2020年10月

 わたしがこの世で最も好きな小説家は、Stephen King大先生であるッッッ!
 と、いうことは、もう既にこのBlogにおいて30回ぐらい書いていると思いますが、来ましたよ! 新刊が!! 今回日本語化されて出版されたのは、なんと共著として息子のOwen氏の名前がクレジットされている『SLEEPING BEAUTIES』であります。とっくに電子書籍野郎に変身したわたしですが、いつも通り、KING作品に限ってはまず紙の本を買いました。もちろん、「本棚に並べて悦にいるため」だけの行為であり、電子版もそのうち買うつもりです。
King_sleepingbeauty
眠れる美女たち 上 (文春e-book)
オーウェン・キング
文藝春秋
2020-10-29

眠れる美女たち 下 (文春e-book)
オーウェン・キング
文藝春秋
2020-10-29

 Beauties、美女たち、と複数形なのがミソ、なんですが、まあそれはともかく。本作はWikiによれば2017年刊行だそうで、実はわたしとしては、今すぐ読みたいと思っていたのは、この作品の後にもうとっくに刊行されている2作品の方でありまして、2018年の『The Outsider』と、2019年の『The Institute』の方だったので、なあんだ、Beautiesか、とほんのちょっとだけがっかりしました。まあ、文春はちゃんと、1年後ぐらいには日本語訳を発売してくれるだろうから、待つしかないですな。。。。だってさあ、『The Outsider』はなんとあのホリー(ホッジス三部作のあのホリー!)が主人公の話なんだぜ!? もう今すぐ読みたいに決まってるよね。おまけに『The Institute』はバリバリSci-Fiらしいじゃないですか。もう超楽しみにしてたんすよ……。。。
 まあ、そんなに読みたきゃ英語の原本を読めってことすよね……わたしの元部下の英語ペラペラガールのA嬢は、もうとっくに両作を英語で読んでいて、感想として超ヤバイ! とおっしゃっていました。はあ、くそう、早く読みたいのう……。
 とまあ、そんなこともともかくとして、だ。『SLEEPING BEAUTIES』であります。
 本作のあらすじは、もう帯にもおもいっきり書いてあるけれど、ある日、女性だけが罹患する謎の「眠り病」(=Disneyの眠り姫でお馴染みオーロラ姫にちなんで「オーロラ病」と呼ばれる)が蔓延した世界を描くものだ。その「オーロラ病」にかかり、一度眠ってしまうと、体内から何やら未知のたんぱく質で構成された糸状組織が発生し、「繭」のように全身が包まれて、眠り続けてしまう。そしてその「繭」を破って起こそうとすると、全く別人格のような凶暴な性格となって繭を破った人間(および周囲にいる人間)に襲い掛かり、しばらくすると再び繭を形成して眠りにつく、という恐ろしい奇病だ。
 こんな物語なので、わたしはKing大先生の長男Joe Hill先生(※姉がいるので第二子。本作の共著者Owen氏の5歳年上の兄貴)が書いた『THE FIREMAN』に似てるな、という予断を持って読み始めたのだが……まあ、似て非なるものすね。つうか全く別物すね。そして、ズバリ言うと、完璧にSupernaturalな存在が登場し、むしろ『THE STAND』に似た趣(?)でありました。
 で。どうしようかな、まだ上巻を読み終わった段階で何かを書くのは、ちょっとアレなんだけれど、とにかく今回も登場人物が多いので、ちょっとだけ、キャラをまとめておこうかと思います。下巻を読み始める自分のために。図で示してみるとこんな感じでしょうか。まあ、各キャラの詳細な紹介は全部読み終わってからにした方がいいかな。現状では下記の図で十分でしょう。なお、全員ではないし、上巻の段階ですでに死亡したキャラも含まれてます。
sleepingbeauties
 本作は、ある意味では現在の我々が直面しているCOVID-19パンデミックとも共通する面はあるものの、もっと深刻かつ謎が多すぎていて、科学で立ち向かえないのが恐ろしいところだろう。さらに言うと、全世界で「オーロラ病」は蔓延しているものの、描かれるのは舞台となるアメリカ東部、アラパチア山脈にほど近い田舎町(Washington D.C.まで車で数時間)での出来事がメインなので、よりパーソナルというか、人類VSオーロラ病というスケールではなく、あくまで登場人物たちそれぞれの個人的な動きが描かれている。
 結果として、極めて生々しいというかですね、まあ、ホント、アメリカって国はマジで終わってんなあ、という感想を抱かざるを得ないですな。ドラッグや銃が普通に生活の中にあって、科学的な話を誰もせず、勝手な思い込みでみな行動するわけで、本作ではもう、どうしようもなく邪悪、どうしようもなく自分勝手、どうしようもなく愚かな人物が数多く登場します。とにかく、他人はどうなろうと自分さえよければいい、ってのが根本にあるのが、とにかくまあ、恐ろしいというか、不愉快ですなあ。おりしも現在US大統領選が始まり、4年前、US大統領の椅子は金で買えることを証明した国家なので、読んでいてホントに暗い気持ちになる物語ですよ。これが後半、どう終息、あるいはどう破滅していくのか、もうホントに超ドキドキワクワクで下巻を読み始めようと思います。

 というわけで、さっさと結論。

 わたしがこの世で最も好きな小説家はStephen King大先生である! そして日本語で読める最新刊『SLEEPING BEAUTIES』は、想像してたのとは全然違う、Supernaturalなお話、のようです。上巻読了時点においては。いよいよもって主人公は、King大先生の作品ではお約束の通り、もうどうしたらいいかわからないほど「のっぴきならない事態」に陥りつつあり、これから後半、どう物語が展開していくのか、ホントにわくわくが止まらないですな! 結論から言うと、最高であります! まだ上巻ですが! 以上。

