「透明人間」といえば、まあ、SFの古典であるH.G. Wells氏が1897年に発表した小説が原典なわけだが、これまで様々に映画化されており、わたしが透明人間と聞いて真っ先に思い出すのは、2000年に公開された『Hollow Man』(邦題:インビジブル)という作品だ。この映画は、血まみれ大好きオランダ人でお馴染みのPaul Verhoeven監督作品で、イイ感じに血まみれかつ若干エログロ(?)な作品でわたしの好みにジャストミートなのだが、主役のイカレ科学者を演じたのが、わたしが大好きなKevin Bacon先生で、その演技もまた極めて上モノで、とにかく最高なのであります。
 そして時は過ぎ―――ちょっと前の2017年に、ユニバーサルは自社が版権を持つ(?)、クラッシック・モンスター映画を現代によみがえらせ、共通世界観で描いたらモンスター版アベンジャーズになるんじゃね? とひらめいたらしく、「ミイラ男」「狼男」「フランケンシュタイン」「ジキルとハイド」「透明人間」などを登場させる「ダーク・ユニバース」構想をぶち上げた……のだが、第1作目の『The Mummy』(邦題:ザ・マミー/呪われた砂漠の王女)が、豪快にズッコケて爆死してしまい、計画は封印された……らしい。わたしはその計画自体は非常に魅力的で楽しみにしていたのだが、実に残念だ。
 ちなみに、その「ダーク・ユニバース」計画では、透明人間を演じるのはわたしがあまり好きではないJohnny Depp氏が予定されていたので、まあ、それはなくなって良かったかな、と思っていたところ、なぜか知らないけど、この古典的キャラクターである「透明人間」の企画は単独作品として生き残り、公開されるに至ったのであります。
 それが、わたしが昨日の土曜日観てきた『THE INVISIBLE MAN』だ。
 まあ、のっけから結論を言うと……ダメっすね。いろんな点が。これなら、2000年のBacon様主演の『Hollow Man』の方が100万倍面白かったす。というわけで、以下ネタバレ全開になる可能性が高いので、知りたくない人はここらで退場してください。さようなら。

