いやーーー最高に面白かったすねえ!!
というわけで、時間がかかってしまったけれど、やっと読み終わりました。なんのことかって? そんなのコイツのことに決まってるでしょう!! わたしが世界で最も愛する小説家、Stephen King大先生の、日本語で読める最新作、『END OF WATCH』のことであります!! ちょっともう一度、わたしが撮影した書影を貼っとくか。これっす!
もう既にこのBlogで何度も書いていることだが、本作はKing大先生初のミステリー「退職刑事ビル・ホッジス三部作」の3作目であり、堂々の完結編だ。そしてお話は、前作『FINDERS,KEEPERS』のラストで示されたというか、予感させた通り、なんと! シリーズ第1作の『Mr. MERCEDES』でブッ飛ばしてやった犯人であるあのクソ野郎が大復活し、またもや邪悪な行為を開始するというものだ。そのメインプロットはもう最初から分かっていたけれど、かなり予想を超えた展開で、もうホントにハラハラドキドキが止まらない最高の物語でした。
つうかですね、今回のラストは泣けたっすねえ……そしてタイトルの意味が最後に明確になるところでは、わたし、ホントに眼に涙がこみ上げてきちゃったすわ……。
さてと。
ところで、King大先生のファンならばもうお馴染みだと思うが、わたしはKing大先生の作品を、以下のような感じに分類できると思っている。それは、2つの軸によって4つに分けられるとわたしは考えているのだが、その2つの軸とは、「黒キング or 白キング」という軸と、「SUPER NATURAL要素アリ or ナシ」という軸だ。
図にすると、要するにこういうことである。
まあ、上記の分類には、異論を抱く方もおられるだろう。実のところわたしも、この作品はここでいいのかな、とか、若干迷いながら書いたし。『JOY LAND』なんかは実際には【C象限】に含めるべきかもね……など、明確には分類できないとも思う。しかしわたしがなぜこんな分類をしてみたのかというと、明確な理由がある。それは、この「ホッジス三部作」は、1作目の『Mr. MERCEDES』2作目の『FINDERS, KEEPERS』の作ともにSUPER NATURAL要素ナシの【B象限】に属していたのに対し、第3作である本作『END OF WATCH』では、ついに! SUPER NATURAL要素が極めて重要な要素として混入してきたのである! しかも、敵は、まさしくウッドチャックのケツの穴並みに真っ黒な、邪悪の化身であるので、これはもう、明確に「黒キング」作品なのだが、前述のように、泣けちゃったほどの感動物語で、わたしとしては「白キング」作品にも入れたい、と思えてしまうのだ。こういう、SUPER NATURAL要素アリで、邪悪との対決を描き、ラストは感動で泣ける、という作品は、わたしとしては『THE DEAD ZONE』以来のように思えてしまい、そこにわたしは大変興奮しているのであります。いやあ、ホンットに面白かったす!!