↓ ホントはこっちが読みたいんだよオレは。。。早く日本語版でねーかなあ。。。

The Institute: A Novel (English Edition)
King, Stephen
Scribner
2019-09-10

 わたしが『みをつくし料理帖』という小説作品を知ったのは、もう5年前になる。当時大変お世話になっていた、大変な美人のお姉さまから、読んでみたら? と教えてもらったのだが、読み始めてすぐに、こりゃあ面白い、と全巻買って読んでみたものである。当時すでにもう完結してたんだよね。その後、作者の高田郁先生のほかの作品も読みだして、現在シリーズ進行中の『あきない世傳』シリーズは、わたしが今、日本の小説では最も新刊を待ち望むほど気に入っている作品だ。
 で。そんな『みをつくし料理帖』だが、これまで2回、テレビドラマ化されており、最初のテレ朝版は、わたしは観ていなかったけれど(わたしがシリーズを読み始める前に放送されたので存在すら知らなかった)、NHK版は、一応観ていました。が、観ていたんだけれど、どうもキャストに違和感があって、なんかあまりハマらなかったんすよね。。。もちろん、主人公たる「澪」ちゃんを演じる黒木華ちゃんは超ピッタリで最高だったんだけど、又次兄貴と種市じいちゃんがなあ……とか思ってたわけです。
 とまあ、要するにもうテレビでは2回も映像化された『みをつくし料理帖』だが、この度映画となって劇場のスクリーンに登場することになった。
 その映画版の製作は、原作の小説文庫を「ハルキ文庫」として出版している株式会社角川春樹事務所の代表取締役社長たる角川春樹氏だ。パンフレットによれば、春樹氏はもうずいぶん前から、『みをつくし料理帖』を映画化したい、という思いがあったそうだが、配給各社は「だってもう何度もテレビ化されてるんでしょ」的態度で話が進まなかったという経緯があるらしい。そしてわたしとしても、あの長い物語を2時間の映画にしてイケるんだろうか、と思っていたのも事実であります。
 しかし、完成した作品を観て、なるほど、これはNHK版とは結構違う、けど、明らかに『みをつくし料理帖』だ、と思える作品に仕上がっており、わたしとしては大変楽しめました。そして春樹氏に関しては、数々の問題行動(?)ばかりを耳にするので、ちょっとアレだなあ、とか思っていたけれど、まあ、この人はやっぱりクリエイターなんでしょうな、きっと。実に、映画としてきっちり作られていて、ある意味心地よかったように感じたっす。いや、うーん、それはちょっとほめ過ぎかな?

