2017年05月

 というわけで、毎週月曜日は恒例の週末映画興行データです。
 つーかですね、きょうはちょっと忙しくて時間が取れず、いつもの戯言をほざく暇もないのでさっさと興行通信社の大本営発表をメモして終わりにします。

 1位:『美女と野獣』がV5V6達成。96.77億まで積んだそうです。すげえ!
 2位:『家族はつらいよ2』が公開土日で1.33憶稼いで2位!やった!わたしも土曜日観てきたっす!完全おっさん&おばさま向けですがまさか2位とは! でも、数字的にはちょっと……きっと単価が安いんだろうな……前作は1.7億スタート、4週目には10億に乗るも最終的には13.8億止まりだったので、これは……10億チョイで止まってしまいそうな予感……。
 3位:『ちょっと今から仕事やめてくる』が公開土日で1.4億稼いで3位だそうです。まあ、それほどいい数字ではないんでしょうな……15億はどうでしょう……。原作はメディアワークス文庫の小説。公称70万部突破。まさかそこまで売れるとは発売時は全く思ってもみなかったなあ……。
 4位:『名探偵コナン から紅の恋歌』が44日間で63~64億ぐらいと見積もる。先週末時点で61.27憶+土日で1.17億+平日で1億弱という計算です。あ、正解は63.5億突破でシリーズ最高記録更新だそうです。おめでとうございます!
 5位:『ピーチガール』が9日間で3~4億程度と見積もる。
 6位:『ワイルド・スピード ICE BREAK』が31日間で35.5~36.5億ほどと見積もる。正解は37億を突破しているようです。大変失礼いたしました! すげえなあ!
 7位:『君のまなざし』が9日間で3億程度と見積もる
 8位:『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー リミックス』が17日間で8~9億ほどと見積もる。くそー。これは厳しいなあ……もっと売れてほしかった……
 9位:『帝一の國』が30日間で15~16億ほどと見積もる。こちらはこれほど売れるとは思ってなかった。おみそれしました。
  10位:『メッセージ』が10日間で2.5~3.5億程度と見積もる。こちらも厳しいすねえ……日本では売れないか……。

 とまあこんな週末だったようです。
 というわけで、結論。
 『美女と野獣』はまあ順調な推移、そして2位には、わたしが観に行ったときには完全シニアな観客層だった『家族はつらいよ2』がランクインするも、数字的には前作より落ちでおり、若干心配です。ロングでじわじわと……売れないか……40代以上が観ると最高に笑えるんですが、若者はそもそも見ようとも思わないかな……。以上。サーセン!ちょっくら仕事に戻ります!

 昨日の夜、HDD内に撮り貯めている映画の中から、なにか観ようかしら……と画面をスクロールしているときに、ふと目に留まった作品がある。録画したのはもう数年前のようでそのまま放置していたのだが、なぜ録画しようと思ったのか全く記憶にない。が、確かにそのタイトルはやけに気になるというか、どんな映画なんだろうと想像を掻き立てるもので、もはやどんな映画なのかという内容についてもわたしの記憶からは完全に消失してしまっていたし、ともかくタイトルに惹かれて、まずは観てみることにした。
 その映画は、邦題を『やさしい本泥棒』といい、最初に画面に出るタイトルコールで、そもそもはドイツ語で「Die Bücherdiebin」というタイトルであることを知った。このドイツ語タイトルは2秒ぐらいで英語の「THE BOOK THIEF」と変わるのだが、1937年から1945年ごろにわたるドイツを舞台とした物語で、わたしはヒロインの少女リーゼルの印象的な目と、ヒロインを一途に惚れぬく少年ルディのけなげさに大変グッと来た。また、その結末はとても悲しく、一方で希望に満ちた大変泣ける映画であることを確認した次第である。いやあ、とても面白かった。これはいい映画でありました。

 実際のところこの映画の原作本は、オーストラリアの小説家Markus Zusak氏によって書かれた英語の小説のようなので、別にドイツ語のタイトルはどうでもいいのだが、一応、作者の生まれとしてはドイツ人の母とオーストリア人の父を両親に持つ方だそうで、実際ドイツ語はできる人なのだろうと思われる。物語の舞台もドイツだし、ドイツ語もかなり頻繁に出てくる。が、なぜかキャラクターたちは英語をしゃべるという、その点は正直奇妙ではあった。
 ただ、わたしはドイツ語で修士論文を書いた男なので、この「Die Bücherdiebin」というドイツ語のタイトルを見た時に、すぐに気付くことがあった。これはドイツ語を勉強した人ならご存知のように、BücherはBooks、本の複数形であり、diebはthief、すなわち泥棒である。肝心なのは語尾の -in で、ドイツ語ではこの語尾がつくと、女性を意味するのである。つまり Der Diebは泥棒、Die Diebinとなると女泥棒という意味だ。これは英語表現にないものなので(正確に言えば一部単語には残ってる)、英語にすれば男であろうと女であろうと The Book Thief となってしまうけれど、わたしはタイトルを観た時に、その本泥棒とやらは女性なのね、ということを知った。
 この物語は、時代としてはすでにナチスが台頭しつつある、開戦前夜のドイツを舞台に、やがて戦争が起こり、終戦までの人々の生き方が、ヒロインであるリーゼルの眼を通して描かれるのだが、ユダヤ迫害や焚書といったナチスの蛮行もかなり生々しく描かれ、なかなか見ていてつらい作品だ。
 まずは簡単に物語をまとめてみようかな。実は、結構説明が少なくて、よくわからない点も多いのだが、ヒロインの少女、リーゼルは推定12~13歳ぐらい。母はどうやら「コミュニスト(=共産主義者)」らしく?、ナチスに連行されてしまい、弟も亡くし、一人、とある夫婦のもとに養子に出される。その養父ハンスはとても心優しいおじさんで、アコーディオンが上手なペンキ屋さん?である。そして養母は、とにかく言動がキッツイおっかないおばさんだ。当初、まったく心を閉ざしていたリーゼルは、学校へ行く初日に近所の少年ルディの迎えで学校へ行くも、字が読めない・書けないリーゼルはイジメに遭うが、リーゼルは鉄拳でいじめっ子を黙らせるほど気が強く尖がっていた少女だった。しかし、いつも一緒にいてくれるルディや養父ハンスの温かい心に触れていくうちに心もほぐれ、笑顔が戻っていく。ハンスがリーゼルに、一緒に本を読むことで言葉を教えていくシーンはとても印象的だ。しかし世はどんどんとナチスの暴力が進み、焚書も町の広場で行われていく。そしてある夜、ナチスの摘発から逃れてきたユダヤ人青年マックスがハンスのもとにやってきてーーーという展開である。
 わたしがこの映画で一番、衝撃を受けたのは、その焚書のシーンだ。知識としてそういうことがあったことは当然知ってはいたけれど、このシーンは怖いすねえ……しかも、その場では群衆があの歌を歌うのである。その歌は、これまたドイツ語を勉強した人なら多分お馴染みの、「Deutschlandlied」である。しかもその1番だ。
 Deutschland, Deutschland über alles, über alles in der Welt.
 現在のドイツ連邦共和国でも国歌である「Deutschlandlied(=Liedとは歌のこと。ドイツの歌)」は、3番が採用されているが、ナチス時代は1番が採用されていたことは、ドイツ語を勉強したことがあるなら知っていると思う。ちなみに現在、この1番を人前で歌うことはタブーだ。かなりマズイことだと思っていい。その歌詞、Deutschland, Deutschland über alles, über alles in der Welt.とは、ドイツ、すべての上に立つ、世界で最も上のドイツ、という意味だ。そう直訳すると実にナチスっぽい意味に取れると思うが、もともとこの歌は1797年に神聖ローマ帝国皇帝フランツ2世にささげられたものだ。この,Deutschland, Deutschland über alles, über alles in der Welt.を群衆が歌いながら本を燃やすのである。わたしは文章としてこの歌の歌詞を読んだことはあるけれど、大勢の人が実際に歌うシーンを見たのは初めてかもしれない。ナチスが悪であることはもはや歴史が証明しているが、それを民衆が支持していたことが分かる、結構怖いシーンである。もちろん、それは全部の市民が心から支持していたわけではなく、主人公リーゼルや養父ハンスたちは、歌わないと命にかかわるから仕方なく歌っているのだが、とにかく……象徴的でとても怖いシーンだと思う。
 そして、リーゼルも、「本を投げ入れろ!」と命令されて、戸惑い、ためらいながらも、えいっ!と投げ入れる。そして人々が帰り着いた後で、広場に燃え残る本をそっと手に取って帰る。ここが、「女本泥棒」というタイトルの意味が分かる重要なシーンだ。そしてその場を見られなかったかと心配するハンス。もし見られていたらただでは済まない。けれど、実はリーゼルが本を持ち帰ったところを、一見やけにおっかない、市長の奥さんに見られていた。観客としてはもう、ドキドキである。リーゼル、お前見られていたぞ!? だ、大丈夫なのか……と心配していると、実はその市長の奥さんも大変な読書家であることが判明し、本が好きなリーゼルに、自宅の蔵書をいつでも読みにいらっしゃいとやさしくしてくれる。そしてこの奥さんの蔵書をリーゼルは後にこっそり盗む(リーゼルは「借りるだけ」と言い張る)展開になるのだが、この時も、なにげに見守って助けてくれるルディ少年がとてもいいんすよね。
 リーゼルは、ナチスという狂気が世を覆っていても、ハンスというやさしい養父と、実はとても根のやさしい養母のローザ、そして、いつも一緒にいてくれるルディ少年に囲まれていたおかげで、「人として当たり前のこと」を忘れずにいることができたわけだけど、エンディングはなあ……もうちょっと明るく終わってほしかった……悲しすぎる……せめてルディにはキスしてあげてほしかったよ……。というわけで、それぞれのキャラと演じた役者を短くまとめて終わりにしよう。
 ◆リーゼル:ヒロインの少女。とても勝気で強い眼力のある美少女。演じたのはSophe Nélisseちゃん。2000年生まれだそうで、この映画は2013年US公開だったようなので当時12歳とか13歳。現在は17歳か。カナダ人みたいですな。おお、Instagramやってんだ。なかなかの美女になりつつありますな。

Cuz summer's just around the corner🌞🌷 @nakdfashion #nakdfashion

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 ◆ルディ:リーゼルに出会った時からもうひとめぼれをした男の子。とてもきれいな目をした、なかなかのイケメン少年。そして、足が速いのが自慢で、その高い身体能力のせいでナチスのヒトラー・ユーゲントにスカウトされてしまう。何度も、「じゃあ・・・したら、僕にキスしてよ」とリーゼルにお願いしまくる積極派。ホントに君は勇敢でカッコ良かったよ。君には生きていてほしかった……。演じたのはドイツ人でミュンヘンにお住いのNico Liersch君。彼も2000年生まれみたい。今はあまり芸能活動してないのかな……ドイツ国内での活動にとどまってるみたいだな。ちょっと良く分からん。
 ◆ハンス:リーゼルの養父。義を重んじるいい人。とあるユダヤ人をかばったことで、もうお爺ちゃんレベルの年齢なのに国防軍へ強制入隊。無事に帰ってきてくれたのはいいけれど……死神は残酷ですなあ……本作は、冒頭、なぞのおじさんのナレーションで始まるのだが、そのナレーションが「死神」の声であることが後半判明します。ハンスを演じたのはGeoffrey Rush氏65歳。オーストラリア人ですな。まあ大ベテランで数多くの作品に出演されているけど、最近で一番印象的だったのは『THE KING'S SPEECH』でイギリス国王ジョージ6世にしゃべり方を教える発話コーチの役でしょうな。本作は非常に味わいのある優しいおじさんの役を熱演されていました。
 ◆ローザ:ハンスの奥さんでリーゼルの養母。最初はとにかくおっかないおばさんだと思っていたら、実はとてもやさしい人でした。演じたのはイギリス人のEmily Watsonさん50歳。この方もベテランだけど、わたしがこの方で唯一覚えているのは、『RED DRAGON』で殺人鬼ダラハイドが愛してしまう盲目の女性、あれを演じたのが彼女ですな。わたし的には、『RED DRAGON』はハンニバル・レクター博士モノで一番出来がいい映画だと思うんだけどな。原作小説も非常に面白いす。
 最後、スタッフとして、監督や脚本家ではなく、音楽を担当した大御所を紹介しておこう。なんとこの映画の音楽を担当したのは、かの名匠John Williams氏である。道理で!冒頭のピアノの曲がすごくきれいで印象的なんだよなあ。でもあれは有名なクラッシックの曲かな。わたしは音楽知識に乏しいので分からなかったけれど、劇中の音楽も大変上質で、エンドクレジットで名匠の名を見つけて、あ、そうだったんだと納得でありました。

 というわけで、もう長いので結論。
 ふとしたきっかけで見始めた映画『やさしい本泥棒』。かなり悲しい出来事が起きるのでハンカチは必須と言っていいだろう。ただしラストは希望があって、まあ、よかったよかったとなるので安心していただきたい。とにかく、少女と少年の目が印象的な、優しい映画ですよ。でもなあ、死神さんよ……せめてルディは助けてあげてほしかったよ……そして死神さんがリーゼルに魅せられ、その成長を見守った理由はさっぱりわかりません。死神さんは別に要らなかったかな……以上。

↓ こちらが原作です。くそう、もう絶版か……。
本泥棒
マークース ズーサック
早川書房
2007-07

 かつての寅さんでおなじみの『男はつらいよ』という作品は、年に1本~2本公開されることが当たり前だったわけで、いわゆる「プログラム・ピクチャー」というものだが、本作もそのような人気シリーズになるのだろうか。
 去年3月に公開された山田洋次監督作品『家族はつらいよ』を観て、大変笑わせていただいたわたしとしては、今日から公開になった、続編たる「2」も当然早く観たいぜと思っていたわけで、今朝8時50分の回で、早速観てきた。結論から言うと、お父さんのクソ親父ぶりは増すまず磨きがかかっており、おそらくは日本全国に生息するおっさんたちは、笑いながらも感情移入し、そして日本全国のお母さんや子供たちは、ああ、ほんとウチの親父そっくりだ、とイラつきながら笑い転げることになろうと思う。ただし、笑えるのはおそらく40代以上限定であろう。今日、わたしが観た回は、わたしを除いてほぼ100%が60代以上のベテラン親父&お母さんたちであり、映画館では珍しく、場内爆笑の渦であった。まあ、若者には、平田家のお父さんはクソ親父過ぎてもはや笑えないだろうな。

 というわけで、あの平田家の皆さんが1年2か月ぶりにスクリーンに帰ってきた! 詳しい家族の皆さんについては、前作を観た時の記事をチェックしてください。もう一人一人紹介しません。
 今回のお話の基本ラインは、73歳(だったかな?)のお父さんの免許をそろそろ返納すべきなんじゃねえの? という家族たちの思惑と、ふざけんなコノヤロー!と憤るお父さんの家庭内バトルである。そしてそこに加えて、お父さんがばったり出会った旧友と飲み明かし、べろべろになって家に連れ帰り、なんと翌朝、その旧友が冷たくなっていて―――という、とても笑えない状況の2本立てである。
 まず、免許証の返納だが、正直これはわたし個人も、老いた母の運転が心配であり、実に切実な問題だ。なにしろ本作で描かれる平田家のお父さんは、ぶつける・こする・追突する、と愛車のTOYOTA MarkIIはもうボロボロである。10数年乗っているという設定だったと思うが、劇中使用車はおそらく7代目のX100型だと思うので、2000年に生産終了しているはずだから、もう17年物である。そんなぼろぼろのMark IIでは、そりゃあ家族も心配だろう。幸いわが母はまだぶつけたりしていないが、たまに母運転の助手席に座ると、実は結構怖いというかドキドキする。母の場合、ブレーキングやアクセルワークよりも、車幅感覚が危なっかしいように感じてしまうが、まあ、平田家のお父さんはよそ見運転で追突したりと、要するに完全に不注意であり、これはきっと性格の問題だろう。
 平田家のお父さんは、とにかく観ていてイラつくクソ親父だ。それはまず間違いなく誰しもそう思うと思う。何といえばいいのかな、日本全国のクソ親父のすべての成分を凝縮させているというか、まったく同情の余地がなく、若者が観て共感できるわけがない。早く死ねよとすら思う若者だっているだろうと思う。なにしろ、わたし自身がそうだったのだから。
 しかし、そんなクソ親父でも、死んでしまった後になると、結構許せてしまうのだと思う。それは理由が二つあって、一つは、単純に時が過ぎて思い出に代わるから。そしてもう一つは、あんなに嫌いだったクソ親父に、自分自身も似てきてしまうからだ。そう、男の場合は、おそらく誰もが、大嫌いだった親父に似ている自分をある日ふと発見し、その時初めて、クソ親父を許せるようになってしまうのである。その時、許すとともに、自分を後悔するのが人間の残念な性だ。もうチョイ、やさしくしてやればよかったかもな、いやいや、クソ親父はひどかったし! いやでも……それでももうチョイ言い方はあったかもな……なんて思えるようになるには40歳以上じゃないと無理だと思う。なのでわたしはこの映画は、若者が観てもまったく笑えない、むしろイライラし腹を立てることになるのではないかと思うのである。まだ親父を許せていないから。
 本作では、西村雅彦氏演じる長男が、もう完全にお父さんそっくりになりつつあり、かつまた、現役サラリーマンという社畜のおっさんで、実にコイツもクソ親父である。まったくこの長男にも共感のしようがなく、きっと夏川結衣さん演じる奥さんもあと15年後には大変な苦労をすることが確実だ。今回、免許返納にあたって、まずこの長男が、奥さんに対して「親父にきつく言っとけよ!」と命令し、いやよそんなのできないわ、そうだ、じゃあ成子さん(長女で税理士のしっかり者。演じるのは中嶋朋子さん)にお願いしましょう、となり、成子もいやよ、わたしの言うことなんて聞きやしないわ、じゃあ、庄太(次男。やさしい。ピアノ調律師。演じるのは妻夫木聡くん)に言わせましょう、お父さん末っ子には甘いんだから、というように、見事なたらい回しで、お父さん説得役が回されていく。この様子はもう爆笑必至なわけだが、前作ではまだ付き合っているだけだった庄太の彼女、憲子さん(演じるのは蒼井優ちゃん。かわいい!)が、本作ではもう結婚して奥さんになっていて、しかたなく庄太と憲子さんが平田家を訪れる、という展開である。
 この流れの中に、一人足りない、とお気づきだろうか? そう、お母さんですね。でも、お母さんは最初からあきらめているし、今回は前半でお友達と北欧へ旅行に行ってしまうので、不在なのです。そんな中、もうしょうがないなあ……と全く乗り気のしない庄太は憲子ちゃんを伴い平田家にやってくる。そして、話をしようとした矢先、お父さんから、庄太、お前にオレの愛車をやるよ、とお父さんの方から話が始まる。おおっと、お父さん!自分で決断して車を手放す決心をしてくれたんだね!と感激の庄太&憲子ちゃん。
 父「(真面目な顔でしんみりと)オレもなあ……大切に乗った愛車だし、愛着あるんだけどなあ、しょうがないよ」
 庄太「お父さん! 大切に乗らせていただきます!」
 父「お前が乗ってくれるなら安心だよ」
 庄太「お父さん、ありがとう!」
 父「オレもとうとうハイブリットだぜ!(じゃーん!と超嬉しそうにカタログを開いて) TOYOTAプリウス! こいつに乗り換えだ!」
 一同「ズコーーーッ!!」
 わたしはこのやり取りが一番笑ったかな。
 そして後半の、旧友とのエピソードは、何気に重くズッシリ来るお話なので、これは劇場で観ていただいた方がいいだろう。まあとにかく、最後までお父さんはトンチキな行動でどうしようもないクソ親父なのだが、一人、憲子ちゃんだけが「人として当然」という行動をとるわけで、それが本作ではほとんど唯一の救いになっている。ほんと、憲子ちゃんはいい子ですなあ……。
 というわけで、わたしは大変楽しめ、実際うっかり爆笑してしまったわけだが、前作が最終的な興行として13.8億しか稼げなかったことから考えると、本作もそれほど大きくは稼げないだろうな、という気がする。なにしろ観客のほとんどがシニア割引きで単価も安いしね……それに、前作を観てなくて、いきなりこの「2」を観て楽しめるのかも、わたしには良く分からない。最近だと、きちんとこの「2」の公開前に、前作をTV放送したりするけれど、そういった配慮は全くナシ。大丈夫なのかな……本作が10億以上売れて、シリーズ化がきちんと進行することを祈りたい。
 
 というわけで、ぶった切りで結論。
 山田洋次監督作品『家族はつらいよ2』を早速観てきたわけだが、劇場はおじいちゃんおばあちゃんレベルのシニアで満たされており、若者お断りな雰囲気であったが、内容的にも実際若者お断りな映画なのではないかと思う。無理だよ、だって。この話を若者が観て笑うのは。お父さんがクソ親父過ぎるもの。誰しもが観て笑うと思っているとしたら、そりゃあちょっと年寄りの甘えというか、ある種の傲慢じゃないかなあ。でも、一方で、わたしのような40代後半のおっさんより年齢が上ならば、間違いなく爆笑できる大変楽しい映画だと思います。それはそれで大変よろしいかと存じます。が、なんというか……日本の映画の未来はあまり明るくねえな、とつくづく思いました。アニメが売れることはいいことだし、一方でこういうシニア向けがあってもいい、けど……なんかもっと、全年齢が楽しめるすげえ作品が生まれないもんすかねえ……。無理かなあ……。タイトルデザインは、かの横尾忠則氏だそうですが、ズバリ古臭い。そりゃそうだよ。もう80才だもの。若者には通用しねえなあ……。以上。

↓やっぱり前作を観ていることが必須なのではなかろうか……。

 というわけで、毎週木曜日は『鮫島』ニュースのお時間です。
 つーかですね、現在熱戦が繰り広げられている大相撲夏場所ですが、先場所で左胸~左肩を負傷してしまった横綱【稀勢の里】関が休場となってしまいました。まあ、しょうがないすよね……しっかり治して、次の名古屋でまた活躍していただきたいと存じます。そして今場所は、昨日11日目終了時点で横綱【白鵬】関が11勝0敗と単独首位。ここ何場所だろう、えーと、去年の夏場所以来だから4場所優勝から遠ざかっておりますので、約1年ぶりの賜杯を手にすることができるか、楽しみですな。そしてわたしが応援している黒ブタくんこと【松鳳山】関は、現在3勝8敗とよろしくありません。いつもは、黒星でも超惜しかった、というような相撲内容は良かった黒星が多い松鳳山裕也君ですが、今場所はどうも内容的にもなあ……昨日は久しぶりに勝ったので、残り4番、かっこいいところを見せてほしいと思います。
 では、まずは週刊少年チャンピオン2017年26号概況です。
 ■巻頭グラビア:電子版はナシ! 紙雑誌版だとAKBの入山杏奈嬢だそうですよ。
 ■弱虫ペダル:デスゲームの結末の巻。まあちょっと無理あったなあ。でもやっと手嶋さん&青八木くんが坂道たちに合流です。はよ追撃せんと手遅れになるぞ!
 ■刃牙道:純粋いの巻。「きれい」と読みます。花山君が相変わらずかっけえす。
 ■BEASTERS:美味礼賛のための巻。ハルちゃん超絶ピンチ!これもうアウトか!?
 ■囚人リク:地獄の巻。久々登場の鬼道院。もうほんと人間を超えてますw
 ■Gメン:惚れた女の為ならばの巻。さあ、薙くんのターンの始まりです!
 ■サウエラップ自由形:ダースレイダーの巻。「鮫島」ファンにしか通じないギャグが最高です。
 てな感じの週刊少年チャンピオンでありました。

