2021年04月

 はあ……ホントにすげえなあ……というのが、真っ先に口から出た感想であります。
 なんのことかって? わたしは今週の火曜日、平日の昼間に会社を抜け出し、日比谷へ赴き、宝塚歌劇を鑑賞してきたのだが、その感想であります。ええと、言っときますがすべての予定を調整してきっちり仕事に影響ないようにしているので、誰にとがめられるいわれもありませんよ。そもそも、もはやわたしは誰の指揮監督下にもないし。
 なんでまた平日の昼間に行ったかというと、理由はもう明確で、現在日比谷で上演中の雪組公演は、現在の宝塚歌劇団において最強のTOPスターコンビの退団公演で、全くチケットが獲れず、平日なら獲れるかも? と淡い期待を持って宝塚歌劇友の会の抽選に申し込んだところ、1枚獲れたから、であります。
 もう、ここ数年、どんどんとチケット争奪の戦いは熾烈を極め、最近になって、そうだよ、おれ、平日の昼に行けばいいじゃん! と気が付いたのだが、今回の雪組公演は、退団公演というブーストもあるのか、本当に全然獲れないわけで、友会がわたしに用意してくれたのは久しぶりの2階席でありました。遠いけど、舞台全体を観られるので、まあ、十分アリっす。
SNOW202104
 しかし前回も書いたけど、この入場時に発行されるチケットはカッコ良くていいですね! これは友の会の会員証を非接触リーダーにかざすと発行されるものなので、友の会会員の証と言えるかもしれないね。ちなみに、2階の6列目というのは、S席の一番後ろの通路ぞいですが、ほぼド・センターで、意外と観やすかったですな。
 というわけで、雪組公演『fff―フォルティッシッシモー/シルクロード~盗賊と宝石~』であります。

