2019年02月

 James Cameron監督と言えば、現代最強映画作家の一人であることは、おそらく誰も異議を唱えないだろう。現在Cameron氏は、せっせと『AVATAR』の続編を製作中とのことだが、恐らくはきっと、またすごい、今まで観たことのなかったような映像を見せてくれるのだろうと、今からとても楽しみだ。
 そしてCameron監督が真にすごいというか、偉大な点は、「既存のハードウェア・ソフトウェアで自分が撮りたい映像が撮れないなら、自分で作る!!」という点にあると思う。そう、この人は、自分でカメラや編集ソフトを、ハードメーカーやソフトメーカーを巻き込んで、自分で作っちゃう男なのだ。
 わたしが思うに、その点がChristopher Nolan監督と大きく違う点で、Nolan監督がIMAXにこだわり、既存技術の延長線の中でその限界を極める、最強クリエイターである一方で、Cameron監督は、ゼロから作っちゃう最強イノベーターである、とわたしは考えている。
 というわけで、このたびCameron監督が脚本を書き、製作を担当した作品『ALITA: Battle Angel』という映画が公開されたので、わたしもさっそく観てきた。本作は、Cameron監督が惚れこんだという日本のコミックのハリウッド映画化作品である(※パンフによると、25年前に、Cameron監督にこの漫画を紹介したのは、日本カルチャー大好きなオタクでお馴染みのGuillermo del Toro監督だそうです)。そのコミックとは木城ゆきと先生が1990年に発表した『銃夢』という作品だが、わたしは恥ずかしながら『銃夢』を読んでおらず、ま、別に構わんだろ、と思って『ALITA』を観てきたのだが、観終わり、劇場を出た瞬間におもむろにタブレットを取り出し、電子書籍で『銃夢』を買って読んだ。まさか全9巻だとは思っていなかったので、お、おう、とか思ったものの、映画に合わせてなのか全9巻セットが6冊分ぐらい?の値段にお安くなっていたので、問答無用でポチり、そのまま近くのカフェで読んでみたところ……意外なほど、映画は原作に忠実で(勿論違う点もいっぱいあるけど)、なるほど、これは原作者の木城先生がこの映画を観たら、うれしいだろうな、という仕上がりであったことを知ったのである。そしてわたしも、映画『ALITA』には大満足であった。いやあ、面白かったし、とにかく、アリータがカワイイんすよ! 大変良かったと思います。

 というわけで、物語は25世紀(?忘れた!26世紀だっけ?)、The FALL=(没落戦争)なる大きな戦争が終わった後の世界を舞台にしている。唯一残った空中都市ザレムの下に、荒廃した地上世界が取り残されていて、そして地上では、生身の人々だけではなく、体の一部あるいは全部を機械に置換したサイボーグがともに普通に暮らしており、サイボーグ手術を生業とする元ザレム市民イドが、ザレムから落っこちてくる鉄くずを漁っている時、1体の女性型サイボーグの頭と胸から上のボディを拾うところから物語は始まる。そのサイボーグのパーツともいうべき頭は、完全に機能は停止しているものの、脳は無事らしいことが分かり、イドは拾って来たサイボーグに、かつて亡くした娘のためのサイバネティックボディを与える。そして目覚めたサイボーグは完全に記憶を失っていて、名前すら覚えていない状態だったのだが、娘の名前「アリータ」と仮に呼ぶことにする。目覚めたアリータは何もかもが新鮮で、無邪気だったのだが、その心臓は大戦前のすでに失われた高度な技術で作られており、どうやら300年以上前に製造されたことが判明する。また、古代の武術「機甲術(パンツァー・クンスト)」の技を使って戦うこともできるアリータ。それらの謎は、どうやらザレムの「ノヴァ」なる人物に繋がっているようで……てな展開である。いつも通りテキトーにはしょりました。
 だが問題はラストのエンディングで、若干、ジャンプ打ち切り漫画的な、ここで終わり!? 感があって、わたしは結構びっくりすることになった。それゆえ、きっとこの先の物語がコミック原作にはあるに違いない、つうか、これはコミックを読まないとダメだ、と思ったから全巻まとめ買いをしたのだが、どうやら結論としては、映画はコミックの2巻、いや3巻冒頭かな、その辺りまでのようで、やっぱり続きの物語は明確にあるみたい。
 だけど、うーん、まあ、やっぱり似て非なるものというか、別物と思った方がいいのかな。コミックでは、後半に行くにしたがって、ザレム側のキャラも出てくるけれど、映画のようにザレム=悪ではなく、それなりにイイ人も出てきます。つうか、映画を面白いと感じた人は、コミックも全部買って読んでみるといいと思います。
 というわけで、ざっとキャラ紹介して終わりにします。
 ◆アリータ:コミックでは「ガリィ」という名前ですが、まあ、別にアリータでも全然問題ナシ。映画のアリータは、目が普通の人間よりもデカイわけですが、やっぱり最初は何となく違和感があるわけですよ。しかしですね、物語が進むにつれ、全然気にならなくなっちゃうんだな。つうかむしろ、カワイイとさえ思えてくるから不思議です。わたしは『AVATAR』の時も、ナヴィ族のネイティリが、観ながらどんどんかわいく見えてきてしまったわけで、あれと同じすね。無邪気で、恋にウキウキしている様子なんかがそうわたしに思わせたのだと思うけれど、だんだんと記憶を取り戻して、表情が変わっていく様子は、やっぱり映画の強みというか、コミックよりも物語的にうまくまとまっているようにも思えた。やっぱり脚本がしっかりしてるのが、本作のクオリティを担保してるように思える。長いコミックの重要な要素をきっちりと抑えつつ濃縮してる、みたいな印象です。
 映画版では印象深い、血を目の下に塗るシーンなんかも、コミックではちょっと違う形で出てきたりします。実際、物語のカギとなる「モーター・ボール」に関しては、コミックではとてもカッコイイキャラが出てくるけれど、本作には登場せず、だったり、いろいろ物語(の順番)や設定は違うんだけど、それでも映画版はきっちりまとまっていて、映像的にも凄いし、大変楽しめました。
 で、演じたのはRosa Salazarさん34歳。34歳!? マジかよ。CG加工されているので全然印象が違うけれど、この人は『MAZE RUNNER』の2作目から登場したブレンダを演じた人なんすね。なるほど、写真を見ると、たしかに鼻と口はアリータっすね。まあほんと、アリータだけでなく、街の様子や数多く登場するサイボーグたちなど、どうやって撮影したのか全然想像もできない映像はすごいす。
 ◆イド:元ザレム市民で医師。現在は地上に住み、サイバネ手術を行い、人々から信頼されている。コミックとは年齢も違うし、アリータ(コミックのガリィ)への想いも結構違うけれど、たしかにイドでした。地上世界には警察がなくて、「ファクトリー」なる組織が取り仕切るセキュリティがあって、犯罪者を狩る「ハンター・ウォリアー」と呼ばれる賞金稼ぎたちがいるわけですが、イドがハンターとして犯罪者を狩る動機は、コミックとはちょっと違っていて、映画の方が共感できるものとなっていると思う。演じたのは、助演男優賞ハンターとわたしが勝手に呼んでいるChristoph Walz氏。とても雰囲気が出てて、コミックのイドの面影も感じますな。大変良かったと思う。
 ◆ヒューゴ:元々イドと知り合いで、便利屋的にいろいろ調達してくる仕事の早い青年。アリータはヒューゴがどんどん好きになっていくのだが、ヒューゴは「ファクトリー」の地上ボス?の男に利用されて、結構悪いこともしていて……というようなキャラ。なんつうか、若干ゆとり臭は漂ってましたな。もうチョイ、分別があれば……ちなみにコミックのヒューゴはもっと子供っぽく、生い立ちももっと気の毒な感じです。まあ、まだ世の中のことを知らず、本当の善悪を見抜けない子供だったんだろうとわたしは思うことにします。演じたのはKeean Johnson君。23歳、かな? 妙に健全な、つるっとした肌の青年でした。演技的には……まあ普通す。
 ◆ベクター:地上では偉そうにしている悪党だけど、実はラスボスのノヴァの操り人形、という若干かわいそうな人。このキャラは、その見かけもすごくコミック版のキャラと似ていて、大変良いと思います。演じたのは、明日のアカデミー賞で助演男優賞にノミネートされているMahershala Ali氏45歳。雰囲気バリバリで悪人オーラが漏れ出ていますが、普段のこの人の笑顔は大変優しそうなお方ですな。
 ◆チレン:元イドの妻。ベクターと組んで悪いことをしているが、最終的には改心するも、残念なことに……さっきWikiで初めて知ったけど、チレンというキャラはOVAに出てたんすね。まあ別人だけど。コミック版には映画のチレン的キャラは出てこないす。演じたのは、かつて絶世の美少女だったJennifer Connellyさん48歳。今でも大変お美しいお方ですよ。この人を観ると、なんかいつも宮沢りえさんを思い出すっすね。美女なのは間違いないす。
 ◆ノヴァ:本作のラスボス。登場シーンはごく少なく、謎のゴーグル的なものを着用しているのだが、ラストでそのゴーグルを外したとき、あ! Edward Norton氏じゃないか! と驚いたすね。一切クレジットにも出てこなかったけれど、あの顔を見間違えるはずもないので、間違いないす。しかし本作のエンディングは……続編を作る気満々なのだろうか……? というぐらい、ここで終わりかよ!エンドでした。
 あとは……わたしが観ていて、あれっ!? こいつって……? と思った人が一人いたのでその人を紹介して終わりにしよう。
 ベクターとチレンの手下で、アリータに何かとちょっかいをかけてきて、最終的には負けるゴッツイ、凶悪なサイボーグのグリュシカというキャラがいるのだが、まあ、体は全部機械で顔だけ俳優の顔が張り付けてあるようなキャラなんですが、この顔にわたしはピンと来て、まさか? と思ったらまさしくJackie Earle Haley氏であった。わたしの大好きな映画『WATCHMEN』の主人公、ロールシャッハを超熱演した彼ですな。コミックのグリュシカとは若干設定が違うんだけど、あの地下での、腕一本になっちゃったアリータの戦いぶりはまさしくコミック通りで、映画を観てからコミックを読んだわたしとしては、すげえ、このまんまだったな、と驚いたす。
 そして監督は、Robert Rodoriguez氏だったのだが、わたしはこれまで4本ぐらいしかRodoriguez監督作品を観てないので、それほど語れることはないけれど……なんか、堂々たる大作だったな、という感想です。血まみれなヴァイオレンスアクションの印象が強いけれど、まあ、本作はそれほどでもないので、健全な皆さんにも楽しめること間違いなしだろうと存じます。

 というわけで、書いておきたいことがなくなったので結論。
 まず第一に、面白い、です。そして、この映画を観たら、原作もぜひ読んでみてもらいたいすね。結構なシーンが原作コミック通りだというのは、ちょっと驚いたす。そしてなにより、観ているとアリーがどんどんかわいく見えてくるんすよ! それは、キャラ設定だったり、表情だったりと様々な要素から湧き上がるものだと思うけれど、とにかく、アリータが本当に人間の少女のような、純粋で、無邪気で、よく泣くとてもイイ子なのです。アレっすね、わたしのようなおっさん客にとっては、少女の涙には有無を言わせぬ保護欲的なものを感じさせますな。ホント、アリータには幸せになってほしいのだが……ここで終わりかよエンドなので、続きはコミックで堪能するのもアリだと思います。だいぶ話は違いますが。そして映画ということで、その映像もきわめて高品位なCGがふんだんに使われており、映像的な見どころも満載だと存じます。結論としては、大変楽しめました。続編は作られるのか知らないけれど、作るなら、希望のある明るいエンドにしてほしいす。以上。