 さて。それでは今週の『鮫島』ニュースをお送りいたします。
 先週は【松明】VS【百雲】がとうとう始まり、立ち合いの攻防から常がまわしを取ったものの、常の左ひじに【百雲】のキツイ張りが炸裂し、さらにカチ上げ気味の右エルボーが常の顔面にヒット!! というところまで描かれました。今週はそこからの続きです。
 解説席の虎城理事長も、常の左ひじを襲った【百雲】のキツイ張りに、「壊(い)ったか…」と見ています。こりゃあ、完全にヤマ行った感じですね。そして常の顔面に炸裂した【百雲】のエルボーは、常を吹っ飛ばします。そんなラフファイト気味のカチ上げに、場内からは「キタネーぞ!」とか「みっともねー相撲取ってんじゃねーよ!!」的なブーイングです。しかし、当の【百雲】の脳裏にはそんなブーイングは響きません。
 「辿り着かねーんだ…普通にやってたら…テメーらには分からねーさ…分かってほしいとも思わねえ… 躊躇はしねえ… 罵倒されようと…蔑まれようと…泡影に辿り着くまでの 俺が選択した道…まだ土俵(ここ)に立っているための 俺の覚悟…」
 なんというか、悲痛な決意ですなあ。こういう、「たとえ誰にも理解されなくとも、俺は俺の信念を貫くぜ」的な不器用な男像というと、最近ではNHK大河の「例え卑怯者・敵と思われようと俺は大好きな直虎さまを守るぜ」という小野但馬守正次さまの決意を思い出しますね。若干方向性が違うか。まあいいや。いずれにせよ、【百雲】のラフファイトの真意に虎城理事長はちゃんと気が付いています。それは、あまりに横綱【泡影】が異質であることを知っている虎城理事長ならではでしょう。そして理事長はそんな【百雲】の決意をこう評します。
 「だが…その道は…苦しみを孕むその道は…生半可な精神では耐え切れんぞ…一歩踏み外せば破滅…それでもその道を進むか百雲…」
 理事長……あなたホントいい人になりましたね……。そして土俵上では、エルボーを喰らって一瞬ガクッとする常に追撃がかかりますが、常は気合で(?)右肩を【百雲】にブチかまします! NHKアナも絶叫、「あーーー!! 鬼の形相で前に出た松明!! さすがにこのままやられっぱなしでは終わらない!!」 そして場内も大歓声!! 常は「クソ…不用意にマワシを取ってしまった…バカか俺は その後の予測はできたはずだ…」とデータ力士らしく一瞬反省、そしてすぐさま襲い来るエルボー2発目を喰らいながら、「これほどの男がここまでして勝ちに来る世界…奇麗汚いで割り切れる簡単なもんじゃない…必死…土俵(ここ)にあるのはそれだけだ…落ち度はすべて俺にある…」と自己納得完了です。
 そして! 納得の完了した常の眼は当然死んでいません! 石川に一発KOを喰らった新弟子時代の常松ではありません! 気迫に満ちた、まさに「鬼の表情」ですよ! そして、それを観客席で観ている常のクソ親父は「もう…いいだろ…なんで…そこまで…」なんてつぶやいています。そして常の幼少期のことが頭に浮かびます。どーせ俺のガキなんだからお前なんてダメ、自分に期待すんじゃねーぞ、なんてひどいことを言っていた自分。それでも常は、何度も何度も、クソ親父に相撲取ろうよと言い続けていた過去。そんなことを思い出しながら、常のクソ親父は、土俵上で戦う常に、こう思います。
 「バカな奴だ…お前はそうやってずっと…あの頃から…俺を責めているのかよ…」
 常もまた不器用すねえ……でも小器用な男より、不器用でいいじゃあないですか。男って奴は! そして土俵上では、【百雲】の左のハリが常を襲う―――!! というところで、ザッと【百雲】の左腕を常は右腕でがっちりホールド!!! これは! まさしく! 小手投げの体勢だ―――!! キタ―――!! 王虎さんに教えたという、伝家の宝刀、小手投げ!! これには支度部屋で見守る王虎さんも、思わずニヤリ!
 「常松(オマエ)らしくない ずい分と泥臭い相撲じゃねーか…」
 あのですね……常の方が5歳ぐらい年上なんすけど……まあ、王虎さんの方が番付も上だし各界入りも先だから、オマエ呼ばわりはアリすね。虎城理事長も「敢えてもらい距離を測っていたか」と常の戦略にご満悦。
 「簡単には終わらねーんだよ…俺は…あの続きを…あの先を…意地張って歩き続けてきてんだよ…」
 という常の意地の小手投げが炸裂する1ページブチ抜きの大ゴマで今週は終わり、でありました。はーーー興奮したわ……。
 まあ、このまま素直に投げられるとは思えない……けれど、常の意地と【百雲】の覚悟のぶつかり合いは大変興奮しますね。来週決着まで行くかしら……どうでしょうね……ホントにもう、二人とも勝たせてあげたいですが、果たして勝者はどちらか、そして敗者に光はもたらされるのか、楽しみに応援したいと存じます。
 それでは最後に、毎週のテンプレを貼って終わります。
 <場所:9月場所>
 【鮫島】東前頭十四枚目(5月場所で東前頭十枚目)
 【白水】西小結
 【松明】東前頭六枚目。常松改め。本場所は7連勝したけどその後は不明
 【大吉】序2段【豆助】序ノ口【目丸手】序二段【川口】不明
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 1日目:【飛天翔】西前頭十二枚目。石川改め。
 2日目:【宝玉光】西前頭十一枚目
 3日目:【舞ノ島】西前頭十枚目
 4日目:【巨桜丸】西前頭九枚目。新入幕力士
 5日目:【岩ノ藤】東前頭七枚目 
 6日目:【大山道】西前頭七枚目
 7日目:【蒼希狼】西前頭六枚目
 8日目:【丈影】東前頭四枚目。横綱の弟弟子
 9日目:【闘海丸】西小結
 10日目:【毘沙門】東前頭五枚目
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 【王虎】&【猛虎】共に東大関
 【天雷】東関脇  【田上】番付不明※王虎の付け人をやってることが判明!!
 【泡影】東横綱。第72代。29場所連続優勝中。64連勝中。モンゴル人。
  他の力士は表にまとめた記事を見て下さい。
 
 というわけで、結論。
 いよいよ佳境に入った常VS【百雲】ですが、ラストの小手投げが勝負を決めるかどうか、大変興奮するところで今週は終わりました。いやー、来週も楽しみですなあ。そういえば、常は7日目まで全勝だったはずですが、その後の8日目と9日目はどうだったんだろうか? 勝ち越して、二ケタ勝って、小結ぐらいに昇進してほしいすねえ。そして、鯉太郎の次の相手が本当に気になりますなあ。VS【天雷】辺りが来てほしいのだが……そして復讐に燃える【猛虎】さんとの本割も絶対実現してほしいすねえ……「……やっとお前に借りを返せる時が来たな……」的なカッコイイ【猛虎】さんがみたいすね。そこんところ、佐藤先生よろしくお願いいたします! 以上。

↓ 一応、毎週ちゃんと観てます。

 昨日、25歳の若者と話をしていて、最近の君のおすすめコミックといえば何を挙げるかね? と質問したところ、この作品が今僕が一番好きな漫画です、と教えてもらった漫画があり、ほほう、そうか、ならば! とさっそく電子書籍版を買って読んだのがこの作品である。


 講談社の「デザート」という少女漫画誌に連載中の、『僕と君の大切な話』という作品である。まあ、いつも通り講談社は第1話を無料公開しているので、公式Webサイトでまずは読んでもらった方がいいだろう。1話と2話が読めるようです。こちら→http://go-dessert.jp/kc/bokukimi/index.html
 お、プロモーション動画も公開されているようだから貼っとくか。

 というわけで、第1話・2話を読み、さらに上記動画を観れば、もはやわたしが何も言わなくともどんな作品なのかはお分かりいただけるものと思う。読書好きでクールな東くん(ただしショックなことに成績は悪いことが(2)巻で判明。おまけに眼鏡も実は伊達らしい)。そしてそんな東くんが大好きでたまらない相沢さん。この二人が、帰りの駅でおしゃべりするだけの漫画(正確に言うと学校の出来事なんかもあるので、駅で話しているだけだけではない)、なので、ドラマチックな展開のようなものは、現状ではまだないようだけれど、その会話の内容が大層面白い、というわけである。
 このような作品だと、よくあるパターンとしては、男子か女子のどちらかが、学内カーストで上位に位置するようなモテモテ人間で、他方がカースト底辺のぱっとしないタイプであり、そのギャップがドラマを生むようなお話が多いような気がする。しかし、本作では、東くんもそれなりにイケメンで友達も普通にいるし、相沢さんも、大好きな東くんに対してはかなりのストーカー体質ではあるものの、実際可愛くて問題があるわけでもない。要するにはた目から見ると、実に美男美女カップルで何の問題もないというか、劇的な何かが起こるような気配はないように思う。
 だが……まあ、読んでもらえばわかる通り、何も問題ないはずなのに、どうも二人の想いは交差しそうで、しない。いや、読んでいる読者とすれば、もう完全に二人はイチャイチャしているというか、お互いが大好きであることは確定的に明らかなのだが、二人はお互い、まだ恥ずかしさが勝ってしまって、仲が進展しない。そりゃあそうだ。彼らはまだ高校2年生で真面目で、まったくの子供だし。そんな、初々しいカップルの会話が物語の中心になるわけだが、これがまたものの見事にかみ合わない。そんなギャップというかすれ違いが笑える、という作品である。
 基本的に男の考えと女子の考え方が違うのは当たり前だが、東くんの生真面目な正論が、普通の女子高生の相沢さんに通じるはずもなく、読んでいて実に微笑ましい。相沢さんは、東くんの話を「へんてこ理論」と思っているのだが、わたしは男なので、東くんの発言はいちいちごもっともというか、理解はできてしまう。おそらく、それを相沢さんが飲み込めるようになるには、あと5年か10年は年を取らないと無理だろう。いや、年齢の問題じゃあないか。女子は永遠に理解不能かもしれないな。これは、東くんも同様で、東くんにも相沢さんの主張する女子の気持ちがさっぱりわからない。ゆえに、東くんは、ぼそっとこんな一言を漏らす。これは上記試し読みの第2話からの引用だ。
 「はあ…常々思っていたことだけど やっぱり僕と君ら女性とは同じ星の人間とは思えない」
 普通はこんなことを好きな男子から言われたら、がっくりするだろうし、あるいはカチンとくるのではなかろうか。しかし、相沢さんの素敵なところは、こんなバッサリ扉を閉じられてしまっても、実に乙女らしいリアクションをしてくれるのである。
 「…でも ならどうして拒まないの? 助けてくれたり こうして話してくれたり なんだか期待してしまうわ」
 相沢さん!!! それはね、東くんが君のことが好きだからですよ!! わたしも、多分に東くん的な部分があるような気がするので、東くんに代わって全て解説して教えてあげたくなりますね。当然、東くんだって、相沢さんにそんなにしょんぼりと言われたら、閉じた扉も開きますよ。ここでの東くんの言葉は、非常にカッコイイというか、わたしでもこんなセリフは言えないぞという大人っぽいものだ。
 「…いや そりゃあまあ普通無視はしないだろう(人として) ただ…誰であれ何の話であれ 自分から会話を閉ざすようなことはしたくないんだ 例えば僕と君が違う星の人間だとして それをつなぐのは言葉だろう だったら こちらから閉ざしてしまうのは余りにもったいない それに 相沢さんとの会話は あまりに自分と違ってなんだか面白い」
 まあ、こんな返事をしてもらえたら、相沢さんもそりゃあ嬉しいでしょうよ。そしてこの第2話のラストがとてもイイですな。せっかくいい雰囲気だったのに、あちゃー……! みたいな、とても笑えるナイスなオチでした。こんな感じで毎話大変楽しめます。
 この作品は現在単行本では(2)巻まで発売されているが、この後、二人の会話は学校内でのお昼休みのお弁当タイムに移り、結構キャラクターも増えてくる。そこで描かれる学校内での東くんの様子や、相沢さんのめげない気持ちなど、実に読んでいて楽しい漫画であることは間違いないと思う。特に、2巻で語られる、どうして相沢さんは東くんを好きになったのか、という話はとても良かった。わたしは大変気に入りました。教えてくれたK君、ありがとう!
 最後に、著者ろびこ先生に関して軽くメモしておくか。ろびこ先生は、アニメ化もされた『となりの怪物くん』で世間的には大変おなじみの方らしいけれど、わたしはアニメも観てなかったし原作コミックも読んでいないので、今回初めてろびこ先生の作品を体験したわけだが、実に絵柄も良く、見開きで描かれる二人の空気感も非情に素晴らしいと感じた。漫画力の大変高い、実力派とお見受けしました。お、『となりの怪物くん』は実写映画にもなるんすね。来年公開予定か。大活躍ですな。

 というわけで、さっさと結論。
 わたしより20歳以上若い青年に教えてもらった『僕と君の大切な話』という作品は、ある意味イマドキであり、ある意味古典的な、大変面白い少女漫画であった。こういう漫画を読むとわたしはいつも、あ―おれも共学に通ってたらなーと思う。まあ、男子校には男子校でしか味わえない青春もあるので、別にどっちがいいなんて全く言えないけれど、そうじゃなかった自分の人生、って奴は、わたしのようなおっさんであっても、つい考えてしまいますな。まあ、ノスタルジーってやつですよ。ともあれ、この『僕と君の大切な時間』という作品は大変面白く、今後も単行本を買い続けようと存じます。実に面白い! 以上。

↓ 全14巻か……今から追うのはちょっとハードル高いか……面白そうなので読みたい……。

 先日、このBlogでとても面白かったと記事を書いた『空挺ドラゴンズ』というコミック作品がある。わたしとしては大変面白いと思うし今後の続刊の発売が待ち遠しい作品の一つなわけだが、その著者である桑原太矩先生の他の作品も読んでみたくなり、探したら『とっかぶ 特別課外活動部』という作品があったので、とりあえず、有無を言わさず全4巻をまとめて買ってみた。そして読んでみたところ、これまた大変好ましい漫画だったわけである。

 おおっと!? 今上記に貼りつけるために検索して初めて知ったが、どうも現在はKindle版の(1)巻が無料配布中みたいだぞ!? なんてこった、期間限定なのかな、ちょっと良くわからないが、とりあえずはその(1)巻を読んでみてほしい。
 なお、講談社のコミックは、第1話が無料公開されている場合が多く、本作も公式Webサイトでは読めるようなので、そちらでもいいかも。第1話だけでも、雰囲気や絵のタッチなどは分かってもらえると思う。こちらです→http://afternoon.moae.jp/lineup/222
 で。どうやらこの作品は「アフタヌーン」で連載されていたのかな? 詳しくは良くわからないけれど、全(4)巻で既に完結済みである。お話の方はというと、『空挺ドラゴンズ』が完全にファンタジー世界であるのに対して、こちらの『とっかぶ』は完全に現代高校生を主人公とするもので、まったくファンタジックな要素はない。物語の大枠は、とある高校で問題児を「社会奉仕」させるために臨時で設立される部活、「特別課外活動部」を舞台に、学校やその周辺で起こる事件を解決したり巻き込まれたりするお話で、なんか今までにもそういう漫画があったような、なかったような、そんな物語である。
 こういう作品だと、最近では部室トーク中心のただ面白いことをしゃべるだけの日常系の漫画が多いような気がするが、本作はきちんと事件が起きて、キャラクターたちが生き生きと?活躍するので、退屈なお喋るに終始するものではない。わたしの印象では、小説の「ハルチカ」シリーズに近い印象だ。まあ、あちらは日常系ミステリー風味が強く、本作はあまりミステリー的ではないけれど、とにかく雰囲気は非常に近しいように思う。
 というわけで、キャラ紹介をざっとやって、完全に記憶が失われたときの備忘録としておこう。各キャラ、とりわけ女子たちが大変魅力的でかわいいし、絵柄も非常に好ましく、実に漫画力の高い作品であろうと思う。
 ◆丹ノ宮 沢(ニノミヤ サワ)。とっかぶの部長。1年1組。通称サワ。好物はイチゴ大福、好きな色は赤!と仁王立ちで自己紹介。ヒーローにあこがれ、本物のヒーローになるためにとっかぶに。別に彼女は何か問題児としてとっかぶに入部させられたわけではない。まさしく戦隊ものの「レッド」が似合うリーダー。「丹」とは、もともと硫化水銀であり、その色は赤色であります。とにかく熱い、熱血女子。実際可愛い。
 ◆倉下清大(クラシタ キヨハル)。1年2組。通称くらげ。スパイになるという幼少の頃からの夢があって、もちろんそれは子供の夢と分かっているけれど、いろいろなハイテク装置や頭脳を駆使して、職員室から試験問題を入手し、それを生徒に売っていた。それが見つかって、とっかぶに強制入部させられた。熱い性格ではなく若干斜に構えている様子はまさしく戦隊ものの「ブルー」。ただし巻を重ねるに従ってどんどんイイ奴成分が濃くなっていきます。
 ◆千歳悠緑(チトセ ユウリ)。1年3組。通称ユーリ。金髪・ピアス・反抗的態度など、退学寸前でとっかぶに入部させられた女子。ただし、実はとてもやさしくイイ子なのはお約束通り。この子も、巻を重ねるにしたがって、どんどんイイ子であることが分かります。戦隊ものの「グリーン」は、基本的には(というかゴレンジャー的には)最年少の活きのいい奴、だけど、ユーリはどちらかというとブルー的なクール系な部分が多いような。でも、とにかく優しくイイ子。実は野球が超上手だったり、バレー部の先輩の幼馴染みとの恋心なんかも(2)巻以降で描かれます。
 こんな三人が活躍するお話で、ほかにも生徒会や先生、それからとっかぶで面倒を見ることになったわんこなども絡んでくる。
 ◆サカヤキ:(1)巻で登場してくるわんこ。その模様が、まるで侍の月代(サカヤキ)のようなので、そう命名された。何気に活躍する。
 ◆日野朝里(ヒノ アサリ)。生徒会書記。サワの幼馴染で保育園からずっと一緒。常識人。眼鏡&ショートカットの可愛い女子。子供のころから委員長体質で、しっかり真面目にしなきゃという癖がついているが、小学校の頃のサワの行動を未だに尊敬している。
 ◆丘町珠緒(マチオカ タマオ)。生徒会副会長で校内一のクールビューティーとして名高い。きちっとしている完璧女子でいつもとっかぶにキーッ!! と怒ってはいる、が、やっぱりこの方も大変イイ人。ツンデレ担当。
 ◆篠田路世(シノダ ミチヨ)。先生。通称みっちゃん。まだ20代なのかな、若くて何気に可愛く、面倒見がいい、ので、生徒には人気があるようだけれど、男運ナシ、らしい。チョイチョイ出てくる。(2)巻かな、みっちゃんのアパートに出没するストーカー退治の話が結構面白い。
 とまあ、上記以外にも、当然男キャラもいっぱい出てくる。例えば生徒会長の栄村さんとか、科学部部長の北野さん(通称ホクノー)とか、ちょっと変わり者も多い。
 そして、とにかく絵が上手で大変可愛らしいんすよね。わたしの趣味的には非常に好ましく、カット割りという演出もいいし、実に漫画力は高い。お話は、(4)巻で、強制入部させられていたくらげ君とユーリが、刑期満了(?)ということでとっかぶから解放され、もうとっかぶでいなくてもいいぞ、という展開になって、一人サワが取り残される流れなのだが、最終的な結末は読んでいて非常に爽やかだし、実に青春であって、おっさんのわたしにも大いに楽しめた。大変気持ちのいいエンディングだったと思う。

 というわけで、さっさと結論。
 『空挺ドラゴンズ』が気に入った方には、同じ桑原先生による『とっかぶ 特別課外活動部』という漫画もお勧めであります。ただ、ここまで絶賛しておいてアレですが、感動するとか、超大好き、とか熱烈なおススメではないかも。とにかく爽やかで気持ちのいい漫画であることだけは保証します。たぶん。以上。

↓ なんか、空気感が似ているような気がします。



 というわけで、毎週月曜日は恒例の週末映画興行データです。
 この週末は、Denis Villeneuve監督の『メッセージ』を観て来ました。詳しいことは金曜日の記事を見てもらうとして、非常に難解、だとは思う、けど、映画としてのクオリティが極めて高く、わたしとしては現時点での2017年ナンバーワン、に認定しました。あくまで現時点での、ですが。Denis監督はケベック出身だそうで、「デニス」じゃなくて「ドゥニ」と読むらしいすね。そしてDenis監督の次回作『BLADE RUNNER2049』への期待がますます高まりますな。この監督、わたしが現在最も注目する監督の一人です。
 まあどうでもいい前振りはさっさと切り上げ、とっとと興行通信社の大本営発表をメモっておきます。そして今週は、おまけとして先週発表になった東映の本決算数値もメモしておこう、と思ったら、そういえば東宝・松竹(※この2社は2月決算なので4月にとっくに開示済み)の年次決算数値もまとめてないことに気が付いたので、3社まとめて数字をメモっときます。

 1位:『美女と野獣』がV5達成。30日間で89.1億だそうです。先週末時点から+10億ぐらいか。週末だけで4.3億稼いだそうです。すげえですなあ。意外と今のところの数字の推移は『SW:EP VII』に似てますね。SWは116.3億で打ち止めでしたが、果たしてどこまで伸びるのでしょうか。
 2位:『名探偵コナン から紅の恋歌』も好調維持で37日間で61億突破だそうです。これはもうホントにただただすげえとしか言いようがないす。
 3位:『ピーチガール』が公開土日で1.49億スタートだそうです。原作は別フレ、かな。とっくに完結済みで、アニメになったのも、もうだいぶ前……そうか、2005年だそうです。おおぅ、12年も前か。今は10年後だかの続編「NEXT」がBE-LOVEで連載中なのかな。あれっ!? 全然知らなかったけど、台湾でTVドラマにもなってたんだ。へえ~。
 4位:『ワイルド・スピード ICE BREAK』が24日間で……ホントわからないな……34~35億くらいと見積もる。先週末時点で31億+平日2億+土日1.3億、というテキトー見積もりです。派手に間違ってる可能性もあるので、正解が分かったら修正するかも。
 5位:『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー リミックス』が10日間で6~7~8億ぐらいと見積もるが……全然自信なしです。先週末時点で3.3億+今週末はこの位置だと1億チョイ+平日はまだ2週目だから2~3億、としても上限が7億チョイ、下手すると6億チョイ手前もありうるか、という計算ですが……もっと売れてほしいなあ……。
 6位:『君のまなざし』が公開土日で1.26億。宗教団体謹製作品。特にコメントないす。
 7位:『メッセージ』が数字がないので公開土日で1億いったかどうか。金曜から公開しているけど、3日間でもやっと1億チョイ~2億弱程度ではなかろうか。冒頭に書いた通り、現状のオレ的2017年1位す。5億届かないのかなあ……。
 8位:『帝一の國』が23日間で14~15億くらいと見積もる。わたしの想像よりも全然いい数字で脱帽す。
 9位:『追憶』が16日間で7~8億ぐらいと見積もる。こちらは数字としては苦戦と言わざるを得ないすねえ……。
  10位:『たたら侍』が公開土日でこれも数千万というところなのでしょう。EXILE-Tribeの皆さんの作品ですが、大ヒットした『HiGH&LOW』と比べてしまうと、ちょっと数字的には淋しいか……。時代劇だと若者は敬遠してしまうのかなあ。おっさんが観ると普通に面白そうではあります。

 とまあこんな週末でありました。
 で。
 先々週は、いわゆる決算発表が多くの上場企業でなされたわけですが、東映は先週5/15に2017年3月期の決算数値が発表されました。一応、東映もアナリスト向けの決算説明会を実施しているようですが、その場で使った資料の開示はないみたい。東宝はちゃんと決算説明会資料もWebサイトで開示してるのにね。そして松竹は、そういった決算説明会は開催してないようです。おそらくはアナリストも誰も注目してないため、開催の要請もないか、あっても無視してるのだろう。そして、いわゆる「中期経営計画」をきちんと発表しているのも東宝だけか。まあ、この点だけでも会社の格が分かるというものですな。というわけで、数字は以下の通りです。気が付かずにタイプミスしている可能性もあるので、かならず短信を自分の目でチェックしてください。
 ◆東宝:2017年2月期(2016年3月~2017年2月)決算
  売上高合計:233,548百万(前期比101.8%、+41億)
  営 業 利 益:50,223百万(前期比123.4%、+95億)
  営業利益率:21.5%(前期比+3.7pt上昇)
  経 常 利 益:51,562百万(前期比121.4%)
  親当期純利益:33,252百万(前期比128.7%)
 <セグメント別 ※内部売上・振替等控除後>
  ■映画事業
  売上/154,573百万(前期比102.1%、+32億、売上構成比66.1%)
  セグメント利益/33,775百万(前期比129.5%、+76億!構成比67.2%)
  ■演劇事業
  売上/15,586百万(前期比104.0%、+6億、売上構成比6.7%)
  セグメント利益/3,268百万(前期比92.8%、▲2億 構成比6.5%)
  ■不動産事業
  売上/61,442百万(前期比98.9%、▲6億、売上構成比26.3%)
  セグメント利益/16,830百万(前期比113.8%、+20億!構成比33.5%)
 「その他」は実際良くわからんので割愛します。まず本業の映画部門が絶好調。なにしろ売上の増加+32億よりも利益の増加+76億の方が大きいんだから、これはよっぽどの構造改革なんだろう。要するに経費節減、か。これが下請けたたき、製作委員会たたきの成果でないことを祈りたいすね。そして不動産も売上は落としても利益が爆上げ、という数字になっている。これは何か特殊要因があるのかな。東宝のすごいところは、営業利益率が20%を超えるという高い水準にあることで、以下の松竹東映と比べて、如何に東宝の一人勝ちかは、数字的に明らかだろう。世界レベルで観ればまったく大したことはないけれど、日本国内に限ってはすごいです。こんなに営業利益率が上がったのはここ数年の話で、まさにその、ここ数年で、決算説明会をきちんとやったり、中期経営計画を発表したりと経営自体の質が上がっているのも注目に値すると思う。また、今年秋の上野、来年の日比谷、そしてその先2020年の池袋、と着々と都内主要ターミナルにきっちり劇場を配し、もはや万全の横綱相撲ぶりは、ホントにもう、隙がないすね。更にもう一つ、このBlogでさんざん取り上げているけれど、2013年頃から「東宝がアニメに本気になった」点も大きいと思う。正確に言うと、TVをスタート地点とするいわゆるコア層向け向けアニメ、に東宝が本気になったということで、今回の開示資料で、かなり細かいデータがあったのでメモしておくと、「アニメ製作」という収入が当期は約80億あって、これは前期比197.5%の伸びだ。すげえなあ。
 
 飽きてきたので、もう松竹と東映は数字だけで流します。あまり得るものがないので。

 ◆松竹:2017年2月期(2016年3月~2017年2月)決算
  売上高合計:96,173百万(前期比104.0%、+36億)
  営 業 利 益:7,540百万(前期比101.8%、+1.3億)
  営業利益率:7.8%(前期比▲0.16pt悪化)
  経 常 利 益:6,626百万(前期比100.8%)
  親当期純利益:3,710百万(前期比95.2%)
 <セグメント別 ※内部売上・振替等控除後>
  ■映画事業
  売上/54,719百万(前期比107.6%、+38.9億!売上構成比56.8%)
  セグメント利益/3,139百万(前期比114.5%、+3.9億、構成比41.6%)
  ■演劇事業
  売上/25,142百万(前期比97.6%、▲6億、売上構成比26.1%)
  セグメント利益/2,413百万(前期比90.8%、▲2.4億 構成比32.0%)
  ■不動産事業
  売上/10,245百万(前期比100.7%、+0.7億、売上構成比10.6%)
  セグメント利益/4,319百万(前期比103.2%、+1.3億、構成比57.2%)
 こうしてみると松竹は不動産で持ってる会社ですね。不動産の利益が全社の半分以上。そして歌舞伎をはじめとする演劇も、前年割れではあるけど、基盤を支えてるわけだ。