 前半の『fff』がミュージカル、後半の『シルクロード』がレビューショーという2本立てなわけですが、もう内容の紹介はナシでいいかな。。。一言だけ言うならば、『fff』は、いろいろと話題作を発表してズカ淑女たちの注目を集めている上田久美子先生(以下:うえくみ先生)の作品なわけですが、正直、わたしはうえくみ先生の作品は、それほど好きではないです。まずもって、90分の短い時間内では描き切れないスケールがあるように思うし(その点では2幕物の『FLYING SPA』は観てないのでのちのちのスカステ放送が楽しみっす)、やっぱり、ちょっと変化球すぎるような気がするんすよね。今回の『fff』も、やっぱり変化球と言わざるを得ない物語構成で、もちろん面白い、けれど、なんつうかなあ……小劇場作品的なアート性だったり、文学性とでも言えばいいのかな……まあ、実際に物語は見事な着地を見せるので、それはそれで素晴らしいけれど……なんつうか、うーん、うまく言えないけれど、とにかくうえくみ先生の作品は、独特な味のある作品だと思う。クセが強いんじゃあ、ってやつですな。
 物語としては、Ludwig van Beethovenによる交響曲第5番「運命」の誕生秘話、というもので、同時代人であるナポレオンへのあこがれと失望(?)や、Johann Woifgang von Goetheとの邂逅なども描かれ、そこに「運命」を擬人化した謎の女を配置した非常に変化球的な、興味深い物語となっている。ドイツ文学科を修めたわたしは、まさしくGoetheと同時代人の作家を研究していたので、この時代はよく知っているつもりだが、あらためて、この三人の生年と没年をメモしておこう。
 ・Beethoven:1770/12/16(?)ボンにて生→1827/03/26ヴィーンにて没
 ・Goethe:1749/08/28フランクフルトにて生→1832/03/22ヴァイマールにて没
 ・ナポレオン:1769/08/15コルシカにて生→1821/05/05セントヘレナ島にて没
 どうですか。この3人の同時代人たちの生年没年を知ってると、結構今回の物語はより面白くなると思うな。
 というわけで、各キャラと演じたジェンヌを紹介しながら感想をメモしていこう。
 ◆Beethoven:ご存じ偉大なる作曲家にして気難し屋なイメージがある孤高の天才。もちろん演じたのは、本作品をもって退団してしまう、雪組TOPスター望海風斗さん(以下:のぞ様)。
 思えば、わたしがはじめてのぞ様を「なんだこの人、すげえ!!!」と知ったのは、2014年のルキーニだったのですが(あの当時はまだ花組公演はほとんど観に行ってなかったので知らなかった)、あのルキーニはわたし的には最強のルキーニで、山崎育三郎氏ルキーニよりも、わたしはのぞ様の方が素晴らしかったと思うすね。間違いなく、のぞ様は現役最強歌唱力の持ち主だし、また演技力も現役最強と言って差し支えないのではなかろうか。『壬生義士伝』や『ファントム』……思い出深いすべての公演で、のぞ様は最強だったすね。
 そして今回も、もうグレイト、素晴らしくブラボ―としか言いようがないですよ。のぞ様の退団は本当に淋しいですね。。。チケットは獲れないかも、と思ってたけれど、観に行けてホント嬉しかったです。のぞ様の歌は、生で聞くとより一層迫力があるし、誇張でも何でもなく、ビリビリと我々の体に響き、鳥肌が立ちますね。まあ、もう既に退団後の仕事も決まっていて、それはおそらく本来なら去年の夏にこの公演が上演されるはずだった(=COVID-19によって公演延期があった)ため、その去年退団を前提にした仕事だったのだろうと思うけど、次の日曜日に退団してもう3週間後?には新たな舞台に立つ、なんて、凄いというか、異例中の異例でしょう。
 でも、ファンとしては、退団後すぐにまたのぞ様と会えるのはうれしいですな。もちろんそのチケットは獲れるはずがないほど超激戦で、わたしも勿論買えませんでしたが、配信もされるので家で見ようかしら、とは思ってます。が、やっぱりのぞ様の歌声は、生じゃないとなあ。。。。でもまた、退団後ののぞ様にまた会いに行きたいですな。
 もうとにかく、言えることは、「(のぞ様の歌と演技は)はあ……ホントにすげえ!!」の一言であります。心からの拍手でわたし的しばしのお別れを告げられてよかったす。
