2020年09月

 ミステリー小説の手法の一つに、いわゆる「叙述トリック」ってやつがある。
 それは、要するに、なにかある重要な情報をあえて書かず(叙述せず)、読者側のある種の「勝手な思い込み」を利用して、ラスト近くで「実は〇〇はXXでした~!」的なネタ明かしをして、読者を驚かせる手法だ。わたしははっきり言ってその手法が嫌いで、なんつうか、作者の「してやったり」なドヤ顔が頭に浮かんでイラッとするというか、たいてい、なーんだ、つまんねえの、と切り捨てることが多いのだが、この「叙述トリック」を映画で扱うとどうなるか、わかりますか?
 映画の場合、全てが「映像」として見えているので、「読者に勝手に思い込ませる」ことが非常に難しくなってしまうわけだ。だって、見えてるんだから、誤解のしようがなくなっちゃうからね。
 わたしとしては、映画における叙述トリックで、一番(かな?)見事で上品だった作品は、何といっても『THE SIX SENSE』だろうと思っている。アレは本当に素晴らしくて、途中から、ひょっとしてこの主人公は……というヒントを提示しつつ、ラストで、あーー! やっぱり! そういうことか!! と普段「叙述トリック」の小説が嫌いなわたしでも、大興奮した見事な一品であった。
 まあ、『THE SIX SENSE』で一躍名をあげたM. Night Shyamalan監督は、その後どんどん調子に乗って(※一応誉め言葉です)、どんどん変な映画ばかりを撮り、おそらく世界珍作映画選手権が開催されたら優勝候補の一角を担うことになるのは間違いないが、一方で、ロンドン生まれでロンドン大学国文科(=イギリス文学科)を卒業した、純イギリス人(※お母さんはUS市民のためUS国籍ももってるそうです)の真面目な文学青年、Christopher Nolan監督は、ストーリー展開においては「叙述トリック」めいた変化球を、そして物語のベースには、ある意味「消える魔球」的な、「たったひとつの嘘」をしかけた世界を用意し、その「嘘」の入り込んだ世界の中で、ド真面目に「人間そのもの」の深い心理を描くことで、現在の映画界において不動の地位をものにしているのだろうとわたしは考えている。
 わたしが言うNolan監督の「叙述トリック」とは、Nolan監督が良く使う「フラッシュバック」のことで、物語の中で何度も現れる「謎の風景」が、最後には、そういうことか、と分かる仕掛けのことであり、わたしが「消える魔球」と呼んだ「嘘」とは、たとえば『MEMENTO』における「記憶が保持できない状態」だったり、『INSOMNIA』における「不眠症」や『THE PRESTIGE』における「奇術」、そしてもちろん『DARKKNIGHT』トリロジーにおける「バットマンという存在」や『INCEPTION』における「夢に入り込む装置」など、非現実的存在のことで、それが「当然にある」世界を描きながら、キャラクターは現実世界そのもののリアルな造形となっていることで、その嘘が見事なスパイスとなって相克があらわになるというか、リアルが増すのである。上手く表現できないけど、要するにたった一つの嘘が真実をより鮮明にする、ような気がしている。Nolan監督と言えば、極力CGを排した、本物のド迫力映像や、IMAX撮影による映像そのものの凄さ、を最大の魅力に上げる人も多いかもしれないが、わたしはデジタル撮影だろうとCGバリバリだろうと全然構わないと思うし、むしろIMAXに固執している点はあまり評価はしない。そういう点では、自分の撮りたいもののためならハードウェアやソフトを自分で新しく作っちゃうJames Cameron監督の方が凄いと思う。Nolan監督作品の素晴らしさは、やっぱり物語そのものだ。

 というわけで、前置きが長くなりました。
 今日の会社帰りに、わたしはNolan監督最新作『TENET』を観てきたのだが……まず、もちろん面白かった!! とは思う。のだが、うーん……これはまた相当な変化球だぞ!? 
 なんつうか、いろいろな仕掛けがあって、最初に見た映像が後で、なるほど、そういうことだったのか!! 的な面白さというかスッキリ感はもう抜群なんだけど、はっきり言って、メインの物語自体はかなりアレだったような気がするなあ……。。。まさか、そんなトンデモSFだったとは……という点は、わたしとしてははっきり言って、なーんだ、である。
 おそらく、世の中的にはもう大絶賛の嵐なのかもしれないし、この面白さが分かんねえの? とか言う輩が多いだろうから、あまり批判はしたくないけれど、でも、結局やっぱり、どうしてもNolan監督の『MEMENTO』や『PRESTIGE』を思い出すというか、結論から言うと、わたしの期待以上の作品ではなかったすね。あと、本作のような「タイムサスペンス」映画を観ると、わたしはつくづく、やっぱり『Back to the Future』は本当にスゲエ最高の映画だったんだな、と思い知ったような気がしたっすね。特に『II』ですが。

 というわけで、以下、かなりネタバレに触れると思うので、まずは今すぐ映画館へ観に行ってきてください。話はそれからだ!