↓ とりあえず映画が気に入ったならおススメです。まずは(1)巻をどうぞ
銃夢(1)
木城ゆきと
講談社
2014-01-31

 まったく、ワシは何をしとったんじゃあ……
 と、わたしは昨日の夜、WOWOWで録画しておいた映画を観て、つくづく思った。2018年5月公開の作品なので、間違いなく言えることは、この映画を劇場へちゃんと観に行っていたならば、確実に2018年にわたしが観た映画ベストの3位ぐらいにランクしていただろう、と断言できる。なんなら1位にしてもいいぐらいだ。
 ほんとに、ワシは去年、なんでこの映画を劇場に行かなかったんじゃ……アホだった……と深く後悔したわけだが、その映画とは、東映作品『孤狼の血』であります。わたしの髪を切ってくれているイケメンのヘアスタイリストさんとわたしは、どういうわけか『仁義なき戦い』シリーズが大好きという共通点があって、去年、この映画について、観に行かねえとダメなんじゃないすかねえ、とか言っておきながら、わたしもイケメンさんも、まんまと見逃してしまったのだが、さすがわたしの愛するWOWOWですよ。公開から1年もたたずに放送してくれたので、さっそく録画し、昨日の夜、もはや何もかもやる気にならず人生について軽い絶望を抱いたわたしは、そうだ、アレを観よう、と思ったのであった。
 そして観た結果思ったのが上記のことである。本当にこの映画は劇場でちゃんと観るべきだった! と後悔するほど素晴らしい出来で、おまけに予想外な展開には泣けるほどの感動?すらあり、わたしとしてはもう、この映画は大絶賛いたしたく存じます。
 ただまあ、基本ヴァイオレンス&血まみれアリな映画だし、いきなり冒頭からショッキングな拷問シーンから始まるので(※ただしその拷問シーンは物語上とても重要)、そういう方面が苦手な方にはお勧めできないけれど、そうだなあ……これは全おっさんに向けては超おススメ、であります。これは観た方がいいっすよ!
 というわけで、以下、なるべくネタバレしないよう気を付けるつもりだけれど、とにかくまだ観ていない人は、ここらで退場して、観てから戻ってきてください。絶対に何も知らないで観る方がいいと思います。

 というわけで、まあ、物語は予告から想像されるものとは、そう遠く離れていない、とは思う。わたしは去年、何度かこの予告を劇場で観て、まあ、アレかな、Denzel Washington氏がアカデミー主演男優賞を受賞した名作『Training Day』的なお話かな、とか思っていた。要するに、あの作品でDenzel氏演じた悪徳警官を日本が誇る最強役者である役所広司氏、そしてEthan Hawke氏演じた正義漢の若い警官を、若手イケメン松坂桃李くんが演じるのかな、的な想像である。
 実際、その想像は間違ってはいなかったと思うが、わたしは全然わかっていなかったことがあった。それは、ちょっと考えればわかることなのだが、本作は、日本映画であり、東映作品であり、そして舞台は広島、である。つまりそれは往年の『仁義なき戦い』シリーズのDNAを内包していて、日本人のわたしが観ると、『Training Day』とは違った恐ろしさというか、身近な恐怖というか、要するに、より一層リアルでおっかねえ、のである。加えて、本作の時代設定が1988年=昭和63年=暴対法制定以前というのも、当時大学に入りたてだったわたしとしては、十分に時代の空気を知っているため、さらにそのリアル感は増強されていたようにも感じた。
 現代社会では、いわゆる暴力団のことを反社会的勢力とか言って、上場企業の経営企画の人間としては「反社」という略称を使って、あらゆる契約には必ず、「反社との付き合いはないですよね?」と相手先の表明保証を求めたり、取引先の「反社チェック」なんかもよくやるのだが、北野武監督の『アウトレイジ』シリーズがまさしくその「反社」そのものを描いた作品である一方で、本作の主軸はあくまで「警察」である。そこが大きく違うし、また、本作は悪徳警官(としか見えない)役所氏と、若干青臭い正義漢の松坂くん、という二人の演技合戦が真っ向勝負でぶつかっていて、その点も『アウトレイジ』とは大きく印象の違う作品であろうと思う。言うなれば、『アウトレイジ』は「悪VS悪」の対決であるのに反し、本作は「悪VS善」の対決が描かれるわけだが、問題は何をもって善悪を判断するか、という境界線にあって、そこに本作最大のポイントがあると言っていいだろう。
 こう考えると、そういうテーマはわたしの大好きな作品『SICARIO』にも通じるモノがあるのだが、『SICARIO』は完全にドライに割り切った、屈強で冷徹な男たちだったのに対し、日本はですね、やっぱりもっとウェット、というか、ハートがあるんですなあ……! そこにわたしは相当グッと来てしまったのであります。いやあ、本当になんつうか、感動したっすね。役者の芝居も、脚本も撮影も、それらが一体となって見事な作品だったと絶賛したいと思う。
 あーーーくそう、ネタバレを気にすると本当に何も書けない!
 ので、キャラ紹介と演じた役者陣をまとめて終わりにします。が、登場キャラがすごく多いので、あくまでわたしが、重要キャラと思った方だけにします。どうでもいいけど、女優陣はことごとくエロいす。つうか、マジで見た方がいいっすよ!
 ◆大上省吾:おおがみ、と読むことから通称「ガミさん」。広島県警呉原署刑事課所属の巡査部長。マル暴担当で、もうその捜査は違法行為満載で、誰がどう見ても真っ黒け。また、なにやら14年前に殺人に関与したという噂もあって、呉原(=一応架空の街)を仕切る反社組織の尾谷組と仲がいい、ようにみえるが、実は――なキャラ。演じたのは散々書いている通り役所広司氏。とにかく凄い、迫真の芝居ぶりが素晴らしい! 本当に役所氏は日本最高レベルの役者だと思うすね。最高でした。
 しかし思うに、この物語から30年を経た現代では、ガミさんのような刑事はもう絶滅してるんすかねえ……なんでも録画して、なんでも正論をかざした自称正義がまかり通る現代では、生きていけないだろうなあ……。悪には悪を、毒には毒を、的な理論は通じないでしょうなあ。普通で平和な毎日を送っている我々としては、反社なるものは若干の他人事感のような、自分とは関係ない的な感覚を持っていると思うけれど、実際は我々の暮らす日常のすぐ隣に間違いなく存在しているわけで、「法」が我々を守ってくれる、みたいにのんきには思わない方がいいんでしょうな。もはや警察がが守ってくれるとは思えないし、出来ることはやっぱり、君子危うきに近寄らず、しかないような気がしますね。我々、ちっとも君子じゃねーけど。
 ◆日岡修一:広島大学を卒業した警官(たぶん単に大卒なだけでキャリア組ではない)。そのため通称「広大(ひろだい)」と呼ばれている若者。ガミさんと組まされて振り回されるが、実は県警本部から送り込まれた監察官でもある。これは観てればすぐわかるのでギリネタバレじゃない判定をしました。彼は社会経験も少なく、人間としてまだ未熟なわけで、縋るものは「法」しかないわけだが、その遵法精神はガミさんの捜査に同行しても揺るがず、相当な気合で耐え忍んで、ガミさんにちゃんと異議を唱えるガッツある若者でした。わたしはどんどん揺らいでいくのかと思っていたけど、結構軸がブレることがなく、実は相当立派な男なのではないかとすら思った。しかし後半、予想外の出来事にとうとう彼の心は、「境界線」を踏み越えることに―――? 的なキャラ。演じたのは、わたしが若手イケメンで一番カッコイイんじゃないかと思っている、シンケンレッドでお馴染み松坂桃李くん。わたしは彼はかなりの演技派だと思っているのだが、本作でも非常に素晴らしかったすね。本作は、何気にチョイチョイと長回しのシーンがあるのだが、中盤から後半にかけて、役所氏がすっごい長いセリフを言うシーンで、桃李くんは酔っ払っていてただ聞いているだけ、のシーンがあって、そこではもう、役所氏の圧倒的な演技力はもちろん素晴らしいんだけど、実は聞いているだけの桃李くんの方も、その聞き方というか、ちらっと役所氏を見たり、何か口を開きかけたり、というような、受けの演技も超素晴らしかったとわたしは絶賛したいと思う。ホント、桃李くんはイケメンだけじゃあない男ですよ。ラストもカッコ良かったすねえ! きっと広大は、今頃かなり出世していると思います。最高でした。
 ◆高木里佳子:尾谷組の縄張りにあるクラブ「梨子」のママ。とにかくエロイ。ガミさんを深く信頼しているが、その理由は後半明らかにされます。なんか泣けるんすよ……。演じたのは真木よう子さんで、このお方の演技がうまいと感じたことはあまりないけれど、今回は大変良かったすね。そしてなにより、控えめに言ってもエロいす。最高でした。
 ◆岡田桃子:ガミさんがよくけが人を連れて行く薬局のアルバイト女子。冒頭でボコられた広大を連れて行ったとこがきっかけで、その後広大と関係を持つのだが、実は――なキャラ。演じたのは阿部純子さんという方で、わたしは全く知らない初めて見るお方だったのだが、非常に印象に残る演技でした。……なんつうか、メイクやファッション、あるいは暮らしている部屋なんかが醸し出す絶妙な昭和感が、妙にリアルで、なんかエロいんすよ……。実に正統派の美人で、非常にイイすね。ラストに登場する姿も、実に極上です。最高でした。
 ◆上早稲潤子:冒頭の拷問シーンで殺された男の姉として、ほんのワンシーンだけ登場するキャラなのだが、とにかくまあ、エロイ雰囲気バリバリなお方。わたしは、あれはいったい誰が演じてたんだ? と分からなくて調べたら、元グラドル/現ママタレ?のMEGUMIさんであった。そのエロさ、衰えなしの強い印象が残るお役でしたね。最高です。
 ◆一之瀬守孝:尾谷組の若頭。現在尾谷組組長は鳥取刑務所で懲役中なので、実質TOP。わたしとしては本作で一番ヤバイ反社のお方。スーツ姿で頭が良さそうな極道は一番怖いすね。ただ、本作では実はそれほど大きな役割はなく、最終的には――なキャラ。演じたのは見た目クール But 中身凶暴な悪党が良く似合う江口洋介氏。大変カッコ良かったと思うすね。なお、対抗組織の加古村組若頭は、これまたイケメンの竹野内豊氏が演じているのだが、冒頭の拷問シーン以外、あまり出番がないんすよね……それがとても残念というか、イケメンの無駄使いだったような気がします。江口氏と竹野内氏の壮絶バトルもみたかったすね。そこだけ残念す。
 ◆五十子正平:加古村組の上部組織である五十子会の会長。一番の悪党、かな。ラストは超ざまあです。でも、クソ野郎成分としては、この会長よりも手下どもの方が上で、彼らの末路も見たかったかもしれないす。出来れば血まみれで。演じたのは石橋蓮司氏で、登場してきた瞬間に、ああ、このおっさんはタダじゃすまないでしょうな……と思わせるのは、やっぱり蓮司氏の芝居が素晴らしいからだと思う。実際、タダでは済みませんでした。
 ◆瀧井銀次:五十子会の下部組織である右翼団体の長で、ガミさんとは長い付き合い。通称「ギンさん」。ラストの決断は男を見せたっすね。大変良かったと思う。演じたのはピエール瀧氏で、おっかない中にも、本作で唯一コミカルっぽいところも見せてくれました。
 ◆嵯峨大輔:広島県警の監察官で、広大こと桃李くんを呉原署に送り込んだ人。実はコイツの狙いは……というのはまあ、予想通りかも。演じたのは滝藤賢一氏。残念ながらこの人も、出てきた瞬間に絶対悪い奴だろうな、と予感させるお方でした。
 とまあ、他にもキャラはいっぱいいるのだが、大体こんなところかな。とにかく役者陣の演技合戦はとても素晴らしいし、その芝居の元となる脚本も極めて上等、そして役者を引き立てる撮影・演出も大変お見事でした。くっそう、ホント、なんで俺はこの映画を劇場に観に行かなかったんだ……! マジで劇場に観に行かなかったことが悔やまれる傑作であり、大いにお勧めいたしたく存じます。

 というわけで、結論。
 去年劇場公開され、観たかったけれど見逃していた映画『孤狼の血』がWOWOWで放送されたので、さっそく録画し、昨日の夜ぼんやり見てみたわたしである。結論としては超傑作、非常に面白かったと申し上げたい。まず脚本が素晴らしい出来であり、その脚本にキャスト全員が最高の演技で見事にこたえ、撮影や演出もばっちり決まっている、という近年まれにみる素晴らしい日本映画だったとわたしは思う。本当に久しぶりに、ちくしょー! なんで劇場に観に行かなかったのだ! と悔しい思いだ。なんつうか、ひょっとすると、わたしの琴線に一番触れたのは、わたしの青春時代である1988年という時代設定と、画面から伝わる絶妙な昭和感、なのかもしれない。キャラ設定も、実のところよくあるパターンのような気もするけれど、これがまた、現代社会では絶滅してしまった、昭和の男感が溢れているような気もしますね。というわけで、わたしはこの映画がとても気に入りました。恐らく今後、何度もまた繰り返し見るような気がします。控えめに言っても、最高ですね。以上。

