2017年01月

 というわけで、毎週月曜日は週末映画興行データです。
 つーかですね、今日の朝、ジャンプを買って電車で読んでいたら、巻頭カラーにとうとう「実写JOJO」の告知が1P入っていて、「仗助」のビジュアルが載っていてビビりました。これ、だ、大丈夫なんすかねえ……まあ、大丈夫なんだろうな……わたしは「JOJO」の第1話からずっとジャンプで読んでいるし、紙の単行本も全巻持っているし、あまつさえ、電子書籍も全部買って、すべてTabletにダウンロードしていつでも読めるようにしているほど好きな作品なわけですが……観た方がいいんすかねえ……たぶん、夏の公開までに今後続々とビジュアルが公開されるんでしょうな。そして、どうでもいいけど、本当にもう、電車内でジャンプを読んでいる人は全く見かけなくなりましたなあ……。
 ま、いいや。あと、今日は先週公表された映連の2016年興行データをチラッと取り上げたいと思います。 
 まずはいつも通り、興行通信社の大本営発表からメモっておこう。

 1位:『ドクター・ストレンジ』が公開土日で3.9億稼いで1位!やった! 金曜公開だから、3日間では5.1億だったそうで、これは15億以上は確実、20億も夢じゃないかも。わたしももう一度観て来ました。まあ、3カ月前にわざわざ台湾まで観に行ったのですが、細かいところがわたしの英語力ではわからないところがあったのでスッキリです。
 2位:『キセキ―あの日のソビト―』が公開土日で2.3億稼いだそうです。いい出だしじゃないですか。これは10億超確実、ロングで引っ張れるなら15億もありうるかも。皆さんご存知「GReeeeN」誕生秘話すね。わたし、これだけ映画を観まくっているのに、劇場で一度も予告を観なかったす。TOHOシネマズ愛用者&おっさん向け映画しか見てないから、だろうなあ……ちなみに配給は東映です。東映でここまでのヒットスタートは結構久々ですね。
 3位:『君の名は。』が23週目にしてまた2~3億ぐらい積んでいるんでしょう、きっと。てことは238~239億ぐらいでしょうか。
 4位:『恋妻家宮本』が公開土日で1.05億ほどだそうです。一応原作は重松清先生の小説『ファミレス』(角川文庫)だそうで、どのぐらい原作に忠実なのかちょっと気になります。しかし、タイトルの「恋妻家」ってのは大変イイ言葉すね。この予告はもう、うんざりするほど劇場で観ました。
 5位:『破門―ふたりのヤクビョーガミ』が公開土日で1.08億ほどだそうです。こちらも原作は小説で、黒川博行先生の直木賞受賞作ですな。おまけにこちらも角川文庫です。ま、東宝の『恋妻家』とこちら『破門』は松竹配給なわけで、ともに角川映画配給じゃないのは察してください、ってことと理解しよう。この週末近辺は佐々木蔵之介氏と横山君はそこら中のテレビに出ていた印象がありますね。
 6位:『新宿スワンII』が9日間で4~5億ぐらいと見積もる。前作と比較するとやや厳し目か。
 7位:『本能寺ホテル』が16日間で6~7億ぐらいと見積もる。ちょっと厳しくなってきたか? 10億は超えるだろうけど(たぶん)、15億は厳しい感じです。
 8位:『沈黙―サイレンス―』が9日間で3~4億ほどと見積もる。わたしとしては今年の暫定1位です。まだ4本しか見てませんが。
 9位:『この世界の片隅に』が79日間で17億ほどと見積もる。いやー、ロングで売れ続けて大変うれしいですなあ。こちらは去年わたしが観た映画の中で、オレ的4位であります。
  10位:『マグニフィセント・セブン』が公開土日で、どうだろうな、この位置だと0.5~0.6億ぐらいだろうか?(修正)金曜公開なので3日間で0.8億ほどだそうです。つまりさっさと観に行かないと上映回数が激減するかもしれないので、今週中には観るつもりですが、わたしは黒澤明原理主義者なので、ダメなリメイクだったら許したくないすな。楽しみです。

 とまあ、こんな週末だったようです。
 
 で。映連発表の2016年興行のお話です。
 くわしいことは、直接映連のWebサイトを見て下さい。10億円以上稼いだ作品の一覧が載っています。なので、ホントはコミック原作が異常に増えている傾向や洋画が全くダメな現状、そして、邦画のTOP10のうち8本が東宝作品という恐ろしさついて書きたいけれど、ま、作品のことは一覧表に任せるとして、今日は、映画館の数と観客動員数と映画興行市場規模をちょっとまとめておこうと思います。
 去年、2016年は、興行収入は過去最高の2,355億、そして観客動員数は1974年以来の1.8億人突破だったそうです。ちなみに、そのうち『君の名』が235億、1,800万人ぐらいの貢献をしているわけで、その分を差し引くと、2015年より下ということになる。まあ、差引くことには全く意味がないので無意味な仮定だけど、あたらめて、『君の名』はすげえなあ、ということになりますな。
 で。スクリーン数と観客動員数と年間興行収入合計値をまとめるとこうなります。
スクリーン数 (うちシネコン) シネコン率 入場者数(千人) 興行収入(百万円)
2000 2,524 1,123 44.5% 135,390 170,862
2001 2,585 1,259 48.7% 163,280 200,154
2002 2,635 1,396 53.0% 160,767 196,780
2003 2,681 1,533 57.2% 162,347 203,259
2004 2,825 1,766 62.5% 170,092 210,914
2005 2,926 1,954 66.8% 160,453 198,160
2006 3,062 2,230 72.8% 164,585 202,934
2007 3,221 2,454 76.2% 163,193 198,443
2008 3,359 2,659 79.2% 160,491 194,836
2009 3,396 2,723 80.2% 169,297 206,035
2010 3,412 2,774 81.3% 174,358 220,737
2011 3,339 2,774 83.1% 144,726 181,197
2012 3,290 2,765 84.0% 155,159 195,190
2013 3,318 2,831 85.3% 155,888 194,237
2014 3,364 2,911 86.5% 161,116 207,034
2015 3,437 2,996 87.2% 166,630 217,119
2016 3,472 3,045 87.7% 180,189 235,508
 わたしが、へえ~、と思うのは、上記の黄色の部分であります。
 1)スクリーン数
 近年のシネコン建設ラッシュがバンバン続いている、という認識は、間違いではないけれど、2011年や2012年のスクリーン数を観れば分かる通り、一時、停滞したことがある。これは、シネコンが減ったというよりも、普通の従来の古い映画館がバタバタなくなったことが大きいし、また、震災も影響もゼロではないだろうし、シネコン建設もこの時期は小康状態にあったためだ。なんでこの時期、古い映画館がバタバタなくなったか、憶えてますか? ズバリ、デジタル映写機への置換の時期ですよ。もう、フィルムでの配給がどんどんデジタルに置き換わっちゃった頃なわけだ(そして同時に3D対応も急速に行われた時期でもある)。そしてその設備投資にとても耐えられなかったため、古い映画館はなくなったんだと思う。おまけにこの時期は大作が少なく、震災もあってモロに経営悪化が進んでしまったのも痛かった。そしてシネコンも、ほぼ全国にいきわたっちゃった(かのように見えた)ために、新規出店が少なくなった頃合いだと思われます。
 しかし一方ではここ4年ほどはまたも増加しつつあるわけで、これは都内のTOHOや109あたりの積極的な新館オープンを見ると理解できると思う。まあ、地方から進んだシネコン化も、そういや都心はまだ余地があるんじゃね?と気が付いたんでしょうな。あとは、地方で言うと、イオンシネマ。イオンモールが続々と出店して、ついでにイオンシネマも建築されていったわけです。しかし、もういい加減、上限なんじゃねえかと言う気もしますな。いや、地方はまだまだ開発の余地があるんすかねえ。どうでもいいけど松竹や東映の「直営館」経営がイマイチ広がらないのは、やっぱり経営体力的に難しいのだろうと想像します。しかし、自社で映画館を(それほどいっぱい)持たないという経営戦略は、近年の松竹・東映配給作品の苦戦に直接響いていると思う。でも、ちゃんと投資家向けのIRプレゼン資料を公開しているのは東宝だけである事実からしても、松竹・東映の経営に対する危機感はまるで感じられないですな。古いおじいちゃん会社だろうし、株主もおじいちゃんばっかりなんだろうな、きっと。
 2)シネコン率について
 おそらく、シネコンなるものの誕生は、日本国内においては1998~1999年頃から本格的に始まったとわたしは理解しているが、2009年にシネコン率は80%を超え、今やもう87.7%のシェアとなっている。まあ、街の映画館はどんどんなくなっているのが現実で、これはもう、いい悪いの問題じゃあない。誰だって、新しくて椅子や音響設備がいい映画館で観たいのは当たり前だし。おまけに、上記のデジタル化も、痛いのは間違いない。もう、単独資本の単館経営は、実際無理だと思う。大きな資本で設備を整える必要があるし、多数のスクリーンを抱えていないと、東宝様の映画はかけられないし。そしてスクリーン数を確保しても、もはや日本の人口は減る一方だしなあ……空気に映画見せても仕方ない、というような、暗い将来しか想像できないのが現状だろうと思う。ちなみに、シネコンというものは、期間の長~~いリース契約(機材や什器類やそもそものテナント賃貸借契約)だったり、ほかの施設(例えば飲食店とか)に転用しにくいという、シネコン独特の縛りがいくつもあって、一度出店すると撤退するのがかなり難しいビジネスでもある。なので、今後もバンバン増えていくとはちょっと思えない。場合によっては、そろそろ20年モノのシネコンも出始めるので、建替えはないかもしれないけれど、施設や機材のリニューアルなんかは増えるかもしれないすね。いずれにせよ、もう今さら新規参入する企業はまずないだろうし、小規模資本の企業には手を出せない事業でしょうな。
 3)興行収入=市場規模
 表を見て明らかなように、だいたい2000億を中心に年によってかなりばらつきがある。間違ってももはや成長市場ではない。ま、誰でもわかる通り、ヒット作が出れば数字は増加し、なければ下がる、それだけの話だ。例えば、ここ数年では一番良かった2010年は、『アバター』『アリス』『トイストーリー3』と100億超のヒット3本があった、とかですね(※アバターは2009年12月公開だけど統計値としては2010年にカウント)。
 30年前までさかのぼると、どうやら1996年の1,488億円が谷で、2000年代に入ってからは2000年の1,708億円が最低値らしい。なお、2000年~2016年までの平均値は興行収入が2,019億円、観客動員数が161,645千人といったところのようだ。そしてちなみに、公開作品数は年を追うごとにバンバン増えていて、要するに作品1本当たりの興行収入はどんどん減っていて、勝ち・負けの二分化がどんどん激しくなっているという現象もある。映画の本数増加は、箱の取り合いをもたらし、日程の取り合いにも通じるわけで、まあ、負のスパイラルですな。どんな商売でも、売上減少を商品点数増加で補おうとするのは、一番の悪手、と言ってもいいと思う(まあ映画の場合は勝手に増えたというべきだろうけど)。 そして、あまり関係ないけれど、例えば、ディスニーなんかは明確にBlu-ray発売を公開後4カ月ぐらいと決め、その発売前にはどんなにヒットしていても映画館での興行は終わらせちゃう。これはディズニーの一つの特徴だろう(近年はホントにBlu-ray/DVD化がホント早い)。
 なので、ここで言いたいことは2つです。(1)『君の名』がどれだけ異例なウルトラ大ヒットか(絶対東宝以外ではありえない、と思う)、ということと、(2)どうしようもない、とはいえ、上場企業として安定的で持続的な成長を目指しているのは東宝だけ、という2点です。要するに、業績に波があっても、「いや~、今年はヒット作が多くてね、はっはっは」「いや~、今年はヒットが少なくてねえ、はっはっは」という態度では、上場企業を経営しているとは言えないし、そんなたわ言は誰でも言える。東宝は、それ(ヒット作の有無による業績の大幅な上下変動)を可能な限り少なくしようと、アニメにも本気を出してきたし、安定的な成長をきちんと考えている点が、明らかに松竹・東映とは違うと思う。まあ、腹立たしいですがやっぱり一番しっかりしてますよ、東宝は。
 
 というわけで、結論。
 まず、週末興行は『ドクター・ストレンジ』がしっかり稼いで1位獲得、ともに角川文庫原作の『恋妻家』『破門』は1億チョイの微妙スタート。もっともっと売れてほしいです。そして、映連発表数値を観て思うのは、本当にこのままでいくと日本の映画界は東宝の独占市場になりそうだなあ、という暗い気持ちであります。ま、それだけ企業としてしっかりしてるのは間違いないわけで、なんというか……東宝を怒らせたら日本映画界では生きていけないだろうな、と想像します。以上。

 宝塚歌劇を愛するわたしであるが、星組を一番応援しているわけで、実際のところ、他の組に対しては若干テンションは通常というか、それほど熱狂的ではない。一応可能な限り全組の公演を楽しんでいるものの、去年暮れの雪組公演はチケットが取れず、見逃してしまった。そして年が明けて東京宝塚劇場では花組公演『雪華抄/金色の砂漠』が始まったのだが、今回はチケットを得ることができたので本日の15時半の回に馳せ参じたわけである。
  花組と言えば、今や最古参TOPスターとなってしまった明日海りおさん(通称:みりおちゃん)が率いており、円熟期にあると言っていいような気がする。いつまでみりお政権が続くかわからないけれど、この度、今回の作品をもって相手役の花乃まりあちゃん(通称:かのちゃん)が退団することとなった。ここ数年、娘役にも興味の出てきたわたしとしては、かのちゃんはちょっと癖のある顔立ちだけれど、間違いなくかわいいし、TOP娘役としてどんどん歌も芝居も良くなってきただけに、大変淋しい限りである。わたしはとくにかのちゃんの声が好きで、とりわけ気の強い下町娘的なキャラが大好きなのだが、今回は王女ということで、実に激しい役であった。今日は、もうずっと、かのちゃんを双眼鏡で見つめ、かのちゃんの最後の舞台を見守ってきたのである。そして結論から言うと、超最高でした。かのちゃん、君は本当に成長したと思うよ。本当に素晴らしかったぜ。

 今回の2本立ては、珍しくショーが先にある。しかも和物のショーで、いわゆる「チョンパ」、すなわち、暗転から拍子木がチョーーーンと鳴って照明がパッと付くと、キャスト全員が舞台に揃っているという開幕である。まあとにかく絢爛で華やかなショーだ。このショーでは、やっぱり3番手の柚香光ちゃん(通称:れいちゃん)の美しさが際立ってましたね。当然前々から、その恐ろしく小さい顔、恐ろしく細く長い手足など、れいちゃんの美しさは目立っていたわけだが、今日じっくり見て、改めてこの人は凄いと思った。今日、やけにわたしの目を引いたのは、手の、指先まで行き届いた所作の美しさだ。和モノということで、とりわけその指先まで神経が通っている美しさは際立っていたと思う。踊りのキレもいい。やっぱりこの人の魅力は顔だけじゃねえ、人気が高いだけはある、と納得の舞であったと思う。本当は、わたしは星組推しとして、元星組で花組へ異動になった2番手の芹香斗亜ちゃん(通称:キキちゃん)の方を応援したいのだが、指先までの所作の美しさでは、残念ながられいちゃんの方が上か、と若干悔しく思った。
 そして、後半は芝居『金色の砂漠』である。こちらは、全く予習していなかったので、そのストーリーの激しさに驚くこととなった。すっげえお話で、マジびっくりしたよ。そしてこちらの芝居では、とにかくかのちゃんとキキちゃんが素晴らしかった。ちょっとだけキャラ紹介しておこう。
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 ◆ギィ
 演じたのは当然みりおちゃん。砂漠の王国(?)の第1王女に仕える奴隷。奴隷の身ながら第1王女を愛している。実は前王の息子だが、本人はそのことを知らず、物語の後半にその秘密が明かされる。そして復讐者となって現王を弑し、タルハーミネの前に再び現れる。
 ◆タルハーミネ
 演じたのはかのちゃん。第1王女。ギィを使役するが、彼女もまた本当はギィが大好き。しかし、誇り高すぎてギィへの愛よりも王国の利益を取ることに。そして友好を結ぼうとする国の王子の求婚に応じ、ギィに死罪を通告する。そして後半、復讐者となって再び現れたギィに対して、彼女が取った行動は――というラストが見どころ。
 ◆ジャー
 演じたのはキキちゃん。第2王女に仕える奴隷。第2王女はジャーが大好きで、お互い相思相愛の二人。なので、第2王女は国のためとはいえ、異国の男からの求婚を受けたくないけれど、ジャーに諭されて、求婚を受けることに。そしてジャーも、変わらず仕える。後半、実は彼はギィの弟で、彼もまた前王の息子であることが判明するが、兄であるギィについて行かず、愛する第2王女の元を離れず王国に残る。
 ◆テオドロス
 演じたのはれいちゃん。タルハーミネに求婚する、友好国の王子。ギィを嫌っているわけではないが、常に付き従う様子に戸惑う。悪い奴ではない。ギィとタルハーミネが実は魅かれあっていることに(たぶん)気付いている。そして復讐者となって現れたギィの出した条件をあっさり飲み、故郷へ帰っちゃう。
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 というわけで、お話は奴隷と王女様のお話で、ギィも王女様もかなり激しい性格で、お互い大好きなのに誇りや立場が邪魔して結ばれず、最終的には二人ともに破滅する悲劇的なお話である。
 もう何度でもいうが、わたしとしてはかのちゃんの芝居が本当に素晴らしかったと思う。前半のギィを愛しながらも奴隷扱いし、ついに結ばれるも王の前で奴隷を死刑に処すことを宣言せざるを得なくなるくだりは、渾身の演技だったと思う。そして復讐者として再び現れたギィに屈服せず、砂漠へ逃れ、最後はギィとともに息絶えるシーンなんかは、これまでの集大成と言っていいだろう。正確なセリフは憶えられなかったが、ギィ、というか、みりおちゃんに抱かれながら、「あなたと出会えて本当に幸せだった」的なセリフを言うタルハーミネは、まさしくかのちゃん本人そのままの言葉だったんじゃないかと思う。本当にお見事でした。
 そして第2王女に仕える奴隷、ジャーを演じたキキちゃんも、素晴らしい芝居だったと思うな。歌も良かったすねえ。少なくとも、歌と、芝居ぶりはれいちゃんより上だと思うな。優しいジャーは、今回のお芝居の中では唯一の救いだったように思う。結局、ジャーがただ一人、自分以外の、自分が愛する人の幸せを優先した、いい人だったね。キキちゃんのイメージが重なるような気もしますな。なんか、今後ますますキキちゃんを応援したいと思った。しかし、今の、雪組の望海風斗さん(通称:だいもん)以外の各組の2番手は、わたしが最も愛する星組の礼真琴さん(通称:こっちん)は当たり前として、宙組の真風涼帆さん(通称:ゆりかちゃん)も、月組の美弥るりかさん(通称:みやちゃん)も、そして花組のキキちゃんも、この3人は揃って元星組だもんな。星組推しのわたしとしては大変うれしい状況ですよ。この中でも、若干地味なキキちゃん。どんどん歌もうまくなっているし、キキちゃんがいつかTOPとなれる日が来ると信じて、応援したいと思います。
 というわけで、毎度お馴染みの、「今回のイケ台詞」を発表して終わりたいと思います。
 ※イケ台詞=わたしが「かーっ!! カッコええ!!」と思った台詞のこと。
 「憎しみよりも、今は大切なものがあるのだ!!
 今回は非常に印象的な台詞が多くて、非常に悩んだのだが……敢えてキキちゃんのカッコいいセリフを選びました。キキちゃん、どうかれいちゃんに負けないよう頑張って! 応援してるぜマジで!

 というわけで、結論。
 花組公演『雪華抄/金色の砂漠』は、和モノのショーから始まる珍しい構成であったが、お芝居の「金色」は恐ろしく激しいお話で、物語としてもとても面白かった。もちろんTOPスターみりおちゃんの魅力あふれた作品だが、これが退団公演となるかのちゃんの芝居がすさまじく、迫力もあり。まさしく花乃まりあという素晴らしいTOP娘役の集大成ともいうべき、渾身の芝居ぶりが印象的な作品であった。また、いつも地味といわれがちなキキちゃんも、芝居・歌ともに素晴らしく、わたしは今後もキキちゃんを応援するぜ、と改めて思う作品であった。がんばれキキちゃん!カレーに負けるな! 以上。

↓ つーかですね、わたしの愛するこっちんのショーヴランがとうとう……!!  超・胸熱!!! 
 

 というわけで、毎週木曜日は『鮫島』ニュースのお時間です。
 つーかですね、先日の日曜日に熱戦の幕が閉じた大相撲ですが、わたしの愛する【松鳳山】関は、中盤は負けが込んでいたのですが後半は3連勝で最終的には7勝8敗と惜しくも負け越しで終了しました。惜しかったなあ……ホントに。って、それよりもですね、とうとうあの【稀勢の里】関が優勝し、そして昨日、ついに第72代横綱へと昇進いたしました。わたしは、強い相手に対しては強さを発揮するものの、格下相手にはするっと負けてしまったりすることのある【稀勢の里】関は、ホントにこの人は強いんだか弱いんだかわかんねえ、とか思っていたわけです。しかし去年は優勝回数0回なのに年間最多勝を獲り、いよいよその強さは本物になってきたぞ、と今場所は期待していたので、千秋楽で横綱【白鵬】関を下した相撲にはもう大興奮ですよ。あの千秋楽で負けていたら、横綱昇進もなかったかもしれないわけで、大変血圧が上がりました。【稀勢の里】関、本当におめでとうございます!! 今場所は本当にカッコ良かったぞ!
 というわけで、まずは週刊少年チャンピオン2017年第9号の概況です。
 ■巻頭グラビア:久松郁美嬢。実に素晴らしいBODYですね。
 ■『弱虫ペダル』:全員丸坊主の巻。京伏ヤマさん……なんかよく分かんねえ決意すね。
 ■『牙刃道』:両断の巻。もうみんな囲んで撃っちゃえばいいんじゃね……?
 ■『囚人リク』:中門通過の巻。妙な面白キャラは玉木進之介というそうです。
 ■『Gメン』:勝太大ピンチの巻。これは土井君が援軍を呼んでいる展開と思いたい。
 ■『六道の悪女たち』:平和な日常の巻。乱奈さんと幼田さんの関係もいいすね。
 ■『BEASTARS』:レゴシ君尻尾を振るの巻。この先、ルイ先輩も絡んでくるのかな?
 ■『サウエとラップ~自由形』:なんとあの名作『いきいきごんぼ』の陸井先生が大復活ッ!!!でもちょっと……どうなんでしょう、これは……。
 とまあ、こんな感じの週刊少年チャンピオンでありました。