 上記は予告編ですが、まだ劇場へ本編を観にいっていない人はマジで、今すぐ退場してください。さようなら。

 はい。それではよろしいでしょうか?
 まあ、観た人なら、上記予告は全く核心に迫っていない、無害な、それっぽいシーンを集めただけということはもうお判りだろうと思う。時系列もめちゃめちゃだしね。
 物語を改めてまとめてみても、あまり意味がないと思うのでやめときます。予告の通り、「時間の逆行」現象の中で、一人の男が(いろんな仲間に助けられながら)、世界の崩壊を阻止しようとするお話だ。ある意味では、純イギリス青年Nolan監督が大好きな『007』にも基本骨格は似ているように思う。
 わたしとしては、本作を観た感想として以下の3つをポイントとして挙げておきたい。
 【1:今回の「嘘」は時間の逆行】
 最初に書いた通り、Nolan監督作品で描かれる世界は、たいてい「一つの嘘」がスパイスとして効いているわけだが、その「嘘」は、その世界にとっては当然、ということになっていて、ほぼ説明がないのも特徴かもしれない。例えば、『INCEPTION』の「夢装置」は何の説明もなかったよね。むしろ説明されてしまうと、それが「嘘」だということがはっきりしてしまって、世界から浮いてしまうのではなかろうか……と思うのだが、『INTERSTELLER』における「嘘」である「ワームホール」は、ラスト、設置したのが実は……というネタ晴らしはかなり見事だったと思う(※ただし、世界の舞台となる「緩やかに破滅へ向かう地球」に関しては何の説明もナシ)。
 また、直近作『DANKIRK』における「嘘」は、強いて挙げるなら「描かれる3つの舞台は実は時間の進行スピードがそれぞれ違う」という点で、これがまたよく見てないと分からないし、実のところあまり効果的に機能してるとは思えなかった。その点で、わたしは『DANKIRK』はあまり興奮しなかったというか、Nolan監督作品の中ではあまり評価していない。
 で、今回の「大嘘」は「時間の逆行」なわけだが……ネタとしては最高だと思うものの、これが「時間逆行させる装置を発明した天才未来人によるもの」という設定は、なんか、正直わたしは、なーんだ、と、つい感じてしまったのである。さらに言うと、おそらく、その天才未来人が何故、今回の悪者であるセイターに装置を渡したのか、について、活発な考察が、インターネッツ上で今ごろさかんになされているんだろうと思うが、正直わたしには、その肝心なポイントがよくわからなかった。これは何度か観ないと理解できないかもしれないな……。アレって、単なる偶然なの?? でも、入ってた書類はセイター宛だったんでしょ?
 ま、これは言い訳ですが、本作は場面転換が非常に盛んで、しかも物語の展開するスピードが、おっそろしく速くて、え、今なんつった? と思っているうちにどんどん加速するかのように物語が進んでしまうのも、わたしの足りない脳みそには若干厳しかったようにも思う。特に、ファイナル大バトルへ向かう主人公が受けるブリーフィングも、台詞が速すぎて、え、え? と思っているうちに進んじゃったようにも思える。
 ともあれ、普通の時間軸(=順行世界)の主人公の行動を邪魔したのが、実は逆行世界の主人公、自分自身だった、とあとでわかる仕掛けには興奮したし、順行世界の主人公を助けたのは実は逆行世界のニールだった、と分かるラストは、ニール、お前って奴は!! と、正直感動したっすね。もちろん、順行世界の人々と逆行世界の人々が同じ画面上で入り混じるような、ものすごい映像も見ごたえバッチリだろうと思う。「回転ドア」なる時間逆行装置は最高にクールでドキドキしたっすねえ!
 しかし、うーーん……言及されてしまった「未来人」に関して、どうしてもモヤモヤしてしまうというか、すっきりしないんすよね……まったくのオーパーツ、謎装置、で良かったのではなかろうか……。この点が、わたしが残念に思ったポイントの一つっす。ちなみに、わたしがすげえ、これは面白い! と興奮した「逆行世界」のルールが一つあるんすけど、「逆行世界」では、何と呼吸ができないんだな。というのも、逆行世界では、空気が逆に肺から出て行ってしまう、てなことらしい(とわたしは理解したけど、呼吸は吸って吐く、なんだからそれが逆になるだけでは?とも思った)。これ、すごい面白いというか、それを防ぐために逆行世界では常に(順行世界で装備した)酸素ボンベを背負ってるという設定は見事だと思ったす。
 【2:Nolan監督の真骨頂=人間心理はどこ行った?】
 そして本作で、わたしが一番モヤモヤしてしまうのが、主人公の行動原理が良く分からん点である。本作の主人公は、エンドクレジットで「Protagonist」と表記されていた。そのものズバリ、「主人公」を意味する英語で、名前ではない。おそらくこの「名前がない」点も、今頃インターネッツでいろんな議論がなされてるんだろうけど、まあ正直どうでもいいので、その意味は置いといて、だ。そもそもこの主人公は、どうしてまたヒロイン(?)キャットを助けるために行動し続けたんだろうか?? この点が、わたしにはどうしてもわからなかった。これって、理由はない、人間なら当然のこと、ってことでいいのかな? 主人公の本来のMISSIONからはちょっと離れてるのに、どうしてキャット救出を最優先するような行動をとり続けたんだろう? 善人だから? それが当たり前だから? ホントかそれ? こういう、人間心理の描写がNolan監督の真骨頂だとわたしは信じてきたのに、本作ではそれが若干薄いような気がしてならない。さらに、いつも主人公の脳裏から離れないイメージが繰り返しの挿入される=Nolan監督の特徴たるフラッシュバック、も、今回はなく、その点も、ちょっと主人公の心理描写として物足りないような気もしたっすね。
 ただし、ホントにニールはイイ奴ですよ……ニールはもう完璧だったすね。ニールに免じて許してもいいか、とテキトーに思いました。
 【3:音楽が素晴らしい!!】
 Nolan監督作品は、その音楽(というかもはや効果音・背景音)もまた常に素晴らしいわけだが、今回は、スウェーデン人のLudwig Göransson氏が初めてNolan作品に参加している。Göransson氏といえば、わたしとしては『CREED』や『BLACK PANTHER(※この作品でアカデミー作曲賞受賞)』といったRyan Coogler監督作品でお馴染みなのだが(※Göransson氏とCoogler監督は南カルフォルニア大学で学生時代の友達だそうです)、今回の音楽も実に素晴らしかったと賞賛したい。
 とりわけ、わたしが興奮したのは、悪者セイターの、鼓動とシンクロするようなビートの刻み方だ。わたしはまた、ある意味HULK的に、心拍数が上昇するとマズいことが起きる、みたいな、セイターが自分の心拍数をしきりに気にするのは何らかの意味があるんだろうと思ってたんすけど、なんか、結局その意味は分からなかったすね。なんか意味あったんすかアレ? これも私の足りない脳みそではよくわからなかったす。やっぱもう一度観ないとダメかもな。。。