 というわけで、もうどんなお話かは説明しなくていいだろうと思う。超はしょって言えば、大坂出身の女子が、江戸でとあるレストランを任され、その料理で様々な人の心と体をを癒すお話だ。
 なので、ポイントというか、最も重要なのは、その「料理」そのものにあって、いわば「料理」が主役の一つと言ってもいいと思う。そして原作では、出会った人や自らが陥った状況に対して、主人公はいろいろ、どうしよう、どういうお料理にしよう、と悩みあがいて、新作メニューが完成し、めでたしめでたし、となるのだが、今回の映画版では、どうも、その「料理」の存在感が、若干薄めだったような気がする。
 もともと主人公は、大坂出身であり、江戸人たちの味覚のセンスがイマイチよくわからなところから出発する。例えば一番最初の「牡蠣」の食べ方だったり、途中で出てくる「ところてん」の食べ方だったり、大坂人の主人公には、ええ!? と驚くぐらいの違いがあったりする。そして料理人として、最初の関門となるのが「出汁」の違いだ。これを克服するのに、たしか原作小説ではかなり苦戦してたような気がするけど、今回は比較的さらっと描かれてましたな。
 まあ、そういった原作との違い、は、別にわたしとしては問題ないと思うので、置いておくとして、この映画で一番大きく取り上げられるのは、幼少期に生き別れてしまった親友との関係性だ。そっちをメインにしていて、そこはおそらく春樹氏が一番撮りたかった部分なのではないかとわたしには感じられた。そこがいい、と強く思うことはないし、そこがアカン、とも思わないけれど、映画として2時間でまとめる軸としては、それがベストだったのではないかと思う。
 『みをつくし料理帖』という作品は、基本的には全体の大きなお話の流れの中に、一つのお料理ごとにエピソードが配置されていて、ある種の短編連作的でもあるのだが、連続ドラマならそのままでいいけれど、映画としては、それだとまとまりがないというか……やっぱりしっかりとした軸が必要なのは間違いないだろう。なので、あさひ太夫とのエピソードを深く描く選択をしたんだろうな、と思いました。その結果、源斉先生はほぼ活躍しないし(そもそも原作の最初の方の話なのでやむなし)、小松原さまとの恋も、ほんのうっすら、淡い感じ(?)で描かれるのみでありました。
 で。わたしとしては、お話うんぬんよりも各キャスト陣の熱演が素晴らしかったということを書いておきたいと存じます。いやあ、なんか、かなり原作を読んでいる時のイメージに近かったような気がしますな。
 ◆澪:主人公。大坂で幼少時を過ごし、大水で両親を亡くす。そして災害遺児としてふらふらしてるところを大坂の料理屋さん救われ、そこに奉公することに。その後、絶対味覚めいた料理の腕で、女料理人となる。さらにその後、お店が江戸に進出した際、主人夫婦とともに一緒に出てくるが、江戸店はビジネスとして惨敗、閉店となってしまい、主人は死去、一人息子の跡取りは失踪、というどん底生活で、奥様(=大坂商人の言葉でいう「ご寮さん」)と一緒に神田明神の近くの長屋で暮らしている。そして近所の蕎麦屋「つる屋」で下働きをはじめ、その後「女料理人」としてキッチンを任されるようになり……というのが、本作開始時点での状況。年齢としてはまだその時二十歳前ぐらい(本作映画版では18歳だったのかな?)。逆に言うとそこから始まるので、こういった過去はすべて回想で語られる。大坂の少女時代、とある占い師に「雲外蒼天」の相を持つと言われたことがポイントで、要するに、さまざまな艱難辛苦に出会う、けれど、それを抜けた先は超晴天でHAPPYになれるよ、というある意味ものすごく残酷な運命を告げられちゃってるわけで、とにかく原作ではおっそろしく辛い目にばっかり遭うことに。でも、それでもめげないのが澪ちゃんの魅力ですよ! そして、澪ちゃんの最大のチャームポイントが、作中で何度も出てくる「下がり眉」なんすけど、今回、澪ちゃんを演じた松本穂香さんは非常に良かったですな。なんつうか、けなげな感じがとてもグッときました。ただ、若干顔つきが可愛すぎて、現代人過ぎるというか、目がぱっちり過ぎるというか、江戸時代人に見えないんだよな……江戸時代人に会ったことないけど。個人的には、NHK版の黒木華ちゃんの方が、強力な下がり眉&昭和顔で良かったと思うけれど、実のところ、華ちゃんだと、年齢が若干合わないんすよね……でも、それ以外は完璧に澪ちゃんだったので、わたしは好きだったす。女子の「しょんぼりフェイス」愛好家のわたしとしては、華ちゃん演じる澪も最高でした。ちなみに、松本穂香さんも、黒木華ちゃんも、どちらも本物の大阪人だそうです。
 ◆種市:「つる屋」の主人。そもそもつる屋はお蕎麦屋さんだったが、澪ちゃんの加入で定食屋にチェンジ。種市おじいちゃんにもいろいろ泣かせるエピソードがあるのだが、今回の映画版ではほぼカット。で、今回演じたのは、石坂浩二氏79歳。わたしとしては、NHK版より断然好きっすね、石坂氏版種市おじいちゃんは。でも、原作で眼鏡かけてる設定だったっけ? サーセン、憶えてないす。。。ポイントポイントで非常にイイ感じで、大変お見事なお芝居であったと思います。
 ◆小松原さま:つる屋の常連の浪人さん。実は小野寺という本名が別にあって、仕事も江戸城勤務の若年寄、御膳奉行という超エリート侍。澪ちゃんに数々のアドバイスをする、んだけど若干謎解きめいていて、澪ちゃんがその答えに至る道が面白いポイントなんだけど、本作映画版では若干薄めだったかも。そして、ホントは澪ちゃんも小松原さまも、お互い大好きなのに……道は一つきりですよ。。。という悲恋も結構泣けるのだが、くどいけど本作映画版ではその点もほんのり目、でありました。もちろん、原作ではかなりナイスキャラのお母さんと妹は登場せず、です。しかし、演じた窪塚洋介氏41歳は実によかったすねえ! ぶっきらぼうさや、小松原さまの持つ底知れなさのようなものが非常に原作のイメージに近かったように思います。わたしとしては大変気に入りました。
 ◆源斉先生:澪ちゃんのご近所に住まう医者。最初からずっと澪ちゃんが大好きな男だが、肝心の澪ちゃんからは、なかなか恋愛対象に入れてもらえない残念系男子。でも原作のラストでは結ばれるのでご安心を。澪ちゃんに「食は人の天なり」の言葉を授けたお方。今回の映画版では、何度も書きますがあまり活躍せず、恋愛方面もほぼナシ。一方的に、源斉先生はお澪ちゃんが好きなんだろうな、ぐらいの描写のみ。演じたのは小関裕太氏25歳。まあ、残念ながらあまり存在感ナシでした。脚本上、これは仕方がないす。
 ◆あさひ太夫=野江:澪ちゃんの大坂時代の親友。澪ちゃんが「雲外蒼天」の相である一方、野江ちゃんは「旭日昇天」の相と言われ、征く道の天下を取る器量があると告げられた。もともと商家の末娘(=こいさん)で、裕福だったが、大水で両親を失い、本人も記憶混濁でふらふらしているところを、とある女衒によって吉原に売り飛ばされる。そして成長した現在は幻の花魁「あさひ太夫」として吉原の扇屋のTOP花魁になっている。澪ちゃんが、あさひ太夫=野江であることに気づく前に、話題の女料理人=澪、であることに気づき、つる屋が放火された時、資金援助をする。とってもいい人。二人の「きつねこんこん」は、危うく泣けそうになったぐらい、どういうわけかわたしのハートに刺さりました。そんな野江を今回演じたのは奈緒さん25歳。正直、わたしは知らないお方なんすけど、イイ感じに花魁っぽい、なんだろう、色気?のような、得も言われぬ空気感がとても良かったすね。現代的な美人とかかわいい系ではなく、なんつうかな……浮世絵に描かれてるような、いわゆる「うりざね顔」っていうのかな、独特な感じがある方っすね。大変結構かと存じます。
 ◆又次:吉原の扇屋にて料理を作ったり用心棒的だったり、と働いている人。武闘派なんだけど超イイ人なんすよ、又次兄貴は。あさひ太夫に命の借りがあり、あさひ太夫のためなら命を投げ出すことも厭わない男なんだけど、原作ではなあ……その最後が超泣けるんすよ。。。兄貴。。。そんな又次兄貴を今回演じたのは、二代目中村獅童氏48歳。いやあ、すごい良かった! 見事な又次だったと思います。大満足っす。
 ◆芳 aka ご寮さん:澪ちゃんがそもそも仕えている奥様。体弱い系ご婦人なんだけど、原作ではのちに結構意外な展開で運命を拓く、なかなか強い人。今回の映画版は原作の序盤だけなので、若干弱い系のままでした。演じたのは若村麻由美さん53歳。おおう、もうそんなお年なんですなあ。。。わたし的には、NHK版の安田成美さまが美しくて、とても好きでした。
 ◆おりょうさん:澪ちゃん&ご寮さんと同じ長屋住まいの奥さん。バリバリ江戸っ子の気が短いチャキチャキ系元気な奥さん。いろいろと二人を助けてくれるし、つる屋が忙しいときはウェイトレスとしても大活躍する。今回の映画版で演じた浅野温子さんは、非常にわたしが原作を読んでいた時のイメージに近くて、すっごい良かったす。
 ◆清右衛門:つる屋の常連の、口うるさいおっさんだが、世間的には戯作者(=小説家)として有名な男でもある。このおっさんは、いつも澪ちゃんの料理に難癖をつけるやな野郎だけど、何気に何度も物語のキーとなる働きをしている。モデルは滝沢馬琴のようで、これは原作通りなんだけど、今回の映画の中でも「ええっ! 八犬伝の!?」とか言われるシーンがありまして、清右衛門の奥さんを、薬師丸ひろ子さんが演じてるわけですよ。青春の80年代を過ごしたわたしとしては、胸アツでした。わたし、かつての角川映画の、数々のトンデモ時代劇が大好きだったんすよね……。意味が分かる人は、確実に50代だと思いますw で、演じた藤井隆君48歳は、ちょっとイメージより若すぎるかも?とは思ったけれど、演技ぶりは大変良かったと思います。
 とまあ、メインどころはこんな感じなんすけど、薬師丸ひろ子さんだけでなく、なんと野村宏伸氏(ぱっと見ではわからないほど老けててつらい……)や、渡辺典子さん(一発でわかるほどお変わりなく美しい!)も出演されていて、まあ、角川春樹氏の最後の監督作ということで、懐かしい皆さんに会えたのも、おっさんとしては大変うれしかったです。でもさあ、そこまでやるなら、なんでエンディングの歌を原田知世さまに唄ってもらわなかったのかなあ……それがあったら、わたし的にはパーフェクトだったのにな。そこだけが、ものすごく残念す。まあ、50代未満の方には全く意味が通じないと思いますが。

