2016年10月

 というわけで、毎週月曜日は恒例の週末映画興行データです。
 今週末は、わたしは何も映画に行きませんでした。ホントは『インフェルノ』を観に行こうかな、と思ったものの、なんとなく家でグダグダしてしまいました。なお、先週『スター・トレックBEYOND』を観に行ってきましたので、いつものわたしのどうでもいいレビューは10/28付けの記事をどうぞ。
 ところで、わたしは明後日水曜日からちょっくら台湾へ映画を観に行ってきます。今、わたしが一日も早く観たくてたまらない映画『DOCTOR STRANGE』を観て来ます。ディズニーさんよぉ……来年まで待てねーんだよ!! という気合一発、気が付いたら航空券の予約をしていたわたしですが、ほかに特に用事も行きたいところもなく、とりあえず4年ぶりの台北市内をぶらついてきます。猫カフェでも行ってみようかしらん……。

 では、さっそくいつもの興行通信社の大本営発表です。

 1位:『デスノート Light up the NEW world』が1位を奪取!!! 公開土日で4.59億稼いだ模様です。この出だしなら、20億は楽勝コースだろうか? とうとう『君の名』の1位陥落です。わたしは全く興味がなかったので、いやびっくりした。どう考えてもわたしのようなおっさんが観に行く映画ではないと思うので、まあ、逆に若者が映画館へ行ってくれたことは喜ばしいことだと思うことにします。一応、原作はジャンプ連載時にすべて読んでいますが……ライトもLもいないデスノート……面白いのかなあ……ま、売れて良かったすね。
 2位:『君の名は。』が9週連続1位。累計で170億を超えたあたりだと思います。やっぱり、わたしが計算した予想値よりも若干上回るペースですね。すげえっす。
 3位:『インフェルノ』が公開土日で2.66億稼いだそうです。金曜公開なので、3日間だと3.5億ぐらいかなあ……。この分なら15億ぐらいは望めそうですね。わたし的には、ラングトン教授よりも、今回のヒロイン(?)を演じるフェリシティ・ジョーンズ嬢に大変興味ありです。12月公開の『ROUGE ONE』の主役を張る彼女をちょっとチェックしておきたいすね。なんか、声がちょっと高くて可愛らしい声ですな。May the Force Be With Us!! と可愛い声で言う彼女は、大変良いと思います。わたしが『インフェルノ』を観るのはたぶん来週かなあ……。間違いなく観ると思います。
 4位:『魔法使いプリキュア! 奇跡の変身!キュアモフルン!』が公開土日で1.5~1.8億ぐらいじゃなかろうか。毎年恒例の「秋キュア」すね。ま、例年、3週間ぐらいでランクから消えてしまいますが、今年はどうなんでしょうか。ここ数年、若干パワーダウン気味ですが……。
 5位:『何者』が16日間で6~7億ほどでしょうか? 予想よりも粘った印象。15億は無理にしても、10億なら届……きそうですね。ホント、小説原作映画やTVドラマ派生映画が厳しい世の中になったもんですなあ。
 6位:『ブリジット・ジョーンズの日記 ダメな私の最後のモテ期』が公開土日で1億行ったかどうか、数千万なあたりでしょうか。サーセン、ほぼ興味ないっす。10億は届かないかな……。
 7位:『闇金ウシジマくん ザ・ファイナル』が公開9日間合計で3~4億程度と見積もる。9月公開の『Part3』と比べると、若干下回る感じです。最終10億には微妙に届かずなラインでしょうか。
 8位:『金メダル男』が9日間で2~3億届いたかどうかぐらいと見積もる。数字的にはもう一声欲しいところでしょうか。この分だと10億に若干届かずか。
 9位:『スター・トレックBEYOND』が10日間でやっぱり3億チョイぐらいでしょうね……たぶん。わたしは平日の夜に観に行きましたが、意外とガラガラではなかったす。これだけ世界的な人気を誇るIPが、日本ではこの状況というのは、残念ですなあ……。
  10位『映画 聲の形』が44日間で20億は突破したそうですね。松竹的にはもう大ヒット御礼でしょうな。素晴らしいと思います。

 とまあ、こんな週末だったようです。

 しかし上にも書きましたが、このところTVドラマからの映画化や、ベストセラー小説の映画化、がなんだか苦戦しているような印象ですね。と書いてみて、そういや最近、あまり「ベストセラー小説」自体が少ねえのかも、ということに気が付きました。TVドラマも視聴率厳しいし。まあ、年末の『海賊と呼ばれた男』はきっちりヒットするとは思いますが、もしこの作品が30億もいかないような事態になるとすると、相当深刻というか、時代の変化を感じてしまいますね。果たしてどうなるか……あっさり50億を超えるようなスーパー大ヒットになるのかな…… 年末ぎりぎりの公開というタイミングも、吉と出るのかどうか、気になります。もうチョイ早いと、『ROUGE ONE』と重なっちゃうし、非常に難しいですな。まあ、客層は被らない……いや、やっぱり被るんでしょうね。というわけで、わたし的には『海賊と呼ばれた男』がどういう興行成績となるのかが、興収ウォッチャーとしては一番興味があります。
 あと、どうでもいいですが、ディズニー様……どうして『DOCTOR STRAMGE』の日本公開をそんなに遅らせたんですか……。『ROUGE ONE』と重なるからですか!? わたしは台湾で一足先に観てきますけど……高くついたなあ……。まあ、いいや。 

 というわけで、結論。
 今週はとうとう『君の名』が2位に。代わって1位は『デスノート』でした。あれからもう10年。ほんと、年を取りましたなあ……。以上。 

 わたしは日頃、冷静で落ち着いた男として周囲にはおなじみだが、ある日、わたしの元部下で非常に可愛い女性が、実は猛烈な「トレッキー」だったことを知ったときはマジで取り乱すほどびっくりしたことがある。「トレッキー」って分かりますよね? 熱烈な「STAR TREK」ファンのことである。
 えええっ!? ナンデ? ナンデまたトレッキーに!? と聞いてみたところ、なんでもCSか何かで観たら面白くてはまったらしい。わたしは、35年ぐらい前に、夕方毎日テレ朝で放映していた「宇宙大作戦」を小学生か中学生の時に興奮して観ていたし、劇場版も全て観ているので、一応大体は知っているつもりだったのだが、彼女のSTAR TREK愛は本物で、当然TV版最新シリーズまですべて観ていて、Blu-rayでもシリーズを揃え、あまつさえ、熱く「ピカ―ド艦長が一番好きなんです!!!」と語り出したときはマジでびっくりした。わたしが、「えっ!? ジャン=リュックが一番好きなの? ハゲなのに?」と返答したら、「凄い!! ファーストネーム知ってる人と初めて会いました!!! 嬉しい!!! でもハゲは余計です!!」と、彼女もまた普段は冷静で落ち着いた女子なのだが、それまでわたしに見せたことのないような超・笑顔で盛り上がったのを覚えている。以来、わたしは彼女には、「バルカン式挨拶」で「長寿と繁栄を」と挨拶するようになったわけだが、彼女のような「本物」のトレッキーからすれば、わたしはまるでド素人だ。ちなみに、わたしは当然(?)STAR TREKよりもSTAR WARSの方が好きなわけだが、それを彼女に言ったら、鼻で笑われました。曰く、「STAR WARSはなんというか、浅いですよ」だそうで、わたしもつい、「まあ、そりゃあSTRA TREKはDeep Spaceだからなぁ」と反応してしまい、またしても「そうです!深宇宙なんです!!」としばらく彼女の熱いトークに付き合うこととなったわけである。やれやれ。
 そんな若干ニワカなわたしでも、映画版はきちんと全作観ていたので、2009年に公開されたJJ,Abrams監督による『STAR TREK』は、当然楽しみに劇場へ観に行ったクチだ。そして、その内容にかなり驚いた。わたしはまた、リメイクなんだろうな、と思って観に行ったわけだが、全くもってリメイクではなく、きっちり新しいお話であり、 正確には違うかもしれないが、劇場版の「10」の続編的な映画だったわけである。つまり、年老いたミスター・スポック(演じたのはもちろん、オリジナルのLeonard Nymoi氏)がタイムスリップして一番最初の時間軸にやってくるお話だったのだ。そしてあろうことか、歴史が塗り替えられてしまったわけで、以降、このパラレルワールドともいうべきJJ版のSTRA TRECKは、「ケルヴィン・タイムライン」シリーズとして正史となっている。
 そして、続くJJ版の第2作目『Into Darkness』は素晴らしく面白かった。この映画は、旧劇場版第2作の『The Wrath of Khan』を観ていると超面白い。実にうまく『Wrath of Khan』をアレンジていて、エンディングは見事に旧作の逆の結果になっていて、わたしはもう、大興奮したわけである。やっぱJJはすげえ奴だ。 JJならば、STAR WARSを託すに最適の男であろう、と。
 で、先週から公開になった最新作が、この「ケルヴィン・タイムライン」シリーズの第3弾、『STAR TREK Beyond』である。わたしとしては、JJが監督から降りた時点で(まあ、そりゃSTAR WARSで忙しかったんだろう)、相当興味を失ってしまい、まあ、観に行くけど、それほど楽しみではないかな……ぐらいのテンションだったので、初日にはいかず、昨日の夜、会社帰りにふらっと観てきた次第である。そして結論から言うと、十分面白かった、けど、超トレッキーではないわたしには、普通かな、ぐらいの面白さであった。それほど興奮はしなかったっす。というわけで、いつも通り以下ネタバレ全開です。

 上記予告は、見せ場シーンてんこ盛りに編集されたもので、はっきり言って上記予告を見てもさっぱり物語は分からない。なので、わたしもどんなお話か、全然知らずに観に行った。簡単に話をまとめると、「深宇宙」を航行するエンタープライズ号の船長、カークは、現在の探査任務に就いて約3年。任務は5年なのでまた2年ほど残っているのだが、どうも、はっきり言ってもう疲れちゃったようで、最新の補給基地「ヨークタウン」の提督に異動してえなあ、船を下りて地上勤務に代わりてえなあ、と申請したらしい。そしてスポックも、オリジナル・スポックの訃報を受け取り、生き残りのバルカン人として、子孫を残し、大使としてオリジナル・スポックの仕事を受け継ぎたい、船を下りる潮時かもなあ、なんて思っている。
 ところで、一応説明しておくと、ケルヴィン・タイムラインの世界においては、まだ若いスポックと、遠い未来からやってきた老いたスポックの、二人が同時に存在しているんだな。その老いたスポックを、とりあえずわたしは「オリジナル・スポック」と表現してみたわけだが、まさしく演じたLeonard Nymoi氏は去年亡くなってしまったんだよね……残念ながら。まあ、その事情を汲んだ脚本とも言えるかもしれない。本作のエンドクレジットで、きちんと「レナード・ニモイに捧ぐ」と出たのもきちんと礼儀に適っている。
 そんな、若干テンションの低いカークとスポックの二人が、ヨークタウンで補給を受けていると、とある救助ミッションに出動することになり、そこには、巧妙に準備された罠が待ち受けていて……てなお話である。
 なので、問題は、その罠を張って待ち受けていた敵キャラの動機が、本作では一番のポイントとなる。そして、テンションの下がったカークたちが如何にして再び闘志を燃やすか、という流れがドラマの核と言ってよかろう。
 しかし……である。
 まず、待ち受けていた敵、の正体はかなり後半に判明して、その点は非常に素晴らしい脚本だったと思う。しかも、敵のボスを演じた役者が、エイリアンメイク(メイクというよりありゃCGか?)で最初は誰だかわからないのだけど、実はIdris Elba氏(→『THOR』のヘイムダルでおなじみのあのお方)だということが分かる流れは、実に良かったと思う。このキャラは、ひょっとしたら本物のトレッキーの方が観れば大興奮なキャラなのかもしれない。わたしは分からなかったです。
 だが、カークたちが、もはや「家」であるUSSエンタープライズ号が大破し、大切なクルーたちも無残にいっぱい殉職してしまうといったような、「自らの一番大切なもの」の喪失によって、再び結束というかテンションが上がる、という流れは、どうも見ていてあまり気持ちが良くない。名もなきクルーたちがどれだけ亡くなったことか。そして、やっぱりUSSエンタープライズ号が無残に大破する姿も、映像があまりにリアルなCGなだけに、あまり見たいものではなかったと思う。ちなみにラストでは結構あっさりUSSエンタープライズ号は再建されて、そのあっさり感も、わたし的には、あれっ!? こんなに簡単に新造できちゃうんだ? とちょっと興ざめ感はあった。
 おまけに、重要なキーとなる、敵の本拠地に住んでいた謎のエイリアン女子が、非常に浮いているように思える。極めて重要な役割を与えられているのだが、どうも……結局彼女は何者なのか、わたしにはよくわからなかったのが残念であった。また、どうでもいいけどラストで敵の大群が、あの方法でドカンドカン爆発しちゃうのもよくわからないし。
 加えてアクションも、まあ正直に言うと、見慣れたものというか目新しさはないかなあ……なので、どうも、どこかで観たようなショットが多いように感じてしまった。なんとなく、本作の監督であるJustin Lin氏の代表作『ワイルド・スピード』で見たようなアクションカットがすげえ多いような気がしました。スコットの崖っぷち宙ぶらりんのあのシーンなんて、まさしく『ワイルド・スピード』そのままですな。
 なので、どうにも興奮するところまでいかなかった、というのが今回の映画の結論である。うーーーん……十分面白かったと思うのに、どこか消化不良なんですよね……。物語のテンポが悪いのかな……それとも、思いっ切り中華マネーが入っているとか、ドバイの金持ち資本も入っていることがオープニングのプロダクションロゴで分かってしまって、無意識に反感を感じてしまったのかな? そのせいなのか、群衆シーンやクルーには、やけにアジア系の顔が見かけられるようにも感じたのは気のせいだろうか。

 まあ、我ながらよくわからないままで大変気持ち悪いのだが、まあ、ひとつ、確かなこととして言えそうなのは、JJが監督をしていたらこうはならなかったのではなかろうか、ということで、これは根拠なくそう思う。
 というわけで、どうにも半端というか、うーーん、であったわけだが、今回の作品で、備忘録として書いておかなくてはならないのは、二人のキャストについてだ。
 まずは、非常に位置づけが微妙になってしまったエイリアン女子を演じた、Sofia Boutellaちゃんだ。彼女は、去年観た『KINGSMAN:The Secret Service』で両足が刃物のおっかない女子を演じた時、くっきりした太眉が可愛かったのが印象的だ。元々ダンサーでマドンナのバックダンサーも務めたことがあるそうで、今回は結構格闘シーンがあるけど、いい蹴りをしてましたね。ま、顔はエイリアンメイクなのでさっぱりわからないけど、動きは実に良かったですな。
 そしてもう一人は、チェコフを演じたAnton Yelchin君だ。本当に残念ながら、今年事故で亡くなってしまった。まだ27歳の若さで、これからだというのに本当に気の毒というか、残念だ。このケルヴィン・タイムラインでは何気に一番大活躍したチェコフがいないエンタープライズ号なんて、とても悲しいよ……もちろんエンドクレジットでは、彼にも哀悼の意が捧げられているけれど、ホント、チェコフ抜きではもう航海できないんじゃないかと思う。なんか、ケルヴィン・タイムラインももう潮時じゃないかなあ……という気がした。

 というわけで、結論。
 新生「ケルヴィン・タイムライン」シリーズ第3弾となる『STAR TREK Beyond』は、面白い、けど、どうもなにか輝きが若干薄れた印象のある映画であった。映像は相変わらず凄い、けれど、どこかで見たような画が多く、新鮮さや驚きのようなものはないように思う。また、新キャラのエイリアン女子も、どうも位置づけが微妙で、大変魅力的なキャラだけに、もうちょっと深く掘り下げてほしかったようにも感じた。このあたりをどう思うか、筋金入りのトレッキー女子に聞いてみようと思う。大絶賛かもしれないし、酷評かもしれないな。ちょっとどう受け取るか、分からんす。以上。
 