  さて。では、今週の『鮫島』ニュースをお送りします。
 先週は、とうとう鯉太郎の十日目の相手が、新キャラの【毘沙門】であることが判明しました。しかも【毘沙門】は、北里部屋所属であり、我々『バチバチ』時代からのファンには「どんぐり」君でおなじみの渡部仁くんの弟弟子であることも判明しました。 おまけに【毘沙門】は、常松こと【松明】や【大吉】と同期であることも判明しています。今週は、その北里部屋の十日目の朝げいこの模様から始まります。
 朝げいこで、どんぐり渡部君たちを相手に汗を流す【毘沙門】。もう十日目だというのに疲れを見せないタフな男のようです。しかも、これ以上は、とヘトヘトなドングリ渡部くん に対して、弟弟子だってのに、生意気なことを言います。
 「頼むよ~~~~仁パイセン~~~~…そんなんだからいつまでたっても関取になれないんだよ~~~」
 そんな無尽蔵のスタミナを誇る【毘沙門】に、どんぐり渡部君は思います。こういう奴を観ているとつくづく自分が凡人だと思う、幕内になる人間はやはりモノが違う、と。そして、こんなに稽古が好きな奴はいないんじゃないかと思う一方で、どんぐり君の脳裏には、いやいや、他にも一人いたな、と教習所時代の記憶がよみがえります。そうです。どんぐり君の同期である我らが鯉太郎ですよ。
 「さすが鮫島君に憧れてることはあるよ…君と稽古してると、彼との教習所時代を思い出す……」
  しかし、生意気な【毘沙門】は、こんなことを言います。
 「ハァ? アハハハ  ちょっとやめてよーーー憧れてるっていつのことだよそれ!たしかに昔はカッコ良かったけどさ~~~鮫島(アイツ)今はお話にならねーじゃん……前に顔合わせた時なんて楽勝だったし」
 どうやら鯉太郎と【毘沙門】はもう1回以上は対戦したことがあるようです。そしてさらに【毘沙門】はチョーシこいたことを抜かします。
 「今は番付も強さも俺の方が上だよ~~~? 昔教えてもらったんだよね~~~……この世界 強さが全てだってさ~~~……鮫島(アイツ)はもう俺よりも下だよ」
 なかなかムカつく野郎のようですよ、この【毘沙門】て野郎は。そして場面は空流部屋に移ります。入念にストレッチをしている鯉太郎。曰く、ちゃんと体と会話して、どこにガタが来ていてどこが動くのかを把握しておくのだそうです。そんな鯉太郎を切なげに見つめる椿ちゃん。もちろん、美和子先生に言われたことが頭によぎります。心配だよね……そりゃあもう。
 そしてその脇では、【白水】兄貴と常松こと【松明】が稽古中です。常松の激しい稽古に、【白水】兄貴も、場所中なんだからこれ以上は取組に支障をきたすぞと心配です。そうです。先週明らかになったように、常松の頭の中は、大嫌いな親父の影がちらついているわけです。子供のころ、ダメな父親に、どうせ俺の子供なんだからお前なんかダメに決まってると言われた常松。 それでも必死に頑張り、学生横綱のタイトルを獲って空流部屋に入門した当時、鯉太郎や【白水】兄貴を舐めきって、【王虎】や当時の【石川】に負け、悔しくて泣いたときに、今は亡き先代の空流親方がかけてくれた言葉を思い出す常松であります。
 「要するによ……強くなりてーーんだろ…?」
 あのシーンは『Burst』でもかなりいいシーンですね。まあ、ズバリ言うと『SLUM DUNK』の「バスケがしたいです……」でおなじみのあのシーンと同じですが。
 ともあれ、常松は、先代の言葉を思い出しながら、ふとつぶやきます。
 「俺は……強くなったんでしょうか……」 
 その言葉に、鯉太郎はハッとします。そして椿ちゃんは、何言ってんの、幕内の力士が、と元気づけます。弟弟子たちも、そおっすよ!松明かり関の相撲の強さは誰しがみとめるとこじゃないっスか! と言ってくれます。しかし常松は、「強さ」が、単純な相撲の勝負だけのものではないことを、今やしっかり理解しているのでありました。常よ、お前本当に成長したな!! 常松は言います。
 「いや………そうじゃねぇんだ…いや……その強さだけじゃなかったんだ……」
 というわけで、常松の教習所時代に時はさかのぼります。我々は『Burst』時代のクソ生意気な常松を知っていますので、想像は尽きますね? その想像通り、やっぱり教習所でも、クソ生意気なガキでした。 指導員の先輩力士に礼を失した態度で当たり、稽古でも腕を極めてヤマ行かせるような態度です。生意気なクソ野郎だった常松は、こんなことを偉そうに言ったようです。
 「分かりました……? あんたらは俺より下だ…今後一切俺に馴れ馴れしい口を利かないでもらえますか…? この世界 土俵の上では対等でしょ…いや…強い奴が偉いんだよ…」
 そしてこんな生意気な言葉に、一人の新弟子が目を輝かせて「うはっ!」と反応します。そうです。後に四股名を【毘沙門】とする、当時の新弟子北里部屋の速川君でありました。
 そういうことだったんすね!! どうやら今回は、やっぱり常松回のようですな。常松は当時の自分をこう表現して、今週は終わります。
 「あの頃の俺はナマイキでイジけてて…”強さ”とは何か まるで分かっちゃいない…どうしようもねえアホだった…」
 いいすねえ―――!! 今回もとてもイイですよ。あの頃の「どうしようもねえアホ」だった常松のことは、我々は『Burst』でいやというほどよく知っています。 あの常が、今や立派な関取。そこには兄弟子たちの背中をしっかり見てきた歴史があるわけです。泣かせるわ……もう常松のエピソードだけで泣けますね。
 しかし一方の速川君こと【毘沙門】は、未だそれが分かっていないわけで、こりゃあ鯉太郎との取り組みがものすごく楽しみですなあ!!  しかしまた、回想が結構入ってきそうな予感がしますが、大変大変楽しみであります!

 というわけで、最後に、毎週のテンプレを貼って終わります。
 <場所:9月場所>
 【鮫島】東前頭十四枚目(5月場所で東前頭十枚目)
 【白水】西小結
 【松明】東前頭六枚目。常松改め。本場所は7連勝中
 【大吉】序2段【豆助】序ノ口【目丸手】序二段【川口】不明
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 1日目:【飛天翔】西前頭十二枚目。石川改め。
 2日目:【宝玉光】西前頭十一枚目
 3日目:【舞ノ島】西前頭十枚目
 4日目:【巨桜丸】西前頭九枚目。新入幕力士
 5日目:【岩ノ藤】東前頭七枚目 
 6日目:【大山道】西前頭七枚目
 7日目:【蒼希狼】西前頭六枚目
 8日目:【丈影】東前頭四枚目。横綱の弟弟子
 9日目:【闘海丸】西小結
 10日目:【毘沙門】東前頭5枚目。←今週番付判明!!
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 【王虎】&【猛虎】共に東大関
 【天雷】東関脇  【田上】番付不明※王虎の付け人をやってることが判明!!
 【闘海丸】西小結 他の力士は表にまとめた記事を見て下さい。
 【泡影】東横綱。第72代。29場所連続優勝中。63連勝中。モンゴル人。

 というわけで、結論。 
 どうやら、十日目は【毘沙門】との対戦というより常松が中心のお話になりそうな予感ですが、その展開は大変期待できそうですな。常はホント嫌な奴だったからなあ……。「強いとは何なのか?」。これは『はじめの一歩』でも大変おなじみのテーマですが、あの常松が、それを真摯に考え続けてきたというだけでわたしはもう泣きそうですよ。やっぱり、鯉太郎は背中でいろいろ語って来たんすねえ。いやー、ほんと『鮫島』は最高っす!以上。

↓ 現実世界では稀勢の里関の横綱昇進で大変盛り上がっております。


 

 Ben Affleck氏と言えば、一時期の色恋スキャンダルや、出演作の興行的な失敗の影響で、なんとなくダサい男としてお馴染みになってしまったものの、元々は親友Matt Damon氏(2ブロック先の近所に住んでいて、ともに少年時代を過ごしたらしい)とともに脚本を書き上げた『Good Will Hunting』によってアカデミー脚本賞を取った男だし、監督としても腕を磨き続け、ついに『Argo』でアカデミー監督賞を受賞するまでに至ったすごい奴である。
 わたしはその見事に割れた顎と、なんとなく野暮ったいところが逆にイイと思っており、また、彼の監督作品はとても面白いと思っている。 要するに、わたしはBen Affleck氏のファンである。『Batman v Superman』で観せたブルース・ウェインは、歴代バットマン史上最高にカッコイイと思っているぐらいだし、監督としても、ひょっとしたらClint Eastwoodおじいちゃんの後継者になりうる才能があるんじゃねえかしらと密かににらんでいる。
 というわけで、昨日の帰りに観てきた映画は、そのBen Affleck氏主演の『The Accountant』である。今回は監督はしていない、純粋に主演だけである。そしてのっけから結論を言うと、キャラクターは抜群にイイ!と思うものの、物語は若干「?」と思うような流れで、正直観終わった後いろいろ突っ込みを入れたくなる部分はあった。ただ、繰り返すが、キャラクターは抜群にイイ。ごっついライフル(あれはバレットM82か?)でどっかんどっかん撃ちまくるのは大変カッコイイ。これはシリーズ化されてもおかしくないぐらい、キャラが立っていたのは素晴らしかったと思う。 今後、このキャラクターを主人公とした第2弾が作られたら、わたしはたぶん喜んで観に行くと思うな。ズバリ、本作の主人公は、まさしく「バットマン」であった。というわけで、以下、いつも通りネタバレ満載ですので、読む方は自己責任でお願いします。

 ズバリ言うが、観てきた今となっては、上記予告は恐ろしく出来が悪い。まったく上記予告からもたらされる印象と本編が違っていて驚いた。殺し屋は本業じゃねえと思うんだけどな……。ちなみに言うと、本編で「コンサルタント」という言葉は、一度だけ「経営コンサルタント」という言葉が出てきただけ(ただし字幕で。英語表現は聞き取れなかった)で、明確に本作は、「会計士=The Accountant」の物語であった。なので邦題もセンスゼロだと思う。
 そして上記予告の何が問題かというと、主人公の背景が全く触れられていない点だ。というのも、この映画、現在時制の進行と同時に、チョイチョイ主人公の育ちが描かれる。実はそこに一番のポイントがあって、結果的にあまり上手く過去と現在がマッチしていない。さらに、冒頭のアクションシーンも、数年前という過去である。なので、どうも整理されていないというか、若干のごちゃごちゃ感があるのは誰しも感じるのではなかろうか。
 ちょっと説明してみようかな……物語は、3つのストーリーラインからなっている。
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 1)数年前
 冒頭では、数年前に起きたマフィアのアジトに突入する財務省(?警察でないことは確か。でも拳銃持ってたぞ?)の職員が描かれる。そこでは、ずっと追っていたマフィアが、謎の男に皆殺しにあい、あまつさえ、自分もその「謎の男」に銃を突きつけられるも、どうやら「見逃され」て、助かったらしいことが描かれる。
 2)現在時制
 主人公の会計士が、農家夫婦の相談を受けている。どうやら固定資産税が重くてもう破産寸前らしい。そんな相談に、会計士はテキパキとじゃあこうすればいいよとアドバイスをし、あっさり問題解消。夫婦に感謝され別れた後、謎の女性からの電話で、どうやら主人公を何者か(=冒頭で助けられた財務省職員)が追っているようなので、しばらくは堅気の仕事をしなさい、と、指示を受け、大手家電メーカーの会計監査に赴くことにする。そこでは、有能な経理部員の女子が会社の不正を発見したようで、経理担当役員(CFO)はそんな不正なんてないと言い張るも、社長の指示でこれまたテキパキと調査を開始。経理部員の女子が数か月かけて1年分の帳簿をチェックして、不正らしき痕跡を見つけたのに、主人公は1日徹夜してあっさり過去15年分の帳簿を読み解き、証拠を発見する。しかし、せっかく証拠を見つけたのに、社長はもう調査はここまで、と打ち切りを宣言する。どうやらCFOが何者かに殺されたらしい。そして主人公のもとにも殺し屋が襲来。そして、これまたテキパキとあっさり撃退し、殺し屋を返り討ちに。そして、殺す直前に、経理部員の女子まで抹殺対象になっていたことを知り、謎の電話の女性からはほっとけと言われるのに、経理女子を助けに向かう――てな展開。
 3)主人公の過去
  で、チョイチョイ描かれる主人公の過去、である。実は主人公は、高機能自閉症で、とにかくものごとを中断することが非常なストレスらしく、最後までやらないと気が済まないし、落ち着くために常にぶつぶつと、とあるフレーズを口ずさんだり、いわゆるルーティン的な作法がいろいろある少年だった。そして、そんな息子を、優しくない厳しい社会で生きて行けるように、と様々なことを超厳しいスパルタ流で教える父親。そしてそんな主人公を愛する弟、という少年時代が描かれる。父は軍人で、15年で34回転勤したりしていたが、格闘術・銃器などを子供のころから徹底的にたたき込まれていたことが明かされる。まあ、そういうわけで、超絶頭脳(どうもアスペルガー的な記憶力らしい)と、無敵の肉体を持つ男だということが説明される。また、青年期に刑務所に投獄されていたことがあり、そこで裏社会の経理マンのおじいちゃんから、様々なコネクションを教わり、その後を引き継いで現在の悪党専門会計士となったことも描かれる。
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 このように、本筋は2)なのだが、そのために3)を説明しないといけないわけで、ちょっとごちゃごちゃしている印象はある。おまけに、2)の本筋も、事件の真相が実に分かりにくい。いや、単純な話なのだけれど、悪党側のキャラクターの思惑が非常に分かりにくい。
 それでも、ラストはかなり強引(?)に上記3つのストーリーラインは合流し、ははあ、なるほど、という部分も実際あった。特に、予想は出来たけれど、主人公に電話で指示を与える謎の女性の正体が明かされる部分は、非常にイイ出来であるし、財務省職員との関係性がラストで明かされるが、それも非常に良い。また、弟の現在が判明するくだりも悪くない。
 悪くないんだけど……わたしが一番よく分からないのは、現在の弟についてだ。結局、弟は何しに出てきたのか、目的は何だったのか、かなりふわっとしてしまったように思える。おまけに、結局弟は、どこへ行っちゃったんだろうというのも描かれず、 なんとなくエンディングのキレは悪いように思う。確かに、主人公は悪党どもの帳簿屋である一方で、実はバットマン的な正義の男だったというエンディングはとっても良かった。でも弟がなあ……あいつ、結局どうなったんすか? 弟は悪党なんすか? わかんねえっす。
  とまあ、こんな風にちょっと感想も散らかってしまうのだが、実はわたしは、もうそういう細かいことはどうでもいいから、この映画は面白かったの!と申し上げたくなるような、すべて許してもいいポイントがあった。
 そうです。有能な経理女史を演じたのが、わたしが大好きなAnna Kendrickちゃんだったのである。 とても特徴のある顔立ちなので、たぶん好みは分かれると思うけれど、わたしはとても好きです。なんといっても、メリケン人なのにすごい華奢なちびっ子で、それでいて大変素晴らしいBODYをお持ちなのが非常にイイ。今回も、ゴツイAffleck氏とは非常に対照的な体形のAnnaちゃんは大変可愛く、演じ振りも良かったと思う。ちなみに、わたしは本来はAnnaちゃんの歌声が大好きなのだが、勿論本作では歌いません。
 ほかにもキャストはとてもいいすね。まず、財務省局長の渋いハゲオヤジを演じたのが、なんかいつも怒鳴ってるイメージのあるJ.K.Simons氏。今回は怒鳴るシーンはほぼなし。実は主人公と重要なつながりがあって、その秘密が明かされるくだりは大変良かったと思う。そして引退間近で、その役割を若き女性局員に引き継ごうとするのは、なんだか『Dark Knight』のゴードン本部長みたいで実に渋かった。で、その女性局員を演じたのがCynthia Addai-Robinson女史。わたしはこれまでこの人を観たことがあるのかわからないな……主にTVで活躍している女優さんのようだが、芝居ぶりは普通に良かったと思う。ただ、このキャラは、有能なんだかイマイチなんだか、かなり微妙だったのがなあ……。意外とすぐに、謎の男が主人公であることに行きついてしまうのは、かなりあっさりというか、誰でもできたような気もするし、彼女の背景も若干とってつけたような、結構あり得ない過去設定だったようにも感じた。身元を偽ってUS国家公務員になるのは相当難しいと思うな……重罪だし。
 そして、主人公が会計監査に赴く家電メーカーの社長を演じたのが、John Lithgow氏。まあ、大ベテランですな。最近では『Intersteller』で主人公の父親役で出ていたっけ。でも、この社長も、正直良くわからない……株価操作して、不当利益を得ようとしていた点は悪党だったとしても、社長は私欲のためではなくて、単純に大規模な設備投資・開発投資がしたかった(そしてその結果で社会貢献したかった)だけで、正直、別に被害者はいないんだよな……。うーん……なんかイマイチ物語の役割的に良くわからなかったのは残念。あと、主人公の現在の弟を演じたのはJon Bernthal氏。わたしの知らない方だが、この人はTVシリーズの『Daredevil』でパニッシャーを演じているそうですな。まあ、普通にカッコ良かったけれど……いかんせんこの弟の取り扱いが、本作の脚本において一番問題アリだと思う。良くわからないし、結局どうなったのかも良くわからないままなのは残念であった。そう言う点では、脚本はイマイチかもしれない。ちなみに監督は、Gavin O'Connorという人で、わたしは知らない人だった。

 最後に、メモとして本作に出てくる小道具類のことを書いておこう。
 主人公は、悪党どものお抱え会計士としての仕事もしているのだが、その結果、実はスーパー金持ちになっているという設定だ。で、わたしが興奮したのは、報酬をたまに現金ではなくて、何か金以外のモノで受け取ることがあるようで、なんと主人公のアジト兼倉庫には、無造作にRenoirの絵画や、JacksonPllockの作品が飾られているのである。何度もこのBlogで書いている通り、わたしは絵画鑑賞も好きなので、非常に驚き、非常にうらやましく思った。そしてPollockの絵はちょっとしたエピソードの小道具としても使われていて、ラスト、行方をくらませる主人公が、Annaちゃん演じる経理女子にその作品をこっそり贈るところは、とても「この男、やりおるわ……」と思った。デキる男はクールに去るぜ、そして迷惑をかけた女には最高の贈り物を、というわけで、とてもカッコ良かったと思う。それから、上の方にも書いた通り、主人公が使う銃器類もとてもいいものを集めていると思う。とりわけ、でかくてごついライフルをバンバン撃つし、近接戦闘でも、トドメとして必ず頭を撃ち抜く冷酷さも良かった。なんか、『John Wick』的な格闘ガンアクションであった。しかし、あのドでかいライフルで人体を撃ったら、確実に頭なら跡形もなくなるだろうし、手足や体でも確実にちぎれ飛んでR18指定になってしまうだろうな。その辺の描写はちょっとソフトになっていたのがやや残念かも。

 というわけで、まとまらないけどもう結論。
 Ben Affleck氏主演の『The Accountant』を観て思ったのは、これは続編が作られるのか?という予感で、主人公のキャラクターはとても素晴らしく描けていたと思う。非常にカッコイイ。しかしながら、物語的にはちょっと問題アリかも、である。何しろ分かりにくい。とりわけ悪党たちの思惑がイマイチなのが残念である。まあ、物語の第1話ということであれば、仕方ないかな……主人公の過去を観客に伝えるのは、実は一番難しいポイントでもあるので、脚本がもっと美しければ、わたしはこの映画を絶賛していたはずなのだが……。しかしまあ、やっぱりAnna Kendrickちゃんは大変可愛いと存じます。なので、結論としては、本作は「アリ」です。以上。

↓ いわゆる「アンチ・マテリアル・ライフル」。日本語で言うと対物ライフル。トラックや敵の隠れ家をぶっ壊すためのモノですので、人に向けて撃つと人体は確実に破壊されます。たぶん主人公が使っているのはこれだと思うけど、どうかなあ……わからん。

 この、わたしによるまったくどうでもいい駄文を連ねたBlogには、一応Amazonのアフィリエイトがついているのだが、実際何にもしていないので、勿論のことながら、ほぼ収入なんぞはありはしない。別にアフィ目的のBlogでは全くないので、どうでもいいのだが、それでもどういうわけか、月に2~3件の買い物をした人がいるようで、30円~150円ぐらいのお恵みがやって来る。別に要らないのに。ただ、面白いのは、その誰かが買った商品が何か、は知ることができる。どこの誰だか知らない人(勿論個人を特定することはできない)が、「何か」をこのBlogを経由してAmazonで買い物をした、その記録が分かるのだ。 
 というわけで、たま~にしかチェックしないわたしが、先日、Amazonアフィのログを観てみたところ、どこかの誰かが、とあるコミックのKindle版を買ったらしいことが判明した。まったくわたしが取り上げた覚えのない作品だし、そもそもタイトルも知らん作品である。なぜその作品にアフィがつくのか、どういう仕組みになっているのかさえ、実はわたしは良くわかっていない。というわけで、その謎のコミックについて調べてみたところ、おや、コイツは面白そうじゃないですか、と気になったので、さっそくわたしも(アフィには全く関係ないBOOK☆WALKERという電子書籍サイトで)買って読んでみた次第である。 なんというか、お勧めしといてお勧めされた的な、妙な逆転現象のようで、わたしは不思議な世の中だな~、と思ったわけだが、それで買って読んでみたのが↓この作品である。

 お、なんかプロモーション動画もあるから貼っておこう。

 というわけで、去年アニメ映画化されて大ヒットとなった『聲の形』でお馴染みの大今良時先生による、『不滅のあなたへ』という作品である。どうやら週刊少年マガジンに連載中らしいが、とりあえず講談社の公式サイトでは、第1話の試し読みがあるので、そちらを見てもらった方が早いかな。物語のあらすじも、めんどくさいので講談社のWebサイトから引用すると、以下のようなお話です。
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 何者かによって“球”が、この地上に投げ入れられた。情報を収集するために機能し、姿をあらゆるものに変化させられるその球体は、死さえも超越する。ある日、少年と出会い、そして別れる。光、匂い、音、暖かさ、痛み、喜び、哀しみ……。刺激に満ちたこの世界を彷徨う、永遠の旅が始まった。これは自分を獲得していく物語。
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 うーーーん……このあらすじで、物語の想像が出来たらすげえと思う。全く普通はピンと来ないと思うので、やはり第1話の試し読みを読んでいただくことを強くお勧めします。なにしろ第1話と言っても80ページはあるので、超読みごたえがあります。
 ただ、一応言っておくと、まだ第(1)巻であり、お話的に始まったばかりで、当たり前だけれど数多くの謎が謎のままであるため、この第(1)巻だけを読んで、とやかく言っても始まらないような気はする。しかしそれでも、この導入は読者をワクワクさせ、物語世界に引き込む力は大変強く、今後がとても楽しみな作品であるとわたしとしては申し上げておきたい。
 というわけで、現時点での、ポイントとなる謎と、そして絵について以下、備忘録としてまとめておこう。
 ◆物語最大の謎
 ――「球」は何なのか、そして「球」を「この地」に投げ入れた「私」とは何者か?
 まあ、正直見当もつかない。そもそも「この地」がどこなのかも全くわからない。銀河のどこかの惑星のいつかのお話なのだろう。要するに、A long time ago in a Galaxy far, far away......なんでしょうな。「私」についても、神様なのか、高度な文明を持つ異星人なのか、さっぱりわからない。つか、分かりようがない。なのでその目的も、気まぐれなのか何らかの実験なのか、これまた分かりようがない。
 ひょっとしたら、この点については最後まで謎のままで終わる可能性だってあるけれど、まあ、とりあえずは脇に置いておいても良かろうと思う。問題は、その「球」がたどる運命(?)であり、そこにドラマが存在するわけである。
 「球」が、「私」によって、「この地」に、投げ入れられたことから物語は始まるのだが、その性質は「ありとあらゆるものの姿を写しとり 変化することができる」もので、まず最初に触れた、「石」に形状j変化する。そしてその後、その石から苔を写しとり、さらにオオカミへと変わっていく。無機物→植物→生物とうつる中で、オオカミとなって、初めて「意識」を獲得し、痛みや冷たさや匂いを知り、人間――飼い主の少年――に出会うことで物語が広がっていく。その様子がうまく説明できないがとても劇的で面白い。おそらく、それを支えるのは、高い漫画力、すなわち絵とコマ割りだろうと思う。
 ◆物語を支える高い漫画力
 試し読みを読んでいただければわかる通り、大今先生を知らない人であっても、これはきれいな絵だ、と誰しもが思うことだろう。ペンのタッチも非常にイイ。試し読みの第1話はかなり白い絵が多いが、それは雪原を舞台としているので、まあある意味当たり前だ。第2話以降は森が舞台となるし、人間も多く出てくるので、もっともっと描き込みが増える。また、動きも激しくなるので、効果線やカキ文字も増える。そしてコマ割りも、オーソドックスながらしっかり計算されている。やはり、漫画力はとても高いというべきだろう。
 ただ、第2話から始まる「球」と人間との出会いは、今後が全く想像できないし、そもそも人間たちの生活に関しても、どうもアイヌっぽい雰囲気だとかは感じられるものの、現代日本人からすればかなりの異世界感はある。その辺は、第1話で描かれた少年の文化とはまるで違うもので、第1話の少年が白人コーカソイド系だとしたら、第2話で数多く出てくる人々は、明らかに(?)モンゴロイド系だ。そしてどうやら第2話以降の人々は原始的な宗教も持っているようで、そこに、「異物」である「球」がどうかかわって来るか、先が読めないだけに大変楽しみである。
 ◆大今先生のキーとなるポイント――コミュニケーション
 大今先生は、前作『聲の形』でも明らかなように、どうやら「コミュニケーション」を作品の鍵に据えている方らしい。つか、わたしも大今先生の作品は『聲の形』しか読んでいない超・にわかなので、さっきWikiで読んで知っただけなのだが、本作でもやっぱり、「コミュニケーション」は大きな鍵となりそうだ。
 第1話で狼の形を写しとった「球」。当然、少年とコミュニケーションをとることはできず、少年もまた、自分に話しかけているだけだったことを嘆く。ここのシーンはとてもイイすね。そして2話以降で人間の形を写しとった「球」は、勿論のことながら現状では言葉は喋れない。が、ラストで再び狼の姿にフォームチェンジして発する言葉が、非常に重要というか、今後の鍵となることが想像できる。まだ明確に意味を理解しているのかどうかわからないが、一応、自発的に発した言葉。なんというか、こりゃあ傑作の予感がひしひしと感じられますな。大変楽しみです。この作品を読んで、AIの自立発達を想像する人はいないかもしれないが、わたしは何となく、まっさらなAIがどんどんと外の情報を吸収し高度に発達していく様を連想した。チューリングテストのキモもコミュニケーションにあるわけで、コミュニケーションが成り立ったとき、AIは人間を超えていくことになるんだろうな、と思うと、今後の「球」の自意識の発達が大変楽しみであり、若干怖いかも、という気がしました。