 というわけで、もう書いておきたいことがなくなったので結論。

 わたしの大好きな時代小説『みをつくし料理帖』が映画化されたので、これは観ないとアカン、と劇場へ赴いたのだが、結論をズバリ言えば、大変楽しめる作品だったと思う。ただし、原作未読でこの映画を観て楽しめるかどうかは、正直よくわからない。いろいろと描写がはしょられている背景があるので、ひょっとしたら厳しいかもしれない。でも、そんなこたあ、知ったことじゃないし、わたしが楽しめたからいいや、と思います。本作は、それぞれのキャラクターが原作を読んでいる時にイメージしていた像にとても近くて、大変好ましいと感じました。なんかなあ……妙に泣けそうになっちゃったんすよね……澪ちゃんと野江ちゃんのやりとりに。これはアレなのかな、わたしの原作への愛が強かったからなのかもしれないな……。そういう意味でも、原作を読んで面白いと思った人はぜひ見ていただきたいし、原作を読んでない人は……しらんす。ご自由にどうぞ、ってことで。しかし、角川春樹氏も丸くなったんすかねえ。本作を包む空気感が、とてもやさしく温かかったのが印象的であります。まあ、わたしもホントに年を取ったので、こういうお話にグッときちゃうんでしょうな。だって、にんげんだもの。しょうがないっすよ。以上。

↓ NHK版の黒木華さんがみせる「しょんぼり顔」はマジ最高だと思います。
みをつくし料理帖スペシャル [DVD]
木村祐一
NHKエンタープライズ
2020-10-23

 やっぱり劇場は最高ですなあ……。
 先週、わたしは新幹線をカッ飛ばして兵庫県宝塚市の「宝塚大劇場」へ日帰り遠征してきたわけだが、本日は東京日比谷の「東京宝塚劇場」へ行ってきた。もちろん、現在絶賛公演中の花組公演『はいからさんが通る』を鑑賞するためであります。
haikara
 今回のわたしの席は結構前だったけど上手側のはじっこでありました。でも全く鑑賞の妨げはなく、大変観やすかったと思う。しかしアレっすね、先週の大劇場は、かなり座席でおしゃべりに興じる淑女の皆さんが多かったけれど、今日の東京は全く静かでありました。いや、別におしゃべりしてもいいと思うけど、大劇と東宝はやっぱりずいぶん違うな、とは感じたっす。
 というわけで、本公演は新・花組TOPスター柚香光さん(以下:ゆずかれー)の大劇場お披露目公演なわけで、本来の予定は5月だったかな、5カ月遅れの東京お披露目であります。しかし実はこの『はいからさんが通る』という演目は、ゆずかれー君は2017年に梅田ドラマシティと日本青年館で演じており、たぶん珍しいと思うけれど、いわゆる「再演」がお披露目演目に選ばれたわけで、それってどうなの?的な思いは、若干わたしの中にあった。とはいえ、2017年版は公演を観に行ったわけではなく、スカイ・ステージの放送で観ただけだったし、確かに面白く、なんといってもゆずかれー君の「伊集院少尉」はそのビジュアルからして最高であり、実際、まったく文句はないけれど……まあ、「またやるんだ?」的な思いがあったのは事実であります。
 なので、わたしとしては、今回の『はいからさん』に関しては、このところわたしが猛烈に激推ししている音くり寿さん(おと くりす。以下:くりす)と、この公演の後に雪組へと組替えとなって雪組のTOP娘役就任が発表されている朝月希和さんをじっくり見つめよう、とか考えていたのである。
 しかし、だ。サーセン! オレが間違ってました!!
 やっぱり、3年の歳月は、確実に人を成長させますなあ! 主役のゆずかれー君、そしてヒロインの華優希ちゃんともに、2017年からさらにレベルアップしているのは間違いないすね。マジ最高でした!