 ※追記:ずーーと、綴りをTRECKと間違てたので、正しくTREKに直しました。いかにニワカか、もろバレ……。

↓ やばい…・・・借りっぱなしだ……ごめん……まだ全部観てないんだ……。
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 毎週木曜日は今週の『鮫島』ニュースのお時間です。
 つーかですね、来週の11/3(木)は、祝日なので、次号は11/2(水)発売です。
 なのですが、わたしは来週水曜から、ちょっくら台湾へ映画を観に行ってきますので、来週の『鮫島ニュース』の更新は、金曜日になるかもしれません。いや……羽田に行くまでにチャンピオン買って読んで、飛行機の中で書こうかな……まあ、出来たら頑張りますが、ダメだったら金曜までお待ちいただければと存じます。ちなみに、日本では来年公開の『DOCTOR STRANGE』が、わたしとしては今すぐにでも観たくて観たくてたまらないので、既に公開中の台湾に行くわけですが、映画以外には特に予定もなく……いっそ一泊でも良かったかもな……と若干思っています。まあいいや。しかし羽田から台北松山空港の便はホント楽ですなあ。
 というわけで、まずは、いつも通り今週の週刊少年チャンピオン2016年48号の概況です。
 ■巻頭グラビア:今週は島崎遥香嬢。水着はナシ。これって普通のこと?
 ■『弱虫ペダル』:坂道くん、明日に向けスイッチオンの巻。3日目ってどういうコースだっけ……。
 ■『刃牙道』:本部のおっさん、逝ったか!? の巻。もうホント武蔵は飽きました。
 ■『囚人リク』:変態・大場、KO!の巻。レノマの勝利。いやーヤバかった……。
 ■『少年ラケット』:ヨル君再び闘志燃やすの巻。頑張れ!
 ■『Gメン』:新展開。土井ラップ編Vol.2の巻。まだ続くの……?
 ■『六道の悪女たち』:第三の女子は凶悪バイクガールの巻。大変いいですね!
 ■『BEASTERS』:レゴシ君&ウサギガールの巻。下着はちゃんとつけてるんすね。
 ■『放課後ウィザード倶楽部』:初心者市バトル拡大の巻。どんどん面白くなっております。

 とまあ、こんな感じの週刊少年チャンピオンでありました。

 さて。では、今週の『鮫島』ニュースのお時間です。 
 先週はまわしの取り合いから、一気に【闘海丸】の寄りが鯉太郎を土俵際へ!というところまででしたが、今週はその続きです(当たり前か)。 そして、今週でVS【闘海丸】戦は決着です。
 状況としては、鯉太郎に覆いかぶさるように土俵際まで押し寄る【闘海丸】。そしてその圧力を必死でこらえる鯉太郎、という図式ですので、実際の経過時間はおそらく数秒だと思いますが、押す側の【闘海丸】と堪える側の鯉太郎の内面が描かれます。
 当然、【闘海丸】は、将太くんが「押せ―――!!」と怒鳴るまでもなく、必死で寄り切る目論見。しかし、粘る鯉太郎に、こう思います。
 「なんで・・・なんでだ・・・もういいだろ鮫島! 体が軋んでんじゃねーか・・・限界だって泣いてるじゃねーか・・・もう諦めろよ・・・まだ次があるんだ・・・」
 そして鯉太郎は――またも体中がミシミシメキメキと軋み、白水さんも大変心配そうですが――こう思ってます。
 「まだだ・・・まだ・・・探せ・・・探せ・・・突破口を・・・わずかでいい・・・針の穴ほどでいい・・・諦めるな・・・土俵を割るまで・・・力尽きるまで・・・終わっちまうまで・・・諦めるな・・・」
 そして渾身の力で耐える鯉太郎に、【闘海丸】も「ブハハッ やっぱ最高だぜ・・・」と嬉しそう。そして左手で鯉太郎の顔面を押さえつけます!! その、【闘海丸】の左脇が空いた瞬間を鯉太郎は逃しません。すかさず左ハズから【闘海丸】の左手を跳ね上げ、同時に自らの左手を【闘海丸】の脇にねじ込むことで、【闘海丸】必殺の「右」をまわしから切ることに成功、サイドへ回って両手で【闘海丸】のまわしを取りました!! あとはうりゃあと【闘海丸】を土俵の外へ放り出すだけ!!! 虎城理事長も、やりおるわ、的な顔をしてます。
 負けを悟った【闘海丸】も、「最高だ・・・」と一言残し、土俵の外へ……!! 決着です!!!
 はーーー。まったく今週も血圧上がるわ……はーーーやれやれ。しっかし鯉太郎も強ええ!! これで前頭14枚目とは……9日目にして9戦全勝です!! しかし、次の戦いの相手は、ちょっと予想ができませんな。他の力士の勝ち星もわからないし。ひとつ確実に言えそうなのは、「普通なら」ば、前頭14枚目の鯉太郎と横綱が本割で当たることはありません。たとえ全勝同士であっても。大関戦ですら難しいかも。でもまあ、漫画だし、どういう展開でもわたし的には大歓迎です。できれば、鯉太郎が素人の高校生だった時に、初めて戦った相手、現在の大関【猛虎】さんとは是非とも戦ってほしいですなぁ……もちろん、怪力【天雷】や大関【王虎】との闘いも観たいですが、どうでしょうね。とにかく、次の10日目の相手が誰なのか、もはやわたしがそれが一番気になります! 新キャラの【毘沙門】とか【白鯨力】あたりすかねえ……新キャラだと、また背景説明に話数がかかるからなあ……。ところで、常松こと【松明】は今、何勝何敗なんすかねえ。七日目までは全勝だったんだし、勝ち越しを決めていただきたいですな。はーーー。楽しみだ……。
 というわけで、最後に、毎週のテンプレを貼って終わります。
 <場所:9月場所>
 【鮫島】東前頭十四枚目(5月場所で東前頭十枚目)
 【白水】西小結
 【松明】東前頭六枚目。常松改め。本場所は7連勝中
 【大吉】序2段【豆助】序ノ口【目丸手】序二段【川口】不明
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 1日目:【飛天翔】西前頭十二枚目。石川改め。
 2日目:【宝玉光】西前頭十一枚目
 3日目:【舞ノ島】西前頭十枚目
 4日目:【巨桜丸】西前頭九枚目。新入幕力士
 5日目:【岩ノ藤】東前頭七枚目 
 6日目:【大山道】西前頭七枚目
 7日目:【蒼希狼】西前頭六枚目
 8日目:【丈影】東前頭四枚目。横綱の弟弟子
 9日目:【闘海丸】西小結。いよいよ三役戦!! 
  --------
 【王虎】&【猛虎】共に東大関
 【天雷】東関脇  【田上】番付不明※王虎の付け人をやってることが判明!!
 【闘海丸】西小結 他の力士は表にまとめた記事を見て下さい。
 【泡影】東横綱。第72代。29場所連続優勝中。63連勝中。モンゴル人。

 というわけで、結論。
 今週はVS【闘海丸】戦の決着まで、手に汗握る攻防が描かれました。これで9戦全勝。次の相手は誰なのかが大変気になりますが、気になると言えば、鯉太郎の体の具合も大変気になります。もやは大丈夫じゃないわけで、あしたのジョー的ラストを迎えるのでしょうか……。おそらく来週から「九日目_その後」が3話入ると思いますが、何か新しい情報が我々読者にもたらされるのか、じっと待ちましょう。以上。

↓ おっと、書影が登録されたすね。総北は今年は勝てず、来年3年生になってリベンジ、かな……。


  

 というわけで、毎週月曜日は恒例の週末映画興行データです。
 今週末は、わたしは『スタートレック』を観に行くつもりが、直前に気を変えて「午前十時の映画祭」で『七人の侍』を観て来ました。いや、土曜に行こうとしたらほぼ完売でいい席がなく、日曜にしたんですけどね。もう何度目の鑑賞か覚えてませんが、何度見ても最高ですね。そして4K修復のリマスターも、かなりきれいになっていました。ゴミや傷のような、画像上のノイズはほぼゼロ。白黒のコントラストもかなりパキッとしていて、非常に手のかかる作業だったようですが素晴らしい修復だと思いました。

 では、さっそくいつもの興行通信社の大本営発表です。

 1位:『君の名は。』が9週連続1位。累計で164.1億まで積んだようです。先週わたしが計算した予想値よりもちょっとだけ上回るペース。ホントすげえなあ……。
 2位:『闇金ウシジマくん ザ・ファイナル』が公開土日で1.41億ほど稼いで2位。ええと、これは、9月公開の「Part3」よりほんのちょっとだけ下回る数字。まあ、ほぼ同額です。
 3位:『何者』が9日間で4~5億ほどでしょうか? もうチョイ上かも。正直数字的にはちょっとキビシイと思われます。この分では10億は超えるにしても、15億は難しいラインかもしれません。
 4位:『スター・トレックBEYOND』が土日で1億チョイだったんでしょうね。金曜公開なので、3日間だと2億を超えたかどうかぐらいかな……JJエイブラムス氏による新生スタートレックは、わたしは2作とも大好きですが、今回の新作はどうなのかな……今週、平日夜に観てこようかと存じます。チェコフを演じたAnton Yelchin君が若くして事故で亡くなってしまったのが実に残念ですな……。
 5位:『金メダル男』が公開土日で1億届いたかどうかぐらいではなかろうか。面白そうなんだよな……結構見たいと思ってます。ShowGate配給にしては、213スクリーンかな、かなり営業頑張ったと言えそうな公開スクリーン数ですな。10億円超えたら大ヒットだと思うけど、チョイ届かないかな……。
 6位:『ジェイソン・ボーン』が17日間で累計11~12億ほどでしょうか? 2007年公開の前作『ボーン・アルティメイタム』が最終16.5億ほど。そこまで行けるかどうか、まさしく微妙ラインの模様。
 7位:『HiGH & LOW THE RED RAIN』が16日間合計で7~8億ぐらいだろうか。7月公開の『The Movie』は20億を超えたようだが、本作はちょっとそこまで届きそうにない。15億に届くかどうか微妙な情勢。
 8位:『映画 聲の形』が37日間で18~19億ぐらい、と見積もる。すごい数字です。
 9位:『ハドソン川の奇跡』が30日間合計で、12~13億ぐらい、と予想。当初予測の15億はかなり微妙でギリギリラインと見込むが、どうでしょう……?
 10位:『GANTZ:O』が9日間で2億弱というあたりだと予想。なんで今、GANTZなのか良く分かりませんが、数字的にはあまり良くありません。

 とまあ、こんな週末だったようです。  

 しかし、先々週公開になったばかりの『グッドモーニングショー』(東宝)や、福山雅治氏の『SCOOP』(東宝)、本木雅弘氏の『永い言い訳』(アスミックA)などがランキングから消えてしまったのは残念ですなあ……どれも10億に届かないで終わってしまう情勢です。これは本当に厳しい……。

 というわけで、結論。
 『君の名』が9週連続1位。これは、『ハウルの動く城』(2004年・最終196億)、『アバター』(2009年・最終興収156億円)の2作品に並ぶ歴代1位タイ記録だそうです。そうか、もう累計で『アバター』を超えてるわけか。すっげえなあホントに。累計興行値は、ややわたしの予想よりいいペースなので、まあ、180億は届いちゃうんじゃないでしょうか。まったくもって予想外。ほんとすげえや。以上。

 わたしは、黒澤明監督の作品が大好きなわけだが、まあ、やっぱり、一番好きなのはどれかと聞かれると、実はかなり悩むし、未だに結論は出ない。結局のところすべて好きであり、一番はちょっと決められないのが現実なのだが、それでもやはり、『七人の侍』に関しては、一番かどうかは分からないけど、TOPクラスに好きであるのは間違いない。
 とにかく、すげえ。
 わたしは黒沢映画を見ていない人は、断じて映画好きとは認めないし、いろいろなところでそう言っていることはすでに周りではおなじみなので、まさか『七人の侍』を観ずして、わたしの前で「いやあ、オレ映画が好きなんすよ」と抜け抜けと言える人間はもはやいないと思うが、 観ていない人はマジで一度観た方がいいと思う。とにかく、すげえ、のである。
 わたしの記憶では、一番最初に観たのは80年代中頃のTV放送だと思う。1989年~91年まで、わたしはビデオレンタルのバイトをしていたが、当時、『七人の侍」のビデオソフトは発売されていなかったと思う。少なくとも、わたしがバイトをしていたレンタル屋には置いていなかった。その店はかなり大きな店で、置いてあったのは『乱』『羅生門』『静かなる決闘』『白痴』『デルス・ウザーラ』と言った東宝以外の作品と、東宝作品では確か『用心棒』『椿三十郎』ぐらいしかなかったと記憶している。単に置いてなかっただけなのか、発売されていなかったのか、実はよくわからないのだが、とにかくそんな状況だったので、わたしが黒沢作品をすべて見たのは、今はなくなってしまった銀座の「並木座」という名画座での「黒澤明の世界」という特集上映で、あれはたぶん1991年か1992年のことだと思う。
 そして、その当時、わたしの友だちがロスに留学していたのだが、まだインターネッツなどなく、当然メールも携帯すらもない時代、たまに手紙をやり取りするぐらいだった友達から、ある日国際電話がかかってきた。もちろん、家の固定電話に、である。その時のことはいまだに明確に覚えている。こんな電話で、わたしは大興奮したのである。
 友だち「た、大変だーーっ!!」
 わたし「ど、どしたの!? 何があったんだ!?」
 友だち「さっき、こっちのモールで買い物してたんだけど、大変なものみつけちゃった!!」
 わたし「は? 何を?」
 友だち「七人の侍!! ビデオ売ってる!! 49ドル99セント!!!」
 わたし「……な、なんだってーーー!?」
 友だち「どうする? ほしいよね? 買う!? 送ろうか!?」
 わたし「買いでお願いします……!!!!」
  というわけで、当時の友だちもわたしも金がなかったのだが、郵便局でMONEY ORDERという外国郵便為替? みたいなので50US$を送金したのである。懐かしい……。そして、3週間後ぐらいに友だちから送られてきたのが、これ↓である。久しぶりにわたしの本棚から引っ張り出してみた。
7samurai
 全然関係ない写真のパッケージが笑えるけれど、まぎれもなく『THE SEVEN SAMURAI』であり、中身はちゃんと『七人の侍』で、なんと、当たり前だが英語字幕入りである。「たわけ!!」が「FOOL」と訳されていて笑える。要するに、わたしにとっては『七人の侍』という作品はかなり思い入れがある、ということを言いたかっただけです。以上、前振り終了。

 というわけで、いつも通り無駄な前置きが長くなったが、今日、久しぶりにまた、劇場の大スクリーンで『七人の侍』を観てきた。2週間前に観た『生きる』同様、4Kマスターによる「午前十時の映画祭」である。
 この「午前十時の映画祭」という企画は、A日程の劇場とB日程の劇場と別れていて、A日程の劇場ではすでに2週間前に公開されていて、わたしもTOHO新宿へ観に行こうと思ったのだが、さすがに『七人の侍』は大変多くの方が劇場に駆け付けたようで、土日などは完売が相次いだそうだ。わたしが行こうとした初日も完売であった。で、仕方ないので、B日程の始まった昨日、TOHO日本橋へ観に行こうと思ったらまたしてもほぼ完売で、いい席がもうとっくになかったので、今日、地元市川にて観てみることにしたわけである。感心したことに、TOHO市川はちゃんと2番箱を『七人の侍』のために用意していて、キャパ317人の2番目に大きいスクリーンでの上映となっていた。そしてお客さんの入りも結構多く、人気のほどがうかがえる様相を呈していた。まあ基本、60代以上のおじちゃんばっかりだったけど、ちらほら、若い映画オタ候補の青年たちも観に来てましたね。よしよし、えらいぞ君たち。
 そして、肝心の4K修復だが、わたしがこの記事を見て仰天したことは、既にこのBlogでも書いた通りで、かなり、というか相当画質はクリアになっている印象だ。まあ、『生きる』の時も書いたけれど、元のノイズだらけの画像を知らない人だと、ある意味普通に思えることだろうが、はっきり言って超クリアである。音声の方も、一部はどうしても聞き取りずらい部分はあるが(何しろ怒鳴っているようなしゃべり方だし)、それでも、主要キャストのセリフはかなり明瞭になっていると思う。素晴らしい修復だとわたしとしては惜しみない称賛を送りたい。ほぼ、ごみやノイズはゼロ。コントラストもはっきりしていて、実に観やすく分かりやすい映像になっていた。この修復もすげえと思う。苦労のほどは、上記のリンク先のAV-Watchの記事をどうぞ。
 ところで……もう『七人の侍』については説明いらないよね? 物語については、もはや誰でも知ってるよな、観てなくても。なので、今回は自分用備忘録として、七人の侍たちの名前と、最終的に生き残ったのかどうか、をまとめつつ、わたしが名言だと思う名セリフをあげつらっておこう。なので、以下はもう完全ネタバレ全開です。
 ※以下動画は、「午前十時の映画祭」について仲代達也氏が語っているもので23分あります。