どうしようかな、物語を簡単にまとめておこうかな……まあ、物語は、シリーズを読んできた方ならば、既に上の方に書いた「あのメルセデス・キラーが大復活! そして再び邪悪な計画が実行に移される!」というだけで十分かもしれないな……。これまた上にも書いたことだが、第2作のラストで、その予告というか予感はさせていたのは、誰しも記憶していることだろう。前作ラストで、事件が終結し、主人公ホッジスがアイツの病室を訪ねた時の描写で、どうやらあのクソ野郎に謎の超能力が発現した……のかも!? 的エンディングは衝撃であった。
そしてその予感は、本作で現実のものとなってしまったのです。第1作でホリーに頭をブッ叩かれ、脳に深刻なダメージを負って病院送りとなったメルセデス・キラーことブレイディが、なぜそんな謎能力に目覚めたのか。それは本作では明確? には語られない。脳がシェイクされて再組成された結果かもしれないし、バカな医者のバビノーによる新薬実験の結果かもしれない。しかし、原因よりも、あの邪悪なブレイディが念動力めいたパワーを得てしまったという結果がマズいわけで、もうこれはヤバいこと請け合いである。さらに、ちょっとしたものを動かせるだけでなく、他人の脳みそに入り込んで、「人間リモコン」として自由に動かせるようになっちゃうのだから、さあ大変だ! しかも、我らが主人公ホッジスは、もうかなり冒頭でガンに蝕まれていることも判明する。もう70歳直前という年齢のお爺ちゃんだし、ガンの痛みもあって、動きもままならない。果たしてそんな状態のホッジスは、「自殺の設計者」ブレイディを阻止できるのか―――!? というハラハラドキドキのストーリーであります。サーセン、ダメだ、ネタバレなしには書けないので、気にする方はここらで退場してください。
というわけで、以下、キャラ別に思ったことを羅列していきたい。
◆ビル・カーミット・ホッジス:シリーズの主人公。元刑事。1作目の『Mr. MERCEDES』の最初の事件が起きた時は2009年で(物語自体は2010年ごろ?)、2作目の『KEEPRES,FINDERS』が2014年だったかな(※2作目では登場シーンも少なくそれほど活躍しない)。そして今回の『END OF WATCH』が2016年のお話である。まあ、ホッジスは退職後、燃え尽き症候群的な精神的どん底にあったところで、メルセデス・キラーから自殺を誘惑するような手紙がきて、再び闘志を燃やして生きる道を見つけたわけだから、ある意味、第1作目の事件が起きたことに救われたともいえるような気がする。
今回は、既に69歳、体の異変が起きていて(そもそも第1作ラストでは肝心な時に心臓発作でブッ倒れていた。以後、ペースメーカー着用)、もうかなり序盤で、今回の事件をもってホッジスは天に召されるのだろう、というのは誰しも感じたことだろう。そしてその最後の命の炎も、メルセデス・キラーの再登場によって燃え上がったわけで、その最終的な決着には、まさしくタイトル通り、「END OF WATCH=任務終了」という言葉がふさわしいと思う。ラスト、ホッジスの墓標にそのEND OF WATCHという言葉が刻まれているシーンには泣けたっすなあ……見事な、まさしく、大団円、であったと思う。おそらく、本作は明確にドス黒い邪悪との対決が描かれている「黒キング」作品なのに、それでもこれはやっぱり「白キング」作品に入れたい、とわたしが感じるのは、このホッジスを中心とした「善」の側のキャラクターたちがとても生き生きしていて、そんな彼らが多くの困難ののちに明確に勝利し、爽快な読後感をもたらしているためではないかと思う。
◆ホリー・ギブニー:そして、その「白キング」感を一層高めるのに貢献しているのが、ホリーの存在だ。ホリーは第1作目で、ホッジスがイイ仲になる女性の姪で、40代なのだが、精神的に不安定で問題のある女性だ。そんな、超人見知りで、常にビクビクオドオドしていたホリーが、シリーズを追うごとに成長していき、どんどん魅力的になっていくのが読んでいてとてもうれしいんすよね。