↓ これは原作小説を読んでみたい気がしますね。
孤狼の血 (角川文庫)
柚月裕子
KADOKAWA
2017-08-25

そして配信でも観られますので、是非!
孤狼の血
役所広司
2018-11-02

 わたしはどうもイギリス史にはほぼ無知というか興味もあまりないため、18世紀初頭のステュアート朝最後の君主、アン女王に関してはほぼ何の知識もなかった。ましてや、アン女王の晩年の側近であった、アビゲイル・メイシャムなる女性に関しては、聞いたこともなかったことを白状しよう。
 なので、わたしが昨日観てきた映画『THE FAVOURITE』は、意外なほど史実に沿ったお話であることを、実は観終わってパンフレットを読みつつインターネッツで調べて、初めて知ったのである。
 映画としては、若干クセのすごい演出や、キャラのクセもすごくて、なんだかイマイチ好きになれない……というかキモチワルイのだけれど、どうやらお話自体は、結構史実通り、のようだ。へえ~。そうだったんだなあ……と、実は鑑賞後に初めて知ったのであります。
 というわけで、来週には発表されるアカデミー賞でも最多10部門にノミネートされているということで、わたしも興味を持って観に行ったわけだが、実のところわたしがこの映画を観ようと思った理由はただ一つ。わたしが愛してやまないハリウッド美女のEmma Stoneちゃんが出演しているから、であります。ただ監督が、以前WOWOWで観て、こりゃ微妙すぎんな……と思った作品『THE LOBSTER』を撮ったギリシャ人Γιώργος Λάνθιμος(=アルファベットだとYourgos Lanthimos)氏であったので、若干イヤな予感はしたのだが……まあ、実際、演出やキャラ造形は前述のようにまったくわたしの趣味ではなくアレだったんすけど……キャスト陣の演技合戦は大変見ごたえがあって、結論としては結構面白かった、と思う。
 というわけで、まずは予告編を貼っておこう。そしていつも通りネタバレに触れる可能性があるので、気になる方はここらで退場して、劇場へ観に行ってください。それなりにおススメ、です。

 ま、上記予告にあるように「アカデミー賞最有力」なのかどうかは知らないけれど、確かに、この映画は若干のシャレオツ臭というか、玄人受けというか、まあ、普段のわたしなら、ケッ!とか言ってあまり見たいとは思わないような雰囲気を醸し出している。
 そして物語はほぼ上記の予告通り、と言ってもいいだろう。しつこいけれど、わたしは本作でアン女王の「お気に入り」を争う(?)ことになる二人の女性、アビゲイル・メイシャム嬢とレディー・サラ・チャーチルが実在の人物なのか、よく知らないまま観ていたのだが、どうやら、二人の確執は実際にあったようで、本作は結構歴史通り、らしい。そりゃもちろんすべてじゃないだろうけど。
 というわけで物語は、アン女王と肉体関係さえ持っていた幼馴染のレディー・サラが取り仕切る宮殿に、若くてかわいいアビゲイルがやってきて、やがてアン女王の「お気に入り」となってゆくお話であるのだが、わたしは観ていて、2つのことに生理的な嫌悪を感じたものの、これまた前述の通り、キャスト陣の演技合戦は大変お見事で確かにこれはアカデミー賞クラスかも、と思うに至った。というわけで、わたしが感じた嫌悪とキャスト陣についてまとめてみよう。
 1)とにかく汚くて不潔な18世紀イギリス
 日本で言うと江戸時代、5代将軍の綱吉の時代あたりのイギリスなのだが、なんつうか、きったねえし不潔な宮殿・社会インフラがわたしとしてはかなりゾッとした。道は泥道、そして服も薄汚れている、さらに宮殿内も、なんか……ぜんぜん華美ではない。恐らくこれらは、本当にそうだったのだろうと思う。そういう意味ではリアルなのだが……もちろん日本の同時代もそんなに変わりはないんだろうけど……たぶん、江戸という街、ましてやその頂上たる江戸城はもっときれいで清潔だっただろうし、将軍家に仕える武士たちや市井の江戸庶民たちはもっとこざっぱりしてたんじゃなかろうか……と根拠なく感じた。そういう意味では、日本とは違う、西洋の小汚い宮殿というのは実に興味深く思うし、また、日本人で良かった……とか思った。アレかな、やっぱり西洋人は風呂に入らないんですかね? おそらく、耐えがたい悪臭ぷんぷんだったのではなかろうか……。キツイ香水で隠すのはホントやめてもらいたいよね。これは現代でも言えることだけど……。
 そしてもう一つ、わたしが不潔できたねえ、と思ったのは、性に対する描写である。そもそも、男も女も、なんか知らないけど若干肥満気味な人々が多く登場したからというのもあるかもしれないけれど……豚みてえな野郎たちのSEXはホント、おえっ! と思うような不潔感を感してしまうのである。そして薄汚れてるし、ちょっとだけ娼館の描写もあるし、またアン女王(しかもなんか小汚いおばちゃん)のHシーンもあったりと、性的な、なんというか……アニマル的な性欲は、そりゃまあリアルで当たり前なんだろうけど、キモチワルイもんだ、と現代日本人のわたしは感じざるを得なかったすね。
 2)TOPに媚びへつらう姿の気持ち悪さ
 わたしはこれまで、会社員としてもう何人も、TOPに媚びへつらう奴らをみてきたが、あれほど醜いと思う者もなかなか世には存在しないような気がする。本作は「女王陛下のお気に入り」となるために、本当にもう何でもする女性の姿を追ったものだが、その動機は分からんでもないけれど……やっぱりどうしても共感は出来ないですなあ……。キモチワルイんだもの。
 ただ、現実として、TOPにいる人間は、そりゃ何でもやってくれて、自分の聞きたいことを耳に吹き込んでくれる人間を可愛がって、重用してしまうのは、もう、にんげんだもの、しょうがないよ、とは思う。いつも自分に反抗的なことをいう人間に対して、仮にそれが正論で正しいことであっても、イラッとしてしまうのは、どうしようもないことだろうと思う。なので、本作では何でも聞いてくれるアビゲイルと基本的に正直&正論派のレディー・サラは、両極端で、元々は幼馴染で何でもあけすけに言ってくれるレディー・サラを重用していた女王が、やがてアビゲイルの甘い言葉に傾いて行ってしまうのは、もう仕方ないことだとは思った。
 でもなあ……アビゲイルの言動は、ほとんどが自らの野望のためで完全なる私欲であるのに対して、レディー・サラは、もちろん彼女も清廉潔白というわけでは全然ないけれど、恐らくは国のことを真面目に考えていたように見えるわけで、なんかとても残念です。まあ、所詮TOPに立つ人間というのも、人間であることに変わりはなく、一人の人間に権力を集中させていいことはないってことなんだろうな、とわたしは感じた。おまけに世襲でTOPになった人間なんてのは、基本的にもってのほか、なんだろうな。かといって、合議なんてのも時間の無駄な場合も多いわけで、ホントに難しいすね……。
 3)キャスト陣の演技合戦は凄くて、これは超見応えアリ。
 ◆アン女王:基本的に精神的にも肉体的にも、「疲れ果てている」女性。その背景には17人(?)の子供を喪った母としての無力感のようなものがあって、亡くした子供の代わりにウサギを飼っている心淋しい女性として描かれている。歴史上、本作で描かれたころは40歳ぐらいのはずだが、ぱっと見50歳ぐらいのおばちゃんとして描写されていた。で、演じたのはOlivia Colmanさん45歳。このお方は本当は結構美人なのに、まあとにかく、疲れたおばちゃんでしたよ。それはきっと、人間としてリアルな造形であったのだろうとは思う。そして、ある意味超わがままな言動と、時に、妙にキリッと決断というか宣言をする姿は、演技として大変上質であったように思う。なんつうか、子供のような繊細なハートと、女王としての威厳ある姿という二面性は、見事な演技によって表現されていたと思う。【2019/2/25追記】というわけで、アカデミー主演女優賞おめでとうございます!
 ◆アビゲイル・メイシャム:元々下級貴族だったけれど、父が放蕩野郎で落ちぶれ、ある種の地獄を見た女性。遠い親戚のレディー・サラを頼って宮殿入りするも、当然下働きから始まり、ちょっとした機転を聞かせることで女王に取り入っていく、したたかな、というか……気合と根性のある女性。彼女の野望は再び上流階級の暮らしをすることで、みごとその野望を果たすことに成功する。演じたのは、わたしの愛するハリウッド美女の中でも天使クラスにかわいいEmma Stoneちゃん30歳。やっぱりイイすねえ……はっきり言えば本作での役どころは、まったく好きになれない女性だし、自分の体さえ武器にする強力なガッツあふれる女性なのだが、演技としては、たまーーに「チッ……」っと本心を見せるような表情が極上だったですな。ラストのあのシーンも、可愛らしさを封印したかのような、非常にいろいろな意味のある表情でお見事だったと思う。
 ◆レディー・サラ・チャーチル:アン女王とは幼馴染。夫は軍人でフランス従軍中(スペイン継承戦争)。そして大蔵卿シドニー・ゴドルフィンと通じていて、戦争継続を女王に進言するが最終的には宮殿から追放され、国外退去に。しかし、レディー・サラも「もうこんな国はたくさんだわ……」と愛想をつかしてしまうのだが、歴史上はこの映画の物語の後、ドイツやオーストリアの宮殿で厚遇されるも、イングランドに再び戻って活躍したそうです。そうだったんだ……なるほど。演じたのはRachel Weiszさん48歳。天下のイケメン007でお馴染みDaniel Craig氏の奥さんですな。キッとした表情や、アビゲイルを小娘が……的に見下す眼差しなど、大変印象に残る芝居ぶりだったと思います。Emmaちゃんとともに、アカデミー助演女優賞にWノミネート。わたしとしては、EmmaちゃんよりRachelさんの演技を推したいところすね。
 ◆ロバート・ハーレー:戦争終了和平派のトーリー党の若手議員で、女は力づくでヤるもんだと考えているチャラ男くん。勿論実在の人物。ただ、歴史をちゃんと勉強していないわたしには、コイツがどうして和平を唱えたのかは若干良くわからなかった。映画上では、若干、何でも反対する野党の若僧にしか見えなかったす。アビゲイルと利害が一致していて、お互いを利用し合う関係。演じたのは、X-MENの若きBeastでお馴染みNicolas Hoult君29歳。本作では、18世紀イギリス貴族らしく派手な鬘を着用し、白塗り&メイクのほくろ、という若干傾奇者めいたいでたちだったけれど、彼独特の笑顔は一発でNicolas君だと分かりますな。
 とまあ、大体わたしが思ったことは以上なのだが、やっぱり、この監督の作品は、クセがすごくてあまり好きにはなれないですな……今回は『THE LOBSTER』のように、訳が分からん不条理系ではなくて、お話がきちんとしているから面白かったと結論付けたいけれど、魚眼レンズのような歪んだ画を多様するのは、なんかイマイチ好きになれないす。いや、それほど多用してないか。でも印象に残っちゃうんすよ。とにかく、特徴的というよりも、クセがスゴイ!と言った方がいいと思います。

 というわけで、結論。
 来週発表されるアカデミー賞で10部門にノミネートされている『THE FAVOURITE』という映画を観てきたのだが、まず第一に、監督のクセがすごくて、どうも好きになれないというのが一つ。ただし、お話は今までの監督の作品のような訳の分からん不条理系ではなく、史実に添った物語で、ちゃんとしていたし、何よりキャスト陣の演技合戦がとても見応えのある作品であった。まあ、登場するキャラそれぞれがことごとくクセがすごい! 作品であったけれど、歴史的に、実際そうだったのだろうと思うことにしたい。結論としては大変面白かったと思う。そしてやっぱりEmma Stoneちゃんはかわいいですな。本作では、天使と悪魔的な、Emmaちゃんの両面が楽しめると思います。あと、脱いでます。Emmaちゃんが脱いでるのを観るのは初めてじゃないかな? 以上。