 【島田勘兵衛】
 侍たちのリーダー。演じたのは、『生きる』の渡辺さんこと志村 喬氏。最高です。
 百姓たちが侍探しをしているとき、盗人をとある侍が退治する現場に遭遇し、その腕を見込んで百姓たちが一番最初にスカウトした男。ちなみに、勘兵衛に斬られた盗人が小屋から出てきて、バタリ、と倒れるスローモーション(?)のシーンは超名シーンの一つ。はじめ勘兵衛は百姓のオファーを断るが、百姓たちのねぐらにしていた宿で、百姓たちを常々バカにしていた眉がつながった人足(わたしはそのつながり眉から、両さんと呼んでいる)が、「おい!お侍!これ見てくれ!これはお前さんたちの食い分だ!ところが、この抜け作たちは何食ってると思う!? 稗(ヒエ)食ってるんだ。自分たちは稗食って、お前さんたちには白い飯食わせてんだ!! 百姓にしちゃ精いっぱいなんだ!! 何言ってやがるんでい!!!」と怒鳴られ、「よし分かった。もうわめくな。この飯……おろそかには食わんぞ」と言って、百姓の依頼を受けることにする。
 最後まで生き残り、ラストでは「……今度もまた、負け戦だったな……いや、勝ったのはあの百姓たちだ……わしたちではない……」と言って去る。最終決戦当日、「勝負は……この一撃で、決まる!!」と百姓を鼓舞するシーンは超名シーン。カッコいい!!
 【勝四郎】
 唯一の「前髪」で、まったくのゆとり侍。戦経験はナシ。村娘の「しの」とヤっちゃう(ちなみに、むしろしのの方から誘われて行為に至る。最初は手が出せず意気地なし!!と言われちゃうのが笑える)。最後まで生き残るものの、ラストではしのにはあっさり振られる。もっとも、「しの」は生き残るため、という打算をもって勝四郎に近づきモノにしたとも見られ、生き残ることが確定した時点で勝四郎はお払い箱となったわけで、もてあそばれたのは純情な勝四郎坊やの方だった、という見方も十分以上に可能だと思う。いや、むしろその観方が王道かな。
 勝四郎は勘兵衛が盗人を退治するときのやじ馬の一人で、その剣の腕にほれ込み、弟子入りを願う。もちろん断られるがずっとついていき、最初はお前はダメだと勘兵衛にダメ出しを食らって仲間に入れてもらえないが、五郎兵衛と平八に「子供は子供で、働くぞ。もっとも、大人扱いしてやればだが」「じゃ、勝四郎を大人扱いしてやるか」と助け舟を出されて、やっと仲間に。なお、ほとんど戦わない。代わりに伝令係として活躍(?)。演じたのは木村功氏。黒沢映画の常連。わたし的には、『野良犬』の復員兵が一番印象深いかな。
 【片山五郎兵衛】
 勘兵衛が百姓の依頼を受けてから仲間探しを始めて、一番最初に腕を見込んでスカウトした人。勘兵衛による腕試しを「ご冗談でしょう」の一言で見抜いたデキる男。髭もじゃで、笑顔がとても印象的な気のいい男で、事実上ナンバーツー扱い(?)。最終決戦の前に、火縄銃で狙撃され、殉職。なお、その狙撃シーンはなく、銃声と、戸板に載せられて運ばれてくる亡骸だけ。生き残ってほしかった……。演じたのは稲葉義男氏。
 【林田平八】
 金がなくて、茶屋でまき割りをしているところを、そのひょうひょうとした人柄と、腕の良さを見抜いた五郎兵衛がスカウトした侍。勘兵衛には「まき割り流を少々」とふざけた自己紹介をする。後に侍たちの旗印になる旗(有名な○○○○○○△のアレ)を書いた男。野武士のアジトを夜襲した際、妻を野武士にさらわれた百姓の利吉を助けようとして、残念ながら、一番最初に死んでしまう。平八も火縄銃による狙撃でやられてしまった。演じたのは千秋実氏。黒沢映画の常連で、わたし的には『蜘蛛巣城』の三木義明の役(=マクベスでいうところのバンクォウ)が最高。
 【七郎次】
 勘兵衛の旧知の侍。出会いのシーンはなく、勘兵衛がそこでばったり出会ったとアジトに連れてくる。その時、七郎次は俸手振りかなんかをやってた模様。曰く、二の丸が焼け落ちたときはもう終わりかと思ったが、堀に身を沈めて忍び、頭に水草を乗っけて隠れていたそうで、勘兵衛としてはもうとっくに死んだかと思ってた、らしい。勘兵衛曰く「古女房」。小太り&月代がきれいにそられたちょっと丸い人。唯一の槍遣いで、最後まで生き残る侍のうちの一人。演じたのは加東大介氏。わたし的には、『陸軍中野学校』の草薙中佐としておなじみ。
 【久蔵】
 町で果し合いをしているところを勘兵衛たちが見かけ、スカウト。最初は仲間にはならんだろうと思っていたが、ふらりとやってきて仲間に。剣の達人。町での果し合いも、「……無駄だ。真剣なら死ぬぞ……」と忠告したのに、相手がかかってきてしまったので、やむなく斬った。戦いの中でも、火縄銃を「わしがなんとかする」とふらりと一人消え、翌朝、銃とともに村に帰ってくるような孤高の戦士。そのカッコよさに、勝四郎は大感激し、あなたは素晴らしい人だ!! と絶賛。照れくさそうに苦笑いをする久蔵さんが超クール!! そして、最終決戦では大雨の中、野武士のボスの放った銃弾に倒れる……。演じたのは宮口精二氏。『生きる』でもやくざの親分としてちらっと登場。
 【菊千代】
 勘兵衛が盗人退治したときのやじ馬の一人で、以来勘兵衛に付きまとうが、相手にされていなかった。が、久蔵が仲間入りした後で、百姓たちが「すげえ人見つけました!!」とぐでんぐでんに酔っぱらった菊千代を連れてきて、やっと晴れて仲間入り。乱暴な言動だが、実は一番の仲間思いで、優しい男。元々百姓出身。村はずれの家が焼かれて、そこから助け出された赤ん坊が泣きわめくのを抱きしめ、「これは……これはオレだ!! オレもこうだったんだ!!」と思いやりを見せたり、平八や五郎兵衛の墓の前で、いつまでも一人しょんぼりと悲しんでいたのも菊千代だった。
 また、戦いの準備中に、百姓たちが落ち武者狩りで実は鎧や刀を大量に保管していたことを見つけ、勘兵衛たちに、こんなに武器があったぜー!! とウッキウキで報告に来るシーンも、かなりの名シーンだと思う。勘兵衛たちは、浪人であり、それは要するに負け戦を体験し、落ち武者となったことがあるわけで、一同は百姓たちが落ち武者狩りをしていたことに対して、強い反感を抱くのだが、「百姓はバケモンだ。だが、そんなバケモンを作ったのはお前ら侍だ!!!」と菊千代が激怒することで、侍たちと百姓のわだかまりを、とりあえず収めるような、何気に重要な役割を果たす。そんな菊千代も、残念ながら、久蔵さんを狙撃した野武士のボスと相打ちになり、侍最後の殉職者に。
 わたし的には、菊千代と言えば、村に野武士が攻めてきたのを見つけ、「野郎~~~~!! 来やがった来やがったァッ!!!  ヒャッハァアァッツ――――!!」と超うれしそうに(ひょっとしたら恐怖を隠すためのハイテンションで)叫ぶシーンが一番好きですね。最高です。演じたのは、もちろん若き三船敏郎氏。最高です。この人、本当にイケメンだと思う。ちなみに、戦いの中盤で、久蔵さんが一人で火縄銃を奪ってきた活躍をまねして一人で行動し、火縄銃を奪ってくる活躍をするのだが、その潜入ミッションの際に、野武士に化けるために野武士から奪った鎧を着用し、それ以降はずっと、下半身はふんどしのみ&ケツ出しスタイルで暴れまくる。死んだときもケツ出しなのがカッコイイというか哀愁を誘うというか、とにかく最高です。マジで。

 というわけで、わたしは『七人の侍』のBlu-rayも持ってるので、実際のところいつでも見られるのだが、やっぱり映画館の大スクリーン&大音響で観るのは格別ですね。4Kリマスターもホントにクリアで見やすかったと思う。
 そしてこの映画でのポイントの一つは音楽ですよ。不安をあおるような重低音だったり、有名なメインテーマだったり、この『七人の侍』という作品は、その映像だけでなく音楽も非常に素晴らしいと思う。なんとなく、不協和音めいた重低音を響かせる音の使い方は、現代のChristoper Nolan作品の、Hans Zimmer氏による音楽を連想させるような気がした。もちろん、オリジナルはこちらですが。
 しかし……やっぱり、黒沢映画は最高ですね。もし、今まで『七人の侍』を劇場で観たことのない人がいたら、マジで今すぐ、「午前十時の映画祭」のチケットを予約すべきだと思う。大丈夫、あなたがいなくても会社は回りますよ。上映時間が3時間を超える作品なので(途中で10分インターミッションアリ)、10時から始まって14時近くまでかかるけど、この映画を見るためなら、ちょっと会社を休んでも劇場へ行く価値はあると思う。今回を逃したら、まあ、当分映画館で観る機会はないと思うし。あと週末は1回しかないので、次の週末にでも、劇場へ是非観に行って欲しいと思う。

 というわけで、もう全然まとまらないけど結論。
 黒澤明監督による『七人の侍』は、誰が何と言おうと超・傑作です。わたしは、黒沢映画を見ていない人間を映画好きとは一切認めません。当たり前でしょ。ありえないっすよ。黒沢全部見てから出直して来な。とわたしは常日頃申しております。最高です。4Kマスター、Blu-ray出たら買うべきかもな……。つかあれか、ちゃんと最新のAVアンプを買って、音響もきっちりそろえるかな。黒沢映画を観るために、なんかまた無駄遣いしたくなってきましたよ。わたしのアンプはもう20年物の、DOLBY SURROUND PRO-LOGIC2が出た頃のやつなんだよな……最新マシンが欲しい…・・・。以上。

↓ 配信で観てもいいですが、今、せっかく劇場で観られるこの機会を逃しては、映画オタは名乗ってはいけないと思います。
七人の侍
三船敏郎
2015-04-22


 

 12月に公開されるSTAR WARSサーガ初めてのサイドストーリー『ROGUE ONE』。
 全世界がその公開を待ち望んでいるわけで、当然わたしも大変楽しみに待っているところだが、その監督、Gareth Edwards氏は、1975年生まれの弱冠41歳のイギリス人である。彼は、2014年公開の『GODZILLA』を全世界で大ヒットさせた手腕を見込まれての、STAR WARSサーガ起用となったわけだが、実際、その映像は非常に素晴らしく、ホント、『ROGUE ONE』が早く観たいものである。
 そして、その『GODZILLA』のプロジェクトに起用されたきっかけとなったのが、2010年(日本では2011年)公開のデビュー作『MONSTERS』という低予算映画の出来が良かったから、という話も有名であろう。低予算、っていくらぐらいだと思いますか? Wikiによれば、なんとたったの50万ドルだそうですよ。えーと、今はまた円高基調で1US$=103JPYぐらいなので、要するに5,000万円チョイ、ってことである。 
 わたしも当然その経緯は知っていたのだが、お恥ずかしいことに、肝心の『MONSTERS』は観る機会がなくて、今まで未観賞のままであったのだが、先日、WOWOWで放送があったので、録画し、今日、さっそく見てみることにした。おそらくは、WOWOWでは来月STAR WARS7作一挙放送があるので、『ROGUE ONE』公開に合わせて、観てない人は観とけよ、という配慮をしてくれたための編成であろうと想像する。まったく、WOWOWは気の利いた奴だぜ。大変ありがたし、である。
 そして観てみた結果、なるほど、確かにこれは……非常に特徴のある映画で、正直わたしの趣味ではなかったが、Gareth Edwards監督の特徴的なポイントが多く、観どころはかなり多い映画であることを確認した次第である。ひとつ確実に言えることは、このクオリティを5,000万で撮れる監督は、日本には一人もいないと断言できる。下手をすると世界にもいないかもしれない。それほど、驚くべきハイクオリティな映画であった。

 実は、わたしはこの映画のストーリーを全然知らずに観始めた。上記予告もチェックしていない。なので、まっさらな状態で観たのだが、物語自体は、実は結構大したことがない。そして、改めて上記予告を見ると、超・重大なネタバレが含まれているのだが、これは観終らなくては意味が分からないと思うので、上記予告を見ても全く問題なしです。
 物語はもう、上記予告の通りである。まず冒頭に、字幕で状況が説明される。曰く、「6年前、地球圏外に生命体の存在が確認された。NASAの探査機が、そのサンプル採取に成功、地球に帰還するが、大気圏再突入の際に探査機がメキシコ上空で大破した。その結果メキシコ北半分~USA国境までが「INFECTED ZONE(汚染地帯)」として封鎖された」そうである。で、メキシコに残された金持ちの娘(新聞社の経営者の娘・30代?)と、その娘を無事にUSAへ戻せと業務命令を受けた男(新聞社のカメラマン)が、何とか国境を目指して逃げ延びる、というようなお話である。ま、ありがちというか、別にストーリーにはひねりはないですわな。ただ、ストーリーの中で、USAがメキシコとの国境に巨大な壁を建造して封鎖した、というのは、まさしく今、大統領選を戦っている不動産王のエロオヤジが言ってる政策そのものなので、その点は、すげえというか、ちょっと興味深かったです。どっかの巨人が出てくる漫画にも似てますな。
 そして、キャラクターの方も、わたし的には、正直、段取りも悪く愚図で、観ててイライラするようなダメ男だし、娘も、なんでまたメキシコにいたのかさっぱり説明されない(一応、婚約者が嫌いで逃げてきたってことかな?)ので、全然共感できず、その点ではあまり物語に入り込めないような作品ではあった。
 しかし、である。映像がすごいのだ。いや、正確に言うと、画がすごい、すなわち「演出」がすごい、といった方がいいのかもしれない。そして、この映画を観て、なぜGareth Edwards氏が『GODZILLA』の監督に抜擢されたのか、その理由は非常によくわかった。本作のキモとなる、「MONSTRES」、すなわち地球外生命体の観せ方が、超上手いのである。ポイントは、わたしが思うに二つある。
 1)チラ見せの巧みさ
 これは、まさしく後の『GODZILLA』でも光っていた演出だが、なかなか全体像を観せない、例えば夜で爆発の光でちらっと見せたり、デカすぎて一部だけちらっと見せたり、と、そのチラ見せ具合が非常に巧みで、これはホントにセンスの問題だと思う。この監督は本物だ、と誰しも感じる出来栄えだと思う。
 2)CG力も高い
 CGの最大の威力は、要するに「本物にしか見えない質感」にあるとわたしは何度もこのBlogで書いてきたが、到底5,000万で作った映画とは思えない質感である。一部は、確かに5,000万なりの、んん? と思うような場面もあったにはあったが、まあ、とにかくこの予算でこれだけのクオリティは、絶対に今の日本ではできないと断言できる。わたしの感覚では、この監督の画のトーンは、同じく長編デビュー作ながらいきなりアカデミー作品賞にノミネートされた『DISTRICT9』(邦題:第9地区)で世界を仰天させたNeil Blomkamp監督に非常に似ている。 両者ともに、フツーの見慣れた風景にいきなり異物が入り込んでいる画が特徴的で、地球外生命体だったり、ゴジラだったり、あるいは宇宙人だったり、そういった「異物」が全く違和感なく地球の普通の風景に溶け込んでいるのがすごいと思う。既に公開されている『ROGUE ONE』の予告でも、やっぱりそういった「普通の風景の中の異物」という特徴はものすごく発揮されていると思いませんか? AT-ATが南国っぽい林の中をのっしのっしとやってくるところとか、とてもGareth監督らしい見せ方だと思うな。巨大感も申し分ないし、今までのSTAR WARSの中でも、今回ほど地球っぽい画はなかったような気がしますね。
 ところで、エンドクレジットで初めて知ったが、本作『MONSTERS』では、監督だけでなく、脚本も撮影も編集もGareth Edwards監督本人がやっているそうだ。なるほどね、確かに、画や演出のこだわりを思うと、撮影も編集も自分でやってしまったというのは実にうなずける話だと思った。
 まあ、低予算で映画を撮るには、とにかく、キャストやスタッフを減らし、ロケも極力減らすのが常套手段だと思うが、たしかにメインキャストは男と娘の二人だけ、そして主要クルーは自分だけ、というのは、ちょっと極端すぎるけど理にかなっているし、だからこそ自分のこだわり全開で製作出来たのだろう。この人はすげえや。