今回もホリーはホントに成長しましたなあ……そして得意技のPCスキルでもちゃんと活躍してくれるし、ホッジス亡き後の「ファインダーズ・キーーパーズ探偵事務所」は任せたぜ。ラストのジェロームとの会話は、ホント、グッと来たっすわ……。
◆ジェローム・ロビンスン:第1作の時点では高校生、そして第2作目でハーヴァードに進学した頭が良くて性格もイイ、完璧イケメンの黒人青年。ホリーが成長できたのはホッジスと君のおかげだよ。今回、ジェロームはハーヴァードを休学して、NGO活動をして遠くに離れていたのだが、妹のバーバラが狙われたこと、そしてホリーからホッジスのガンのことを聞いて急遽実家へ戻ってくる。なので出番は後半から。そしてラストでは、当然ここでジェロームの出番だろ、というタイミングで登場して、ホッジスとホリーを助けてくれるナイスガイ。まあ、君はモテるだろうけど、ホリーのことも見守ってやってくれよ……。とにかく、ホッジス&ホリー&ジェロームの三人組は、King大先生の作品史上、とても心に残る「善」のチームでした。ああ、もうこれから新作が出ないなんてホント残念す……。
◆ブレイディ・ハーツフィールド:悪名高き「メルセデス・キラー」。第1作のラストで、コンサート会場を爆破しようとした1秒前に、ホリーにボールベアリングを詰めた靴下(ホッジス愛用の武器「ハッピースラッパー」)で思いっきり頭をぶん殴られ、あえなく逮捕、そして昏睡状態のまま病院に拘留された。恐ろしく邪悪で、ドス黒い精神がねじ曲がったクソ野郎で、その後、第2作目では目を覚ましたことが描かれるけれど、完全に脳が破壊されて自力では動けない、言葉もしゃべれない、単に目を開けているだけの廃人、だったはずだが……前作ラストで、なにやら念動力めいた謎パワーを授かっていることが描かれ、我々読者としては、な、なんだってーー!? と大興奮したわけだ。
今回、フレイディは「他人の脳みそに侵入して自由に動かす」謎能力で、またもや多くの人を自殺に追い込み、大量殺人を実行するのだが、第1作では、たとえばジェロームの家の愛犬をぶっ殺そうと、毒入りハンバーグを準備したのに、それをブレイディが唯一愛するお母さんが夕食に食べちゃって死ぬとか、意外とバカな男だったのに、今回のコイツの計画は、かなり手が込んでいて(何しろ計画を立てる時間だけは存分にあった!)、しかも、おそらくは科学的に立証するのが非常に難しため、こりゃあ、コイツが何かミスをしないと、ホッジス達に勝ち目はないのでは? と相当ドキドキ感は高かったと思う。実際、ブレイディの犯したミスは、フレディの死を確認しなかったことだけだろうし。まあ、最終的に、やっとコイツとの決着がついて、ホントスッキリしたよ。あばよ、悪党!ですな。
◆フェリックス・バビノー:ブレイディの謎パワーで精神を乗っ取られ、その肉体は主犯の実行犯「ドクターZ」として操られることになる医者。元々、ブレイディを被検体として新薬実験とかをしていた医師で、まあ、あまり褒められたところのない金持ちで嫌味なおっさん。なんとなく、ハンニバル・レクター博士を利用しようとしていたドクター・チルトンに似てますね。なので、大変気の毒なことになるけど、あまり同情する気になれないす。実際、嫌な人でした。
◆アル・ブルックス:「図書館アル」と呼ばれ、病院内で入院患者に本を配ったり雑用をこなしていた老人。彼は何の落ち度もなかったのに、ブレイディにちょっと優しく接していた?がために、精神を乗っ取られ、実行犯の一人「Zボーイ」に変身、そして散々な目に。彼はかわいそうな方でした。その最後も実に気の毒……。