 ◆東映:2017年3月期(2016年4月~2017年3月)決算
  売上高合計:128,411百万(前期比104.5%、+55億!)
  営 業 利 益:17,462百万(前期比108.9%、+14億)
  営業利益率:13.5%(前期比+0.5pt上昇)
  経 常 利 益:20,046百万(前期比107.6%)
  親当期純利益:10,959百万(前期比126.1%)
 <セグメント別 ※内部売上・振替等控除後>
  ■映像関連事業
  売上/83,129百万(前期比111.5%、+85.8億!売上構成比64.7%)
  セグメント利益/14,220百万(前期比122.3%、+26億!構成比81.4%)
  ■興行関連事業
  売上/20,408百万(前期比110.2%、+19億、売上構成比15.8%)
  セグメント利益/1,982百万(前期比140.1%、5.6億 構成比11.3%)
  ■催事関連事業
  売上/9,078百万(前期比100.5%、+0.5億、売上構成比7.0%)
  セグメント利益/1,057百万(前期比73.0%、▲3.9億、構成比6.0%)
  ■刊行不動産関連事業
  売上/6,331百万(前期比102.9%、+1.8億、売上構成比4.9%)
  セグメント利益/2,658百万(前期比101.3%、+0.3億、構成比15.2%)
 東映も増収増益で良かった良かっただけど、東映はセグメント設計が独特で、そもそも売上占有10%以下のものをセグメントにしてもあまり意味がないというか、子会社ごとにセグメントを設定しているのかもしれない。まあ、あまり深く考えてないように見える。東映や松竹同様、映像と興行はくっつけちゃえばいいのに。でも、東映は演劇を持ってないから、それで興行を独立させたいんだろうと想像する。わからんけど。いずれにせよ、本業は映像事業で、利益的には8割以上をそこで稼いでるわけだ。あと、セグメントとして「建物内装事業」というのも設定していて、売上は大きいけど利益はちょぼちょぼなので省略。ちなみに、比較する意味は全くありませんが、先週書いた通り、東映1年間の売上1,284億円よりも『美女と野獣』は全世界で多くの金(現状12.2億ドル=1,356億円)を稼いでます。すげえなあ、ホント。

 とまあ、結論は特にないのだが、企業としての事業構造というか、ポートフォリオはだいぶ違うわけです。まあ、こういう、いわゆる「コンテンツ事業」というものは、その年のヒット作の有無で業績が上下するわけだけれど、やっぱり東宝が一番まともな経営をしてますね。松竹も東映も、毎年業績見込みがテキトーだし。いや、その辺は東宝もそれほど立派じゃないか。だた、東宝の高い利益率と、多角的なコンテンツ創出・コンテンツ利用は流石ですな。

 というわけで、今週の結論。
 『美女と野獣』の好調維持。『コナン』君も順調に歴代最高へ邁進中。そして『ガーディアンズ』がちょっと寂しい数字になりそう……残念す。国内3社の決算は基本的にはどこも増収増益でよかったね、という感じ。ただし、東宝の一人勝ちはますます際立つ、てな内容でした。以上。

 はーーーやっぱすげえなあ……
 と、いうのが、昨日3回目の観劇となった、宝塚歌劇・星組公演『THE SCARLET PIMPERNEL~スカーレット・ピンパーネル』の感想である。そしてもちろん、わたしが「すげえ」というのは、わたしが一番応援している礼真琴さん(以下「こっちん」と略)の歌唱力である。たぶん、まったく宝塚歌劇に興味がない人が聴いても、間違いなく10人中10人が、その歌唱力に凄いと感じるのではなかろうか。
 というわけで、もはや3回目なので、書くことがないのだが、愛するこっちん演じるショーヴラン氏のカッコよくも残念なセリフと、男目線からすれば、ちょっとヒドイよ!と言いたくなるヒロイン・マルグリットの塩対応をいくつかメモして短く終わりにします。

 しかし、やっぱり物語的には結構突っ込みどころが多いんだよな……それでも歌が素晴らしすぎて文句を言うつもりはありません。物語としては、フランス革命期の1794年、ルイ16世とマリー・アントワネットをギロチンで処刑し、ロベスピエール率いるジャコバン党が革命政府として実権を握っていた時代、イギリス貴族のパーシヴァル・ブレイクニー(通称:パーシー)が、「スカーレット・ピンパーネル団」という秘密組織を結成して、フランス貴族がイギリスへ亡命するのを助けるというものである。パーシーは、あえてお気楽でおバカな男であると周りに思わせながら、ひそかにルイ16世の遺児、ルイ・シャルル奪還を目指していた―――というのがメインストーリーで、妻となった元コメディ・フランセーズの女優マルグリットにも正体を隠しながら活動を続けていて、その秘密が夫婦の仲に亀裂をもたらす、が、最終的にはめでたしめでたしとなる宝塚らしいお話だ。
 で、問題のショーヴランという男は、革命政府でロベス・ピエールの手足となって働く公安委員会の将校的な男で、元々は貴族に虐げられていた下層市民出身であり、革命初期は革命の女闘士として名を馳せていたマルグリットと付き合っていた(?)ようで、要するにマルグリットの元カレである。
 そんな3人を軸に物語は展開されるのだが、まあ、とにかくショーヴラン氏が気の毒で……。というわけで、その名言というか残念なセリフを3つ、紹介しよう。なお、わたしの記憶にあるものなので、正確なセリフと微妙に言葉が違うと思います。

 <マルグリットがパーシーと結婚することを知り、若干まじかよ的な気持ちながら、とあるフランス貴族の居場所を教えろ、と脅した後のセリフ>
 マルグリット:もう、あなたには二度と会いたくないわ!
 ショーヴラン:(ニヤリ……)ふん……オレはまた会いたいね……!

 <フランス革命政府全権大使として、イギリスにわたったショーブラン。プリンス・オブ・ウェールズ主催の仮面舞踏会で、マルグリットに出会い、この舞踏会にスカーレット・ピンパーネルが来ているはずだから、オレに代わって情報収集しろ、でないと弟をぶっ殺す、と脅した時のセリフ>
 マルグリット:そんな、わたしにはできないわ!
 ショーヴラン:(お前は女優だろう? というニヤリな顔で)演ずるんだ、あざむけ! 弟のために!!
 マルグリット:あなたは……地獄に落ちているわ!
 ショーヴラン:(クックック……何とでも言うがいい、な表情)

 <ラスト近く、何もかもうまくいかず、ルイ・シャルルの身柄を奪還されてしまったショーヴラン氏。そこにダメ押し的なマルグリットのキッツイ一言>
 マルグリット:わたしが愛したのは、革命の夢!あなたはその一部分でしかないわ!
 (※追記:↑のマルグリットのセリフは1幕のロンドンにやってきたショーヴ氏に言うセリフでした。ラストじゃなくわたしの勘違いす。このセリフの後、ショーヴ氏は「君はどこに」をちくしょーとばかりに熱く歌う)
 ショーヴラン:(わなわな……)このオレを……愛したことはなかったというのか……!?
 マルグリット:(ショーヴランを見ず、くるっと正面(というか客席)を見て)ないわっ!!
 ショーブラン:(ガーン!とショック)……ククク……わっはっは! そうか、ならばその真実の愛とやらを堪能するがいい!!
 
 いやあ、もう、そういわれたら笑って、勝手にしろ、お幸せにな、としか言いようがないすよ、男としては。つらいす(笑。しかし、貴族に対して革命を起こしたくせに、貴族と結婚するマルグリット……これまた男目線からすると……やっぱり理解できないす。

 というわけで、さっさと結論。
 3回目となる『THE SCARLET PIMPERNEL~スカーレット・ピンパーネル』だったが、回を重ねるたびに、わが愛しのこっちんはどんどんと凄みを増しているように見える……というのはファン目線の贔屓目だろうか。いいのそれでも。とにかくこっちんは最強に歌がうまく、カッコイイのでありました。そして、ショーヴ氏は何度見ても、気の毒ですw
 わたしの希望としては、こっちんには2024年の、宝塚110周年の時に、星組のTOPスターでいてほしいのだが……仮に5年とか長期政権を築くとしても、2019年ぐらいにTOPになり、2020年もTOPに君臨し、2024年の110周年をTOPで迎え、10年ごとに開催される運動会にも参加してほしいものです。なので、紅子さんにはぜひ、2019年前半まではTOPでいてほしいなあ。勝手な願望、サーセン。以上。

↓ なんかやっぱり読んどいたほうがいいような気がする……原作小説です。
紅はこべ (創元推理文庫 507-1)
バロネス・オルツィ
東京創元社
1970-05

 いやーーー。これは難しい。そして素晴らしい! 今年2017年の暫定1位だな。
 なんの話かって!? 映画『ARRIVAL』(邦題:メッセージ)を今日会社帰りに観てきたのだが、その感想である。これは相当歯ごたえあるぞ……そして、映画としての出来はものすごくイイ! 撮影、そして音楽(というより音響設計か)。実にクオリティが高い。いやはや、素晴らしかった。
 そして、わたしは実に愚かなことに、本作が有名なSF小説が原作だということを全然知らなかった。知ってれば読んでから観に行ったのに……ちくしょー! 原作小説に関するプロモーションってあったのかなあ? 有名な作品らしいが、わたし、恥ずかしながら読んだことのない小説で、その作品の名は『Story of Your Life』(邦題:あなたの人生の物語)。わたしの大好きな早川書房から発売されているので、わたしは帰りの電車内で即、電子書籍版を買いました。くっそーーー読んでから観るべきだったかもなあ……。
あなたの人生の物語
テッド チャン
早川書房
2014-09-30

 なぜそう思うかというと、冒頭に記したように、本作『ARRIVAL』は、正直かなり理解が難しい、非常に歯ごたえのある作品なのだ。もちろん、きちんとストーリーは追えるし、あ、そういうことなんだ!? という最終的なオチというか結末も、ちゃんと映画を観ていれば理解できるとは思う。しかし、ええと、ホントにオレの理解は合ってるのかな? と自信が持てないんすよね……。
 一応、パンフレットを読む限り(パンフには結構詳しい解説が何本も収録されているのでおススメ!)、わたしの理解は正解だったようだが、やっぱり、これはさっそく買った原作を読んでみた方がいいような気がしますね。多分この映画、ゆとりKIDSには全く理解できないと思う。これはホント、早川文庫が似合う、正統派なハードSFですよ。以上。
 で、終わらせるにはまだまだ語りたいことがいっぱいあるので、まずはいつも通り予告を貼り付けて、以下で少し語らせていただくッッッ!! もちろんネタバレもあると思うので、読む場合は自己責任でお願いします。

 今回は、この映画について、いくつかのポイントに絞って、その素晴らしさを記録に残しておこう。いやあ、すげえクオリティですよ。こいつは本物だ。
 【1.物語】
 まあ、物語としては、上記予告の通りである。ある日突然、地球に飛来した謎の宇宙船。しかも12機が地球の各地に「同時に」降り立った(※ちなみに日本(の北海道)にもやって来る)。しかし、地上から数メートルのところで静止し、とりわけ何もアクションを起こさない。世界各国は調査にあたるが、US国内にやってきた宇宙船の調査には、まずはコミュニケーションをとるため、言語学者のルイーズが選ばれる。そして、重力制御された宇宙船内で異星人とのコミュニケーションが始まるのだが―――というお話である。
 わたしも、上記予告はさんざん何度も見ていたので、おそらく物語のカギは、「一体全体、なにをしにやってきたのか?」という点にあるのだろうと予想していた。
 まあ、その予想は誰でもできるし、実際上記予告にもそう書いてあるのだが、最終的に明かされる「目的」について、正確な理解はちょっと難しいと思う。なにしろ、彼らは我々地球人と全く異なる思考をする生命体だ。それを、地球人の常識で計ろうとしても、そりゃあ難しいに決まっている。一番のカギになるのは「時間」の概念なのだが、我々地球人が、時間は一直線に流れ、不可逆なものと考えている一方で、異星人たちはそうではない。それがだんだんわかる仕掛けになっているのである。
 そして、それが決定的に判明するのはかなり後半だ。わたしは中盤のルイーズのある一言(「科学のことはお父さんに聞きなさい」のシーン。これは白黒反転させておきます)で、えっ!? ちょっと待った、てことは……まさか!? と仕組みが理解できたのだが、ここは相当注意深く観ていないと難しいと思う。実は冒頭から、ルイーズは愛する子を病気で亡くし、深い失意にある、というような、その愛する娘とのシーンが何度も何度もフラッシュバックで描かれるのだが、その意味が分かるラストは、やられた――!! やっぱりそういうことなのか!!! と誰しもが驚くものだと思う。
 ただ、最終的にわかっても、この作品は、そういう「理解するのが非常に難しい」という意味において、素晴らしい脚本だったと称賛すべきか、トリッキーで不親切な脚本で、もうチョイ説明が欲しかったと思うべきか、わたしとしては正直微妙だと感じた。観終わった後でも、じゃあなんで……? という疑問がわたしには結構多く残っている。ある意味、ぶった切りのエンディングと言ってもいいぐらいかもしれない。少なくとも万人向け、ではないと思う。
 しかし、だからと言ってつまらなかったとはこれっぽっちも思わない。それは、この難解な物語を支える、映画としての技術的なポイントが、おっそろしく高品位で、すさまじくクオリティが高いからである。
 【2.演出、撮影・映像そのもの】
 ちょっと前に、この作品のメイキング的な映像をチラッと観たけれど、画面は全く自然で本物そのものにしか見えないのだが、宇宙船をはじめ、実はすさまじくCGバリバリである。そして、宇宙船の全貌が画面に現れるまでの、チラ見せ具合も大変上品かつ上質だ。この映画はなるべくデカいスクリーンで観た方がいいと思う。その圧倒的な存在感は本当にそこに存在するようにしか見えないし、完璧に計算されてCG処理された風景の色味、それから雲、時にすごいスピードで画面を横切る戦闘機やヘリなど、まさしく本物にしか見えないCGは超見事である。宇宙船の巨大感も申し分なしで、これは日本の映画界では絶対に撮れない画だ。なんというか、マグリットの絵画を実写化したような、まさしく超現実(シュール・レアリスム)で、わたしはもう大興奮である。
 また、異星人の描写も、当然フルCGだと思うが、もう本当に生きているとしか思えない質感だし(デザイン的にも超秀逸!)、スモーク越しに現れる映像・演出も実に品がある。重要なキーとなる、異星人の描く文字も、そのデザインや描かれた方も、書道をたしなむ我々日本人には完璧に美しく、お見事だ。
 とにかく、本物そのもの、圧倒的な存在感。そして、全編に漂う、尋常ではない「緊張感」。わたしはこの映画を撮ったDenis Villeneuve監督の作品を観るのは4本目だが、去年、Denis監督の前作『SICARIO』を観た時もこのBlogで書いたけれど、その映像には、まるでJOJOで言うところの「ゴゴゴゴゴ」「ドドドドド」という書き文字が見えるような、あの緊張感が常に感じられるのが、Denis Villeneuve監督の作品に共通する特徴であろう。これは、観てもらわないと伝わらないだろうなあ。多分、観てもらえればわたしが言いたいことは通じるような気がする。この、Denis監督の作品に共通する「画面から伝わる緊張感」に非常に大きな役割を果たしているとわたしが考えているのは、音楽、音響設計、というか音そのものである。
 【3.音楽、音響設計、音そのもの】
 本作は、冒頭、非常に印象的な、弦楽器の奏でる音楽から始まる。わたしは音楽にはさっぱり詳しくないのでわからないのだが、おそらくはヴィオラかチェロで奏でられる、重く低い曲。それはエンドクレジットによるとMax Richterというドイツ(生まれのイギリス)人の「On The Nature of Daylight」という曲だそうだ。お、公式動画があるみたいだから貼っとこう。

 この非常に印象に残る曲から始まる本作は、これもDenis監督作品に共通してみられる特徴なのだが、とにかく音の使い方が非常に素晴らしい。まったくの無音部分とのコントラスト、メリハリもきっちり効いていて、映像に緊張感を与えることに成功しているとわたしは思う。冒頭、主人公ルイーズが大学から外に出て、空には戦闘機が行きかい、いったい何事が起きているんだ? という最初のドキドキ感は本当に素晴らしいし、その緊張感は最後まで貫かれていると思う。ズズズズズ……ビリビリビリ……といった、ある意味では不快な重低音が重要なシーンでは常に背後に流れていて、観ている我々の不安を掻き立て、ドキドキさせるわけで、その使い方は、下手を打つと不愉快なものになるけれど、Denis監督の使い方は決してそんなことにならない。本作は、今年2月のアカデミー賞で作品賞をはじめ8部門でノミネートされたが、受賞できたのは音響編集賞のみ、であった。実にお見事であるし、この特徴は少なくともわたしが観た4本すべてに共通する、Denis監督の目印といってもいいだろう。おそらくは、Denis監督の次回作、『BLADERUNNER2049』においても、まず間違いなく発揮されるであろうと思うので、ぜひその点はチェックしたいと思う。

 というわけで、物語・映像・音楽(音そのもの)の3点について、まあテキトーなことを書いたが、役者陣の熱演ももちろん素晴らしい。今回は3人だけ挙げておこう。
 まずは主人公ルイーズを演じた、Amy Adamsさん42歳。おぅ……マジか、もう40超えてるのか……わたしがこの人が演じた中で一番好きな映画は、もちろん『Enchanted』(邦題:魔法にかけられて)だろう。あのジゼル姫は最高でしたなあ。2007年公開だからもう10年前か。最近では、DCヒーロー作品でスーパーマンの恋人、ロイス役でおなじみだけど、すっかり年を感じさせるというか……最近はちょっとアレすね……。でも『her』でのAmyさんはホントに可愛かったので、髪形やメイクで随分変わるんだと思う。本作では、若干疲れたような40代女子であったけれど、その美しく澄んだBlue Eyesが非常に印象的であった。そして娘とのシーンや、すべてを理解した時の表情、大変素晴らしかったと思う。
 次は、わたしの大好きなMCUにおけるHawk EyeでおなじみのJeremy Renner氏46歳。彼は、出世作『The Hurt Locker』でのジェームズ軍曹役や、今やレギュラーとなった『Mission Impossible』シリーズ、あるいはMCUでのHawk Eyeでもおなじみのように、不敵で抜け目ない男という印象が強いけれど、今回は知的な科学者である。登場時はちょっと生意気ないつものRenner氏だが、だんだんとルイーズに惹かれ、協力していく今までとはちょっと違う役柄であったようにお見受けした。本作では実はほぼ活躍しない、けれど、物語において重要な役割で、それが判明する流れはお見事である。まあ、この人の演技ぶりはほぼ関係なく、脚本のおかげだけど。
 最後。調査班の現場責任者?の軍人を演じたのが、ベテランForest Whitker氏55歳。わたしがこの人を知ったのは、かの名作『PLATOON』だが、ホントこの人、若いころは鶴瓶師匠そっくりだったんですが、最近ではすっかり渋い、脇を固める大ベテランですな。声に特徴のある人で、妙にカン高いんすよね。『ROGUE ONE』でのソウ・ゲレラ役も渋かったすねえ。まあ、役的にかなり微妙だったけど。彼もまた、本作ではほぼ何も活躍はしません、が、やっぱり非常に印象に残る芝居ぶりだったと思う。もうチョイ、活躍してほしかったなあ。
 
 最後に、ここまで絶賛しておいてアレですが、ここはちょっとなあ……という点も3つ挙げておこう。まず、一つ目がズバリ、中国に対する扱いだ。本作では、地球に飛来した12機の宇宙船の一つが、上海に現れ、あの国だけ宇宙船に対して好戦的というか、軍事行動を起こそうとする流れになる。ま、それに乗っかるロシアもおそろしあだが、その中国でキーとなるのが、軍人のなんとか将軍なのだが……あの国のシステムにおいて、あんなに軍人が突出して行動を開始しようとするなんてことがありえるのかな? いや、あり得るのか、あの国だからこそ。なんか、なんとか将軍が大物なんだか実感がわきにくかったす。
 二つ目のわたし的いちゃもんは、邦題である。なんなの「メッセージ」って。なんで「アライヴァル」じゃ駄目だったんだ? 作中では、arrivalという単語は何回も出てくる。ほぼ毎回「出現」という字幕がついてたかな。いっぽうのmessageという単語は、わたしのヒアリング能力では1度も出てこなかったように思う(字幕では1回だけあった)。メッセージ……どうかなあ……。物語的にも違う、ような気がするのだが……。arrivalというタイトルの意味は、わたしなりに思うところがあるのだが、これはクリティカルなネタバレすぎるので書くのはやめときます。とにかく、メッセージは違う、と思ったことだけ記しておこう。
 最後、三つ目のわたし的いちゃもんは……これは、完全に映画オタクとしてのどうでもいい文句なのだが……わたしはマジで、結構腹が立ったので書いておくけれど……あのですね、わたしはもう35年以上映画館に通う、40代後半のおっさん映画オタなんですよ。せっせと劇場に通い、パンフも必ず買う、業界的には模範的というか、大切にしてもらってしかるべき、だとすら思うオタク野郎なわけです。なので、言わせてもらいますが……あのさあ! パンフレット! 変なサイズにするのやめてよ!!! 保管するのに困るんだよ、妙に小さい判型は!!! そりゃあね、デザインに凝りたくなる気持ちはよーくわかりますよ? でもね、配給会社の皆さん、そんなデザイナーのこだわりなんて、まったく迷惑以外の何物でもないんすよ、購買者にとっては。今、入場者のどれぐらいがパンフ買ってくれるか、ちゃんとデータ取ってるでしょ? どんどん減っているって、知ってるでしょ? そして買ってるのが、もはや希少種のオタク野郎だけだって、分かってるでしょ? せっかく内容的には読みがいのあるいいパンフなのに、このふざけた判型だけはホント許せんわ……!! はーー。興奮してサーセン。邦題といい、パンフの判型といい、さらに言えばUS公開から半年経っての公開といい……SONYピクチャーズの人々は大いに反省していただきたいものです。

 というわけで、結論。
 わたしが今、一番注目している映画監督、Denis Villeneuve監督による『ARRIVAL』が、US公開から半年経ってやっと公開されたので、初日の金曜夜、早速観てきた。そのクオリティはすさまじく、極めて上物であったのは間違いない。そしてその物語にも大興奮だったわけだが、一方で、この映画が万人向けかというと、その難解な物語はかなりハードルは高いように思えた。しかしそれでも、わたしとしては、現時点における今年ナンバーワンに認定したいと思う。こいつはすごい。この作品を観ると、もう、Denis監督の次回作『BLADERUNNER2049』に対する期待がいやがうえにも高まりますな!! SONYよ、BLADERUNNERのパンフの判型がまーた変なサイズだったら許さないぞ。1982年のオリジナルのパンフ、貸してあげてもいいので、ちゃんと研究してくれ。頼むよマジで。以上。

↓ わたしは中学生の時、たしか臨海学校から帰ってきた翌日に、今は亡き東銀座に存在した「松竹セントラル」という映画館にチャリで観に行きました。いろんなVerがあるけれど、当然、劇場公開版が正典です。ファイナルカットじぇねえっつーの。

 というわけで、毎週木曜日は『鮫島』ニュースのお時間です。
 つーかですね、いよいよ開幕した大相撲平成29年5月場所、通称夏場所ですが、なかなか波乱の展開であります。昨日4日目終了時点で、横綱・稀勢の里関は2敗。やっぱりどうも左が万全ではないようですな。しかし弟弟子の高安関が元気いっぱいです。今場所でいい成績を残せば大関昇進となるわけで、大変期待できそうです。一方で、わたしの応援する黒ブタくんこと松鳳山関は未だ勝ち星なしの4戦4敗。大変心配ですが、どうか頑張って! そしていよいよ公開された「北斗三兄弟」の化粧まわしですが、よく考えたら当たり前だけど……横綱は、その名の通りぶっとい綱(注連縄)を締めて、さらに紙垂をつけているわけで……凛々しく描かれたラオウ様がまるで見えない!のは大変残念です。まあしょうがないすけど……でも、露払いを務める松鳳山関の化粧まわしに描かれたトキはカッコイイすねえ!! 裕也よ、その化粧まわしにふさわしいカッコイイ力士になるのだぞ!
 はー。以上。では、まずは週刊少年チャンピオン2017年25号の概況です。
 ■巻頭グラビア:宮本佳林嬢。ハロプロの方だそうで大変お可愛いですな。
 ■『弱虫ペダル』:橋の上の決着!!の巻。えーと、ちょっと無理があるような……。 
 ■『刃牙道』:侠客立ちの巻。えーと、この話、もう何回目だろうか……。
 ■『BEASTERS』:ボディガードは神妙にの巻。狙われるルイ先輩、守るレゴシの巻。
 ■『囚人リク』:荷物の巻。やっと合流したリクとレノマ。さっさと移動しないと!
 ■『Gメン』:兄の懺悔の巻。なかなかイイお約束展開ですね。
 てな感じの週刊少年チャンピオンでありました。
 