 というわけで、わたしとてはようやく観ることができた『MONSTERS』だが、実はこの映画、『MONSTERS:Dark Continent』というタイトルで続編が製作されていて、今回WOWOWではそちらの放送もあったので、わたしも勢いに乗じてその続編も一気に見てみた……のだが、こちらは残念ながらかなり微妙作であった。物語的には基本的な世界観は踏襲しているものの、地球外生命体が全地球規模で拡散してしまった世の中になっていて、舞台は中東アラビア圏内に移っており、US-Army所属の軍人の話であった。例えて言うと、1作目がSir Ridley Scott監督の『ALIEN』であり、続編はまさしくJames Cameron監督の『ALIENS』であった。要するに、「今度は戦争だ!」ですな。なので、かなりトーンが違う。全く見るべき点がない、とは言わないけれど、まあ、別物です。ただ、イスラム圏での米軍の行動ということで、非常にアクチュアルというか、いろいろ物語に込められた、ある種政治的なメタファーなんかは、ちょっと面白いと思うので、ま、こちらは強くはお勧めしないけれど、『MONSTRES』に続編があるんだ!? と興味が沸いた人だけ見ていただければ十分かと思う。

 というわけで、結論。
 いよいよ公開となる『ROGUE ONE』 だが、その監督Gareth Edwards氏のデビュー作、『MONSTERS』をようやく観ることができた。その映像は、とても5,000万円で作ったとは思えないハイクオリティなもので、その演出力、センスは本物だと確認できるものであった。はっきり言って、わたしは悔しい。5,000万で、この映画以上にすげえ作品を撮れる自信がある日本人がいたら、わたしが全額出資してもいい。やってみろ、と言いたいね。そして、世界に殴り込みをかけようぜ!!  はーーー……くそう。すげえ作品を観ると、ほんと、悔しさがこみ上げますな。以上。

↓ こちらがその続編です。 実際、センスは悪くない、つーか、いい。が、脚本が微妙かなあ……。
モンスターズ/新種襲来 ブルーレイ&DVDセット(初回仕様/2枚組/特製ブックレット付) [Blu-ray]
ジョニー・ハリス
ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント
2016-05-11
 

 毎週木曜日は今週の『鮫島』ニュースのお時間です。
 つーかですね、今週はまるでネタがないので、さっさと本題に入ります。
 というわけで、まずは、いつも通り今週の週刊少年チャンピオン2016年47号の概況です。
 ■巻頭グラビア:今週はグラビアナシ。代わりに、『ペダル』の折り込みポスター付録です。
 ■『弱虫ペダル』:記録に残らない小さな峠でのレースの巻。坂道くん、あんた明日もレースだぞ?
 ■『刃牙道』:本部のおっさん、敗北!? の巻。なーんだ、鎖帷子か。武蔵編いつまで続くのやら。
 ■『囚人リク』:変態・大場、ついに本気に!の巻。この変態オヤジ強すぎです!!
 ■『少年ラケット』:ヨル君&イチロー君、ついに再会の巻。ヨル君、心折れてる場合じゃないぞ!
 ■『Gメン』:新展開。元ネイション土井、ラップバトルの巻。これ、続くのか……?
 ■『六道の悪女たち』:第三の女子も六道君に惚れちゃったの巻。いいですねえ!
 ■『BEASTERS』:オオカミのレゴシ君、運命のウサギの彼女に出会うの巻。大変イイ!!!
 ■『放課後ウィザード倶楽部』:バザールでのバトル開始か?巻。ほんと、どんどん絵が上手になってきたと思う。

 とまあ、こんな感じの週刊少年チャンピオンでありました。

 さて。では、今週の『鮫島』ニュースのお時間です。
 先週は鯉太郎VS【闘海丸】の立ち合いからのハイスピードバトルが描かれましたが、今週はバックを取った鯉太郎の攻勢から始まります。
 とにかく、【闘海丸】くんの「右」だけはマズイわけで、スピードで圧倒する鯉太郎。そして背後を取り、一気に押し出しを狙います。 【闘海丸】くん「ヤッベェエェ つーかスピードが尋常じゃねー」とピンチ!! NHKアナウンサーも思わず「さすがにこうなってしまえば体格差があろうと問題なしか・・・闘海丸も必死で踏ん張るが さすがに万事休すか!!」と声を張り上げます。
 そこに将太くんの絶叫が!! 「んなモン押し潰せ――――!!」
 後ろに倒れ込むように、鯉太郎に伸し掛かる【闘海丸】くんですが、鯉太郎もそれを読んでいた!! ここで切り返しが炸裂―――ッ!! これはまさしく、前作『バチバチBurst』の(10)巻で、幕下優勝決定戦を戦う鯉太郎が【闘海丸】くんにかました技です!! 将太くんも思わず「それがあったーーー!!」と叫ぶ!
  しかし、【闘海丸】くんも今や小結を張る男。
 「知ってんよ・・・一度喰らってる・・・」と冷静な対処。タイミングよく体を回転させ、体勢を立て直し、その勢いのまま得意の右上手を取りに行きます。この展開に、鯉太郎は瞬時に決断します。
 「クッ・・・どうする・・・一旦下がるか・・・いや・・・・・・ここは・・・」
 と前進、ブチカマシで迎撃します。しかしそれを堪えて強引に右上手を取る【闘海丸】くん。
 将太「よっしゃ――!! もらった―――!!」
 常松こと【松明】「クッ なんで前に・・・選択ミスですよ!」
 と、両リングサイド陣営の反応も明暗を分けたかのような反応です。わたしとしては、常松がまるで男塾の雷電めいた役割になっていて笑えますw
 しかし、鯉太郎も黙って右上手を取られたわけではありません。さらに踏み込み、きっちりと得意の「左下手」をつかんでいました。虎城理事長も思わずニヤリ。「勝負に出たか・・・」とつぶやきます。
 鯉太郎「弱気になるな・・・左下手は俺の型・・・たとえ闘海丸(コイツ)に右上手(とくい)を取られようと 俺の左下手(とくい)で勝つ…!!」
 【闘海丸】「ブハハハ どこまでいっても真っ向勝負だな・・・だから鮫島(オメー)は好きなんだ」
 というわけで、両者組み合って一瞬土俵上は静止します。そして一気に押しに出る鯉太郎。それを強力な上手投げで一瞬で攻守逆転、一気に土俵ぎわに寄る【闘海丸】。ぐおおおお…と全身を鯉太郎に覆いかぶせ……!!!
 と、今週はここまででした。
 はーーー血圧上がるわ……どちらが勝つにせよ、激しい戦いに心身ともに削れますね。まあ、戦いとしてはあと1週2週で決着でしょうか。単行本(9)巻が第71話~79話の計9話収録だったので、次の(10)巻が80話~88話、その次(11)巻が89話~97話になるはずなので、あと4話分で【闘海丸】戦と九日目のその後の模様が描かれることが予想されます。しかし、鯉太郎の体の状態が心配ですなあ……最後まで、応援したいと存じます!!

 というわけで、最後に、毎週のテンプレを貼って終わります。
 <場所:9月場所>
 【鮫島】東前頭十四枚目(5月場所で東前頭十枚目)
 【白水】西小結
 【松明】東前頭六枚目。常松改め。本場所は7連勝中
 【大吉】序2段【豆助】序ノ口【目丸手】序二段【川口】不明
 ------
 1日目:【飛天翔】西前頭十二枚目。石川改め。
 2日目:【宝玉光】西前頭十一枚目
 3日目:【舞ノ島】西前頭十枚目
 4日目:【巨桜丸】西前頭九枚目。新入幕力士
 5日目:【岩ノ藤】東前頭七枚目 
 6日目:【大山道】西前頭七枚目
 7日目:【蒼希狼】西前頭六枚目
 8日目:【丈影】東前頭四枚目。横綱の弟弟子
 9日目:【闘海丸】西小結。いよいよ三役戦!! 
  --------
 【王虎】&【猛虎】共に東大関
 【天雷】東関脇  【田上】番付不明※王虎の付け人をやってることが判明!!
 【闘海丸】西小結 他の力士は表にまとめた記事を見て下さい。
 【泡影】東横綱。第72代。29場所連続優勝中。63連勝中。モンゴル人。

 というわけで、結論。
 今週はVS【闘海丸】戦のハイスピードバトルから、両者得意の右上手&左下手の型になり、そこから最後の寄りまでが描かれました。いよいよ勝負は大詰め。来週あたり決着かもしれません。そして次は誰と戦うのかなあ……三役……うーん……どうでしょうか……ま、非常に楽しみです!! しかし、ほかの力士の星取り状況はどうなってるんすかねえ……その辺もそろそろ教えて下さい、佐藤先生!! よろしくお願いしゃす!! 以上。

↓ お、『ペダル』の新刊は来月のようですな。まだ書影なしですが。
 

 先日、どうして土日の日中のTVはこんなにもつまらないんだろうか……? と片っ端からチャンネルを変えながら、しみじみと発見し、絶望したわけだが、どうも最近、翌週のウィークデイの夜にやる番組の、そのまた紹介番組を土日に放送していることが多いような気がした。そして肝心のものは見せず、やけにCM回数も多くて、ああ、こりゃあもう、TV没落も止むねえことですなあ……ということをぼんやり思った。
 なので、なんか映画でも観るか、と、WOWOW放送を撮りためてあるHDDを捜索したところ、ひとつ、邦画で、劇場で観たかったのに見逃していて、そして録画したこともすっかり忘れていた作品を見つけたので、よっしゃ、コイツを観よう、と再生を始めたのである。
 タイトルは、『駆込み女と駆出し男』。2015年公開の松竹映画であり、 原作は確か井上ひさし先生だったな、そして主演はわたしの大好きな戸田恵梨香ちゃんだったはず……と、そんなあやふやな記憶しか持ち合わせず、もちろん物語が鎌倉の東慶寺、通称「縁切寺」を舞台にした作品であることは知っていたけど、ズバリ、それ以外は何も知らないので、さて、面白いか知らん? という感じで視聴を開始したわけである。

 のっけから結論を言うと、実に面白かった。つか、意外と、というと大変失礼だが、とても感動した。危うく泣けそうなぐらいに。
 まあ、まずは上記予告を観ていただきたい。この予告を観ると、大体の雰囲気は分かると思う、が、正直全く物語は伝わってこないと思う。わたしは、もちろん「駆込み」なる制度が存在していたことは、一般常識としては知っていたが、この予告でもチラッとだけ説明されるような、「駆込み」の作法があるなんてことは全く知らなかったので、冒頭からもう、へぇ~、の嵐である。
 まず第一に、江戸時代にそれほどまで「離婚」が多かったことなんて知らなかったわけだが、想像するに、家のための結婚が普通であった当時、女性たちは子供が産めなくてはあっさり離婚されてしまう、ようなことは何となく想像できる。武家の事情なんかは、あまたの時代劇でもお馴染みですな。たぶん、そういった「夫から離婚される」場合が多数を占めていたはずだし、その数は、確かにふと考えると、今より多かったかもな、とは思う。なにしろ女性(妻)は、夫の所有物のようなものだったのだろうから。ポイ捨ては十分考えられそうだ。現代感覚からすればまったくもってひでえ話ですが。
 しかし、女性から離婚を申し立てることはできないわけで、かと言って女性たちにも別れたい理由は無数にあっただろうことも、想像に難くない。そんな時の最終手段(?)がいわゆる「縁切寺への駆込み」であろう。そして、その「駆込み」には、厳密なルールがあって、この映画ではそこをきちんと説明してくれるわけである。これがなかなか興味深い。ちなみに時代背景としては、本作は1841年ということで、明治ももうすぐ、の幕末直前という頃合いを舞台としていました。

 ◆STEP01:駆込み成就
 どうやら、Wikiによるといわゆる「縁切寺」は鎌倉の東慶寺と、群馬の満徳寺の二つがあったそうだが、その山門の内側に入ると、「駆込み成就」らしい。そしてその際、身に付けているもの(草履orかんざし)を投げ込んでもOKらしい。これって常識ですか? わたしは知らなかった。
 ◆STEP02:聞き込み調査
 そして、駆込みの発生が確認されると、山門の門番が当人を、「御用宿」へ連れて行き、事情の聞き取りが行われる。この時、仲介人(御用宿の人)は、相手方の旦那と、親元(あるいは名主)にも話を聞くみたい。そして大体の調べが終わったところで、両者を対面させる。この時、夫サイドが素直に「離縁状」を書けば、もう晴れて離婚成立、となるわけだけど、基本的に、「妻に駆込まれた男」はそりゃあもう激怒しているので、ふざけんな、となるわけだ。
 ◆STEP03:入山~下山
 で、ふざけんな、の場合、女性は縁切寺に「入山」することになる。2年を寺で過ごし、2年後、再び夫が呼び出されて、また御用宿で話し合いになり、2年の時をかけて、女性側からやっぱりあんたが好き! 離婚やめた! となることもあるようだが、基本的に2年後のこの話し合いの場は、夫が離縁状を強制的に書かなくてはならない場となり、晴れて離婚成立、となるようだ。この2年後の場では、夫に拒否権はもうないそうです。どうですか、知ってましたか、こういう段取りがあるって。わたしは残念ながらまるで知らなかったっす。
 ◆STEP03番外編:入山後の女性の日々の暮らし方
 わたしは入山後の女性たちの毎日にも、非常にへえ~と思ったことがあった。どうも、入山時にお寺に「格付け料」という名目の金を払わないといけないらしく、その金額によって、まさしく「格付け」されるんだな。で、一番上の格だと、寺の雑事なんて何もしないで、日々歌を稽古したり書物を読んだりの優雅な毎日を送ることができ、一番下の格だと、掃除洗濯炊事など、要するに住み込みの下女的な扱いになる。なんでも、武芸(なぎなたと弓)はどの格も修行しないといけない必修科目みたいですな。

 とまあ、こんなことになっているわけで、これは明確な「法制度」の一つのようだ。だから手に負えない場合はちゃんとお役人も出張って来る。調停人がいることなんてまるで知らなかったす。

 で、物語は、真面目な「じょご」という名の女子と、どうも訳ありな「お吟」さん、それからとある武家の侍ガール「ゆう」さんの3人の「駆込み」を中心に語られていく。「じょご」の場合、旦那は製鉄業を営む町人で、じょごちゃんも結構腕のいい職人なんだけれど、旦那がなかなかのクソ野郎で、ズバリ言えばDV野郎で逃げてきたという背景があり、彼女の目から見た日々がつづられていくわけだが、まあ、大変健気で頑張り屋さんないい娘さんなわけですよ。演じたのは、戸田恵梨香ちゃんで、実に可憐で最高でした。わたしはこのBLOGで、散々、「幸薄い女子」に魅かれるというか大好物であることを表明してきたが、今回もまあ幸薄いこと甚だしい。戸田恵梨香ちゃんの表情は本当にグッとくるものがありますな。マジ最高のしょんぼりフェイスでした。
 そして、「お吟」さんを演じたのが、満島ひかりさん。お吟さんのキャラも非常に良かったですな。最初の登場時は、なんなんだこの人偉そうに、と思うじょごちゃんも、だんだん親しくなっていって、ラスト前でのお吟さんとの別れのシーンは、大変感動的でした。わたしが泣きそうになったのはこのシーンです。「ずっと妹だと思ってたよ」と告げるお吟さんにはとてもグッときましたね。それから、お吟さんの旦那を演じた堤真一氏も、最後はとてもカッコ良かった。なかなかの漢でしたな。
 で、侍ガールの「ゆう」も、まあひどい目に遭ってきた女子で、実に幸薄く、大変魅力的でした。演じたのは内山理名ちゃんですね。わたしはこの方がまだ10代の頃に街でばったり見かけたことがあるのだが、超可愛かったことを覚えてます。すっかり落ち着きのある、イイ女になりましたな。キッとしたまなざしが印象的ですが、今回もつらい過去を背負い、やや運命に囚われてしまった気の毒な女子を大変お美しく演じてくれたと思います。最後はすっきりとした顔になって、良かったね、本当に。
 こういった、美しく可憐で不憫な女子を相手に、ひとり奮闘する「駆出し男」が大泉洋氏で、もういろいろな映画やドラマに出演しているけれど、やっぱり上手い、と言わざるを得ないでしょうな。はっきり言って、いつ見ても同じ大泉洋氏、だし、今回も弁舌で乗り切るちょっとお調子者な男ということで、まあ、誰もが思い浮かぶ大泉洋氏の「いつもの」役のような気がするのに、なぜか引き込まれてしまう。きっとこれは、演じているキャラクターというよりも、大泉氏本人の人柄?のようなもののせいなんじゃなかろうか。要するに、大泉氏は実際イイ奴で、なんか誠実さのようなものが、役を支えてるんじゃないかな、という気がしました。それは現在放映中のNHK大河『真田丸』でも滲み出ているように思う。きっと、非常に真面目な男なんでしょうな、大泉氏は。現在の日本の男優の中でも、非常に独特な存在感がありますね。ちなみに、なぜ「駆出し男」なのかは、見ればすぐに分かりますので説明はしません。
 あと、キャストで備忘録として記しておきたいのが、二人、わたしの愛する宝塚歌劇出身の元ジェンヌが出演していたので、ちょっと驚いた。陽月華さん(通称うめちゃん)が、東慶寺の院代を務める法秀尼様を演じ、その直属の部下(?)である法輪尼様を演じたのが大鳥れいさん。二人ともわたしは現役時代を知らないので詳しくないけど、うめちゃんは最初に登場したところですぐに分かった。わたしは出演されていることを全然知らなかったので、ちょっとびっくりした。

 というわけで、もういい加減長いので結論。
 ふとしたきっかけで観てみた『駆込み女と駆出し男』という映画だが、まったく予期せぬ感動作であった。大変面白かったと思う。しかし、この映画の興行成績としては、どうやら10億に届かなかったようで、8億~9億ぐらいで終わってしまったようだ。はーーー。劇場に観に行くべきだったなあ……今年の『殿、利息でござる!』のように、非常に面白く、また知らないことを教えてくれる良質な映画で、松竹の映画作りは地味ながらさすが、ですな。機会があれば、ぜひ多くの人に観ていただきたい映画だと思います。全然まとまりませんが、以上。

↓ 配信で観られますよ!