◆フレディ・リンクラッター:名前からはイメージしにくいけど女性です。おまけにフレディとブレイディが名前が似ていて紛らわしい! 本人曰く「レズでタチ」ですが。彼女は第1作に出てきた、ブレイディの元同僚でPCオタク。今回、精神を操られながらも金目当てにブレイディの悪事に協力してしまう。その手口が凄くて、「ザビット」という倒産した会社が作っていた携帯ゲーム機を利用して、使用者の深層心理に働きかけ、精神をのっとり、自殺を促すという極めて邪悪なやり口。それを拡散する手伝いをすることに。そして最終的にはドクターZに撃たれるのだが、辛くも命は助かり、ホッジス達に情報提供することに。まあ、この人は操られていたとはいえ、善人ではないですな。
◆ピート&イザベラ:ピートは刑事時代のホッジスの相棒で、まだ現役だけど退職間近。そしてイザベラはピートの現相棒の女性だが、コイツがバカなんすよね……。この女刑事が有能なら、もう少し被害は少なかったのにね……。
とまあ、主なキャラクターは以上かな。
しかし、それにしてもKing大先生の旺盛な執筆欲旺盛な姿勢は、本当にすごいと思う。現在御年71歳。もうホッジスの年齢を超えるおじいちゃんなわけで、これだけの年齢&大ベストセラー作家という世間的名声があるにもかかわらず、執筆ペースは全く衰える様子もない。ホント、年に1冊以上ペースだもんなあ……これは、日本の作家にはまず見られないものだ。大御所になると、もう作品じゃなくて講演やらなにやらにかかりきりで、作家であることの証明=作品を発表すること、が完全に二の次になってしまう方が多い。そんな中でも、例えば日本で言うと、佐伯泰英先生のように、年に数冊ペースで新刊を発表してくれている立派な方ももちろん存在はしているけれど、基本的にシリーズもので、ゼロからの創作ではない場合が多い。しかしKing大先生は、この「ホッジス三部作」が例外的にシリーズものなだけで、基本的には1冊完結なので、ちょっと比べられないだろう。しかもそのページ数というかボリュームもMAXレベルだし。そしてその著作は次々と映像化され続けているし。この「ホッジス三部作」も、現在『Mr. MERCEDES』はTVドラマとして製作され続けてるし。ほんと、King大先生は偉大ですよ。King大先生とその作品はマジ最高っすわ!
というわけで、結論。
わたしが世界で最も好きな小説家、Stephen King大先生の日本語で読める最新作『END OF WATCH』が発売になったのですぐさま買い、むさぼるように読んだ。結果、超ハラハラの展開でページをめくる手が止まらず、おまけにラストはとても感動的で、わたしはうっかり涙を流しそうになったほどだ。どす黒い「邪悪」と敢然と立ち向かい、数々の困難を経ての完全勝利には、とても爽快で気持ちのイイ読後感が得られると思う。コイツは最高に面白かったすね。見事なシリーズ大団円だったと思います。ま、要するにですね、いやあ、Stephen King大先生は最高だぜ! ってことですな。以上。
↓ わたしは観てません。どうも、役者が読んでいた時のイメージと違い過ぎるし、そもそもホリーの設定が全然違うっぽいので。
というわけで、時間がかかってしまったけれど、やっと読み終わりました。なんのことかって? そんなのコイツのことに決まってるでしょう!! わたしが世界で最も愛する小説家、Stephen King大先生の、日本語で読める最新作、『END OF WATCH』のことであります!! ちょっともう一度、わたしが撮影した書影を貼っとくか。これっす!
もう既にこのBlogで何度も書いていることだが、本作はKing大先生初のミステリー「退職刑事ビル・ホッジス三部作」の3作目であり、堂々の完結編だ。そしてお話は、前作『FINDERS,KEEPERS』のラストで示されたというか、予感させた通り、なんと! シリーズ第1作の『Mr. MERCEDES』でブッ飛ばしてやった犯人であるあのクソ野郎が大復活し、またもや邪悪な行為を開始するというものだ。そのメインプロットはもう最初から分かっていたけれど、かなり予想を超えた展開で、もうホントにハラハラドキドキが止まらない最高の物語でした。
つうかですね、今回のラストは泣けたっすねえ……そしてタイトルの意味が最後に明確になるところでは、わたし、ホントに眼に涙がこみ上げてきちゃったすわ……。