 というわけで、短いけれど結論。
 妙なきっかけで買って読んでみた『不滅のあなたへ』という漫画は、まだ第(1)巻が出たばかりだが、非常に今後の展開が楽しみな作品であった。どうも講談社もかなり推しているようで、昨日有楽町線に乗ったらドア上に本作の広告ステッカーが貼ってありました。プロモーション動画まで作ってるし。そういえば、印象的なタイトルロゴは、切り絵だそうですよ。大変美しいと存じます。以上。

↓ タイトルの切り絵を制作したのはこの方だそうです。切り絵って、その技術よりもデザインセンスが凄いすね。
美しい切り絵手帖 2017〈切り絵作家 大橋忍〉
大橋 忍
エムディエヌコーポレーション
2016-10-18
 
 



 

 というわけで、毎週月曜日は週末映画興行データです。
 今週末は、わたしは『沈黙―サイレンス―』を観て来ました。まあ、客層は完全におっさん&おじいちゃんで、それほどの入りではなかったですが、映画そのものは大変見どころの多い傑作でありました。詳しくは昨日のわたしの記事へどうぞ。この土日でいくらぐらい稼いだのか、大変気になります。
 で、あと、先週発表された、東宝と松竹の第3四半期決算の内容をメモとして記しておきます(※東映は3月決算なので発表はもうチョイ先です)。なんか、うーん、もっとすげえことになってると思ったのにな。
 ◆東宝:2016年3月~11月(9カ月累計/2月決算)
  売上高合計:178,120百万(前年同期比101.8%、+30億)
  営 業 利 益:41,468百万(前年同期比128.7%、+92億)
  営業利益率:23.3%(前年同期比+4.9pt上昇)
  経 常 利 益:42,528百万(前年同期比126.2%)
  四半期純利益:28,161百万(前年同期比134.9%)
 というわけで、増収増益です。売上は約30億円増加の一方で、営業利益が92億も増加しているわけで、大きく原価が減少して粗利が厚くなっているようです。おまけに販管費も減っていて、これは主に宣伝広告費を▲14億カットしたことによるものらしい。これは、想像するに東宝単独製作の『シンゴジ』や、子会社の東宝東和が配給する洋画など、利益率の高い作品が貢献したということだと思う。あとは子会社の直営劇場(TOHOシネマズ)がいくつか増えて、ヒット作にも恵まれたってこと、だと思います。何にせよ、大したもんだ。一方で、『君の名』のウルトラヒットが東宝の業績にどのくらい貢献したのかについては、読み取るのは非常に難しい。東宝の決算値でこれはすげえ!と驚くのは、売上増ではなく利益率の大幅上昇にあるのは間違いないわけだけど、それすなわち売上増加というよりも原価減少の方に意味があるので、大ヒット=売上増加と繋がっていないのが正直良くわからないす。逆に(?)いうと、『君の名』『シンゴジ』以外は結構外れも多かったってことかな?上手く説明できなくてサーセン。
 なお、セグメント別にみると、 
 ◆映画事業
  売上119,810百万(前年同期比102.6%、+30億)
  セグメント利益:28,857百万(前年同期比136.6%、+77億!)
 ◆演劇事業
  売上:10,745百万(前年同期比93.4%、▲約7億)
  セグメント利益:2,179百万(前年同期比83.6%、▲約4億)
  となっていて、ほぼ連結の数値は映画事業の頑張りが効いたってことみたいすね。不動産事業や本社コストはほぼ前年並みなので。

 ◆松竹:2016年3月~11月(9カ月累計/2月決算)
  売上高合計:73,923百万(前年同期比105.5%、+38億)
  営 業 利 益:6,977百万(前年同期比120.0%、+11億)
  営業利益率:9.4%(前年同期比+1.1pt上昇)
  経 常 利 益:6,192百万(前年同期比120.6%)
  四半期純利益:3,666百万(前年同期比112.2%)
 というわけで、松竹も増収増益です。ただし、東宝と対照的に、売上は東宝並みに30億増加している一方で、営業利益は11億の増加にとどまっている。つまり収益構造は、あまり変わっていないというわけだ(ちょっとだけ利益率は良くなっているけど)。 販管費も東宝と違って増加しているし。ただし販管費の内訳は開示されてないのかな、何が増えたのか良くわからんです。まあ、売上の増加は、明らかにヒット作が多かったことによるものでしょう。だけど構造としてあまり変わってないので、利益率はチョイ上昇にとどまったわけだ。それはセグメントごとに観ると明らかで、
 ◆映像関連事業
 売上:42,908百万(前年同期比112.9%、+49億!)
 セグメント利益:3,742百万(前年同期比161.2%、+14億)
 ◆演劇事業
 売上:18,451百万(前年同期比93.0%、▲13.8億)
 セグメント利益:1,649百万(前年同期比81.2%、▲3.8億)
 となっている。不動産事業は東宝同様に前年並みだけど、本社経費はほんの少し増加しているのかな。それにしても、松竹の映像事業の売り上げ49億円増はとても立派ですね。すごいと思います。
 というわけで、東宝と松竹はともにヒット作に恵まれたけれど、どうも東宝は事業構造の変化が進んでいるようで、驚きの営業利益率23.3%とすっげえことになっている。これが、自分の努力によるものなのか、はたまた、独占的立場を利用した、下請け(=例えば他社シネコン)たたきによるものなのか、それは分からない。いずれにしても、東宝の決算はスゲエ数字だし、松竹は、ものすごい頑張っているけど、体質的には変わってない、と言えるような気がします。とりあえず、この辺にしておきます。あ、あとそういえば今週、というかたぶん明日、映連から2016年の10億以上作品の数字の発表があるはずなので、来週の記事で取り上げようと思います。以上。

 はー。前置きが長くなった。それではいつも通り、興行通信社の大本営発表からメモっておこう。

 1位:『君の名は。』が22週目にして再び1位!累計で235.6億ですって。もうホント凄いとしか言いようないっす。
 2位:『本能寺ホテル』が9日間で2位キープってことは、累計で5~6億ぐらいかな? と見積もります。なんか、映画の物語に関係ないところで変に話題になってるような気がしますが……観たかったけれど、これはWOWOW放送待ちかな……そして劇場で観ればよかったと後悔しそうな予感……。
 3位:『新宿スワンII』が公開土日で1.6億ほど、だそうです。前作の公開土日が2.5億スタートで最終13億ぐらい?な着地だったので、それと比べると、結構落ちますね。10億に届くのかな……微妙なラインなのかもしれません。原作漫画は、ヤンマガ連載中に読んでましたが、まあヤンマガ得意のヤクザ系アウトロー漫画でしたなあ。そんな人気あったっけ……?
 4位:『沈黙―サイレンス―』が公開土日で1.3億ほどだそうです。非常にクオリティの高い映画でした。さすがのスコセッシ作品。作中ではもう日本語バリバリなので、US本国で売れるのか心配なレベルです。ああ、やっぱり全然売れてないみたいですな……1/13から正式公開だけど、全然劇場数が少ないな……。
 5位:『ザ・コンサルタント』は数字が出てなかったけど、公開土日で1.2億ほどであろうと思います。原題はThe Accountant=会計士、なんすけど……なんで「コンサルタント」になっちゃったのか良くわからないすね。わたしは今週、どこかで観に行く予定です。ちなみにUS本国では84M$の興収ということで、微妙ヒットぐらいでしょうか。日本では、10億は難しいとしても5億は行けるのかも。
 6位:『バイオハザード:ザ・ファイナル』が31日間で40億に届いたか、ちょっと届かずぐらいぐらいと見積もる。一番売れた「IV」よりちょっと落ちますね。 まあそれでも数字としては大変素晴らしいですね。ご立派です。
 7位:『この世界の片隅に』が72日間でまたもランキング上昇。なんとなんと、累計で15億を超えたそうです。わーい。良かったすねえ!
 8位:『映画妖怪ウォッチ空飛ぶクジラとダブル世界の大冒険だニャン』が37日間で30億をチョイ超えたぐらいと見積もる。31~32億位ではなかろうか。
 9位:『劇場版動物戦隊ジュウオウジャーVSニンニンジャー』が9日間で2億に届かないぐらいと見積もる。まあ、大体いつもの新春戦隊レベルでしょうか。
  10位:『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』が38日間で43~44億ぐらいと見積もる。はあ……なんてことだ……こりゃあ厳しい……マジで50億ほどで終わってしまうとは……50億も届かない可能性もあるのだろうか……。なお、US本国では5億ドルを突破しており、立派な大ヒット継続中です。

 とまあ、そんな週末だったようです。

 というわけで今日はさっさと結論。『君の名』の異様な強さはもうホント天井がさっぱりわからねえす。そして『ローグワン』は、かなりさびしい数字ですなあ……こりゃあアカンわ……悲しい……。以上。 

 現代の世において、「宗教」というものについて真面目に考えるのは、それなりに意義深いことだとわたしは思うが、残念ながら情報の溢れるこの現代では、ほとんどの人が「宗教」というものにほぼ無関心であろうと思う。形骸化した宗教の残滓にかかわるぐらいしか、現代のわれわれは体験したことがないのが普通だろう。
 それはいい悪いの問題ではなく、単純に現代人には「宗教」にまつわる行為や思考に費やす時間がないのだから、まあ、実際のところ仕方がないと言えるのではなかろうか。かく言うわたしも、それほど深い信仰は持ち合わせていないし、おそらく平均的な日本人と比較すれば、ちょっとだけ深い、ぐらいの程度なので偉そうなことは全く言う資格はなかろうと思う。
 というわけで、今日観てきた映画は、江戸初期に日本へやってきた宣教師の目を通して、キリスト教における「神の沈黙」について、真正面から 取り上げた作品『沈黙―サイレンス―』である。原作は、狐狸庵先生でおなじみの遠藤周作氏。そして監督は、偉大なる名匠とうたわれるMartin Scorsese氏。わたしはこの作品を日本人監督では撮れなかったことがなんとも残念に思う。映画として、わたしは久しぶりに完璧だと感じたスーパー大傑作であった。

 はっきり言って上記予告はかなり出来が悪い。余計なナレーションが入っていたり、映像の編集も時系列が乱れている。ので、あまり参考にならないかもしれないことは一応一言言っておこう。以下、いつも通りネタバレ満載ですので、読む場合は自己責任でお願いします。
 さて。キリスト教における「神の沈黙」。それをごく簡単に普通にわかりやすく言うと、「どうして神様は助けてくれないの? なぜ黙っているの?」ということに尽きるのだろうと思う。本作で舞台となるのは、江戸初期のキリスト教が禁止されていた時代で、禁止どころか時には死罪にもあたるほど、激しい弾圧が加えられていた時代だ。まさしく島原の乱が起こって鎮圧され、鎖国が始まったころの話である。本作は、そんな時代に日本にやってきた宣教師が、日本人なら誰しも習う、「踏み絵」を踏めるかどうかの話だ。踏めば、自由の身、そして信者たちもおとがめなしで解放される。しかし断るならば、信者を殺す。そう突き付けられたときに、宣教師は「踏める」のかどうか。そしてそんなウルトラ大ピンチに、神はどうして何も言ってくれないのか。信者の命を見捨てることで保たれる信仰とは何なんだ、というのが本作のポイントであろう。
 おそらく、わたしを含め、キリスト教信者でない現代の日本人から見ると、もうさっさと踏んじゃえばいいじゃん、それでも心の中ではバーカって言ってりゃ済むじゃん。死んじゃあどうしようもないでしょ、と思うのではないかと思う。実際、登場する日本の武士階級の役人たちも、形式的でいいし、軽く、ちょっと踏むだけでいい、だから頼むから踏んでくれ、オレたちはお前が憎いんじゃないしお前たちを傷つけたくはないんだ、と頼み込む。それは、武士たちにとっては完全に法であり、政策であり、行政ルールだからだ。ごみは分別して出してくれ、と同じぐらいのレベルの話であろう。そして主人公たるロドリゴは、悩みに悩みまくる。
 おそらくこの状況は、登場する日本人武士の方が現代的であり、ロドリゴの方がプリミティヴというか原始的な思考だと言えそうな気がする。どうしてもわたしには、ロドリゴの苦悩が、本質的によく分からない。というのも、わたしは信仰とは心の持ちようであり、生きてこそ、だと思っているので、いかに心の中で、相手に対してクソ野郎だと持っていても、殺すと言われればその靴を余裕で舐めるにやぶさかでないからだ。そこに、神様助けて、と思うような感情は間違いなく発生しないし、クソ野郎の靴を舐める行為が神罰に値するとも思わないし、クソ野郎の靴を舐めたからと言って傷つくプライドも信仰心もないからだ。
 だからもし、ロドリゴが最後まで「踏まず」に、信者を見殺しにして「殉教者」として自らの死を願ったとしたら、わたしの目にはロドリゴは現代のイカれた狂信テロリストと全く同じに見えただろう。だが、ロドリゴは、ある種の決意をもって、「踏んだ」。そして信者を救うことを選んだ。この葛藤は、絶望によるものなのか、神との決別なのか、生への執着なのか、これは観た人それぞれの判断に任せられるポイントだろう。いずれにしても、神は沈黙したままである。神がおわすならば、だが。
 しかし、本作では、どうもやはり、当時のいわゆる隠れ切支丹のキリスト教信者たちも、若干の原始的な信じ方をしているようで、祈れば救われる、天国、パライソへ行けると本気で信じている節がある。そういう意味では来世を信じる仏教的な思想(と言っていいのかな?)とまじりあっているような気がするが、おそらくそれは、キリスト教を侵略の手段として利用しようとしていたヨーロッパの思惑も影響しているのだろう。その点は現代テロリストたちと意外と共通しているのではなかろうか。その意図に気づいたからこそ日本ではキリスト教が禁止されたともいえるわけで、そこに気が付いていないロドリゴたち宣教師は一番の被害者だったのかもしれない。とりわけ信長あたりは、宗教と政治の対立には痛い目に遭ってきた経験もあるわけで、そのカウンターとしてキリスト教を利用しようとした信長と、逆に脅威とみなして禁止した家康と、キリスト教にとっては対照的だが、実際やっていることは同じだったのではなかろうかとも思う。当時の宗教と政治は、日本だけでなく世界中で切り離せないものであったのはきっと確かだろう。それは現代でも、狂信テロリストを生み出す土壌でもあるし、ある意味宗教は道具として使われてしまっている面があるのは間違いなかろう。要するに人心掌握の手段というわけだ。
 そして、本作で一番理解するのが難しいのが、ロドリゴの葛藤よりもキチジローの行動の方だ。キチジローは、家族の前で「踏み」、村の信者の前でも「踏み」、おまけに金のためにロドリゴの居場所を密告したりもする。そしてその度にロドリゴに告解し、許しを求める。こうして書くと、とんでもない裏切り者の、まさしくユダ的人物のように聞こえるかもしれないが、どうしてもわたしには、その時のキチジローの脳裏には、おそらく全く何の悪意もないように見える。死にたくないから「踏む」。金が欲しいから密告する。だけどそんな自分に猛烈に心が痛む。だから助けて司祭様、という、実際のところ心に素直に従っているだけ、の純粋な野郎と言ってもよさそうである。そしてその、言ってみれば「生への純粋さ」のようなものに、ロドリゴは苦しめられる。コイツ、何なんだよ、と、ロドリゴには若干不信もあっただろうし。しかし、キチジローのそういったある意味ボン・ソバージュ的なところは、聖職者であるロドリゴにとっては、どうしても切り捨てることができなかったのだろう。なぜなら、人間誰だってキチジローなる部分を持っているからだ。わたしはキチジローに対して、とんでもねえ野郎だ、とか、そりゃそうなるよなあ、とか、頭に来たり共感したりと色々な感情をもって観ていたのだが、それを苦しみながらも抱え込もうとするロドリゴの姿には、これが聖職者というものであり、また、キリスト教的(というより正確にはカトリック的か?)な許し、なんだろうなあ、と思うに至った。最終的に、ロドリゴは棄教し、江戸で生涯を終えるわけだが、その死までに何度も私は棄教しました、的なことを書類で提出させられたんだそうだ。しかし、ラストで描かれたように、ロドリゴの心には常に神があったわけで、周りからは「転んだ」卑怯者的な扱いを受けても生き抜いたその姿は、やっぱり立派というか、わたしの胸にはとても響くものがあったのである。
 というわけで、そのロドリゴを熱演したAndrew Garfield君は大変素晴らしかったと思う。わたしにとって彼は、SPIDER-MANをぶち壊した野郎ではあるものの、彼に非は全くなく、監督と脚本がダメだっただけで、実際のところ彼は何気に演技派だし、今回の演技は本当に素晴らしかったとほめたたえたい。USではとっくに公開されているけど日本ではこれから公開される『Hacksaw Ridge』も期待してます。
 また、同僚司祭として一緒に日本にやってきたガルペを演じたのが、宇宙一の親不孝者カイロ・レンでお馴染みのAdam Driver君。いつもの汚い長髪&髭面と、相変わらずひょろ長い手足で不気味な男ですが、今回はAndrew君とともに、やはり素晴らしい芝居ぶりでありました。まあ、後半は出番がないのでアレですが、殉教シーンはグッと来たね。STAR WARS次回作ではさっさと善に戻ることを期待します。
 次。二人の司祭の師匠であり、日本で消息を絶った先輩司祭を演じたのが、我らが戦うお父さんことLiam Neeson氏。この人はやっぱり師匠的な役が似合いますね。終盤登場してロドリゴと再会するシーンの問答は静かなシーンなのにすごい熱量でした。あそこも見どころの一つでしょうな。 
 そして日本人キャストも非常に素晴らしかった。キチジローを演じた 窪塚洋介氏、通詞を演じた浅野忠信氏ともに非常な熱演だったし、とりわけわたしは井上筑後守を演じたイッセー尾形氏の芝居が非常に印象に残った。どうやら、原作においては、通詞も井上筑後守も、もとは切支丹で棄教した男、という設定らしいですね。その設定は映画では触れられずであったけれど、そこも描いたらもっと深く感動があったのではないかと言う気がします。それから、可哀想な運命をたどる信者の女子を演じた小松菜奈嬢も大変可憐でしたなあ。芝居ぶりも大変素晴らしく、失礼ながらちょっと驚きました。
 あと、どうでもいいことだけれど、とにかく、役者の着る服、汚れたメイクなど、映像の質感もさすがのハリウッドクオリティで、まあ、ほぼ台湾ロケだったそうなので、風景や村の様子などは若干日本ぽくはないような気もするけれど、 日本映画ではこうはいかなかっただろうなと思う。予算規模も全然違うだろうしね。
 ところで、最後に語られる、「この国にはキリスト教は根付かない」。なぜならこの国は沼地だからだ、という話はどうなんだろう。あれは、要するにまだ日本は戦国を経て江戸幕府という政治形態が生まれたばかりであり、ぐちゃぐちゃだということを意味しているのか、それとも、日本という国の精神性・文化的歴史を沼地と例えたということなのか。このことについては、わたしはまだ理解は出来ていない。この解釈は難しいなあ……わからん……泥の沼……うーん……これを理解するには、原作小説を読むべきかもしれないな……。

 というわけで、キレが悪いですがもう長いので結論。
 Martin Scorsese監督による、遠藤周作先生原作の『沈黙―サイレンス―』は非常なる傑作だと思う。脚本・撮影・演技ともに素晴らしく、パーフェクトとわたしとしては激賞したい。まあ、なんでも神に頼っても、神は 沈黙でしか答えてくれないわけで、やはり自分自身の心のありようが信仰の最も核になるのだろうと思う。なんでも神任せにしたら、イカれた狂信テロリストと同じだもんね。そしてなんといっても、生きてこそ、なんでしょうな。そして、信仰の自由が一応認められている現代は、やっぱり少しは人類は進化したと言っていいのかもしれないすね。なんかどうもキレが悪いけど、以上。

↓ マジで読むしかないような気がします。
沈黙 (新潮文庫)
遠藤 周作
新潮社
1981-10-19
 

 このBlogで何度か書いている通り、わたしは学生時代に19世紀ドイツ演劇を専攻していたのだが、当然のことながらShakespeareやフランス喜劇、ロシア戯曲なども、日本語で読めるものはかなり片っ端から読んでいる。実のところ、わたしが真面目に勉強していたドイツ演劇よりも、面白い作品はよそにあって、やっぱりShakespeareは確実に別格であろうと思う。わたしは中でも『Henry IV』が一番好きなのだが、Shakespeareは喜劇も面白く、中でも『As you like it』、日本語タイトル「お気に召すまま」も、とても面白かった記憶がある。
 記憶がある、と若干逃げた表現をしたのは、実は正直に自白すると、もう細かいことは憶えていないからだ。何度も読んでいるわけではなく、この「お気に召すまま」は1回しか読んでいないので、主人公のおてんばな女子が男装して大活躍する、ぐらいは憶えているけれど、細かいことはすっかり忘れている。今、わたしの本棚を漁ってみたところ、わたしが持っている岩波文庫版の『お気に召すまま』は1989年11月発行の49刷であった。うーん、もう27年チョイ前か……なんてこった、そりゃあオレも鼻毛に白髪も混じるわけだよ……やれやれ。
 というわけで、今日は日比谷のシアタークリエで上演中の『お気に召すまま』を観てきた。何故かといえば、作品が好きだからでは決してなく、単に、主演がわたしが愛してやまない元・宝塚歌劇団星組のTOPスター、LEGENDこと柚希礼音さん(通称:ちえちゃん)であるからだ。ちえちゃんがミュージカルではなく、普通の、しかもShakespeare劇に出る。そりゃあ、わたしとしては観に行くに決まっているのである。当然というか、もはや義務であろう。そして、観終って思うのは、やっぱちえちゃんは可愛いなあ~、という完全に単なるおっさんファンとしての当たり前な感想であった。かなり女子も板についてきた(?)ちえちゃん。最高でした。