 というわけで。『はいからさんが通る』といえば、もう様々なメディアに展開された有名作品で、なんと1979年にはテレビドラマとして宝塚歌劇の生徒が出演したものが放送されてたそうだが、わたしは原作漫画は読んでいないし、アニメも観ていない。若干変化球だけど、わたしの年代だと、1987年12月に公開された南野陽子さん主演の実写映画版でお馴染みなのであります。その映画で伊集院忍少尉を演じたのは、ローマ人でお馴染みの阿部寛氏ですよ。懐かしいですなあ。
 まあ、そんなことはともかく。上記の動画の通り、宝塚版『はいからさん』は、現在の宝塚歌劇が誇るイケメン、ゆずかれー君がおっそろしくカッコ良く伊集院忍少尉を演じているわけです。男のわたしから見ても、スーパー超イケメンであり、完璧なる伊集院少尉でありました。素晴らしいじゃあないですか。わたしは、ゆずかれー君に関しては、歌がなあ……とか思っているけれど、やはり、わたしの評価としては、ゆずかれー君の最大の強みは、繊細かつ心情あふれた演技=芝居そのものであり、今回の、いろいろとつらい目に遭う伊集院少尉の苦悩だったり、そんな伊集院少尉の心の癒しである紅緒にむける微笑みだったり、もう、パーフェクト! に表現されていたように思います。やっぱり、ゆずかれー君が芝居の人だというわたしの評価は揺るがないす。そしてやっぱり、とにかくスタイルがいいので、ダンスが素晴らしく優美であるのも間違いないでしょうな。確実に、TOPスターとして真ん中で踊る技量を備えているのも間違いないす。フィナーレの、純白衣装でのデュエットダンスは、ホント美しかったですなあ! おそらく、宝塚歌劇を観たことがない淑女が、今回の『はいからさん』を観たら、一発でゆずかれー君の虜となり、ズカファンまっしぐらになることとと思います。3年前と比較しても、確実に成長し、実に美しくカッコ良かったです。
 そしてヒロイン、花村紅緒を、前述の通り花組TOP娘役の華 優希さんが演じているわけですが、物語の主人公は、明確にこの紅緒なわけで、華ちゃんのウルトラ超熱演ぶりは、本当に素晴らしかったです。3年前との比較で言えば、わたしには華ちゃんの方が、より一層その成長を感じだっすね。ちょっと前までの華ちゃんと比べても、ずっと成長したようにも思います。つうかもう、今回の熱演は、本作をもって華ちゃんの代表作と言って差し支えないすね。それほど、華ちゃん演じる紅緒は、完璧なる「はいからさん」でありました。怒る紅緒、酔っぱらう紅緒、歌って踊る紅緒、そして、決意に満ちた表情の紅緒。どれも素晴らしく魅力的でありました。あえて言うなら、現在の宝塚歌劇団娘役の中でも、華ちゃん以外にはできなかった、素晴らしい「はいからさん」でした。お見事だったと存じます! そういや、草履が脱げちゃったのも、実に「はいからさん」っぽくて、とても可愛かったね。美穂圭子さんにそっと持ってきてもらって、ゆずかれー君のアドリブで大ウケだったから、結果オーライですw
 で。あとは、各キャラとキャストごとに短くまとめようと思います。
 ◆音くり寿ちゃん as 北小路環:何かとアクティブなお嬢様、環を演じたのは、100期生の音くり寿ちゃんです。わたしはそもそも星組イチオシなので、実は花組の若手はあまり詳しくないんすけど、ちょっと前に、スカイ・ステージで放送されていた、「La Belle Voix~娘役の美しき歌声」って番組がありまして、全5回で、各組の「歌自慢」な若手娘役が3人出演して、歌ってくれる番組だったんですが、わたし、実はこの番組の花組の回で、初めて音くり寿ちゃんを明確に知りました。いやあ、とにかく美声。すっごくイイ!! とあの番組以来、もう大ファンですよ。あの番組で歌っていた「タカラジェンヌに栄光あれ」がもう何度でも聞きたくなるぐらい素晴らしくて、マジ度肝を抜かれたんですが、そのくり寿ちゃんが今回、環の役が付いたと知って、わたしはもう、超うれしかったす。そしてくり寿ちゃん演じる環は最高でしたなあ! 歌も演技もダンスも、超イイ!! 3年前の環は、もう退団してしまったしろきみちゃんで素晴らしかったけれど、まあとにかく、今回のくり寿ちゃんも全く引けを取らない素晴らしさでした。エトワールも担当していて、その美声にしびれまくったす。現在の娘役さんたちは、意外と背の高い方が多いですが、くり寿ちゃんは結構ちびっ子ですね。だがそれがいい!! 今後も激プッシュしていきたい所存であります! 最高でした!
 ◆朝月希和さん as 花乃屋吉次:亡き夫が伊集院少尉の元部下であり、柳橋の芸者として生きる凛とした女性。そんな吉次姐さんを今回演じたのが、前述の通りこのあとで雪組TOP娘役に就任することが発表されている朝月希和さん。恥ずかしながらわたしは今まで朝月さんのことをほとんどよく知らなかったんですが、非常に美人ですなあ。96期生だったとは全然知らなかったす。これで96期生4人目のTOP娘役の誕生すね。今回、あまり歌が聴けなかったけれど、ラストの短いショー的部分ではすごい存在感あるダンスぶりで、目に付いたすね。まあ、花組(8年間)→雪組(2年間)→花組(数カ月)→雪組と組替えすることになるわけで、その心の整理は大変だと思うけれど、頑張っていただきたいですな。とにかく、美人ですよ。完璧憶えたので、雪組へ行っても応援いたしたく存じます。
 ◆瀬戸かずやさん(以下:あきら) as 青江冬星:親が銀行を経営していて、何気におぼっちゃまなんだけど、その道に背を向けて自ら出版社を経営する冬星。極度の女嫌いの自称「男尊女卑」な男だが、ヒロイン紅緒をやさしく(?)癒す、伊達男。3年前は鳳月杏さん(以下:ちなつ)が演じた役ですが、ちなつさんが月組に戻ってしまったので、今回はあきらさんが演じる。まあ、サーセン、あきらさんには大変恐縮ですが、わたし個人としては、ちなつさんの冬星の方が好みっす……。
 ◆永久輝せあさん(以下:ひとこ) as 高屋敷要:少尉の友人であり作家。でも、物語的にはコイツ、結構ヒドイ野郎じゃないすか? そして出番もちょっと少なめです。演じたのは、雪組から花組へと移って初めての大劇場公演となった、ひとこ君。ふと思ったんだけど、どうせだったら、マイティーの鬼島と、高屋敷と役をチェンジするか、日替わりの役替わりでもよかったんじゃね? とか無責任に感じたっす。だって、高屋敷があんまり目立たないんだもの。。。まあ、ひとこ君も間違いなく将来のTOP候補だから、今後ますますのご活躍を祈念いたします。
 ◆水美舞斗さん(以下:マイティー) as 鬼島軍曹:伊集院少尉の部下でワイルド系軍人。鬼島を救うために少尉は行方不明になってしまったため、鬼島は少尉とその許嫁である紅緒のためにいろいろ行動してくれるナイスガイ。演じたのは3年前と同じくマイティーが再登板。どうせなら高屋敷もマイティーが役替わりで演じたら面白かったのにな。つうかですね、鬼島軍曹は、ロシアの戦地で少尉に紅緒の写真を見せてもらって、「ええ~~!? こ、これは……(微妙だぞ)……」的に、軽く紅緒の容姿をディスるんすけど、おい君ィ! 華ちゃん紅緒は超かわいいじゃんか!! 「じ、実物は可愛いんだ!」って、少尉、それ、フォローになってないぞ!w しかしこのBlogで何度も書いてますが、マイティーはホントにここ数年でグッと色気と存在感が増しましたなあ。大変良いと思います。
 とまあ、キャスト&キャラについては以上かな。