 というわけで、まあ、面白かったけど、よくわからんことや、ええ~?的な部分もあって、手放しで100点満点!とはわたしは評価できないけれど、役者陣の演技は確かで、実に素晴らしかったと存じます。以下、4人のキャラクターとキャストを紹介して終わりにします。
 ◆主人公:前述の通り名前はない。拷問を受けても仲間は売らない! という信条=TENETを持つため、謎組織にリクルートされる。そういや、わたし、告白しますが、「TENET」って英単語があることを知らなかった残念野郎であります。その意味は「信条」「主義」「教義」という日本語にあたる英単語でした。そういった、確固たるTENET(信条)を持つ男だということが、主人公の資格であり、また、キャットを助けるために奔走した行動原理になるのかな? まあ、わたしは一応そう理解することにします。演じたのはJohn David Washington氏36歳。その名の通り(?)、名優Denzel Washington氏65歳の長男ですな。元NFLフットボーラーとしてもお馴染みだそうですが、NFLは全く知識がないので、わたしは選手時代を知らないす。実は恥ずかしながら、わたし『BLACK KLANSMAN』を観てないので、本作で初めて彼を観ました。演技ぶりは、まあ、フツーすね。本作では髭モジャCIA工作員だったからか、その容貌はあんまり父Denzel氏に似てないような気がしました。たぶん、わたしは事前に知らなかったらDenzel氏の息子だってことに気が付かなかったと思うす。
 ◆ニール:主人公の相棒として大活躍するイケメン。とにかくその、「ええ~……もう、しょうがねえなあ……(苦笑)」的な表情や、「まあ、任せときなよ(ニヤリ)」な笑顔が最高にカッコ良かった!! そして物語的に、ラストでニールのリュックについている5円玉ストラップが超効いてましたね! わたしはもう、あっ! てことはさっき倒れてたのも、そして冒頭のアレも!! と超グッときました。もう、本作はニールがカッコ良すぎてわたしとしては最大級に賞賛したいすね。演じたのは、来年(?)BATMANとしてスクリーンに登場する予定のRobert Pattinson氏34歳。この人を初めてカッコイイ!と思いました。Pattionson氏と言えば、もう当然、『TWILIGHT』シリーズの、超根暗(?)で青白い優柔不断(サーセン!w)な吸血鬼だし、あるいは『Harry Potter』でのイケメン上級生セドリックなわけですが、この人、笑顔が超カッコイイじゃないですか! 今まで笑顔のイメージが皆無だったので、次のBATMAN=ブルース・ウェインは常に眉間にしわを寄せるキャラだから超ピッタリだな、と思ってたけれど、今回のニールの笑顔はちょっと驚き&最高でしたね。
 ◆セイター:ロシア人。かつて、核汚染されたロシアの秘密軍設備で、核燃料回収の仕事をしていた時、謎の「未来人からのギフト」を手にし、その利権で財を成す。そして超DV野郎として妻を肉体的・精神的に拘束している。彼は「未来人」からの指示で、「現在」の世界に存在する「アルゴリズム」なるものを集め、世界を崩壊へと導こうとする。ちなみに核汚染の影響なのか、深刻な膵臓がんを患っており、余命はわずかで、世界を道連れにあの世へ行こうとしている(たぶん)。前述の通り、どうして未来人は彼を選んだのか、わたしにはよくわからなかったす。そして妻をどうしてまたそんなにひどい扱いをするのかも、正直よくわからんす。まあ、美人過ぎて男がチョロチョロするのが気に入らなかったんでしょうな、きっと。知らんけど。で、演じたのは、イギリスが誇るShakespearaおじさんことSir Kenneth Branagh氏59歳。わたしはこの人が監督主演した出世作『Henry V』を大学生の時劇場で見て以来、ずっといろいろな作品で観てますが、まあ、実にお達者ですよ。ロシア語訛りの英語もお手の物でしょうな。次の『DEATH ON THE NILE』のポアロも楽しみすね。
 ◆キャット:セイターの妻で、恐ろしく背が高い美人。ただ、やっぱりキャットに対しても、わたしはあまり好感を抱けずでした。だって、セイターが言う通り、この人だって、セイターのDirty Jobを知ってて、そのDirtyな金でセレブ生活をエンジョイしてたわけで、その点はどうなのよ、とか思ったす。まあ、だからと言って虐待されていいわけがないので、気の毒なのは間違いないけど、キャットが超美人だったから主人公は必死に助けたのかなあ? とか、超・低俗な思いも頭によぎっちゃうす。そんなことより、すげえ、今演じたElizabeth DebickiさんのWikiを観てビビった! なんと身長191cmだって!! すげえ! キャスト陣の誰よりも背が高かったから、こりゃ相当だぞ、とか思ってたけど、191cmはすげえなあ! ははあ、バレエダンサーだったんすね……さもありなんですなあ。とにかくスタイル抜群で超美人でした。この方は、結構今までいろいろな作品でお見かけしてる方なんですが、例えばMCUの『GUARDIANS of the Galaxy Vol.2』に出てきた、あの金ピカ星人アイーシャもこの方ですな。まあ、素顔は大変お綺麗なお方ですよ。何もかも諦めた絶望の表情も、怒りに燃えるまなざしも、大変良かったすね。
 そのほかには、有名どころとしては、『KICK ASS』の主人公や『AGE of ULTRON』で殉職したクイック・シルバーでお馴染みのAaron Taylor-Johnson君や、Nolan作品『INSOMNIA』で主人公の相棒として印象的な芝居を見せてくれたMartin Donovan氏がチラッと登場したり、もちろん、Nolan作品にはなくてはならないSir Michael Caineおじいちゃんも登場します。シーンとしては数分だけど。