 たぶん、世の中的に、ちえちゃんと言えばまずはダンス、そして歌、というわけで、芝居はその次、なイメージというか評価ではなかろうか? いや、どうだろう、わたしだけかもしれないな、そう思っているのは。いずれにせよ、実はわたしは今日観に行く直前まで、今回は『お気に召すまま』をミュージカル仕立てにしてあるのかな? と盛大な勘違いをしていたのだが、全くそれはわたしの勘違いで、実際、全く普通のストレートプレイであった。故に、ちえちゃんがダンスも歌ナシで芝居だけでShakespeareに挑戦すると知ったときは、かなり驚いた。でも、この挑戦は結果的に非常に素晴らしかったとわたしはうれしく思う。また、今日ちょっと驚いたのは、シアタークリエという中規模劇場で、セリフは生声であった。でも、これはちょっと自信がない。時に双眼鏡も使って観ていたのだが、全員(?)マイクを装着していたのは間違いない、が、明らかに声は舞台から聞こえてきていて、生声のように感じられた。ちえちゃんは、元々声が低く、正直、演劇の通る発声ではない。それでも、後半男装の麗人、という女子を元気にかわいらしくカッコよく、演じ切っていたと思う。
 前半の青いワンピースは可愛かったすね。まあ、華奢には見えなかったけれど、十分以上に女子ですよ。あのウルトラカッコイイ男役としての柚希礼音ではなく、明らかに女子のちえちゃんは、男のわたしから見ると実に可愛いと思う。ラストの純白ウエディングドレスも良かったすね。そしてカーテンコール(というべきかアレ?)で一曲歌ってくれたのは、まあサービスなんでしょうな。久しぶりのちえちゃんの生歌、堪能させていただきました。ちえちゃんは、今後もすでに次のミュージカル出演も決まっているし、ホント順調にキャリアを重ねてますね。今回の芝居だけ、という作品の経験は、そしてShakespeare作品ということですげえ多いセリフ量の芝居を演じ切った経験は、きっと今後につながる貴重な経験になったと思うな。ずっと応援していきたい所存であります。
 で。ちえちゃん以外のキャストでわたしが素晴らしいと思ったのは、やはりロザリンドの親友シーリアを演じたマイコさんだろう。妻夫木くんと結婚したことでも最近おなじみだが、わたしはこの人で一番強烈に印象に残っているのは、チョーヤの梅酒「さ~らりとした~梅~酒」のCMだ。まあ、すっげえ美人ですな。あと、草彅剛くんの映画『山のあなた~徳市の恋』も印象的でしたね。今回のシーリアは、わたしのマイコさんのイメージ(=物静かな和美人)とは違う積極的でよくしゃべる役で、その点もとても新鮮に見えたし、実際、ホントセリフ量も多くてお見事でした。
 それから、わたしは今日初めて知った方だけど、オーランド―を演じたジュリアン君もかなりいいですな。パンフレットによると、彼のお父さんがアメリカ人だそうで、10代まで日本で育ってアメリカに渡り、オフ・ブロードウェーでも活躍した方だそうだ。てことは、彼も歌えるんだろうな。ぜひ一度、彼のミュージカルを観てみたいなあ。かなりカッコいい。そしてかなり鍛えているようで、いい筋肉も見せてくれました。ちょっと名前と顔を憶えておきたいすね。
 キャストに関しては、1人わたしがよく知っている方が出演していた。それは伊礼彼方氏。彼をわたしが見るのは、たぶん10年ぶりぐらい。彼は、わたしが初めて見た『テニスの王子様ミュージカル』で六角中の佐伯虎次郎というキャラ役で出ていたので、わたしは知っていたわけです。あれからもう10年。きっと、不断の努力を続けていたんだろうなと思う。今では結構いろいろなミュージカルに出演しているので、名前はちょこちょこ見かけていたけれど、実際に観劇したのは「テニミュ」以来、今回が初めてだ。『エリザベート』でもルドルフを演じたこともあるんですな。今回は歌がないけれど、わたし、佐伯虎次郎の「ひとつやり残したこと」って歌が好きだったんすよね……。上手いかどうかはともかくw
 あと、そうだもう一人。Shakespeareの作品では、多くの場合「道化」という存在が登場して、意外と重要な役割を演じる場合が多い。そして「道化」は、実は作中人物の中で一番頭が切れて物事の本質を、主要キャラに代わってしゃべる場合が多いのだが、今回の『お気に召すまま』にも道化は出てくる。そして今回その道化役であるタッチストーンというキャラを演じたのが、芋洗坂係長だ。驚いたと言ったら失礼だけれど、滑舌もよく、芝居ぶりも楽しく、非常に良かったと思う。さすがというか、きっちり訓練された演技者として、技ありというか大変素晴らしい芝居ぶりだったと思った。この人、元々ダンサーなんすよね。お見事です。

 というわけで、もうなんか書くことがないので結論。
 今日観に行った『お気に召すまま』は、わたしとしてはちえちゃんを観に行ったわけで、その点では大変満足である。ますます女子化が進行しているちえちゃん。アリです。実にアリですよ。ただ、芝居として、時代設定を1960年代終わり(?)に変換したのは、我々日本人には全く通じないと思う。その点では、正直何だったんだという気がしてならない。我々日本人には全くピンとこないというか、ほぼ意味がなかったように思う。いっそ原作ママのコスチュームプレイでもよかったのかもしれないすね。まあ、変に現代化するよりいいのかな。結論としては、ちえちゃんは大変かわいい。それがわたしの一番言いたいことであります。以上。

↓ わたしが持っているのは岩波文庫版。定価310円でした。今は税込み540円だそうです。
お気に召すまま (岩波文庫 赤 204-7)
ウィリアム・シェイクスピア
岩波書店
1974-05-16

 というわけで、毎週木曜日は『鮫島』ニュースのお時間です。
 つーかですね、先週は現在熱戦が繰り広げられている大相撲初場所において、わたしが応援している【松鳳山】関の調子がよさそうだぞ的なことをここで書きましたが、その後、昨日1/18(水)十二日目終了時点で4勝7敗という星の状況になっておりまして、大変厳しい戦いとなっております。黒星先行ですが、ホント、惜しい相撲が多いんすよね……今場所勝ち越せれば、三役復帰もあり得たのになあ……まあ、まだ初場所は終わっていませんので最後まで応援を続けたい所存であります。
 というわけで、まずは週刊少年チャンピオン2017年第8号の概況です。
 ■巻頭グラビア:浅川梨奈嬢。りな、ではなく、なな、と読むそうです。大変素晴らしいBODYです。
 ■『弱虫ペダル』:京都伏見の陰謀?の巻。どうやら広島の動きには京伏がからんでいるようで?
 ■『牙刃道』:孤独ッッッの巻。もう、なんというか方向性が分かりません……。
 ■『囚人リク』:第2ゲートの巻。まーた妙な面白キャラが登場です!
 ■『Gメン』:勝太怒り爆発直前の巻。勝太が電話した相手は土井くんだった。だ、大丈夫か……。
 ■『吸血鬼すぐ死ぬ』:ドラクル作家デビュー?の巻。毎週楽しいです。
 ■『六道の悪女たち』:バイク篇完結の巻。最後は良い話で落ち着きました。乱奈さんが一番かわいいす。
 ■『BEASTARS』:動物たちの夏の巻。新章スタートです。またウサギの彼女が……。
 とまあ、こんな感じの週刊少年チャンピオンでありました。

  さて。では、今週の『鮫島』ニュースをお送りします。今週は新展開ですよ!!!
 先週は、ちょっとしたおふざけ息抜き回(?)でしたが、ラストで空流部屋に残った常松こと【松明】関のもとに、何者かが訪れたところで終わりました。今週は、幾つか大変なことが判明するのですが、まずは部屋に戻った鯉太郎と椿ちゃんと【白水】兄貴が飯を食っている情景からスタートです。どうやら【白水】兄貴は、顔がボコボコになっていることから察するに、【仁王】兄貴こと現・空流親方にガイにされた模様です。記憶すら飛んでいるらしく、鯉太郎や椿ちゃんとの会話にもまるで頓珍漢な受け答えです。
 まあ、それはどうでもいいとして(白水さんサーセン)、問題は常松です。
 床上手さんのちゃんこを喰いながら鯉太郎と椿ちゃんは、常松がちゃんこも喰わずに先に帰ったことを聞かされます。そうです。すでに常松も立派な関取。なんと、ページをめくると常松が既に部屋から出て、自分の家に住んでいることが初めて判明しました。そして、『Burst』でその存在が確認されていた、妹さんが初めて登場です。立派なマンション。帰ってきた常松を出迎えたのはその妹でした。現在高校生の由佳ちゃんというらしいですが、何やらコスプレめいた衣装で登場です。常松は普通に聞きます。
 「つーか由佳…なんなんだ…その格好は…」
 というわけで、そのコスプレ衣装は、常松と同期の大吉からもらったそうです。皆さん憶えてますか?大吉はオタクの引きこもりでしたね、そういえば。そして由佳ちゃんの着ているコスプレ衣装は、『Burst』の(1)巻で、大吉が初めて空流部屋に引っ越してきた時に持ってきた(そして常松に壊された)等身大フィギュア、「マジカル少女マホ」の衣装だそうです。というわけで、常松も、可愛い妹とオタ趣味を共有している大吉に対して、心の中で(明日ブッ殺す…)と大層ご立腹です。
 そして、このマンションには妹の由佳ちゃんとともに、なんとお母さんも同居していました。そうです。常松と言えば、『Burst』では非常にムカつく嫌な野郎でしたが、それもこれも、元力士のクソ親父によって苦労させられたからです。今や立派な関取として、妹とお母さんを養ってるんすね。まったく、常松もホントにイイ奴に成長しました。しかし、帰ってきた常松の顔を見て、お母さんは、何かあったの? と聞きます。
 平静を保っているつもりの常松でしたが、母の眼はごまかせません。そこで、常松の脳裏には、先週のラスト、空流部屋を訪れた謎の人物との邂逅がプレイバックされます。なんと、やってきたのは常松が憎んでいる親父でした。しかしですね、わたしは常松がイイ奴に 変身して、父親との確執的なものも解消できたのかな、と勝手に想像しておりました。だって、現在の四股名の【松明】は、父のつかってた四股名ですから(※ただし読み方は、父は「たいまつ」、常は「まつあかり」と違う)。
 しかしです。やってきた父親が、常松に投げかけた言葉は、金の無心でした。
 「親父(テメー)が消えて、何年たったと思ってやがんだ…突然現れて…吐いた言葉はそれかよ…クズが…」
 というわけで、思い出し怒りに形相が一変する常松に、妹の由佳ちゃんは心配します。何か今日のお兄ちゃん、空流に入る前のお兄ちゃんみたい、と。
 そして場面はまた空流部屋に戻り、お色気たっぷりの美和子先生のマッサージを受ける鯉太郎です。そしてマッサージを受けながら、大吉の口から、鯉太郎の次の十日目の相手が発表になりました。なんと! というか、やっぱり! というか、十日目の鯉太郎の相手は、北里部屋の【毘沙門】です!!! 【毘沙門】は、(9)巻収録の第71話で初登場した、あの爽やか笑顔のアイツです。まだ番付は不明ですが、鯉太郎は小結戦の次はやっぱり平幕が相手でした。そして、【毘沙門】は、大吉や常松と同期であることも判明しました!
 場面は北里部屋に移ります。なにやら【毘沙門】を含めた若手力士たちがPS4(もどき)で格闘ゲームに興じています。そしてですね、「北里部屋」と聞いてピンときたあなたは、相当な『バチバチ』ファンと言って差し支えないでしょう。そうです。北里部屋の力士を、我々は一人知ってるはずです。そう、『バチバチ』において、鯉太郎や石川こと【飛天翔】、【天雷】【蒼希狼】とともに同期としてしのぎを削ったあの男、「どんぐり」でお馴染みの渡部仁くんの『鮫島』再登場です!!!
 いやー、突然のどんぐり復活には大興奮ですよ。どんぐりくんは、鯉太郎にも勝った男だし、現在も力士を続けていることは、『鮫島』の単行本(4)巻に収録された描き下ろしおまけでも判明していましたが、【毘沙門】を関取と呼んでいることから、どうやらまだ幕下以下のようですね。そして、どうやら【毘沙門】という力士は、その爽やか笑顔やフレンドリーな話し方に似合わない、実はかなり物騒な奴的な模様も描かれます。ゲームのコントローラーを投げつける【毘沙門】は、どんぐり先輩の言葉に答えます。
 「でも君言ってたじゃないか…鮫島君と場所で取りたいって…」
 「あ―――…あれね アイツら巡業とかでいじっても響かないからさー…場所でいじくり倒してやろーと思ってさー」
 ニヒッっと笑う【毘沙門】。どうやら十日目もただでは済まなそうですよ。
 そしてラストでは、美和子先生が椿ちゃんを呼び出して告げます。
 「彼の体は…もう限界だと思う…ダメージの蓄積が許容量を超えてるわ…あれで取組をしているのが不思議なくらい…よく…見ててあげて…手遅れにならないように…彼の人生は力士を辞めても続くのだから…」
 まずいっすね……読者としてはもうそんなこと知ってるよ、ですが、大変マズイ展開になってきております。果たして鯉太郎は、【毘沙門】相手に白星を掴めるのか、そして【毘沙門】はどんな相撲を見せるのか。そしてさらに、鯉太郎の体は最後の十五日目をどう迎えるのか、これからも『鮫島』からはまったく目が離せませんな。鯉太郎の明日はどっちなんすか!!
 というわけで、最後に、毎週のテンプレを貼って終わります。
 <場所:9月場所>
 【鮫島】東前頭十四枚目(5月場所で東前頭十枚目)
 【白水】西小結
 【松明】東前頭六枚目。常松改め。本場所は7連勝中
 【大吉】序2段【豆助】序ノ口【目丸手】序二段【川口】不明
 ------
 1日目:【飛天翔】西前頭十二枚目。石川改め。
 2日目:【宝玉光】西前頭十一枚目
 3日目:【舞ノ島】西前頭十枚目
 4日目:【巨桜丸】西前頭九枚目。新入幕力士
 5日目:【岩ノ藤】東前頭七枚目 
 6日目:【大山道】西前頭七枚目
 7日目:【蒼希狼】西前頭六枚目
 8日目:【丈影】東前頭四枚目。横綱の弟弟子
 9日目:【闘海丸】西小結
 10日目:【毘沙門】番付不明。常と大吉と同期←今週NEW!!
  --------
 【王虎】&【猛虎】共に東大関
 【天雷】東関脇  【田上】番付不明※王虎の付け人をやってることが判明!!
 【闘海丸】西小結 他の力士は表にまとめた記事を見て下さい。
 【泡影】東横綱。第72代。29場所連続優勝中。63連勝中。モンゴル人。

 というわけで、結論。 
 今週はかなりいろいろなことが描かれました。常松のこと、【毘沙門】のこと、そして鯉太郎の体のこと。しかし常松の現在の星取りはどうなっているのか知りたいですな。七日目までは全勝だったはずで、その後、もう勝ち越しは決めてるんすかねえ? 常松は元々学生横綱で強い男なんだから、三役にいてもおかしくないだろうに。現在六枚目の常松。二けた勝てば、場合によっては小結昇進だってあり得るだろうから、お前も頑張れよ!以上。

↓ そういえば、PS4をそろそろ買った方がいいんじゃねえかという気がしてきたな……「バイオ」の新作がやりたい……。いくらするんだろう……うわ、Proは5万オーバー、たっけえ!!
PlayStation 4 Pro ジェット・ブラック 1TB (CUH-7000BB01)
ソニー・インタラクティブエンタテインメント
2016-11-10
 

 昨日の夜、WOWOWで録画しておいた、とあるホラー映画を観た。その作品は、日本では丁度去年の今頃公開されたもので、予告編から結構怖そう&面白そうな気配は感じていたものの、公開規模が小さくてごくあっさり見逃していたのだが、WOWOWでの放送でやっと観ることができた。
 タイトルは、『It Follows』。そのものズバリ、「それ」が後をついて来る、おっかないお話である。どうやらカンヌ映画祭でワールドプレミア公開されて評価を受け、格付けサイトでの評価も非常に高く、やけに激賞している人も多い作品のようだが、ズバリわたしは、まあ、WOWOWで十分だったな、という評価にとどまった。なんというか……ほぼ説明がなくて、投げっぱなしなんすよねえ……そういう映画って、どうもわたしは好きではないっす。

 まあ、大体物語は上記予告の通りだ。なので、問題は、「It=それ」とは一体何なんだ? という点にあるわけだが、結論から言うと、最後まで結局何なのかは明かされず、ホラーにありがちな、解決したと思ったら解決してねえ!!! というラストでぶった切りで終わってしまい、わたしとしては全くスッキリしない、モヤモヤ感の残る作品であった。
 とういうわけで、まずは、作中で語られる設定と、キャラを軽くまとめてみようと思う。
 ■It(それ)の基本設定――これは上記予告にきちんとまとめられているので、まあその通りなのだが、補足すると……
-----------------------
 1)性交渉で他人に移すことができる。
 要するに、自分が狙われている場合は、誰かとヤるとそっちに対象が移るみたい。ただし、1回ヤッて対象から外れても、移した相手が死ぬと自分に戻って来る。怖い!
 2)対象者(感染者)以外には見えない。
 どうも、他人に移し、対象から外れても、感染経験がある場合は見えるままのようだが、とにかく普通は見えないので、感染者が何を怖がっているのか、他人にはわからない。怖い!
 3)ゆっくり歩いて来る
 なので、ダッシュで逃げたり、車に乗って逃げることができる。しかし、部屋に閉じこもっていると、いろんな手段で入ってこようとする。怖い!
 4)物理的攻撃は一応有効
 銃で撃ったり、椅子を投げつけるなどの物理攻撃には、一応効果がある。けど、すぐむくりと立ち上がって来るので、時間稼ぎにしかならない。怖い! なお、対象者でなくとも、この辺にいるのかな?と見当を付けて攻撃することもOK。
 5)目的及び完全なる駆除
 不明。どうやれば完全に退治できるのかも不明。
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 とまあこんな感じである。で、キャラクターはというと……
 ◆ジェイ:ヒロイン。女子高生(大学生?)。結構かわいい。妹がいる。彼氏のヒューとCar SEXをしてうつされた。家のプールでぼんやりしたり、海に入ったりと、泳ぎが好きらしい。水着はある意味スクール水着的なまったく色気なしの競泳系水着。演じたのは、Maika Monroeちゃん23歳。この人は、去年の『INDEPENDENCE DAY:Resurgence』でホイットモア元大統領の娘を演じた方ですな。役者以外でも、カイトボードの選手としても活躍してたそうですので、本人も泳ぎは達者なんでしょうな。
 ◆ヒュー:元凶となる第一感染者。実は偽名で、本名はジェフ。なんでも、バーでナンパした女からうつされたらしい。が、どうしてそんなに「It=それ」に詳しいのか、そして今までどうやって逃げていたのか、ほぼ説明なし。演じたのはJake Weary君26歳。うおっと!なんてこった!! コイツの顔、どっかで見たことがあると思ったら、『ZOMBEAVER』に出てきたバカ男じゃないか!! ちなみに今回は、さっさとジェイに移してとんずらをかますヤリ逃げのクソ野郎でした。
 ◆グレッグ:ジェイの向かいの家に住む、雰囲気イケメン。かつて、ジェイと付き合ってたこともあるらしい。中盤で、ジェイ、君の感染はオレが引き受けるぜ、という口実(笑)の下に、ジェイとヤり、無事に自分が感染を引き受けたはいいけれど、ほぼ意味なく見事に死亡し、ジェイに対象は戻る。残念ながらやられキャラ。演じたのは、Daniel Zovatto君26歳。おっと、この人、現在劇場公開中の『Don't Breathe』にも出てるんすね。わたしは観てませんが。
 ◆ポール:ジェイ姉妹と幼馴染の、ぱっと見は全くさえないガリガリ君で、若干Geekめいた青年。ジェイのファーストキスの相手でもあり、ポールはずーーっとジェイが好きだった、みたい。ジェイのとんでもない災難に、ポールは男を見せる!演じたのはKeir Gilchrist君25歳。彼は一番キャリアがあるようですが、わたしが観たことのある映画はないみたいですな……なかなかの好演だったと思います。一番光ってたのではなかろうか。
 ◆ケリー&ヤラ:ジェイの妹とその友達。物語において特別な役割はまったく果たさない。ただ、友達のヤラは、なんか独特の雰囲気のあるオタク少女的なキャラ造形で、彼女がいろいろ調べて事件の真相にたどり着く的な展開を予想しましたが、まったくそんなことにはならず、ほぼ意味のないキャラでした。演じたのはOlivia Luccardiちゃん28歳。アレッ!? 一番年上だな、この人。そして妹のケリーは、ほぼ何もせず。演じたのはLili Sepeちゃん20歳。この人は大変可愛いと思います。この映画を撮影してた当時はたぶん17歳ぐらいで、まだ顔が真ん丸ですが、今はかなりの美女に成長してるみたいですな。子役時代は若干、川島海荷ちゃんに似てる気がします。ちょっと名前は憶えておきたいすね。
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 とまあ、こういう映画であったわけだが、その観客を怖がらせる演出は、確かにお見事であったと思う。とにかく、「It=それ」が、「ぺたり・ぺたり・ぺたり……」と真っ直ぐジェイに向かって歩いて来るさまは超おっかない。しかし、いかんせん妙な間が多いし、時間経過も分かりにくいのが難点と言えば難点かもしれない。
 脚本的にも、ほぼ、核心に迫るような展開はなく、ただ単に逃げ回り、クライマックスは対決をするものの、どうも切れ味の薄いもやもやエンドであったので、もうチョイ緊張感あふれ、ラストはすっきりさせる手もあったように思う。
 なお、監督&脚本のDavid Robert Mitchell氏は、次回作の『Under the Silver Lake』ではAndrew Garfield氏を主演に迎えるなど、メジャー感は若干増したようですな。どんな映画なのか、まだ予告編もないようなのでわからないですが、ジャンル的には「クライム・スリラー」だそうで、ちょっと期待したいところであります。

 というわけで、短いけど結論。
 去年日本で公開されて、結構様々に激賞されている『It Follows』をWOWOWで観てみたところ、まあ正直、こんなもんか、であった。確かに怖い。けど、ちゃんと解決してほしいんだよな……わたしとしては。投げっぱなしは、当然アリだけれど、もうチョイ、ラストバトルできちんと退治したことを印象付けてくれないと、一番最後に実は退治出来てませんでした~というホラーお馴染みのエンディングのショックが薄いと思う。結論としては、WOWOWで十分でした。以上。

↓ 「It」といえば、Stephen Kingが大好きなわたしは当然こちらです。これはTVシリーズだったと思うけど、また映画化されるんじゃなかったっけ。まあ、とにかく原作小説は最高です。
イット [Blu-ray]
ハリー・アンダーソン
ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント
2016-10-12

 というわけで、毎週月曜日は週末映画興行データです。
 この週末は映画は観に行きませんでした。それより大変なことが起きたので……それは明日以降いつか書く予定ですが、なんと、自宅の光ファイバーが見事にブッツリと切れてしまい、しかもどうも、マジでねずみがかじったんじゃね?疑惑があって、Web閲覧ができなくなるという、とんでもない目に遭いました……参ったっす。
 あと、今日、東宝の第3四半期決算が発表されましたので、来週は松竹と東宝の第3四半期決算の数字を備忘録として書く予定です。ま、いろいろすでに報道されている通り、東宝はウハウハです。そりゃあそうでしょうなあ。松竹もかなりいいはず、と想像してましたが、どうも演劇が悪かったみたいですね。詳しいことはまた来週。

 さて、それでは、いつも通り興行通信社の大本営発表からメモっておこう。

 1位:『本能寺ホテル』が公開土日で2億チョイ稼いで1位。何週間か前、予告が面白そうだから観ようかな、と書いたこの作品。そう書いた時は「原作なしのオリジナル脚本っぽい」と書きましたが、その後、なかなかとんでもない話が暴露?されて驚きました。詳しくはちょっと検索すれば出てきます。でも、映画は無事にヒットしてますので、東宝的にメシウマでしょう。なんというか……ヤレヤレな世の中ですねえ……。フジテレビ制作作品としても久々なヒットという印象です。めっきり日テレにやられていたので。
 2位:『君の名は。』が21週目にして2位まで浮上。もう累計は232.2億だそうで、もはや書くことないす。
 3位:『バイオハザード:ザ・ファイナル』が24日間で35億は超えてる、36~37億ぐらい、と見積もる。こちらも頑張ってますね。先週の予想通り40億は超えそうですな。ただ、45億はどうだろう、大丈夫か?ぐらいのペースに落ち着いてきた印象です。来週40億近く、あるいは超える可能性もありそうです。
 4位:『劇場版動物戦隊ジュウオウジャーVSニンニンジャー』が公開土日で0.9億ぐらいだったようです。なので金額順だと結構下かも。あくまで、動員順で4位ということで。まあ、新春のスーパー戦隊の映画は、例年「前年VS現役」のVSものなわけですが、去年の『ニンニンVSトッキュウ』より若干下、おととしの『トッキュウVSキョウリュウ』より若干上、ぐらいの数字のようです。例年通り最終5億は厳しいか……。
 5位:『映画妖怪ウォッチ空飛ぶクジラとダブル世界の大冒険だニャン』が30日間で30億に届いたかどうかぐらい、と見積もる。届いてないかな……。ずっと同じことを言ってますが、これは数字的にはとても立派ですが、前作比では厳しい展開です。
 6位:『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』が31日間で40億突破は確定的、41~42億ぐらいと見積もる。厳しくなってきたぞ……上映回数もかなり減ってきたし、こりゃあマジで50憶程度で終了かも……。先週は、65~67億ぐらい?とかテキトーに予想してすみません。これはSWとしては淋しい数字ですね……。
 7位:『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』が52日間で70億に届いたかどうか、ぐらいと見積もる。こちらも、『ハリーポッター』本編に比べると落ちますが、数字としては大変立派です。
 8位:『この世界の片隅に』が65日間でまたも上映館が増えたようで、ランキングも上昇、どうやらすでに13億は超えたものと思われます。いろいろ賞も受賞して良かったすね。これでのんちゃんがまた元気に活躍できるといいのですが……。
 9位::『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』が30日間で15億は超えたと見積もる。結構粘りましたね。これなら、また七月先生の作品を映画化しようという企画も生まれることでしょう。良かった良かった。よく考えると、他に観客層がかぶるものがなかった年末年始の公開ってのも効いたのかもしれないすね。良くわからんですが。
 10位:『海賊とよばれた男』が37日間で、今週こそなんとか20億を超えたと見積もる。まあ、こちらも同著者前作『永遠のゼロ』に比べると数字はかなり落ちますが、それでも20億は立派でしょうな。問題は制作費をどのぐらいブッ混んでいるか……ブッ混み過ぎていれば20億でも収支はヤバイ可能性は当然あるわけで、まあ、大丈夫と信じたいですが……どうだろうなあ……かなりセットも作り込んでるし、CGカットも多いからなあ……わからんすね……。