 さて。それでは今週の『鮫島』ニュースをお送りいたします。今週は巻頭カラーですよ! 何とも晴れやかで華やかな、まさしく初夏といった浴衣姿の空流の戦士たちが見開きカラーで描かれていますので、これはぜひチャンピオンを買ってご確認ください! 電子書籍だと、見開きの絵は切れ目がなく大変美しい一枚絵として観ることができますなあ。
 前話では、【百雲】関の悲痛(?)な決意が描かれ、いよいよ対する【松明】関こと常松との取組は時間いっぱい、ハッキョイ、までが描かれました。今週は、数秒時間をさかのぼって、時間いっぱいから、NHKアナが虎城理事長に、勝負のポイントは、と話を振るところから始まります。理事長曰く、出だしは【百雲】がエルボーをモロに当ててカチ上げに来るだろうから、【松明】がそれにどううまく対応するかでしょうな、だそうです。そして土俵上の常松も、同じことを考えています。さすがデータ力士、【百雲】の放つ嫌な気を当てられても冷静ですね。常も、「もらえば間違いなくアウト……」と【百雲】のエルボーアタックは警戒していますが、「一見ただ粗いだけの粗悪な戦法に思えるが 恐怖を主体にした隙の少ないよく考えられた攻め」と【百雲】の戦型の本質をちゃんとわかっているようです。空流の軍師と言われるだけありますな。そして、それが分かっていて、なら必要なのは……と常は決意の表情、いよいよハッキョイ、正面から二人は立ち合います! その真っ向勝負に【百雲】は「アホが…」と容赦ないエルボー。しかし! 我々は知っています! 常の右肩のこぶの意味を! そうです! 常もまた、右ショルダーアタックでのカチ上げを得意とする男ですよ! 常の右ほほをかすめる【百雲】のエルボー。そして下から【百雲】の右腕を、常は右肩でカチ上げます! よっしゃ! いいぞ! NHKアナも、あ―――!!?と絶叫、虎城理事長も、やるな、的なお顔です。そして! なんとその常のカチ上げに、あの男がこんなことを言います!
 「フッ…勇気あるじゃねーか…常松…」
 なんとここで王虎さんからまさかのお誉めのお言葉です! 王虎さん! なんか宮田くんみたいじゃないですか! ヤバイ、王虎さんがどんどんカッコ良くなっていく! まあ、王虎さんと常の因縁ももはや懐かしいですな。わたし的には今週はこの1コマでもう満足です。
 そしてこの後は、【百雲】と常のハイスピード&レベルの高い戦いが繰り広げられます。左を取りたい常、そしてそうはさせじと攻撃を繰り出す【百雲】。その応酬を制したのは常です。とうとう左をがっちりホールド! 場内大歓声、松明(まつあかり)コールが国技館に響き渡ります!
 しかし―――。ここで一人、大歓声の国技館で呆然とする男がいました。そうです。常のクソ親父です。ここから親父の現役時代の回想に入ります。なんと、現役時代の四股名【松明(たいまつ)】の名付け親は、当時の大関【火竜】、すなわち鯉太郎の父であることが明かされました。そういや【火竜】は虎城理事長こと元横綱【虎城】と同部屋だったので、横綱【虎城】の付け人だった常の親父とも同部屋だったわけすね。そしてどうやら、当時は常の親父は【火竜】と仲が良かったようで、
 「おうよ…生き様に火を点けて燃え上がるのよ 土俵でな…」という思いがこもった四股名【松明(たいまつ)】だったそうです。しかし現在の国技館に響く【松明(まつあかり)】コールを聞いて、常の親父の脳裏には当時のことが思い出されます。必死に稽古を積んできたのに、なかなかいい成績が残せず、しょんぼりしていた時に、「諦めんな!飾りじゃねーぞその四股名は!燃やしてみろ もっと!」と激励してくれたのは、弟弟子だけど先に出世した大関【火竜】でした。そしてその【火竜】はまさしくその言葉通りに、土俵上で燃えたぎり、「見てたか松明!こうやるんだ!」と身をもって示す頼もしい弟であった思い出。そしてその激励に応えるべく、渾身の一番で勝利した時――【松明(たいまつ)】が得たものは……ガラガラの観客席から聞こえてくる、ちょっとした拍手のみ。まあ、幕下以下では、そりゃあ観客は少ないでしょう。親父は、ここで悟ってしまいます。
 「人には…持って生まれた分てのがある…その分を超えたものを望んでも 得るのはみじめさだけだ…」
 かくして常の親父【松明(たいまつ)】は横綱【虎城】の金魚のフン的な、男芸者と蔑まされる男に堕ちてしまったようです。うーーん……これは、しょうがないじゃすまされないと思うけど……やっぱり、にんげんだもの……な理解をしてあげるべきですかねえ……
 というわけで、そんな過去を、常の親父は国技館を埋め尽くす【松明(まつあかり)】コールの中で思い出していました。現在時制の親父は、そんな場内で一人、つぶやきます。
 「さっさと終われ、お前は俺のガキだ、分を超えてんだ、この声援は…」
 ちょっと! あんた、一人すねてないで、うつむいてんじゃないよ! 土俵を観ろよ! 土俵で戦う常を見やがれこのクソ親父! 「お前の名は…その名は…輝かねぇんだ…」じゃねえっつーの!!
 土俵上では、【百雲】の鋭い左の突き、からの、右の強烈な張りが、左をがっちりホールドする常の左ひじにヒット! ゴギッっと嫌な男が響きます! 見開きで描かれるこの一撃は、若干極まって常の左ひじがあらぬ方向へ!? こりゃあヤマ行ったか!? と思わせる迫力の絵で描かれています。そしてそこへ、【百雲】の左エルボーが常の顔面を襲う―――!!? というところで今週は終了でした。
 いやあ、常の親父はクソですが、そう言うのは簡単なわけで、やっぱりみつお的な理解を示したくなっちゃう……けれど、あんた、生き様を燃やして戦う息子をちゃんと見てないのは、そりゃあ男としてダメですよ。そしてその姿を観れば、感じるものがあるでしょうに……それでもあんた、分を超えてる、みじめだ、なんて思うのかね……。いったい、「分」って何かね……!? と菅原文太的に聞きたくなりますな。
 しかしそれにしても、やっぱり【百雲】は強い! さすがは勝つためにすべてを、愛すらも捨てた非情の男よ……。俄然面白くなってきたVS【百雲】戦ですが、果たして勝者は!? いや、まあ普通に考えたら常でしょうけど、常の勝利で、【百雲】に、そしてクソ親父に光が照らされるといいですなあ! いや、今週も最高だったす。
 それでは最後に、毎週のテンプレを貼って終わります。
 <場所:9月場所>
 【鮫島】東前頭十四枚目(5月場所で東前頭十枚目)
 【白水】西小結
 【松明】東前頭六枚目。常松改め。本場所は7連勝したけどその後は不明
 【大吉】序2段【豆助】序ノ口【目丸手】序二段【川口】不明
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 1日目:【飛天翔】西前頭十二枚目。石川改め。
 2日目:【宝玉光】西前頭十一枚目
 3日目:【舞ノ島】西前頭十枚目
 4日目:【巨桜丸】西前頭九枚目。新入幕力士
 5日目:【岩ノ藤】東前頭七枚目 
 6日目:【大山道】西前頭七枚目
 7日目:【蒼希狼】西前頭六枚目
 8日目:【丈影】東前頭四枚目。横綱の弟弟子
 9日目:【闘海丸】西小結
 10日目:【毘沙門】東前頭五枚目
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 【王虎】&【猛虎】共に東大関
 【天雷】東関脇  【田上】番付不明※王虎の付け人をやってることが判明!!
 【泡影】東横綱。第72代。29場所連続優勝中。64連勝中。モンゴル人。
  他の力士は表にまとめた記事を見て下さい。
 
 というわけで、結論。
 今週は、常VS【百雲】戦の立ち合いからの攻防、推定10~20秒ほどが描かれました。【百雲】もやっぱり強い! そして常の親父の堕天ぶりも、だいたい事情は判明しました。この親父を許せるかどうか、まあ普通は許せませんが、おそらくは、誰しも年齢を重ねていくと、許せないけど理解はできるようになっちゃうような気がしますね。しかしだからと言って、自分の息子の生き方まで決めつけないでいただきたいですな。息子は、いつだって親父のようになるまいと足掻くものなんじゃないすかねえ。そして結局、ああ、俺もあいつの息子だったと思うかもしれないし、見たかクソ親父!と胸を張れるようになるかもしれないし、そこが男の生き様なのではないかしら。いずれにせよ、常はカッコ良く、そして王虎さんがやけに印象的な第120話でありました。いやー、『鮫島』はホント最高すね! 以上。

↓ 王虎さんと常の因縁は『Burst』で! 王虎を「さん」付けで呼ぶなんてありえない、そう思っていた時期が俺にもありました……




 というわけで、毎週月曜日は恒例の週末映画興行データです。
 この週末は、わたしは『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』と『スプリット』の2本を観て来ましたが、『ガーディアンズ』は相変わらず楽しく、なによりヨンドゥの、頭の謎装置って付け替え可能だったのか、つーか、予備の謎装置がまるで「アイスラッガー」というか男塾的に言うと卍丸先輩そのもので、大興奮しました。カッコイイ!!

 というわけで、どうでもいい戯言はおいといて、とっとと興行通信社の大本営発表をメモっておきます。わたしが観た2本はどれだけ稼いだかなあ……。

 1位:『美女と野獣』がV4達成。23日間で79.3億だそうです。しかし凄いですなあ! 全世界ではすでに12億ドルを突破してるそうです。えーと、今日の為替レートで計算すると、1,376億円か。今日、東映の3月決算が発表されましたが、短信によると東映の1年間の売上が1,284億ですよ? つまりそれより上ってことです。ホントすげえや。
 2位:『名探偵コナン から紅の恋歌』も好調維持で30日間で58.2億だそうです。こちらも本当にすごい。現状、歴代最大ヒットの去年をさらに上回って、去年同週比107.1%ほどの推移。
 3位:『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー リミックス』が公開土日で2.48億。金曜日からの3日間だと3.3億ほどだそうです。2014年の前作は、初週2.24億→最終10.7億と、日本ではかなり残念な数字でしたが、今回の初動はほんのチョイ増しか……もっと売れてほしかったなあ……。なおUS本国では1.46億ドルスタートですでに2億ドル突破しているそうです。まあ、やっと日本でもMARVELのブランド認知が進んできてますので、今回は最終15億は行ってほしいなあ。20億は無理かな……。
 4位:『ワイルド・スピード ICE BREAK』が17日間で……こちらももはや前作のデータは遥かに超えているので見積もるのが難しいけれど……先週末時点で25.2億だったそうなので、30億をチョイ超えたあたり、31~32億ほどとと見積もる。こちらはもう、その勢いが実感できずさっぱりわかりません。
 5位:『追憶』が9日間で5~6億ほどと見積もる。上位作品の占有が高そうなので、ちょっと控えめな数字を計算しました。どうだろう? 正解は5.66億だそうです。ちょっと厳しいすね……。
 6位:『帝一の國』が16日間で11~12億ほどと見積もる。12.07億だそうです。結構いいすね。3週目で10億突破は間違いなく、十分ヒットと言えるような気はします。
 7位:『映画クレヨンしんちゃん 襲来!! 宇宙人シリリ』が30日間で14~15億ぐらいと見積もる。2014年版より若干下目に計算してみました。
 8位:『スプリット』がこの位置だと公開土日で5~6千万ぐらいなのでしょうか。金曜日からでも1億届かずなのかな。全然関係ないのですが、エンドクレジットで、電通とフジテレビが何かの役割としてクレジットされているのが目に入って、あれっ!? と思ったのですが……in association withだったと思うけど……出資してるのかな? 何なんだろ。くそう、ボケっとしててちゃんと読めなかったぜ……。しかしなんでまた……ポニキャンがらみかな? それともなにかフジテレビIPがチラッと画面に映ったのかな? わからんす。
 9位:『LAST COP THE MOVIE』が5/3(水)公開なので12日間かな、合計で3~4億ぐらいと見積もる。いや、最初のGW分加えたらもうチョイ上か? 微妙……。
  10位:『無限の住人』が16日間で7~8億ぐらいと見積もる。この位置だともうチョイ下かも。7.75億だそうです。ライバルがちょっと強力すぎました。

 とまあ、こんな週末だったようです。
 しかし、『スプリット』を観に行ったときは予想外に混んでいたので、もしや結構売れてるのか!? と思ったのに……スクリーン数が少ないのかな……200Scrないか。そうだったか……。そして『ワイルドスピード』は絶好調で、3週で30億を超えたのに、『ガーディアンズ』が20億も難しいなんて……MCUが大好きなわたしとしては大変残念す。ああ、そういえば、『ガーディアンズ』を観に行ったとき、12月の『SW:EP VIII THE LAST JEDI』の予告がかかってました。まあ、流れたのはもうWebで公開済みのものなので、新鮮味はないのですが、やっぱり大画面で観るとテンション上がりますなあ。しかし、日本では前作が116.3億どまり、そして『ガーディアンズ』も『ローグ・ワン』も寂しい数字の日本では、果たして年末の『EP VIII』は100億超えられるのでしょうか……大変心配です。

 というわけで、結論。
 今週も『美女と野獣』が1位でV4 達成。そしてわたしの大好きなMCU作品『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』は、ちょっと寂しい数字でのスタートとなりました。あーあ……もう、はやく夏の『スパイダー・マン』と秋の『マイティ・ソー』が早く観たいものです。今年は、秋の『ソー』は日米同時公開のようなので、台湾に観に行かなくて済みそうで、それだけはありがたいす。以上。

 このBlogで何度か書いているが、世界珍作MOVIE選手権が開催されたなら、わたしとしてはM・Night Shyamalan監督は間違いなく優勝候補に挙がる映像作家であると思っている。以前も書いた通り、たしかに『The Sixth Sence』は面白かった。実に上質で巧妙な伏線が張り巡らされた、小説で言うところのいわゆる叙述ミステリー的な脚本は確かにお見事であったと思う。思うのだが、残念ながらその後、どんどんと、妙なトンデモ話ばかりを撮り続け、すっかり珍作監督として今に至っている。また、この監督は自作に必ず(?)出ることでもおなじみで、わたしの目には単なる出たがり野郎としか思えないが、一応、尊敬するHitchcock監督の真似をしてるんだよ、アハハ、とどこかでのんきに語っていたのを目にした覚えがあるが、まあとにかく、なんというか……わたしにとってShyamalan監督は、どうもイラっとする野郎なのである。
 じゃあ、そんな監督の作品はもう観なきゃいいじゃん、と思いますよね、普通は。わたしも、Shyamalan監督の新作公開となると、今回はいいかな……とは思う一方で、どうしてもわたしの体内に巣食う、クソ映画ハンターの本能が無性にざわめき、わたしをして劇場に足を運ばせてしまうのである。これも前に書いたと思うが、絶対くさいに決まってる、けど、嗅がずにいられない自分の足というか……まあそんな変態はわたしだけかもしれないが、つい劇場へ観に行き、ああ、やっぱり今回もクソ映画だった、と納得して帰るのが常なのである。
 というわけで、いよいよ公開されたShyamalan監督最新作『SPLIT』。2015年の『The Visit』のあまりのクソ映画ぶりに、もういい加減劇場に行かなくていいんじゃねえかな……と思っていたものの、今回はUS興業も大ヒットと好調評価も上々らしい、ので、やっぱり観に行ってしまったわたしである。そして、やはり、今回もわたしの眼には微妙作としか思えない内容で、ある意味、ああ、やっぱクソだったと胸をなでおろすという、我ながらもう意味不明の事態となったのである。ちなみに、本作でもShyamalan監督は精神科医の助手?役で堂々と出てくる。まったく本筋に関係ない、HOOTERSは最高なんすよ! と熱弁をふるう役に、なんだか今回もイラっとしましたw
 なお、以下、クリティカルなネタバレもあるので、読む場合は自己責任でお願いします。

 さて。上記予告はご覧いただけただろうか? ズバリ言うと、本作の物語はほぼ上記予告で語りつくされていると言っていいと思う。誘拐された3人の女子高生。そして誘拐犯は23重人格の男。はたして女子高生は脱出できるのか―――というお話である。
 もちろん、誘拐の目的だとか、3人の女子高生のそれぞれのキャラなど、本作を観ないと不明な部分はあるけれど、正直、それらはすべて、もはやどうでもいいように思う。わたしは上記予告を観て、ラストで24人目の人格が出てきて、な、なんだって――――っ!? というオチになるんでしょ、と想像して劇場へ向かったわけだが、残念ながらオチも実に、「はあ?」というリアクションしかできず、Shyamalan監督のトンデモパワーも、随分弱体化したなあ……と思わざるを得なかった。そうなのです。この映画、まったくもって普通なのです。オチも。
 ただ、長年Shyamalan監督作品を観てきた人にとっては、事件終了後のホントのラストで、おおっと!? こいつはあの! というキャラが、まったく脈絡なく突然登場してくるので、ここだけはちょっとびっくりした。しかし、はっきり言って本作の物語とそのキャラがどう結びつくのか、まあ残念ながら普通の人には100%通じないことは確実だろう。わたしも、マジか!? まさかここであの映画につなげるの……!? とやおら興奮し、一体どういうことなのか考えてみたのだが、出た結論は「さっぱりわからん」であった。まさかと思うけど、次回作では本作の多重人格者VSあの映画の主人公、のバトルになるとか……? ええーーーっ!? シリーズ化でも狙ってんのか? まさか……ね? というわけで、最後にチラッと出てくる超大物ゲストキャラについてはもうこれ以上書けない。サーセン(※あの映画、大物ゲスト、の正体を知りたい人は、リンクをクリックしてください)。
 で。話を戻すと、本作は、実に普通(?)の、実にまっとうな(?)多重人格者のお話で、とりわけいつものShyamalan作品のような驚きのひねりもなく、いわば直球であった。そういう意味では、別にトンデモ展開はなく、ある意味実に退屈なのだが、主役の多重人格者と、誘拐された女子高生のうちのヒロイン扱いの1人、この二人の演技合戦はなかなか見ごたえがあり、クソ映画という評価を取り下げるつもりはないけれど、この二人は大変素晴らしかった。まずは、先にヒロインの女子高生から見ておこう。
 この女子高生、ケイシーは、クラスで浮いている、友達少ない系の女子であるのだが……いかんせん脚本的に中途半端で、実にもったいないキャラだったように思う。何度も何度も、彼女の幼少期のシーンが挿入され、しかもどうやらお父さんの弟のヒゲもじゃデブ野郎によって性的虐待を受けていた「らしい」ことがほのめかされる。そしてどうもお父さんはすでに亡くなっており、その変態野郎が叔父として保護者となっているらしい。そしてその虐待の傷痕が、ラストで重要なキーとなるのだが、それがなぜなのかは、まったくふわっとしていて、キレは悪い。キャラの掘り下げがもうチョイきちんと描かれていればよかったのにな、とわたしは思った。演じたのはAnya Taylor-Joyちゃん21歳である。わたしはこの女子を知らなかったが、大変可愛らしく、実にナイス・バディ子で名前を憶えておきたいと思う。演技のほどは、全然問題ないというか熱演だったし。大変悪くない。
 そして問題の多重人格者である。演じたのはヤング・プロフェッサーXでおなじみのJames McAvoy氏。複数の人格の演じ分けは非常に素晴らしく、演技としては極めて上物であろう。しかし、やっぱりですね……どうもこの多重人格というのも、一発ネタで終わってしまったかなという気がする。まあ、いわゆる「ビリー・ミリガン」ですわな。どうして多重人格になったのか、は何となく描かれる程度だし、そもそもなぜ女子高生を誘拐したか、のカギとなる24番目の人格も、実際良く分からない。おっと!? パンフには「そうなった理由・動機が劇中ではしっかり描かれており」と書いてあるな……うーーん……どうだろうそれは……。うーん……劇中で描かれる母親からの虐待だけじゃあ、説得力に欠けるなあ……おまけに、なんとキレの悪いエンディングか! これにはわたしも、ここで終わりかよ、と、ポカーンである。まあ、上記に書いた通り、続編でも作る気なのかな……そして大物ゲストと対決させる気なのかよ……それはそれで面白そうだけど、だったらそもそもこの作品にきちんと登場させて、最初からあの映画の続編にすればよかったのに……。
 というわけで、もう書くことがない。最後に、残り二人の女子高生と精神科医のおばちゃんを演じた女優をメモして終わりにしよう。まず誕生日会の主催者としてクラスの人気者らしきキャラを演じたのがHaley Lu Richardson嬢22歳。今までに見かけたことはないなあ……結構かわいいです。でもなんで死ななきゃならなかったのか、さっぱりわかりません。そしてもう一人の、完全に巻き添えを食らってしまった可哀想な女子高生を演じたのがJessica Sula嬢23歳。彼女も見たことないなあ……そしてなぜ彼女はホットパンツを脱がされ、ヒロインはシャツを脱がされたのか、それもまったく意味不明で大変可哀想な役であった。最後、おばちゃん精神科医を演じたのがBetty Buckleyさん70歳。この方は……さっき調べて驚いたけれど、Shyamalan監督作品『The Happening』の、あの超怖いおばちゃんを演じた方のようですね。全然気が付かなかったわ。たぶん、本作の一番のオチ?は、多重人格者の人格がチェンジすると、肉体的にも変化が起きる(例えば、ガリガリ→マッチョ、みたいな)というおばちゃん精神科医の研究が現実に!というものだと思うのだが、ま、それって、我々日本人は漫画で良く見るしなあ……。JOJOで言うところの、ディアボロとドッピオ的な。そういうわけで、わたしとしては特に目新しくもなく、ノれなかったす。

 というわけで、もうホントに書くことがないので結論。
 M・Night Shyamalan監督の最新作『SPLIT』が公開になったので、ついうっかりまたもや劇場へ足を運んだわたしであるが、やっぱり今回も面白くなかった。わかってて行ったので、別に後悔はしていないが、WOWOWで十分だったな、というのがわたしの結論である。しかし……この映画を普通の人が見て面白いと思うのか、わたしには良く分からない。どうなんだろう。今日は結構お客さんは入っていて、7割ぐらいは席が埋まってたように思う。それって結構大ヒットだと思うな。明日の月曜日、この映画がどれぐらい稼いだか、興行通信社の大本営発表が楽しみだ。意外と稼いでるとみたね(※2017/05/16:サーセン。全然売れてませんでした。公開土日は6千万弱のようなので、最終5億も届かないかな……)。 以上。

↓ ちょっともう一度見てみる必要があるかもな……。やばい、ネタバレかこれ?
アンブレイカブル(字幕版)
ブルース・ウィリス
2013-11-26

 今年2017年は、わたしの大好きなMCU作品が3本公開されるので、わたしとしてはもう嬉しくてたまらないわけであります。MCUってなんぞ? と今さら聞かないでいただきたい。MARVELコミックの一連の映画作品のことである。詳しくは過去の記事を読んでください。
 しかし、すでにもう何本だ? ええと、2008年公開の『IRONMAN』から数えると14本かな。長大な物語となっているわけだが、その中で、非常に異彩を放っている作品が1本ある。それが、『GUARDIANS OF GALAXY』である。
 地球でない銀河のどこか、を舞台としている点は、確かに『THOR』と共通しているが(正確に言えば『THOR』の故郷アスガルドは別次元なので(たぶん)、銀河のどこか、では全然ない)、もう『THOR』は何度も地球に来ているしAvengersの一員として地球を守ってくれる頼れる神様である一方で、ガーディアンズのみんなはまだ地球人には知られていないし、Avengersにも参加していない。ただ、主人公スター・ロードことピーター・クィルは地球生まれであり、1988年に地球から宇宙海賊に誘拐されて旅立ったわけで、当然地球に縁のあるキャラクターであるし、映画『GURDIANS OF GALAXY』におけるキーアイテム「オーブ」なる謎物質は、現在のMCUで最大の焦点である「インフィニティ・ストーン」の一つであるため、100%確実に、来年2018年公開予定の次のAvengers「Infinity War」に参戦することは間違いないとみられている。
 よって、昨日から公開された『GURDIANS OF GALAXY VOL.2』は、MCUにおいて極めて重要な持つ作品になるであろうことは確実で、果たしてどのように絡んでくるのだろうか、と、わたしはもう超期待して今日劇場へ向かったわけである。
 が……結論から言うと、MCUとの関連は、相当な原作ファンでないと気が付けないような深い(?)ところにあって、それほど原作に詳しくないわたしにとっては、かなり微妙な、なんというか……MCUとしてはちょっといまいち役割が明確でない作品だったのかな……という感想を持った。ただし、映画としては最高に面白く、笑って泣ける最高の映画でありました。というわけで、いつも通りネタバレ満載ですので、読む場合は自己責任でお願いします。クリティカルなネタバレも書かざるを得ないので。