 というわけで、もう書いておきたい事がなくなったので結論。

 現代の最強映画監督選手権が開かれたら、間違いなく優勝候補に挙げられるであろうChristopher Nolan監督の最新作、『TENET』がついに公開になったので、さっそく観てまいりました。結果、映像はものすごいし、「時間の逆行」という本作における最大のポイントも、非常に興味深く、結論としては、面白かった、というべきだろうと思う。思うんだけど、正直期待を超えるとは思えなかったし、なんかちょっと、いろいろアレかも、と思った点があったことは、散々書いた通りであります。まあ、それは恐らく、わたしの頭の悪さに由来する可能性が高く、それは素直に残念だと思う。とにかく、本作は場面の転換が速すぎて、キャラクターたちが次の地へ向かう移動時間がほぼはしょられているし、とにかく切り替えが速すぎると感じた。わたし的に本作での一番の収穫は、主人公の相棒ニールを演じたRobert Pattinson氏が、それまでのわたしの中にあったイメージを完全払しょくするぐらいカッコ良くて、キャラクターにぴったりであったという点だろう。この人、演技上手いんすね。実に見事でありました。まあ、この映画、恐らく今後、何度も見ると思います。そしてそのたびに、ああ、そういうことか!と発見して、初めて観た時のこの感想を、ああ、オレはやっぱアホだった、と後に思うことになるんだろうと思われます。以上。

↓ うーん、まあ、わたし的にNolan監督作品で一番すごいと思うのはやっぱり『INCEPTION』かなあ。「映像化不能!」という小説はよく聞くけど、初めて「小説化不能!」という映画を観た、と感じたっすね。今回の『TENET』も、小説化不能かもしれないすね。
インセプション (字幕版)
マイケル・ケイン
2013-11-26

 マジかよ……なんてこった……!!!
 おそらく、わたしと同じように呆然とした方が日本全国で何万人かいらっしゃることでしょう。そうです。例年2月と8月に新刊が発売となる、高田郁先生による小説『あきない世傳』シリーズ最新(9)巻のことであります。
 たぶん、高田先生の『みをつくし料理帖』がめでたく映画化されたことで、いろいろお忙しかったのか、あるいは、本作の中でちらほら垣間見えるCOVID-19の影響のようにも読める部分の書き足しや推敲に時間がかかったのか、いずれにせよ、いつもより1カ月遅れで発売された(9)巻は、冒頭に記した通り「マジかよ……!!!」という驚愕で幕を開けたのであります。

 というわけで、以下、ネタバレに完璧触れざるを得ないので、気になる方はまずはご自身で読んでからにするか、今すぐ退場してください。また、もう既に読まれた方なら通じると思いますが、わたしは「裏切者」に対して激怒しておりますので、結ちゃんファンの方も、読まずに退場された方がよろしいかと存じます。