 とまあ、そんな週末だったようです。

 わたしは来週から、観たい洋画が結構続くので、また毎週のように映画館へ行くものと思いますが、今月は芝居というか、愛する宝塚歌劇の観劇予定が多くて、土日両方を映画に費やせない……平日の会社帰りにでも観ようかと思います。
 以前まとめて置いたメモをもう一度自分用に貼っておこう。じゃないと忘れそう……
 『沈黙―サイレンス―』1/21(土)公開←まあ観ないとイカンでしょうな。
 『ザ・コンサルタント』1/21(土)公開←微妙だけど観たい。
 『スノーデン』1/27(金)公開 ←これはWOWOWでいいかな……悩む。
 『マグニフィセント・セブン』1/27(金)公開←微妙だけど観たいっす。
 『ドクターストレンジ』1/27(金)公開 ←超期待!! もう一回見るべし!
 『王様のホログラム』 2/10(金)公開←微妙だけど観ておきたい。WOWOWで十分か?
 『セル』2/17(金)公開←超期待!! わたしの大好きなStephen King原作。B級臭がする。
 『ラ・ラ・ランド』2/24(金)公開  ←超期待!! Emma Stoneちゃんが可愛い。

 というわけで、結論。
 今週1位の『本能寺ホテル』は10億は楽に超えそうなスタート。15億も全然ありうる。わたしも観たいのだが……万城目先生のTweetを観てしまったら、かなり心中複雑……どうせTOHOのポイント貯まってるからタダなら観るか……。以上。
 

 はーーー寒し。
 昨日は寒空の中、渋谷のオーチャードホールへ、『エリザベート TAKARAZUKA20周年スペシャル・ガラ・コンサート』 を観に行ってきた。去年の12月に、梅田芸術劇場での大阪公演を観に行った話は以前書いた通りだが、大阪では淋しくぼっち観劇であったけれど、いよいよ東京公演ということで、今回はヅカ友のお姉さんたちとの観劇であったので心強し、である。

 すでに前回の観劇での時に書いた通り、今回の『エリザベート TAKARAZUKA20周年スペシャル・ガラ・コンサート』は、ミュージカル『エリザベート』日本初演20周年を記念したOGたちによるコンサート形式の公演であり、初演キャストバージョン、フルコスチュームバージョン、メモリアルバージョンと3種類の公演があって、昨日わたしが観たのは、「フルコスチュームバージョン」であった。
 大阪で観た「メモリアルバージョン」は、一つの役を複数の演者が入れ替わりながら演じ・歌われたものだったが、今回は(メインの役は)一役一人と固定されている。で、昨日の主なキャストはこんな感じであった。
bunkamura
 というわけで、主に2005年/2009年の月組メンバー中心と言っていいのだろうと思う。なので、2010年1月からヅカを観始めた、ヅカ歴7年のビギナーに過ぎないわたしが現役時代を観て知っている方は、シシィの凪七瑠海さん(通称:カチャ※現役)、ルキーニの龍真咲さん(通称:まさお)、ルドルフの涼紫央さん(通称:とよこさん)、それから大ベテランの磯野千尋さんぐらいだろうか。
 よって、わたしとしては、昨日はとにかく、去年専科へ移動となって、現在も現役ジェンヌとしてバリバリに頑張っているカチャのシシィぶり(何しろカチャは普段は男役なので、女性を演じるのはわたしは初めて観る。ショーではたまに観たことあったけど)と、梅田ではおっそろしく美人できれいなシシィとして登場したまさおの、ノリノリなルキーニを大変楽しみにしていたわけである。
 結論から言うと、カチャのシシィは、なかなか可愛かった。歌も、非常に悪くない。むしろ普段は男役のカチャから考えれば超イイじゃん!と偉そうに思った。あたりまえだけれど、立派?に女子ですよ。そしてやっぱり背が高いですな。実際可愛いと思います。
 そしてまさおの方はというと、梅田でのまさおシシィが超素晴らしかったのは、ホント大阪に行ったかいがあったぜと満足であったわけですが、今回は久しぶりの男役、しかも物語の狂言回しとして重要なルキーニである。しかし全く心配なく、すっかりいつもの、安定のまさお節全開で楽しいルキーニでした。いやあ、シシィの時は完全にまさお節は封印されていたのだけれど、やっぱり男になると、紛れもなくまさおですな。若干信長様も入ってて、わたしとしては大変良かったと思います。やっぱり2幕冒頭の「キッチュ!」のノリは楽しいすね。前回も書いたけれど、まさおはとにかく、素で超美人なので、シシィの時は非常に美しく、そしてルキーニの時はやっぱりイケメンですよ。わたしとしては大変満足でありました。同行のお姉さまたちも、大変満足されていたようだけど、あーん、やっぱり梅田にまさおシシィ観に行けば良かった~~と仰っていたので、だからオレ、行きましょうよってさんざん誘ったのに……と思いつつ、オレは観たもんね~~とプチ自慢してやったのは言うまでもなし、であります。しかしアレですな、今年はないみたいだけれど、今後帝劇版の『エリザベート』が上演される際は、まさおシシィが起用されるんでしょうな、きっと。そしてまたチケットが全然取れないんだろうな……。やれやれです。
 そしてもう一人、わたしは星組イチオシなので、舞台に立つとよこさんも大変ご無沙汰の久しぶりであった。すでに2児の母となったとよこさん。去年二人目が生まれたばっかりだよな? まったくもって体形はわたしの知るとよこさんの、シュッとしたいでたちで、なんというか、すげえな~と感じ入った。そして演じるルドルフは、第2幕からの登場だけど、わたしは青年ルドルフとトート様の「闇が広がる」とか、「皇~帝~ル~ド~ル~フは立ち上がぁ~る~」の場面や、シシィとの「僕はママの~鏡だからママは~」のシーンがかなり好きなので、とよこさんがルドルフを演じるのは大変楽しみにしておりました。そして、やっぱり非常に良かったと思います。なんかとても久しぶりに歌声を聞いたような気がして、大変胸熱でありました。
 しかしアレですな、Bunkamuraオーチャードホールは久しぶりだけど、梅田芸術劇場の方が大きいような気がしますね。梅田は1階の結構前での観劇であったけれど、今回のオーチャードホールは2階席で、まあ、ど真ん中だったので観やすかったけれど、双眼鏡なしではきつかったす。
 そしてやっぱり『エリザベート』は歌が最高ですね。わたしは帝劇版のCDを車でヘビロテで聞いているのですが、2幕で浮気したフランツに絶望したエリザベートに対して、トート様が言うセリフが宝塚版と帝劇版は違うんすよね。
 宝塚版「死ねばいい!」
 帝劇版「それがいい……待っていた!」
 わたしは、帝劇版は城田トート様しか観たことがないのだが、まあ、とにかくここの、「お前がそう言うのを待っていたぞ、フハハハハ!!」的なトート様はおっそろしくカッコ良いと存じます。あと、そういえばストーリーも、性病の話は宝塚版にはほぼなくなってるし、ほんのちょっとだけ、違うんすかね。まあ、わたし的にはどちらも大好きです。
 はーー。やれやれ。実は、2回目ということで、あまり書くことがないのですが、結論としては大変素晴らしかったと思います。わたしはこの観劇後、とあるジェンヌのファンミーティングなるものにぼっち参加し、そちらではすでに退団された同期元ジェンヌがサプライズ乱入したりと、そちらの方が昨日の出来事としては大きく・楽しく・泣けたので、そっちのことを書きたいのだが、Web等での拡散は禁じられているので書けません。そちらももう、本当に大満足の2時間で最高でありました。

 というわけで、結論。
 2回目の観劇となった『エリザベート TAKARAZUKA20周年スペシャル・ガラ・コンサート』は、わたしとしてはやはり、まさおルキーニとカチャシシィを楽しみに劇場へ参上したわけだが、期待通り大変楽しめました。そしていつか、まさおシシィの帝劇版が実現するといいすね。そして宝塚版は……わたしの好み的には、たまきちくんが大きく成長した時、まだちゃぴちゃんが隣にいるなら、その二人でトート様とシシィを演じてほしいなあと思います。もちろん、その時には美弥ちゃんには超ノリノリでルキーニを演じていただきたいですな。フランツじゃなくて。ま、数年のうちにはまたどこかの組で上演されることだと思うので、楽しみにしていたいと思います。以上。

↓ しつこいですが、わたしとしてはみっちゃんのフランツはやっぱり素晴らしいと存じます。みっちゃん……全然チケット獲れないよ……くそう……。
『エリザベート ―愛と死の輪舞―』 [Blu-ray]
宝塚歌劇団
宝塚クリエイティブアーツ
2014-11-06



 

 先日の夜、布団に入ってとある小説を読んでいたところ、元部下のYくんから、ぽろり~ん、とSKYPEメッセージが来た。とあるURLとともに曰く、「パン屋の漫画です。結構面白い」とのことであった。
 なんでそんなメッセージをくれたかと言うと、元々Y君はわたしよりも数倍漫画を読んでいる男であり、かつ、面白い作品があるとせっせとわたしに教えてくれているのだが、本作に限って言うと、わたしがいつも、「あーあ……パン屋になりてぇなあ……」とよくぼやくからである。
 わたしは結構マジメというか本気でベーカリー・カフェの経営を考えており、いつか実現して見せるぜ、と思ってはいるのものの、いかんせんパン知識がまったく乏しい男である。わたしは単純に、焼きたてのパンの香りと淹れたてのコーヒーの香りは、幸せの香りだと本気で思っているので、店をやりたいと思ってはいるのだが、肝心のパンについてはまるでド素人である。 まあ、本気だったらさっさと学校にでも通って勉強&技能を身に付けろ、ではあるのだが、そこに至らないということは、わたしはまだ本気ではないということなのかもしれない。情けなし。
 というわけで、Y君からのメッセージを受信して3分後には電子書籍版を購入完了し、読んだ漫画がこちらである。スクエニのWebサイトでは、第1話の立ち読みも出来るみたいですな。
聖樹のパン(1) (ヤングガンガンコミックス)
山花 典之
スクウェア・エニックス
2016-04-25

聖樹のパン (2) (ヤングガンガンコミックス)
山花 典之
スクウェア・エニックス
2016-10-25

 本誌を買って読んだことがないので知らないが、どうやらヤング・ガンガンに連載しているらしい作品で、そのタイトルを『聖樹のパン』という。結論から言うと、わたしとしては非常に面白かった。とにかく、パンに関する知識を相当わたしに教えてくれる内容になっており、これは大変イイじゃないか、と感じた次第である。
 どんなお話か、ごく簡単にまとめると……
 舞台は北海道の小樽。ベーカリー・ペンションを家族で経営する姉妹が、父が倒れたことで肝心のベーカリー部門が営業できず、パン職人を募集するところから物語は始まる。そして、父の旧知のパン職人(故人)の息子が東京からやって来て、姉妹と仲良くやりつつも 、亡くした父の焼いていたパンの味を求めて切磋琢磨する――的なお話である。
 で、各キャラクターは、以下のような感じです。
 ◆ほしの聖樹(まさき):22歳。東京からやってきた。幼少期に亡くした父はある意味伝説的パン職人。聖樹自身も東京でパン学校に通って、一時パン職人として仕事もしていたが、どうにも亡き父の名前が大きく、大人には「あのほしの君の息子か!」と注目され、同級生・同僚には、「ちっ!親の七光りが!」といじめられ、ということがあって、すっかり人間不信で引きこもっていた若干気弱な青年。母の勧めや、北海道に住む父の古い友人(=姉妹の父)からの誘いもあり、とりあえず小樽にやってきた。そして小樽で出会った善良な人たちに囲まれ、パン道精進のために一生懸命努力中。「人に生きる力を与えるパン」を作るのが目標。そして、結果的に、異常にモテる。出てくる女子キャラすべて(小学生から老女まで)に好意を持たれている。特にイケメンではないが、そのパン道への情熱と優しさゆえ、みたい。
  ◆雪森羽咲(うさぎ):28歳。美人&ナイスBODY。ファンの常連客の男がいっぱいいる。ペンション雪の森の支配人。聖樹のパン職人としての腕を信頼して雇うことに。聖樹のことを可愛い男の子と思っていて、やたらとモテる聖樹目当てにやって来る女性たちにちょっとした嫉妬を感じてしまう。
 ◆雪森桔音(きつね):?歳。羽咲の妹。ペンション森の雪のシェフ。料理学校出身の料理人。若干男らしいサバサバ系クール美人。聖樹のパン職人としての腕を認めている。姉の羽咲を「エロカワ」女子と表現し、時折聖樹が羽咲の無意識のお色気にどぎまぎするのを見て楽しんでいる。
 ◆雪森徳三:?歳。姉妹の父。2カ月前に過労?で倒れて入院。ただし、(1)巻の後半では退院するも、せっかく若い力でペンションを何とかしようと頑張っているため、家には戻らず独自になにやら新しいことを始めようとしている。パン職人としての腕は確か。聖樹の父とは古い付き合いがあったらしい。 
 とまあ、こういう聖樹と姉妹というレギュラーキャラを中心に、毎話ゲストキャラが難問?を持ち掛け、それに聖樹がパンで応える、という展開である。ちなみに、聖樹のパンを食べると、作中のキャラクターは「美味しい……まるでお母さんに抱かれているみたい……」のような幸せな妄想に浸るのがちょっとお約束なのだが、これはジャンプ連載中の『食戟のソーマ』のお約束の「おはだけ」に似てますね。まあ、『ソーマ』の場合は全裸でチョイエロ妄想シーンだけど、こちらの『聖樹のパン』は、服は破れませんw
 そしてこの漫画のもう一つの特徴は、毎話、聖樹のパン知識の説明がすごく、ある意味専門的で文字量も多い点であろうだ。これを読んでいると、聖樹の作るパンは一体どんな味なんだろうと妄想が沸くし、ホント、食ってみてえ!と思わざるを得ない。一部ではこの漫画は夜読んではダメ、まさしく飯テロ、とさえ言われているようだが、ま、わたしは夜読んでも全然平気でした。そもそも、味オンチで子供舌でジャンクフード好きなわたしは、果たしてうまいパンを作れるのだろうかと、そっちの方が実に心配である。
 わたしは、この漫画を読んでいて、北海道でパン屋さん……という連想から、この映画を思い出した。

 これは、わたしが日本人の芸能人で最も愛する原田知世様主演の、『しあわせのパン』という作品だ。詳しくは説明しないけれど、まあ、はっきり言ってちょっと狙いすぎというか現実離れしたおとぎ話めいた空気感が若干鼻につくけれど、知世様は最高だし、悔しいというかうらやましいというか、大泉洋氏の演技もとても良く、実に温かい映画である。
 漫画『聖樹のパン』という作品は、この映画とは全然違っていて、もっと現実的であり、商売としてのパン作りの方がメインであるため、もっとシビアな部分が多い。しかし、北海道でパン屋というのは、わたしにとってすさまじく憧れるもので、両作共にとてもわたしは気に入っている。
 しかし、やっぱり焼きたてのパンの香りと、淹れたてのコーヒーの香りって……これ以上に幸せをもたらすものは、そうそうないんじゃないかという気がしますね。わたしはパンは焼けないけれど、会社で毎朝、コーヒーを淹れるのが日課なのだが、コーヒー道もなかなか奥が深いというか、一筋縄ではいかないですな。もう何年もコーヒーを淹れ続けているけれど、こ、これだ―――!! という納得できる美味いコーヒーを淹れるにはまだまだ精進が必要のようです。パン作りはもっと難しいんだろうなあ……オレ……いつか、パン屋になるんだ……と寝言をほざいているうちは、ダメでしょうな。JOJO風に言うと、「オレはパン屋になるッ!!」なんて決意表明は口にする必要がなく、「オレはパン屋だッ!!」と自信をもって言うのが男ってことですな。まずは決意を固め、そしてとっとと研究に入るべきかもな、もうそろそろ……。

 というわけで、短いけどさっさと結論。
 教えてもらって読んでみた漫画、『聖樹のパン』という作品は、パン屋になりてえなあ、と日頃ぼやくわたしにはかなり楽しめた作品であった。そしてこの漫画は、意外にかなり高度なパン知識もわたしに授けてくれ、その点も大変良かったと思う。でも、普通の人にはどうだろう、ちょっと長いし専門的すぎと思う人もいるかも……。しかし、ホント、焼きたてのパンの香りはなんであんなに、幸せのイメージをもたらすんだろうか。そして、職人としては、自分が作ったパンをうまそうに食ってくれたら、そりゃあもう最高でしょうな。ちきしょう……さっさとそっちに進む決断しろ!オレ!! 以上。

↓ 知世様は永遠にわたしの女神です。誰がなんと言おうと、断じて変わらないす。
 

 というわけで、毎週木曜日は『鮫島』ニュースのお時間です。
 2017年、1発目の週刊少年チャンピオンは、まあ、特別感はなく普通な号でありました。
 つーかですね、この『鮫島』ニュースを読みに来ている方の何割かは、本物の大相撲にも興味がわいてきていると思いますが、現在、両国の国技館では平成29年初場所が熱い戦いを見せております。そしてこれも、常連の方にはおなじみだと思いますが、わたしは二所ケ関部屋の【松鳳山】関をずっと応援しております。でですね、その【松鳳山】関なんですが、昨日までの4日目で2勝2敗、という星なんですが、なんと!3日目には横綱【日馬富士】関をぶっ飛ばして金星GET! しかも初日は大関【照ノ富士】関も破り、おまけに、観ていた方はご存じだと思いますが、2日目も横綱【鶴竜】関をぶん投げたのです!!! しかしその勝負は、最初は行事軍配が【松鳳山】関に上がったものの、残念ながら【松鳳山】関の足が先に土俵の外についており、差し違えで黒星となってしまいました。
 いやーーーホント興奮したっすわ。もう完全に横綱【鶴竜】関は宙で裏返っており、「死に体」になっていたと見えたので、先に足がついても勝ちかも!? とドキドキしたのですが、結局は負けとなってしまいました。はーーー惜しかった!!  というわけで、昨日は大関【稀勢の里】関にやられちまいましたが、我が愛しの黒ブタ野郎こと【松鳳山】関は、今場所はたいへん元気です!! とにかく、この黒ブタは「引かない」で常に前に出る姿がわたしはとても応援したくなるわけで、観ていて気持ちのいい黒ブタ野郎です。なんであんなに黒いのでしょうか。ホント不思議な力士ですよ。
 というわけで、まずは週刊少年チャンピオン2017年第7号の概況です。
 ■巻頭グラビア:今号はナシ。代わりに、ペダルと牙刃のダブルポスターです。オーガの顔芸がw
 ■『弱虫ペダル』:呉の陸鮫!! の巻。去年と同じ展開です。またか……どうせ……(略)
 ■『牙刃道』:武蔵捕縛失敗の巻。もう、全員で拳銃で撃てばいいじゃない……。
 ■『囚人リク』:制服奪取成功の巻。つーかホント展開が時間かかりますなあ……
 ■『少年ラケット』:ヒロ先輩の秘密の巻。足にけがを負ってたんですな。大丈夫か森原中は。
 ■『Gメン』:レイナ大ピンチの巻。はたして勝太が電話した相手が誰なのか気になりますね。
 ■『吸血鬼すぐ死ぬ』:セロリトラップ!の巻。いやー、今週も声を出して笑ってしまった……。
 ■『六道の悪女たち』:追いかけっこ勝利の巻:六道君の真面目さに、悪女たちも落ちるわけですな。
 ■『BEASTARS』:レゴシ人気者の巻:舞台後、ちょっとした人気者になったレゴシ君。友だちのジャックが大変良いですね。
 ■『SHY』:読み切り少女ヒーローもの。チョッと描き込みが多いけど絵が大変良いと思います。面白かった。

 とまあ、こんな感じの週刊少年チャンピオンでありました。

  さて。では、今週の『鮫島』ニュースをお送りします。
 前回は、九日目の【白水】兄貴の戦いが物言いの末黒星で終わったものの、これまでの親方とのちょっとしたすれ違いも解消し、負けてすっきりした【白水】兄貴ですが、なんと、気分のいいところで勢いを借りて真琴姉ちゃんに告白する!!! という謎の展開で年を越しました。というわけで、今週は、【白水】兄貴のプロポーズ大作戦というわけなのですが……今週はもう、結果だけでイイっすよね?書く事ねえし……
 まあ、結論としては、【白水】兄貴の出る幕なく、【仁王】兄貴の掟破りの抜け駆けプロポーズが炸裂て、真琴姉ちゃんもまんざらでもなく、うれしげな笑顔を見せるの巻、と相成りました。
 いったい何が起こったかって? つまりですね、順を追って説明すると
 1)真琴姉ちゃんが「あのベンチ」で待ってる。【白水】兄貴に呼び出されたため。
 2)鯉太郎&椿ちゃんが斥候として茂みに隠れてる。
 3)【仁王】兄貴もベンチにやってきて、真琴姉ちゃんとばったり会う。実は【仁王】兄貴も、【白水】兄貴に「立会人」として呼び出された。
 つまりですね、【白水】兄貴の作戦は、二人は顔を合わせれば喧嘩ばかりなので、今日も絶対喧嘩になであろうから、喧嘩が始まったら鯉太郎&椿ちゃんにLINEで連絡をもらい、そこに自分がボートに乗って現れ、【闘海丸】くんのあのCMをパクった告白をしよう、てなことを考えていたわけです。
 しかし、背後に鯉太郎&椿ちゃんがいることも知らずに、【仁王】兄貴は結構男らしくカッコよくプロポーズし、成功すると。そして鯉太郎&椿ちゃんはここに【白水】兄貴が来てももうどうしようもない、ヤバイ、と思っていると、いつの間にか川さんが携帯を奪って【白水】兄貴にGOを出しちゃってたと。そして見事にスベった、とまあ、そういうわけです。
 まあ、我々読者的には、真琴姉ちゃんと【仁王】兄貴がイイ感じだということは、もう最初の『バチバチ』の頃からわかってますので、ここは素直に、良かったねと祝福したいですな。まあ、【白水】兄貴はとんだ当て馬(?)になっちまいましたが、【白水】兄貴には、もうチョイ相撲道に精進していただきたいですな。
 しかし、我々読者としては、鯉太郎と椿ちゃんはどうなってんだよ!って方が気になりますね。完全に椿ちゃんは鯉太郎のことが大好きですが、鯉太郎は……まあ相撲しか考えていない朴念仁でしょうなあ……そんな鯉太郎が椿ちゃんは大好きなわけで、果たしてこの二人が幸せになれるのか、大変大変心配です。
 そして今週の一番の問題は、最後のページに待っていました。
 部屋でみんなの帰りを待つ常松こと【松明】関。どうやら今回のプロポーズ大作戦には参加していないようですが、なかなか帰ってこないみんなを心配していると、部屋に何者かが訪れます。
 「やっ…やあ…久しぶりだな…」
 その声に、驚愕する常松、の顔アップで今週は終了でした。この客はいったい何者なのかが大変気になります。声が震えていて、フキダシも若干震えているわけで、『吽形』さんではありえないでしょう。『吽形』さんなら堂々としてるはずですし。こんなオドオドと空流部屋を訪れたのはいったい誰なのか。そして物語にどうかかわるのか。来週が大変楽しみですな。ここでまさかの【大鴇】とかだったらびっくりですな。一体誰なんだろう……常松が知っていて、久しぶり、となると……わかんねえっす。佐藤先生、誰なんすか一体!!
 というわけで、最後に、毎週のテンプレを貼って終わります。
 <場所:9月場所>
 【鮫島】東前頭十四枚目(5月場所で東前頭十枚目)
 【白水】西小結
 【松明】東前頭六枚目。常松改め。本場所は7連勝中
 【大吉】序2段【豆助】序ノ口【目丸手】序二段【川口】不明
 ------
 1日目:【飛天翔】西前頭十二枚目。石川改め。
 2日目:【宝玉光】西前頭十一枚目
 3日目:【舞ノ島】西前頭十枚目
 4日目:【巨桜丸】西前頭九枚目。新入幕力士
 5日目:【岩ノ藤】東前頭七枚目 
 6日目:【大山道】西前頭七枚目
 7日目:【蒼希狼】西前頭六枚目
 8日目:【丈影】東前頭四枚目。横綱の弟弟子
 9日目:【闘海丸】西小結
 10日目:??? 
  --------
 【王虎】&【猛虎】共に東大関
 【天雷】東関脇  【田上】番付不明※王虎の付け人をやってることが判明!!
 【闘海丸】西小結 他の力士は表にまとめた記事を見て下さい。
 【泡影】東横綱。第72代。29場所連続優勝中。63連勝中。モンゴル人。

 というわけで、結論。 
 今週はちょっとした息抜き回でしたが、まあ【仁王】兄貴と真琴姉ちゃんには幸せになっていただきたいものです。そして今週のラストに現れたのはいったい誰なのか。そして鯉太郎の十日目の相手は誰なのか。さらに、鯉太郎はどういう運命をたどるのか。今年も『鮫島』から目が離せないっす!以上。

↓ヤバイ……ちょっと欲しいかも……。

 

 去年のちょうど今頃、わたしがずっと読んできた、いわゆる時代小説のシリーズが51巻でめでたく完結した。NHKでも実写映像化されていた、『居眠り磐音』というシリーズである。完結に当たって、わたしは、主人公・坂崎磐音の息子、空也が武者修行の旅に出るエンディングに対して、空也の物語は読者が想像するのが良い、ここでシリーズを終わらせた、著者の佐伯泰英先生は素晴らしい、と、このBlogにも書いた
 あれから1年。
 この年末の新聞に出ていた広告を見て、わたしは驚愕し、げえーーー!! な、なんだって―――!? と声を上げ、マジか、マジなのか!? と、やおら興奮したのである。なんと、その空也を主人公とする新たな物語が、佐伯先生の手によって上梓されるという驚愕のお知らせであった。
 というわけで、年末に初めてそのことを知り(抜かってた……全然知らなかった……)、マジかよ、マジなのかよ……と発売を楽しみにし、発売日にすぐ買ったのだが、まだ読んでいる本があったので、ちょっとだけ待っててくれ、と興奮を抑え、一呼吸置いたところで、おとといから読み始め、上下本なのに3日で読み終わってしまった。
 そして、その作品は紛れもなく、正真正銘、坂崎空也の旅のお話だったのである。いやー、佐伯先生、ありがとうございます!!! まさか空也に、いや、磐音ファミリーみんなにまた会えるなんて、1年前は全く考えてなかったよ……というわけで、もうのっけから結論を申し上げますが、最高でした。「居眠り磐音」シリーズを読んできた人ならば、今すぐ最寄りの本屋さんへ走り、絶対に買って読むべきです!!! 