↓ アン女王って、意外といろんなことをした人なんすね。全然知らなかった。世界最初の著作権法である「アン法」を制定してたりするんすね。ちゃんと勉強しないと……

 いやーー……バカにして申し訳ありませんでした!!
 昨日、わたしは会社帰り映画を観てきた。それは、本当なら先週末に行こうと思っていたのだが、ちょっとした用事が出来てしまって観に行くことができず、かといって明日からの週末は別の映画も始まるので、なんとしても今日中に観ておきたい、という作品だったのだが、その映画とは……DCコミックヒーロー映画、『AQUAMAN』であります。
 わたしは散々このBlogでも書いている通り、MARVELヒーロー映画は大好きだけれど、どうもDCヒーローはBATMANとWONDERWOMANしか好きになれずにいた。まあ、そのために、公開してすぐ観に行かなくてもいいか、とか思っていたのも事実である。さらに言うと、おととしの『JUSTICE LEAGUE』もかなり微妙な作品で、いよいよ公開される『AQUAMAN』に関しても、正直、まったく、1mmも期待していなかったのだ。どうせまた、相当アレなんでしょ……と小馬鹿にしていたわたしの方こそのバカだった!! はっきり言ってわたしは今日観た『AQUAMAN』が超面白くて、思いっきり楽しめたのであります。いやあ、これはイイっすねえ!
 というわけで、以下、ネタバレに思いっきり触れると思いますので、まだ観ていない方は今すぐ退場して、映画館へGO!でお願いします。ま、別に話を知ってても楽しめると思うけど。

 どうですか、この予告は。もう、全く見たいという気持ちを起こさせないというか、クソつまらなそうに思えませんか。少なくともわたしは、この予告を観た時、こりゃあまた香ばしいクソ映画っぽいな、と感じたのは確かだ。つうか、ガキ臭せえマンガじゃねえか、と。
 そして観てきた今でも、その印象はほとんど変わっていない。ズバリ、もう漫画そのもの、な映画であったと思う。
 しかし、だ。そもそも、DCコミック=漫画なんだから、実際あったりまえなのである。そして、わたしが本作を気に入った最大の理由はまさにそこにあって、「漫画に徹底している」のがとても気持ちイイのだ。『MAN OF STEEL』に始まった、DCワールドに関しては、今までもう何回もこのBlogでその勘違いした「リアル」路線を批判してきた。しかしこの映画『AQUAMAN』は、見事に今までの弱点を克服している作品だとわたしは思う。以下に、わたしがポイントだと思う点を列挙してみよう。
 1)ある意味テンプレな物語。だが、それがイイ!
 まずは物語である。ズバリ物語は、ある意味テンプレ的なお約束の展開で、ほぼ意外に思うことなんてなく、想像通りに進む、よくあるお話と断じてもいいのではないかと思う。だがこの映画は、例えるならば、全くの直球ど真ん中、そして「超剛速球」なのだ。
 その真っ直ぐでストレートなお話は、ここまで剛速球だと、もうそれは「テンプレ」とネガティブに思うよりも、「王道」とポジティブに評するしかないと思う。上映時間は140分超と意外と長いのだが、わき目も振らずに一直線に進む物語は、観ている観客にとっては全くストレスなく楽しめるし、その長さを一切感じさせないのも高く評価できるポイントだろうと思う。
 簡単に物語をまとめてみよう。時は1985年から始まる。とある灯台守の男が、嵐の夜、岩場に一人の美女が倒れているのを発見し、介抱する。そしてその美女は目を覚ますと、海底アトランティスの王女だという。親に決められた結婚を拒否して逃げてきたらしい。かくして出会った二人は恋に落ち、愛らしい男の子が生まれる。しかし男の子がすくすくと育つ中、海底から追手が現れ、「わたしがいては、あなたたちに危害が加えられてしまう。あなたたちのために、わたしは海に帰るわ」と、結局海に帰ってしまう王女。そして時は現代に移り、地上に残された息子はすっかり成長、ゴッツイおっさんとなって悪党退治にいそしむAQUAMANとして暮らしていたが、そこに海底から一人の美女が現れ、「あなたが海に戻って王位についてくれないと、あなたの弟が地上に戦争を仕掛けてくるわ。ついでに言うと、わたしはあなたの弟と結婚させられそうで困ってるんだけど」という話を聞き、ええ~オレは王の器じゃねーし……とか言いながら、いざ母の故郷の海底へ。そして海底のしきたりや、弟のことをよくを知らないAQUAMANは、王位継承の決闘に挑むことになるも、初戦は敗退、美女と共に「世界のどこかにある三叉の槍=トライデント」という最強武器を求めて旅に出るのであった……てなお話です。サーセン。超はしょりました。
 もう、いろいろ突っ込みたくなるのだが、これがなかなかどうして、ここまで剛速球のストレートだと、細かいことはどうでもよくなってきてしまうというか、面白く思えてしまうのだから不思議ですよ。わたしが一番謎に思ったのは、登場するキャラ達はものすごい勢いで水中を移動するのだけれど、ありゃ一体、どういう……仕組みというか理屈なんだろうか? いや、水を掻いている気配はないし、何かを噴出してジェット的に進んでいるわけでもない。物理法則は完全無視で、強いて言うなら、空を飛んでいるSUPERMAN的に「泳いでいる」としか見えないのだが……ええ、もちろんそんなことに一切の説明はありません。でもですね、どーでもよくなっちゃうんだな、そんなこたあ。
 そして物語は、当然伝説の武器を手にして勝利、無事に王座についてめでたしめでたし、である。こう書いてみると、オレは一体何が楽しかったのかさっぱり伝わらないと思うが、事実、面白かったとしか言いようがないのであります。
 2)とにかく映像がスゴイ!
 恐らく、ド直球の物語を、すげえ!と思わせるのに一番貢献しているのは、その映像そのものなのではないかと思う。恐らく水中シーンは、もうキャラクターを含めてほぼフルCGなのではないかと思う。それはそれで凄いのだが、一番すごいのは、カメラワークだ。とにかく動く! そして切れ目なし! 一体全体どうやって撮影したのか、どこからどこまでがCGなんだかさっぱり分からない映像のクオリティは、これはもう超一流だと言わざるを得ないだろう。この映像のすごさが、単なる直球ど真ん中の物語を「剛速球」に仕立て上げているとわたしは感じた。これはバットに当たっても、バットをへし折る勢いですよ。
 また、映像的な凄さは、まさしく漫画的表現にも通じるものがあって、漫画で言うなら「見開きでズドーーンと描かれる決めカット」もふんだんに盛り込まれており、観客の興奮を掻き立てることに見事に成功しているように感じられた。そう、極めて漫画に近い映像作りにも非常にセンスを感じさせるものがあったと思う。そういった画の作りこそ、演出というものだ。
 近年、コミック作品の映像化が当たり前となった日本の映画界(およびTV界)では、どこか勘違いしたような、漫画の絵をそのまま実写にしたような画をよく見かけるけれど、あんなのは演出なんかではなく、単に漫画の画をコピーしただけのものだ。本作はそんな下品なコピーなんかとは一線を画す、見事な作品と断言してもいいだろう。
 本作を撮ったのはJames Wan監督だが、わたしは彼の名を一躍有名にした『SAW』に関しては名作だと思っていたけれど、それ以降はとりわけ気にしてはいなかった。が、どうやらやはり彼は本物ですね。見事な演出だったとわたしとしては最大限の賛美をおくりたいと思う。
 3)何気に豪華なキャストが、超王道の剛速球を支えている。
 というわけで、各キャラとキャストを紹介しよう。ポイントになるキャラを演じる有名俳優がとても効いてると思う。
 ◆AQUAMAN=アーサー・カリー:主人公AQUAMANに関しては、わたしは実のところコミック版『AQUAMAN』を読んだことがないので知らなかったことが結構あって、意外と驚いた。わたしは『JUSTICE LEAGUE』でのAQUAMANしか知らなかったのだが、あの作品でのAQUAMANは、まあズバリたいして強くないくせに偉そうなキャラだったのだが、本作で語られたことによれば、深海の超高圧・極低温にも耐えられる体だそうで(ちなみにそのような体に「進化」したんだそうだ)、結果として、銃火器や刃物は一切効かないため、ま、普通の人間ではまず勝ち目ナシ、である。そして海に入ればほぼ無敵であるため、これは戦い方によってはチート宇宙人のSUPERMANにも勝てるのではないかというポテンシャルを持つ男である。そして海洋生物と意思疎通ができる謎能力の持ち主で、そのことが今回、ちょっとしたカギに(わたしは海底人なら誰でも持てる能力だと思ってたのだが、どうやら「王」の資質を持つ者の固有能力らしい)。ただ……残念ながら弱点は、あまり頭が良くないことかな……しかし、そのせいなのか、キャラとしては極めて素直で奢ることもあまりなく、ちゃんとそれなりに努力もするし、とても好感の持てる男であった。ごめんよ……『JUSTICE LEAGUE』しか知らなかったわたしは、君のことをただの脳筋かと思ってたよ……意外と素直でイイ奴だったんだね……。演じたのはもちろんJason Momoa氏39歳。そのあまりにワイルド&マッチョの風貌は、まさしくバーバリアンだけれど、コイツ、意外と人懐っこい笑顔がイイすね。なんつうか、わんこ的な陽キャラすね。今さらですが、結構気に入ったす。
 ◆メラ:アーサーを迎えに来た美女で、海底国ゼベルの王の娘。わたしはこれも知らなかったのだが、海底には7つの国があって、それぞれ王がいて、4つ以上の国の王が承認しないと、団体での軍事行動はできないというルールがあるんですな。へえ~、よく出来てんな、とわたしは感心したっすね。演じたのは『JUSTICE LEAGUE』にもちらっとだけ登場したAmber Heard嬢32歳。この人はいろいろ私生活が取りざたされたお騒がせ女優的なイメージがあるけれど、まあやっぱり、可愛いし美人ですよ。大変結構かと思います。 もちろん、アーサーとFalling Loveな展開ですが、そりゃ惚れるでしょうよ。しょうがないす。
 ◆バルコ:アトランティス帝国の参謀であり、アーサーが子供のころから、折に触れて地上へやってきては、格闘術をアーサーに叩き込んだ師匠でもある。子供相手の特訓シーンなんかも、ホントにお約束というか、鉄板でしょうな。演じたのは、名優Willem Dafoe氏63歳。ホントにどんどん渋くなっていい役者ですなあ。来週発表されるアカデミー賞では、ゴッホを演じた役で主演男優賞にノミネートされてますが、そういやゴッホによく似てるすね。いつも、強烈な印象を残してくれる名優ですよ。今回もとても素晴らしかったと思います。
 ◆オーム王/オーシャンマスター:アーサーの異父弟で、現在のアトランティスの王。自ら雇った地上人に海底を攻撃させ、それを自ら撃退するという自作自演で「ほらみろ、地上から先に攻撃してきたんだから、団結して地上に戦いを挑もう!」と海底の国々をまとめて地上侵攻を説く、本作のVillain(=悪役)。演じたのは、わたしが大好きな超名作『WATCHMEN』でナイトオウルIII世を演じたPatrick Wilson氏45歳ですよ! 兄貴が大嫌いと言うキャラ付けは、なんとなく銀河一の愚弟ロキ様を思い起こさせるけれど、負けた後は意外と素直で、ロキ様的な知略はほぼナシで、その気持ちのイイやられっぷりも、本作の剛速球感に貢献していると思う。見事でした。
 ◆アトランナ:アトランティスの前女王にしてアーサーとオームの母。アーサー出産後、海底に戻り、やむなくアトランティス王に嫁いでオームを産むが、アトランティス王は地上でのアーサー出産にずっとイラついていて、いつまでたっても自分をちゃんと愛してくれないことに嫉妬しまくり(?)、なぜか海溝族(?)の化け物半魚人たちにアトランナを生贄としてささげてしまう。その後生死不明だったが――ええ、もちろん死んでません。漫画的お約束ですな。そして演じたのはNicole Kidmanさん51歳。とても51歳には見えないのに、全然整形感がない天然物の美人ですな。もはや名優と言っていいNicoleさんが、本作のようなコミックヒーロー映画に出て、それっぽいコスチュームを身にまとうというのもイイすね。物語の本物感に貢献していると思います。全くどうでもいいことだけど、『JUSTICE LEAGUE』でAQUAMANが使っていた、5ツ叉の槍は、このお母さんが地上に残していったものだったようです。
 ◆トム・カリー:アトランナと出会って恋に落ちる地上人で、アーサーの父。わたしは直感的に、あれっ!? この役者、絶対知ってる、誰だっけ……とか思っていたのだが、ラスト近くで再登場した時、はっきり思い出した。この人は、つうかこの顔は、まさしく銀河賞金稼ぎでお馴染みのボバ・フェットの父、ジャンゴ・フェットをEP:II で演じたTemuera Morrisonさん58歳ですよ! あっ! この人、ジャンゴだ! と分かった時は超すっきりしたっす。16年ぶりにお見かけするジャンゴは、すっかり渋いおじちゃんになってました。
 ◆ネレウス王:メラの父でべセルの現王様。地上侵攻に消極的だが、オームの自作自演にまんまと引っ掛かり、何となくしぶしぶと地上侵攻に協力。強いのか弱いのかかなり微妙なお方。そして、こちらはわたし、恥ずかしながら全く気が付かなかったのだが、なんと演じたのはドラゴでお馴染みDolph Lungren様61歳であった。そして言われてみればもう、Dolph様以外の何物でもなく、気が付かなかった自分が情けなしである。エンドクレジットでDolph様の名前を観て、あっ!?っと思ったす。
 ◆ブラック・マンタ:コミックAQUAMANでは有名なVillainで、わたしも名前は知ってたけど……今回のブラック・マンタは、全く同情の余地なくただのクソ悪党で、単なる逆恨みで戦いを挑んでくるだけのやられキャラに過ぎないのだが、なんであんな余計な終了後のおまけシーンをつけたのか、そこだけほんとに不要だったと思う。しかしビジュアルはクラシカルな漫画チックで良かったすね。演じた役者は全く知らない人なので省略!
 他にも、CGで加工されてるから全く分からないけどDjimon Hounsou氏が出ていたり、「トライデント」を守る巨大な怪物、の声を、なんとJulie Andrewsさんが担当していたりとやけに豪華なキャスト陣が、それぞれ確かな演技で「王道」の物語を支えてくれている。そこを、わたしは「剛速球」と讃えたいのであります。