 はい。よろしいでしょうか?
 いやーーーそれにしても……それにしてもマジかよ、であります。
 前巻は、主人公「幸」ちゃんの妹である「結」 ちゃんによる、とんでもない行動で幕が閉じ、わたしとしてはもう一刻も早く続きが読みたい!! と思っていたわけで、いよいよ発売となった今巻を昨日本屋さんで発見した時は、もう大興奮で購入し、読み始めたわけですが……まさかの展開に、うそだろ!? うそって言ってくれよ結ちゃん!! と手が震えるほど心が高ぶってしまったわけです。
 もうお読みになった皆さんもきっと同じでしょう。そう、結ちゃんは、マジで、本気で、信じられないけどマジで、姉である幸ちゃんを、そして五鈴屋のみんなを裏切ったのでありました……。これがフェイクで、実は……という展開がありうるのかな!? ないよね? てことは、マジ、なんだと現状では思います。
 そこに至る過程は、もう前巻までで語られているので、多くは書きません。が、はたして結ちゃんを「にんげんだもの」と仕方ないことと許せる読者はいるのだろうか?
 現代ビジネスに置き換えて考えてみると、今回描かれるのは、主に以下の2つのことだ。
 【1:身内による裏切り】
 まあ、創業メンバーの分裂なんてものは、世の中的にごく普通に良くある話だろうと思う。結ちゃんは創業メンバーではないけれど、代表取締役の妹として勤務し、仲良し姉妹だった二人だが……まあ、現実世界でも親が子を殺し、子が親を殺し、きょうだい同士殺し合う事例には事欠かないのだから、残念ながらそんな分裂は珍しいものではない。
 分裂に至る過程は、きっとさまざまではあろうと思うけれど、たぶん、「嫉妬」と「傲慢」というものがその根底には共通しているのだろうとわたしは考えている。
 この二つは、表裏一体で、主に残る側から出ていく奴を観ると、「あの野郎は嫉妬してるのさ」と見えるだろうし、逆に出ていく側から残る奴を観ると、「あの野郎の傲慢さには耐えられん」ということになるのだろうと思う。これはもはや、いい悪いの問題ではなく、完全にハートの問題で、当事者以外には理解できまい。そして、人間としてホントに困るというか、うんざりするのは、ハートの問題は「理屈」や「正論」では解決不能なのが人間のサガであろうと思う。
 残念ながらそんな「ハートの問題」で分裂する会社はいくらでもあるし、まあ、バンドや友達関係でもそうですわな。正論としての「正しさ」ならば、第三者から判断できることもあるだろう。けれど、感情の問題になってしまうと、どっちが正しいか、なんてことはもう関係なくなってしまう。とにかく、嫌なものは嫌! ってやつだ。
 ただし、だ。嫌なら嫌で、さっさと分裂して出ていけば、サヨナラ~、で終わるのに、世の中にはそれでは腹の虫がおさまらない人々が多く、いわゆる「立つ鳥跡を濁」しまくる輩が多く存在しているのが現実だ。そんな行動は、まあ、にんげんだもの、と、500万歩譲って理解するとしても、ビジネス世界では絶対に許されないことがある。それは、「商売のネタを勝手に持ち去ること」だ。
 「商売のネタ」とは、例えば顧客リストだったり、古巣の機密情報だったり、さまざまだろうと思う。これらは、いわゆる「ビジネスモデル」とまとめていいかもしれないが、要するに、どうやって金を稼ぐか、に直接つながる事柄を、出て行ってそのまま使う、のが一番のタブーだと思う。
 今回、結ちゃんはまさしくその禁忌に触れまくる行動を起こしてしまった。五鈴屋の最新商品設計図を持ち逃げし、あまつさえライバル企業に転身、さらに新店オープン時には、店内のディスプレイも丸パクリ、接客スタイルも完全コピー。さらに言えば、これはビジネスにはまったく関係ないことだけど、人間的に完全なるスケベおやじのクソ野郎の嫁にちゃっかり収まり、高笑いするという、もうこれ以上ないだろ、というぐらいの悪党となってしまうのでありました。この心理は、わたしにはまったく、1mmも理解できません。わたしが男だからなのか??
 しかも、わたしがどうしても許せないのが、「自分は何も悪くない。悪いのは傲慢な姉」と自ら信じ込んで一切の反省・自省がない点だ。救いようのない邪悪な精神とわたしは断ずるにやぶさかではないすね。「かんにん」の一言は、悪いことをしているという自覚の表れだったのだろうか? さらに言うと、その動機が「自分を追い詰めた傲慢な姉を困らせる」ことに尽きる(ように見える)点も、救いようがないと言わざるを得ないだろう。そのためなら誰を巻き込み、犠牲にしてもいいと思っているのだから恐ろしいよ。おまけに、結ちゃんは、好きでも何でもないキモイおっさんに抱かれることを前提としていて、いわば自らも犠牲にしている投げやりさが、ホントに痛ましいというか、悲しいというか……だからって許さないけど、まあ、とにかく、あんまりだよ……。
 恐らく現代であれば、結ちゃんの行為は……実際勝つのは難しいかもしれないが、窃盗あるいは業務上横領として刑事告発可能だろうと思うし、民事的にも賠償訴訟は可能なレベルの「裏切り」だと思う。はっきり言って、わたしはこれまでの過去のいきさつを理解していても、結ちゃんを到底許すことはできません。もちろん、結ちゃんをそそのかした音羽屋も、断じて許すまじ、である。全然関係ないけど、出版業界人的には、音羽屋ってネーミングの意味を勘繰りたくなりますな。
 しかし、だ。たとえ許せない行動を取られ、実際に経済的不利益を被らされてしまったとしても、同じことをしてやり返す行為は、まさしく地に落ちるというもので、たとえどんなに嫌な目に遭っても、自らはルールに則った「正しさ」を意識しないと、あっさり自らもダークサイドに落ちてしまうわけで、我らが主人公、幸ちゃんは、もちろん愚かな妹に対しても、直接的攻撃を仕掛けることなく、真正面から大魔王になり果てた妹(の店の攻撃)と対峙していくわけで、そこにカッコよさや美しさがあるわけです。はあはあ、書いていて血圧上がるほど腹が立つわ……。
 【2:やっかいだけどどうしても切れない業界団体】
 そしてひたすら耐え、自ら信じる正しさ・公平さを頼りに、真面目にあきないに邁進しようとする我らが主人公幸ちゃんだが、さらに追い打ちをかけるように困った事態が巻き起こる。それは、業界団体からの制裁だ。
 今巻で描かれた、直接的な原因は、とある同業者の重要な顧客を五鈴屋が奪ったことに対する制裁、ではある。たしかに、幸ちゃん本人も反省している通り、若干の油断というか無自覚な部分が制裁を引き起こしてしまったという点は間違いなくある。しかし、どうやらその裏には、クソ音羽屋=結ちゃんの逃亡先、が絡んでいるのはもう読者には分かりきっているわけで、もうホント、今巻は読みながら何度怒りに拳を握ったかわからないぐらい、イラつきましたね……。
 業界団体というものは、はっきり言ってビジネス上、うっとおしいことの方が多いと思う。もう、そんな団体に所属する意味ないじゃん、とか思うことだってある。しかし、そんな業界団体であっても、やっぱり存在意義はちゃんとあって、しぶしぶ、とか、うるせーなあ、とか思っても、やっぱり所属しておいてよかった、と助けてくれることがあるのもまた間違いなく、その付き合い方は非常に難しいし、理事とかに選ばれちゃうと少し見方も変わってくるのだが、要するに、商売は完全にスタンドアローンでやるより、同業者のネットワークはどうしても欠かすことが出来ないのが現代ビジネスだ。
 その業界=呉服屋協会からの追放令は、いかに幸ちゃんに打撃を与えたか、考えるに忍びないほどなわけだが……。この究極ウルトラ大ピンチに、5代目こと幸ちゃんの前に現れたのが! あの! 前々夫の惣次ですよ!! ここはまあ、予想通りの登場かもしれないけど、やっぱりコイツはデキる奴なんだな、と思わせるシーンでしたなあ!
 惣次は、幸ちゃんにズバリ言う。追放なら、いっそ自分で新しい業界団体立ち上げちゃえば? と。たしかに、それはやり方の一つとして十分アリ、ではあろうし、現代でもそういった「業界団体の分裂」は、よくあることだ。しかし、惣次の言葉は幸ちゃんを試すものでもあって、幸ちゃんは、(おそらく惣次が期待した)100点満点(?)の回答をしてのけるわけです。それがどんなに茨の道でも、きっちり正道を行こうとする幸ちゃんにわたしとしては大変感動しちゃうわけですな。
 そして―――幸ちゃんは、業界団体追放=呉服(=絹製品)を扱えなくなる=太もの(=綿製品)しか扱えない状況となってしまうわけだが、めげない幸ちゃんは、新たな商品開発に頑張ろうとするのだが、ここで一つ、またちょっと泣けるエピソードも入る。それは、大好きだったお兄ちゃん、18歳で逝ってしまったお兄ちゃんに関わるエピソードで、実に感動的でありました。また、久しぶりに大阪に戻って再会した菊栄さんの境遇と、菊栄さんのガッツあふれる計画にも心から応援したいと思うし、とにかく幸ちゃんと菊栄さんの再会だけでも、なんかうれしくって感動しちゃうすね。
 まあ、正直に言えば、いつも通り、美しすぎるだろうし、出来すぎなのかもしれない。現実にはそうはいかない、超・茨の道かもしれない。でも、それでも、やっぱり真面目に地道に頑張る幸ちゃんは、報われてほしいし、幸せになってほしいわけで、素直に応援したくなりますな。そして心のねじ曲がったわたしは、このあとで結ちゃんには地獄を味わってほしいし、決して和解なんてしてほしくないすね。でもまあ、最後には美しい和解が描かれるのかな……どうでしょうかね……。