 まず、物語だが、上記予告を観てもさっぱりわからないと思うので、ちょっと軽くまとめてみよう。上記予告で描かれている、変なゲテモノとのバトル、これは冒頭のオープニングバトルである。相変わらず凄い映像で、ほぼカットが途切れないCGぶりは『Ultron』冒頭のバトルシーンのように、もはやMCUお約束のオープニングだ。すさまじく出来がいいし、ベビー・グルートの無邪気ぶりとガーディアンズのみんなの溺愛ぶりもバトルの最中に示されて、実にイイ! このゲテモノ退治をガーディアンズのみんなは仕事として請け負っていて、その依頼主が、予告の中にて出てくる、よくわからない金ピカ星人である。ま、とにかく、無事にゲテモノ退治に成功したガーディアンズが得た報酬、それは、ガモーラの超過激な妹でお尋ね者の、ネビュラの身柄であった。まあ、前作で散々悪さをしているネビュラなので、賞金首になってたようですな。
 しかし、重要なのは金ピカ星人(=ソブリン人)の首領アイーシャで、原作を知っていると、実は今回のラストのおまけ映像の意味がより良く分かるのだが、わたしはこの時点では全然気が付かなかった。いずれにせよ、ソブリン人は超プライド高く超真面目な(?)人々なので、アライグマのロケットのジョークにイラっとし、あまつさえ、ゲテモノ退治のついでにロケットが「アニュラックス電池」をかっぱらったことに気づいて大激怒、キーーーッ!この下品でお馬鹿な連中をぶっ殺すザンス!!! という展開に。おっとこりゃマズイ、と慌ててバックレるガーディアンズたちだが、すぐに追手がかかり、ど派手なスペースバトルに。とにかく大群で、こいつはヤバいぜ!? という大ピンチになるが、ワープゲートに突入する直前、謎の助っ人が現れ(えええっ!? と目を疑うような笑える現れ方)、金ピカ星人たちの操る戦闘機は全滅、間一髪で逃げ切る、が、そのままとある惑星へ不時着し、機体は大破してしまう。
 あーあ、もうどうしてくれるんだよ、大体なんで盗みなんてしてんだこのアライグマ! てめえ、アライグマって言うなこの野郎! と毎度おなじみの仲間割れ喧嘩をしていると、さっきの助っ人がやってきてご対面。なんとその正体は「I ’m your Father!」とベイダー卿のように登場した「エゴ」と名乗る謎の男であった。スター・ロードことピーター・クィルは、突然父親を名乗る男の登場に、てめえ、かーちゃん放っておいて、今さら何の用だこの野郎! だいたいてめえほんとにとーちゃんかよ!? と憤るも、まあとにかく私の星へ来るがよい、話はそれからだ、ということになって、ピーター、ガモーラ、ドラックスの三人はエゴの星へ、ロケットとベビー・グルート、そして捕虜状態のネビュラは機体の修理に残る、とガーディアンズチームは二手に分かれる。
 一方そのころ、怒り心頭の金ピカ星人アイーシャは、とある惑星へ。そこでピーターの育ての親というべきヨンドゥに、ガーディアンズ追跡を依頼。ここでヨンドゥは、同業者の宇宙海賊組合では裏切り者のクソ野郎だ、という扱いを受けていることが描かれる。ちなみに、その組合のボスを演じたのが、われらがSlivester Stallone隊長。残念ながらチョイ役でした。でも、ヨンドゥを演じたMichael Rooker氏とは「Cliffhanger」以来の共演2ショットか?お互い年取ったけど最高です!
 で、なぜヨンドゥが同業者から嫌われているかというと、ピーターを地球から拉致したのはヨンドゥであり(それを依頼したのがエゴだったことも明かされる)、そういう子供の人身売買的行為が海賊組合の掟に反するものだったらしいのだ。そしてとりあえずアイーシャの依頼を受けてヨンドゥ一行はロケットたちが修理中の船までやってくる。が、前作でもそうだったように、意外とピーターにやさしいというか甘い態度のヨンドゥに、手下たちの怒りが爆発。ちょっと親分、あの野郎に甘すぎねえすか? バカヤローそんなことねえよ! そんなことあるから言ってんだバカヤロー!と大バトル発生。ヨンドゥと言えば、口笛で操る矢を使う超凄腕なわけですが、あの矢は、頭の変な装置?で操っているようで、その部分をこっそり拘束から脱出していたネビュラに吹っ飛ばされ、ヨンドゥ沈黙、ロケットも捕まってしまい引っ立てられてしまう。
 かくして、ヨゴの星へ向かったピーターたちが知った驚愕の事実とは、そして囚われのロケットたちは無事脱出できるのか―――今、銀河の存亡をかけた壮絶なバトルが展開する!!! てなお話でありました。全然軽くねえな、このまとめ。
 というわけで、わたしとしては、本作のポイントは以下の点にあるように思う。長くなるので、もう一言コメントだけにしておきます。
 ◆ピーターの出生の秘密とエゴの正体
 ……うーん、正直、ちょっとイマイチ。ただ、エゴを演じたKurt Russel氏は渋くて良かった。そして、ピーターが、ずっと自分の父はHasselhoffだと言い張ってるのが相変わらず笑えた。若い人は知らないだろうけど、しゃべる車KNIGHT2000でおなじみの「ナイトライダー」という80年代ドラマの主役マイケルを演じた方です。
 ◆ヨンドゥの父性のようなもの
 今回のヨンドゥは後半カッコ良かったというか、ラストは泣かせましたねえ!そして、ネビュラに頭の謎装置をぶっ壊されて、予備の装置を装着して復活するところがカッコよかった!そして……もう完全にアイスラッガーというか、卍丸先輩というか……ビジュアル的に超クールで笑えました。あともう一つ、今回、ピーターの宝物であるSONY製WALKMANがぶっ壊されてしまうのだが、事件後のエピローグで、ピーターのためにヨンドゥが新しい地球製の音楽プレイヤーを用意してくれていた、というのも泣けますね。だけど、それがなんと、わたしの見間違いでなければMicrosoft謹製の、まったく売れずに生産中止になったことでおなじみのZuneであった。多分ここは爆笑すべきところでしょうな。そして「すげえ!300曲も入ってるのかよ!」と大喜びのスター・ロード氏。あなた、今度地球に来たらびっくりするよ……30000曲以上入るのも、もはや普通なんで……w
 ◆ピーターとガモーラのちょっとイイ関係
 二人の関係はどうなんでしょうなあ。今回、だいぶ二人の距離は縮まりつつあるように見えますね。ダンスシーンはなかなかイイ雰囲気でした。
 ◆ガモーラとネビュラの姉妹の関係
 この姉妹も、どうやらようやく和解に至りそうですな。よかったよかった。しかし二人とも、元・サノスの娘なわけで、次のAvengersでは活躍しそうな予感ですね。なんとなくネビュラには死亡フラグが立ってるような気もするけど……。
 ◆相変わらず大活躍な凶暴アライグマのロケット
 この見かけはかわいいロケット君は、操縦や武器製造、戦闘など、実用的な面で何気に一番の大活躍です。おまけにベビー・グルートを大切にかわいがる様も大変良いと思う。CGは当然超ハイクオリティで、毛のふさふさ具合や鼻先の感じはもう本物にしか見えないす。
 ◆空気を読まないドラックスの泣ける一言
 わたしはこの人の何気ない一言ギャグが大好きです。まったくピントがずれているというか……空気を全く読まない一言が素晴らしい。そして、今回は一番グッとくるセリフもこの人が言います。「仲間じゃねえよ。俺たちは家族さ……!」この一言が、ガーディアンズというチームを一番表しているわけで、大変おいしいセリフでしたね。あともうひとつ、今回の新キャラ、マンティスと絡むシーンの多かったドラックス氏は、普通とまるで違う審美眼があるようで、マンティスに対して、なんてUgryなんだお前は、とずっと言っているのですが、ラストでは「見かけはひどくUgryだが……中身は美しいぜ、お前」なーんて言ってくれるわけで、もう君たち付き合っちゃえよ!と思ったわたしである。今回、チームで唯一、妻も子もいた男として(妻も子も惨殺されてます)、何気にピーターにも深いことを言ってましたな。チームのお父さん役なんですね、彼は。
 ◆完全にマスコットなベビー・グルート
 もうね……かわいいからって何でも許されると思ってますよ、このベビーはw 前作でチームのみんなを守るために身を挺し、枝一本になっちゃったグルート氏は、その後順調に生育し、やっとチビな姿まで戻ってきましたが、完全にみんなのかわいいペットでしたな。そしておまけ映像(2)で、また少し成長した姿が出てきますが……完全にグレてて笑えますw 思春期なんでしょうな、きっと。ヨンドゥの予備の装置(=アイスラッガー)をこっそり奪ってくるんだ!のミッションは、ちょっとしつこいぐらい、ベビーのかわいさ推しでしたね。
 ◆MCU恒例、大興奮のおまけ映像
 今回のおまけ映像は、すごく細かく言うと3つ。まずはStallone隊長がヨンドゥを偲ぶ映像。これは短いしすぐ出てくる。次に出てくる二つ目は真ん中あたりで、どうやら今回の事件の数か月(?)後らしく、前述のように、かなり大きく育ったグルートが部屋でゲームをしてるシーンが始まる。そこにピーターが入ってきて、お前よ~枝をはらうのが面倒なんだよ、だいたい、ゲームばっかりしてないでちゃんと掃除しろよ! と言うと、どうやらすっかり思春期で反抗期にある成長途中のグルートは、うるせえなあ、ほっとけよ!とばかりに「I am Groot!」というものでした。ベビーの時はあんなにかわいかったのに……すっかりヤンキー風な態度で言う「I am Groot!(怒)」は笑えます。字幕も「俺はグルートだ!」と一人称が変わってました。
 そして問題は3つ目、一番最後に流れるシーンであろう。ここでは、散々な目にあった金ピカ星人アイーシャが、手下にこれはもっと強力な武器が必要なんじゃないすかねえ、と言われ、もう用意した……と言って、ニヤリと対抗策の名は……「アダムだ」と告げるシーンであった。わたしは、まったくうかつなことに、このセリフでやっと、はっ!? と気が付いた。アダム、それはまさしく「アダム・ウォーロック」のことに間違いないと思う。すっかり忘れてたよ。まさしく次のAvengersは「Infinity War」であり、原作コミックの「Infinity Gauntlet」がベースとなっていることは明らかなわけで、その「Infinity Gauntlet」での重要人物アダム・ウォーロックの名前がここで出てくるとは! というファン驚きのおまけ映像であった。そう、今回は、「インフィニティー・ストーン」のラスト1個が出てくるかと思っていたのに出てこなかったので、そういう意味ではMCUとのつながりがほぼなかったとも言えるのだが、このおまけ映像でやっとつながった、と思う。ついでだから一応、MCUにおける「インフィニティ・ストーン」をまとめておくか。ちなみに原作コミックのInfinity Gemsと色が入れ替わってます。
 ◆青:Space Stone:これは「コズミック・キューブ」のことらしい。『CAP:FA』や『Avengers』に出てきたアレ。現在は、『Avengers』事件終了後に、Thorがアスガルドに持って帰って、オーディンの武器庫にしまってあるはず。たぶん。原作の青は「Mind」。
 ◆赤:Reality Stone:これは「エーテル」のことらしい。『Thor:DW』でジェーンに寄生したアレ。現在は、シフたちが「コレクター」のところへ行って預けたはず。たぶん。原作の赤は「Power」。ちなみに、このおまけシーンで、コレクターのところにアダム・ウォーロックらしき「蛹」が置いてあるのがちらっと映るのが大興奮ポイント。アダム・ウォーロックといえば蛹なのです。
 ◆黄:Mind Stone:これは劇中でもマインド・ストーンと呼ばれてたかな。ロキ様の杖についていた宝石で洗脳できるアレ。『Ultron』事件の時に、Visionさんと一体化。現在は、Visionさんの額で輝いてます。原作の黄は「Reality」
 ◆紫:Power Stone:これは前作『ガーディアンズ』で「オーブ」と呼ばれていたあの謎の宝石。現在はザンダー帝国で厳重保管中のはず。たぶん。原作の紫は「Space」。ちなみに、前作でなぜ、スター・ロードがオーブを素手で触っても大丈夫だったのか、その謎が本作で解かれます。
 ◆緑:Time Stone:これはとうとうMCUに参戦した『Dr, Strange』で、ドクターが禁断の時間魔法を発動させるときに使用したあの首飾りの中に入っている。現在はドクターが修行の場カマー・タージに保管したはず。たぶん。原作の緑は「Soul」
 というわけで、6つのうち5つは判明していて、もう一つの「Soul Stone(オレンジ色らしい。原作だとオレンジは「Time」)」がサノスの持つ「インフィニティ・ガントレット」に装てんされると、超ヤバい事態が起きる、ということになってます。なのでわたしは、今回とうとう6つ目の石が出てくるのかと思ったのだが……どうやらそれは次のAvengers:Infinity Warまでお預けのようですな。そしてそこにアダム・ウォーロックが絡んでくるのはどうも確実っぽいすね。場合によっては、11月3日に日本公開が決定した『THOR:RAGNAROK』で出てくるのかもしれないけど、「Soul」とアダム・ウォーロックは関係が深いのでどうかな……。まあ、とにかく大変今後が楽しみなMCUです。

 というわけで、もう長すぎるのでぶった切りで結論。
 やっと日本でも公開となった『GURDIANS OF GALAXY VOL.2』を早速観てきた。わたしとしては、MCUへのつながりがどのように描かれるかが一番楽しみだったのだが、その部分だけに絞って言うと、ちょっと肩透かしであった。しかし、それ以外の物語においては、相変わらず派手で、笑えて、ちょっと泣かせるイイお話で、わたしは大変大変楽しめた。ただ、ちょっとお父さんとの話は、あまりグッと来なかったかな……MCUにおいては唯一の「ヒーローチーム」なわけで、いつもくだらないことで喧嘩ばかりしているけど、彼らはもう家族同然であり、結束力は高く、観ていてとても安心できますな。しかしアイスラッガー装着後のヨンドゥは実にカッコ良かった。わたしの希望としては、げえーーーっ!生きていたんすか卍丸先輩!的な男塾展開を期待したいが……それはないだろうなあ……無茶しやがって……とても残念す。以上。

↓ 次はコイツです! 8/11(金・祝)公開。ゆとりヒーロー、スパイディ! 超楽しみっす!
 

 わたしが宝塚歌劇を見始めるようになって7年が過ぎた。
 その経緯は、このBlog上において何度も書いているので、もう書かないが、わたしをヅカ道へ導いてくれた師匠がいて、大変お美しい方なのだが、 実はわたしは師匠とはこの7年間で1回しか一緒に観に行ったことがない。いつも、チケットを手配してくれるやり取りだけで、お互い会社が別々になってからは、お会いすることすら年に数回になってしまった。
 そんな師匠と2か月ほど前、こんなメッセージのやり取りをした。
【師 匠】そろそろあなたの一番好きな星組ね。来週までに希望日時を連絡なさい。
【わたし】押忍!ごっつあんです!いつも本当に有難うございます!承知つかまつりっす!
  <すぐにわたしのヅカ仲間の娘っ子ども×2&お姉さま×1に連絡し、日時を決定>
【わたし】押忍!いつも大変お世話になっております!それでは5月●日の11時の回でお願いします!
【師 匠】あら、そう、承知したわ。ところであなた、ムラに一人で観に行ってきたのよね?どうだった?
【わたし】押忍!ごっつあんです!最高でした!特に、オレのこっちん(※礼真琴さん。わたしが一番好きな人)の超絶なカッコよさにしびれたっす!最強に歌ウマっすね!
【師 匠】あら、さすがことちゃんね。期待しているわ。じゃああなた、わたし達が行くときもいらっしゃらなくて? チケットが1枚空きそうなの。あなたたちの希望日時より前だけどいかがかしら?
【わたし】押忍!ごっつあんです!もちろん参加させていただきます!
【師 匠】あら、よかった。会うのも久しぶりね。楽しみにしてるわ。
【わたし】押忍!ごっつあんです!オレも楽しみっす!
【師 匠】それではよろしくね。チケットは当日開演15分前に劇場前で。
【わたし】押忍!こっつあんです!よろしくお願いシャス!
 というわけで、3月に兵庫県宝塚市に鎮座する「宝塚大劇場」でのソロ観劇から約2カ月。いよいよ東京へやってきた宝塚歌劇団・星組公演『THE SCARLET PIMPERNEL~スカーレット・ピンパーネル』を火曜日の夜、観てきた。2回目となるので、今回は、わたしが一番応援している「こっちん」こと礼真琴さん演じる「ショーヴラン」について思ったことと、宝塚歌劇で頻繁に描かれる、フランス革命の頃の時代背景、それから関係作品について書き留めようと思う。ちょっと、フランスの歴史をおさらいしてみたい、とふと思ったのです。
ScaPim
 まず、今回は上手側ブロックの5列目ということで、非常にいい席だった。おまけに一番左の通路側であり、要するに、銀橋の両サイドにある階段の上手側・真正面というわけで、その位置は主人公がよく歌う場所であるため、もう大興奮の席であった。さすが師匠、半端ないす。ほんとありがたい限りだ。
 で。物語の舞台は、原作小説ではどうやら1792年の話らしいのだが(?)、Wikiによると1789年に端を発したフランス革命において「革命裁判所」が設置されたのは1793年3月であり、「公安委員会」も1793年4月から存在していたそうなので、まあ、その辺りのお話と思っておけばいいだろう。そしてその「革命裁判所」とは、「あらゆる反革命行動、自由、平等、統一の侵害」を裁く法廷であり、「公安委員会」は事実上の革命政府で、人民主権の名の下に権利行使に制限はなく、あらゆる行為は正当化できたそうだ。もちろん、「自由の確立のためには暴力が必要である」として暴力を肯定している。要するに、何でもアリの超ヤバイ存在と言っていいだろう。こういった存在は、現代の民主的な法治国家らしき国に住む我々からすれば、相当胡散臭いというか独裁にしか見えない。我々にお馴染みの独裁者としては、北の将軍様がいるが、まあ比較はできないにしても、とにかくその象徴というかTOPにいたロベスピエール氏が危ないお方ってことは間違いなさそうだ。もちろん、我々の日本だって、昔々は天下を取った奴による事実上の独裁(?)に近い政治形態だったと言えるかもしれないけど。
 本作『THE SCARLET PIMPERNEL』において、我が愛しのこっちんが演じたショーヴランという男は、まさにこの革命政府=公安委員会所属の男で、1幕後半にフランス革命政府全権委任大使としてイギリスへも渡るような存在なので、相当高位にあるのは間違いなかろう。物語としては、その権力を振りかざして主人公を追うわけで、要するに「悪役」である。しかし―――本当にショーヴラン氏は悪い奴なのか? つかむしろ相当かわいそうなんじゃね? と思い、せっせとその件を書こうとしているわたしなのである。

 それでは、以下にフランスの政権の流れをおさらいしてみよう。長いぞ~これは。
 ◆1789年:国王ルイ16世(ブルボン王朝=絶対王政=アンシャン・レジーム)が、三部会を招集。議題は、財政破たん寸前なので増税しますの件。そんな議題に対して、もちろん、唯一の納税者たる第3身分(平民)の怒り爆発、ビビった国王が軍隊出動要請、大暴動へ発展。この辺がまさしく『1789』で描かれたわけで、一部は『ナポレオン』でも描かれているのかな。で、国王、やむなく第3身分が作った国民議会を認定、平民中心で憲法作成に取り掛かるも、まだ主権者は国王であり、そんな平民の主導した法律や憲法なんて認めるか!とか言ってたら、ますます食料すらもなくなってきたパリ市民が大激怒、ベルサイユ宮殿にまで乗り込んできて、マジかよ!とベルサイユを捨てテュイルリー(一応パリ市内)へバックレる。そして一応、「フランス人権宣言」として知られる「人間と市民の権利の宣言」が憲法制定国民議会で採択される。ここでいう「市民」が本作で何度も出てくる「シトワイヤン(Cytoyen)」のこと。英語のCitizenってことかな。意味はちょっと違うけか。
 ◆1790年:この段階ではまだ立憲君主制(=イギリス型の、国王を擁し憲法による統治)を信じる人々が政治を支配。代表選手はミラボー(貴族ではあるけど第3身分代表)やラファイエット(この15年ぐらい前にアメリカに渡り義勇兵としてアメリカ独立戦争に参加。ジョージ・ワシントンとも親しい。アメリカの人権宣言をよく知る人で、第2身分でありながら第3身分の味方。フランス人権宣言の起草者)で、要するに彼らは一応、国王の存在は認めていたってことかな。そしてこの年、ラファイエット氏の発案で、いわゆるトリコロールの三色旗が革命のシンボルになる。
 ◆1791年:貴族は続々とフランスから国外へ亡命。折しもミラボーも亡くなり、いよいよヤバいと不安になったルイ16世は、妻のマリー・アントワネットの実家(=オーストリア・ハプスブルグ家)に逃げようと密かにパリ脱出、しようとしたところ(この時に脱出の手助けをしたのが「ベルばら」でお馴染みのスウェーデン貴族ハンス・アクセル・フォン・フェルゼン様!)、あっさりパリ市民に見つかり、あんた逃げる気かよ!ふざけんな!と取っ捕まる。
 一方妻の実家(オーストリア)は、うちの国にも革命の嵐が来たら超迷惑だし、万一うちの娘(とその旦那)の地位をどうにかするようなこと考えてんだったら、てめえ、戦争吹っ掛けるぞこの野郎! という脅し(=ピルニッツ宣言)を神聖ローマ帝国及びプロイセンと共同で革命政府に伝達。なお、Wikiによると、まったくのなんちゃって宣言のつもりだったらしいのだが、受け取った革命政府は、やっべえ!最後通牒キタ!とやおら慌てることに。結局、じゃあルイ16世はそのまま生かしといてやらあ、として、立憲君主制を認める「1791年憲法」が成立。
 ◆1792年:事態を読み間違えた革命政府は、うっかり自分からオーストリアに宣戦布告。世にいう「革命戦争」の始まり(1802年まで続くこの長い戦争で、軍人ナポレオンが着々と力をつけていく)。8月にはルイ16世一家を幽閉(=8月10日事件)。また、国内に侵入した敵を押し戻す活躍をした義勇兵の下層民階級(=サン・キュロット)たちの発言力増大。虐げられてきたサン・キュロットたちは、急進思想を応援。その急進思想のTOPランナーがジャコバン派であり、ロベスピエール。そして新しい議会「国民公会」が設置され「第一共和政」が樹立、王政廃止が正式に決定する。ちなみに現在のフランスは「第五共和国」です。もうひとつちなみに、この少し前から、海外のフランス領植民地では人権宣言の影響でムラ―トや黒人奴隷の反乱が相次ぎ大混乱にあった。それが、宝塚的に言うと『カリスタの海に抱かれて』の事件の背景。あ、あの話は正確には革命前夜の事件か。
 ◆1793年:第一共和政政府による革命裁判において、ルイ16世、ギロチンでとうとう処刑される。ついでに王妃マリー・アントワネットも同じく斬首(なお、この時国王死刑に賛成票を投じた人々は、後の王政復古期に粛清対象になって殺される)。パリ市民は浮かれて万歳だが、イギリスやスペインが本気で激怒、フランス侵攻開始。革命政府はヤバい、みなさん、戦いましょう!と兵員募集をするも、無責任な(?)市民は、えーやだよ、と拒否続出、あまつさえ、まだ残存していた王党派と共和派で大喧嘩が勃発、内乱に至ってテロ続発の大混乱。この対立は、基本的にずっと続き、ナポレオン没後の王政復古期(1814年~30年)の動乱として『レ・ミゼラブル』の第2幕でも描かれた。マリウスは共和派の学生さんですな。こういった、国内情勢の不安定さから、ジャコバン派=ロベスピエールは6月に権力を掌握、8月に徴兵制を敷き、独裁政治=恐怖政治=テロリズム、を開始する。Wikiに書いてあって驚いたけど、ロベスピエールさんは、人類史上初のテロリスト(恐怖政治家)だそうです。へえ~。
 
 で、この後の展開はもう駆け足でいいかな。
 この翌年の1794年7月、ロベスピエール氏はあっさり失脚、テルミドール反動と世に知られるクーデターで逮捕、翌日にはギロチンの刃の露と消えたわけですな。しかし、王様を殺し、さらにはそのあとの恐怖政治も倒し、パリ市民はやれやれやっと落ち着いたぜ、となるはずが、当然そんなことにはならない。いわゆる中間層の市民(=ブルジョアジー)に国家を運営するノウハウはないわけで、1795年には国民公会は解散、テルミドール派(=ロベスピエールをぶっ殺した連中)が総裁政府を開き、新しい憲法を制定するが王党派・革命派の争いは収まらないし、外国との戦争も終わらず、ずるずると不安定な国内状況が続く。この国内の動乱を抑えるためにパリに大砲を持ち込んだのが若きナポレオンですな。これはまさしく、柚希礼音さん(通称:ちえちゃん)主演の「ナポレオン」で描かれたアレですな。この功績で一気にナポレオン人気が高まり、1799年のクーデターでまんまとナポレオンが政権奪取に成功、統領政府を樹立し、かくして1804年、皇帝に就任し、第1帝政時代となるわけです。
 その後、皇帝ナポレオンは1814年に失脚し、フランスは、ウィーン会議による周辺諸国からのゴリ押しで再びブルボン家の生き残り、ルイ18世を王に戴き、王政へ逆戻り。これがいわゆる「王政復古」ですな。ちなみにルイ18世は、ギロチンでぶっ殺されたルイ16世の弟です。こいつが情けない奴で、『THE SCARLET PIMPERNEL』にも出てくるキーキャラのルイ・シャルル(=ルイ16世の息子)が幽閉されているときは、自分だけさっさと亡命して何もしなかったし、いやあ、ルイ17世と名乗っていいのはルイ・シャルル王太子殿下だけに決まってるじゃないですか、とか抜かしていて、ルイ・シャルルが死んだと聞くや、オレがルイ18世です、と名乗って、ロシアにバックレる。そしてナポレオンがロシアに攻めてくると聞けばさっさとイギリスに逃げ、そしてナポレオンが失脚したところでまたしゃしゃり出てきて、王様然とし、ナポレオンがエルバ島から復活して100日天下を奪うと、これまたさっさとバックレて逃亡、しかしナポレオンが1815年にワーテルローで完敗すると、再びフランスに戻ってきてちゃっかり王座に就く。なお、こいつはWikiによると、肥満からくる痛風が悪化して1824年に死去。また、これまたWikiによると、宝塚版『ナポレオン』で北翔海莉さん(通称:みっちゃん)が演じて最高にカッコ良かったことでおなじみの、フランス外務大臣タレーランの言葉によると、「ルイ18世はおよそこの世で知る限り、きわめつきの嘘つきである。1814年以来、私が王と初対面の折りに感じた失望は、とても口では言い表せない。……私がルイ18世に見たものは、いつもエゴイズム、鈍感、享楽家、恩知らず、といったところだ」だそうです。
 そしてこのブルボン朝はルイ18世が1824年に死んだあと、弟(=シャルル10世。つまりこいつもルイ16世の弟で、革命時はロンドンに亡命していた→コイツが『1789』の悪役であるアルトワ伯です!)に引き継がれ、こいつがまたも反動的な王政を敷いて、1830年の七月革命でオーストリアに逃亡・亡命し表舞台から退場する。
 変わって王座に就いたオルレアン公ルイ・フィリップは、若き頃は自由主義に傾倒して革命にも参加した男で、自らが王座に座ると絶対王政を排して立憲君主制を敷くことにする。これが7月王政というやつですな。で、フランスでもやっと産業革命がはじまり、一方で帝国主義的な植民地経営もせっせと行って資本主義的発展を見せる。しかし、そうなると今度は労働者階級(=プロレタリアート)が生まれてしまい、ブルジョアどもともども、普通選挙制度を要求し始め、1832年の6月暴動を招く。この6月暴動が、まさしく『レ・ミゼラブル』で描かれるマリウスたちの戦いですな。まあ、暴動を起こした共和派は鎮圧されてしまうけれど、最終的には1848年の2月革命でオルレアン朝も打倒され、第2共和国が樹立、ルイ・ナポレオン(後のナポレオン3世)が大統領に選出される。この後は、1852年にナポレオン3世の即位(しかも国民投票で選ばれた!)による第2帝政がはじまるわけですが、この年代に何か覚えはないですか? そう、ドイツにお住いの美女、エリザベートさんがオーストリア皇帝フランツ・ヨーゼフ1世のもとにに嫁に行ったのが1853年ですな。はーーーやっとここまで来た。
 そして、フランスは1870年の普仏戦争でプロイセンにぼろ負け、パリ陥落&ナポレオン3世は捕虜に、という屈辱を食らい、以降、フランスという国には王様も皇帝も立つことがなくなると。それで第3共和国になるわけですが、これは第2次世界大戦後まで続き、ナチスの敗北でフランスが主権回復、1946年の新憲法公布で第4共和国が成立、そして1958年ドゴールのクーデターで新政府樹立、第5共和国となって現在まで続く、とまあそういうわけですな。