 というわけで、もう長いので結論。
 これまで、どうもDCコミックヒーロー映画は、正直イマイチな感じであったが、今回『AQUAMAN』観て、ちょっとだけ、だけど考えを改める必要を感じたのである。『AQUAMAN』という映画は、超感動したとか、そういうたぐいの映画では全然ない。けれどそこには、わたしが、あるいは日本人男子ならかつて間違いなく感じたであろう、ヒーロー漫画への愛と興奮が存在しており、大変楽しめたのであった。王道で、直球の物語は、ここまで本気で剛速球で描かれると、もうただただ、その世界に浸って楽しむのが正しいと思うすね。ツッコミどころも満載だけど、いいんだよ、もうそんなことは。そして主役のAQUAMANを演じたJason Momoa氏だが、ホント、いかつい凶暴な風貌のくせに、なんか人懐っこさのある、ホント大型犬みたいな役者っすね。気に入りました。まあ、恐らく続編もあり得るんだろうけど、一言だけ言うならば、ブラックマンタはもう出てこなくていいと思います。以上。

↓ ちょっと、ちゃんと勉強したいす。
アクアマン:王の最期(THE NEW 52!) (ShoPro Books THE NEW52!)
ジェフ・ジョーンズ
小学館集英社プロダクション
2017-01-25

 <最初に書いておきますが、キャスト陣の歌や芝居などはもう本当に超最高だったのですが、物語に関してはかなりネガティブ感想になってしまったので、感動した! という方は絶対に読まないでください。その感動を台無しにしてしまうのは全く本意ではありません。そしてネタバレが困る方も、読まずに退場してください。申し訳ないのですが、マジでお願いします>
 というわけで、今日は朝、ちらっと出社して65分ほど仕事をした後、日比谷に向かった。今日の目指す目的地は、いつもの東京宝塚劇場ではなく、その裏手というか日比谷公園側にある日生劇場である。そして観てきたのがこちら、現在絶賛上演中のミュージカル『ラブ・ネバー・ダイ』であります(※原題は「LOVE NEVER DIES」といわゆる三単現のsが付くので、ダイズ、ですな)。
LND
 本作は、知っている人は知ってるだろうし、知らない人は知るわけがないのだが、あの『オペラ座の怪人』の10年後を描いた続編、であります。作曲はもちろん、『オペラ座の怪人』を作ったAndrew Lloyd Webber男爵本人で、要するに正統なる続編、と言えるだろう。本作の日本初演は2014年だったのだが、わたしは以前も書いた通り、2014年はサラリーマン生活で最も忙しくてまんまと見逃してしまい、かなり平原綾香さんが好きなわたしとしては、くそ―、観たかったなあ、とか思っていたのだが、あれから5年、わたし的にはもう、超待望の再演となったのである。
 というわけで、本作はメインキャストがダブルキャストで複数の演者が演じることになっているわけだが、わたしが今日の公演を観に行こう、と決めたのは、キャストが以下の通りだからである。もう、ついでにキャラ紹介もしておこうかな。
 ◆ファントム:ご存知オペラ座の怪人。なんと、あの騒動の中、こっそりNYCに脱出していて、ブルックリンのコニーアイランドでサーカス的な一座の「謎のオーナー」として10年間過ごしていたのだのが、どうしてもクリスティーヌの天使の歌声とクリスティーヌ自身への執着を抑えきれず、クリスティーヌをNYCに呼び寄せる罠を張る。そしてまんまとやってきたクリスティーヌと再会するのだが……的な展開。今日の昼公演でファントムを演じたのは、藝大出身→劇団四季所属で主役を数多く演じ→現在はミュージカル界の大人気スターとしてお馴染みの石丸幹二氏53歳。石丸氏は、劇団四季版の『オペラ座の怪人』のラウル役でデビューしたお方なので、今回とうとうファントムを演じられて感無量と仰ってましたな。今回のパフォーマンスもさすがの技量で、素晴らしい歌声でありました。しかし……今回のファントムは……いや、あとでまとめて書こう。はっきり言って、物語はかなりとんでもなくて、びっくりしたっす。詳細は後ほど。
 ◆クリスティーヌ:音楽の天使に祝福を受けたかのような美声の持ち主。『オペラ座の怪人』ののち、ラウル子爵と結婚、一児をもうけるが、ラウルがかなりのだめんずで借金を抱え、いわばその借金返済のために、NYCへ公演にやってくる。ファントムの罠だと知らずにーーー的な展開。今日、クリスティーヌを演じたのはわたしが大好きなあーやこと平原綾香さん。いやあ、素晴らしい歌の数々でまさしくブラボーっすね。ちょうどいいむっちりボディーも最高です。孔雀の羽を模したセットと青い衣装で歌う「ラブ・ネバー・ダイズ」はもう圧巻のステージングで、まるであーやのコンサートのような見事なパフォーマンスでした。が、物語が……あれでいいのだろうか……。
 ◆ラウル子爵:フランス貴族。イケメン。酒とギャンブル漬けのだめんず。今日ラウルを演じたのは小野田龍之介氏27歳。この人は、わたし的には『テニミュ』出身の歌えるイケメンくんだが、そうか、まだ27歳なのか……わたしが彼を『テニミュ』で観たのは10年前ぐらいだから、あの時は10代だったんだな……その後さまざまなミュージカルに出演している実力派、になりつつある若者だ。
 ◆グスタフ:クリスティーヌとラウル夫婦の子供。そしてその出生の秘密が2幕で明かされるのだが、そのきっかけとなる、グスタフがとある歌を歌うシーンは、ちょっと鳥肌立ったすね。えっ!? まさか、そういうことなの!? と本作で一番びっくりしたっす。今日、グスタフを見事に演じたくれたのは小学生の熊谷俊輝くん。彼はうまかったすねえ! 一番うまかったと言ってもいいぐらい、本当にお見事でした。
 ◆マダム・ジリー:ファントムをフランスから脱出させて、10年間世話をみてきた女性。さんざん世話になったくせに、ファントムはまるで彼女に報いてやっておらず、いまだにクリスティーヌのことでウジウジしていて、そのことにだいぶご立腹の様子。そりゃそうだろうな……。なので若干気の毒だと思う。今日マダム・ジリーを演じたのは、我らが宝塚歌劇団星組出身の鳳蘭先輩。本作は、台詞部分も歌になっている箇所が多くて、鳳先輩の歌声も十分堪能できます。お見事でした。
 ◆メグ・ジリー:マダムの娘で、コニーアイランド一番人気の女子。クリスティーヌとも顔見知り。わたしが思うに、本作で一番気の毒な女子。今日、メグを演じたのは、元雪組TOP娘の咲妃みゆちゃん(以下:ゆうみちゃん)。わたしは石丸氏/あーや/ゆうみちゃん、の組み合わせが観たかったので今日を選びました。相変わらず可愛くて、歌も素晴らしいし、芝居も見事だし、なんか宝塚のレビュー的なダンスシーンも多く、とても優美で最高でした。さすがはゆうみちゃん、です。ほんと、ゆうみちゃんは声が可愛いですな。
 というわけで、演者の皆さんの芝居、歌、ダンス共にすべて高いクオリティで、もう本当に素晴らしかったのだが……問題は物語ですよ。これは、ちょっと……感動はできない話だと思うなあ……。
 以下はネタバレすぎるので、気になる方は本当に以下は読まないでください。
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 ズバリ言うと、わたしとしてはまるで想像していなかったお話であった。これってどうなんだ……と言う点が多くあるのだが……3人の行動に関して、ツッコミを入れようと思う。
 ◆ファントム……ちょっとダメすぎだろ……常識的に考えて……。
 わたしは本作を観る前は、勝手に、きっとファントムとクリスティーヌの再会は偶然か、あるいは、生活に困ったクリスティーヌの方から、ファントムに接近するのではなかろうか? とか思いこんでいた。が、物語は、10年経ってもクリスティーヌのことを忘れられないファントムの歌から始まるのである。その歌曰く、「いい曲を作っても、歌える人がいない、あのクリスティーヌ以外には!」だそうで、業を煮やしたファントムがクリスティーヌをNYCに呼びつける罠をかける、というところから物語は始まるのである。わたしはもう、のっけからファントムのそんな想いに、相当引いたっすね。10年経ってんだから、もう忘れなさいよ……と申し上げたい気持ちである。まあ、その異常ともいうべき執着が、すべての悲劇の元凶なのは間違いなく、それが「愛」とは、わたしとしては認めるわけにはいかないと思う。男ならさ、愛した女の幸せを、遠くから願うだけにしとけばよかったのにね……。
 ◆クリスティーヌ……なぜ歌ったんだ……そしてなぜ「秘密」を……
 クリスティーヌは、クライマックスで
 1)ファントムが作った歌を歌う(=ファントムを選ぶ)
 2)歌を歌わず、ラウルと共にフランスへ帰る(=ラウルを選ぶ)
 という強制的な二者択一を迫られる。まあ、実際のところ2)を選んでしまったらそこで物語は終了するので、1)を選んだことは物語的には理解できる。できるんだけど、短い時間の中では、どうしても1)を選ばなくてはならない、という気持ちは、わたしにはどうしても理解はできなかった。おそらくは、ファントムのつくった曲が素晴らしすぎて、魅了されたということなのだと思うけれど、それだと、The Angel of Musicではなくて、いわばDemon of Musicに憑りつかれてしまったということになってしまうのではなかろうか。そしてその歌った歌は、確かに超最高で鳥肌モンだったわけだし、クリスティーヌの堕天、というのはドラマチックでいいんだけど、それなら最後はきちんと、Demonたるファントムの呪縛から解放され、救われてほしかった……。
 また、ラウルもラウルで、クリスティーヌが歌ってしまい、自分が選ばれなかったことが分かった瞬間、しょぼーーーんと舞台から消えてしまうのだ。物分かりが良すぎるというか……そこで男らしさを出しても、おせえのでは……。
 そして大問題はラストシーンである。息絶える直前、クリスティーヌは、グスタフの出生の秘密を、よりによってグスタフ本人に教えてしまうのだ!! もうわたしは椅子から転げ落ちそうになるほど驚いた。なぜ!? なんで!? 教える必要あるか!?? むしろ教えちゃダメなのでは!? クリスティーヌとしては、そりゃ自らが抱えてきた秘密を話すことができてスッキリしたでしょうよ。でも、なにも愛する息子にそんな重荷を背負わせる必要ないじゃん!とわたしは感じたのである。アレはキツイよ……グスタフが気の毒でならないす……。
 ◆メグ……なぜ銃を……
 いや、正確に言うとメグが銃を持っていたことは、納得はできないけど理解はできる。そして、ファントムともみあいになる展開も、まあ、分かる。だけど、なぜ!? どうして!? 暴発した弾丸がクリスティーヌに当たらないといけないんだ!? あそこはファントムに当たるべきだったでしょうに!
 そう、わたしが思うに、あそこでファントムに弾が当たり、ファントムが死ぬというラストだったなら、ある意味全て丸く収まったように思う。そうすれば、「ファントムは死んでしまったけど、愛は死なない」的に話は落ち着いたのではなかろうか。だけど、あそこでクリスティーヌが死んでしまっては、「愛は死んだ、けど、ファントム・ネバー・ダイズ!」になっちゃったじゃんか!!
 アレはマズいだろ……。。。なんというか、グスタフのその後を考えると、とても悲しい気持ちになるし、ファントムもこの先どうやって生きていくのか想像できないし、事故とはいえ人を殺めてしまった哀れなメグのその後も、想像するに忍びないわけで、つまり後味は相当悪いエンディングだったとしかわたしには思えないのである。なんでこんな悲しいエンディングにしたんだろう……理解できないす。ホント、ファントムが死ぬエンディングだったらすべて解決だったのになあ……わからんす。作者の意図が。
 しかし、くれぐれも誤解しないでいただきたいのは、演者の皆さんのパフォーマンスは本当に素晴らしく、歌はもう鳥肌モン出会ったのは間違いない。あーやもゆうみちゃんも、石丸氏も本当に完璧でした。最高だったす!