 とまあ、こんな感じの今巻は、ラストに新たなる新製品のめどが立ちそうで、希望を感じさせるエンディングで幕を閉じる。そういえば冒頭に記した通り、本作の中では随所で現実世界のCOVID-19感染蔓延による世界の変化、を反映したような描写も多かったすね。歌舞伎役者の富五郎さんのセリフ「歌舞伎や芝居…(略)…などは、生死が左右される状況になってしまえば、人から顧みられることがない」「それでも…(略)…ただ邁進するしかありません。悪いことばかりが、永遠に続くわけではないのですから」という言葉には、宝塚歌劇を愛するわたしとしては大変グッときましたね。
 あと、今回わたしが、ああ、そういうことなの? と初めて知った豆知識は、ズバリ現代の「浴衣」ってやつの誕生(?)物語すね。なるほど、浴衣ってのは、「湯帷子(ゆかたびら)」から来てるんですなあ……これはどうやら今後、五鈴屋を救う大ヒット商材になりそうで、大変楽しみであります! そして、菊栄さん考案のかんざしも、どうやらキーアイテムになりそうだし、なにより、菊栄さんと、あのお梅どんがとうとう江戸にやってくるなんて最高じゃないですか!!
 要するにですね、今巻の感想としては、もう前巻同様に「高田先生! 次はいつですか!!」ってことで終わりにしようと存じます。はあ、早く続きが読みたいっすねえ!

 というわけで、結論。

 いや、もう結論まとめちゃったけど、ついに牙をむいた妹、結の想像を超える大魔王変身ぶりにわたしは強く憤りを感じつつ、それでもめげない、いやそりゃめげそうになってるんだけど、それでも頑張る幸ちゃんの姿に、大いに感動いたしました。もちろん、結をそそのかし、ダークサイドに引きずり込んだ音羽屋が一番の悪党であろうとは思うけど、それにまんまとハマった結の、あまりに考えの薄い愚かさ、日本語で言う「浅はか」さにも当然罪があるわけで、わたしは断じて許せないす。しかし、もうどうしようもないことに腹を立てても仕方ないわけで、わたしとしては、どんどんと善人が周りに集まってくる幸ちゃんの今後を心から応援いたしたく、次の新刊を心待ちにいたしたく存じます。今回も、腹は立ったけど最高でした!! 以上。

↓ まあ、観に行かんといかんでしょうなあ。どこまで描くのかしら……?