さてと。
ところで、King大先生のファンならばもうお馴染みだと思うが、わたしはKing大先生の作品を、以下のような感じに分類できると思っている。それは、2つの軸によって4つに分けられるとわたしは考えているのだが、その2つの軸とは、「黒キング or 白キング」という軸と、「SUPER NATURAL要素アリ or ナシ」という軸だ。
図にすると、要するにこういうことである。
SUPER NATURAL な存在・現象・能力 アリ |
SUPER
NATURAL な存在・現象・能力 ナシ |
|
黒キング作品 どす黒い「邪悪」 との対決物語 |
【A象限】 UNDER THE DOME IT、THE STAND DR.SLEEP など多数 |
【B象限】 MISERY Mr. MERCEDES FINDERS,KEEPRESなど |
白キング作品 読後感爽やかな 感動物語 |
【C象限】 11/22/63 GREEN MILE など |
【D象限】 THE GIRL WHO LOVED TOM GORDON、 JOY LAND など |
どうしようかな、物語を簡単にまとめておこうかな……まあ、物語は、シリーズを読んできた方ならば、既に上の方に書いた「あのメルセデス・キラーが大復活! そして再び邪悪な計画が実行に移される!」というだけで十分かもしれないな……。これまた上にも書いたことだが、第2作のラストで、その予告というか予感はさせていたのは、誰しも記憶していることだろう。前作ラストで、事件が終結し、主人公ホッジスがアイツの病室を訪ねた時の描写で、どうやらあのクソ野郎に謎の超能力が発現した……のかも!? 的エンディングは衝撃であった。
そしてその予感は、本作で現実のものとなってしまったのです。第1作でホリーに頭をブッ叩かれ、脳に深刻なダメージを負って病院送りとなったメルセデス・キラーことブレイディが、なぜそんな謎能力に目覚めたのか。それは本作では明確? には語られない。脳がシェイクされて再組成された結果かもしれないし、バカな医者のバビノーによる新薬実験の結果かもしれない。しかし、原因よりも、あの邪悪なブレイディが念動力めいたパワーを得てしまったという結果がマズいわけで、もうこれはヤバいこと請け合いである。さらに、ちょっとしたものを動かせるだけでなく、他人の脳みそに入り込んで、「人間リモコン」として自由に動かせるようになっちゃうのだから、さあ大変だ! しかも、我らが主人公ホッジスは、もうかなり冒頭でガンに蝕まれていることも判明する。もう70歳直前という年齢のお爺ちゃんだし、ガンの痛みもあって、動きもままならない。果たしてそんな状態のホッジスは、「自殺の設計者」ブレイディを阻止できるのか―――!? というハラハラドキドキのストーリーであります。サーセン、ダメだ、ネタバレなしには書けないので、気にする方はここらで退場してください。
というわけで、以下、キャラ別に思ったことを羅列していきたい。
◆ビル・カーミット・ホッジス:シリーズの主人公。元刑事。1作目の『Mr. MERCEDES』の最初の事件が起きた時は2009年で(物語自体は2010年ごろ?)、2作目の『KEEPRES,FINDERS』が2014年だったかな(※2作目では登場シーンも少なくそれほど活躍しない)。そして今回の『END OF WATCH』が2016年のお話である。まあ、ホッジスは退職後、燃え尽き症候群的な精神的どん底にあったところで、メルセデス・キラーから自殺を誘惑するような手紙がきて、再び闘志を燃やして生きる道を見つけたわけだから、ある意味、第1作目の事件が起きたことに救われたともいえるような気がする。