 ◆謎の女:わたしは比較的最初の方で謎の女の正体に見当がついたんすけど、ま、それは書かないでおこう。その謎はともかく、演じた真彩希帆さん(以下:きぃちゃん)の歌&芝居はマジ最高だったですなあ! 主人公にしか見えない、小悪魔的女の子、なんて設定は、もう少年漫画そのもので、きぃちゃんの可愛らしさや気の強そうな、いわゆるツンデレめいたキャラは実によかったと思います。
 現役最強歌唱力ののぞ様には、同じく最強歌唱力のきぃちゃんしか相手役は勤められなかったでしょう。そのきぃちゃんも一緒に退団されてしまうのは、淋しいけど、これはもう、万雷の拍手をもって、笑顔で見送るしかないっすよ。きぃちゃんには、本当ならわたしの最大の贔屓である礼真琴さん(以下:こっちん)の相手になってほしかったけれど、今後も繰り返し『鈴欄』を観て、こっちん×きぃちゃんを妄想しようと思います。
 それにしても、きぃちゃんの退団後の活動がすごく楽しみですね。きぃちゃんのはじける笑顔に、また会いに行きたいっすな。ここ10年ぐらいではナンバーワン……かは分からないけど、歴史に残る見事な娘役だったと思います。最高でした!
 ◆ナポレオン:演じたのは雪組正式2番手の彩風咲奈さん(以下:さきちゃん)。ナポレオンと言えば、星組推しのわたしは当然レジェント柚希礼音さんを思い出すわけですが、今回の戴冠式の時の衣装、アレって、柚希さんとねねちゃんが着た衣装かな? そんなことが気になったす。
 さきちゃんは次期雪組TOPスターに決定しているわけですが、おそらくは、最強コンビの次ということで、我々には想像も及ばないようなすごいプレッシャーを感じてらっしゃるかもしれないですが、間違いなく、歌唱力もグイグイ上がっているし、さきちゃんらしいTOPとして、堂々と舞台の真ん中に立ってほしいと思います。
 しかしそのTOPお披露目作品が、あの『CITY HUNTER』ってのは驚きですなあ。ジャンプを30年以上買い続けているわたしには、えっ、アレをやんの!? とすごい驚いたっす。下ネタはイケるんだろうか……そして期待の若手、縣千くんは、どんな「海坊主」を演じるんだろうか……ビジュアル発表が超楽しみっすね!
 ◆Goethe:かの文豪ゲーテを演じたのは、本作をもって退団してしまう彩凪翔さま。翔さまの退団も、ホントに淋しいすねえ。。。これまでの翔さまの演じたキャラがいろいろ思い出されますなあ……。ガトガトガト~の武田観流がもはや懐かしいですなあ……。バウの『ウェルテル』はわたしはスカステでやっと観たクチなんすけど、翔さまの今回2回目のゲーテ、目に焼き付けました。本当にお疲れさまでした!
 ◆ゲルハルト・ヴェーゲラー:Beethovenの幼馴染?で医師の青年。演じたのは、美貌のあーさでお馴染み朝美絢さん。しかし、のぞ様去りし雪組の2番手は、あーさになるのでしょうか? 宝塚人事に関してあれこれ考察めいたことには興味ないですが、あーさが2番手になって、そののちTOPになるのであれば、95期4人目として、超期待したいですな。以前も書いたけど、わたし、あーさを大劇場の前とオフ日にちゃぴと一緒に東京宝塚劇場に来ていた場面に出くわしたことがあるのですが、サングラスをかけてても、私服でも、もう明らかにあーさで、見間違いようのないカッコ良さでした。歌も本当にどんどんうまくなってますね。今後が楽しみであります!
 ◆ほか、わたしとしては次期TOP娘役に決まっている朝月希和さんや、わたしイチオシの星組から雪組に異動した綾 凰華くんをはじめとする皆さんを見つめつつの観劇だったんすけど、中でも、やはり今回退団されてしまう笙乃茅桜さんをとりわけずっと目で追っていました。
 わたしが初めて笙乃さんのダンスがすげえ! と気が付いたのは、もうホント笙乃さんには申し訳ないけど『ファントム』の時のファントムダンサーズの一人として、なので、すっごい遅いんすよね……もっと前から注目してくべきだったと深く反省しています。笙乃さんのそのダンス力は、もう、劇団随一だったのではないかしら。今回も、『fff』でも『シルクロード』でも、非常に目立ってましたね! 役名があったのかよくわからないけど、常に舞っておられた美しいお姿は忘れません!
 