 はーーーしかし映画が全然観に行けない……つうか、観たい映画がない……。
 というのがここ2カ月ぐらいの状況だったわけだが、9月になっていよいよ、待望の映画公開が続々と近づいてまいりましたね。わたし的には今週末の『TENET』を早く観たいす!
 というわけで、今週末は、とりわけ強力に観たかったわけではないけれど、とある上場企業の株主優待で「ムビチケGIFTカード」を6枚もらえてしまったので、有効期限もあることだし、どんどん使おう! ということで、『MIDWAY』を観に行くことにした。
 まあ、題材的に我々日本人としては当然、いろいろ思うことはあるわけだが、日本人キャスト陣もしっかりしているし、少なくともトンデモおバカムービーにはなっていないだろう、という期待を込めて観に行こうと思ったところ……結論から言うと、なんかまとまりがないというか、物語的な軸がないというか、何て言えばいいんでしょう……これは断片的な再現記録映像集、みたいな感じなんだろうか? なんともポイントの絞れない緩慢ムービーだったような気がします。あと、演出的にも、いかにも中華作品(=本作は中華資本が投入されています)っぽい「うそくさいCG」、例えば爆発炎上した機体の爆炎から主人公機がずぼーーっと出てくるみたいな、全く好きになれない画作りはちょっと食傷気味というか、極めてアレだったすね。
 ただし、映像そのものの空母や戦闘機の質感だったり、演じた役者陣の演技ぶり、特に二人の日本人キャストの頑張りはとても素晴らしかったので、わたしとしては観て良かった、とは思っております。はい。あと、歴史的な正しさに関しては、わたしはこれは映画なんだから、と割り切ってるので、特に問題にしません。
 というわけで、以下、ネタバレに気にせず書いてしまうと思うので、気になる方はまず映画館で観てきてからにするか、退場してください。