↓そしてわたしとしては、原案とクレジットされている井上ひさし先生のこちらが大変気になる。「オール読物」で11年にわたり連載された作品だそうですね。
東慶寺花だより (文春文庫)
井上 ひさし
文藝春秋
2013-05-10

 先日、Simon Urbanという作家の『PLAN D』という小説を読んで、まあすげえ読みにくいし内容もイマイチだなあ……と思ったことをここで書いたが、同時に、電子書籍で買ったのが、本書『The First Fifteen Lives of Harry August』(邦題:ハリー・オーガスト、15回目の人生)という小説である。結論から言うと、こちらは超・面白くて、読んでいる間中ずっとドキドキし、ハラハラし、大変興奮したわけであります。いやー、この小説は面白い!!!
ハリー・オーガスト、15回目の人生 (角川文庫)
クレア・ノース
KADOKAWA / 角川書店
2016-08-25

 この小説は、いわゆるリプレイものである。『僕だけがいない街』にも通じるような、輪廻転生的な、SF界ではある意味使い古されたモチーフのアレである。死んでも、それまでの記憶を保持したまま、もう一回生まれ変わってやり直し、的な。けど、一つ特徴的なのは、一度死んで、生まれ変わると、まさしく自分の誕生からやり直し、リプレイになる点で、生まれたばかりの段階では当然前世の記憶はなくて、3歳ぐらいからだんだん思い出し始めるという設定になっている。
 主人公「ハリー・オーガスト」は1919年、北イングランドの辺鄙なところの駅のトイレで産み落とされ、母はその時の出産状況がひどくて失血死(?)してしまう。背景としては、母はとある上流階級のメイドだったが、そこの主人にレイプされて主人公を身ごもり、当時の社会的通念からしてスキャンダルなわけで、お屋敷を追い出され、一人孤独に出産、という感じである。
 で、その後、そのお屋敷に仕える夫婦が養子として養ってくれ、大人になる。で、最初の人生は普通に、困難はあっても、まあある程度の幸せを得て1980年代後半に死ぬと。で、気が付くともう一度生まれていて、2回目の、同じ人生を送りつつあることに気が付き、10代になる前から精神がおかしいと周りからみなされてしまって、精神病院に送られ、10代前半で自殺に至る。
 そして3回目の人生は、ようやく自分の謎に気付き始めて、おとなしく平穏に暮らすと。宗教に回答を求めて世界を放浪したりもする。そして未来を知っているのでそれなりに財もなし、エンジニアとして知識も増やしていく。そしてまた死を迎える。
 で、4回目の人生が最初の転機になる。1回目3回目の人生では、ともに自分は70歳に近くなるとがんにかかって死ぬことになっていたので、医者になって4回目の人生を送るのだが(3回目の人生でいかなる宗教=いかなる神も答えをくれなかったので、今回は医学生理学に答えを見つけようともした)、とあるひどい目に遭うことで、どうやら自分と同じく、何度も死んでは生き返る、を繰り返している人々がこの世にはいて、どうやらそういった人々が「クロノス・クラブ」なる組織を設立・運営しているらしいことを知る。
 この「クロノス・クラブ」が出てきてから、俄然物語は面白くなってくる。言葉では説明するのが非常に難しいのだが、メンバーは、「伝言ゲーム」で過去や未来と情報のやり取りができるんだな。つまり、主人公ハリーは1919年生まれで、場合によっては21世紀初めまで生きるわけだが、例えば2001年以降に死ぬとすると、911を体験しているわけだ。で、その記憶を再度生まれ変わった時に、たとえば1930年ぐらいに、その時80歳(=つまり1850年生まれ)になっている同類のクラブメンバーAさんに、「2001年のNYでは大変なことが起きるんだよ」と伝えると、そのAさんが死んでまた生まれ変わった1850年に、その時代にもう死にかかってる先輩メンバーBさんに同じことを伝えられるわけだ。で、Bさんはまた80年ぐらい前の自分の生まれた頃に戻って、1770年頃の同類に、「いやー、2001年のNYは大変な目に遭うらしいぞ」と伝えられるのです。同じように、過去からも伝言が来るというわけです。
 で、クラブの掟は、「歴史に干渉しないこと」。これは、遠い昔に(だっけ?)、歴史を変えようとした奴がいて、一度世界が破滅しかかったことがあるかららしい。要するに、未来の科学知識なんかが入ってきてしまうと、人はそれをどんどん吸収して、歴史が加速してしまうわけだ。便利なものを使わないわけないからなあ、その辺は何となく、理解できるような気がする。作中でも、1970年代にもう今の我々が使っているようなPCや携帯が発達してしまう世界が出現してしまうけれど、まあ、一度便利なものを使ってしまったらもう、取り返しがつかないというか、決してよりよい世界になるとは考えられないようには感じますな。直感的に。
 なので、クラブは歴史に干渉せず、が基本で、主人公ハリーの2回目の人生のように、事情が分かっていないで混乱している子供を探して保護すること、が一番のメインミッションになっているらしい。もちろん未来が分かっているメンバーは金を稼ぐのは簡単なので、それなりに金を持っている場合が多く、そういった財を成したメンバーからの寄付でクラブは運営されているそうだ。
 こういった、主人公のような人々は、自らを「カーラチャクラ」あるいは「ウロボラン」と呼んでいる。巻末の大森望氏の解説によると、「カーラチャクラ」とはサンスクリット語で「時の輪」を表す仏教用語だそうだ。主人公ハリーが、 自らの謎の答えを求めて様々な宗教の修行・勉強をするのも、チラッとしか語れないけれど読んでいてとても面白いポイントだ。
 2回目の人生は、自らの謎を受け止められず自殺、3回目の人生は宗教・神に答えを求めるも、キリスト教→イスラム教→ユダヤ教→ヒンドゥー教→仏教と渡り歩いてもダメ。4回目の人生では医学を学んで医者になっても、途中で大変な事態に遭い、結末としては自殺。ただし、クロノス・クラブとの接触に成功。6回目の人生では物理学の勉強も始める。みたいな感じで、なんというか、かなり真面目な生き様がわたしは読んでいて大変好印象を持った。
 そしてその6回目の人生では、23歳までに最初の博士号を取り、若くして「マンハッタン計画」にスカウトされるもその誘いを断り(なにをどうしようと原爆は完成してしまうし投下れてしまう。おまけに施設に監禁されるし、当時の放射線知識は十分でなく管理も杜撰なので断った)、ケンブリッジの専任講師を務めていたのだが、そこでのヴィンセントという一人の男との出会いが、その後15回目までの人生に大きく影響することになる。
 ヴィンセントも、「カーラチャクラ」であり、そしてクラブの「何もしない」方針を嫌悪していて、自ら未来を変えようとする男で、このヴィンセントと主人公ハリーの、何度も人生を繰り返しての闘争(?)が、この物語の主軸だ。まあ、ヴィンセントの野望は、正確に言うと未来を変えることでは全然なく、「量子ミラー」なるものを作って万物の謎を「自分が生きているうちに」解きたい、その結果未来が変わってもどうでもいい、というもので、実際、主人公ハリーも、一時ガッツリ協力したりもする。ヴィンセントとハリーとの、推定数百年、8人生分(9かも?)をかけた関係は、非常に読みごたえバッチリだ。唯一の親友であり、不倶戴天の敵。一方が善で他方が悪、というわけでもない。純粋に、「互に相容れない」二人。共に天を擁くことはない。こういうある種の冷徹な関係性はやっぱり鉄板の面白さですね。
 また、サイドで語られる、主人公ハリーと、養父・実父との関係も、非常に冷徹ではあるけれど、少なくともわたしには感覚的に非常に共感できるもので、非常に大きなポイントであるように思えた。何度人生を繰り返しても、結局許せないものは許せない。そして、やがてもうどうでもいいことになってしまう。何度も同じ結果になる虚しさを抱えて、人は数百年生きるとしたら、もうそれは、いわゆる無間地獄なのではなかろうか? そんな長大な時を過ごす主人公ハリーの心中は、とてもわれわれ「1度きりの人生」しか送れない普通人には、到底想像も及ばないものだろうと思う。陳腐な言葉だけれど、人生ままならねえもんですな。ホントに。
 
 というわけで、書き始めると止まらないので、もうこの辺にしておくが、とにかく、本作は設定が非常にしっかりしており、破たんもなく、また、時系列が若干飛び飛びの記述になっているけれども、かと言って混乱することなく読める構成になっていて、非常にレベルが高い作品だと思う。主人公ハリーのキャラ描写も非常にいい。生き過ぎた主人公が、数百年以上生きてきたことで、何を得て、何を失ったのか。哲学的でもあって、わたしとしては読後感も非常に良かったと思う。カタルシスという意味でのすっきり感も、ラストは非常に満足である。
 最後に、作家について記しておこう。これは巻末の大森望氏の解説を読んでもらえば十分だろう。わたしもインターネッツという銀河に捜索の手を放ってみて、だいたい同じことを知ったが、なんと著者であるクレア・ノース氏は、27歳の女性である。なんでも、14歳でライトノベルデビューをしていて、既に結構作品を発表している作家さんで、今回は名前を変えて本作の執筆にあたったそうで、それはライトノベル作家の名前では、その名前だけで作品を正当に評価されないかも、という思いがあったそうだ。本人のWebサイトのFAQの3番目にも書いてありますな。なるほど、編集者からの助言もあったわけか。大したもんだなあ、というのはおっさんとしてのわたしの感想だけれど、この作家は本物だと思います。これは本物の才能だとわたしとしては断言したい。すげえや。

 というわけで、結論。
 クレア・ノースなる女性作家による『The First Fifteen Lives of Harry August』は、大傑作である。これは超おススメだ。映像化される可能性大だろうけど、まずは原作をきっちり読んでおいた方がいいと思います。間違いなく楽しめる、と思う。そしてこの著者の他の作品も読んでみたいですな。特に、2002年の14歳当時のデビュー作(?)『Mirror Dreams』は日本語訳もちゃんと出てたみたいですな。あーこれは読んでみたい!! 以上。

↓ これっすね。当然絶版なわけです。すげえ気になるわ……。
ミラードリームス
キャサリン ウエブ
ソニーマガジンズ
2003-02

ミラードリームス〈2〉目覚めのとき
キャサリン ウエブ
ソニーマガジンズ
2004-04

↓そしてこちらが最新作みたいですな。あらすじは面白そうです。誰の記憶にも残らない――両親でさえ存在を忘れた――少女、のお話らしいですな。

 

 というわけで、毎週月曜日は恒例の週末映画興行データですが、今回はおまけとして、『君の名』のグラフやらをせっせと作ってみたのですが……うーん、あまりぱっとしたものにならなかったかも。
 なので、今週はまずランキングをざっとまとめて、後半で『君の名』のこれまでの推移と今後の予測(テキトーです)を、グラフなどを用いて記録に残しておきたい所存です。

 では、 さっそくいつもの興行通信社の大本営発表です。

 1位:『君の名は。』が8週連続1位。累計で154億まで積んだようです。今後の動向など、詳しくは下の方で書いてみますので、グ―――ッとスクロールしてください。
 2位:『何者』が公開土日で1.82億稼いだそうです。元・東宝社員の朝井リョウ先生が直木賞を受賞した作品。残念ながら全く興味なしなので特に書くことがないす。たぶん、期待した数字よりかなり控えめ、だと思う。根拠はありませんが。この分だと、15億は厳しそうかも。
 3位:『ジェイソン・ボーン』が10日間で累計8~9億ほどでしょうか? 先週も書いた通り2007年公開の前作『ボーン・アルティメイタム』が最終16.5億ほど。そこまで行けるかどうか、微妙ラインでしょうか。今のところ、悪い数字ではないと言えそうな気がします。
 4位:『HiGH & LOW THE RED RAIN』が9日間合計で5~6億ぐらいかな、と予想。もうチョイ上かな? これも先週も書きましたが。7月公開の『The Movie』は結局20億を超えたらしいけれど、若干数字的には前作を下回る。15億に届くかどうか……まあ、届くのかな。この作品は、物販がどのくらい稼いでいるのか知りたいですなあ……。
 5位:『映画 聲の形』が30日間で17~18億あたりと見積もる。これはもうホントに大ヒットです。4位の『HiGH&LOW』もこの作品も松竹配給。今年の松竹は素晴らしいですね。株価もジリジリと上昇中です(※自分用メモ:松竹の証券コード9601)。
 6位:『GANTZ:O』が公開土日で1億弱、だろうか? フルCGによるアニメーション。実写映画もTVアニメもとっくにやったわけで、なんでまた今、『GANTZ』なのか、わたしは良く分かってませんが、何か理由があるんでしたっけ? 勉強不足でちょっと分かってません。
 7位:『ハドソン川の奇跡』が23日間合計で、11~12億ぐらい、と予想。当初予測の15億は何とかなりそうか……? この数字は、たぶん十分ヒットです。
 8位:『グッドモーニングショー』が公開9日間で2~3億ぐらいと見積もる。やっぱり、最終的に10億超は難しいかも……。
 9位:『SCOOP』が16日間で5億~6億ほどだろうか? もうチョイ行ってるか?この分では10億は超える……かどうか、ぐらいかも?
 10位:『永い言い訳』が公開土日で0.3~0.5億ぐらい? だろうか。金曜日公開なので、3日間合計では0.4~0.6億ぐらいと予想。ちょっと情報がなくてかなり当てずっぽうです。わたしは観たいと思ってますが、上映スクリーンが少なくて……行けるかな……どうだろうか……。やはり、モックンこと本木雅弘氏はカッコイイし芝居も大変上質だと思います。これは劇場で観たい……!!