 というわけで、どうすか、この予告は。はっきり言ってかなりデキが良さそう……すよね? 少なくともわたしは、おお、こりゃあ面白そうだ、とかなり期待して劇場へ向かったわけだが……残念ながら、かなりダメでした。以下、わたしがこりゃアカン、と思ったポイントを2つ、メモしておこう。
 ◆ヒロインが全くダメすぎる。魅力が全くない。
 そうなんすよ……まず本作のヒロインが、全く共感できないクソ人間なんだよな……。
 思い返すと、Bacon様主演の『Hollow Man』や、例えばそうだなあ、『THE FLY』なんかでも、主人公の科学者はちょっとイッちゃってる、けれど、それなりに同情に値する人物で、むしろいつも、ヒロインの方が結構ビッチな場合が多く、性格のねじくれたわたしは、科学者が世紀の大発明をして、そしていろいろな悪いことをしでかしても、基本的にはもう、いいぞ、もっとやれ! と応援側に回っちゃうんだな。まあ、結果、いつもクソビッチな元彼女に撃退されて悲劇エンドで終わるわけなんだが、例えば『THE FLY』なんかは、ヒロインも最終的には健気で、もうとても悲しく、極めてエモーショナルなエンディングを迎えるわけです。『Hollow Man』のヒロインは最後までクソでしたが。
 しかし、だ。今までの作品では、一応美人だったり、どこか許せる要素があったけれど……本作は、ヒロインであるセシリアが全く魅力的じゃあないんすよ!!! それは性格的にも全くアウトだし、ズバリ言えば全く可愛くないし美しくもない。つうか結構なブ……ゴホンゲフン、サーセン、ちょっとむせたっす。なので、大体なんでイカレ科学者はこの女に惚れて、執着したんだ?? という説得力がゼロ、皆無だ。もっといい女と出会えたでしょうに……。
 なので、ヒロインのキャスティングが致命的にアウト! だとわたしには感じられた。しかもなんなのあのエンディングは。このクソビッチが一番の悪党じゃん! と腹立たしい気持ちで劇場を後にしたのだが、確かにそりゃ、そもそもはイカレ科学者のDVが原因ってのは、まあ、5万歩譲ってアリだとしましょうか。でも、お前、余裕で金だけは受け取るし、それまで散々いい思いしてきて、完全に金目当てだったじゃんか。こんなヒロインには共感できっこないですな。このヒロイン、相当悪党ですよ。実に胸糞悪いす。
 ◆これは純粋に工学的技術であって、科学者というよりエンジニアじゃね!?
 そうなんすよ……そもそも、「透明人間になる」のは、『Hollw Man』では、薬剤投与による生理学的・化学的な変化なわけで、純粋空想科学の話なのだが、本作ではなんと、単なる技術なんだな。そう、いわゆる「光学迷彩」なのです。マーベルヒーローに例えるなら、今までの透明人間はハルクやキャップ、あるいはスパイディなどと同じ生体変化であったのに反して、今回はズバリ言うとアイアンマン、つまりメカニカルヒーローなんだな。ヒーローじゃないけど。
 でもまあ、100万歩譲って、光学迷彩でも良しとしましょうか。たしかに、本作で登場する「光学迷彩スーツ」のビジュアルイメージはとてもそれっぽくてカッコいいし、実にスタイリッシュだとは思う。その点はもう、賞賛したいですよ? でもなあ……ズバリ言えばそんなの現状の技術の延長線上にあるわけで、実現できる分からないけど、「SF」とはいいがたいような気がしてならないすね……。
 その結果、主人公たるイカレ科学者エイドリアンは、たんなるイカレエンジニアになり下がり、さらに言えば特に苦労もしてないし苦悩もしない。たいていの場合、度重なる失敗という苦労の末に世紀の大発明をして、それを自らを実験体にして、成功、するけれど、「元に戻れない!!」という苦悩を味わうのがお約束なのに、本作の場合、開発の苦労は一切描かれないし、元に戻るのもスーツを脱げばいいだけってのも実に気に入らないすね。これじゃあ共感もできないっすなあ……。。。
 そして、やっぱりどうしてもなぜコイツはそんなにこのクソ女にご執心なんだろうか? という点には全く理解が出来ず、おまけに、ほぼ単なるうっかりミス? でスーツを奪われ逆襲されるというエンディングは実に見ていて興ざめだったすな。アホだコイツ……というのが結論す。
 というわけで、この二人のイマイチすぎるキャラクターと演じた役者についてメモして終わりにしようと思います。監督や他のキャストはもうどうでもいいや。
 ◆セシリア:ヒロイン。全く可愛くない。どうやらなんかのパーティーでエイドリアンと出会い、お互いLOVEるわけだが、どうやら物理的暴力&精神的虐待を受けたとして、エイドリアンの住まうウルトラ超豪邸から脱出。わたし的には脱出時、飼ってるワンコに、「ごめんね、連れて行けないの」と置き去りにした開始5分の段階で、コイツに対する共感はゼロになりました。そしてどういう関係かまったく描かれていないけれど、友人である警官の黒人男性の家に転がり込む。そして遺産として5億もらえるとなると、余裕でその金は貰い、どうでもいい買い物をしたりと、時間が経つにつれてどんどんと、わたしのコイツに対する共感はマイナス値が積みあがって行きましたな。お金なんていらないわ! という展開ならまだ許してやっても良かったのに。相当なクソ女だよ、コイツ。すごいしっかり者の妹が出てくるのだが、その妹が気の毒過ぎるよ……。そしてラストシーンの若干してやったりな表情には、すぐさま席を立ちたくなったす。あそこで口元に笑みを浮かべさせなかったのは、監督の良心だと思いたい。笑ってたら、マジで即、席を立っただろうな。こんなトンデモ女を演じたのはElizabeth Moss嬢37歳。全く可愛くないし、興味も持てないので以下省略。
 ◆エイドリアン:光学技術エンジニア。超金持ち。天才らしい。どういうわけかセシリアに執着しているが、一応、本編で語られたところによると、どうしても自分の子供が欲しかったらしく、実はセシリアは妊娠していて(セシリア自身は避妊薬を飲み続けていたと思い込んでたけど、エイドリアンにはとっくにバレてて、薬をすり替えられていた。気づけよ!)、セシリアというよりその胎内の子が欲しかった、みたい。でもアンタさあ、アンタならいくらでも相手がいたでしょうに……。おれには分からんわ……。
 一つポイントなのが、エイドリアンの兄貴が弁護士で出てくるのだが、わたしはまた、この弁護士が実は弟を殺して、スーツを奪って、遺産がセシリアに渡ってしまうの邪魔するために暗躍してるんだろうな、と思ったけど、全然違ってました。でも、エイドリアンは純粋にセシリアを愛していて、遺産を渡そうとしていた、けど、兄貴はそれが気に入らない、って話の方が面白かったと思うんだけどな……。そしてそんなエイドリアンを演じたのは、Oliver Jackson-Cohen氏34歳。まあ、イケメン……かな? でも、残念ながら「透明」なので、ほぼ姿は映りませんw 出てくるのは最初と最後だけっす。
 とまあ、こんな感じでもう書きたい事がなくなったので、終わりにしたいが、最後に全く関係ないけど、2000年公開のBacon様主演『Hollw Man』がいかに素晴らしいかについて一言書いておこう。
 とにかく、ビジュアルイメージがまず最高すね。皮膚→筋肉や臓器→骨、とだんだん透けていくあの映像はやっぱり秀逸だと思う。そして「もし透明人間になれたら?」と男子中高生なら必ず妄想する、ちょっとエッチな風景もまた最高なんすよ。寝ている女子の服のボタンをはずして、おっぱいを……みたいな下品だけど最高な、本筋に全く関係ない部分もまた最高なんす! ただなあ……やっぱりヒロインに共感できないんだよな……『Hollw Man』も。まあ、確実にBacon先生版の方が面白いので、是非見ていただければと存じます!

 というわけで、結論。

 「透明人間」を扱った映画はいっぱいあるけど、今般公開された『THE INVISIBLE MAN』という映画は、なんと化学的変化ではなく光学的技術で透明になる、新世代の透明人間でありました。それを完全ナシだとは思わないけれど、どうせそういう技術は軍事産業がスポンサーなんだから、軍の陰謀めいたサスペンス、って方向性もあったんじゃなかろうか。そうなると『ANT-MAN』的ヒーローにもなったかもしれないのにな。ズバリ、本作はキャラクターがクソすぎて全く共感できず、実に不愉快な思いのする作品であったと結論付けざるを得ないと存じます。そして、2000年公開のVerhoeven監督&Becon様主演の『Hollw Man』の方が100万倍面白いと存じます。以上。

↓未見のかたは是非!!
インビジブル (字幕版)
メアリー・ランドル
2013-11-26