 というわけで、物語は、まさしく「居眠り磐音」第51巻の後のお話であった。以下、ネタバレもあると思うので、気になる方は今すぐ立ち去ってください。そして読む場合は自己責任でお願いします。
 さて。前作、あえて「前作」と言わせていただくが、「居眠り磐音」の最終巻51巻がどういうエンディングを迎えたか覚えているだろうか? わたしは明確に覚えていた。すべての事件が終結し、九州の関前藩(※架空の藩で実在しない。大分?のあたりっぽい)ですべての決着をつけた主人公磐音一行は江戸へ戻るが、16歳の嫡男、坂崎空也は一人、武者修行に旅立つところで物語は終わったわけである。
 空也の目指す地は、まず島津。薩摩藩である。しかし、これは世間一般にも知られている通り、島津家薩摩藩は超・閉鎖的かつ武門の誉れも高い、ヤバい国である。そんな地へ何もあてもなく赴く空也に、母親のおこんさんならずとも、読者一同大変心配していたわけである。大丈夫かしら、いや、大丈夫に決まってるよ、磐音の息子だもの、と読者たるわたしは思い、きっと空也は立派な青年となって、剣術もすさまじい腕に育つのだろう、空也よ、江戸に帰ってくる日を待っているぞ――と、物語に別れを告げたのであった。
 なので、まさかの佐伯先生による、その空也の武者修行の旅が読める日が来るとは! と感慨もひとしおであり、もう楽しみで仕方がないわけです。が、物語は、とんでもない衝撃的な幕開けから始まる。
 江戸の磐音の元へ、薩摩藩江戸屋敷から、一人の使者がやって来るのだ。そして伝えられた報せは―――なんと、空也、死す、の訃報であった。
 これには、磐音ならずともわたしももう衝撃のあまり絶句である。マジかよ、空也、お前何やってんだよ!!! と嘆くしかない。だが、である。江戸はおろか、日ノ本最強の武士である坂崎磐音の息子である。幼少期から体を鍛え、やっと道場でのけいこが許されたばかりとはいえ、きっちりと基礎体力は叩き込まれた若者だ。死ぬわけない!!! と、普通は思うだろうし、わたしもそう思った。
 というわけで、江戸では磐音が空也死す、の報を受け、一方九州では、利次郎と共に九州に残った霧子が、空也の誕生からずっと成長を見守り、ともに苦難を共にした姉として、危険な薩摩国境へ、空也のその後をたどるために、利次郎の許しを得て旅立っていた(時間軸的には磐音のもとへ訃報が届く半年前という設定)。そんなオープニングである。
 で、かつては忍びの者であった霧子にもなかなかその足跡はたどれず(なにしろ空也はある意味素人なので、動きが読めないし、とある事件に巻き込まれていた)、ようやく空也の姿を捕らえた霧子が観たのは、薩摩国境を守る影の集団に襲われ、滝つぼへ転落する場面であった――というのが上巻である。
 しかし、ある意味当然、空也は瀕死の状態ながらも生きており、きっちりと復活する。おまけに、なんと空也in LOVEですよ。今回、下巻で空也をかいがいしく看病し、その復活を手助けしてくれる姫さまがとてもいい。こりゃあ、空也ならずとも、もうぞっこんですよ。ただし、空也は平成の世に生きるゆとりKIDSとは違い、薩摩入りに際しては「無言の行」を己に課しているため、一切喋らない。この、しゃべらない空也と姫さまが心を通わす展開が実にイイのです。
 というわけで、下巻では、空也復活から、姫さまとの交流を描きつつ、薩摩藩内部の抗争に巻き込まれながらも、生涯の友、と言えそうな男との出会い、そして「野太刀流」という剣の流派の技を身に着けていく様など、非常に読みごたえがある。
 結局、空也が薩摩に行こうと思った本来の目的である「東郷示現流」を学ぶことはできないが(門外不出のため、どうしてもできなかった)、それでも薩摩へ来た価値は十分すぎるほどあって、ラストは空也の恋の行方も大変気がかりのうちに幕を閉じる。まあ、修行中ですから、恋はお預けですよ。江戸での再会が、もう、我が子のように空也を思ってしまうおっさんのわたしとしては、大変楽しみであります。
 なお、本作は、そのタイトルにある通り、「十番勝負」なわけで、今回が最初の「一番勝負」ということで、まだ先が読めそうで大変楽しみだ。また、今回のサブタイトルである「声なき蝉」というのも、上下巻を読み通せばその意味は非常に深く意味が分かるだろうと思う。いやはや、本当に素晴らしい物語で、わたしは大感激であります。

 ただ、ですね。わたしは佐伯先生の『密命』シリーズも大好きだったのですが、『密命』でのラストは、若干残念に思っているのです。つーかですね、『密命』シリーズの後半は、もはや完全に主人公が、元の主人公である金杉惣三郎から、その息子の清之助に移っていくのですが……この清之助も武者修行で各地を回る展開なのだけれど、とにかく強すぎなんですよね。
 無敵すぎて、なんというか……強さのインフレが進行してしまった感が若干あります。登場時は子供だったし、惣三郎のいうことを聞かないで、あろうことか年増の女と心中騒ぎまで起こす、ちょっとした問題児だったのに。まあ、その後、鹿島で修業を積んで、心身ともに鍛え抜かれたわけですが、とにかく後半の清之助はもう超無敵すぎで、父の必殺技である「寒月霞切り」をしのぐほどの「霜夜炎返し」を編み出して、もう事実上無敵になっちゃたんすよね……まあ、父を超えることは男の生涯の目標であろうし、牙をむく息子に真っ向から応える惣三郎もカッコイイし、納得はできるのですが……もう異次元の強さになんだよな……
 なので、この『空也十番勝負』も、そういった無敵すぎる空也、になってしまうような気がして、実はわたしは大変心配です。ただ、負けて死んでしまっては話が成立しないので、仕方ないかもしれないなあ……まあいずれにせよ、空也のこれからの修行の旅と、そして恋の行方の方も、大変楽しみであります。薩摩がらみの問題は、まだ完全解決したとは言えそうにないし、次はどこへ行くんでしょうかね……でも、空也もまた、柳生新陰流とは無縁でいられないだろうな……尾張での対決は避けられないだろうな……今のところまだ九州にいるから、まずは熊本で剣聖・武蔵がらみの話も出てくるのかなあ……長崎で、異人との闘いなんかもあってイイと思うな……いやあ、夢が広がりますねえ。マジ楽しみっす!!

 というわけで、結論。
 わたしにとっては突然の発売となった『空也十番勝負』という佐伯泰英先生による小説は、驚きの「居眠り磐音」事実上の続編であった。そしてさっそく読んでみたところ、シリーズのファン必読の、素晴らしい物語でありました。武者修行を続ける坂崎空也の旅の「一番勝負」は、島津・薩摩での死闘。生き残ることはできたものの、この先も、どんどん強敵が出てくることでしょう。しかし、空也よ、強くなるのだぞ! そして、江戸で姫さまと再会するのだ!! その日まで精進あるのみぞ!!! いやあ、マジ最高でした。以上。

↓こちらが『密命』シリーズ。佐伯先生の言によれば、「月刊佐伯」としてフルスピードで書いていたため、今思うとかなり直したいと思うポイントが多いそうで、「完本」として現在出し直し中です。

 というわけで、新年一発目の週末映画興行データです。
 この週末は土日月の三連休でしたが、基本的に土日二日間の興行収入数値がメインです。 つーかですね、『君の名』はこの年始の1/5時点ですでに224.9億まで伸びているそうで、まったくもってお盛んですなあ、と驚きました。そしてわたしは、今年一発目の映画館での鑑賞として、去年の10月に公開されていた『湯を沸かすほどの熱い愛』を超今さら、1/3に観に行ってきました。泣けること甚だしい映画でありましたよ。詳しいことは1/3の記事をご覧ください。

 それでは、いつも通り興行通信社の大本営発表から見てみよう。

 1位:『映画妖怪ウォッチ空飛ぶクジラとダブル世界の大冒険だニャン』が23日間で25億突破は確定的で26~27億ほどと見積もる。さすがの積み上げですが、やはり前作及び前々作と比べると、かなり数字は落ちます。前作比で60%を割り込んでると思われます。となると、やはり40億も届かない、ということになりそうな気配です。なお、おそらくは、動員数1位で、金額順ではもっと下の順位だと思われます。ちびっ子興行だからしょうがないす。
 2位:『バイオハザード:ザ・ファイナル』が17日間で30億突破はたぶん確定的、31~32億ぐらいと見積もる。おっと、Tweetによると昨日の祝日までで33.3億だそうです。こちらも3週目比較で過去作と比べると、前作の「5」より上で前々作の「4」にほんの少し届かないレベル、ということになりそう。てことは……一番売れた「4」が47億だったので、40億は楽に超えてしまいそうな勢い。45億ぐらいだろうか? それともそれ以上なのか、これは要チェックですな。
 3位:『君の名は。』が20週目にして3位まで浮上、まあ、前週末も3位だったそうですが、昨日の祝日までの累計では229.2億だそうです。すげえというか、もうまったく分からねえす。
 4位:『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』が24日間で35億突破は確定的、36~37億ほどと見積もる。うーん、これは微妙なことになってきました。このままだと、いつまでの上映か分からないけれど、今の4週目の段階では『ズートピア』より若干落ちるぐらい。だけど……落ち率が『ズートピア』はすごく少なかったのに対してこちらは普通に毎週落ちて行っている……ので、70億はちょいとキツイ、65~67億程度での決着かな、と現段階ではテキトーに予想します。
 5位:『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』が45日間でもう65億超えちゃっていると予想。66~67億当たりと見積もります。さすがに年末年始で数字を伸ばした印象ですね。ところで、この映画の次ってもう公開日が決まってるんでしたっけ?
 6位:『海賊とよばれた男』が30日間で20億には届かなかったと見積る。18~19億ほどか? こちらも数字を心配していましたが、年末年始できちんと積み上げてきましたね。これなら20億は届きそうで良かった良かった。
 7位:『土竜の唄 香港狂騒曲』が17日間で10億に載ったかどうかぐらいまで積み上げたと見積もる。どうかな、乗ったとしたらなかなかのものですね。素晴らしいじゃないですか。前作は3週目で12億を超えた板と思うので、チョイ落ちで済んでいる、と言っていいのかも。
 8位:『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』が23日間で10億突破はおそらく確定的、12~13億ぐらいと見積もる。ところで、こういった小説や漫画の映画化作品って、製作費どのくらいなんだろうな……想像よりずっと安く作れるんだろうな……きっと。まあ、15億まで行けば余裕で黒字なんでしょうな。
 9位:『傷物語(III 冷血篇)』が公開土日で0.7~08億ぐらい行ったのかしら。金曜公開で、昨日の祝日まで含めれば2億ぐらい行ってても驚きません。そこまでは行ってないかな。どうでしょう。
 10位:『この世界の片隅に』が先週時点でとっくに10億超えたらしいので、58日間で11~12億ぐらいか。上映館がグッと増えてTOP10維持。頑張ってますな。これでもう黒字は確実、かな? だといいのですが。たぶん、アニメの方が確実に時間も金かかると思うんだ……今の邦画よりも。でもまあ、大丈夫と思いたところです。
  
 とまあ、こんな週末だったようです。

 そういえばもうゴールデングローブ賞が発表されましたが、アカデミー賞も日本時間の1/24(火)の夜にノミネートが発表されます。WOWOWはちゃんとノミネーションも生中継するんだから偉いなあ……。わたしも楽しみにWOWOWを観ようと存じます。しかしですね、ゴールデングローブの受賞作品を鑑みると、たぶん、今回のアカデミー賞はまだ日本公開になってない作品が多そうで、なんというか……何とも言えないというか期待も盛り上がらないというか……ホント、さっさと公開していただきたいものだと思う。まあ、そういう「アカデミー何とか賞受賞!」みたいな看板がないと、宣伝のフックにならないのは分かるけどね……。分かるけど、もう効果薄いんだよな……残念ながら。洋画ファンとしては大変残念です。
 というわけで、映画を愛する身としては、今年もいっぱい映画を観ようと存じます。以上。

 昨日、13年前に亡くなった恩人の墓参りに朝から出かけてきた。家から片道40㎞ほどの離れた地にあるため、車をぶっ飛ばして、お参りして、またすぐに帰ってきたのだが、時間的には、家を出たのが8時チョイ前、9時には墓地に着き、帰ってきたのは10時半過ぎ、であった。命日が1/10なので、毎年近い土日のどこかで墓参するわけだが、今年は今日行こうと思っていたものの、どうも天気が悪そうだということで、さっさと昨日のうちに行ってきたわけである。
 で。家に帰ると、母がこたつでTVを観ており、まあわたしもよっこらせ、とこたつに腰を落ち着けたわけだが、TVでは美輪明宏氏が出演しており、美輪氏のコンサートの舞台裏的なものを放送していたのを観た。美輪氏と言えば、最近では若干スピリチュアル系の面白おばさん(おじさん)としての姿の方がお馴染みかもしれないが、かの三島由紀夫氏との親交や、その当時の超絶な美少年ぶりなど、実際のところそのすごい経歴とその美声の方が元々は有名であろう。現在も精力的にコンサートツアーを開催していて、その会場には意外と若い観客も多いなど、そんなことをTVでやっているのを観ながら、わたしは、美輪氏と言えばやっぱり「モロ」だろ……と思い、突然「モロ」の「黙れ小僧!!!」というあの声が脳内に再生されたような気がしたので、よし、午後は久しぶりに観るか、とBlu-rayを再生し始めたのである。
 何のことを言っているか、わかりますよね?
 そう、「もののけ姫」であります。 
もののけ姫 [Blu-ray]
ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン
2013-12-04


 まあ、現在50歳以下の日本人ならば、たぶん一度はどこかで、「宮崎作品で一番好きな作品はどれ?」的な会話をしたことがあろうと思う。そんな話したことがないという人がいたら逆にびっくりだ。わたしの経験では、どうも一番人気は『天空の城ラピュタ』のような気が根拠なくするけれど、わたしがダントツに好きで、圧倒的ナンバーワンだと思っているのが『もののけ姫』である。
 もはやストーリーを解説する必要はなかろう。もはや『もののけ姫』を観たことのない日本人の方が稀であろうし、まあ数年に一度TVでも放映されているし。この作品が劇場公開されたのが1997年。今年でちょうど20年前ということになる。当時、サラリーマンになってまだ数年の頃だったが、わたしは2回劇場に観に行った、かなり思い入れのある作品だ。
 そして、もう様々な「真面目な考察」もされつくされているだろうから、そんなことも、正直どうでもいいと思う。わたしがこの作品に魅かれるポイントは、もう明白だ。とにかく、主人公アシタカがカッコイイのである。あらゆる意味で完璧で、わたしのハートを強く揺さぶるのだ。これはもう、何度観ても変わらない。何度観たかは数えていないのでわからないけれど、たぶん20回以上は観ているだろうと思うが、何度観てもアシタカはわたしにとって永遠のヒーローであり、こうありたいと強く思う、理想の男の在り方をわたしに見せてくれるのだ。
 非常にまじめでまっすぐであり、死の呪いに捕らわれても絶望せず、「曇りなき眼で」事態を見据えようとする。その真面目で果敢な姿に、わたしは激しく感動するわけで、まあ間違いなく、『もののけ姫』が好きじゃない人間とは永遠に分かり合えないと思う。
 この作品は、アシタカをはじめとして、非常に心に残るセリフが多いので、今回改めて観て、今後忘れないようまさしく備忘録として、わたしが選ぶ名シーン・名セリフを書き連ねておこう。ついでに、今回は普通に日本語で観た後、英語でも観てみたので、英語ではどう表現されているかもメモとして残しておこうと思う。ちなみに、吹替えの英語と、字幕の英語は、結構違っている箇所があったけれど、以下に記すのは字幕の英語です。
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 ◆冒頭の「タタリ神」が息絶える瞬間に言うセリフ
 「穢らわしき人間どもよ。我が苦しみと憎しみを知るがいい……!!」
 Hear me, loathsome humans! You shall know my agony and hatred.
 この、冒頭のシーンはまあとにかくいきなり物語の世界観に観客を放り込む、素晴らしいオープニングだと思うな。そしてタタリ神の今際の一言が、ものすごく重く、一体何があったんだと強力な印象が残る。
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 ◆村を出るアシタカに駆け寄るカヤのセリフ
 「兄さま!」 Ashitaka
 「カヤ、見送りは禁じられているのに」Kaya, You can't  be here.
 「お仕置きは受けます。どうかこれを、わたしの代わりにお供させてください」
 I don't care. Remember me with this.
 「大切な玉の小刀じゃないか」 Your Jewel dagger.
 「お守りするよう、息を吹き込めました。いつもいつもカヤは兄さまを想っています。きっと、きっと!」 It will protect you. You'll always be in my heart. Always, without fail.
 「わたしもだ。いつもカヤを想おう」 And you in mine, Kaya.
 ここもいいシーンだよなあ……カヤが非常に可憐ですよ。おそらくすべての男が、カヤの可憐さにグッとくると思う。しかし! アシタカよ、その大切な小刀を後にサンにプレゼントしちゃっていいのか!?
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  ◆アシタカとサンの出会いのシーン
 「我が名はアシタカ! 東の果てよりこの地へ来た!そなたたちは、シシ神の森に住むと聞く古き神か!?」 My name is Ashitaka !  I come from the east. Are you ancient gods from the forest of the Deer God?
 「去れ!」 Leave !
 この初対面シーンは素晴らしく印象に残りますね。まず何といっても、アシタカの礼儀正しさと圧倒的に堂々とした名乗りがカッコ良すぎます。そしてサンの冷たい一言が、アシタカの胸に突き刺さるのと同様に、観客の胸にも突き刺さりますね。超クール!
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 ◆アシタカとエボシの初めての会話
 「そのつぶての秘密を調べてなんとする?」
 And when you find the one who made that ? 
 「曇りなき眼で見定め、決める」I will see with eyes unclouded, and decide.
 エボシはこの、アシタカのあまりのまっすぐさに、爆笑で答える。どうせこの世の汚いものを観たことのない、お坊ちゃんなんでしょうよ、とでもいうかのように。
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 ◆エボシに秘密を知らされた時のアシタカ
 「あなたは山の神の森を奪いタタリ神にしても飽き足らず、その石火矢でさらに新たな恨みと呪いを生み出そうというのか!?」
  You stole the boar's woods and made a monster of him. Will you breed new hatred and evil with those weapons ?
 「そなたには気の毒であった。あのつぶて、確かにわたしの放ったもの。愚かなイノシシめ、呪うならわたしを呪えばいいものを」 
 I'm sorry you suffer. The musket ball you found is mine. That hapless boar should have cursed me insted,
 「その右腕はわたしを殺そうとしているのか?」 Your right hand wants to kill me ? 
 「それで呪いが消えるものならわたしもそうしよう。だがこの右腕、それだけでは止まらん!」
 Perhaps that would lift this curse. But my hand would not be stayed.
 「ここの者すべてを殺すまで鎮まらぬか」 Must it kill us all to find peace ?
  このアシタカとエボシの決定的に相容れない会話に、物語の悲劇へのカウントダウンが始まるわけですが、現代人としてはエボシの言うことも理解できるわけで、どちらが正しいとは言えないけれど、まあ、実に悲しいことですなあ……。
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◆戦うサンとエボシの間に割って入ったアシタカが、目に見える「呪いのオーラ」を漂わせながら言うセリフ
 「何の真似だ、アシタカ!」 What are you doing, Ashitaka!?
 「この娘の命、私がもらう!」 Her life is mine.
 「その山犬を嫁にでもする気か!」 Will you marry the wolf princess?
 「そなたの中には夜叉がいる。この娘の中にもな」
 There is a demon inside you, And in her.
 「みんな見ろ! これが身のうちに巣くう憎しみと恨みの姿だ!肉を腐らせ、死を呼び寄せる呪いだ! これ以上、憎しみに身をゆだねるな!」 Look! This is the hatred and bitterness that curses me !  It rots my flesh and summons my death. you cannot yield to it.
 「さかしらにわずかな不運を見せびらかすな!その右腕、切り落としてやる!」
 Enough talk of your curse. I'll cut that arm off !!
 「この娘、わたしがもらい受ける!」 I will take the girl.
 この時のアシタカは、とにかくカッコイイ。エボシとサンを気絶させて、サンを抱えてタタラ場を出ていくアシタカ。ウルトラ・クールですよ。そして、仲良くなった親方にこう告げて、外へ出ていく。
 「わたしは自分でここへ来た。自分の足でここを出ていく」
 I will leave as  I came, of my own will.
  「世話になった」 Thank you.
 か――!!! ホントに素晴らしくカッコイイ。最高ですね。憎しみの連鎖は、本当に人類が克服できる問題なのか、わたしは大変興味があります。まあ、克服できないから殺し合いが絶えないわけですが……。
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 ◆そして銃撃されて流血甚だしく、タタラ場を出た後に倒れるアシタカ。サンは言う。
 「何故わたしの邪魔をした。死ぬ前に答えろ!」
 Why did you stop me ? Speak while you still alive !
 「そなたを……死なせたくなかった」 I don't want you  to die.
 「死など怖いもんか!人間を追い払うためなら命などいらぬ!」
 I'm not afraid to die, if it will drive away the humans ! 
 「分かっている……最初に会った時から」 I knew taht when I first saw you.
 「余計な邪魔をして無駄死にするのはお前の方だ!その喉切り裂いて、二度と無駄口叩けぬようにしてやる!」 You've wasted your life by getting in my way ! I'll cut your throat ! That'll shut you up.
 「……生きろ……」 Live……
 「まだ言うか! 人間の指図は受けぬ!」  I don't listen to humans ! 
 「……そなたは美しい……」  You are beautiful……
 この時、サンは初めて「美しい」と言われ、驚き慌ててしまう。やっぱり人間の言葉の通じる、若い女だったんだと分かる重要なシーンだ。わたしは、アシタカはもちろん、サンのことも大好きです。やっぱりとても美しいと思う。
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 ◆アシタカと出会った乙事主が、それでも人間との対決を語るシーン。
 「たとえ我が一族ことごとく滅ぶとも、人間に思い知らせてやる」
 Even if we all fall in battle, we will leave the humans awe.
 乙事主は、もう自分たちの運命をおそらく分かっているのだと思うけれど、それでも人間を許すなんてことは出来るはずもなく、深い憎悪に捕らわれているわけで、大変悲しいシーンです。まあ、人間には天敵がいないからな……傲慢に生きているわけですが、それももはや、いい悪いの問題じゃあないわけで、大変悲しいすね……。
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 ◆シシ神の力とサンの看病でようやく傷の癒えたアシタカがモロと話をするシーン。
 「モロ、森と人が争わずに済む道はないのか? 本当にもう止められないのか?」
 Can't humans and the forest live in peace ?  Can't this be stopped?
 「人間どもが集まっている。彼奴らの火がじきにここへも届くだろう」
 The Humans are gathering.
 「サンをどうするつもりだ! あの娘も道連れにするつもりか!」
 And San? Will you force her to die with you?
 「いかにも人間らしい手前勝手な考えだな。サンはわが一族の娘だ。森と生き、森が死ぬときはともに滅びる。」 
 How like a human! You think onley of yourself. She is a daughter of our tribe. If the woods die , so will she.
 「あの娘を解き放て! あの娘は人間だぞ!」
 Set her free! She's human!!
 「黙れ小僧!! お前にあの娘の不幸が癒せるのか!? 森を侵した人間が、我が牙を逃れるために投げてよこした赤子がサンだ! 人間にもなれず山犬にもなり切れぬ、哀れで醜い可愛い我が娘だ!お前にサンを救えるか!?」 Silence, boy!! What can you do for her? The humans who violated the forest threw her in my path as they ran from me. Now she is neither human or wolf. My poor, ugly, lovely dauther. Can you save her? 
 「わからぬ……だが共に生きてゆくことは出来る!!」
 I don't know, but together we can live.
 「はっはっはっは! どうやって生きるのだ?サンとともに人間と戦うというのか?」
 How? Will you join San and fight the humans?
  「ちがう! それでは憎しみを増やすだけだ!」
 No. That will only breed more hatred.
 「小僧……もうお前にできることは何もない……お前はじきに痣に食い殺される身だ……夜明けとともにここを立ち去れ……」 There is nothing you can do. Soon Nago's curse will kill you. Leave this place at sunrise.
 ここも、本当はサンの幸せを望みつつも、引けないモロ。つらいす。そして、モロのようなおっかない巨大な山犬を前に、こちらも引かないアシタカ。とにかく言動がカッコイイ。アシタカができることは、サンを人間として扱い、共に生きることだけ。死んじゃあだめだという必死の説得が大変美しいと思う。
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 ◆とうとう乙事主をはじめとしたイノシシたちの無謀な猪突が始まってしまい、サンが乙事主のもとへ行くというシーン。
 「母さん、ここでお別れです。わたし、乙事主様の目になりに行きます。この煙に困っているはずだから」
 Mother, tish is farewell. The smoke will blind Okkoto. I'll be his eyes.
 「それでいいよ。おまえにはあの若者と生きる道もあるのだが」
  As you like ,San. But there is a life with that boy.
 「人間は嫌い!」 I hate humans!
 そしてそこに、アシタカから託された小刀を持って弟犬が戻ってくる。
 「アシタカが……わたしに? きれい……」
 From Ashitaka...for me?  It's beautiful.
 「お前たちはサンとお行。わたしはシシ神のそばにいよう」
 You tow go with San.I will stay with the Deer God.
 「行こう!」  Let's go.
 アシタカからの小刀の美しさに、はっとするサン。そして想いを受け止め、乱暴に紐を食いちぎって、首に巻き付ける。ここもとても印象的です。完全にもう、サンはアシタカが大好きなはずなんだけど、それでも自分の道を行くという決意がみなぎるシーンですな。
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 ◆瀕死の乙事主を利用してシシ神のもとへ案内させようとする地走り。彼らは人間の臭いを消すために、殺したイノシシたちの血と毛皮を利用していた。それに激怒するサン。
 「最初の者を殺す! 森中にお前たちの正体を知らせてやる!」
 I'll kill first one who moves, and tell the forest what you are!!
 サンのセリフとしてとても象徴的というか印象的なこの台詞、わたしはかなり好きです。
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 ◆とうとうシシ神に弾丸を当てたエボシ。そしてそのエボシの腕を、頭だけになりながら食いちぎったモロ。シシ神の死をもたらすドロドロがあふれかえる森で、傷を負ったエボシを助けるアシタカに、サンが投げつける言葉。
 「そいつをよこせ! 八つ裂きにしてやる!」 Bring her here !  I'll kill her !!
 「モロが敵を討った。もう罰は受けている」  Moro's had her revenge.
 「首を探している……ここも危ない……サン!力を貸してくれ!」
 It’s serching for its head. We can't stay here. San! Help me.
 「いやだ!お前も人間の味方だ!その女を連れてさっさと行っちまえ!来るな!人間なんか大嫌いだ!」
 No! you're on thier side!  Take her and go away! Keep away! I hate humans!
 「わたしは人間だ。 そなたも人間だ」 I am human. So are you.
 「黙れ! わたしは山犬だ!寄るな!」 Shut up!! I am a wolf. Don't touch me!!
 「すまない……何とか止めようとしたんだ」 I'm sorry. I tried to stop it.
 「もう終わりだ……何もかも……森は死んだ」 Everything is finished. The forest is dead.
 「まだ終わらない。わたしたちが生きているのだから。力を貸しておくれ」
 No it's not !! We're still alive.Help me.
 このシーンでは、愛する母、モロが死んでしまって取り乱しているサンは、「寄るな!」という言葉とともに、思わずアシタカからもらった小刀をアシタカの胸に突き立ててしまう。しかし、アシタカはそんなサンをグッと抱きしめるわけですよ。最高にカッコイイっす!! 本当にアシタカは男ですよ!!
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 ◆そしてラストシーン。わたしはもう、このラストシーンが大好き。
 「蘇っても、ここはもうシシ神の森じゃない。シシ神さまは死んでしまった』
 Even restore, these are not the Deer God's woods. The Deer Dod is dead.
 「シシ神は死にはしないよ。命そのものだから。生と死と、二つとも持っている。わたしに生きろと言ってくれた(右腕の痣が薄くなっている)」
 He can't die. He is life itself. He is both life and death. He is telling us we should live.
 「アシタカは好きだ。でも人間を許すことは出来ない」
 I love you, Ashitaka. But I'll never forgive the human race.
 「それでもいい。サンは森で、わたしはタタラ場で暮らそう。共に生きよう。会いに行くよ。ヤックルに乗って。」
 Then live in the forest.,  and I'll live at the ironworks. Together, we'll live. Yakul and I will visit you.
 いやはや、最高の愛のセリフだと思う。
 会いに行くよ。ヤックルに乗って。このセリフはわたしが生涯観た映画の中でもベストに入る最高のセリフだと思う。これ以上カッコイイセリフは、ホントないね。
 そして英語字幕では、アシタカは好きだ、というサンのセリフがI love youと訳されていて驚いた。まあ、そうなんだけど、うーん、どうなんだ……まあ、それ以外に訳しようがないか……。