 とまあ、こんな週末だったようです。 

 さて。では、『君の名』のこれまでの推移と今後の予測をちょっと真面目に考えてみようと思います。まずは、確定している8週目までの推移です。一応、比較作品として、今夏大ヒットの『シン・ゴジ』もグラフ化してみます。
kiminona_shingoji
 棒グラフが、毎週末の興行数値、折れ線グラフが累計値の推移です。
 (※青が『君の名』、グレーが『シン・ゴジ』です)
 (※『シン・ゴジ』は10Wで切っちゃいました)
 このグラフで分かること、というか、『君の名』で凄い点は、2~4週目の週末興行値が、最初の週末よりも伸びている点だ。『シン・ゴジ』のように、初週からだんだん落ちていくのがあくまで普通なのです。ここ最近で、初週よりも2週目3週目の週末興行値が伸びた例として、『ズートピア』なんかがありますが、『君の名』だって、いくら凄いとはいえ、2週目以降はそりゃ毎週落ちてきているように、「前週よりも伸びる」ということは、相当稀なわけですな。その例外が、お正月休みとGWとお盆の休み、ぐらいで、基本的には季節要因によって「前週を上回る」現象は起こるのが普通で、何もないのに「前週より伸びる」ことは非常にまれ、です。
 で、問題は前週からの「落ち率」と、累計値の「伸び率」になるわけですが、今度は数字として、表を作ってみたので、こちらをどうぞ。
◆週末興行値の減衰率
君の名 シンゴジ コナン ズートピア アナ雪
2W目週末 124.8% 86.4% 56.2% 114.3% 114.3%
3W目週末 97.7% 78.9% 82.8% 75.9% 101.0%
4W目週末 94.8% 89.3% 49.6% 118.7% 96.6%
5W目週末 80.1% 94.7% 65.8% 109.8% 99.0%
6W目週末 91.6% 87.9% 70.6% 87.0% 97.9%
7W目週末 88.7% 68.8% 73.9% 79.9% 87.6%
8W目週末 66.8% 90.7% 58.9% 81.1% 156.2%
9W目週末   50.3% 71.4% 70.4% 65.6%
10W目週末   88.2% 68.6% 85.7% 109.1%
11W目週末   69.5%   64.8% 86.8%
12W目週末   52.5%   89.3% 108.4%
↑これは要するに、上記グラフの、棒グラフ部分の落ち率、です。おまけとして、春に大ヒットした『名探偵コナン』『ズートピア』、それから『アナ雪』を入れてみた。前の週末の数字を100としたとき、週末興行はいくつで推移したか、という表です。ちなみに、『アナ雪』の8Wが急激に伸びたのは、GWの最初の週末です。
 そして↓こっちが・・・
◆累計値が、前週末からどれだけ増えたか、の割合。
君の名 シンゴジ コナン ズートピア アナ雪
1W→2W 303.0% 227.4% 208.9% 322.6% 305.3%
2W→3W 162.3% 157.3% 146.4% 207.7% 175.3%
3W→4W 135.8% 133.2% 136.7% 124.8% 146.0%
4W→5W 130.8% 117.6% 107.4% 122.0% 120.5%
5W→6W 115.1% 113.5% 104.8% 117.2% 115.5%
6W→7W 110.5% 109.1% 103.4% 113.2% 113.2%
7W→8W 108.5% 106.5% 102.3% 108.2% 120.7%
8W→9W   105.4% 101.4% 105.8% 116.5%
9W→10W   102.6% 101.0% 104.3% 108.5%
10W→11W   101.7%   102.8% 107.1%
 前の週までの累計値が、毎週どれだけ増えていったか、の数字なので、つまりこちらは、上記グラフの折れ線グラフの「傾き」に当たると言っていいかな(正確に言えば違うけど)。『君の名』や『アナ雪』なんかは、100億を超えているわけで、前の週の10%増し(=110%)となれば、10億の増加、になるわけで、母数が大きい方がこの数字は小さくなってもおかしくないのに、毎週毎週ぐいぐい伸びている(=折れ線グラフにすると「傾きが急」)のがよくわかると思う。

 以上を材料として、『君の名』が今後どれだけ伸びていくか、を推測したいのだが……もちろんのことながら正確に考えるには、「いつまで」「どのくらいの規模のスクリーン数で」「毎日何回」上映されるか、が重要な変数になってくるわけだけど、残念ながらその辺りはわたしにはさっぱり見当がつきません。
 ので、以下、かなりテキトーになってきます。結論から言うと、こんな感じかなあ? というのが次のグラフです。数字をあからさまにするのは外した時ダサいので、グラフの目盛りはあえて見せません。……うーん、それもカッコ悪いか……ま、いいや。
kiminona_zoopotia02
 こう予測したのは、今後の推移の割合(累計値の増加率)に、『ズートピア』の数値をあてはめてパクったからで、当然こんな風にはいかないと思うけれど、まあ、だいだいこんなもん、ではないかと予測しました。
 (※青が『君の名』の確定部分、ピンクが『君の名』の今後の予測、オレンジが『ズートピア』の実績)
 たぶんこの予測は、それほど見当外れではない、と根拠なく思いますが、プラスマイナス5億ぐらいで落ち着くような気がします。
 ただ、この予想は、『ズートピア』のように12週程度であらかた公開スクリーンは縮小する、ことを前提にした予測です。
 しかし、既にいつも情報をコメントして下さる映画ファンさんからの情報にある通り、年末までのロングランが決定しているようなので、もうチョイ上、で最終決着するかもしれない。また一方では、今週の落ち込みがちょっと大きいので、少し甘めの展望かもしれないな……難しい……まあとりあえずは、現時点でわたしの予測は、<最低ラインで180億>としたいと思います。
 あれっ!? 結構真面目にめんどくさいことしたのに、なんか出てきた答えは、直感的にこんなもんだろう、と誰もが予想しそうな数字っすね。なんか意味なかったな……。ま、しょうがないか。そう出ちゃったんだから。

 というわけで、結論。
 『君の名』は8週が終わり154億まで積んできた。わたしの予想では、あと4週で180億ぐらいに行きそうだという結果になったのだが、どうだろうな……今週ちょっと大きめに落ちてしまったので、180億は行くとしても、もうちょっと時間がかかるのかな……うーーん……急に自信なくなってきた……。以上。

 先日、わたしが愛用している電子書籍販売サイトBOOK☆WALKERにて大きなフェアがあり、買った電子書籍の値段の40~50%をコインバックする的なフェア(会員ランクによって返還率はまちまち)だったので、よーし、ごっそり買ってやるぜ!! と鼻息荒く、品定めをしていたわけだが、そういう時は普段はちょっと高くて気が引けるようなハードカバー単行本や、漫画のシリーズ一気買いなどをするのが、大人のたしなみである。ま、洋服バーゲンの時なんかも、普段手が出ない高いモノを買う、のが定石ですな。
 そんな中、わたしが大好きな早川書房から出ている翻訳モノで、なにか目ぼしいものはないかしら……と探していて目に留まったのが、ドイツミステリーの『プランD』という作品である。
プランD
ジーモン・ウルバン
早川書房
2016-06-09

 今年の初めに、「壁」によって分断されたベルリンを舞台とした映画『BRIDGE OF SPIES』のレビューをこのBlogで書いた時にも記したが、わたしは大学でドイツ語を専攻していて、おまけに1989年当時まさしく大学生だったわけで、「ベルリンの壁」の崩壊はリアルタイムで体験した世代だ。あの時は、当時わたしの周りにいた西ドイツ人の教授(おっさん×2+おばちゃん)も、スイス人の非常勤講師(綺麗な若い女子)も、オーストリア人の若い講師(冴えないあんちゃん)も、ドイツ語を母国語とするみんなは揃って、「東西統合はあり得ない」と、壁崩壊の直前まで断言していた。わたしはもう、この流れは止まらない、統合はあり得ると主張する一団に属して、何度も西ドイツ人たちと論争をしたのだが、戦車で人民をひき殺すようなどっかの国のような強硬手段に出ない限り、統合は止められない、と我々が主張しても、西ドイツ人(及びスイス人・オーストリア人)は、いや、東はまさしくそういうことをしかねない国だ、と結構ひどいことを言っていたことを覚えている。懐かしいというか、あれからもう26年、あっという間のような、遠い昔のような、わたし個人としてはなんだか妙な感慨がある。
 本作は、あの「統合」の後、再び「東」が門を閉じ、統合はなされなかったというIF世界を舞台としている。あらすじは、もうめんどくさいから、早川書房のWebサイトから勝手にパクって貼っておくとしよう。
1990年に東西ドイツが統一されなかった世界。そこでは東ドイツは〈再生〉という改革を経て、社会主義国として生き残っていた。2011年10月、東ベルリンの郊外で西側出身の教授が殺される。その手口は廃止されたはずの秘密警察のものだった。おりから経済的窮地を脱する決め手となる東西交渉が始まろうとしている。交渉の障害になることを怖れ、事件を速やかに解決すべく東西合同の捜査が開始される。だが捜査にあたる刑事の前には、不可解な壁が立ちはだかった……あり得たかもしれない世界を舞台に描く、異色のサスペンス。
 というわけで、当時のことを鮮明に覚えているし、Deutsche Demokratishe Republik=ドイツ民主共和国、略してDDR(デーデーエル)、通称「東ドイツ」の当時の事情を、おそらく普通の人よりも知っているわたしとしては、このあらすじを読んで、こ、これは面白そうだ!! と思い、購入に至ったわけである。全然関係ないけれど、先日TVで池上彰氏が、「国名に<民主>と入っている国は、たいてい民主的な国家じゃない」的なことを言っていて、その時わたしはまさしくDDRのことを思い出した。
 で、さっそく読んだ。
 ……のだが……これがまた超・読みにくい。この読みにくさは、主に3つの点から生じている。
 1)そもそもの文章が癖がありすぎ。
 これは、翻訳のせいではない、と言えるもので、おそらく原文がかなり癖があるものなんだと思う。日本語訳は、ある意味直訳になっていて、逆に元のドイツ語の構文が透けて見えるような翻訳になっている。なので、おそらく原文を読みながら、参考書としてこの翻訳を手元において確認しながら読む、といった、ドイツ文学科の学生には大変重宝する翻訳だと思うが、実際、単なる日本人読書好きとしてこの作品を読むと、まあとにかく読みにくい。
 文章的に、一つの名詞や動詞につながる形容詞的・副詞的な関係代名詞がすっごく数が多くて、つぎつぎつ積み重なっていて、一つの文章が、単純なのに妙に長い。これはもう、日本語には非常にしにくいというのは容易に想像がつく。ドイツ語として想像すると、意外とこういった関係代名詞や分詞構造の修飾語が連なるのは、普通によく見かけるのだが、それにしても長ったらしいし、はっきり言って読みにくいし、ズバリ、ストーリー展開を阻害していて、素人っぽいようにも感じる。わたしが専攻して、卒論と修論を書いた作家でHeinlich von Kleistという18世紀末~19世紀初頭の作家がいて、そのKleistという作家も、とにかく文章が長くて読みにくいことで、ドイツ文学を学んだ人ならおなじみなのだが、なんだかわたしは懐かしくKleistのことを思い出した。似てるとは言えないけど……読みにくいと言う点で。
 2)とにかく、固有名詞が分からねえ。
 これはどういうことかというと、商品・製品・地名・人名といった固有名詞が非常に多くて、人なんだかモノなんだかさっぱりわからないのだ。説明もほぼない。分からないまま読み進めていくと、ああ、なんだ、これはスマートフォンの商品名か、とハタと分かったりするような感じで、とにかく分からなくてイライラする。親切な翻訳なら、訳注を入れてくれることだろうと思うが、本書には一切そういった親切な訳注は付されていない。まあ、入れたら入れたでうるさすぎるのかな。また、実在の人物なんかも数多く登場するわけで、「分かっている人には分かっている」という暗黙の了解のように、訳注は入れなかったのだろう。ひょっとしたら、著者から訳注は付けるなという指示もあった可能性がある。
 ひとつ面白かったのが、現在の「ドイツ」のアスリートには、「東」出身の選手が結構いて(※もう若い世代は統一ドイツ出身ばかりなので、40代前半ぐらいの引退した選手に多いか)、例えばわたしの大好きな自転車ロードレースでも90年代終わりから2000年代に活躍し、1997年のツール・ド・フランスで総合優勝したJan Ulrich選手なんかも「東」出身なわけだが、本作には何度か名前だけ、サッカーのMichael Ballack選手の名前が出てくる。彼も「東」出身で、本作の世界では、Ballack選手はどうやら「東」の人民らしい。本作は2011年の刊行で、物語も同じく2011年なのだが、本作世界では2006年のドイツ・ワールドカップは開催されたんすかね。なんか一言ぐらい言及してほしかったな。
 しかし、それにしても、だ。とにかくわからんわけで、読者としてはイライラするし、非常にストレスだ。ほんと、最後まで読むには相当の気合が必要だと思う。わたしも、先日このBlogで書いたけれど、とにかく読了に時間がかかってしまった。途中で投げ出さなかっただけ、自分的には頑張ったと言えるかも。
 3)主人公の内面描写が多くて物語が進まねえ!
 読みにくさの最後、これは物語自体の問題だ。ズバリ、ストーリーが進まない。これがやっぱり一番キツイ! もちろんそれは、わざとであり、DDRの何もかもが霧の中、的な状況を反映してのことであるので(好意的に言えば、です)、文句を言う筋合いはないのだが、とにかくもう、イライラである。ある意味、Kafkaの作品のような不条理感が漂っていて、わたしはなんだか『Der Prozess』や『Das Schloss』のことを懐かしく思い出した。
 しかし、主人公の内面は、Kafkaのような文学的なものではなく、かなり多くを占めるのが、別れた彼女に対する未練たらしい想いだ。しかも主人公は、太鼓腹で髪もヤバくなりつつある56歳の警部である。そんなおっさんがずっと、別れた彼女への未練を抱きながら、エロ妄想ばかりしているわけで、正直、わたしはもう何度投げ出しそうになったことか……。そして描写が現実なのか警部の妄想なのか判別しにくい部分もあって、肝心の謎解きも、とてもついて行くのが難しい。正直に告白すると、わたしは電子書籍で読んだので、今、自分がどの辺を読んでいるのかの意識がなく、あとどのくらいで終わるのかも全く意識せず読んでいたために、ラストの部分を読んでページをめくったら、ここで終わり、と最終ページだったことに唖然としたほどだ。アレッ!? 終わり? ここで? うっそーーー!!? と、ホントにびっくりした。ちなみにラストは、森の中で拘束された警部がおしっこを我慢できなくて漏らしてしまって気を失うところで終了である。マジかよ……もうホント何なのこの物語!! と思うのもやむなしと、お許しいただきたい。

 というわけで、わたしにとっては非常に長くつらい読書だったわけだが、上記のようなわたしの指摘する問題点は、訳者あとがきでも触れられていて、どうやらこの作品を読んだ人なら誰しもが感じるものらしい。
 が、訳者は言う。
 「この(わたしが論ったような)批評は少し的外れの感がある」
 オイオイ……マジかよ……的外れと言われても……そう感じちゃったんだからしょうがないじゃない。たしかに、訳者の言う通り、「たぐいまれな空想力、創造力」であることは、まったく同意したいけれど、エンタテインメントとしてはどうかなあ……と、誰でも感じるのではなかろうか。まあ、訳者に対しては別に何も言いたいことはないので、どうでもいいのだが、訳者の言う「知識のない読者にも十分楽しめる作品に仕上がっている」かどうかは、わたしとしては相当怪しいと思うな。

 あーもう長いので、最後に作家であるSimon Urban氏について書いて終わりにします。でも、調べてみても、あまり情報がないというか、本作『PLAN D』の著者である以外の情報はあまりないすね。こんな方みたいです。

 どうやら本作が初めてのメジャー作品のようで、1975年西ドイツ生まれの現在41歳か。ドイツのナンバーワン(?)週刊新聞「Die ZEIT(=英語で言うとThe TIME)」のオンライン版でエッセイかな、なんか記事の連載を持ってるみたいですな。まだ小説ではほとんど作品はないみたいすね。今後の活躍はどうなんでしょうな……。まあ、まだまだ若いし、書き切る筆力は本物だと思うので、もっと、なんというか、物語がダイナミックに動く作品をお願いしたいと思います。まあ、単なるわたしの好みですけど。

 というわけで、結論。
 ドイツミステリーの『PLAN D』という作品を衝動買いして読んでみたところ、ひじょーーーに読みにくく、実際難しい作品であった。わたしとしては読了までに大変時間がかかってしまったわけで、全否定はしたくないけれど、この作品が面白かったかどうかで言うなら、正直イマイチ、としか言いようがない。興味深い作品であることは間違いないのだが……interessant ではあっても、Das macht mir Spassではなかったすね。ま、次回作にも期待します。以上。

↓ 続いてこちらを読んでいます。こちらは大変読みやすく、そしてかなり面白い!!
ハリー・オーガスト、15回目の人生 (角川文庫)
クレア・ノース
KADOKAWA / 角川書店
2016-08-25



 

 毎週木曜日は、今週の『鮫島』ニュースのお時間です。
 つーかですね、まだ『鮫島』最新刊(9)巻を買っていない人は、絶対に買いでお願いしたいと思います。わたしは電子書籍と紙の単行本と、両方買いました。

 というわけで、まずは、いつも通り今週の週刊少年チャンピオン2016年46号の概況です。
 ■巻頭グラビア:今週は武田玲奈さんです。大変極上です。
 ■『弱虫ペダル』:巻ちゃん!! 尽八ィ!! の巻。ホント二人はラブラブですなあw
 ■『刃牙道』:本部のおっさーーーんッッッ!? の巻。やっばい!! どうなったんだこれ!?
 ■『囚人リク』:変態・大場更に変態にの巻。白ブリーフ再び。電車で吹いたw
 ■『少年ラケット』:ヨル君ピンチかもの巻。スタミナというか戦略が……先輩強し。
 ■『Gメン』:肝田幽霊の女の子を成仏させるの巻。まあ、息抜き的なエピソードでしたが面白かったす。
 ■『六道の悪女たち』:今週は巻頭カラー!! 第三の女子現るの巻。みんなで二輪免許を取りに行く話。
 ■『BEASTERS』:タイトルである「ビースター」の意味や学校の寮生活が分かるの巻。面白い!!!
 ■『放課後ウィザード倶楽部』:バザールにとうとう奴らが来たの巻。前半の調子に乗る主人公はイイですね。

