだかまとまってないが、結論。
 新生『Fantastic Four』は、わたしとしてはまずまず楽しめた。ので、アリです。そして、一日も早く『CREED』が観たい! こりゃあ、『CREED』観るためにアメリカか台湾に行かないとダメかもな……日本でいつ公開されるか今のところ情報なし。なんでだよもう!

↓ 前シリーズは、役者的にパッとしないけど、若き頃のCAPことChris Evansは一見の価値あり。とんだチャラ男ですよw
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