今回は、既に69歳、体の異変が起きていて(そもそも第1作ラストでは肝心な時に心臓発作でブッ倒れていた。以後、ペースメーカー着用)、もうかなり序盤で、今回の事件をもってホッジスは天に召されるのだろう、というのは誰しも感じたことだろう。そしてその最後の命の炎も、メルセデス・キラーの再登場によって燃え上がったわけで、その最終的な決着には、まさしくタイトル通り、「END OF WATCH=任務終了」という言葉がふさわしいと思う。ラスト、ホッジスの墓標にそのEND OF WATCHという言葉が刻まれているシーンには泣けたっすなあ……見事な、まさしく、大団円、であったと思う。おそらく、本作は明確にドス黒い邪悪との対決が描かれている「黒キング」作品なのに、それでもこれはやっぱり「白キング」作品に入れたい、とわたしが感じるのは、このホッジスを中心とした「善」の側のキャラクターたちがとても生き生きしていて、そんな彼らが多くの困難ののちに明確に勝利し、爽快な読後感をもたらしているためではないかと思う。
◆ホリー・ギブニー:そして、その「白キング」感を一層高めるのに貢献しているのが、ホリーの存在だ。ホリーは第1作目で、ホッジスがイイ仲になる女性の姪で、40代なのだが、精神的に不安定で問題のある女性だ。そんな、超人見知りで、常にビクビクオドオドしていたホリーが、シリーズを追うごとに成長していき、どんどん魅力的になっていくのが読んでいてとてもうれしいんすよね。
今回もホリーはホントに成長しましたなあ……そして得意技のPCスキルでもちゃんと活躍してくれるし、ホッジス亡き後の「ファインダーズ・キーーパーズ探偵事務所」は任せたぜ。ラストのジェロームとの会話は、ホント、グッと来たっすわ……。
◆ジェローム・ロビンスン:第1作の時点では高校生、そして第2作目でハーヴァードに進学した頭が良くて性格もイイ、完璧イケメンの黒人青年。ホリーが成長できたのはホッジスと君のおかげだよ。今回、ジェロームはハーヴァードを休学して、NGO活動をして遠くに離れていたのだが、妹のバーバラが狙われたこと、そしてホリーからホッジスのガンのことを聞いて急遽実家へ戻ってくる。なので出番は後半から。そしてラストでは、当然ここでジェロームの出番だろ、というタイミングで登場して、ホッジスとホリーを助けてくれるナイスガイ。まあ、君はモテるだろうけど、ホリーのことも見守ってやってくれよ……。とにかく、ホッジス&ホリー&ジェロームの三人組は、King大先生の作品史上、とても心に残る「善」のチームでした。ああ、もうこれから新作が出ないなんてホント残念す……。
◆ブレイディ・ハーツフィールド:悪名高き「メルセデス・キラー」。第1作のラストで、コンサート会場を爆破しようとした1秒前に、ホリーにボールベアリングを詰めた靴下(ホッジス愛用の武器「ハッピースラッパー」)で思いっきり頭をぶん殴られ、あえなく逮捕、そして昏睡状態のまま病院に拘留された。恐ろしく邪悪で、ドス黒い精神がねじ曲がったクソ野郎で、その後、第2作目では目を覚ましたことが描かれるけれど、完全に脳が破壊されて自力では動けない、言葉もしゃべれない、単に目を開けているだけの廃人、だったはずだが……前作ラストで、なにやら念動力めいた謎パワーを授かっていることが描かれ、我々読者としては、な、なんだってーー!? と大興奮したわけだ。
今回、フレイディは「他人の脳みそに侵入して自由に動かす」謎能力で、またもや多くの人を自殺に追い込み、大量殺人を実行するのだが、第1作では、たとえばジェロームの家の愛犬をぶっ殺そうと、毒入りハンバーグを準備したのに、それをブレイディが唯一愛するお母さんが夕食に食べちゃって死ぬとか、意外とバカな男だったのに、今回のコイツの計画は、かなり手が込んでいて(何しろ計画を立てる時間だけは存分にあった!)、しかも、おそらくは科学的に立証するのが非常に難しため、こりゃあ、コイツが何かミスをしないと、ホッジス達に勝ち目はないのでは? と相当ドキドキ感は高かったと思う。実際、ブレイディの犯したミスは、フレディの死を確認しなかったことだけだろうし。まあ、最終的に、やっとコイツとの決着がついて、ホントスッキリしたよ。あばよ、悪党!ですな。