  ふー、とまあ、とりあえず以上かな。そして最後はいつもの「今回のイケ台詞」をご紹介して終わりにしたいと思います。
 ※「イケ台詞」=わたしが、かーっ! カッコええ!と感動した台詞のこと
 「生きることが苦しみでも、オレはお前という運命を愛するよ!」
 今回はやっぱり、ラストのこのセリフでしょうなあ。カッコ良かったですねえ!! そしてここでののぞ様ときぃちゃんは最高に美しかったですなあ! ホント、望海風斗と真彩希帆のこれからに栄光あれ! と思ったす。のぞ様、きぃちゃん、本当にお疲れ様でした!

 というわけで、結論。
 最強の歌唱力を誇る雪組TOPコンビがついに退団の時を迎えてしまいました。本当にチケット難で、観られないかもなあ、と覚悟していたけれど、わたしにチケットを与えたもうた友の会の神様に感謝いたします! のぞ様、きぃちゃん、そして翔さまや笙乃さんをはじめとする退団なさる皆さんの最後の舞台、しかと見届けさせていただきました。ブラボー! もうその一言っす。最高に素晴らしかったと思います。そして卒業後の活躍も、心よりお祈りいたします。女性としてののぞ様は、きっと美しいでしょうなあ! きぃちゃんも、どこか、ちゃんとした大きな事務所に入って、これからも舞台上で活躍してほしいですね。城田君のファントム、再演があったら次はきぃちゃんの出番かもしれないすね。のぞ様は芳雄君と仲がいいし、きぃちゃんともども、いろんなミュージカルに出演してほしいなあ。次に会えることを楽しみに待ってます! また会いに行くよ! 以上。

↓ のぞ様ルキーニ、みちこフランツ、そしてみりおトート。わたし的には最強の布陣だったと思うす。あー、くそう、のぞ様トート&みりおシシィのドリーム公演、生で観たかったなあ!
『エリザベート ―愛と死の輪舞―』 [Blu-ray]
北翔海莉
宝塚クリエイティブアーツ
2014-11-06

 やっと来ました!
 わたしが世界で最も愛する小説家、Stephen King大先生による長編小説、『THE OUTSIDER』の日本語版の発売であります!!!
TheOutsider
 毎回同じことを書いていますが、わたしはほぼ完全に電子書籍野郎に変身済みで、コミック単行本だけではなく、小説もほぼ電子に移行しているのですが、その中で例外的に「まずは紙の本で買う」のは、最も愛するKing大先生の作品だけ、であります。何故かって? そんなの、本棚にずらりと並べて悦に入るためですよ! そしてもちろん、いつでもどこでも読めるよう、あとで電子でも買い直しますけどね! さらに言うと、かつて金のない若者時代は、文庫になるのを待つ、ということもしてましたが、今や金に困らない大人なわたしは、いち早く読めるための特急券として、単行本で出たら即買って読む! ことにしています。どうせ文庫になっても3分冊ぐらいになって1000円ぐらいするので、実はそんなに値段的には変わらないしね。
 おっと、相変わらずKindle版は紙の書籍よりちょっと安いな……実に不愉快!
アウトサイダー 上 (文春e-book)
スティーヴン・キング
文藝春秋
2021-03-25