 というわけで、もうまとまらないので結論。
 2014年に観逃して、ずっと観たいと思っていた『ラブ・ネバー・ダイ』の再演が始まり、わたしは好みのキャストがそろう今日の昼の回を観に行ってきたのだが、まず、キャスト陣の素晴らしい歌と演技にはもう、手放しでブラボーである。石丸幹二氏、平原綾香さん、咲妃みゆさん、そして子役の熊谷俊輝くん、彼ら彼女らはもう、本当に最ッ高に良かった!! とりわけ、あーやの歌う「ラブ・ネバー・ダイズ」はマジで鳥肌モンの大感動でした! のだが……物語が微妙過ぎて、残念ながら感動はラストの展開にすっかりしぼんでしまったのが正直な感想である。あのエンディングは……マズいだろ……。。。どうしてこうなった? ホント、脚本家にその意図を聞いてみたい。ただ、会場の人々の感想を言い合う声に耳を澄ますと、どうやら大方、感動した的な意見が多いようなので、わたしが感じた「な、なんだってーー!?」というガッカリ感は少数派だったのかもしれない。でも、うーん、やっぱり、どう考えても理解できないす。歌が最高だっただけに、なんだか本当に残念で、悲しいす……以上。

↓ 平原綾香さんはホント可愛いすな。あ、思い出した!「風のガーデン」だ。このドラマにチラッと出演しているあーやが素晴らしいのです! そしてその主題歌「カンパニュラの恋」が泣けるんすよ……。

 特に根拠はないけれど、人類は有史以前から、空に浮かぶ「月」に、様々な想いを抱いてきた生き物だと思う。その月に、人類が初めて降り立ったのが1969年7月20日。今から約50年前のことだ。わたしは生まれて数カ月の赤ん坊だったので、当然ながら全く記憶にないが、既に80代のばあさまになった母の話によると、そりゃあまあ、大興奮でその様子を見守ったらしい。今調べてみたところ、日本時間の朝の5時17分のことで、NHKで生中継され、視聴率63%だったそうだ。
 わたしは今日、雪の降る中、チャリをブッ飛ばして10分ほどの地元シネコンへ映画を観に行ってきた。幸い雪は大したことがなく、全然余裕で行って帰ってこられたのだが、今日観た映画は、『FIRST MAN』。人類初の月面到達を果たし「最初の男」となったニール・アームストロング氏の、月面への道のりを描いたものだ。
 この映画は、US本国では去年の10月にとっくに公開になっていて、わたしも10月に台湾に行った時に観ようと思っていたけれど、ほぼすべてのハリウッド作品が同時公開される台湾でも、なぜかちょうどわたしが行った次の週からの公開で観ることができず、早く観たいなーと思っていたので、雪に負けず外出したわけだが……まあ、ズバリ言うとかなりわたしの期待からは下回っていたかな、というのが素直な感想である。
 まずは予告を貼っておこう。そして以下、ネタバレに触れる可能性が高いので、気になる方はこの辺で退場してください。

 さてと。ところで、わたしはもちろん、アームストロング船長のことは常識として知ってはいたものの……さっき調べて初めて知ったのだが、実は、人類はこれまで、9回も月に降り立っているのである。これって常識? 誰でも知ってることなのかな? しかも6回がUS、そして3回が当時のソヴィエトである。わたしはさっき、あ、なんだ、ソ連も有人月面着陸に成功してたんだ? とちょっとびっくりしてしまったのである。
 まったくもってわたしの無知が露呈される恥ずかしい事実だが、まあともかくとして、USは1973年以降、ソヴィエトは1976年以降は一度も月へ降り立っていない。普通に考えて、50年前の技術水準で達成できたのだから、現代の21世紀の技術なら楽勝なんじゃね? とか思えてしまうものの、実行には移されていない。それは一体なぜなんだろう? これも常識的に考えれば、莫大なコストに見合う、リターンがないから、であろうと想像できる。ある意味夢のない話だが、それが現実なんでしょうな。
 しかし、本作で描かれる1960年代は、行く理由が存在していたわけだ。それは、いわゆる「冷戦」においての、USとソヴィエトのマウントの取り合いである。要するに、どうだ、おれの方がすごいんだよバカヤロウ!的な、意地の張り合い、と断じていいのではなかろうか。そして現代においては中国がまた今さら宇宙開発にご執心で、これもまた、我々凄いだろ!という世界へのアピールのようなもので、なんつうか、そのうち漫画『ムーライト・マイル』で描かれた人類初の宇宙戦争が始まってもおかしくないような事態になっている。これもまた、夢のない話だけど。
 さて。わたしは本作の予告を最初に観た時、これはきっと、過酷な訓練の様子とか、アームストロング氏の月への執着みたいなものが描かれるのだろう、つまり名作『THE RIGHT STUFF』的な映画なのだろうと勝手に想像していたのだが、結論から言うと、全く違っていて、実に「地味」であったように思う。
 わたしがこの映画で、問題だと思ったのは、なんかイマイチ盛り上がらない物語と、撮影・演出の両面である。
 ◆アームストロング氏が地味な人すぎる……ような気がしてならない。
 これは、演じたRyan Gosing氏のキャラのせいかもしれないけれど……いつもの無口なGosling氏で、感情の起伏が、実はすごくあるんだけど、グッッッッ!と抑えるタイプのお人のようで、熱くないんだな。クールというかニヒルというか、とにかく、いつものお馴染みのRyan Gosling氏なのである。それはそれで、カッコいいことはカッコいいんだけど、どうも物語的にもヤマ場がないというか、ある意味淡々としていて平板だったように感じた。
 この点では、『THE RIGHT STUFF』の主人公チャック・イェーガーはもっと熱い男だし、なにしろ「ヒーローになれなかった、栄光の陰に隠れた男」的な、ある意味でのダークヒーロー的なカッコ良さがあって、わたしは映画としても、本作『FIRST MAN』よりも圧倒的に『THE RIGHT STUFF』の方が面白いと思う。
 ただし、やっぱりラスト近くで、アームストロング氏が月で、夭逝してしまった愛する娘の形見をそっとクレーターに落とすシーンのRyan氏の表情は、抜群に良かったと思う。あそこは超グッと来たすね。でも、それまでずっと宇宙服のヘルメットのミラーバイザーを下ろしてるから、表情が分からないんだよな……。せめて有名なあのセリフ、
 That's one small step for man, one giant leap for mankind.
 (これは一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な飛躍である)
 を言うところは、ちゃんと表情を見せてほしかったよ……。そういう点も、わたしが文句をつけたい演出上のポイントだ。
 ◆粗い映像、ブレブレ&ピンボケ、な映像はどうだろうな……。
 わたしは本作の監督、Damien Chazelle氏の前作『LA LA LAND』は大好きだし、あのダイナミックなダンスシーンの一発撮りや、ポップで可愛らしい色使いの衣装など、とても才能あふれた監督だと思っているけれど、本作は、『LA LA LAND』で見せてくれたようなポイントは鳴りを潜めていたように感じた。
 まず、粗い映像に関しては、60年代当時の雰囲気づくりのためのものであろうことは理解できる。この超高解像度時代に、古いフィルムのような質感の映像は、まあそれなりに意味はあるんだろう。けど、観客として言わせてもらうと、現代の鑑賞環境にはそぐわないと思うし、むしろ超ぱっきりした画で見せてもらいたかったようにも思う。その方がいわゆる没入感は上がると思うのだが……一方では、先日観た『MARRY POPPINS RETUNES』では逆に1930年代なのにくっきりはっきりした画が妙に現代的に見えてしまったので、さんざん文句を言っといてアレですが、本作のような粗い映像はアリなのかもしれないな……わからん……
 ただし、である。ラスト近くの「月面」だけは超くっきりはっきりな映像で、IMAX撮影らしいのだが、ここはやっぱり超見どころの一つであったと思う。粗い映像は、ここの月面シーンを強調するためでもあったのだろうか?
 また、一つ特徴として、顔のアップや一人称視点の画が多用されているのだが、カメラがぶれまくってピントまで外していて、非常に観にくかったのは間違いないと思う。もちろん、訓練や宇宙船内で発生するガタガタガタという振動はしょうがないというか全然アリなんだけど、そうでない普通のシーンでぶれまくるのは、とても観にくい画だと思う。
 またクローズアップや1人称視点だと、周りで何が起こっているのか非常に分かりにくい。月面への着陸シーンも、ほぼキャラクターのクローズアップで、外の様子が、ごく小さい窓からちらちら見える月面の様子だけだったため、どんな姿勢なのかさっぱり分からないのだ。こういう点は、観客にとってストレス以外の何物でもないわけで、映画としてはやっぱりよろしくないことだとわたしは思っている。なんか、カメラアングルやオブジェクトの質感など、画としてNolan監督的なカットが多かったように思うが、Chazelle監督の腕がいいのは間違いないので、もう少し観客にとって分かりやすい映像であって欲しかったように感じた。
 おそらく、本作がUS公開から5か月後の今、日本で公開されているのは、今月発表されるアカデミー賞をにらんでのものだと思うが、恐らく本作はアカデミー賞にはぜんぜん届かないだろうな、とわたしは漠然と思った。実際ノミネートされたのは美術賞と音響編集賞と視覚効果賞だけか。それならさっさと去年中に公開してほしかったな……。【2019/02/25追記:本作は、アカデミー賞の中で唯一「視覚効果賞」だけ受賞しました。つまり、わたしが文句を言っている部分が逆に評価されているわけで、わたしの審美眼のなさが大変恥ずかしく情けないす。いや、ホントNolan監督的な画ですげえんだけど……観にくいんだよなあ……】
 というわけで、わたしとしては今イチ判定せざるを得ない結果となった『FIRST MAN』だが、キャスト的にも、わたしが、おっ!? と思った人は少なかった印象である。以下、2人だけ、物語の重要度に関係なく紹介しておこう。もう、主人公アームストロング氏を演じたRyan Gosling氏のことは説明しなくていいすよね?
 ◆ジャネット:アームストロング氏の奥さん。しかし、キャラ的にどうも微妙というか……重要度が低いというか……夫婦関係も、やけにアームストロング氏がクールすぎて薄く感じられてしまったすね。出てくる意味すら薄かったような……。で、演じたのが『The Girl in the Spider's Web』で3代目リスベットを演じたClair Foyさん34歳でした。先月観たばかりでリスベットの印象が強かったので、なんか妙に違和感というか、変な感じを受けたっす。どうでもいいけど、腕のそばかす?がすごくてずっと気になったすね。
 ◆バズ:宇宙飛行士の訓練仲間の一人で、いつも空気を読まないひどいことを言う、若干煙たがられている男なんだけど、最終的にはアームストロング氏とともにアポロ11号で月面着陸する「2番目の男」。彼を演じたのがCorey Stoll氏で、わたしは観ながら、コイツ絶対知ってる顔だ、けど、誰だっけ……? と気になって調べたら、この人は『ANT-MAN』のダレン・クロスを演じた人でした。ええと、イエロー・ジャケットとなる悪いヤツす。くそう、気付けなかったのは映画オタクとして恥ずかしいすわ。
 とまあ、以上、本作に関しては、正直期待よりかなり下だったかな、という思いが強く感じられ、もう書くことがなくなったのだが、やっぱり、「月」へのあこがれのようなものは、わたしにも強くあって、政治的な判断によるアポロ計画の推進と中止に翻弄された人々には申し訳ない気がするけれど、単純に、無邪気に言うと、やっぱりわたしも月に行ってみたいですよ。だからアームストロング氏がうらやましいと思うし、すげえなあ、いいなあ、ととても思う。まあ、わたしが月へ行くことは生涯ないと思うけれど、あと50年ぐらいしたら、観光地となってるかもしれないですな。ま、わたしは空を見上げて、行ってみてえなあ……と思うことで我慢しときます。