 で、最後にひとつ、自分用メモとして記しておきたいのだが……。
 何度も書いていますが、わたしは星組がイチオシで、礼真琴さん(以下:こっちん)のファンクラブに入って5年、なのに、こっちんのお披露目公演は3回観に行くチケットを買えたものの、3回ともすべて休演となってしまい、観ることが出来なかったのです。とてもとても残念で、ホントにしょんぼりでありました。
 そんなこっちんと、今回のゆずかれー君は同じ95期の同期入団ですが、かなりいろいろと違う面があって、そもそも年齢も違う(※宝塚音楽学校は、同じ年に入学しても、中卒で入学した人と高卒で入学した人では、最大3歳の違いがある)わけです。
 こっちんは、正確にはわたしは知らないけれど、高校1年か2年終わりでの入学だし、ゆずかれー君は中卒での入学なので、少なくとも1歳か2歳は年齢が違うはず(※なので、年齢も逆算すればだいたいわかる、けどそんなのは野暮なので計算しません)。そして、こっちん最大の魅力が「歌」とキレのあるダンスであるのに対して、ゆずかれー君は歌が若干アレで芝居の人。
 さらに言うと、こっちんは若干小柄で、顔も童顔&かわいらしい系であるのに対して、ゆずかれー君は背もすらっとしていて、彫の深いローマ人系の美形。ついでに、入団時の成績はこっちんが95期首席であり、ゆずかれー君は20番ぐらいだったかな。どうも、いろいろなインタビューなどを見ても、音楽学校時代のこっちんとゆずかれー君は、同期とはいえそれほど仲良しチームだったわけではないみたいすね。
 こう考えると、かなり対照的な二人だけれど、時を同じくしてTOPスターに登極した偶然(?)は、きっと今後、二人にとって大きい絆になるんじゃなかろうか、という思いがします。こっちんは、何かのインタビューで、早くから新公主演とか抜擢されてきた自分の苦労を一番分かってもらえるのは、同じく抜擢されてきた柚香光だ、なんてことをおっしゃってましたな。一緒の仕事をしたことは少なくても、常に分かり合える、常に心がつながっている、二人。こっちんのお披露目を観ることが出来なかったのはホント痛恨というかしょんぼりだけど、かれー君の見事な伊集院少尉を観ることが出来て、本当に良かったと思うす。
 えーと、なんか無駄に長くなったけど、何が言いたいかというと、要するに、こっちん、かれー君、TOP就任、本当におめでとう!! ってことです。ある意味、TOP就任は「終わりの始まり」ではあるのは間違いないと思う。就任早々アレだけど、わたしは二人のこれからを、全力の拍手で応援し続けたいと思います。

 とまあ、こんなところかな。もう書きたいことはないかな……。
 では最後に、毎回恒例の今回の「イケ台詞」を発表して終わりたいと思います。
  ※イケ台詞=わたしが「かーっ!! カッコええ!!」と思ったイケてる台詞のこと。
 「私はきっと少尉が生きていると信じています! だから帰ってくるその日まで、少尉を迎えるために、この家を守っていきます。それが私の! 少尉の妻の務めです!
 今回は、少尉の「ええ。好きですよ」とか、編集長の「全部忘れさせてやる」などのイケ台詞も多かったのですが、やっぱり一番は、1幕ラストの紅緒のセリフにしました。この時の華ちゃんの表情は最高だったすね。本当に成長したなあ、と我ながら偉そうに感じたっす。普段の華ちゃんは大人しめな女性ですが、あの気迫あふれる芯の強さは本当にお見事でした。

 というわけで、結論。

 しかしまあ、ようやく、生の舞台観劇ができるようになりつつあって、ホントにうれしいですな。そして花組第27代目TOPスターに就任した柚香光さんの大劇場お披露目公演『はいからさんが通る』は、大変面白く、かれー君の繊細な芝居が心に響くお話でありました。そして相手役の華 優希さんも、とても芝居が見事だったすね。フィナーレの二人のデュエットダンスの美しさも際立ってましたなあ。あの空間は、本当に生の観劇に限りますね。映像には記録されない、空間を支配する空気みたいなものは、生の劇場でないと味わえない、極めて貴重なものだとつくづく感じました。観劇が当たり前じゃあなかった数カ月。そして今後も続く様々な規制。それでも、わたしは可能な限り劇場へ行って、素晴らしいパフォーマンスに拍手を送り続けたく存じます。こっちん、そしてかれー君、本当にTOP就任おめでとう!! 以上。

↓ これっすね! おおっと、配信で観られるんだ。なんて便利な世の中!
はいからさんが通る
丹波哲郎
2018-12-25

 やっと、やっとだよ。。。
 昨日の2020年10月4日の日曜日、わたくしはAM0600東京発のぞみ1号をぶっ飛ばし、兵庫県宝塚市に存在する宝塚歌劇団の本拠地「宝塚大劇場」へ行ってまいりました。はあ、それにしても長かったなあ……。ちょっと、自分用備忘録として、2月以降わたしが行けなかった公演をメモしておこう。
 ※ファンには常識ですが、以下でいう、大劇=宝塚市の「宝塚大劇場」のことであり、東宝=日比谷の「東京宝塚劇場」のことです。
 ◆2月9日:宙組公演『『El Japón-イスパニアのサムライ-/アクアヴィーテ!! 』@東宝を観劇。これが「コロナ前」最後の観劇となった。
 ◆3月1日:星組公演『眩耀の谷/Ray』@大劇は公演中止。わたしがずっと応援してきた礼真琴さま(以下:こっちん)のTOPお披露目公演だったのに。。。この日をわたしはファンクラブに入って5年、ずっと待ち望んでいたのに。。。
 ◆3月20日:雪組公演『ONCE UPON A TIME IN AMERICA』@東宝は、ズカ師匠にチケットを譲ってもらったのに、公演中止。結局観られず。悲しい……
 ◆4月12日:星組公演『眩耀の谷/Ray』@東宝も公演中止。チケット2枚アウト。
 ◆4月18日:花組公演『はいからさんが通る』@大劇も勿論中止。チケット2枚アウト。
 ◆6月13日:星組公演『シラノ・ド・ベルジュラック』@ACTシアターも中止。
 ◆8月9日:花組公演『はいからさんが通る』@大劇は、7/31に再開したのに、残念ながら感染者発生で中止。わたしなんぞよりも、演者の皆さんの無念を思うとホント泣ける……。
 ◆8月15日:星組公演『眩耀の谷/Ray』@東宝も、同じく感染者発生で中止。これで、わが愛しのこっちんお披露目を生で応援することが出来ないことが確定。ぴえーーーん!
 とまあ、こんな感じに、7公演9枚のチケットがパーになったわけだが、すべて劇団はキッチリ払い戻してくれており、わたしには経済的損失が一切なかったのは、ホントに、さすが、だと心から思う。
 そして、もちろんわたしの心は、大変残念というか非常につらい思いが募ったわけだが、まあ、そんなものは演者や劇団関係者の皆さんの無念からすれば全く比較しようもなく、ファンとしてはもう、劇団にお金を遣って応援するしかない! とわたしは判断し、まず「TAKARAZUKA SKY STAGE」に加入することにしたし(※この顛末は「TAKARAZUKA SKY STAGE」加入への意外と険しかった道のりに関する記録を参照してください)、結局観ることが出来なかった星組公演『眩耀の谷』も、さっさとBlu-Rayを買ったし、ほかにも毎年4月に発売される「おとめ」やいろいろ、ほぼ払い戻されたチケット分は買い物したんじゃね? というぐらいの金額をネット通販にブチ込んでみたりしたわけです。
 そして、とうとう、その日が来たのです。わたしにとっての、8カ月ぶりの観劇の日が!! わたしはこのBlogで何度も書いている通り、チケットはほぼすべて「宝塚友の会」という劇団直営のファンクラブ的仕組みに加入して、購入している。なので、公演中止の際も、何の手続きもせず、自動的に払い戻してくれたのだが、今回も、もちろん「友会」にて、初めて大劇場でSS席が当たったので、昨日は超ウキウキで新幹線に乗車したのでありました。
 まあ、結論から言うとですね、最高of最高で、こんなに笑えて楽しいなんて! とびっくりするぐらいとても面白かったのであります。そしてついでに言うと、わたしは終演後、即帰ったので、家に着いたのは19時前でした。急げば15時ちょうどぐらいの新幹線には乗れるっすね。ホントは新装オープンした宝塚ホテルを見物しようかと思ったけど、ズカ淑女の皆様が大勢いらしたので、感染防止的観点から遠慮しときました。
 というわけで、わたしにとって8カ月ぶりの宝塚歌劇は、月組公演『WELCOME TO TAKARAZUKA -雪と月と花と-/ピガール狂騒曲〜シェイクスピア原作「十二夜」より〜』であります! いやあ、ホント面白かったす!