 というわけで、わたしは『もののけ姫』が大好きであり、今回初めて、普通に観た後で英語でも見直してみたのだが、やっぱり、英語吹替ではダメだという気がした。訳の問題ではなくて、やっぱり、アシタカの声は松田洋治氏以外ありえないし、サンの声も、石田ゆり子嬢以外ありえないな、と思う。ついでに、モロも美輪明宏氏でないとダメだし、エボシの田中裕子氏、乙事主の森繁久彌氏、ひい様の森光子氏など、それぞれのキャラも絶対それ以外はありえないと思う。しかし改めて観ると、もう亡くなった方が大勢声の出演をされているんだなあ、と20年の歳月を想わずにはいられない。20年前、わたしもまだ若かった。まだ未来がひらけていた。あれから20年、わたしはすっかり変わってしまったのに、映画は一切変わっていない。あの頃のわたしは、もういないけれど、映画を観ることで思い出すことは出来るわけで、やっぱり映画というものは、いいものですな。

 というわけで、くっそ長くなってしまったのでもう結論。
 わたしは、「ジブリ作品で一番好きな作品は?」と聞かれたら、ダントツで『もののけ姫』だと即答する。難しい理屈じゃなくて、単純にアシタカをカッコイイと思うし、サンの魅力も素晴らしいからだ。とにかくカッコイイ男、アシタカは、わたしの永遠のヒーローであり、こうなりたいと思う男の姿そのものだ。最高です。何度見ても最高です。たぶん、残りの生涯がどのくらいあるか知らないけれど、わたしはこれからも、何度も繰り返し、『もののけ姫』という映画を観ると思う。以上。

↓ 次に好きなのは……順番つけるのは難しすぎて、以下の4作品が同率2位ってことでいいですか?
ルパン三世 カリオストロの城 [Blu-ray]
ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社
2014-08-06

となりのトトロ [Blu-ray]
ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン
2012-07-18

魔女の宅急便 [Blu-ray]
ウォルト・ディズニー・ジャパン
2012-12-05

紅の豚 [Blu-ray]
ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン
2013-07-17

 去年の2016年11月、わたしが愛してやまない宝塚歌劇団「星組」は、北翔海莉さん(通称:みっちゃん)という偉大なるTOPスターが19年の宝塚生活に別れを告げて卒業し、新たに、紅ゆずるさん(通称:さゆみちゃん、紅子)がTOPスターに就任することとなった。
 紅子は、みっちゃんの前のTOPスター、LEGENDこと柚希礼音さん(通称:ちえちゃん)の時代から星組を支えてきた素晴らしいジェンヌで、とりわけ悪役だったり、高田純次ばりのテキトー男をコミカルに演じるのが抜群に上手くて、当然わたしはずっと前から大ファンである。彼女はちえちゃん時代後期から2番手スターであったので、ちえちゃんの次にTOPになるのかと思っていたのだが、ちえちゃんが退団した2015年春に星組のTOPスターとなったのは、専科で活躍していたみっちゃんであった。そのときは、わたしは、えっ!? 紅子じゃないんだ、とちょっと驚いたのだが、みっちゃんの素晴らしいパフォーマンスは、LEGENDちえちゃんの去った星組を見事にまとめ上げ、その歌・芝居・ダンスともにそろった技術的な面と、持ち前の包容力というか素晴らしい人格で、星組生の規範となるべき見事なTOPスターとして、ある意味では紅子の最後の師匠として、さまざまなことを紅子に教えてくれたんだと思う。
 そしていよいよTOPとなった紅子。大劇場公演での正式お披露目公演はまだちょっと先だが、 昨日から東京国際フォーラムで始まった作品で、プレお披露目と相成ったのである。星組がイチオシのわたしとしては、当然のことながら、晴れて主演TOPスターとなった紅子の雄姿を見逃すわけにはいかない。というわけで、今日、有楽町に参上した次第である。
 作品のタイトルは『オーム・シャンティ・オーム』。なんと、インドの「ボリウッド映画」のまさかのミュージカル化である。うーむ、大劇場公演じゃないから、公式動画はないみたいだな……とりあえずポスター画像を貼っておこう。
omshanti
 わたしは、元の映画を観ていないので、正直どんな話なのか全く知らないまま、今日の観劇を迎えたのだが、わたしの勝手な想像では、おそらくボリウッドものということは、明るく楽しい作品で、歌って踊って大騒ぎ! 的なお話かと思っていた。
 とにかく、ちょっとお調子者の愉快な男を演じさせたら、現在の宝塚歌劇団においては、紅子がナンバーワンであろうと思う。だからきっと、そういう紅子に相応しいコメディなんだろうな、と思い込んでいたわけだが、結論から言うと全く違ってました。意外とダークな面もある、時空を超えたラブファンタジーであったのだ。
 物語は、冒頭に「30 Years ago」という文字が映るところから始まる。それを考えれば、想像がついてしかるべきだし、そもそも本作のサブタイトル「恋する輪廻」を踏まえれば、ははーん、とピンと来てもおかしくないのだが、わたしは愚かなことに全く気が付かなかった。そう、本作は、第1幕が30年前のお話、そして第2幕が「After 30 Years」と30年後のお話に変わるのだ(※正確に言うと1幕ラストで30年後に移る)。
 30年前――とある青年がうだつの上がらないエキストラ役者としてボリウッド映画のスタジオに出入りしていたが、彼は国民的映画スターの女優にぞっこんで、とあるきっかけで本人と知り合い、仲良くなる。しかし彼女には敏腕プロデューサーの彼氏がいて、手の届かない存在として健気に片思いを続けていたが、その女優の彼氏がとんでもないクソ野郎で、青年とスター女優は大きな悲劇に巻き込まれてしまう。そして時は流れ、30年後。とあるスターの誕生日。そしてそのスターは、30年前に悲劇に見舞われたあの青年に瓜二つであった――的なお話である。
 つまり、我らが紅子は、1幕と2幕で別人を演じる一人二役であり、そして、紅子と同時にTOP娘役に就任した綺咲愛里ちゃん(通称:あーちゃん)もまた、同じく一人二役で、1幕ではスター女優、2幕ではフツーの地方出身の女優志望の娘さん役であった。さらに、わたしがイチオシの礼真琴ちゃん(通称:ことちゃん。わたしは勝手にこっちんと呼んでます)が、その問題のクソ野郎プロデューサー役であった。
 というわけで、見どころはその二役ぶりと、愛するこっちんの悪党ぶりなわけだが、結論から言うと実に素晴らしかった。まず、紅子は、随所にいつものテキトー男ばりの笑いを見せてくれつつも、かなり真面目なシーンもあり、また、歌も非常に良かったと思う。そして、とにかく紅子は、手足が細くて長い、ある意味2次元キャラを具現化したような素晴らしくスタイルがいい人なので、ダンスもとても美しい。ボリウッド的なダンスも良かったすねえ。そして、とりわけ2幕のキャラでは、わたしの目にはひじょーーーに、ちえちゃんに似ているように思えた。メイクと髪型が、なんかすっげえちえちゃんに似ているように思えたのだが、そう思ったのはわたしだけだろうか? 声や手足の長さは明らかに紅子だし、歌も紅子に間違いないのだが、今回の2幕の若干黒塗りなメイクが非常にちえちゃんっぽかったのがわたしとしては今日一番印象に残った。特にアイメイクと唇が超そっくり、に見えた。ちえちゃんと一番仲の良かった紅子。メイクもちえちゃんに習ったりしてたのかなあ。今までそんなことを感じたことは一度もなかったけど、今回のメイクははマジでちえちゃんに似てると思いました。
 そしてあーちゃんも、やっぱりビジュアルはいいすねえ……とってもかわいい。チョイ垂れ目なのが特徴的な顔で、当然、星組イチオシのわたしは、あーちゃんのことは以前からよく知っているつもりだけれど、1幕では役に合わせた落ち着いた低い声での芝居で、あーちゃんってこんなに声が低い娘さんだっけ? と今更ながら認識を新たにした。歌も全く問題なし。これまた、歌こんなにうまかったけ、と実に失礼なことを思った。前TOPの妃海風ちゃん(通称:風ちゃん)が抜群に歌も芝居もダンスも上手い方だったので、その陰に隠れていたような印象だけれど、やっぱりTOPになるだけの技量は身につけているわけで、今後はあーちゃんもちゃんと応援していきたいと思う。いやはや、マジで可愛かったすね。なんだろうな、風ちゃんはとにかく華奢で、それなのに歌もダンスもパワフルというギャップ萌えがあったように思うけれど、あーちゃんは、華奢、には見えないすね。なんというか……ウエストのくびれがないというか、要するに、男目線で言わせていただくと、大変失礼ながら幼児体型と言っていいんじゃないかな……。だが、それがイイ!! わけです。実にイイですね。
 問題は、愛しのこっちんですよ。まずですね……出番が少ない!! のがわたしとしては超残念。そして……キャラがですね……共感しようのないクソ野郎なんですよね……悪役でも、きちんと自分のルールをもっていて、それが主人公と相いれないために敵対し、その自らの美学によって主人公に負ける、というような悪役であれば、共感できるしカッコイイわけで、時として主人公よりも人気が出ることだってあるわけですが、今回は……そういう点は全くない、純粋にクソ野郎だったのがこれまた超残念でした。例えば前作の『桜華に舞え!』でも、主人公の敵役だったこっちんですが、あの時の「永輝」という役は実に美しくカッコよく、素晴らしいキャラであったけど、今回はなあ……でもまあ、こっちん最大の魅力である歌唱力ははやり抜群に光っていて、その点では大変満足です。しかし今回の歌いぶりからすると、次回のショーヴラン役は超超期待できそうですな。ショーヴランも主人公と敵対する役だけど、2009年の公演ではちえちゃんが超絶にカッコ良かったし、2010年の公演でわたしが観たみりお(=明日海りおさん)Ver,も大変良かった。ソロ曲も結構多い役なので、次のこっちん・ショーヴランは楽しみすぎてたまらないすね。東京に来るのが待ちきれないので、こいつはムラ遠征しねえとダメかもな……と、思っております。一人で行くしかねえかなあ……。
 というわけで、毎度お馴染みの、「今回のイケ台詞」を発表して終わりたいと思います。
 ※イケ台詞=わたしが「かーっ!! カッコええ!!」と思った台詞のこと。
 「今度こそ、すべて葬り去ってやる!! 今度こそ……!!
 今回は悩んで、こっちん演じるクソ野郎が発するセリフを選んでみました。状況的にはカッコ良くないのですが、このセリフを発するときのこっちんは、非常にカッコ良かったっす。はーーーマジでこっちん・ショーヴランが楽しみすぎる!!!

 というわけで、結論。
 満を持して、星組のTOPスターに就任した紅ゆずるさん。そのプレお披露目公演となる『オーム・シャンティ・オーム』は、ボリウッド映画を原作としているものの、意外とダークな部分もあるラブ・ファンタジーで大変驚いた。しかし、紅子はいつもの面白キャラを見せつつも、大変見事な歌とダンスと芝居を見せてくれ、大満足の作品であった。そして、同時に娘役TOPとなったあーちゃんも、大変かわいく歌も上手で、今後その幼児体型を愛でに劇場へ通おうと思います。そして! 我が愛しのこっちんは、次のショーヴラン役が楽しみすぎて期待は高まる一方であります!! 以上。

↓ これが原作というか、元の作品すね。ちょっと興味がありますな。2007年の作品だそうです。
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2013-09-27

 年末年始にかけて、WOWOWで録り貯めた映画をチョイチョイ観ていたのだが、その中で、結構笑えて楽しい(?)というか、意外と豪華な役者と監督で作られた、とんでもないB級作品があったので、そのことを備忘録として記録しておこう。
 WOWOWでの放送タイトルは、『ゾンビ・ガール』 。なかなかセンスのないどうしようもない邦題だが、元の原題は『Burying the Ex』というらしいことを、物語の一番最後に出てくるタイトルコールで知った。意味するところは、「元カノ(あるいは元カレ)を葬り去る」ということで、映画としては文字通り土に埋めて埋葬するのだが、ある日突然死んじゃった彼女が、ゾンビとなって戻ってきてさあ大変! という笑えるコメディーであった。ズバリ、面白かったす。

 この映画が日本でも劇場公開されてたなんて、今この記事を書き始めて調べて初めて知ったのだが、探してみたらちゃんと予告編があったので貼っときます。そして、物語はもう、この予告を観ていただければ分かる通り、そのまんまのお話である。ただ、笑えるポイントとして重要な、主人公の青年とゾンビの彼女の関係についてちょっとだけ補足しておこう。ネタバレもあると思うので、以下は自己責任でお願いします。
 まず、主人公の青年は、ホラーグッズを扱うお店の店員で、ホラー映画が大好き。ただし、店のオーナーの方針で、買い物してくれたお客さんに、Have a nice day~!と言えず、代わりにGo to Hell~と言わなくてはいけないルールなんかがあり、さっさとこんな店を辞めて、自分のお店を開きたいという野望を持っている。基本的にはB級オタであり、ジャンクフードも合成着色料も大好きな、ある意味フツーののんきな青年だ。
 そして一方の彼女は、いわゆる意識高い系で、良くわからない環境NGO的な事務所(?)に勤務していて、好きなものはエコ・オーガニック・リサイクル・ベジタリアンと典型的なスノッブ女子であり、乗っている車も当然TOYOTAのプリウスである。しかも押しが強く、気が強いというか、まあ男目線からすると、ちょっとめんどくさい女子だ。ただし、見た目の美しさは抜群である。
 こんな二人なので、性格や好みが全く合わないというか、いわば正反対なのだが、お互いをパートナーとしたSEXが大好きで、ともに相手の顔と体にメロメロなお熱いカップルなわけです。しかし、とうとう二人が一緒に住もう! ということになって、彼女の方が青年のアパートに引っ越してくる。そして仕事から帰ってきた青年を迎えたのは、スッキリ綺麗に片づけられ、あまつさえ壁も明るいグリーンに塗り替えられちゃったマイルームで、大切にしていたポスターやアイテムも片づけられてしまい、完全に意識高い系の部屋になっている有様であった。
 そしてとうとう主人公は思う。オレ、この女と合わないんじゃね? と。まあ観ている観客からすれば、とうとう、というか、今頃やっと、というか、おせーよ!! とつい突っ込みたくなるわけだが、ともかく、主人公の青年は、もうオレこの女無理、とようやく気付き、別れるしかねえ、という決断を下すことになる。
 主人公は、おっかない彼女になんて言えばいいんだとさんざん悩み、おまけに美女でSEXも最高だし、どうしよう、やっぱり別れるのは無理かも、いやいや、続けることこそ無理だし……とくよくよしながら、ようやく一大決心して別れを告げようと呼び出した、まさに目の前で、彼女は豪快にトラックに跳ね飛ばされ、あの世に直行と相成る。これが予告動画にも入っている映像ですな。
 そして主人公は別れようとしていたといっても、そりゃあ悲しいわけで、しょんぼりしていると……次に、今度は自分の趣味にジャストミートな、ホラー愛好家の可愛い女子と出会っちゃうわけです。しかもやけに積極的で、なんとなくの罪悪感を感じつつも、その新しい彼女に魅かれていく主人公。そんなところに、おっかない元カノが、ゾンビとなってさらに強力にパワーアップして帰って来て、とんでもない事態になる、とまあ、そんなお話であります。サーセン、もう完全ネタバレっすね。そういや、この話の筋道は、だいぶ前に観た『LIFE AFTER BETH』(邦題:ライフ・アフター・ベス)にも似てますな。似てるというか、そのまま、すね、ある意味。

 というわけで、そんな物語なので、バカ話なわけですが、キャストが非常にいいのです。
 まず、主人公の青年を演じたのが、去年不慮の事故で亡くなってしまったAnton Yelchin君。今回は何となく気弱なオタク青年を非常にコミカルに演じていました。とても良かったと存じます。
 そして、おっかないゾンビ元カノを演じたのがAshley Greeneさんという美女で、wikiに載ってる写真はかなり髪も長くて頬がげっそりしているので、相当イメージは違うのですが、この方は、かの『Twilight』シリーズで、吸血鬼一家の長女(だっけ?)のアリスというキャラを演じた方っすね。あの時はショートカットでもうチョイ丸い顔だったけれど、非常に美人&かわいい&スタイルグンバツ女子です。ちょっと検索すれば、そのアリスの時の画像はすぐ出てきますので、相当違うとわたしが言う意味は分かると思います。『Twilight』の野球シーンが超かわいい人です。今回のゾンビぶりも、実に良かったと存じます。
 で、もう一人。主人公が彼女亡きあと付き合いかける、オカルト大衆文化大好きな肉食系女子を演じたのが、Alexandra Dadarioさんという方で、わたしはこの人のことを、その美しい顔よりもですね、大変セクハラで恐縮なのですが、そのデカい豊満な胸の方を覚えておりまして、あれっ!? このデカい胸は知ってる、誰だっけ? と思い、インターネッツ神にお伺いを立てたところ、あっさりその正体は判明しました。そう、この方は去年の夏ごろわたしがWOWOWで見た、『San Andreas』(邦題:カルフォルニア・ダウン:2015年公開)で、THE ROCK様でおなじみのDwayne Johnson氏の娘役を演じていた方でありました。しかも、本作の方が2014年の作品なので古いすね。あ、今、去年の夏にわたしが書いたBlog記事を読んでみたら、その時もデカい胸のことを書いてますね。いや、だって、男なら誰だって無条件で目が行ってしまうと思うのです……。にんげんだもの……。
 そして、最後に、監督のことも書いておきたい。わたしはこの映画を、そのタイトルからしてヤバそうなB級映画だろうな、と、わたしのB級センサーが反応したために録画しておいたわけだが、監督が誰かなんてことはまるでチェックしておらず、映画が終わって、スタッフクレジットを観て初めて知って、非常に驚いた。なんとこの映画の監督は、かのJoe Dante氏ですよ!!!  えっ!?知らない!!? うっそお!! もし知らなかったら、今日限り映画好きの看板は下ろした方がいいと思います。80年代を代表する監督の一人と言っても過言ではないのではなかろうか? かの『Gremlins』や『Innerspace』を撮った方ですよ。この方の映画なんてたぶん20年ぶりぐらいではなかろうか。超久々でびっくりしました。