 とまあ、こんな感じの週刊少年チャンピオンでありました。

 さて。では、今週の『鮫島』ニュースのお時間です。 
 先週は、とうとう小結【闘海丸】とハッキョイ、バトルスタートまで描かれましたが、今週は鯉太郎と【闘海丸】くんの息もつかせぬ攻防が描かれてます。
 なので、前半はほぼセリフナシ。19Pのうち、前半10Pとラスト5Pはセリフはありません。なので説明のしようがないというか……。 鯉太郎のブチかましが1発入り、2発目を【闘海丸】が頭で迎撃し、体が開いたところで鯉太郎がまわしを取りに行こうと懐に入る瞬間、【闘海丸】の必殺武器である「右」が入って、再び距離が空くと。
 この時の【闘海丸】は意識が飛んでいて、無意識の「右」だったようで、
 (危ねぇ―――――! 今、飛んじまってた・・・!!)
 とハッとする【闘海丸】の様子に、鯉太郎も(ハハッ・・・無意識かよ・・・)と嬉しそうな笑顔です。そして【闘海丸】も、
 (やっぱ鮫島はヤベェ奴だ・・・ブハハッこれだよ・・・これだ!! このギリギリ感をもう一度味わいたかった・・・)
 というわけで、後半もスピード感あふれる二人の差し合いです。 そして今週ラストは、【闘海丸】の背後にわまった鯉太郎ががっしりと両まわしを握って―――というところまででした。
 まあ、普通の相撲の取組は、本当にあっという間というか数秒で終わってしまう場合もあるわけで、こういったスピード感あふれる描写も大変良いと思います。しかし、絵的に鯉太郎と【闘海丸】の大きさが……最後のコマでは相当鯉太郎が小さいというか、【闘海丸】がデカいというか……体格差が激しいですね。その体格差について、冒頭10Pで、ナレーション(?)としてずっと語られているわけです。
 「誰の目にも明らかな体格差・・・その大きな者に小さき者が頭から突っ込む様は 玉砕覚悟・・・やぶれかぶれ・・・無策無謀・・・否・・・! それが愚かな決めつけであることを・・・シンプルに・・・一瞬で・・・理解する」
 そんな鯉太郎のブチかましは「体格差を無視するほどのヤバいものであることを・・・見る者は本能的に悟る・・・」わけですな。実際、大相撲を見ていると、立ち合いで頭と頭がぶつかる時、スゲエ音がテレビを見てても聞こえますからね。あれはマジ痛そうというか、ホントヤバいす。鯉太郎の体は、もはや大丈夫じゃないわけで、大変心配ですが、最後までその雄姿を応援し続けたいですな。
 というわけで、最後に、毎週のテンプレを貼って終わります。
 <場所:9月場所>
 【鮫島】東前頭十四枚目(5月場所で東前頭十枚目)
 【白水】西小結
 【松明】東前頭六枚目。常松改め。本場所は7連勝中
 【大吉】序2段【豆助】序ノ口【目丸手】序二段【川口】不明
 ------
 1日目:【飛天翔】西前頭十二枚目。石川改め。
 2日目:【宝玉光】西前頭十一枚目
 3日目:【舞ノ島】西前頭十枚目
 4日目:【巨桜丸】西前頭九枚目。新入幕力士
 5日目:【岩ノ藤】東前頭七枚目 
 6日目:【大山道】西前頭七枚目
 7日目:【蒼希狼】西前頭六枚目
 8日目:【丈影】東前頭四枚目。横綱の弟弟子
 9日目:【闘海丸】西小結。いよいよ三役戦!! 
  --------
 【王虎】&【猛虎】共に東大関
 【天雷】東関脇  【田上】番付不明※王虎の付け人をやってることが判明!!
 【闘海丸】西小結 他の力士は表にまとめた記事を見て下さい。
 【泡影】東横綱。第72代。29場所連続優勝中。63連勝中。モンゴル人。

 というわけで、結論。
 今週はVS【闘海丸】戦の立ち合いから、キッツイブチかましと、続くまわしの取り合いの攻防まで描かれました。いやー、鯉太郎は強い。これで前頭14枚目だからなぁ……。しかし、先月の大相撲9月場所総括でも書きましたが、今年の大相撲9月場所では、鯉太郎と同じく前頭14枚目だった【遠藤】関が、連勝を続けても三役との対戦は1回、14日目に関脇【高安】関と当たっただけでした。普通はやっぱり、前頭14枚目で大関や横綱との対戦はないわけで、千秋楽も当然横綱は、横綱との取組(※『鮫島』において【泡影】の1人しか横綱がいない、と仮定すれば大関戦)になるわけで、鯉太郎が【泡影】と戦うのは、千秋楽、全勝同士の優勝決定戦しかありえないような気がしますね。どうせ【泡影】は誰にも負けず連勝記録を伸ばすでしょうから、鯉太郎も負けられないすな。頑張れ鯉太郎!! 以上。

↓ こちらも面白いです。超・地味ですが。単行本買うべきか……どうしよう……。


 というわけで、毎週月曜日は恒例の週末映画興行データですが、昨日は祝日だったので本日火曜日の更新です。つーか、お天気がはっきりしなくてうっとおしいですなあ。スッキリ晴れてほしいものです。
 ま、そんなことはどうでもいいので、今週も、もう、さっさと本題に入りましょう。

 では、 さっそくいつもの興行通信社の大本営発表です。

 1位:『君の名は。』が7週連続1位。累計で145.6億まで伸びているそうです。観客動員数も1,000万人を軽く突破し、まだまだ売れ続けている模様。先週の週末と比較して88%ぐらいの落ち、のようです。この落ちの少なさは、とてつもなくすごいことなのだが、果たしてその中で、2回目3回目の、初めてじゃないお客さん率はどのくらいなのだろうか……非常に気になるというか知りたいけど、これはデータ的には出しようがないか……各シネコンの会員情報の履歴ぐらいしかソースはないもんな……。
 2位:『ジェイソン・ボーン』が公開土日で3.45億ほど稼いだそうです。金曜公開だから3日間、そして昨日の祝日を入れた4日間で5億ぐらいは突破いしてるかもしれない。これなら、最終10億突破は間違いなさそう、だけど、15億は……どうだろう、微妙かな。前作『ボーン・アルティメイタム』が2007年公開で最終16.5億ほど。あれからもう9年経ってるんですなあ。はっきり言って、すっかり話を忘れてます、わたし。
 3位:『HiGH & LOW THE RED RAIN』が公開土日で2.98億ほどだったそうです。7月公開の『The Movie』は結局20億を超えたそうで、凄い人気ですね。今回も、ロングで売れていくのでしょうか。初動的には、前作の公開土日は4.27億稼いだので、その7割ほどということか。まあ、前作は夏休みに入る週末ということで、単純比較は難しいかも。ただ、それにしてもちょっと落ちが目立つような……。15億を超えるかどうか、というところかもしれません。でももっと行くのかな……自信ナシです。
 4位:『映画 聲の形』が23日間で15億は超えたあたりと見積もる。毎週書いてますが、スクリーン数が少ないのにこの数字はまぎれもなく大ヒット。松竹的には大変うれしいでしょうな。さすがは山田監督。京アニの天才と呼ばれるだけあります。全然関係ありませんが、大変可愛い方ですよ。
 5位:『グッドモーニングショー』が公開土日で1億チョイぐらいと見積もる。うーん、この初動だと、最終的に10億超えるかどうかかも。かなりキャストを動員したTVプロモーションも見かけたような気がしますが、数字的にもう一声欲しいところでしょうか。。。
 6位:『ハドソン川の奇跡』が16日間合計で、10億に届いたかどうか、ぐらいと予想。ちょっとキビシイか? 当初予測の15億はやや微妙な雲行きかも……大丈夫かな……。ちなみにUS本国では現状113M$と大ヒット中です。イーストウッド作品としては、今のところ3位になるのかな? 1位は『American Sniper』で350M$、2位は『Gran Trino』で148M&みたいすね。日本でももっと売れてほしいのですが……。
 7位:『SCOOP』が9日間で4億~5億ほどと見積もる。厳しい状況が続いているといわざるを得ないだろう。この分では10億は超える……だろうか? 超えたとしても15億は厳しい情勢。
 8位:『怒り』が23日間で。12億ほどと予想。もうチョイ行っているかも? こちらも依然として、興行数値としてはやや厳しめか。大人向けが苦戦していますなあ……。
 9位:『闇金ウシジマくんPart3』が16日間合計で7億ほどと予想。ランク圏内に残るということは、かなり頑張っていると言って良さそう。10億目指して頑張れ!!
 10位:『シン・ゴジラ』が74日合計で77~78億ぐらい? だろうか。この粘りはすごい。このままなら、80億に届く可能性も出てきたような気がするけれど、もうかなり上映回数も減っているので、非常に予測が難しいです……。

 とまあ、こんな週末だったようです。 

 ところで、わたしは先週「午前十時の映画祭」 を観に行ってきました。お目当ては、4K修復された黒澤明監督作品『生きる』です。映画オタクの方ならご存知のように、古い黒澤作品は、現存しているフィルムでは、映像もかなり荒れているし、とにかくセリフが聞き取れないような状態にあるわけですが(全部じゃないですけど)、今回の4Kリマスターはかなりクリアになっている印象です。もう、A日程の劇場ではこの週末から『七人の侍』も公開になっていて、わたしもTOHOシネマズ新宿に観に行こうかな、と思ったら、もう完売でした。びっくり。なので、2週間後のB日程の劇場へ観に行くつもりです。大変楽しみです。しかし……この「午前十時の映画祭」って、興行数値的にどうなんでしょうな。たまーに、数字が公開される作品もありますが、今回の『生きる』と『七人の侍』がどのくらい売り上げるのか、わたし、気になります!(古い)

 というわけで、結論。
 今週も『君の名』が1位。これで7週連続です。すげえなあ。 そして、そのあおりを受けているとは思えないけれど、邦画の実写作品が軒並み苦戦しているような……。年末に向けて、ビックタイトルというと……洋画では『ファンタスティック・ビースト』と『ローグワン』、そして邦画ではやっぱり『海賊と呼ばれた男』あたりでしょうか。でも、もう今年ナンバーワンは『君の名』で決まりっすね。ホントにすごいと思います。以上。

 わたしのこのテキトーなことしか書いていないBlogでは、基本的に一度取り上げた漫画の次の新刊が出ても、特に記事にすることはないのだが、ここ数週間で買った漫画をちょっとまとめておこう。
 わたしはすっかり電子書籍野郎に変身したので、紙の単行本を買うこともめっきり減ったのだが、それでも紙しか買えないものもあり、そして結構わたしは頻繁に本屋さんに行っているのに、まるでスルーしてしまって、あ! 新刊が出てる!! と、1か月遅れぐらいで気付くこともあって、このところそんな、発売日に気が付かずに慌てて買った新刊もいくつかあった。

 まず、2週間前だったかな、本屋さんで見つけて、おっとマジか、新刊が出てる!! と慌てて買ったのが、柿崎正澄先生による『闘獣士ベスティアリウス』の(4)巻。

 これは(4)巻だけど、以前この漫画の(1)~(3)巻の記事を書いたとき、小学館のサイトでは「完結」となったので、面白いのに打ち切られてしまったのかなあ……と思っていたら、新刊が発売になっていて驚いた。あ、今、小学館のサイトを見てみたのだが、未だに「完結」になってやがるな……こういうテキトーぶりが、小学館は嫌いだよ。
 今回は、また新たなキャラクターが主人公、なんだけど、(2)(3)巻の主人公の彼(&彼女)が出てきて、大変な悲劇が……(3)巻で何とか幸せをつかめたと思ったのに……そして(1)巻の主人公の彼や、翼竜族のデュランダル様もきちんと登場し盛り上げてくれる。お話し的には、次巻へ続く形になっていて、続きが大変気になります。相変わらず美しい画と、泣ける物語で大変満足です。非常に面白かった。なんでも、連載は「サンデーS」で継続中だそうで、まあ、もやは連載誌を買うことはないのだが、単行本化を心待ちにしていたいと思う。
 ちなみに、一応電子書籍でも売っているみたいだけれど、わたしの愛用している電子書籍販売サイトでは、小学館の作品は取り扱っていないので、紙での購入でした。ほんと、小学館は新しいビルを建てて金を遣ってしまって大丈夫なのかな。相当業績は苦しいはずなんだが……。ま、かつての大手も、もはや老いさらばえており、NO Futureであろうと思う。どうでもいいことですが。

 次は、『はじめの一歩』の(115)巻。

 『一歩』も、前巻(114)巻の時にここで記事を書いたけれど、今回は……なんというか……お話し的な進展はほぼなし、でした。でも、本当に森川先生の漫画力は高くて、おそらくは日本最強レベルなのだが……『こち亀』もまさかの完結を迎えた今、『一歩』も最終エピソードにきちんと向かってほしいものだと思う。もういいんじゃないかしら……まあ、今回、とうとう、というかやっと、「デンプシーロールの縦回転(正確には斜め回転)」を身に着けた一歩。鴨川会長もようやく世界挑戦を視野に入れるに至ったわけで、もう、やるしかないでしょう!! わたしとしては完全に惰性で買っていますが、完結まで見届けたい所存です。なお、森川先生は電子書籍に思う所があるようで、それはそれで全然アリな判断だと思います。なので、こちらも紙で買いました。発売をすっかりスルーしてて、店頭で見つけて慌てて買った次第です。

 次。『亜人』の(9)巻。

 正直飽きてきたので、もういいかな……と思っていたのだが、今回はちょっと面白い展開になってきたので、わたしとしては継続購入決定。こちらは電子書籍で発売日に買った。電子書籍は発売になれば必ずお知らせが来るので、やっぱりそんな点も便利だと思う。紙の単行本は(6)巻まで持っているのだが、そろそろ処分するか……。

 次。『スモーキング』の(3)巻。

 こちらも電子にて購入。紙だったら確実に買い忘れているだろうな、という気がしてならないが、きちんとお知らせが来たので有り難し。今回も面白かった。以前ここで記事に書いた通り、独特の絵でお話も殺し屋の話なので、万人受けするのかわからないけれど、わたしは結構面白いと思って買い続けている。

 ラスト。『地底旅行』の(2)巻。
地底旅行 2<地底旅行> (ビームコミックス)
倉薗 紀彦
KADOKAWA / エンターブレイン
2016-09-26

 いやー、いいっすね。大変高品質な漫画です。以前ここで記事に書いた通り、なんでまた「地底旅行」なのか、どうしてネモ船長の方じゃないのか、よくわからないというか、そのチョイスが渋くて素晴らしいのだが、原作のJules Verneの小説のエッセンスを極めて上手に漫画化していて、作者の倉薗先生の力量は実に素晴らしいと思う。この漫画、もっと売れてほしいなあ……。とにかく素晴らしいというか、今現在のわたしのイチオシかもしれないな。面白いです!!

 番外編として、わたしが今読んでいる小説は、こちら。
プランD
ジーモン・ウルバン
早川書房
2016-06-09

 この『プランD』という小説は、「東西ドイツがもし統合されていなかったら?」というIF世界を舞台とした警察捜査ミステリーで、主人公は東ドイツの警察官。現状での結論から言うと、とにかく読みにくくて、なかなか進まず、面白いのかつまらないのかすっげえ微妙。詳しくは読み終わった後で記事にします。非常に文章も読みにくく、固有名詞も多くて、とにかく読むのに時間がかかる。わたしは結構読むのが早い方だと思うけれど、この作品はもうすでに10日間読んでいて、まだ76%ほどしか読み終わっておらず、どうにも集中できないというか……物語に入り込めないでいる。たぶんあと2・3日で読み終わる予定。

 というわけで、結論。
 最近、Blogの更新スピードが落ちていますが、ちゃんと本も読んでますよアピールをしたかっただけです、はい。ホントにサーセン。この三連休はどうもまだ体調が本調子でなく、昨日おとといはずっと寝てました。そして今日は、ちょっと会社に行ったり、このBlogを書いたりして、生きてますのでご安心を>周りの人々。今日は朝イチで、会社に荷物を車で運んだりしてたのですが、どういうわけか都内は警官が多くて、やけにスピード取り締まりをしているのを見かけました。でもまあ、道は空いてて快適でしたよ。しかし、キリッと晴れてくれないと、洗濯物が乾かなくて困りますな……以上。

↓ どうも今は観たい映画がないので、午後は『バチバチ』『バチバチBurst』『鮫島、最後の十五日』を全巻読もうと思います。

 

 わたしは25年ぐらい前の学生時代に黒澤明監督作品をすべて観たのだが、その時の話は以前このBlogでも書いたのでもういいとして、わたしが思う黒澤映画のすごいところは、その「現代性」にある。とりわけ、現代劇の場合に顕著なのだが(現代劇といっても、作られた昭和20~30年代当時の現代)、今の平成の世に生きる我々が見ても、全く通用するテーマが描かれている作品が多くて、とにかくその先見性というか普遍性というか、現代社会の問題点を60年70年前にとっくに作品として残しているのだ。要するにそれらの問題点は、今もなお問題であり続けているわけで、結局人間はいつの時代にもかわらねえんだなあ、と、黒澤作品を観るといつも思うのである。なので、なんというかわたしは、黒澤作品を観ると、過去を学ばないで同じことを繰り返す人間の性、のようなものに愕然とし、しょんぼりし、恥ずかしくなるのである。
 で。
 黒澤映画は、もはやどんなに状態のいいフィルムでもひどい映像で、とりわけ音声が潰れてセリフが聞き取れないような状態にあるのだが、近年、デジタル化の技術向上により、かなり画質も音声も良好になった、いわゆる「デジタルリマスター」の製作が進んでおり、だいぶ前にこのBlogでも取り上げた通り、とうとう黒澤作品の本命である東宝作品も、4K技術によりデジタルマスターの作成が進んでいる。
 わたしがこの記事を見て仰天したことは、既にこのBlogでも書いたが、なんと光学録音されたサウンドトラックを、「画像データとして修復」するという目からウロコの荒ワザで、音声の状態もかなり良くなったらしい。そしてその4Kマスターの『七人の侍』と『生きる』が、「午前十時の映画祭」で公開されるというニュースを知ったのが今年の2月のことで、わたしはもう、ずっと今か今かと待っていた。そしてとうとう先週から『生きる』の上映が始まり、わたしも超・楽しみに劇場へ向かったわけである。ちなみに、TOHOシネマズ日本橋では、次の次の作品が『七人の侍』であるので、自分用備忘録としてメモっとこう。10/22~11/4だから忘れんなよ、オレ!!

