このBlogを始めて、既に取り上げた『人工知能 人類最悪にして最後の発明』という本や、Christpher Nolanについていろいろ書いてみたが、 そういや、人工知能モノの映画が最近あったな、しかもNolanが原案じゃなかったっけ? と思い、調べてみたら、『TRANSCENDENCE』という映画に行き着いた。
トランセンデンス [Blu-ray]
ジョニー・デップ
ポニーキャニオン
2014-12-02




 ああ、これこれ、Johnny Deppのあれだ、と思い出したのだが、この映画は去年2014年公開で、実のところわたしは見ていない。でも待てよ……とHDDレコーダーをあさってみたところ、WOWOWで放送されたのをちゃんと録画していた。さすがオレ。やることに抜かりなし、である。

 というわけで、まったくもっていまさらなのだが、さっそく観てみた。そしてこの映画が、まさしく『人工知能 人類最悪にして最後の発明』 を映画化したんじゃね? というぐらい、話が非常に近接していて、しかもNolanっぽさも少し感じられる映画であることを発見した。
 まあ、ストーリーは、天才博士が開発した「意識を持つAI」があって、まさしく『人工知能 人類最悪にして最後の発明』の著者のような、AIヤバイ、AIが人類を滅亡に導く! という思想のテロリストグループがあって、世界の(といってもアメリカ限定っぽかったが)AI 工学者を暗殺していくと。で、主人公もそのテロの標的になっており、暗殺される、と。しかし、死に瀕した彼を愛する妻(この妻も天才学者)が、夫の意識を夫が開発したシステムに移植して……というお話だ。ちなみに、今説明したくだりは映画開始約25分で終了。問題はそのあとなのだが、それを書いたらもう完全ネタばれなのでやめておきます。
 ただ、驚いたのが、まさに『人工知能 人類最悪にして最後の発明』で書かれていた通りの展開で物語が進むのだ。まず、自分で自分のプログラムをどんどん書いて、自分で進化していく。そしてナノテクノロジーを進化させ、どんな病気や怪我も治るようになる。そして、自らのエネルギーを確保するために、資源を求めていく……という流れは、『人工知能 人類最悪にして最後の発明』に書かれていた通りだ。そういう点ではきわめてリアルであり、ありそうな未来としての恐ろしさは十分感じさせてくれる作品であった。

 面白いのが、進化したAIは、ネット接続を求める、そして一度インターネッツに接続されたAIはもう手がつけられなくなる、と『人工知能 人類最悪にして最後の発明』には書いてあるのだが、まさにその通りに描写されていて、この著者はこの映画を見てどう思っただろうと非常に気になった。なので、いまさらながら、訳者あとがきを読んでみたところ、思いっきりこの映画のことが書いてあった。すいません。あまりにつまらなかったので、訳者あとがきを読んでいませんでした。けど、もうちょっとこの映画との類似性を書いてくれればいいのにとも思う。それほど、非常に似ている。なので、この映画を見れば、『人工知能 人類最悪にして最後の発明』を読む必要はほとんどないと思う。

 ただ、この映画が示すエンディングは、きわめてハリウッド的というか、愛は地球を救う展開なので、若干興ざめではある。それに、正直なところ、見ていて、主人公のAIと、阻止する側のどちらに肩入れすればいいか、かなり混乱するような気がする。わたしとしては、人類滅亡はまったく望むところでもあるので、エンディングにはなんというか、なーんだ、という感想しか持ち得なかった。わたしとしては、AI反対派のテロリストや政府はとりあえずぶっ殺していただきたかったが、人殺しの彼らが余裕で生き残ってしまう結末は実に不満が残る。
 
 あと、まったくどうでもいいが、この映画は中国資本が入っているそうである。
 なのに! 主人公の意識が格納される量子コンピューターにへんな日本語を使わないでいただきたい! まるで日本の技術が世界を滅ぼす的なミスリードは、若干不愉快である。
 なお、そもそもの元になる「量子プロセッサー」は、まだこの世に存在しないので(たぶん)、当分、この映画で描かれるようなことは実現はしないことを最後に付け加えておく。

 というわけで、今日は短いが結論。
 『TRANSCENDENCE』は、『人工知能 人類最悪にして最後の発明』とすげえ似てる! と思う以外は、特に何も感じるところがなかったので、これ以上書くことがありません。