 というわけで、結論。
 タイトルに魅かれて、どうせつまらねーB級作品だろうな、と思って観た『Burying the Ex』(邦題:ゾンビ・ガール)は、想像以上に大変面白かった。その邦題のセンスは0点だが、映画は役者陣が大変魅力的で、単なるおバカムービーとして片づけるには大変もったいない作品であった。こういう映画、嫌いじゃあないぜ。以上。

↓ すげえ! このパッケージデザインは何ともはや……かなり攻めてますな!
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 この年末、わたしはせっせとHDDにたまっている未視聴の映画(主にWOWOWで録画)を観ていたわけだが、まあ、残念ながらハズレが多くこのBlogに書くネタとしてはちょっとなあ……と思うような作品が多かったのだが、読書の方は、結局1冊しか読まなかった。
 その1冊とは、買ったのは2週間ぐらい前なのだが、発売をずっと楽しみにしていたコイツであります。なお、紙の本ではもう数年前にとっくに出ていた作品なので、正確に言うと、電子化されるのを待ってたわけです。

 去年2016年に、わたしをとても楽しませてくれた上橋菜穂子先生による「守り人」シリーズの番外編第2巻、『炎路を行く者』である。本編は既にちょっと前にこのBlogで書いた『天と地の守り人』で美しく完結しているが、この番外編は2つの中編から成っていて、一つはタルシュ帝国の密偵であり、元ヨゴ皇国民であったヒュウゴの幼き頃のお話であり、もう一つは、シリーズの主人公バルサの15歳当時のお話であった。
 まず、ヒュウゴを主人公とした中編「炎路の旅人」は、なぜヒュウゴが自らの故国を攻め滅ぼしたタルシュ帝国の密偵となる道を選んだのか、が語られる、なかなか泣かせるお話でありました。このお話によると、ヒュウゴは元々ヨゴ皇国内における帝の親衛隊「帝の盾」の家系であり、いわば裕福層の武人家庭に育ったお坊ちゃんだったのだが、タルシュ帝国の侵略により、ヨゴ皇国は吸収併合され、枝国となる。その際、タルシュ帝国は、一般のヨゴ皇国民の生命は保証する代わり、後の復讐を抑えるため、軍人(=武人)階級のみ、一切の例外なく粛清する。その粛清の嵐の中、ヒュウゴは母と妹とともに逃げる際、自分一人だけ助かってしまい、落ち伸びると。で、瀕死のところをとある少女に助けられ、なんとか少年時代を過ごすのだが、その少年時代は常に虚しさを抱えたものであり、街の悪ガキとなってヤクザ予備軍として顔役的な存在までのし上がっていた頃に、自らも別の枝国出身であるタルシュの密偵と出会い、その男の話を聞いて心が揺らぐという展開である。
 曰く、彼もまたタルシュに征服された国の出身なので、ヒュウゴから見たら卑怯な男に見えるかもしれない。しかし「<帝の盾>の息子殿にはとうてい許せぬ、やわな忠誠心だろう。え? 卑劣な風見鶏に見えるか? いいや、おれは石よりも硬い忠誠心を持っているよ。仕えているいる相手への忠誠心じゃないがな。おれは、自分に忠誠を誓っている。――それは決して揺るがぬ。殺されてもな。」
 いやはや、大変カッコイイセリフだと思う。
 つまりこの密偵は、「自分の目で世界を見極めろ」という話をしているわけで、彼の言葉をきっかけに、ヒュウゴは自らの狭い視野に映っていた小さな世界からの脱出を決意するわけだ。それは、それまでヒュウゴがまったく考えていなかったものであり、たとえばタルシュに併合されたことで、逆にヨゴ枝国の生活インフラがどんどん整っていったり、武人は殺されたのに帝本人はどうやら生きているらしい、といった現実など、様々な思惑の結果としての現在を改めて見つめ直すきっかけとなるわけで、この後のヒュウゴの活躍の基礎となる話なので、シリーズとしては結構重要なお話だと思いました。ヒュウゴがいなかったら、チャグムは故国を救えなかったし、そんな重要キャラの行動の動機を知ることができて、わたしは大満足です。ズバリ、面白かった。

 そしてもう一本収録されているバルサの話「十五の我には」は、『天と地の守り人』でチャグムと別れる直前の夜に交わした会話をバルサが思い出し、もっと気の利いたことを言ってやればよかったと思いながら、自分がチャグムぐらいの時なんて、もっともっと幼かった……と回想するお話である。
 『天と地の守り人』で、バルサとチャグムが別れる時に話していたのは、殺人を経験してしまったチャグムが、この苦しみはいつか心の折り合いをつけられるのか、それとも永劫に続くのか、と問うものであった。その時バルサは、その苦しみはなくならない、というよりもなくしちゃいけない、と答えた。その答えに自信のないバルサが、かつて自分にはジグロという素晴らしい先生がいたことを想い、自分はチャグムの心を支えてあげられたのだろうか……と想いながらかつての少女時代を思い出すという展開である。バルサの過去話というと、番外編第1巻『流れ行く者』でも語られたバルサの少女時代と重なっているお話で、当時、いかにジグロに守られていたか、そして厳しいながらもなんと幸せだったか、という感謝となつかしさ、そして、それをまるっきりわかってなかった自分に対する自嘲めいた痛み、が語られる。
 いまや30歳を超え、15歳の時に見えなかったものがたくさん見えるようになった。けれど、それでもまだまだ分からないことが多い今。あの日のジグロのように、わたしはチャグムにとって良き先達となっているのだろうか、と述懐するバルサは、やっぱりとてつもなく優しく、まっとうな女だと思う。
 用心棒稼業で、身を守るためとはいえ、人を傷つけあまつさえ命を奪うことすらある毎日を、バルサは悩みながらも、「仕方なかった」と心を麻痺させることなく、常に痛みを忘れずにいるという覚悟をバルサは持っている。やっぱり、カッコいいですな。カッコいいってのは違うか、なんだろうこれは。バルサに対するわたしの敬意、なのかな。まあ、現代日本に平和に生きる我々には持ちようのない、想像を絶する境地だろうと思う。しかし、想像を絶するけれど、想像してみることに意味があるんだろうな、きっと。ホント、わたしは上橋先生による「守り人シリーズ」に出会えて良かったと思います。ちょっと大げさか、な。バルサやタンダ、そしてチャグムに幸あれ、と心から願いたいですね。素晴らしい物語でした。

 というわけで、結論。
 上橋菜穂子先生による「守り人シリーズ」の、最後の物語『炎路を行く者』を読み終わってしまい、本当に、これでもうお別れとなってしまった。とても淋しく思う一方で、読者としてとても幸せな余韻がまだわたしの心の中に漂っている。いやあ、本当に面白かった。いよいよ今月から始まるNHKの実写ドラマ第2シーズンも楽しみですね。成長したチャグムに早く会いたいですな。そしてもちろん、綾瀬バルサにも、また会いたいです。以上。

↓ しかし第1シーズンのバルサとチャグムの別れのシーンは泣けたっすね……あそこのシーンは原作を超えたといっても過言、じゃないと思うな。
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 わたしはもう受験生の頃からずっと朝型で、社会人になってからも当然朝型生活を続けている。わたしとしては全く自然で当たり前のことなのだが、どうも世間的には希少種らしく、わたしの行動を聞いて驚く人が多い。まあ、そんな人はどうでもいいのだが、要するに、わたしにとっては朝の方が何事も集中できるし、電車もガラガラだし、何かとストレスが少なく、快適だからそうしているだけだ。わたしの長年の経験によると、ズバリ言って早起きは誰でもできる。誰でもできない、結構難しいことは、「早寝」の方だ。早く寝ちまえば誰だって朝起きる。ズバリ、いつまでも起きているから朝起きられない。それだけのことなのだが、実は「早寝」はなかなか難しく、習慣化しないとすぐには出来ないことだと思う。ついでに言うと、もうここ20年以上、目覚ましより後に起きたこともない。どういうわけか、自動的に目が覚める。これは普通じゃねえかもな。 
 ま、そんなこともどうでもいいのだが、今朝、1月3日だというのに、わたしは普通にAM6:00に目が覚めた。会社のある日はもっと早く起きているわけだが、休日でも、遅くても6時半には目覚める。それ以上寝ると、もう頭痛がひどくなって一日がパーになる。ので、この正月休みも6時起きがわたし的デフォルトである。
 で。コーヒーを淹れながらTVをつけっぱなしにして、昨日の箱根駅伝の往路の様子を新聞でトレースしながら、あーあ、まーた青山学院が勝っちまうなあ……こりゃあもう6区の山下りで差を縮められないと決まりだろうな……なんて思いながらふとTVに意識を戻したところ、わたしが毎週日曜日の朝見ている、CXの「はやく起きた朝は」という番組が始まってることに気が付いた。あれっ!? 今日何曜日? つか火曜じゃん? と思いながら見ていると、どうやら皆さんお着物だし、正月スペシャルらしい。というわけで、ぼんやり見ていたところ、途中で、磯野貴理子女史がとある映画を激賞しはじめ、森尾由美ちゃんや松居直美ちゃんにも絶対観ろと激しくお勧めしていた。
 その映画は、たしか10月ごろ公開になってとっくにFirst Runは終わってるはずだが、貴理子女史によれば、まだ都内で続映中の映画館があるという。そしてとにかく素晴らしいから観ろ、とのことであった。 わたしも確かに公開時にちょっと気になっていたものの見逃していた映画であったので、そんなに貴理子女史が勧めるならば、まあ、どうせもう箱根は青学で決まりだし、午後はちょっくら観に行くか、と上映館を調べてみた。
 すると有楽町でまだ上映していることが判明したので、すぐさまチケットを予約し、午後観に行くことにした。というわけで、わたしが2017年1本目として観てきた映画は、宮沢りえちゃん主演の『湯を沸かすほどの熱い愛』である。はっきり言ってちょっと出来すぎな美しさはあるものの、確かにわたしも泣かされてしまったのであった。ホント、宮沢りえちゃんは美しく年を取ってますなあ……。以下、いつも通りネタバレを含んでいますので、自己責任でお願いします。

 公開前に予告は何度か見ていたが、まあ、時系列はかなり入れ替わっていたりするけれど、大体物語は上記予告の通りである。余命宣告を受けた主人公のお母ちゃん、が、心残りとならないよう様々なことを頑張るお話である。
 わたしはまた、散々観てきた余命モノとあまり変わらないんだろうな、と思っていたし、実際、それほどこれまでにあったお話と変わるところはない、と言えそうではある。しかし、この映画は、そういった物語よりも、やはり役者陣の芝居ぶりを堪能する映画であろうと思う。主演の宮沢りえちゃんをはじめ、二人(じゃなくて三人か)の子役も素晴らしいし、実に泣けるお話であった。
 ただ、一つだけわたしがイライラムカムカしたのは、やっぱりオダギリジョー氏演じる夫のキャラクターだろう。とにかくスーパーちゃらんぽらん過ぎて、全く笑えないというか、実際おっそろしくひどい男だと思う。ちょっと説明のために、各キャラ紹介を軽くやっておこう。
 ◆双葉:主人公の「お母ちゃん」。前向きポジティブな頑張り屋さん。宮沢りえちゃんの熱演は素晴らしかった。
 ◆一浩:主人公の夫。1年前、実家の銭湯と家族をほっぽり出して失踪。ただし探偵を雇って調べたら隣町に住んでいたことがあっさり判明。すごすご戻ってきたクソ野郎。無責任&無計画。一切情状酌量の余地なし。とにかくひどい男。いくらオダギリジョー氏でも許せん。
 ◆安澄(あずみ):主人公夫婦の娘。高校生。学校でいじめられている。演じた杉咲花ちゃんが素晴らしい!よくもまあ、グレずにいい子に育ったもんだ。ちなみに杉咲花ちゃんは、味の素のCMで回鍋肉をバクバクもりもり食べるあの娘さんです。後半、重大な秘密の暴露があり、泣ける……!
 ◆鮎子:夫が浮気して出来た娘。失踪中の夫が一緒に住んでいた。銭湯に戻った夫についてくる。演じたのは伊東蒼ちゃんという子役で、とにかく彼女の芝居が素晴らしくイイ!!! しょんぼり顔がもうたまらなく悲しそうに見えるし、笑顔も可愛いし、まあ最高すね、おっさん的には。
 ◆拓海:お母ちゃんと安澄と鮎子の三人旅の途中で出会った青年。演じたのはシンケンレッドこと松坂桃李くん。この人はカッコいいですなあ、ホントに。トンデモゆとり青年が、お母ちゃんと出会ったことで変わるのだが、まあ、なんというか、出来すぎというか美しいわけで、ちょっとアレですが、カッコいいから様になるんだよなあ……全然許せちゃうのはさすが殿ですね。

 というわけで、ストーリーは別に説明しなくてもいいと思うのだが、見どころはもう、お母ちゃんそのものですよ。学校でいじめに遭って、休みたいという娘に対して、休んではダメだ、逃げちゃあダメ!!! と叱り飛ばす姿は、たぶん今のお優しい、ゆとりあふれる世の中とは正反対でしょうな。そりゃそうだよ。お母ちゃんには、もう、時間のゆとりがないんだもの。逃げて先送りにしている暇はないわけで、そしてその叱咤激励に応える安澄ちゃんもまあ健気なことといったら、とても勇気のある行動で、本当に素晴らしい演技でした。
 そして、やっぱり、クライマックスで、ちゃらんぽらんな夫がお母ちゃんに見せた心意気に、死にたくない、生きたいと涙するお母ちゃんの姿には、もう場内盛大にみなさんくすんくすんであった。もちろんわたしも泣けました。参ったっす。
 ただ、タイトルの意味が分かるエンディングは、正直ちょっと……という気もしなくもない。引っ張りすぎというか、もうチョイ前で終わりにしても良かったような気もしなくない。社会的通念という常識に照らし合わせても、ちょっと……どうなんだろうという気もする。しかし、どうもこの作品は原作小説などのない、オリジナル脚本のようだが、おそらくはこのエンディングが先にありきで、ここに至る物語を書いたのだろうと想像する。なので、まあ、ちょっとアレのような気もするけれど、このエンディングなしにはこの物語は成立しないんだろうな、と思うので、結論としてはアリとしておきたい。
 しかし、ある日突然、余命宣告をされたら、オレはそれを受け入れられるのだろうか、と、わたしはそんなことを考えながらこの作品を観ていたわけだが、たぶん、どのくらいかわからないけれど、1週間で済むのか1か月以上かかるのかわからないけれど、まずはもう、悲観に暮れてどうしようもなくなるでしょうなあ。けれど、おそらく、ある時点で、受け入れて、残りの時間を大切に使おうという心境に至るんだろうと思う。いや、思いたい、かな。そして淡々とその日に向けて暮らし、その直前に、死にたくない、ともう一度泣きわめくことだろう。わたしはもうかなり、色々なことに達観してしまったおっさんなので、それなりな覚悟――死なない人間はいない――をしているつもりだけれど、まあ、取り乱すだろうな、きっと。そして、この物語の主人公のような、最後の命の炎を燃やすエネルギーというか、オレにはそういうエネルギーになる「強い思いを残しているもの」はないかもしれないな、と思った。まあ、しょうがないよ、もはやどうにもならんし。淡々と受け入れるしかねえかもしれないなあと思うと、やっぱ淋しいもんですね。

 というわけで、なんかぶった切りですが結論。
 TVで磯野貴理子女史が激推ししていた映画『湯を沸かすほどの熱い愛』を、超今更観てきたわけだが、たしかに貴理子女史の言う通り、泣ける素晴らしい映画であった。いろいろ突っ込みどころもあるとは思うけれど、宮沢りえちゃんの熱演に身をゆだねて涙するのも、悪くないんじゃないでしょうか。いやはや、もう場内みんなくすんくすんという状態でありました。そりゃ泣けますよ。間違いないす。以上。

↓ おっと? 一応ノベライズかな? 小説化されてるっぽいすね。著者は監督&脚本の中野氏本人みたい。最近監督本人による小説が流行ってますね。売れてなさそうだけど。



 

 というわけで2017年になりました。はー。やれやれ。。。
 ところで、わたしは絵画鑑賞もかなり好きだということは、さんざんこのBlogでも書いてきたが、2015年の秋にNYCへ行ったときは、その一番の目的はBroadwayミュージカルの観賞だったけれど、それと同じくらい楽しみだったのが、The Metropolitan Museumの鑑賞であった。そして初めて体験したMETに収蔵されている芸術作品の質と量に圧倒され、とにかく大興奮となったのである。とにかくすごい量だし、作品も超メジャーがずらりと勢ぞろいであった。
 わたしの好きな絵画の三大作家は、ゴッホ・ターナー・マグリットであることは散々このBlogでも書いてきたが、このMETへ行ってきたときに、一番気に入った作品は以前書いた通り↓これである。
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 これは、19世紀末~20世紀初頭のウィーンを代表する作家Gustav Klimtによる、「Portrait of Mada Primavesi」という作品で、クリムトのパトロンであり、実業家で銀行家のプリマヴェージ家の娘さんを描いたものだ。わたしは、Klimtといえば、絢爛で金色のイメージがあったので、Klimtにこんな可愛らしいポップな作品があったんだ、と非常に驚いた。すごい現代的で、Kawaiiカルチャーに通じるものがありますよね、これは。
 この作品は1912年制作だそうで、モデルのメーダちゃんは9歳だそうです。つまり、メーダちゃんは1903年生まれであり、父はその後1926年に亡くなって、銀行も破産してしまったらしいが、銀行家ということでユダヤ系であったのかもしれない。だとすると、メーダちゃんはナチス台頭期に30代に入ってたわけで、無事に2次大戦を生き残ることができたのか、大変心配になってくる。
 何が言いたいかというと、わたしが普段、美術館でうっとり眺める絵画に描かれた人物たちは、もちろんのことながら実在した人間を描いたものが多いわけで、それら、絵画のモデルとなった人々が、その後どんな人生を送ったのか、そして、20世紀の作品であれば現在も生きてどこかに暮らしている場合も十分あり得るわけで、そういった想像を働かせると、より一層面白いというか、興味深いと思うわけであります。
 で。昨日の大みそか、HDDに貯まっている映画を片付けていこう大会を実施しているわたしが、この映画で2016年を締めくくるか、と選んだ作品が『WOMAN IN GOLD』(邦題:黄金のアデーレ 名画の帰還)という作品であります。まさしく、Klimtの名画としておなじみの、『アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像 I』(Portrait of Adele Bloch-Bauer I)を題材にした映画である。

 物語は、上記予告の通りといってよかろう。なんとあの名画のモデル、アデーレ女史の姪っ子が、その所有権をめぐって法廷闘争するというお話である。しかもこれは実話だ。非常に興味深いお話であった。
 一応、この映画がもし完璧に事実に忠実に描かれているのなら、という前提付きだけれど、主人公の主張はそれが証明できるなら明確な法的根拠となるだろうし、その想いも十分に理解できるものだと思う。実際に、裁判の結果、作品は主人公の元に戻るわけだし。
 しかし、わたしがこの映画で一番の見どころだと思ったのは、そういった法的な問題や絵画の行方ではなく、主人公の老女が抱く、故国オーストリアへの愛と憎しみだ。彼女はユダヤとして両親や親せきを殺され、自らは間一髪でアメリカに逃れ、アメリカ人として戦後を生きてきた過去を持つ女性だ。彼女は、「助けてくれなかった」どころか、ナチスを歓迎して「積極的に受け入れた」(としか主人公には見えない)故国が許せない。そんな故国には、もう二度と帰らないと心に決めていたのだ。それほど故国が憎い。実際に絵を奪ったのはナチスであるけれど、それを援助したのは紛れもなく当時のオーストリアという国家と、大勢の国民であり、それが、戦後、この絵は我が国のモナリザです、なんて飾っていてはそりゃあ腹も立つだろう。だから少なからず、復讐の気持ちもあったに違いない。彼女にとっては、ナチスもオーストリアも同罪なのだから。
 しかしそれでも、である。一大決心のもとに、二度と帰らないと心に決めていたウィーンに降り立った彼女の心情は、当たり前だけれど懐かしさと故郷に対する郷愁でいっぱいになる。そりゃあそうだ。誰だって、かつて生まれ育ち、結婚式を挙げた場所を前にしたら、心がいっぱいになるはずだ。ここの場面の主役のお婆ちゃんを演じたHelen Mirrenさんの表情は素晴らしかったと思う。現在71歳。本当にこの人はきれいなお婆ちゃんだなあと思う。2006年の『Queen』でエリザベス女王を演じ、アカデミー主演女優賞を獲得した彼女は、何とも言えない上品さが漂っていて、お父さんはロシア革命で亡命してきた元ロシア貴族なんだそうですな。本物、っすね、ある意味。この映画は、たぶんHelenさんが演じないとダメだったように思えます。『RED』なんかでは、ハジけたところのある元気な元暗殺者のお婆ちゃんをコミカルに演じてたのが印象的すね。
 ほかにも、主人公の甥っ子として、冴えない弁護士を演じたのが、『Deadpool』でイカレた主人公を演じたRyan Reynolds氏。今回は非常にまじめな普通の男をしみじみと演じています。そこも見どころかもしれないす。コイツは、わたしの審美眼からすると別にイケメンではないけれど、まあ大活躍ですな。コイツの奥さんはBlake Lively嬢です。非常にうらやまけしからん野郎ですよ。ちなみにその弁護士の甥っ子は、Schönbergという苗字で、まさしく12音技法で有名なあの、Arnold Schönberg(彼も同じく亡命ユダヤ人としてアメリカに移住)の孫にあたる人物だそうだ。すげえよなあ、初めて知って驚きました。
 あと、主人公のお婆ちゃんの若き頃を演じたTatiana Maslany嬢も非常にかわいらしくて良かったすね。本作は現在のお婆ちゃんとなったアメリカ人の主人公と、その若きころの回想が折重なって語られるわけだけれど、ほんの70年前に起こった出来事なわけで、まだまだ実際に生存者は数多くいるし、もはや歴史、と我々なんかは思ってしまうけれど、まだまだ終わっていない、現在と地続きの過去なんだなあ、という思いが深まった。

 わたしは、オーストリアに降り立った主人公のお婆ちゃんが、役人に対して、ドイツ語ではしゃべりません、英語でお願いします。と毅然と言うシーンがとても心に残った。お婆ちゃんの願いは、実際のところ、絵の返還というよりも、オーストリア政府による謝罪、だったのだろう。それを絵の返還という形で示せ、ということだと思う。まあ、一応、そのようになったわけだが、オーストリア政府は嫌々ながらも応じずにはいられなくなっただけなので、明確な謝罪はない。でもまあ、返還するというところが落としどころってことなんでしょうな。
 しかし、他にもこの映画には、絵のモデルとなった、きれいで優しい叔母、アデーレがモデルになったときも身に着けていた金の首飾りが、主人公に贈られたのちに、家に押し入ってきたナチスの兵士に奪われ、ヒムラー(だったっけ?)のものとなったこと、とか、さらにこの絵が、ヒトラーの別荘であるベルクホーフで見つかったこと、とか、そういった、絵の背後にある歴史を色々と教えてくれる。そういうことを知ると、ホント、絵画を観るときの想いがまた変わりますね。
 わたしは、絵画は風景も人物もともに好きだけれど、やっぱり風景でも人物でも、そのとき作家が見つめていたはずの現地・人にとても興味を抱く。この映画は、そんな妄想をするのがある意味趣味のわたしには、とても興味深く、面白い映画でありました。

 というわけで、結論。
 『WOMAN IN GOLD』(邦題:黄金のアデーレ 名画の帰還)は、Helen Mirrenおばあちゃんの魅力にあふれた素晴らしい映画であった。そして絵画の背景にある歴史も、非常に重く、とりわけ20世紀初頭からナチス台頭期という大きな歴史のうねりに巻き込まれた物語はとても見ごたえがあったと思う。ちなみに本作の真の主役であるKlimtの『アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像 I』(Portrait of Adele Bloch-Bauer I)は、NYCのNeue Galerieで観られるそうです。くっそう、METのすぐそばだったのか……観に行きゃあ良かった……!! 今年、もう一回またNYCに行こうかしら……。以上。

↓ こういうポスターを買って、きちんと額装して飾るのも乙かもしれないすね。本物はかなりデカい作品でしたよ。

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