アウトサイダー 下 (文春e-book)
スティーヴン・キング
文藝春秋
2021-03-25

 というわけで。今回の新刊『THE OUTSIDER』は、実のところUS本国では2018年に発表され、既に映像化もなされている作品なので、そういう意味では全くもって「最新刊」ではありません。事実、わたしの元部下の英語ペラペラガールのA嬢は、もう数年前にとっくに読んでおり、King大先生をオススメしたわたしとしては悔しい思いでしたが、やっとわたしも読める日本語版が発売になったのでした。
 わたしがこの作品についてて事前に知っていた内容は、もうただの1点だけです。それすなわち、あの、「ホッジス三部作」で活躍したホリーが再登場する!! という、それだけでもう白米3杯行けちゃうようなワクワクする情報だけでありました。
 なので、もうとにかく大興奮しながら読んでいたわけですが、前半の、「こ、この事件は一体……?」という謎に満ちた展開から、まさか後半がKing大先生の真骨頂(?)たる「Super Natural」な展開になっていくとは! というハラハラドキドキ感で、読み終わった今言えることは、とにかく最高に面白かったぜ! という一言に尽きると思います。ええ、この作品、まぎれもなくKing大先生の作品ですよ。たぶん著者クレジットなしでも、わたしは作者がKing大先生だと分かったと思います。
 というわけで、まずはわたしがパワポでテキトーに作った前半の人物相関図を載せてみます。しかし思うのは、わたしが大好きなホリーというキャラは、上巻のラストでいよいよ名前が登場するんすけど、上巻の終わり方が超超絶妙で、ここで上巻を終わらせた文芸春秋社の編集者は非常にUDE、腕のある野郎ですなあ! 褒めてやってもいいぞ! まあ、元々はKing大先生のワザマエが素晴らしいからだけどな!
 なお、どうしてもネタバレを避けられないので、まずは自分で読んでからの方が絶対いいですよ。少なくとも、下巻の展開は絶対に知らないで読んだ方が楽しめると思います。未読の方は、ここらで退場してください。
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 はい。ではよろしいでしょうか?
 というわけで、もうあらすじも画像の中に書いてしまったけど、超端折って説明すると、オクラホマの片田舎の街で、少年が惨殺されると。そしてその現場には指紋やDNAなどの大量の残留証拠物があって、さらには目撃証言もバッチリそろっており、警察は全く疑うことなく、容疑者を特定し、衆人環視のもとに容疑者を逮捕する。しかし、その容疑者は学校の先生であり、街では少年野球のコーチとしてもよく知られた真面目人間であり、変態極悪人とは程遠い存在であった。さらに言うと、彼には、犯行時刻に他の先生たちと共に全く別の街で講演会に出席していたという完璧なるアリバイがあった。どう考えてもおかしいこの事件。その裏には、恐るべきSupar Naturalな超自然的存在=THE OUTSIDER(よそ者)が!! てなお話である。
 で、上巻のラストでは、弁護士チームがとある調査を依頼するために、そうだ、旧知のビル・ホッジスに連絡を取ってみよう、という展開になるのだが、我々読者はもうよく知っている通り、既にビルは亡くなっており、代わりにホリーに繋がる、となるわけです。もうこの展開が超見事で、King大先生の作品を読み続けている人なら、この上巻ラストは大興奮したと思う。しかも上巻ではとんでもない事態が起こりまくって大参事になってしまうので、そのハラハラドキドキ感は抜群だ。
 そして問題は下巻ですよ。下巻になると、ホリーがほぼ主人公というか、「実際に超自然的存在と戦ったことのある経験者」として捜査を牽引し、最終的にはテキサスの砂漠で人外の存在との戦いとなるわけで、まあ、結論から言うと最高に楽しめました。
 キャラ紹介も上記画像に書いちゃったので、もう書くことがほぼなくなっちゃったんだけど……自分メモとして、3つ、挙げておこう。
 ◆「OUTSIDER」と言えば……
 まあ、普通の映画オタで50代に差し掛かったわたしのような初老のおっさんたちなら、「THE OUTSIDER」というタイトルを見てまず第一に思い起こすのは、1983年公開の映画『アウトサイダー』でしょう。Francis Ford Coppola監督による青春映画の名作だ。わたしも公開時、中学生でしたが劇場で観ました。以前、会社の若者に、おれ、劇場でその映画観たぜ、と言ったら、凄い尊敬されたっす。でも、本作はあの映画には全く関係がない。
 しかし、実はわたしがKing先生の新刊が「THE OUTSIDER」というタイトルだということを知った時、真っ先に思い出したのは、大学の学部生時代に読んだCollin Wilson氏による名作『The Outsider』の方だ。この本は、小説じゃあないよな……あれはなんだろう、思想書というべきかな? 超ざっくりいえば、社会というか基本的な秩序の外側にいる「局外者」という意味で、ゴッホやヘミングウェイ、ニジンスキーといった芸術家を論じたもので、若かったわたしは激しく感動しちゃって、おれもこのクソみたいな社会の外にいる、アウトサイダーだな……とか青臭いことを、当時は本気で思ってた思い出の作品であります。