 はい。それではよろしいでしょうか?
 というわけで、本作は真珠湾攻撃からミッドウェイ海戦における大日本帝国海軍航空母艦「飛龍」の最後まで、が描かれている。実はその飛龍の最後のあとはもう、エピローグ的にこの人は後にこうなった、という形で映画は終わっちゃうのです。まあ、それはそれで、山口多聞少将(死後に中将)の最期のカッコ良さが際立っていたので、アリではあるけれど、なんか、結局ミッドウェイ海戦の意義は何だったのか、とか、上記予告にあるような、勝敗を分けたものは何だったのか、というものはまるで感じることはできなかったような気がする。
 本作は、登場人物が有名な実在の人物ばかりで、わたしは予告を観た時は、情報戦を描くのかしら? と思っていたのだが……なんか、その点も薄くて、かなりあっさり風味でしたな。
 アメリカ側での主人公Dick Best氏は、正直わたしは知らない人だったけれど、彼の航空機操縦テクがやたらと描かれる場面が多く、ミッドウェイでも大活躍するのだが……はっきり言ってBest氏の航空テクが戦況をひっくり返した的に、個人の技を英雄=ヒーローに仕立て上げられているようにも感じられて、なんか、思ってたのと違う……という感覚は最後まで消えなかったす。
 たしかに本作では、US-NAVYの情報士官Edwin Layton氏率いるチームの暗号解読も描かれるけれど、なんかホントにほんのちょっとだけだったすね。そこが少し残念す。
 ほか、歴史的には有名、だけど、わたしがこの映画を観て実は初めて知ったのが、Doolittle爆撃隊の顛末だ。Doolittleは初めて日本本土を爆撃したわけで、その攻撃で日本は、コイツはヤバい、と焦りだすわけだけど(Wikiによれば被害は微少だったらしい)、本作では皇居の近くに着弾して昭和天皇が防空壕へ退避するシーン(※これは事実なのかわからんですが)もあって、日本人としてはそんなシーンがあると、確かにこれはもう、軍部は超慌ててヤバかっただろうな、と思えるような場面でありました。そしてこのDoolitle爆撃隊は、劇中では燃料残量からどこに不時着するかわからん、片道切符だけど俺たちは行く!的な英雄行為として描かれていて、結局日本爆撃後は中国にたどり着いて、地元中国人に助けられるというさまも描かれてました。これはどうやら史実通りらしいけど、さすが中華資本作品だな、と、どうでもいいことで苦笑しちゃったす。ただし、中華資本とはいえ日本側を貶めるような描写は一切なかったのも事実で、その点はキッチリとフェアだったと思います。ちなみにWikiによると、蒋介石は日本軍の報復を恐れて、受け入れを嫌がってたみたいすね。なるほど、そうなんだ。
 というわけで、わたしもポイントの絞れない緩慢レビューしか書けそうにないので、各キャラと演じた役者をメモして終わりにしよう。
【大日本帝国海軍】
 ◆山本五十六海軍大将:本作は冒頭、1930年代後半(正確な年は忘れた)の東京から始まる。そしてアメリカに留学し、在US日本大使館に武官として駐在したこともある山本氏が、きっちり英語でのちに暗号を破るEdwin Layton氏と会談するシーンが描かれる。ここは非常に印象的で、演じたトヨエツこと豊川悦司氏のカッコ良さと確かな演技が非常に素晴らしいシーンだ。ここから始まるので、これは面白くなりそうだぞ……と期待したけれど、正直ここ以外はあまり出番もなく、ちょっとさびしいというか、もったいなかったような気がしますね。とにかく、トヨエツ氏のカッコ良さは間違いないです、はい。そして、写真で見る山本五十六氏に、どことなく似てますね、やっぱり。いや、誰がどう見てもトヨエツ氏だし、Wikiによれば五十六氏は身長160cmだったそうなので、180cmを超えるトヨエツ氏と似てるわけないけれど、その佇まいというか雰囲気的なものは極めて五十六氏でした。お見事です。年齢も、どうやら現在のトヨエツ氏(58歳)と当時の五十六氏はちょうど同じぐらいだったみたいすね。ただ、本作ではやっぱり五十六氏の人物像はつかめないすね。有能なキレる男だったのか、凡庸だったのか、わたしにはよくわからなかったす。なお、五十六氏が乗艦したかの「戦艦大和」は、ほんのちょっとだけ登場します。
 ◆山口多聞海軍少将:わたしのようなオタク野郎にとっては漫画『ドリフターズ』でお馴染みの多聞少将。実は『ドリフターズ』で描かれる少将は、残っている本人の写真に非常に忠実な容貌で描かれているので、わたしは50代後半ぐらいのおっさんなのかと思ってたけど、さっきWikiで49歳没というのを知って驚いた。意外と若かった! そして今回、多聞少将を演じた浅野忠信くんは現在46歳か、わたしは『ドリフ』の多聞少将しか知らなかったから、やけに若いなあ、とか思ってたんだけど、意外と年が近くて、このキャスティングはアリだったんすね。本作での多聞少将は、見た目の良さだけじゃなく、やたらと言動が男らしくてカッコ良くて素晴らしかったす。
 ◆南雲忠一海軍中将:なんか本作では、妙に判断力の劣るダメ将官として描かれていたような印象。そんなことないはずなんだが……。。。演じたのは圀村隼氏64歳。南雲氏は当時56歳とかそんなもんだったみたいだから、ちょっと年齢差がありますな。
【US-NAVY=アメリカ合衆国海軍】
 ◆ディック・ベスト:前述の通りUS側主人公。航空機パイロット。ドッグファイトも爆撃もこなすエース(?)パイロット。彼のキャラ付けも、正直よくわからんというか、単なる勇猛果敢なカウボーイ野郎と言えばいいのか、とにかく、これぞアメリカン・ヒーロー的な描かれ方に見えるのはちょっと気の毒な気もする。演じたのはEd Skrein氏で、あーこの顔絶対知ってる……けど誰だっけ、とずっと分からず、劇場を出てすぐパンフを開いて思い出した。この特徴的な笑顔、口元のしわは、『Alita:Battle Angel』で、やたらと主人公アリータに突っかかってくる嫌な野郎、だけど結構あっさりやられまくるかませ犬的キャラだったザパン、を演じた彼っすね。
 ◆エドウィン・レイトン:海軍情報主任参謀。ホントなら彼の大活躍を観たかったというか知りたかったけど、なんかいまいち存在感は薄め。演じたのは、わたしにとっては永遠に『WATCHMEN』の「ナイトオウルII世」としてお馴染みPatrick Wilson氏。USキャストで唯一、五十六氏とのシーンで日本語をしゃべる。その日本語は、下手だけど十分に聞き取れたし、問題なく合格点だと思います。
 ◆チェスター・ニミッツ太平洋艦隊司令長官:かの有名人ニミッツ元帥を演じたのはWoody Harrelson氏なわけですが、さっきWikiでニミッツ氏の写真を見て驚いた。結構似てるっすね!? わたし的にはスキンヘッドじゃないHarrelson氏を観るのは久しぶりなような気がするけど、非常にキレ者めいた眼光の鋭さは大変良かったと思います。
【US-ARMY=合衆国陸軍】
 ◆ジミー・ドゥーリトル:前述の通り初めて日本本土を爆撃した男。出番はとても短いが、演じたのはさまざまな作品でお馴染みのAaron Eckhart氏。わたしはまた、US-NAVYとARMYの確執のようなものも描かれるのかな、とか思ったけど、ほぼなし。ついでに言うと大日本帝国海軍と陸軍の確執も、ほんの少しほのめかされる程度でした。本来的には結構重要なファクターだと思うけどな……ま、いいや。
 とまあ、キャスト陣に関してはほかにも有名役者が多く出演しているけれど、この辺にしておきます。最後に監督についてメモしておくと、本作は、わたしの大好物な「ディザスター」ムービーでお馴染みのドイツ人、Roland Emmerich氏の作品であります。まあ、その映像の派手さは本作でもいかんなく発揮されていますが、このところ自分で脚本を書いてない作品が多くて、その点はちょっと残念すね。本作も脚本は別人です。
 ちなみに、パンフによると、本作は当初、日本での配給権買い付けの手が全然挙がらなかったそうだ。まあ、内容的には確かに、日本市場においてどんなリアクションされるかわからんので、ビビったんでしょうな。で、日本サイドが描かれてるシーンを積極的に観せて営業をかましたところ、手を挙げるところが増えて、結果、木下グループが買って公開となったわけだけど、なんつうか、わたしがバイヤーだったとしても、試写で全編観て、これは面白い、買いたい! とは思わなかっただろうな、と思います。理由はもう最初に記した通り、なんかいろいろまとまってないというか、淡泊で薄口なのがちょっとアレだと思います。

 というわけで、ホントまとまらないので結論。

 日本人にとっては極めていろいろな想いのある「ミッドウェイ海戦」を、ハリウッド派手映像王のRoland Emmerich監督が描くとこうなる、という映画『MIDWAY』を観てきた。結論としては、映像的な迫力はさすがのEmmerichクオリティだし、戦艦や空母、航空機というオブジェクトのCGは本物の質感を備えていてそれなりに見ごたえはある。が、肝心のお話が……薄口というかまとまりがない、と感じられた。なんか、だからなんなの? というオチがないというか、ミッドウェイ海戦の意義や戦況のターニングポイントが、わたしの期待したようなものがあまり重要視されてないように思えたのであります。なので、まあ、それほど人にお勧めできないかな、というのがわたしの結論です。ただし、トヨエツ氏による山本五十六、浅野忠信氏による山口多聞氏はとてもカッコ良かったです。以上。

↓小学生の時に観たっすね。懐かしい。。。
連合艦隊
金田賢一
2013-11-26

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