◆フェリックス・バビノー:ブレイディの謎パワーで精神を乗っ取られ、その肉体は主犯の実行犯「ドクターZ」として操られることになる医者。元々、ブレイディを被検体として新薬実験とかをしていた医師で、まあ、あまり褒められたところのない金持ちで嫌味なおっさん。なんとなく、ハンニバル・レクター博士を利用しようとしていたドクター・チルトンに似てますね。なので、大変気の毒なことになるけど、あまり同情する気になれないす。実際、嫌な人でした。
◆アル・ブルックス:「図書館アル」と呼ばれ、病院内で入院患者に本を配ったり雑用をこなしていた老人。彼は何の落ち度もなかったのに、ブレイディにちょっと優しく接していた?がために、精神を乗っ取られ、実行犯の一人「Zボーイ」に変身、そして散々な目に。彼はかわいそうな方でした。その最後も実に気の毒……。
◆フレディ・リンクラッター:名前からはイメージしにくいけど女性です。おまけにフレディとブレイディが名前が似ていて紛らわしい! 本人曰く「レズでタチ」ですが。彼女は第1作に出てきた、ブレイディの元同僚でPCオタク。今回、精神を操られながらも金目当てにブレイディの悪事に協力してしまう。その手口が凄くて、「ザビット」という倒産した会社が作っていた携帯ゲーム機を利用して、使用者の深層心理に働きかけ、精神をのっとり、自殺を促すという極めて邪悪なやり口。それを拡散する手伝いをすることに。そして最終的にはドクターZに撃たれるのだが、辛くも命は助かり、ホッジス達に情報提供することに。まあ、この人は操られていたとはいえ、善人ではないですな。
◆ピート&イザベラ:ピートは刑事時代のホッジスの相棒で、まだ現役だけど退職間近。そしてイザベラはピートの現相棒の女性だが、コイツがバカなんすよね……。この女刑事が有能なら、もう少し被害は少なかったのにね……。
とまあ、主なキャラクターは以上かな。
しかし、それにしてもKing大先生の旺盛な執筆欲旺盛な姿勢は、本当にすごいと思う。現在御年71歳。もうホッジスの年齢を超えるおじいちゃんなわけで、これだけの年齢&大ベストセラー作家という世間的名声があるにもかかわらず、執筆ペースは全く衰える様子もない。ホント、年に1冊以上ペースだもんなあ……これは、日本の作家にはまず見られないものだ。大御所になると、もう作品じゃなくて講演やらなにやらにかかりきりで、作家であることの証明=作品を発表すること、が完全に二の次になってしまう方が多い。そんな中でも、例えば日本で言うと、佐伯泰英先生のように、年に数冊ペースで新刊を発表してくれている立派な方ももちろん存在はしているけれど、基本的にシリーズもので、ゼロからの創作ではない場合が多い。しかしKing大先生は、この「ホッジス三部作」が例外的にシリーズものなだけで、基本的には1冊完結なので、ちょっと比べられないだろう。しかもそのページ数というかボリュームもMAXレベルだし。そしてその著作は次々と映像化され続けているし。この「ホッジス三部作」も、現在『Mr. MERCEDES』はTVドラマとして製作され続けてるし。ほんと、King大先生は偉大ですよ。King大先生とその作品はマジ最高っすわ!
というわけで、結論。
わたしが世界で最も好きな小説家、Stephen King大先生の日本語で読める最新作『END OF WATCH』が発売になったのですぐさま買い、むさぼるように読んだ。結果、超ハラハラの展開でページをめくる手が止まらず、おまけにラストはとても感動的で、わたしはうっかり涙を流しそうになったほどだ。どす黒い「邪悪」と敢然と立ち向かい、数々の困難を経ての完全勝利には、とても爽快で気持ちのイイ読後感が得られると思う。コイツは最高に面白かったすね。見事なシリーズ大団円だったと思います。ま、要するにですね、いやあ、Stephen King大先生は最高だぜ! ってことですな。以上。
↓ わたしは観てません。どうも、役者が読んでいた時のイメージと違い過ぎるし、そもそもホリーの設定が全然違うっぽいので。