 はーーー疲れた。まとめるとこういうことかな?
 ◆1789年:ルイ16世(ブルボン朝)による絶対王政
 ◆1792年:ロベスピエール率いるジャコバン派による第1共和政樹立
 ◆1793年:ジャコバンの恐怖政治。ルイ16世&マリー・アントワネット斬首
 ◆1794年:テルミドール反動でロベスピエール失脚。総裁政府樹立。
 ◆1799年:ナポレオンのクーデターで統領政府樹立。
 ◆1804年:ナポレオン皇帝に就任、第1帝政の始まり
 ◆1814年:ナポレオン失脚、ルイ18世即位で王政復古
 (◆1815年ナポレオン百日天下で一瞬復帰)
 ◆1824年:ルイ18世死去、弟のシャルル10世即位
 ◆1830年:七月革命ルイ・フィリップが王座に(オルレアン朝・立憲君主制)
 ◆1832年:6月暴動。労働者階級の発生
 ◆1848年:2月革命でオルレアン朝打倒、第2共和政樹立、ルイ・ナポレオン大統領誕生
 ◆1852年:ルイ・ナポレオン、ナポレオン3世として皇帝に。第2帝政始まる
 ◆1870年:普仏戦争でぼろ負け、ナポレオン3世失脚、第3共和政スタート
 ◆1946年:第2次世界大戦終戦後、ドイツ支配からの解放、第4共和政スタート
 ◆1958年:ドゴールのクーデター発生、第5共和政始まる。そして現代まで継続中。
 なんというか……落ち着かない国ですなあ……しかしこれは、何もフランスだけの固有の問題ではない。どの国も多かれ少なかれ、支配者の変遷は経験してきたのが人類の歴史だろう。わたしがここまで延々とフランスの歴史をまとめて、自分で確認してみたかったことは、果たして一体、悪党は誰なんだということである。
 抑圧され、生命を蹂躙されれば、それに抗い、相手を打倒するのが人間の性だ。それは全く当然の成り行きだろう。しかし、問題はその後だ。自分を踏みつけてきた権力を打倒したはいい。けれど、その後どうなるか。どうやらフランスの歴史をたどると、結局自らも打倒され、代わって次の支配者が登場し、それもまた打倒され、と繰り返すことになる。実にむなしいというか悲しい連鎖だ。
 これは、一面では、失敗を学ばないということでもあろう。支配者としての器の問題である。しかし、何でもかんでもTOPにいる者個人に責任を転嫁していいのかという気も、一方ではする。ひどい言い方をすれば、名もなき一般市民の要求は尽きることがなく、ある意味何もしていないくせに文句ばかり言う、それが民衆の姿だと言っても言い過ぎではなかろう。
 そういう観点からすると、わたしは、どうしてもショーヴランという男が、悪党には思えないのだ。本作『THE SCARLET PIMPERNEL』を観ると、マルグリットという女子は、革命の時には付き合ってた元カレであるショーヴランを、ごくあっさり振るわけで、わたしとしては「そりゃあねえよ!」と思ってしまう。これは、わたしがモテないブサメンだから、ではなく、たぶん男なら誰でもそう思うのではなかろうか。また、主人公のイギリス貴族パーシーにしても、やっぱりどうもお気楽すぎて、ひとかけらの勇気をもってフランス貴族を救う、という姿はカッコイイかもしれないが、地元フランス市民からすれば、自分たちを散々搾取していた連中なわけで、外人は引っ込んでろ!と思われたっておかしくない。そして、わたしが大変気の毒に思うショーヴランという男こそ、実に真面目でまっとうに、自分の信じた正義を貫くわけで、その手法が暴力に訴えるものだとしても、その暴力は合法的に許されていたんだから、残念ながら誰も文句は言えないのではなかろうか。彼が追う「スカーレット・ピンパーネル団」こそ、フランス革命政府からすれば犯罪集団なわけで、わたしはショーヴランの行動は、まったく非難されるべきものではないと感じた。だから、もうちょっとパリ市民の心の変化が表現されていればなあ、と言う気がする。パリ市民は、冒頭から基本的には革命を支持してるんだから、彼らの視点からすれば、ショーブランこそ正義、と思っていたかもしれないし。ジャコバン派のやりすぎな行動に市民がだんだん引いていく様は、もっと描く必要があったような気がしてならない。
 ――と、以上が『THE SCARLET PIMPERNEL』という物語に対する、わたしの感想だ。
 まあですね、ここまで延々と書いてきてそれが結論かよ、と思われるかもしれないですが、要するにですねわたしが言いたいのは次のことです。
 ◆ショーヴランは悪くない!君は職務を全うしただけだし、君の信じる道を誠実に生きただけだよ。断じて君は悪党じゃないぞ! そして演じたこっちんは最強に歌ウマであり、本当に素晴らしかった。ムラで観た時と、若干歌い方が変わってたように思います。特に『鷹のように』のサビ部分。ムラの時は、やっぱり基本はちえちゃん風だったすね。今回東京で観たこっちんは、さらに進化してたと思います。
  ◆マルグリット……あなたちょっとヒドイよ!ちくしょう、せいぜい幸せとやらをかみしめるがいい!お幸せに!あばよ! としか、男なら言えないよもう。しかし、演じたあーちゃん(綺咲愛里ちゃん)は相当頑張ったと思います。以前書いた通り、わたしはあーちゃんの、ちょっとギャップのある大人な声が大好きです。ビジュアルも大変可愛いと存じます。
 ◆パーシーは……まあ、紅子(紅ゆずるさん)パーシーはこれでいいんでしょうな。ちょっと軽いのは紅子ならではということで、許します。ほんと。羽を背負った紅子に胸が熱くなりますわ。これからも応援します!

 というわけで、結論。
 いや、もう結論書いちゃったし。とにかくですね、ショーヴランはかなり可哀想で、そしてそんなショーヴランを演じたこっちんは最強に歌も芝居もカッコ良かった。終演後のパレードで、一番最初に歌うこっちんの「ひとかけらの勇気」は最高です。そしてダンスのキレもますます磨きがかかってますな。いやー、TOPに昇る日が何年後かわからないけど、その日が楽しみですな! 以上。

↓ 散々書いたフランス革命についてのわたしの記述は、結構適当です。ちゃんと勉強しようかな……。
フランス革命史〈上〉 (中公文庫)
ジュール ミシュレ
中央公論新社
2006-12





 というわけで、毎週木曜日は『鮫島』ニュースのお時間です。
 つーかですね、『鮫島』の最新(12)巻が今週発売になっておりますので、是非皆さんお近くの本屋さんか自分のお気に入りの電子書籍サイトでお買い求めください。(12)巻では第98~106話の九日目その後の白水兄貴のお話と、VS【毘沙門】戦の冒頭までですよ!

 そして時事ネタ的には、この週末からいよいよ大相撲5月場所が開幕しますが、前回興奮してお知らせした通り、わたしとしてはラオウ様こと横綱・稀勢の里関の土俵入りが超楽しみです。 そしてその土俵入りの際には、太刀持ちとして大関取りに挑むケンシロウこと高安関、さらには我が愛しの黒ブタくんこと松鳳山関がトキの化粧まわしで露払いを務めるわけで、マジで泣くかもしれないす。嬉しくて。↓この記事はかなりわたしの気持ちを伝えてくれております。


 いいすねえ……北斗天帰掌……もしあやまって相手の拳に倒れようとも、相手を恨まず悔いを残さず天に帰るという誓いの儀礼! このトキの絵柄を選択した人は相当分かってますな。最高です。
 というわけで、まずは週刊少年チャンピオン2017年24号概況です。
 ■巻頭グラビア:牧野真莉愛嬢。モーニング娘。の方だそうです。
 ■『弱虫ペダル』:青八木、最後の望みの巻。いよいよスプリント!そして秘策とは!?
 ■『刃牙道』:お迎えの巻。烈海王の最期を聞いた花山君が本気にッッッ!! やばし!
 ■『BEASTERS』:宣誓…上へまいりますの巻。ルイ先輩の驚きの過去が!!
 ■『囚人リク』:出発の巻。連載300回記念の巻頭カラーです。やっとレノマと合流。今週ももちろん、リクの顔芸が超イイ感じですw
 ■『サウエとラップ』:この作品の著者である陸井先生は、前作の『いきいきごんぼ』という最高のギャグマンガで、結構頻繁に『バチバチ』のパロディをやってましたが、今回!とうとう!久しぶりに!『鮫島』がネタにされていて笑えます!! しかも百雲をネタにしてるしw
 てな感じの週刊少年チャンピオンでありました。
 
 さて、それでは今週の『鮫島』ニュースをお送りいたします。
 前話では、【百雲】の、勝ってしまった後の深い絶望が描かれ、あろうことか愛する綾子ちゃんに八つ当たりめいたブチ切れをかましてしまったところまで描かれましたが、今週はまさにそこからの続きです。
 どうやらこのブチ切れの心境をまとめると、
 ◆自分の周りに人が集まってきたのは、相撲があったからだ。
 ◆その相撲とは、ガキの頃から唯一誇れるものであり、俺が俺である証明だった。
 ◆外面は謙虚に見せていても、実は内心では絶対的な相撲への自信があった。
 ◆お前(=綾子ちゃん)だって、そんな連中(=絶対的な自信を持つ相撲があったから集まってきた人々)の一人だろ…
 ◆しかし、そんな絶対的な自信のよりどころである相撲は、【泡影】の前では通じず、何も出来なかった。
 そして、【百雲】は涙を流しながら、綾子ちゃんに「消えてくれ…」とまで言ってしまいます。曰く、「いらないんだ…もう…余分なものは…何も……誰かの存在が力になる…強さになるなんて…足りない部分を埋めた気になるだけのまやかしだ…圧倒的で絶対的な個 あそこにたどり着くために俺にもそれが必要なんだ…」
 なんてこった! 【百雲】! お前、そんな悲痛な決意だったのかよ! まさしく、以前指摘したケンシロウに勝つためにユリアを手に掛け(ようとし)たラオウ様的心情じゃないか! でも、それでいいのか……!? つづく綾子ちゃんのセリフは、もうまさしくユリア的ですよ!
 「うん…分かった…道明さんなら…大丈夫だよ…」
 そうです。ユリアも、ラオウ様が「ユリア!お前の命をくれい!」と迫った時、そっとラオウの傷に布を巻き、わたしに出来ることは心置きなく送り出すことだけ、わたしに見つめられていては突きにくいでしょう、と背を向けて命を差し出しました。まさしく今週の綾子ちゃんは、あのユリア的慈愛の笑顔です。
 まあ、ラオウ様は結局ユリアを殺すことができず、それ故にこそ愛を知って無想転生を身に付けることができたわけですが、一方綾子ちゃんを捨てた(?)【百雲】は、かなりのダーティーファイターへと変身してしまいます。それは、次のような理由からのようです。
 「今までの手本のような自分では勝てないのなら…泡影(アイツ)が先を読めるのなら…先が分かっているのなら…想像を超える攻めを…一歩でも…一手でも先を…たとえそこに讃美がなくとも…たとえ汚濁の中に落ちようと…泡影(あそこ)に溶けちまった誇りを…奪い返すために…」
 なるほど……そういうことだったんすねえ……この最後の【百雲】の絵はかなりカッコイイですよ! 妙な言い方かもしれませんが、かなり「前向きな闇落ち」とでも言えそうな変化ですなあ。バーキのようにやさぐれた(?)わけでもなく、【丈影】のように泡影崇拝(?)にはまったわけでもなく、あくまで、自分(の誇り)を取り戻すために、あえて魔狼の悪名をかぶろう!というユリアの兄ヒュウガ的心境かもしれないすね。いや、ヒュウガとはちょっと違うか。やっぱりラオウ様的にわたしには感じられますね。
 というわけで、場面は土俵上で【松明】こと常と対峙する現在に戻ります。場内は割れんばかりのブーイング&松明コール。【百雲】は常を睨みつけながら思います。
 「フン…価値観が違うんだよ…お前らとは…どいつもこいつもゆるい顔で土俵(ここ)に上がるな…潰れて消えろ…」
 しかし、そんな土俵を見つめる虎城理事長は思います。
 「百雲…輝きの強い力士だったが…より強大な光にあてられて暗闇に落ちたか…」
 虎城理事長、あなたもほんといい人になりましたなあ……『Brust』まではかなりの悪役だったのに。あなたの闇を祓ったのも、鯉太郎の、空流の男たちの光のパワーですよ。土俵上では常が、【百雲】の殺気に「嫌な空気をあててくる…」と警戒気味ですが「問題ない!」とまわしを叩いて一蹴、そんな常の成長に、虎城理事長は嬉し気に思います。
 「昔はどこか陰気な影があった奴だったがな…気質が今ではまるで違っとるな…空流部屋の光が…松明を中まで照らしたといったところか…これは面白い一戦だな…」
 そうです!理事長、さすが分かっておられる!読者としては理事長すらも変わったことに、お前が言うな!と言って差し上げたいですな! いや、自ら変わった理事長だからこそ、言えることなんすかねえ……! 空流部屋の光は、あなたさえも、そしてあなたの大切な息子【王虎】さえ照らしたんだもんね!
 一方、観客席の片隅で見守る常のクソ親父ですが、クソ親父は【百雲】の暗黒オーラを眺めながら、こりゃまたオッカネー相手じゃねえか、泣いて許してもらえよ、ガキの頃みてーによ、なんて言ってますが、常の「問題ない!」の自信の表情に、そして時間いっぱいで場内に溢れかえる松明コールで常の成長を知ります。いいすねえ!常!お前かっこいいぞ!
 場内を埋め尽くす松明コール。【百雲】はそんなもん、クソの役にも立たねーよ…とさらに闘志を燃やしますが、今週ラストは、鯉太郎と常の光の兄弟愛が美しいシーンで終わります。
 「常!見せてやれ…親父に…今のお前を…」
 「はい!」
 というわけで、ハッキョイ!! で今週は幕でありました。
 まあ、なんつうかですね、どんな場面でもあると思いますが、自分自身がチックショー――!!と思っている時に優しくされると、逆にイラッとすることは誰にでもありますわな。まあ、八つ当たりなんですが、真剣勝負に生きる【百雲】としては、優しさは邪魔なだけだと、泡影に勝つには必要ないと切り捨てたわけで、残酷に対して残酷で対抗しようとしているわけです。しかし、空流の男たちは残酷を情熱で超えようとしてるわけで、この戦いの果てに、【百雲】がどう変化するか、ホント楽しみすねえ!!
 それでは最後に、毎週のテンプレを貼って終わります。
 <場所:9月場所>
 【鮫島】東前頭十四枚目(5月場所で東前頭十枚目)
 【白水】西小結
 【松明】東前頭六枚目。常松改め。本場所は7連勝中
 【大吉】序2段【豆助】序ノ口【目丸手】序二段【川口】不明
 ------
 1日目:【飛天翔】西前頭十二枚目。石川改め。
 2日目:【宝玉光】西前頭十一枚目
 3日目:【舞ノ島】西前頭十枚目
 4日目:【巨桜丸】西前頭九枚目。新入幕力士
 5日目:【岩ノ藤】東前頭七枚目 
 6日目:【大山道】西前頭七枚目
 7日目:【蒼希狼】西前頭六枚目
 8日目:【丈影】東前頭四枚目。横綱の弟弟子
 9日目:【闘海丸】西小結
 10日目:【毘沙門】東前頭五枚目
 --------
 【王虎】&【猛虎】共に東大関
 【天雷】東関脇  【田上】番付不明※王虎の付け人をやってることが判明!!
 【泡影】東横綱。第72代。29場所連続優勝中。64連勝中。モンゴル人。
  他の力士は表にまとめた記事を見て下さい。
 
 というわけで、結論。
 今週は【百雲】闇落ちの理由がさらに深堀され、大体のところは判明しました。どうやら泡影に勝つため、という実にまっとうというか前向きな闇落ちだったわけですね。それはもはやいい悪いの問題ではないと思いますが、まあ、残酷な現実に残酷な心を持って対峙しても、光は見えないような気がしますね……そして虎城理事長の言う「空流部屋の光」は、果たして【百雲】の闇を祓えるのか。そして常はクソ親父の闇さえも祓うことができるのか。いや、ほんと『鮫島』は最高ですね! 以上。

↓ わたしとしては、今チャンピオンで『鮫島』の次におススメです。

 わたしは普段、あまりノンフィクションの本は読まない。ビジネス系の本は基本的に知ってるよということが多いし、自己啓発系の本を読むほど他人の生き方に興味はないし、時事系の本はインターネッツという銀河で事足りるし、というわけなのだが、それでもたまに、ちょっと気になるな、という本に出会うことがある。
 そして先日、本屋さんでなんか面白そうな本はねえかなあ、と渉猟している時に、はたと目が止まった本があった。その時は結局買わなかったのだが、その後電子書籍でも買えることが判明し、ま、ちょっと読んでみるか、と買ったのが、ちくま新書から発行されている『たたかう植物―仁義なき生存戦略』という本である。ちくま新書なんて買うのは初めてだ。

 なんでまた、この本を買ったかというと、上記の書影では小さくて読めないけれど、実は表1に、本書の内容を紹介する以下のような文章が書いてあり、それを読んで、なんか非常に興味がわいたのである。引用すると――
 ――植物たちの世界は、争いのない平和な世界であるように見えるかも知れない。しかし、本当にそうだろうか。こんなことを言ってしまうのはずいぶん無粋かも知れないが、残念ながらそんなことはまるでない。自然界は弱肉強食、適者生存の世の中である。それは植物の世界であっても何一つ変わらないのである
 わたしは、この文章を読んで、どういうわけか真っ先に、吉良吉影のことを思い出した。吉良吉影とは、JOJO第4部に登場する殺人鬼で、「激しい喜びはいらない…そのかわり深い絶望もない……「植物の心」のような人生を…そんな平穏な生活こそわたしの目標」としていて、高い能力を隠して平凡な人間であるように見せかけて、人殺しを重ねて生きてきた悪党である。
 なので、わたしは上記の本書の内容を読んだときに、こりゃあ、吉良吉影はこの本を読むべきだったな……植物の世界は決して平穏じゃねーみてえだぜ!? と思ったのである。

 というわけで、さっそく読んだ。
 結論から言うと、かなり面白知識が満載で、大変楽しめた。が、ちょっと……なんというか、メリハリがなく平板で、あっという間に読み終えることができるものの、なんとなく後に残らないというか、もうチョイ、各章ごとにまとめをつけるとかした方が、読者の印象に残る本になるのではないかという気がした。あまりにすらーーーっと山も落ちもなく、とにかく淡々と進むので、どうも記憶に残りにくいというか……ノンフィクションってこういうものだったっけ? これが当たり前、なのかな?

 まあ、いずれにせよ、内容自体は大変面白かったので、わたしがこの本で得た面白知識をいくつか紹介しよう。いや、あれだな、本書の章立てごとに、軽くまとめというかコメントを付すことにしようかな。
 【第1ラウンド:植物VS植物】
 章タイトルが「第●ラウンド」とかいう時点で、筆者のノリが分かると思う。基本的に本書は、植物VS●●という形式で、植物がいかに●●と戦うか、その戦略と歴史について書かれている。
 で、この第1ラウンドの対戦相手は、まさしく同族の「植物」である。光・水・土を植物同士が激しく奪い合っているわけで、その戦いの様相が、筆者の、やけに冷静だけど、その実やけに熱い、妙な語り口で語られていく。この筆者である稲垣氏はどうやらわたしと同年代っぽいが、かなり面白い人だとお見受けした。このラウンドでわたしが一番へえ~と思った面白知識は、一番最後に語られる「セイタカアワダチソウ」の話で、要するにセイタカアワダチソウは、化学物質=毒、を周りに散布することで、ライバルの植物を駆逐するらしいのだが(=そういう化学物質でほかの植物の成長を阻害することを「アレロパシー」というそうで、多かれ少なかれほとんどの植物が持っているそうだ)、その戦いに勝利して、戦う相手がいなくなると、自らの毒で自らがダメージを受けてしまうんだそうだ。それゆえ、何十年か前までは、空き地にあれほど勢力を誇っていたセイタカアワダチソウが、ほかの植物を駆逐して、圧勝を遂げた後で、自滅し、今でははあまり見かけられなくなっちゃったんですって。確かに。確かに最近はあまり見かけないすね。つーか、今はもう空き地自体あまり見かけないけど。いずれにせよ、へえ~である。
 【第2ラウンド:植物VS環境】
 このラウンドの対戦相手は、環境、である。植物同士の競争から、「戦わない選択」をした場合、水のないところや光の当たらないところなど、競争相手の植物がいないところに生きる場を見出す植物がいて、そういった場合、如何にして厳しい環境と戦うか、という話である。ここでは、C/S/Rという3つの観点から植物は戦略を立てている、という話が興味深かった。
 C=Competitiv=競争型=強い植物の採る戦略。これはまあ普通の戦略で、VS植物戦での戦略
 S=Stress Tolerance=ストレス耐性型=弱い植物の採る戦略で、乏しい水や光でも生き抜くぜと決心して進化した、じっと我慢型。サボテンがその典型だそうで、彼は我慢の子なので、ほかの強い植物がいない、過酷な地に根を下ろすことにしたんだそうだ。そしてサボテンの棘と球体ボディは、乏しい水をかき集めるために進化したフォルムなんですって。おまけにサボテンはC4回路という特別な光合成システムを持っていて、二酸化炭素を圧縮するそうで、まさしくターボエンジンと似た仕組みなんだそうだ。さらには、吸気と排気を行う器官をそれぞれ別にもつ、ツインカム仕様なんですと。面白いですなあ! ツインカムターボですよ。
 R=Ruderal=ルデラル型(=荒地植物型)=雑草がこれに当たるそうで、要するに、ほかの強い植物が力を発揮できないところで繁殖するタイプのことらしい。分かりにくいけれど、例えば人間の歩くような場所だったり、畑のようなすぐに引っこ抜かれちゃうような、条件の悪いところに住み着く連中のことらしい。中には、人間に踏んづけられることを想定して、人の靴にくっつきやすいように種子がべたべた成分でおおわれていたりもするそうで、雑草はあくまで「VS植物」戦には弱いけれど、実は大変強靭な連中だ、ということが著者の熱い語りでしれっと書かれています。へえ~。これまたおもろいすな。
 【第3ラウンド:植物VS病原菌】
 このラウンドの対戦相手は病原菌である。まあ要するに、植物はまったく目に見えないミクロの世界で病原菌と戦っていて、すべての植物は抗菌物質を身に付けているんだそうだ。人間が使う抗菌スプレーや抗菌グッズはたいていが植物由来なんですってよ。お茶のカテキンなんかも、元々は対病原菌のためにお茶が開発・運用している物質なんだそうだ。へえ~。このラウンドで一番面白いのが、「酸素」のお話だろう。もともと酸素は、光合成による「廃棄物」だったのだけれど、まあそのおかげでオゾン層が出来て紫外線が遮断され、生物が進化していったわけですが、なんと植物は活性酸素まで創り上げ、それで菌と戦うらしいんだな。おまけに!この後がミソなんですが、活性酸素は植物自身にとっても猛毒で、それを除去するために、抗酸化物質を作るようになったんですと。抗酸化物質といえば、ポリフェノールなんかがお馴染みですな。他にも、自爆作戦というのもあって、病原菌というのは、取り付いた細胞が生きてないと自分も生きられないわけで、病原菌が侵入した細胞は自ら「自殺」するんですって。こういう現象は勿論生物全般にあるようで、Apotosysと呼ばれる現象だそうだ。さらに、毒を生成するにも、成長するためのエネルギーコストを割かなくてはいけないので、植物自信が毒を生成するのではなく、自ら毒を作る菌を植物体内に住まわせている奴までいたり、実に面白い。まったくもってへえ~、である。そういう自分の中に住まわせている微生物は「エンドファイト」というんだそうだ。エンド=「中」ファイト=「植物」というギリシャ語ですってよ。ミトコンドリアや葉緑体という、細胞内の器官(?)も、元々は外の別のバクテリアが、細胞内に共生するようになったんだって。もう、なんどへえ~と言っても言い足りないすわ。
 【第4ラウンド:植物VS昆虫】
 このラウンドの対戦相手は昆虫である。まあ、要するに植物は葉っぱを食べられたくない、けど昆虫は食べたい、という関係なわけですが、このラウンドは、どちらかというと昆虫を受粉のために利用する植物の涙ぐましい努力が描かれている。蜜をあげるから寄っといで!みたいな。まあ、そこにも植物と昆虫の騙し合いがあったり、さまざまなドラマがあるわけですが、わたしが一番面白かったのは、昆虫の中には、特定の葉っぱしか食べない偏食家な奴らが結構いるじゃあないですか? その背後には、食べられたくない植物と、食べたい昆虫の壮絶な毒殺合戦の歴史があって、どんどんそれがエスカレートして、その葉っぱしか食べられなくなっちゃった、ということなんですってよ。へええ~。面白いなあ!
 【第5ラウンド:植物VS動物】
 このラウンドの対戦相手は動物で、まあ要するに、種を拡散したい植物が、いかにして動物を利用しているか、というお話で、これまた大変興味深い。このラウンドでわたしが一番、な、なんだって――!?と驚いたのが、恐竜絶滅の一要因ではないか、というとある説だ。それは、植物にとっては、やっぱり葉っぱをむしゃむしゃ食べられてしまうと困るわけで、ここでも植物は毒をメイン武器として戦うわけですが、「アルカロイド」という毒成分による中毒死が恐竜を絶滅に追いやった可能性があるそうです。へえ~。
 【第6ラウンド:植物VS人間】
 最終ラウンドの対戦相手は我々人間です。我々人間は、VS動物戦でせっかく植物が用意した毒(=例えばニコチンとか)もわざわざ平気で摂取するし、せっかく種を運んでもらうために用意した果実も、身だけ喰って種なんて捨てちゃうしで、植物からすると、人間は全く理解不能な謎生物なんですって。笑えるというか、なるほど、である。そもそも、苦みや辛みは、動物に対しては、「オレを喰ってもマズいぜ」という植物からのメッセージなのに、人間は、だがそれがいい、という始末。まったくやってられんわ、ということらしい。ちなみに子供が野菜が嫌いなのは、生物的に自然なんですってよ。なるほどねえ~。