 で、なんでこんなことを書いたかというとですね、上巻冒頭のKing先生による引用が、まさしくCillin Wilson氏の著作の言葉から始まっているのです! わたし、なんかのっけから興奮しちゃったす。そして念のため申し上げておきますが、本作はあまりCollin Wilson氏の言うアウトサイダーとは関係なかったすね。ただKing先生は、常に「日常のすぐ隣に存在する闇」を描くお方なので、そういう意味ではKing作品に出てくる「邪悪なる存在」はまさしく「アウトサイダー」そのものかもしれないす。今回は明確な「Super Natural要素アリ」の「黒キング」作品と分類して良いと思います。
 ◆キタ!!「輝き=Shine」そして「Ka=カ」
 下巻のラスト近くでは、我々のようなKing大先生のファンなら大歓喜の、あの用語が出てきますよ!! まず、今回の邪悪なる存在であるアウトサイダーなるものは、おそらくはKing作品お馴染みの「ロウメン=Raw Men」の一種なんだろうとわたしは思いました。この、Rawってのは、直訳すれば「生」ってことで、要するに焼いてない生肉とかのRawで、King作品で言うと『Hearts in Atlantis(アトランティスのこころ)』に登場する「下衆男たち」でお馴染みですな。もちろん「The Dark Tower」シリーズにおける「中間世界」の住人だ。本作では、変身途中(?)の「生」な状態で出てくるし、さらに、「黄色のシャツ(!)」がちょっとしたキーアイテムとしても出てくるので、ロウメンの一種に間違いないと思う。
 さらに、アウトサイダーとホリーの直接対決の場面では、「輝き」と「カ(Ka)」についてアウトサイダーは言及している。アウトサイダー曰く、死体は「輝き」を発していて、それは情報であり、血筋であり、食べ物ではないが間違いなく力の源泉、であるらしい。そして魂―「カ」―はもう消えていても、それでも残っているものが「輝き」らしい。
 この部分は、非常に興味深いですね! 今までのKing作品で出てきた「輝き」能力は、もちろん『The Shining』あるいは『Dr.Sleep』のアレで、要するに超能力的な特殊な力(予知とか遠視とか)なんだけど、ロウメンにとっては目印、のようなもの? なのかもしれないす。正直よくわかりませんが。そして「Ka=カ」については、もうこれは『The Dark Tower』を読んでもらうしかないですな。今までわたしは「カ」とは『The Dead Zone』における「Wheel of Fortune=運命の車輪」つまり、「運命のような抗いがたい力」のようなものだと思ってたけど、今回は「カ」=「魂」と語られたわけで、そこも非常に興味深いす。しかも、下巻でホリー率いるチームは、まさしく「カ・テット」のようでもあって、この辺は『The Dark Tower』を読んでいないと全く意味が通じないと思うけど、とにかく、今回のホリーはまるでローランドのようで、とてもカッコ良かったと思います。
 ◆ホリー! ホントに成長したね! ホッジスもきっと喜んでいるよ!
 最後は、下巻で大活躍のホリー・ギブニーというキャラクターについてだ。ホリーは40過ぎで、精神的に問題を抱えていて、なかなかつらい人生を送ってきたわけだけど、『Mr.Mercedes』事件でホッジスと出会い、君は君のままでいい的に認めてもらえたことで、大きく成長していったわけですが、ホッジス亡き今も、懸命に生きているわけで、わたしはそれが本当にうれしいです。またホリーの出番はありそうですなあ。きっと、King大先生もお気に入りのキャラなのではなかろうか。また、別の作品でホリーには会いたいですな! でも、それってアレか、またもホリーはヤバい事件に出会うってことになるのか。それはそれで気の毒だけど……大丈夫! きっとジェローム君たちが助けてくれるよ! 今回、いい人チームでも殉職者が出てしまったけど、King先生、どうかホリーとジェロームはずっと生きていられるよう、お願いいたします!!

 というわけで、もう長いのでぶった切りで結論!

 わたしが世界で最も好きな小説家は、Stephen King大先生である!!! これはもう、揺るがないですな。それにしても、King先生は今年の誕生日でもう74歳だぜ!? それなのに毎年1冊以上新刊刊行を続けてるんだから、本当にすごいよなあ!! そして日本語で読める最新作『THE OUTSIDER』は超最高に面白かったです!! 文春よ、早く『The Institute』を日本語化してくれ! もう観翻訳作品が4本ぐらい溜まってるのではなかろうか? 頼むよ! そして願わくば、King先生! またホリーが登場する物語が読みたいっす! 待ってます!! 以上。

↓ 超Sci-Fiで、超ヤバイお話だとA嬢が言ってました。はよ読みたい!
The Institute (English Edition)
King, Stephen
Hodder & Stoughton
2019-09-10

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