 というわけで。本公演は、上記動画の通り、日本物のレビューと、ミュージカルお芝居の二本立てであります。そして珍しいことに(というかたまにあるけど)、レビューが先攻です。
 今回の公演は、今年の春、宝塚音楽学校を卒業して劇団へ入団した、106期生の初舞台公演でもあり、通常東京で観ているわたしは、ズカ歴11年半にして初めて、いわゆる「初舞台生の口上」を生で観ることが出来ました。いやあ、なんつうか、完全にお父さん目線というか、観ているわたしも緊張するっすね、初舞台生の口上は。そしてロビーにはこんな感じの全員の写真と、当日、口上を担当する二人にはお花がついてました。昨日の渚ゆりさんは、超かわいかったので、今後注目しようと思います。
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 この口上も、普通は冒頭(?)なんだと思うけれど、今回は最初のレビューのオープニングの後、という珍しい(??)構成になってました。たぶん、今回の和物レビューは、いわゆる「チョンパ」というもので、真っ暗に暗転している劇場に、「チョーーン!」と拍子木が鳴って、「パッ」と照明がつき、出演者全員が舞台に揃ってる、という場面から始まるので、そのため口上は後になったのかも……しれないす。【追記:今月スカイ・ステージで放送している「初舞台特集」で初めて知ったのですが、80年代とか90年代は口上もなかったり、途中だったり、最後だったり、いろいろ違ってたんすね。そして日本物の場合は今回同様、オープニング後ってのも普通にあったみたいですな。70~80期代の映像を観てさらに驚いたのは、関西テレビとかNHKとか制作の映像で、そりゃスカイ・ステージもなかったから当たり前だけど、普通にテレビ放送があったんですなあ。へえ~】
 いずれにせよ、6場45分はホントにあっという間でした。主題歌の「ウェルカム! ウェルカム!」が超耳に残るんすけど、本来本作は、東京五輪に合わせて世界の皆さんへ「ようこそ!」な和物だったわけで、坂東玉三郎氏監修、そして先日退団を発表された専科の松本悠里先生のファイナル舞踊ということもあって、非常に注目の作品なのだが、まあ、とにかく美しく、何度も書きますが、あっという間でありました。みなさん、やっぱり和服&青天も似合いますなあ! ラスト近くで松本先生が舞っている時の歌(=いわゆるカゲソロ。今回二人だったのでカゲ・デュエット)がすごく印象的だったので、誰だったんだろう? とプログラムでチェックしてみると、きよら羽龍ちゃんと咲彩いちごちゃんの104期生コンビでありました。大変良かったと存じます。(※でも! 実は現在の公演は感染対策上、演者を絞っており、わたしが観た回ではきよら羽龍ちゃんは『ピガール』には出演してませんでした。おっかしいな?? と思って後でプログラムを観て初めて出てないことを知ったす。超残念だよ……!)
 そしてあっという間の45分ののち、35分といつもよりチョイ長めの幕間を挟んで、ミュージカル『ピガール狂騒曲〜シェイクスピア原作「十二夜」より〜』が始まります。
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 大劇場の壁面にはズドーンと今回のポスターが。
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 そして幕間中の舞台には「Frénésie à Pigalle」。英語で言うと「Frenzy at  Pigalle」って感じか? 日本語ではまさしく「ピガール狂騒曲」ですな。
 そうなんです。わたし、全然キャラ相関図とか予習してなかったので、Shakespeareの『十二夜』原作というので、物語は原作通りイタリアが舞台なのかな? と思っていたけれど、なんと舞台はフランスはパリの「Moulin Rouge」であり、おまけにポスターイラストでお馴染みのLautrec氏も登場してくるのです。なので年代は1900年、20世紀前夜という時代設定となっていました。
 そして、時代や場所の改変は、別に全く問題ないとして、物語自体は、とても上手(?)に元の『十二夜』をアレンジしたものになっていて、そりゃもう大騒ぎの喜劇のテイストはバッチリでありました。ここまで笑えるとは思ってなかったすw
 Shakespeareではよくある「男装の麗人」だったり「劇中劇」だったりは、やっぱりビジュアルとして観ていて楽しいですな。そして勘違いから生じる大騒動ののち、ラストはハッピー&ピースフルなのもいいすねえ! つうかですね、わたしは常日頃から、月組TOPスター珠城りょうさん(以下:たまきち)は「女子として非常に綺麗で可愛い」と申しておりますが、たまきちくんの男装の女子ぶりは大変結構なお点前だったと存じます。そして舞台上での一人二役は、きっと着替えやメイクチェンジで、舞台裏はもう大変だったでしょう。実にお見事だったと賞賛いたしたく存じます!
 というわけで、以下、各キャラと演じたキャストごとのメモで終わりにします。
 ◆ジャック(=実は女性のジャンヌ):もちろん演じたのは上記の通り月組TOPスターたまきちくん。もう最初から、いつもとメイクが違っていて、女子っぽさが漏れ出ており、大変可愛かったと思うすね。とある理由から男装していて、ムーラン・ルージュで仕事がしたいと押しかけてくる行動派の女子。そしてその美貌から、女子にモテモテとなってしまい、わたしは女なのに!と困っちゃうわけですが、まあ、そりゃそうなりますわなw たまきちくんは、いつも書いている通りとにかく陽キャラで、どこか世間慣れしていない王子様的雰囲気が持ち味ですが、女子であっても王子様というキャラはもうピッタリでありました。最高です。
 ◆ヴィクトール:ジャンヌと幼少期に生き別れたベルギー貴族の青年。パリに来たついでにジャンヌを探すが、ムーラン・ルージュの騒動に巻き込まれて……。容姿はジャンヌと生き写し、ということで、たまきちくんがこちらも演じていますが、やっぱり男役スターとしては、ヴィクトールの方が演じやすかったかもしれないすね。出番は少ないですが、本来のたまきちくんの王子様感はヴィクトールの方が当然「いつもの」感じすね。
 ※追記:なんと昨日の10/4は、たまきちくんのお誕生日だったそうですね! ぬおお、超抜かってた! 誕生日ネタのアドリブにキャッキャできなかったわたしはファン失格だよ……。。。
 ◆ガブリエル:作家のウィリーの奥さんだが、実は作品を書いていたのは彼女で、「女性は作家になれない」的な世の中に頭にきており、ついでに夫のボンクラぶりにも激怒しており、離婚を決意。この設定が20世紀へ向けた世の中の変化、というスパイスになっている。大変な美人で、微妙に落ち目になりつつあるムーラン・ルージュの主から、そうだ、美人で作家のガブリエルを主役に演目を作れば、興行的に大成功できるんじゃね!? と出演のオファーを受ける。演じたのはもちろん月組TOP娘役の美園さくら(以下:さくら)ちゃん。なんつうか、さくらちゃんは今回のような、頭が良くて気が強い的な攻め系キャラはホント似合うね。わたし的には、怒っている表情の時のさくらちゃんは、非常に可愛いと思います。
 ◆シャルル:ムーラン・ルージュのオーナーで、若干落ち目な中、ガブリエルの舞台起用をひらめき、ちょうど押しかけ面接にやってきたジャックに、ガブリエルを口説いてきたら雇用してやろう、と持ち掛ける。ちょっと面白キャラかと思いきや舞台に対する情熱は真面目で、そんなシャルルに、ジャックことジャンヌは (――こ、この人って――トクン……) と胸ときめいちゃうわけです。ええですなあ! この、シャルルの舞台に対する思いは、まさしく今の舞台演劇の状況を反映しているものだったようにも思います。演じたのは正式な2番手スター月城かなと(以下:れいこ)さん。まあ、とにかくれいこは美形ですよ。そして2番手としての存在感がグッと増してますねえ! 歌もとても良かったし、次の月組TOPスターを期待したいですなあ。衣装や髭ダンディぶりも、すごいカッコ良かったす。
 ◆ウィリー:ガブリエルの夫。今回一番ダメな人。まあ、強いて言うと、当時の世の中の風潮としてはごく当たり前なんだろうとは思うが、ガブリエルを束縛し、女は黙ってな、的なお方。極悪人というより、ずるい人?で、ほんのり、面白おじさんでもある。演じたのは月組に帰ってきた鳳月杏(以下:ちなつ)さん。とにかくちなつさんは、その「眼」のクールさが独特で、前半の和物レビューでの「日本男児」メイクはとにかく美しかったですな。青天が超似合うすね。
 ◆ボリス:ガブリエルに付きまとうウィリーの弁護士で、今回はもう、美味しいところをかっさらっていくお笑い担当。もう最高でしたね。演じたのは風間柚乃(以下:おだちん)さん。おだちんはコメディが得意ですなあ! いやあ、ほんと笑わせてもらいましたよ。お見事だったす!
 ほか、役柄上はあまり大きい役割ではないんだけど、わたしが月組で一番大好きな海乃美月ちゃんはレビューでもお芝居でも常にかわいくて目立っていたし、月組の御曹司たる暁千星さんはさすがのダンサーぶりで、実に決まってましたな。それから、男役から娘役に転向して推されまくっている天紫珠李ちゃんも目立つ役柄だったし、あと、わたしのズカ友で一番の美人であるお方がイチオシの漣つかさくんは、ジャンヌを狙う悪者チームの一人でしたが、声で一発でわかったす。最後にもう一人、和物のメイクがすげえ似合うな、とわたしの目に留まったのは紫門ゆりやさんですな。お芝居の方ではセクシー組長こと光月るうさん率いるムーラン・ルージュの裏方チーム衣装担当としてイイ感じだったと思います。