 はっ!? いっけねえ! 調子に乗って書きすぎた。
 最後に、あとがきに記されている、なかなか印象深いことをまとめて終わりにしよう。
 自然界は弱肉強食であり、適者生存であり、そこにはルールも道徳心も全くない、殺伐とした殺し合いであることは間違いないわけだが、どうも、植物というのは、適者生存、というよりも、「適者共存」を目指しているように著者は感じるらしい。即ち敵を利用してはいるけれど、共に生きる道を選んだということで、それは言いようによっては狡賢いのかもしれないけれど、まさしく「与えよ、さらば与えられん」なわけです。イエス様が地上に現れるよりもはるか以前に、植物はその境地に至っていたというのが感動的だと、そういうことらしい。そして、「適者共存」を許さず、そもそもは植物が酸素を排出してできた地球環境なのに、あくまで適者生存を貫いて、ほかの種を殲滅しまくっているのは人類だけじゃねだろうか、というのが著者の想いだそうだ。
 なるほど、それはかなり深い話というか、面白い視点ですなあ。まあ、なんというか、人間は自然を克服してしまう未来がきっとやって来てしまうわけで、そんな圧勝状態になった時、セイタカアワダチソウのように自らの行いで勢いがなくなっちゃうかもしれないすね。いやはや、ほんと面白い本でありました。

 というわけで、もういい加減結論。
 本書『たたかう植物―仁義なき生存戦略』 には、まだまだ今回書き切れなかった面白知識満載です。ふと、なんか読む本がないなー、と思った時には、ちょっと本書を手に取ってみると面白いかもしれません。わたしとしては、熱烈にはお勧めしないけれど、わたし自身は超楽しめました。おもろいわホント。著者の語り口が結構笑えます。以上。

↓ この著者の稲垣先生は雑草に絡めたいろんな本を出してますね。たとえばこんなの。

 というわけで、毎週月曜日は恒例の週末映画興行データをまとめます。
 GW明けなのに何も書くことがなく、やれやれな気分のわたしですが、この週末からはまた観たい映画が続々公開されるので楽しみです。わたしが今後観ることが確定しているというか、ムビチケ購入済みなのはとりあえず以下の4本です。
 ◆Gurdians of the Galaxy Vol.2:5/12(金)公開。いよいよMCUとしてのつながりが描かれるのかどうか、その点が超楽しみす。スタローン隊長はどんな役なんだろうなー。
 ◆Split:5/12(金)公開。世界珍作映画監督選手権大会が開催されたら間違いなく優勝候補に挙がるであろう、M・ナイト・シャマラン監督の最新作。今回もトンデモ臭がプンプンするけど、かなり評判はイイので期待したい。
 ◆Arrival(邦題;メッセージ):5/19(金)公開。この監督Denis Villeneuve氏(※ケベック出身なのでドゥニ・ヴィルヌーヴと発音)はわたしが今注目している監督の一人。演出・撮影・音楽、音響設計に優れた映画を作る非常なテクニシャンだと思う。とにかく常に緊張感漂う作品が多い。そしてそういえば、Denis監督最新作の最新予告(すごい短いけど)が先週公開されましたな。これの全長版はUS時間で今日5/8(日本時間で明日5/9)に公開されるらしいすね。この超短い予告にもとうとうデッカードの姿が!興奮しますね!ヤバいす! ※追記:というわけで全長版が公開されたので、動画は全長版に差し替えました。ヤッバイ!!! 超興奮するっす!

 ◆LOGAN:6/1(木)公開。これはファーストデー公開なのにムビチケを買ってしまった……くそう、オレのバカ……。まあいずれにせよ、これでもう、ホントにFOXはX-MEN映画を作るのを終わらせて、さっさとMCUに権利を戻してほしいなあ……絶対無理だろうけど。

 とまあ、こんな予定ですが、まったく他人にはどうでもいいことだと思うので、さっさといつもの興行通信社による大本営発表をまとめておこう。

 1位:『美女と野獣』がV3。17日間合計で66.9億ほどだそうです。『SW:EPVII』が3週目で64億だったかな。それよりハイペースですな。同じディズニーの実写でGWに3週目を迎えた作品というと、2015年の『シンデレラ』がそうでした。あれは3週目で33億でしたかね。まあ、すげえ勢いですよ。
 2位:『名探偵コナン から紅の恋歌』が23日間で53.9億ほどだそうです。去年の『純黒』は4週目で50億チョイでした。こちらもものすごい勢いですなあ。
 3位:『ワイルド・スピード ICE BREAK』が10日間で25.2億ほどだそうです。前作『SKY MISSION』が2週目で15億チョイだったので、驚愕の成長。なんでなんだろう? そんなに面白いかな……。面白いんでしょうなあ……。
 4位:『追憶』が公開土日で2.27億円スタートだそうです。まずまずのスタートと言って良いのかな。かなり地味で完全おっさん向けのような気配ですが、キャストは若手実力派揃い。監督と撮影も大ベテラン。まず間違いなく観たら面白いのだろう、とは思いますが、わたしはWOWOW放送を待ちます。
 5位:『帝一の國』が9日間合計で10億チョイ届かずあたりと見積もる。わたしが想像していたよりずっと売れている模様。へえ~。しかし原作漫画は非常に特徴的なタッチなわけですが、アレはギャグマンガ、でいいんすよね?
 6位:『映画クレヨンしんちゃん 襲来!! 宇宙人シリリ』が23日間合計で13~14億ほどと見積もる。もうチョイ下か? 若干自信なし。
 7位:『LAST COP THE MOVIE』が公開土日で0.96億ほどだそうです。まあ、数字的には厳しいですな(※追記:5/3(水)公開なので、日曜までの5日間だと3億弱ぐらいまで行ってるようです。まあそれでも厳しい……かな……)。松竹作品だからなのか、ほとんどの映画をTOHOシネマズで観ているわたしは、一度も予告を劇場で観なかったような気がします。ついでに言うと、わたしが確実に観に行くはずの『家族はつらいよ2』もまだ一度も劇場で予告を観てないかも……。
 8位:『無限の住人』が9日間合計で……GW効果でプラス目に見ても6億程度であろうと見積もる。もっと稼いでたらごめんなさい。
 9位:『SING/シング』が52日間合計でどうやら49.2億と50億目前だそうです。つーか50億は超えられなかったんですね。このGWはUSJのミニオン・パークも大変な人出だったと結構報道されてましたな。大変結構なことです。そういえば『モアナ』は間違いなく50億を超えた頃合いだと思います。
  10位:『劇場版FAIRY TAIL―DRAGON CRY―』が公開土日で0.53億ほどだそうです。申し訳ない……もうマガジンも読まなくなって久しいのでわからん……。かろうじて一歩の単行本を買ってるぐらいなので……。

 とまあ、こんな週末だったそうです。まあ週末といっても、長い休みの最後の土日でしたが、休み中に会った高校生の甥っ子と中学生の姪っ子曰く、土曜は普通に学校があるそうで、しかも午後まで授業があるとかで、やっぱりサラリーマンはぬるま湯というか、楽なもんだなあ、としみじみ思ったGWでありました。
 
  というわけで、結論。
 いよいよ『美女と野獣』の勢いは加速し、100億突破に邁進中です。そしてわたしとしては、『ワイルド・スピード』の、ある意味異様な売れ方がどうもピンと来ないというか、謎です。ある種のヤンキー文化に繋がるものがあるのかもなあ。首都圏と地方で売れ方が違うのか、知りたいすね。どうなんだろうか。以上。

 昨日、先週のNHK大河『おんな城主直虎』を録画したのを観ていて、しっかし地味というか、井伊家は人材不足だなあ……つーか、まだちびっ子の虎松(後の井伊直政)に対する直虎さまのスパルタ教育振りは、きっと現代のお優しい方々からまた変なクレームがつくんじゃなかろうか……とまったく大きなお世話なことを思いながら、それにしても井伊家は、さっさと家康の手下になって、勝ち組になるわけで、徳川四天王なんて言われるほどに出世するのは、今のところのドラマの流れを見ると、実力というよりもまるっきり運だったのかなあ、と極めてテキトーなことを感じた。まあ、後に青年となった直政が24~25歳ごろの小牧・長久手の戦いで超頑張るわけで、家康に仕えて以降は実力なのは間違いないと思うけれど、はたしてNHK大河『おんな城主』はどこまで描くことになるのだろうか……? 直虎さまの死までだろうけど、それは時代的に一体どの辺りなんだろうか?
 などとぼんやり考えていたのだが、そういや、「ひこにゃん」でお馴染みの井伊家の赤備えのあの鎧が、超印象に残るシブイ映画があったっけ、あれは……そうだ、あの作品だ、と一つの映画を思い出した。それは、2011年に観た『一命』という作品である。

 この作品は、珍しく邦画でかつ時代劇なのに3D作品として公開され、わたしも3D版で観て、ああ、なるほど、チャンバラに3Dはアリだな、そして雪の舞うシーンも3Dだとイイじゃないですか、と大変面白かった覚えがある作品だ。わたしは実は三池監督作品はあまり好みでないし、主演の市川海老蔵氏にも何も思い入れもないのだが、あの『一命』という映画は大変素晴らしかったと称賛したいと思っている。
 ところで、その『一命』という映画は、実際のところ1962年に発表されたとある映画のリメイクであることはもう有名であろう。いや、リメイクってのは違うか、同じ小説を原作にしている、というべきか。まあ、とにかくわたしはその古い方の作品は観ていないのだが、昨日、あれ、そういや、『一命』がWOWOWで放送されたときに、一緒にその作品も放送されたんじゃなかったっけ? 一緒の時期じゃないとしても、そのオリジナル作品も録画したような気がする……ぞ? という気がしてならず、おまけに井伊家のあの鎧が何故か頭から離れないので、HDD内および焼いたBlu-rayディスクを捜索したところ、ちゃんと『一命』とセットでその古い作品の方もBlu-rayに焼いてあるのを発見した。さすがオレ、抜かりないぜ! と自画自賛しつつ、それじゃその古い方を観てみよう、という気になったのが、昨晩20時ころのことである。
 その作品こそ、1962年の松竹作品『切腹』である。監督は小林正樹氏。脚本は数多くの黒澤明作品でもお馴染みの橋本忍氏、そして音楽は巨匠武満徹氏だ。わたしとしてはこのお三方揃い踏みという時点で、これは絶対面白いに違いない、という予感を抱いたわけで、実際観てみたところ、実に素晴らしかったのである。

 まず、物語は正確に比較したわけではないが、わたしの記憶にある『一命』そのままで、『一命』の脚本って、この『切腹』の脚本を丸ごとそのまま使ってんじゃね? と思うぐらい一緒だった。でもまあ、結果的にそりゃ当たり前か。で、どんな物語かというと――
 時はおそらく1600年代前半。芸州広島藩・福島家に仕えていた浪人者の主人公が、井伊家にやって来て、もう生きてても仕方ないので切腹したいんだけど、その場として井伊家の玄関先を貸してくれないか、とお願いするところから始まる。この背景にある、福島家改易といえば、戦国武将オタクには大変有名な事件で、城の補修が武家諸法度に違反するとして秀忠にケチをつけられたあの事件のことだ。福島正則といえば、三成が大嫌いで東軍についたけれど、そもそもはバリバリの秀吉配下の武闘派の男であり、徳川家からすれば超・目の上のタンコブである。あの事件が1619年のことで、本作の物語はそれから10年後ぐらいなので、まあ大体1630年ごろの話と思っていいだろう(主人公は、関ケ原(だったか大坂の陣かも)に出陣した時以来、数十年ぶりに人を斬るってセリフがあった)。 で、当時、そういった食い詰めた浪人者が江戸にはいっぱいいて、「押しかけ切腹」というものに、各武家は大変迷惑していたという背景があったそうだ。なんでそんな浪人者の「押しかけ切腹」がブームになっていたかというと、それを最初にやった浪人者が、「まさしく武士の鑑だ、ならばうちで雇って進ぜよう」と思わぬ再就職に成功したことがあったらしく、その後それを真似した奴がいっぱい出てきて、各武家は「ちょっともう勘弁しろよ……超迷惑……じゃあ、ちょっとだけ金やるから、さっさと失せやがれ」とあしらうようになり、結果的に、「押しかけ切腹は金になる」ことを発見した不届きな浪人者が多かった、てなことらしい。
 というわけで、物語では、 主人公が切腹させてくれと井伊家に現れ、井伊家の留守居の家老が、またかよ……と思いながら、ところであんた、元福島家中のお人って言ったね、そういやちょっと前にも、同じ元福島家の野郎が来たんだよ……と、その時の話を主人公に聞かせる。いやあ、あいつはホントダメな奴で、じゃあ、どうぞ、腹切しなさいよ、って言ったら動揺しちゃって、まあ見苦しかったね。結局、無理矢理にでも切腹してもらったけどさ、だからあんたも、さっさと帰んなさいよ、なんて話をする。そして、実は主人公こそ、その無理矢理切腹させられてしまった男の義父だったことが分かり、主人公はとある決意をもって井伊家にやってきたことが判明する――てなお話である。
 わたしはこの脚本は極めて精巧で実に見事なものだと手放しで賞賛したい。回想と現実の順番というか組み合わせ方が実に素晴らしく、グイグイと物語に引き込まれる傑作だ。そしてわたしが今回観た1962年Verは、とにかく役者陣の演技も素晴らしかった。わたしが特に感銘を受けたのが、以下の4人の方々だ。
 ◆主人公:津雲半四郎
 演じたのは仲代達也氏。すごい迫力&眼力。どうやら当時30歳ぐらいらしい。わたしは『一命』においてこの役を演じた海老蔵氏(当時33歳か34歳ぐらいかな)は、ビジュアル的に、お話の割には若すぎるんじゃなかろうか? という印象を持ったが、調べてみれば当時の仲代氏の方が若いんすねえ。しかしそれでもまったく違和感なし。もう完全に後がない、超切羽詰まった心境がすさまじく伝わり、深く、激しく、静かに怒り狂っているそのオーラに心を鷲掴みにされた気分です。とにかくすごい。
 ◆井伊家馬廻り番:沢潟彦九郎
 演じたのは、丹波哲郎氏。当時40歳ぐらいらしい。これが超ニヒルというかクールで、超おっかない見事な演技であった。物語的には悪役なのだが、彼の主張は実のところ至極ごもっともなことばかりで、確かに冷たい男ではあったけれど、法的には、というか当時の常識的にはなんの瑕疵もないド真面目な侍だったと思う。とにかく怖くてカッコイイ。そして『一命』においてこの役を演じたのは青木崇高氏か。確か丹波先生Verよりももっと嫌な奴で、悪党っぽく描かれていたと思う。なので最終的な物語の結末にざまあと思った記憶がある。
 ◆井伊家家老:斎藤勘解由
 演じたのは三國連太郎氏。当時39歳か? やはり眼力が凄い。この役は、最初は冷静に淡々と話を聞き、話すのだが、だんだんと津雲半四郎の正体が分かって来るにつれて動揺してくる、というように、観客の理解にシンクロする非常に重要な役で、やっぱり物語的には悪役かもしれないけれど、この人も別に何も悪いことはしていないと思う。この役は、『一命』では役所広司氏が演じ、わたしの好みとしては役所氏の方が良かったかも。役所氏も実にシブかったすね。ただ、やっぱり『一命』における役所氏の演じた斎藤勘解由の方が、悪役色は強かったかも。
 ◆津雲半四郎の娘:美保
 演じたのは、若き頃の岩下志麻さん。当時21歳かな!? 超美人というか、やっぱり若いころは相当可愛かったんですなあ。今ももちろんお美しい方ですが、びっくりするぐらいの別嬪さんでした。芝居ぶりも極めて上物。『一命』でこの役を演じたのは、満島ひかりさん。確かに彼女も儚く美しく、演技ぶりも大変良かったと存じます。
 しかし、やっぱり記憶にある『一命』は当然カラー(そして3D)で、今回観た『切腹』はモノクロなわけで、その点だけでもかなり違うはずなのに、印象としてはそれほど違いがないのは、やっぱり当時の時代劇のライティングや撮影が見事だからなんじゃなかろうか……という気がしてならない。演出・撮影ともにパーフェクトに近いとわたしは感じた。
 ただ、やっぱりカラーだと、「赤」が鮮明に目に焼き付くわけで、この作品では「赤」という色は、極めて重要だろうと思う。まずは「血」。そして、やっぱり「赤備え」のあの鎧だ。赤は、基本的にモノクロでは「黒」(あるいは「グレー」)として描画されるわけで、モノクロゆえのインパクトも当然あるのだが、本物の「赤」の鮮烈さにはやっぱり敵わないのかもしれない。とにかく、暗い画が続く『一命』の中で、赤い血と赤備えの鎧が非常に強いインパクトとして記憶に残っている。
 また『一命』で、無理矢理切腹させられた男を演じた瑛太氏の演技も素晴らしかったのが印象的だ。この役は、『切腹』で同じ役を演じた石濱朗氏よりも、瑛太氏の方が優っていたような気がするのだが、それでも、モノクロで描かれた、ぎらついた、切羽詰まった眼や必死の形相は実に迫力があったと思う。素晴らしい演技ぶりであった。

 というわけで、もう言いたいことがなくなったので結論。
 NHK大河を観ながら、井伊家つながりで『一命』『切腹』という映画を連想するのは映画オタとしての習性なのかもしれないが、もし井伊家に興味がある方は、ぜひこの2作を観て見比べていただきたいと思う。両作ともに大変な傑作だとわたしは思う。『一命』は、三池監督作品にしては珍しく(?)落ち着きがあるというか重厚でオススメだし、小林監督Verの『切腹』も、役者陣の熱演と恐ろしく緊張感に満ちた画面は一見の価値ありであろう。実にシブく音楽もイイ。しかしホント、脚本レベルではどのぐらい違いがあるんだろうか。『一命』のスタッフクレジットには『切腹』の脚本を書いた橋本忍氏の名はないのかな……どうなんでしょう。『一命』の脚本家がまさか『切腹』を観てないわけないしな……。ちょっと今度『一命』をもう一度見てみよっと。以上。

↓ こちらが原作。『一命』公開時に復刻?されたっぽい。元は「異聞浪人記」という短編みたいですな。
一命 (講談社文庫)
滝口 康彦
講談社
2011-06-15

↓ こちらが『一命』の配信Ver。
一命
市川海老蔵
2013-11-26

↓ おっと、『切腹』も配信されてら。便利な世の中だなあ。
切腹
仲代達矢
2013-11-26

 現在GW真っ只中の日本であるが、わたしは昨日、やりかけの請負仕事が気になって、ちょっと出社して軽く片付けるか、と思っていたのだが、いざ取り掛かるとまるでデータの統一性のないひどい状態で、データを整え、データベース化し、さてようやく準備ができたぜ、というところでまたいろいろなデータが欠けていたりフラグ付けが中途半端だったりとめんどくさいことが判明し、上等だこの野郎!と半ばキレ気味で分析をしていたらあっというまに7時間が経過し、大体の見通しがついたところで、もう今日はここまで、と打ち切って家に帰った。わたしだから7時間で済んだが、依頼主が力技でやったらおそらく50時間はかかるであろうと思う。やれやれ。
 で。夜、なんか映画でも見ようとHDD内にWOWOWで録りためた一覧を眺めていたところ、つい最近、『THE 5TH WAVE』(邦題:フィフス・ウェイブ)という作品が録画されていることに気が付いた。あ、これ、あれだ、ブサカワでおなじみのChloë Grace Moretzちゃん主演のラノベ原作モノだ、と、わたしにしては珍しく、タイトルですぐに内容を思い出したので、さっそく視聴を開始することにした。そして結論から言うと、ま、予想よりもずっと面白くなかったすね……かなりがっかりというか、なんじゃこりゃ、であった。というわけで、以下ネタバレ満載につき、読む方は自己責任でお願いします。

 大体の物語の進行は、上記予告の通りと言ってよさそうだ。ある日突然、謎の宇宙船が地球に飛来する。数日間、なんのアクションも見せない宇宙船。人々はそれを「THE OTHERS」と呼び、一体全体なんなんだ、と思いつつも、日常生活を送るが、突如「第1波=The 1st Wave」と呼ばれる攻撃を受ける。それは電磁パルスによる電子機器の破壊で、これで地球は電力消失、スマホも車も飛行機も何もかもぶっ壊れる。続く「The 2nd Wave」は、大地震で、これで沿岸都市および島など海に近い都市はすべて津波で消失する。さらにやってきた「The 3rd Wave」は、強力なインフルエンザ(?)ウィルスの蔓延で、具体的な数字はなかったような気がするけどとにかく相当数の人類は死亡。こういう展開が冒頭でざっと描写され、生き残った女子高生、キャシーは父と弟とともに、難民キャンプ的なところへ避難するが、そこにやってきた軍人たちの指示で、子供たちだけ基地へ連行される、のだが、弟(推定10歳以下)が、うえーん、おねえちゃん、ぼく、大切なクマのぬいぐるみをベッドにわすれてきちゃったよぅ……!というので、仕方ないわね私がとってくるわ、とバスを降りダッシュでぬいぐるみをとって戻るが、一足先にバスは出発、弟と生き別れてしまうというお約束の展開が炸裂する。どうしよう、と一旦父と合流しようとするも、大人たちは一カ所に集められ、軍人からなにやら話を聞いていて、どうやら「The 4th Wave」が発動しており、とうとうTHE OTHERSは自ら人体に寄生して、その肉体を乗っ取っているらしい、そしてこの中にもTHE OTHERSに乗っ取られたやつがいるはずだ! ということが明かされ、バカな、俺は人間だ、ここから解放しろ!的な騒動から、銃乱射パーティーに発展、全員死亡となり、残った数名の軍人だけ、さっさと基地へ戻る。そして取り残されたキャシーは、弟を取り戻すため、80マイル(約130㎞)離れた陸軍基地へ向かう。道中、謎のイケメンと出会い、警戒しながらもあっさりFall in Love、そして驚愕の「The 5th Wave」の正体を知るのであった――的なお話であった。
 もういろいろ突っ込みがいのある、なかなか安いお話である。
 すべての電子機器がイカれ、車も走っていないはずなのに、やたらと装備のしっかりした軍人が出てきた時点で、普通なら、なるほど、こいつら自身が……と誰でもわかると思うが、まあ要するにそういうことです。物語もキャラクターも、ともにこれが新人賞の応募原稿だったらなら、わたしなら2次選考で落とすだろうな……と思いながら観ていたのだが、最終的なオチも、えっ!? ここで終わりなんだ!? というぶった切りで、なんというか……こりゃあかんわ……としか感想は出てこない。
 というわけで、さっそく原作を調べてみたところ、やはり、アメリカン・ラノベお約束の3部作のようで、続きはちゃんとあるらしい。だが、正直この先の物語が面白くなるかどうかは相当怪しく、わたしとしても読んでみたいとは現状思わない。おっと、一応、この映画の原作に当たる1作目だけは日本語訳が出ているみたいですな。
フィフス・ウェイブ (集英社文庫)
リック ヤンシー
集英社
2016-03-18