 というわけで、さっさと結論。
 結構期待していた映画『FIRST MAN』が公開になったので、雪に負けず観に行ってきたのだが、ズバリ言うとイマイチ、だったと思う。それは、キャラ的な問題なのか、物語そのものなのか、どっちだか微妙だが、妙にクールで熱くなれなかったのが一つ。そしてもう一つは、若干演出的に問題アリ、だと思ったからだ。残念ながら監督のこだわりって、多くの場合観客にとっては意味がなく、逆にストレスになる場合があるもので、なんつうか、もっと何が起きているのかを観客が理解できる画にしてほしいと思った。なんか、いろいろ残念す。書くことがなくてどーでもいいことばかり書いてサーセンした。以上。

↓ こちらはもう、まごうことなき名作として超おススメです。とにかくイェーガーがカッコいい! ただし、上映時間が超長いす。そしてこの作品のメインテーマ曲は、絶対誰でも聞いたことがあると思うな。是非ご覧いただき、この映画の曲だったのか! と驚いてください。

ライトスタッフ (字幕版)
サム・シェパード
2013-11-26

 はーーー……面白かった……。
 そして、もうくどいけど、何度でも言います。
 わたしが世界で最も好きな小説家は、Stephen King大先生である!
 というわけで、先週買って来たKing大先生の日本語で読める最新刊『REVIVAL』を実質4日で読み終わってしまった……はーー……ホント、終わりそうになると、もう終わりか……と悲しくなっちゃうわたしだが、もちろんのこと結末を読みたい気持ちに勝てるわけもなく、あっさりと最後まで読み切ってしまったわけだが、のっけから結論を言うと、超面白かった! けど、若干ラストの後味はビターというか、何となくモヤッとしているのがアレかなあ……と感じている。
 まずはもう一度、買ってきたときに興奮しながら張り付けた書影をのっけとこう。そして、以下は完全にネタバレに触れると思うので、まだ読んでいない人はここらで退場してください。
revival
 しかし、改めて思うに、この日本語タイトルは、極めて微妙というか、ギリギリOK、な気がしている。確かに、日本語として『心霊電流』といわれると「な、なんだそれ!?」と、とても興奮するのは間違いない。そういう意味ではいい日本語タイトルじゃん、とは思う。おまけに、最後まで読み終わった今となっては、たしかに内容には合致しているとも言えそうだ。
 でもなあ……US原題の『REVIVAL』から遠すぎるというか……まあ、対案が出せない言うだけ詐欺なので、タイトルに関してはもう何も言うまい。いずれにせよ、さっさと文春が日本語版を出してくれたことには感謝したいが、それでも、やっぱり遅いんだよな……ちなみに本作『REVIVAL』は、去年大興奮した『END OF WATCH』より前の2014年に刊行された作品で(END OF WATCHは2016年刊行)、既にもう長編は2作品発表されているし、今年の9月にもさらに新刊が予告されているので、文春でもどこでもいいから、さっさと日本語化してもらいたいものだ。つうか、やっぱり英語で読めってことかも知れないな……。
 ともあれ。
 本作『REVIVAL』は、久しぶりに(?)King大先生ワールドにかかわる若干ホラーチックな部分のある作品で、わたしとしては大変楽しめたわけだが、冒頭に書いた通り、エンディングは若干モヤッとしている。物語としては比較的単純で、本作は現在(2017年かな?)60歳を超えた男が、6歳のころからの人生を振り返る年代記的なものである。そして6歳の時に出会った牧師がその後何度も主人公の人生に現れ、謎の「電流治療」を行うことによって起こる、謎の現象が物語のキーとなるお話で、一体全体、この「電流治療」によって牧師は何を求めているのか、がカギとなっている。ちなみに牧師は、主人公と出会った3年後に牧師を辞めちゃうので、正確には牧師じゃない、つうか、神を憎むようになってしまうけど。
 で。わたしが読んでいてい一番困ったというか、むむ?? と何度も前に戻って確認してしまったのは、回想が結構飛び飛びに語られていて、え、じゃあ、アレはこの事件より後? とか、編年体で描かれていないのが若干読みにくかったような気もする。いや、読みにくさはないんだけど、サラッと読んでいると、ふと、じゃああれって……と、気になってしまうのだ。
 わたしは、つい頭にきて、おもわず年表を作ってしまったほどなのだが、その年表は、あとで乗せようと思います。その年表の前に、登場人物をまとめておいた方がいいと思うので、最初はキャラからまとめてみよう。
 ◆ジェイミー:主人公。5人きょうだいの末っ子。物語の冒頭の1962年時点で6歳(8月生まれなので冒頭の10月には6歳にすでになってる)。後にミュージシャンとなるも、ドラッグ漬けのダメ人間となるが、1992年にジェイコブス牧師と再会、謎の「電流治療」を受けてドラッグ依存から回復。その後音楽スタジオに就職するが、ジェイコブスとの縁は最後まで切れず、とんでもないエンディングへ……。
 ◆ジェイコブス:ジェイミーと初めて会った時は牧師。当時25歳ぐらい?らしい。そしてその3年後、大変な悲劇に遭い、信仰を捨てる。その後は、自らを魅了してやまない「神秘なる電気」の研究をしながら全米を放浪し、各地で見世物的な奇術師→インチキ霊能牧師となって多くの人を「治療」することで金を稼ぐ(そしてその金は全部研究につぎ込む)。そして、ついに稲妻の電流パワーと、自らの命を代償として「その先」を見ることに……。ズバリ、ネタバレですが、なんと「妖蛆の秘密」まで言及され、まごうことなきクトゥルフ展開となって超絶衝撃的!! 本作は冒頭に多くの作家への献辞がささげられてますが、もちろんラヴクラフト大先生の名もあって、まさかの展開でした。そして献辞の作家の筆頭に挙げられているのはメアリー・シェリー。もちろん、「フランケンシュタイン」ですな。その意味も、本書を読めば理解できます。
 ◆クレア:ジェイミーのお姉ちゃん。5人きょうだいの一番上。わたしの計算では多分8つ年上。美人でやさしいが、のちに悲しい運命に……(※ただしクレアの悲劇は本筋には関係ない)。どうでもいいけど、本書では「姉貴」と訳されていたけど、わたしなら「姉さん」と訳しただろうな……。みんなの自慢のお姉ちゃんなので、なんとなく雰囲気的に。
 ◆アンディ:ジェイミーの兄(5人きょうだいの2番目)。わたしの計算ではたぶん6つ年上。信仰心の篤い男。ほぼ出番ナシ。のちに51歳でガンで亡くなる。
 ◆コンラッド:ジェイミーの兄(5人きょうだいの3番目)。通称「コン」。4つ年上。兄弟では一番よく言及される。頭がイイし、運動神経抜群。のちにハワイの天文台勤務。最後まで存命。4つ上。
 ◆テレンス:ジェイミーの兄(5人きょうだいの4番目)。通称「テリー」。2つ年上。一番父になついていて、現在実家を継いで故郷のメイン州ハーロウに住んでいる。ちなみにハーロウは、King大先生作品でお馴染み「キャッスル・ロック」のすぐそば。
 ◆父と母:父は年齢不明だが80過ぎまで生きた。燃油販売業を興した人で、かつては貧しいこともあったがその後は裕福に。母は1977年ぐらい(?)に51歳でがんで死去。
 ◆アストリッド:ジェイミーの初恋の女子で初体験の相手。可愛く美人。結構イケイケ系。大学入学で付き合いは自然消滅。しかし2014年に約40年ぶりに再会することに……
 ◆ヒュー:ドラッグを克服したジェイミーが就職したスタジオの社長。実はヒューも、1983年にジェイコブスと出会って「治療」を受けていた。
 とまあ、主な重要人物としては、上記で十分かな。
 で、出来事を年表にまとめたのが以下です。どうTableタグを駆使してもスマホで閲覧するとガタガタになっちゃうので、頭にきてJPEG画像にしてみた。
REVIVAl_year_l
 USの学校は9月はじまりだし、誕生月の影響もあってか、どうもズレているような気がするけど、大体合ってるのではないかと思う。
 さて、もういい加減クソ長いので、以下にわたしが思ったポイントをまとめて終わりにしよう。そのポイントとは、ズバリ言うと「King大先生ワールドとの関連」である。
 1)JOYLANDとの関わり
 上記の表に書いた通り、なんとジェイコブスは一時期JOYLANDでも奇術師的なショーをやっていた模様。それがいつのことかは書いていなかったが、小説『JOYLAND』で主人公が学生時代に働いていたのが1977年だったと思うので、すれ違っていたかも、である。わたしは、ひょっとして『JOYLAND』にジェイコブスがチラッと出てたのかな? とか思って『JOYLAND』をパラ見してみたけど、どうも存在は確認できずであった。
 2)Itとの関わり
 どうやら、ラストに現れる謎の昆虫めいた存在は、「It」なのかもしれない。わたしはその展開に大興奮して、はっ!?と年代に注目したのだが(そのために上記年表を作ってみたともいえる)、『It』の子供時代編が1958年、大人編が1985年なので、ドンピシャでは全然なかった。そして1985年から「27年後」は2012年なので、これも若干ズレている。なお、2年前公開されてウルトラ大ヒットとなった映画版『It』は子供時代編が1988年に変わっていたけど、それとも一致せずでした。なので、だから何だという結論はないけど、なにも「It」がメイン州デリーだけにいたとは限定出来ないかもしれず、とにかくわたしとしては「It」の登場に、やっべええ!!と大興奮したっすね。
 3)その他の作品との関わり
 まあ、謎の邪悪な存在が「日常のすぐ隣にいる」的な世界観はKing大先生にはお馴染みの設定で、本作のクリーチャー的存在でわたしが思い出したのはやっぱり『The Mist』や『From a Buick 8』あたりの作品だ。そして本作で言及された『妖蛆の秘密』は、『Salem's Lot』での重要アイテムでもある。
 しかし、電流による覚醒(?)によって「何かが起こり」、その世界への扉が開いちゃう的な展開は、わたしとしては超最高だとは思ったものの、本作は開いた扉を慌てて閉じて、ふーーあっぶねえ……で終わってしまったわけで、その、ふみ込み具合がわたしとしては若干物足りないというか、モヤッと感じた最大の要因のような気がする。
 本来?と言うのもおかしいけれど、エピローグで語られる「治療」経験者たちのその後、の方が事件として興味深くて、主人公がそれを知って、探っていくうちに、少年時代のあの牧師の存在が明らかになって、その謎を解き明かしていく――的な流れもアリだったのではなかろうか。つうか、どうもエピローグで「その後」をさらっと流されちゃったのが、少し物足りないような気もするんだよな……。
 そして思うに、ジェイコブスは狂っていたとはいえ、誰だって、亡くした愛する者のREVIVAL=復活につながるなら、何にだってすがるんだろう。そもそも死者のREVIVALというモチーフは『PET SEMATARY』でもKing作品ではおなじみだし。ジェイコブスの場合は、たまたまそれが「神秘なる電流」だっただけで、おまけにそれが人の謎パワーを増幅して病気を治してしまうと知ったら、そりゃ使うだろう。たとえそこに、深刻な後遺症があっても。結局、本作ではその後遺症についての明確な解明はなかったように思える。一度でも「向こう側」と繋がっちゃったら、絶望して生きていけなくなるってことなのかな……わたしとしては、その後遺症をもうチョイ深く描いてほしかったような気がします。
 ま、とはいえ、やっぱりKing大先生の描く「少年時代の回想」というのはめっぽう面白かったので、結論としては大満足、であります。

 というわけで、もうクソ長いので結論。
 わたしが世界で最も愛する小説家、Stephen King大先生の日本語で読める最新刊『REVIVAL』(日本語タイトル「心霊電流」)が発売になったので、即買って読んだところ、結論としては超面白かったと言いたい。が、若干のもやもやが残るエンディングで、超傑作判定は出来ないかな……。ただ、この物語はとても映像映えすると思いますね。映画あるいはTVシリーズになるような気がします。なんつうか、わたしとしては若干ジェイミーのキャラに反感を感じたのかな……イマイチ好きになれない奴であったような気もする。むしろジェイコブスの方が共感しやすいような……宗教なんて、安心を与える生命保険と同じだ、というセリフには考えさせるものがありましたな。まあ、いろいろ書いたけど、結論としては、KING大先生のファンならば、今すぐ本屋へ行って買って読むべきだと思います。文庫化を待っても意味ないすよ。数百円しか違わないし、そんなの特急料金と思えば、今すぐ読んで興奮する方をお勧めします。わたしはすっかり電子書籍野郎に変身しましたが、本作は電子書籍だとさらにお安く買えます。が、わたしはKING大先生の作品は本棚に並べて悦に入りたいので、紙の書籍で買いました。ぜひ、紙でも電子でも、今すぐ読んでいただきたく存じます。以上。