 とまあ、こんなところかな。もう書きたいことはないかな……。
 では最後に、毎回恒例の今回の「イケ台詞」を発表して終わりたいと思います。
  ※イケ台詞=わたしが「かーっ!! カッコええ!!」と思ったイケてる台詞のこと。
 「花は自分で咲くものよ。誰かに咲かせられるのではなく、自ら咲くわ!
 今回は、正確にセリフを覚えられなかったので、若干わたしのアレンジが入ってると思いますが、ガブリエルが宣言する「20世紀の女」の生き方的セリフがとても心に残ったす。こういうセリフを言うキャラクターが、さくらちゃんにはとても似合うっすね!

 というわけで、結論。

 8カ月ぶりに宝塚歌劇をようやく観ることが出来て、「やっぱ宝塚は最高だな!」とつくづく感じました。そして月組公演『WELCOME TO TAKARAZUKA -雪と月と花と-/ピガール狂騒曲〜シェイクスピア原作「十二夜」より〜』も最高でありました。やっぱり、笑える喜劇ってわたしはとても好きっすね。これは東京に来たら、もう一度観に行きたいっすねえ! つうか、もう一度行きたいっす! なお、わたしが今回のチケットを買った時は、1つ飛ばしの席しか発売されておらず、でしたが、その後の規制緩和によって、昨日は最前列だけ空いてて、それ以外はフルスペックで満席に近かったです。ただ、どうもまだ全公演満席にはなってないようで、いまだチケット買えるみたいだから、まだまだ、世の中的にはおっかなびっくりなんすかね。。。新幹線も比較的空いてましたな。わたしは一人で行ったので、全く誰ともしゃべらず、常に消毒しつつな感じで、一応万全のつもりだけど、まあ、当面は東京でもきっちりしていようと思います。でも、劇場内は「おしゃべりNG」なわりに、結構、(もちろんマスク着用で)しゃべりまくってる地元のご婦人がいっぱいいました。きっとこの風景は、東京とは全然違うんだろうな、と感じたっす。ちなみにわたくし、来週は東宝で花組観てきます! 以上。

↓ まあ、知ってるといろいろもっと面白く感じると思います。もちろん、知らなくても大丈夫です。
十二夜 (岩波文庫)
シェイクスピア
岩波書店
1960-03-25

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