 高いなあ……文庫で1,296円だって。こりゃあ売れないでしょうな。それすなわち、第2作第3作の翻訳は望めないだろうな……。というわけで、もはや本作について言いたいことはないので、それよりも、アメリカン・ラノベとわたしが言う、いわゆる「YAノベル」というものについて、書いておこう。
 といっても、わたしもそれほど多くの「YAノベル」を読んでいるわけではないのだが、おそらく、少なくとも映画化されたYAノベルには、以下のような共通点がある。わたしはこれを、いつも三大要素と呼んでいる。
 ◆三部作である場合が多い。ただし、1作目は比較的きっちりとオチも整っていて、続く2作目3作目が前後編的な場合が多い。典型的なのがやっぱり『The Hunger Games』でしょうな。
 ◆主人公は10代女子(で一人称語り)が圧倒的。これはきっと読者層が10代女子だから、なんだと思う。例外的なのが『The Maze Runner』で、アレは男主人公ですな。
 ◆ラブ展開は必須。基本的に主人公女子がイケメン二人の間で三角関係気味になる。ただし、主人公女子は最初は恋愛なんて!と思っている場合が多く、それなのに、あっさり二人の間で揺れ動く。それが多くの場合一人称語りなので(ちなみに本作も原作小説はおそらく主人公キャシーの一人称語り)、要するに私はどうしたらいいの?的なお悩みが延々と綴られる。これも、対象読者のあこがれのシチュエーションなんだと思う。ラブ展開に思いっきり振っているのが『Twilight』シリーズでしょうな。でもあれは4部作か。
 とまあ、こういう作品が多いのだが、しかし、我々日本人からすると、正直キャラも物語も、かなり退屈な場合が多く、日本のライトノベルの方が、ジャンルも幅広く、キャラクターも様々で、物語力でいうとすべてにおいて優っているような気がわたしはする。まあ、近年ではすっかりテンプレ化が進んでしまっているので、日本のライトノベルのクオリティも下がっているのは残念だが、それでもなお、日本のライトノベルが質的にも量的にも進化したのは、日本では漫画が古くから発達していて、物語に慣れているというか、いわば口が肥えているからであろうとわたしはにらんでいる。
 本作、『The 5th Wave』も、日本人が書いたらもっと面白くなっていたと根拠なく思うわたしだが、残念ながら映画作品も、それほどクオリティは高くなかった。CGもかなりチープだし(ただし冒頭の飛行機が墜落するシーンだけは凄い質感)、おそらくロケも1~2週間あれば余裕だろう。どうやら予算規模は38M$(約41億円)、興行成績はUS国内で34M$(約37億円)ということで、残念ながら赤字で終わったものと思われる。Rotten Tomatoesの評価もかなり低い。まあ、これは元の原作のイマイチさを映画ではカバーできなかったということで、主演のブサカワChloë 嬢の責任では全くないと思う。
 ところで、そういえばアメリカン・ラノベと日本のライトノベルで、もう一つ、決定的(?)に違うんじゃないかと思うことがあったのでメモしておこう。それは、作者の年齢だ。日本のラノベ作家は、圧倒的に若い。まあ最近は軒並み年齢も上がってきて、上は40代もかなり増えてしまったが、そもそもは20代でデビューするのが一般的だろう。作者と読者の年齢が近いからこそ、より一層読者の共感も高まる、という部分は無視できまい。しかし、アメリカン・ラノベの著者って……結構歳いってるんすよね。本作の著者Rick Yancey氏は1962年生まれだそうなので55歳か? 55歳のおっさんが10代女子のお悩みを書いて、面白い作品になるとはあんまり思えないすね。
 
 さて、最後に、映画のキャストと監督に触れて終わりにしよう。主人公キャシーを演じたChloë Grace Moretzちゃんについてはもういいすよね? ああ、1997年2月生まれだからもう20歳になったんですなあ。2009年の『(500)Days of Summer』でのおませなちびっこや、2010年の『Kick Ass』でのヒット・ガールは本当にかわいくて天使クラスだったけれど、残念ながら横方向に成長してしまって、まったくのブサカワになってしまったのが残念ですのう……。このほかには、私が知っている役者は二人しかいなかった。一人が、かなり後半だけの登場となる、やけにパンクなおっかない女子を演じたのがMaika Monroeちゃんで、彼女は結構いろいろ映画に出てます。このBlogでも記事を書いた『It Follows』とか、『Independence Day: Resurgence』とか。いつもはブロンドの美人系のかわいい彼女なのに、今回は黒髪&ゴスメイク(?)で最初誰だか分らなかったっす。そしてもう一人が『X-Men Origins: Wolverine』で、セイバートゥースを演じたLiev Schreiber氏。この人は顔に特徴があるので登場時にすぐわかった。
 あとは……主人公キャシーの高校のモテ男で事実上のもう一人の主人公の男の子を演じたのがNick Robinson君22歳。観ているときは全く気が付かなかったけれどさっき調べたら、彼は『Jurassic World』のあの兄弟のお兄ちゃんの方ですな。全然気が付かなかったわ。それと、監督はJ Blakeson氏という方だが、この方は『The Disappearance of Alice Creed』(邦題:アリス・クリードの失踪)を撮った監督でした。へえ~!? あの映画は監督自身のオリジナル脚本で、結構面白かったのに、今回は原作モノで自分で脚本書いてないからなあ……演出的にも、とりわけここがすごいという点はなかったかなあ……。なんか……残念す。

 というわけで、結論。
 アメリカン・ラノベ原作の『THE 5TH WAVE』という映画を観てみたところ、残念ながらキャラクターも物語も、いずれもかなりイマイチであった。わたしは日本のラノベの物語力の高さは相当世界で売れるはずだと思っているが、正直、本作レベルの物語では、日本ではデビューするのも困難なのではなかろうか。しかし……Chloë 嬢の成長ぶりも残念というか……もうちょい縦方向に成長してほしかった……なんつうか、幼児体形なんすよ……もう二十歳なのに。ウエストがないっつーか……ホント残念す。以上。

↓ こちらは大変緊張感あふれた傑作……なんだけど、後半のBL展開は不要だと思います。なぜ急にそんな展開にしたんだ……
アリス・クリードの失踪 [DVD]
ジェマ・アータートン
東宝
2012-01-27

 というわけで、月曜日は恒例の週末映画興行データをまとめます。
 ――と、思っていたものの、今週月曜日(5/1)は数字の発表がなかったので、あ、なるほど、GWでお休みなのかな? と勝手に判断して今週はナシかと思ったら、昨日の火曜日、興行通信社の大本営発表がありました。どうやら、メーデーで東宝がお休みだったみたいですな。古くてデカイ会社はいまだに「メーデー」なんてのがあるんすよね。わたしの古巣は去年からかな、メーデー休みは廃止されました。
 というわけで、今日は水曜日ですが、昨日発表された興行通信社の大本営発表をさっさとまとめておきます。
 1位:『美女と野獣』がV2です。10日間でもうすでに36.5億稼いでいるそうで、これはもう100億行っちゃうんでしょうな。すごいすね。2010年の『アリス・イン・ワンダーランド』は2週終わりで35億チョイ、6週終わりで100億突破でしたが、それよりチョイ早いのかもしれないすね。わたしももう一度観に行くつもりです。
 2位:『名探偵コナン から紅の恋歌』が16日間で37.9億だそうです。37~40億ぐらい稼いでいるんでしょうか。去年は3W終わりで36.9億だったのかな。すごいなあ、本当に。
 3位:『ワイルド・スピード ICE BREAK』が公開土日で6.34億だそうです。金曜公開だから3日間だと8億を超えてるそうですね。US本国をはじめ世界中で大ヒット中。中国ではもう3億ドルを超えてます。つーか、どんどんキャストが豪華になっていきますな。今回からは、カート・ラッセル氏やシャーリーズ・セロン様、そして御大の息子でおなじみのスコット・イーストウッド君まで参戦。しかし、わたしはどうしてもこのシリーズにハマれず……観に行く気がしないんすよね……。あ、この映画、配給は東宝東和か……東宝め……またしても!
 4位:『帝一の國』が公開土日で2.1億稼いだそうです。原作漫画はジャンプスクエアでもう完結してるんだっけ。単行本3巻まで読んで飽きちゃった。数字的にはまずまずのスタートでしょうか。観客の男女比は1:9で圧倒的に10代女子だそうです。へえ~……。
 5位:『映画クレヨンしんちゃん 襲来!! 宇宙人シリリ』が16日間で11~12億ぐらいと見積もる。特に根拠なく、去年と同じくらいかな、と。去年よりチョイ下なら、10億をチョイ超えたぐらいかも。いただいた情報によると現在8億チョイだそうです。シリリ!どうした!すげえインパクトのあるビジュアルなのに!
 6位:『無限の住人』が公開土日で1.89億だそうです。競合ひしめく中、ワーナー配給の邦画としては、まずまずのスタートなのではないでしょうか。こちらも原作漫画は最後まで読んでないす。トンデモ時代劇は大好きですが、ちょっと……あ、アニメやってたのは2008年、もう9年前か。そんな前なんだなあ……。
 7位:『SING/シング』が45日間合計で47億突破だそうです。50億までもうちょい、頑張れ!
 8位:『3月のライオン【後編】』が9日間合計で、どうだろう、3~4億ぐらいと見積もる。もうちょい上かな? いずれにせよ厳しいすねえ。
 9位:『モアナと伝説の海』が51日間合計で、とうとう50億に届いたぐらいではなかろうか?先週末時点で48.4億ぐらいだったらしいので、50億に届いたと思いたい……けど、現実的にはギリ手前ぐらいかも。もっと伸びると思ったのになあ……。
  10位:『映画かみさまみならい ヒミツのここたま』が公開土日で数千万ってところでしょう。バンダイのおもちゃ原案のアニメですが、新規IPとしてはまだまだこれからなんでしょうな。来週5/10にバンナムHDの決算発表があるので、関連アイテムがどれぐらい売れてるのか、チェックしておくのを忘れるなよ>自分。一応、第3四半期決算の資料によると、通期で24億ほどの売上規模のIPに育っているそうで、アイカツが27億見込なので結構順調に育ってるようですな。さすがバンダイ、抜かりないすね。

 とまあ、こんな週末だったそうです。
 しかしGWはどこも混んでいて、どっかに行こうという気にはなれないすねえ……。なので、持ち帰りの仕事をしつつ、溜まっている映画でも消化しながらぼんやり過ごそうと存じます。

 というわけで、結論。
 さすがに『美女と野獣』の強さはハンパなく、100億は行っちゃう気配。そしてわたしにはイマイチピンと来ない『ワイルド・スピード』も世界中の大ヒットを受けて日本でも大きく成長が加速中です。すごいなあ。つーかですね、わたしとしてはさっさとGWが終わって、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』の公開が始まるのが楽しみっす。以上。

 昨日、ずっと待っていた(2)巻が、ようやく発売になったコミックを読んで、はー面白かったわ……と満足したわたしだが、基本的にこのBlogでは、一度取り上げたコミック作品は、次の新刊が出ても記事を書かないでいる。のだが、あれっ? ちょっと待てよ? と調べてみたところ、(1)巻を読んだときの記事を書いていないことに気が付いた。
 というわけで、今日は(1)巻(2)巻をまとめてレビューを書こうと思った次第である。実に面白く、絵もいいし、漫画力が大変高い作品である。タイトルを『空挺ドラゴンズ』といい、「龍」の棲む世界で「龍捕り(おろちとり)」を生業とする飛行船乗りたちのお話だ。非常にファンタジックでありながら、細かい設定がきっちりと決まっているようで、世界観が極めてしっかり、ある意味リアルに存在している。そのため、キャラクターたちも、とても溌剌としていて、まさしくその世界に生きており、どことなくジブリ的な空気感がとても様になっているというか、ともかく実にイイ!のである。
 本作は講談社のgoodアフタヌーン誌に連載中だそうで、公式Webサイトで第1話が読めるので、まずはそちらを読んでもらった方が早いな。上のリンクをクリックして読んでみてください。


 さてと。基本的な世界観は前述の通りだが、第1話を読んでいただいたならもう感じてもらえたと思う。そう、この世界で描かれる「龍」及び「捕龍船」は、要するに我々の世界で言うと、鯨や捕鯨船に近いイメージだ。空を飛ぶ「龍」を、「捕龍船」で追い、銛を打ち込み捕らえた龍を解体し、その肉や油を売って生活するわけである。そんな「龍捕り」の面々を描いた物語は、龍の食べ方の料理描写もやけに細かく、ある意味『ダンジョン飯』めいた風味あるし、あるいは空中海賊(空賊?)も出てきたりして、そんな面はとても「ラピュタ」っぽくもある。不思議な漫画だ。(1)巻では基本的にずっと空が舞台であり、昨日発売になった(2)巻では、立ち寄った港町が舞台となる陸(おか)の物語になっているので、この期に(1)巻(2)巻をまとめ買いして是非読んでいただきたいと思う。
 そして登場キャラクターも、まだまだその出自というか、なぜ「龍捕り」となったか、というような過去の話は一切出てこないけれど、それぞれが非常にキャラが立っていて、とても生き生きしている。というわけで、お約束のキャラ紹介をやっておこう。
 ◆ミカ:捕龍船「クィン・ザザ」号のエース龍捕り(おろちとり)ともいうべき、主人公的キャラ。ロン毛無精ひげ。勇敢というより無謀。とにかく、捕らえた龍を「美味しくいただくこと」が最大のモチベーション、のように現状では描かれている。(2)巻では「千剖士」という古くから龍を解体・加工して暮らしてきた一族の人々が出てくるが、その一族の出ではないけれど、その一族と仲がいいことが判明。捕らえる時の勇猛さだけでなく、解体の腕も確か。彼の過去にどんなことがあったのかは、今後語られていくんすかねえ。
 ◆タキタ:見習い龍捕りの女子。明るく元気な娘さん。クルーのみんなからも可愛がられている(?)雑用係。経緯は分からないが支度金として船に借金がある模様。
 ◆ジロー:まだ若い龍捕りの青年(少年?)。背も低い。目がいいので見張り台に立つことも。父が龍捕りだったらしく、父に習った天測も正確。生真面目。何かと突っかかるが、やっぱり彼もクルーのみんなに可愛がられていると思う。つーかですね、クルーのおっさんたちも、いろいろあるけどみんな善人ばかりなんすよね。それがこの作品を大変心地よくしていると思うな。(2)巻では町に住むカーチャという少女と仲良くなるエピソードも大変良い。
 ◆ヴァニー(ヴァナベル):捕龍の腕は船内一の腕利き美女。クールビューティー。曰く、地上に居場所がなかったから、空の飛び方を覚えただけ、だそうです。彼女を「ヴァナベル」と呼ぶのはミカだけで、何らかの二人だけの過去があるのかもしれないすな。超・酒豪で、一切酔わない模様。カッコイイ女性。クールであっても、船内で浮いているとかそういうことはなく、男女問わずみんなから尊敬されているような感じ。
 ◆ギブス:龍捕りのリーダー。のっぽの髭もじゃのおじさん。
 ◆クロッコ:船長代理。そういや船長がいないな。クィン・ザザ号を愛してるっぽい。
 ◆リー:管理長?的な、船内の金庫番。
 ◆カペラ:操舵手の眼鏡女子。背が高い
 ◆ヨシさん:料理長(?)
 ◆ニコ:龍捕りの男の一人。背が高く頭に黒バンダナ(ニット帽?)着用で目が隠れている顎鬚の人。次元大介っぽい風貌。
 ◆オーケン:龍捕りの男の一人。黒髪おかっぱみたいな髪型の糸目の人。
 ◆フェイ:龍捕りの男の一人。金髪。若干チャラい系?
 ◆ソラヤ:龍捕りの男の一人。黒髪。カイさん的な皮肉屋めいた、喧嘩騒ぎにも参加しない系
 ◆ダグ:機関長?のおじちゃん。
 ◆メイン:機関士の女子。黒髪黒目。
 ◆ウラ爺:「千剖士」の長。ミカとは馴染みの仲。盲目。
 ◆ナナミ:「千剖士」の一族の女性。黒髪ロング&三つ編み&太眉。
 えーと、他にもまだクルーはいるようだが(1)巻(2)巻で名前が出てきたのは以上かな。まあとにかく、非常に独特な、物語的にも、絵柄的にも味のある、大変面白い漫画であるとわたしとしては万人にお勧めであります。あ、あと、出てくる「龍」のデザインが、毎回それぞれ独特で、それもひとつの見どころというか、これまでの「龍」の常識とは違う非常にオリジナリティがあって、わたしとしては大変素晴らしいと思った。
 なお、著者である桑原太矩先生については、あまり情報がないのだが……どうやらアフタヌーンで『とっかぶ 特別課外授業』という作品を連載していたようで、こちらはまた全然まったくの現代物で、まるで雰囲気は違うんですな。ちょっと気になるので、次のフェアのときにでも買ってみようかしら。おっと、以下↓これは(1)巻が出た時の桑原先生のTweetだが、やっぱりすぐ重版されたりと結構売れてるんですかね。もっともっと売れてほしいですな!

 というわけで、結論。
 去年、ふとしたきっかけで買って読み、大変気に入っていた漫画『空挺ドラゴンズ』の(2)巻が昨日発売になり、すぐさま買って読んだところ(電子書籍なので、昨日、新刊出ましたよーと勝手にお知らせが来たので、朝のコーヒーを飲みながらすぐさま買った。なんて便利な世の中!)、今回も大変満足の内容で、面白かった。今のところ、キャラクター達の背景はほぼ描かれていないが、そういうのはとりあえず現状ではナシでも十分楽しめると思うし、あまりそういった面にこだわらなくてもいいかなというような気がする。とにかく世界観がしっかりしているし、キャラクターも大変好ましい。今、わたしが非常に続刊を望む漫画の一つであることは間違いなかろう。大変気に入っておりますので、ぜひ! 以上。

↓ 桑原先生のデビュー作はこれか。要チェックかもな……。

 おととい土曜日にこのBlogで感想を書いた、高田郁先生による『出世花』という作品だが、すでに書いた通りわたしは痛く感動し、大変楽しめたわけだが、昨日の日曜日、その続きとなる『蓮花の契り 出世花』という作品をすぐに読み出して、実は140分ほどで読み終わってしまった。そして、まあある意味当然だが、今回もまた、大変心にしみる泣けるお話であったのである。以上。
 で、終わらせてもいいのだが、近年とみに記憶力の低下しているわたしであるので、いつも通り、いつかの備忘録のため、エピソードガイドを簡単にまとめておこうと思う。今回もネタバレ満載なので、以下を読む場合は自己責任でお願いします。かなりクリティカルなネタバレも含んでいると思いますので。※昨日の記事にキャラ紹介まとめてあります。
蓮花の契り 出世花 (ハルキ文庫)
高田 郁
角川春樹事務所
2015-06-13

 というわけで、本作は、『出世花』の直接の続編であり、完結編である。前作同様4話構成で、1806年から1808年の2年間のお話であった。それすなわち、主人公のお縁ちゃんは22歳から24歳、ということになるみたい。初登場時が9歳で、15歳で「三味聖」となり、それから7年の時が経ってるわけですな。たしか前作のエンディング時は19歳ぐらいじゃなかったっけ? それからも少し時が経っているということになりますね。ちなみに言うと、この時代背景は『みをつくし料理帖』にとても近くて、たしか『みをつくし』の冒頭が1812年ぐらいで、その時主人公の澪ちゃんが18歳ぐらいだったので、本作の主人公お縁ちゃんは澪ちゃんより10歳ぐらい年上ってことになりますな。きっと江戸ですれ違ってるかもしれないすね。お縁ちゃんは世俗と離れてるから「つる屋」のことは知らないかもしれないけど、澪ちゃんは「三味聖」のうわさを聞いたことがあるかもしれないですな。
 さて、どうでもいい前降りはいい加減にして、さっさとまとめるか。
 ◆第1話:「ふたり静」
 前作でお縁が出会った神田明神の近くの岡場所所属の遊女「てまり」さんのお話。半年前江戸を襲った大火で、神田明神の近くも焼け野原になり、以来ずっと、4年前、お縁ちゃんが18歳の時に出会ったてまりさんは無事かしら、と大変心配していたが、ある日、ばったりと四谷の近くで、てまりさんそっくりな女子に出会う。しかしその日はあっさり見失うものの、翌日(だっけ?)、お縁ちゃん愛用の数珠のひもが切れてしまい、佛具師に紹介してもらった四谷の数珠職人の元へ行くと、なんとそこには、まさしくてまりさんが! しかし、完全に記憶を失っていて、数珠職人の元武士の男と暮らしていたのだった。聞けば、男の母(若干ボケ気味)が、亡くした男の妻と勘違いして疑似家族的に暮らしているとか。そしてその母がとうとう亡くなり、お縁ちゃんによる湯煎を見て、てまりちゃんはすべてを思い出し――てなお話。男の過去の話も泣けるし、てまりちゃんがなんとも泣かせる……!
 ◆第2話:「青葉風」 
 お縁ちゃんが15歳の時、養女にしたいと言っていた「桜花堂」の若旦那、仙太郎さんが青泉寺にやってくる。……もう、皆さん前作を読んでいると思うので、スーパーネタバレだけどいいすよね? そう、この桜花堂のおかみさん、お香さんこそ、まさしくお縁ちゃんを幼少期に捨てて別の男と逃げた実の母なわけですな。で、お香さんは結局その一緒に逃げた男とも死別し(だっけ?)、桜花堂の旦那さんの後添えとして迎えられ、さらにその旦那さんを前作で亡くしているわけです。つまり、わかりにくいと思うけれど、若旦那の仙太郎さんは、血のつながらない息子なわけだ。その仙太郎さんが、お縁ちゃんを桜花堂で預かりたい、という話を持ってくる。その理由は、どうもお香さんと仙太郎さんの嫁のお染さんが、とにかく折り合いが悪く、嫁姑バトルが激しくて奉公人たちも参っており、その険悪な空気の中に、お縁ちゃんを投入することでちょっとは改善されるんじゃねえか、と思ったかららしい。お縁ちゃんとしては、正直、実の母とはいえ、若干お香さんに対してわだかまりがあり、全く気が進まないものの、和尚さんである正真さんに、「行ってきなさい」と言われて、半年間桜花堂で過ごすことに。そして、桜花堂で大変な事件が起こる。桜花堂の名物、桜最中を食べたお得意様が急死し、毒物混入疑惑が持ち上がって仙太郎さんが番屋にしょっ引かれてしまうのだった―――。
 このお話では、定回り同心の新藤さまが再び登場し、またも検視官ミステリーめいた展開で大変興味深く面白かったすね。そして実家に戻ってしまうお嫁さんのお染さんがなんかとても可哀想というか……なんか仙太郎さんが女心を分かってなさ過ぎてつらい……。
 ◆第3話:「夢の浮橋」
 桜花堂のピンチを救ったお縁ちゃんは、ますます桜花堂での存在感を増し、お香さん、仙太郎さん、そして奉公人のみんながお縁ちゃん大好きになっていく。そんな中、実家に戻ってしまったお染さんとばったり出会ったお縁ちゃんは、仙太郎さんとお縁ちゃんの関係修復のために、富岡八幡へのお祭りに連れて行ってくれという口実で、仙太郎さんをお染さんの実家のある深川へ連れていくことに成功するが、大川(隅田川)にかかる「永代橋」で、とんでもない大事故が発生してしまう。九死に一生を得たお縁ちゃんだったが、千人を超える死者を出した事故現場で、お縁ちゃんは三味聖として死者の悼むのだった。そして約束の半年が過ぎたとき、お縁ちゃんは一つの決断を下す――てなお話。ここで描かれる永代橋崩落事故は、どうやらWikiによると本当に起きた大惨事らしいですな。何とも痛ましい事故で、読んでいてつらい……。
  ◆最終話:「蓮花の契り」
 大事故から2か月後。青泉寺に戻ったお縁ちゃん。しかしある日、いつも青泉寺へやってきてはお菓子ばっかり食って帰る臨時回り同心の窪田さまが、どうやらお縁ちゃんの、三味聖としての死者を悼む姿が江戸市中では読売で評判となり、その神々しさに、あれぞまさしく「生き菩薩」だ、と大感動の渦だという知らせを持ってくる。そして窪田さまは、それはそれでいい話だけれど、あまりに目立った存在は、幕府に目をつけられて、「人心を掴むもの=幕府の敵」として何かよからぬことが起きねばよいが……と不吉な予感を告げる。そしてまさに寺社奉行の役人がやってきて、青泉寺を閉門せよと言ってくる。 あまつさえ、正真さま、正念さまが番所に連れていかれてしまう。青泉寺最大のピンチ。寺社奉行管轄外の「墓寺」であっても、僧籍を持つ正真さま・正念さまは僧侶として寺社奉行の支配下にあり、その決定は逆らえない。おまけに正念さまの実家からも、還俗のお願いが来て――と非常にピンチが重なるお話で、そんな大ピンチに、お縁ちゃんが最終的に下す決断がとてもすがすがしく素晴らしい。完結編にふさわしい、とてもいいお話でありました。まさか三味聖引退か!? とはわたしは一瞬も思わなかったすね。もう、前話でお縁ちゃんの心は決まってたもんな。実母であるお香さんとのわだかまりも、きちんと解くことができたし、ホントにすべてがきっちり収まるところに収まってホッとしましたよ。正念さんもまったく素晴らしい男ですな。

 とまあ、こういう展開で、わたしは大変楽しめました。
 しかし、わたしもまったく世俗にどっぷり浸かっている男なので、定回り同心の新藤さまがお縁ちゃんに言うセリフが、わたしとしては非常に心に残りました。新藤さまは、利発でまじめなお縁ちゃんをいたく気に入って、ホントにお前はイイ女だよ、と大絶賛するのだが、一方で、その思いつめたような、ある意味かたくなな心に、こういってあげるわけです。
 「 お縁、ひとに惚れる、ってのも良いもんだぞ。物言わぬ骸ではなく、血の通った相手に目を向けることも忘れるなよ」
 このシーンはとてもイイすねえ。わたしは非常にグッと来た。お縁ちゃん、三味聖として生涯をささげることに、何も異を唱えるつもりはないけれど、この新藤さまの言葉は忘れない方がいいぜ。そして君は君のしあわせを、三味聖としてつかんでおくれ。とまあ、そう願わずにはいられないすね。

 というわけで、結論。
 高田先生による『出世花』第2巻にして完結巻、『蓮花の契り 出世花』をかなりあっという間に読み終わった。そして今回も大変泣けるお話で、大変心にしみました。いいすねえ……お縁ちゃん、あんた、ホント、幸せにおなりなさいな。君に幸あれ――そう願っております。やっぱり、真面目にまっすぐに生きる人間が報われるお話は、ほっとしますね。ほんと、現実の世もそうあってほしいものですよ。まあ、報いを求めるつもりはないけれど、いつかイイことがあるさ、と思うことぐらい許してほしいす。ちゃんと真面目に生きますので。高田先生の作品は、なんか勇気をくれますね。そこが高田作品の魅力なんでしょうな。まあ、要するにですね、最高です。以上。

↓  高田先生の作品で読んでないのは、あとこれだけかな。すでに購入済み。母曰く、これも大変イイお話とのこと。ちょっとインターバルを置いて、そのうち読もうと思います。
あい―永遠に在り (時代小説文庫)
高田 郁
角川春樹事務所
2015-02-14

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