↓ このところ、電子だと紙より200円以上安い本が多いんだよな……。お好みでどうぞ。
心霊電流 上 (文春e-book)
スティーヴン・キング
文藝春秋
2019-01-30

心霊電流 下 (文春e-book)
スティーヴン・キング
文藝春秋
2019-01-30

そしてすでに発売済み、だけど日本ゴミ翻訳はこちらの2作です。あらすじが超そそる……早く読みたい!!
Sleeping Beauties (English Edition)
Stephen King
Hodder & Stoughton
2017-09-26

The Outsider (English Edition)
Stephen King
Hodder & Stoughton
2018-05-22








 去年わたしは、渋谷のシアター・オーブにてミュージカル『メリー・ポピンズ』を観た。まあ大変楽しく素晴らしい舞台だったわけだが、その舞台を観る前に、わたしは予習として映画版もきちんと観ておこうと思った。遠い昔に観た映画の内容を完璧忘れていたため、それじゃアカンだろ、と思ったのである。
 幸い、1964年公開の映画版をWOWOWで録画しておいたので、すぐ観ることができたのだが、観てわたしはとても驚いた。歌は改めて聞いてみると、それなりに思い出せるというか、聞き覚えがあって、ああ、これこれ、なーんて気になるのだが、物語というか映像的には、なんだかもう初めて観るかのような気がして、とりわけ実写とアニメーションが融合する演出にびっくりしてしまったのであった。ああ、こりゃ凄い。そしてやっぱり楽しいな!? という感想をもって、舞台版ミュージカルを観に行ったのが去年の話である。
 そして時は過ぎ、ハリウッド映画版の公開から54年が経ち、この度その正統なる続編『MARY POPPINS RETURNS』の公開と相成った。当然わたしとしては、製作が発表になった時からわくわくしていて、公開を待ち望んでいたので、昨日さっそく観てきたのだが、ズバリ感想を一言で言うと、どうも乗れないというか……なんか若干冷めた想い? で映画館を後にしたのである。
 物語のせいではないと思う。キャストのせいでもないだろう。すごい熱演だったし。歌のせい……でもないと思う。そして演出が悪かったとも思えない。なんなんだろうな……この妙なモヤモヤ感は。というわけで以下、少し検証してみようと思う。

 というわけで。今回の『リターンズ』はオリジナル版から25年後、あのバンクス家に再びスーパー完璧ナニー(子守)、メリー・ポピンズがやってくる! というお話である。
 既に両親はなくなっていて、あのバンクス家の姉ジェーンと弟マイケルのチビたちがすっかり大人になっていて、バンクス家の屋敷はマイケルが家庭をもって住んでいる。とはいえマイケルは妻に先立たれ、3人の子供たちは淋しく思っており、おまけにマイケルがスットロイ男で、屋敷も借金の抵当に入っていて、いよいよ立ち退きを迫られていた。借金を返すためには、父が残した銀行の株が必要、だけどどこにしまったかまるで分らない。近所に住むジェーンも一緒になって家探しするが、がらくたばかりで大掃除しながら探すも株は見つからない。そしてそのがらくたの中には、あの「凧」もあって(これは前作を観てないと意味が分からんと思う)、もう捨てちまえ、と捨てると、風が吹き、凧は空に舞い上がる。そしてその凧を3人の子供たちが追っていくと……なんと、凧につかまって空から一人の美女が舞い降りくる! とまあ、そんな感じで物語は開幕する。その美女こそ、25年前にジェーンとマイケルが世話になった、伝説の完璧美女、メリー・ポピンズであった! てなわけである。いいすねえ! わたしはこのオープニングに、なんかとてもわくわくして、たぶんメリーが空から舞い降りてくるシーンは、ニヤニヤとしていたように思う。
 というわけで、つかみは超OKだったと思うし、この後の物語の展開もオリジナル版同様とても楽しく、問題なかったと思う。なので物語に問題があったとは思えない。そしてキャスト陣の熱演というか歌も、とても良かった。以下、主要キャラだけメモしておこう。
 ◆メリー・ポピンズ:ご存知凄腕の完璧ナニー。全く説明はなく、当然のようにふるまっているが、いろいろと謎に満ちた女子で、魔法のような謎パワーを持つ。25年経っても美女のままで、そりゃマイケルとしてはびっくりするよな。でも、予告にある通り女性に年齢を聞くなんて失礼なことはしてはならんのですよ。今回メリーを演じたのはEmily Bluntさん35歳。ファッション的にもとても可愛らしく、歌も大変良かったと思う。思うけど、やっぱりどうしてもオリジナル版のJulie Andrewsさんと比べてしまうわけで、Julieさん版のメリーには半歩及ばず、なのかなあ……いや、でも、とても可愛かったのは間違いないのだが……ううむ……Emilyさんが超熱演だったのも間違いないす。
 ◆マイケル・バンクス:オリジナル版のチビもすっかり髭のお父さんとして成長。ただ、どうやらマイケルは本業は画家、だけどそれだけでは生活できず、妻を亡くし、3人の子供を養うために、現在は父の勤務していた銀行でバイト(?)しているそうで、若干生活力はアレな、若干のぼんやりお父さん。演じたのは若き「Q」でお馴染みBen Whishaw氏38歳。前作では、お父さんとメリーの、まるでかみ合わない会話が笑えたのだが、今回はそういう点はほぼなし。そりゃそうだ、マイケルはメリーのことをよく知ってるんだからしょうがないよね。でもそのせいか、マイケルの存在感が薄いというか……ううむ……でもBen君の熱演は間違いないす。彼は何気に歌も良かったすね。なお、前作でのマイケルの「2ペンス」が今回のカギになる展開は、おお、そうきたか、と思ったす。
 ◆ジェーン・バンクス;オリジナル版のおしゃまなチビもすっかり大人の女に。未婚で近所のアパート暮らし、らしい。今回はジャックとイイ仲に(?)。演じたのはEmily Mortimerさん47歳。この方は、わたしは今までそれなりに出演作を観ているようだがほぼ記憶になく、ほぼ知らない方だったのだが、オリジナル版のジェーンの面影があるというか、とてもジェーンお姉ちゃんに似てる!と思ったす。
 ◆ジャック:ロンドンの街のガス灯を管理する点灯人。まあ、要するにオリジナル版の煙突掃除人バートの役と同じと思っていいだろう。バート同様に、ジャックもメリーのことを前から知っている。演じたのは、現代ブロードウェイの天才でお馴染みLin-Manuel Miranda氏39歳。まあ、さすがの歌のパフォーマンスは最高なんだけど、なんつうか……バート的なウキウキ感のような、ノリノリ感は薄かったような……バートの、あの超笑顔というか、ニッコニコの笑顔はなかったすね……そしてバートを50年前に演じたDick Van Dyke氏がラスト登場するのは驚きというか、93歳には見えないステップでカッコ良かったすね。
 ◆トプシー:メリーの遠い親戚だそうで今回の新キャラ。オリジナル版で言う、笑うと体が浮いちゃうアルバートおじさん的役割のキャラ。何でも直せる謎の修理屋さん。演じたのは大女優Meryl Streepさん69歳。Merylさんはまあ楽しそうに演じてましたな。歌もさすがの貫禄で文句なしっす。
 ◆風船売りのおばさん:新キャラで、前作で言うところのハトの餌売りのおばさんに近い役割。演じたのはAngela Lansburyさん93歳! わたし的には、このお方はかつてNHKで放送されてたテレビシリーズ「ジェシカおばさんの事件簿」のジェシカおばさんですな(日本語吹替は森光子さんだったと思う)。映画や舞台で数々の役を演じてきた大ベテラン。出番は少ないけど、印象的でしたね。
 ◆エレン:オリジナル版にも登場していたバンクス家の家政婦の毒舌おばちゃん。そして今回演じたのは、わたし的には『Mamma Mia!』でお馴染みJulie Waltersさん68歳。元気で良かったす。
 ◆銀行の社長:新キャラ。かつて父が勤務していた銀行の現在の社長。要するに悪役。演じたのは英国王でお馴染みColin Firth氏58歳。イヤな奴度は若干控えめというか、真面目に嫌な人でコミカルなところは薄かったような気がする。さらに、今回全体的に1930年代感を感じなかったのだが、それは画面がとてもきれいでリアルだったからのような気がした。小物とかファッションは、きちんと当時のものであったはずなのに、やけにきれいな映像が現代っぽいというか、1930年代であることを何か忘れちゃうような気がしたっす。
 ◆マイケルの子供たち:双子の長男・長女に加え次男、という3人きょうだい。今回の子供たちは最初から結構いい子で、ナニーの出番はあまりないというか、まあここがわたしとしてはポイントで、つまり今回、メリーはこの子供たちのために来たのではなく、あくまでマイケルのために再び現れたってことなんだと思った。
 とまあ、キャラと役者についてはこの辺にしておこう。まとめると、皆さんとても熱演だったし歌も良かったんだけど、どこかオリジナル版にあった、コミカル感、ウキウキ感が若干薄かったかな……という印象であった。なんなんだろう、わからない……曲調の問題なのかな? なんでオリジナルはあんなに楽しくウキウキに感じたのに、今回は若干薄めに感じたのだろう? うーーん……わからん……。
 わからんのだが、ひとつ思い当たるのは、映画館の雰囲気だ。わたしは結構、冒頭から楽しかったし、最初のお風呂から謎のファンタジー世界へ行ってアニメキャラと歌いまくるシーンなんて、超ワクワクしたけれど、そのシーンが終わった時、ミュージカルを愛するわたしとしては、もう拍手をしたくなるわけですよ。でも、なんか、当たり前だけど映画館はシーーーン……としていて、なんというか、妙に冷ややかに感じてしまったように思う。完全に他人のせいにしている自覚はあるけれど、なんか、映画館のシーーーンとしたリアクションは残念に思ったす。まあ、当たり前で仕方ないけれど。ひょっとすると、その余韻を観客に味わわせる演出がオリジナルにはあったのかもしれないな……。わからんけど。
 ところで、本作は最近のディズニー映画では当然の配慮として、日本語吹替え版のキャストが超本気であります。日本語吹替も観てみたいですなあ! 各日本語版キャストをメモしておくと、まず、メリーを演じたのは平原綾香さん! 去年の舞台版でもメリーを見事に演じてくれました。歌の実力はもう言うまでもないでしょう。来週、平原綾香さんの『ラブ・ネバー・ダイ』を日生劇場に観に行くのでとても楽しみです! 歌ってるシーンの動画があるので貼っておこう。

 やっぱり平原メリーはいいすねえ! そしてジャックは渋いイケボイスでお馴染みの岸祐二さんだし、トプシーはロビンちゃんでお馴染みの歌ウマ島田歌穂さん、マイケルの次男のジョン君は加藤憲史郎君、など、日本ミュージカル界ではお馴染みの方々を起用していて、とても豪華ですな。島田さんは舞台版ではハトの餌売りのおばちゃんを演じていて、その素晴らしい歌声は実にブラボーでしたな。

 というわけで、結論。
 いや、結論はまだ自分でも出てないんだけど……超期待した『MARY POPPINS RETURNS』は、面白かったし歌も素晴らしかったし、キャスト陣も問題ないとは思うものの、なんだか妙に気分が上がらないというか、ノリノリ感やウキウキ感は感じられず、なぜか冷静に?観終わったのである。その原因がどこにあったのか、自分としても結論は出ていないのだが、あれかな、オレが年を取ったせいかもしれないな……という気もしますね。そして、やっぱり日本語吹替版も観たいですな。きっと1年後ぐらいにWOWOWで放送されるだろうから、それを待とうと思います。お話としては、きっちりと見事な「続編」だったと思う。1年後ぐらいに家でもう一度見て、楽しもうと思います。まるで結論は出ないけど、以上。

↓ 実のところ、わたしはこっちの方が好きです。こちらも平原綾香さんの日本語版は完璧で素晴らしいす。字幕版・日本語版、両方観てほしいすね。





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