 というわけで、とうとう、4Kマスターの実力を味わってきたのだが、おそらくは、映写機側も4K対応機でないと意味がないわけで、たぶん、わたしが観たTOHOシネマズ日本橋は、TOHOシネマズとしては新しく建った部類に入るけれど、4K対応映写機かどうか、かなり怪しいような気がした。わたしが使っている4Kテレビは、異様なほどきれいで逆に違和感を感じるくらいにくっきりはっきりだけれど、どうだろうな……ちょっと分からない(※追記:どうやらTOHO日本橋はSONY製4K映写機を導入しているっぽいです)。しかしそれでも、映像も音声もかなりクリアになっている印象だ。でも、これはたぶん、それまでの従来の映像・音声で見たことのある人でないとわからないと思う。初めて見た人なら、これが普通、と思うのではなかろうか。特に音声は、オリジナル(というか古いフィルム)の状態はとにかくセリフが聞き取れないレベルなのに、今回は明確に聞き取れて、これは非常に良いと思った。この分だと、『七人の侍』も相当期待できそうな修復レベルであろうと、今から楽しみだ。
  ところで、もはや『生きる』という作品について、説明はいらない……よね? はっきり言って最高に面白い。しかし、わたしももう10回ぐらい見ている作品なのだが、今回初めて、ああ、『生きる』ってコメディだったんだな、と初めて認識した。実はわたしが観に行ったのが今週の月曜日の朝で、ちょっと仕事をサボって観てきたのだが、客の入りは結構多くて、かなり多くの人々が、この映画を観て笑い声をあげている現場に遭遇したのである。
 ただし、コメディといっても、これは皮肉・風刺・デフォルメが込められた、ブラックコメディである。わたしはもう何度も観ていて物語を知っているし、周りの人々から「アイツは真面目な野郎だ」と称される人間なので、主人公の姿は非常に痛々しく、とても笑う気にはなれないのだが、なるほど、普通の人からするとこういう真面目に生きてきたことだけが全ての男の生きざまは、笑いの対象なんだな、と初めて理解した。何とも悲しいというか残念なお知らせだが、それが普通、なんだろうね、きっと。おまけに、ラスト近くの、左卜全さんの名セリフ「……助役って言えぇッ!!!」で笑いが起きるなんて、わたしはちょっとびっくりしたよ。あそこは、一緒になって怒るところだとわたしは思ってたのに。
  と、ここまで、わたしが何を言っているか分からない人と、自分用の備忘録として物語を少しまとめておこう。以下、完全ネタバレです。これから見ようとする人は自己責任で。そして、どうせ皆さん見やしないだろうから遠慮なく書きまくります。

 『生きる』は1952年、すなわち、ええと、昭和27年になるのかな、もう64年前の作品である。ちなみに、この作品の次に黒沢監督が撮ったのが『七人の侍』で、1954年公開です。
 主人公の渡辺勘治は、とある市役所の「市民課」の課長である。どうやら、お役所行政の世にあって、市民の声の窓口として、「市政に関する皆様の不平・不満・注文・希望、何でも遠慮なくお申し出ください」という意図で設置された部署らしいが、そこの課長として毎日働く渡辺さんの、胃のレントゲン写真が画面に映し出され、淡々としたナレーションからこの作品は始まる。ナレーション曰く、
 「これは、この物語の主人公の、胃袋である――。噴門部に胃がんの兆候が見えるが、本人はまだそれを知らない」そしてそこに、奥さん連中がやってきて、近所の水たまりになっている空き地を何とかしてくれ、臭いし蚊はわくしでたまらん、公園にでもしてほしいのだが、という陳情にやってくる。せっせと書類にハンコを押し続ける渡辺さん。話を聞いた部下が、陳情が来てますけど、というと、顔も上げずに一言「土木課」とだけ答える。そして再びナレーション。
 「これがこの物語の主人公である。しかし、今この男について語るのは退屈なだけだ。なぜなら――彼は時間をつぶしているだけだ。彼には生きた時間がない。つまり彼は生きているとは言えないからである」
 すると突然、市民課の女子が笑い声をあげる。なんだ? とみんなが驚くと、女子は、回ってきたメモを読んで笑ったらしい。メモ曰く「君、一度も休暇を取らないんだってね」「うん」「君がいないと役所が困るってわけか」「いや、僕がいなくても全然困らんということがわかっちゃうと、困るんでね」課内はシーーン、である。そして再びナレーション。
 「ダメだ、これでは話にならない。これでは死骸も同然だ。いや、実際、この男は20年ほど前から、死んでしまったのである。その、以前には、少しは生きていた。少しは仕事をしようとしたことがある」
 ここで、せっせと押していたハンコに、朱肉が詰まったようで、渡辺さんは引き出しを開けて、紙を破りとる。その紙には、昭和5年に提出した、「業務効率化に関する私案」と書かれている。かつての渡辺さんの熱意が分かる一瞬のシーンだ。そして再びナレーション。
 「しかし、今やそういう意欲や情熱は少しもない。そういうものは、役所の煩雑きわまる機構と、それが生み出す無意味な忙しさの中で、まったくすり減らしてしまったのだ。忙しい。まぁったく忙しい。しかしこの男は、本当は何もしていない。この椅子を守ること以外のことは。そしてこの世界では、地位を守るには、何もしないのが一番いいのである。しかし、いったい、これでいいのか? いったいこれでいいのか!? この男が、本気でそう考えだすには、この男の胃がもっと悪くなり、それから、もっと無駄な時間が積み上げられる必要がある……」
 そして場面は、奥さんたちの見事なまでのたらいまわしが映される。
 市民課→土木課→公園課→保健所→衛生課→環境衛生係→予防課→防疫係→虫疫係→再び市役所の下水課→道路課→都市計画部→区画整理課→消防局→再び市役所の児童福祉係→市議会議員→市役所助役→市民課(スタートに戻る)。この一連の、役人連中の無責任さと責任のなすりつけあいは、確かにもう、笑うしかない。
 しかし、奥さん連中にとっては笑えない話であり、市民課に再びやってきた奥さんたちはとうとう、ブチ切れる。「あたしたちはねえ、あんたたちヒマ人と違うんだよ!!! だいいちねえ、あたしたちはあの臭い水たまりを何とかしてくれって言ってるだけじゃないか!!! 市民課でも土木課でも保健所でも消防署でも、そんなことはどうでもいいんだよ!! それを何とかしてくれるのが市民課じゃないのかい!!」 ちなみに、このブチ切れる奥さんは、若き日の菅井きんさんである。
 ここまで、映画が始まって冒頭10分しか経過していない。そしてこの10分で、観客はもう完全に物語に入り込むことができるだろうと思う。見事なオープニングだ。
 そもそも、ナレーションで語られる、主人公の仕事ぶりは、おそらく、この映画を観る社畜リーマンの観客でも、まだ「死んでいない」人からすれば、これはもう完全にウチの会社のアイツだ、と思い当たることだろうし、主人公と同様に「死んでいる」ようなどうしようもないダメリーマンが観れば、もしまだ心が残っているなら、「これはオレだ」とドキッとするだろうし、完全に死骸となったゾンビ・リーマンに成り下がっていれば、他人事として笑えることだろう。スクリーンに映る渡辺さんが自分自身であることに気が付かずに。こういう点が、わたしの言う黒沢映画の「現代性」だ。これって、ほんと、今のサラリーマンが観ても、すぐ自分や自分の周りに置き換えて観ることができるよね。そこがすごいわけです。
 で、物語は、主人公ががんであることを知り、息子に打ち明けようとするも、息子と嫁は、さっさと家を出たい、ついては父さんの退職金も結構あるだろうから、なんて皮算用をしている。そんな話を聞いた主人公は、、自暴自棄になり、飲み屋で知り合った小説家とキャバレーやストリップに行ったりする。そして、冒頭で爆笑していた市民課の女子と町でばったり出会い、市役所を辞めるからハンコをくれ、いや、うちに置いてあるから来る? 行く! という展開になって、その後、その女子と仲良くなっていく。そして、息子に対する愚痴を言う。今までは息子のために頑張ってきた。けど、その息子も全然自分のことなんてどうでもいいと思ってるんだ。
 その時、女子は、もう既に市役所を辞めて、おもちゃ工場で働いているのだが、こんな話をする。
 「うちのお母さんもそんな話を時々するわ。お前のために苦労してきたって。でも、生まれたのは赤ん坊の責任じゃないわよ。息子さんに、そんな(課長が一生懸命働いてきたことに対する)責任はないわよ」
 そういわれた主人公は、意を決して息子夫婦と話をしようとするが、大失敗。とにかく口下手で話ができず、挙句に、最近の放蕩を説教されてしまう。しょんぼりする主人公は、また女子と会い、とうとう打ち明ける。
 「つまりそのう……」
 「つまりなんなのよ!」
 「つまりそのう……わしは君とこうやってると……楽しいから……」
 「老いらくの恋!? だったらお断りよ!」
 「そうじゃ……わしはただ……」
 「ねえ、もっとはっきり言ってよ! そんな雨だれみたいにポツンポツン言わないで」
 「…………わしは、そのう……自分でもわからない。どうして君の後ばかり追い回すのか……ただ、わしに分かっているのは………………きみっ! わしはもうすぐ死ぬんだ!! わしは胃がんだ。君、わかるかい? どんなにじたばたしても、あと、1年か半年で……子供の頃に溺れかけたことがあるが、その時とそっくり同じなんだ。目の前が真っ暗で、もがいでもあばれても、な、何にも捕まえられない……ただ、君だけ……しかし、しかし君を見てると、何か、何かあったかくなる。その……つまり君は、若い、健康で、ただその……つ、つまり、つまり、君はどうしてそんなに活気があるのか、まったくそのう、活気が、それがそのう、わ、わしには、それがうらやましい。わしは死ぬまでに、一日でもいい、そんな風に、生きて死にたい!! それでなければ、と、とても死ねない!! わしは、な、何か、することが、いや、何か、したい。そ、ところが、それが、分からない。ただ君はそれを知ってる。い、いや、しらんかもしれんが、現に君は……教えてくれ! 君のように……」
 「わたし、働いて、食べてるだけよ!!」
 「そ、それだけか!」
 「それだけよ!! ほんとよ!! あたし、ただこんなもの作ってるだけよ!!」
 工場で作っているおもちゃを取り出す女子。
 「こんな物でも、作っていると楽しいわよ。これを作り出してから、日本中の赤んぼと仲良しになったような気がするの……ねえ、課長さんも、なんか作ってみたら?」
 「役所で……いったい……何を……」
 「そうね……あそこじゃ無理ね……あんなとこやめて、どっか……」
 「………もう……遅い……(1分以上の長い間)………いや……遅くない……いや、無理じゃない。あそこでもやればできる。ただ、やる気になれば……!!」
 そして女子と別れて喫茶店を出る主人公。この時、喫茶店では女学生たちが誕生日会をやっていて、盛大に「Happy Birthday」の歌がかかる。まさしく、主人公が新たに生きはじめ、新たな「誕生」を迎えた超・名シーンだ。
 そして、場面は、5か月後、主人公の葬式の場面に移る。そしてお葬式では、どうやら主客と思われる市役所の助役が偉そうなことばかり言っている、そのうち、新聞記者が、「あの公園を作った立役者は渡辺さんですよね」と取材に来たり、冒頭の陳情奥さん軍団もお焼香に現れ、渡辺さんを想って涙を流す。それを見ている市役所の連中と助役。助役はいたたまれなくなって、さっさとバックレ、助役がいなくなると、今度はみんなで助役の悪口を言う。最初は、みんなも役所の各部門の成果だと言ってたのに、一人だけ、心ある課員が、渡辺さんを称える。すると、そういえばこんなことがあったんですよ、と、5カ月にわたる渡辺さんの、ある意味不気味な執念が、回想で描かれる。やくざ者の脅しや、助役の強硬な態度にも、まったく屈しなかった渡辺さん。そりゃあそうだよね。もう、何も怖いもの、失うものがないんだから。そして場の空気は、みんなが、やっぱ渡辺さんスゲエ、というように変わっていく。そして、渡辺さんの手柄を横取りするあいつは許せない、という話になったところで、もうべろべろに酔っ払った市民課課員のおじちゃんが怒鳴るのである。「(アイツじゃなくて、ちゃんと)助役って言えぇ!!」と。そしてみんな、よーし、これからはオレたちも、渡辺さんを見習って、生きた仕事をしようぜ、お―!! 的な空気になって場面は終わる。そしてラストは、一人心ある課員の視点だ。結局、葬儀の場で盛り上がったみんなも、なーーんにも変わらない。残ったのは、この公園と、公園で遊ぶ子供たちの笑顔だけだ……と、物語は終了する。
 このエンディングは、『七人の侍』とよく似ているとわたしは思う。『七人の侍』のラストは、無事に野武士団を撃退した村の百姓たちが、歓喜の下に田植えをしているシーンで終わる。その百姓たちを見て、激闘を生き残った七人の侍のリーダー、勘兵衛はつぶやく(言うまでもなく、勘兵衛を演じたのは、『生きる』で主人公・渡辺勘治を演じた志村 喬氏。最高です)。「勝ったのは、わしらじゃあない。百姓どもだ……」命をかけて戦い、散って行った侍たちは顧みられることなく、後に残るのは村と村人のみ。そして生き残った侍はクールに去る――。こういった、人間のエゴ(?)を黒澤監督は生涯テーマとして描いていたとわたしは思っているが、別にほめられたいから、誰か人のために、人は行動するのではなく、あくまで人は自分自身のために、自分の「納得」を求めて生きる。『生きる』の渡辺さんも、実のことろ、陳情奥さん軍団のために公園を作ったのでは決してなくて、あくまで、自分自身が「生きている」実感を得るため、なんだよね。わたしは黒澤映画を観ると、いつもそんなことを思うわけであります。黒澤映画は最高です。

 はーーー長すぎた。もう好きすぎてカットできなかったわ……そして台詞を書き出すために、わたしが持ってるBlu-rayを見ながら書いたので、映画館に行った日からかなり時間がたってしまった……やれやれ。
 どうですか。このクソ長い文章を最後まで読んでくれた人はほとんどこの世にはいないと思うけれど、面白そうでしょ? つーか完全ネタバレですが。
 
 というわけで、結論。
 黒澤明監督による『生きる』は、誰が何と言おうと超・名作です。4Kマスターは、やっぱり私の持ってるBlu-rayと比較してもかなりクリアな映像と音声ですね。4Kマスター版のDiskが発売になったら、買ってもいいかも。そして、黒沢映画を見ていない人は、わたしは一切、映画好きとは認めません。絶対に。そこは譲れませんな。映画好きと名乗りたいなら、黒澤を全部見てから出直して来な、とわたしは周りの連中によく言ってます。最高です。以上。 

↓ ほほう、今は配信でも見られるんですな。わたしとしては『七人の侍』の4Kリマスターも超楽しみっす!!
生きる
志村喬
2015-04-22
 

 毎週木曜日は、今週の『鮫島』ニュースのお時間です。
 つーかですね、明日は『鮫島』最新刊(9)巻の発売です!! このBlogを読んでいる人は、必ず、絶対に買いでお願いします!! わたしは電子書籍と紙の単行本と、両方買いますよ!!

 というわけで、まずは、いつも通り今週の週刊少年チャンピオン2016年45号の概況です。
 ■『弱虫ペダル』:巻島さぁん!! の巻。ホントに坂道くんは巻島さんが大好きっすなあw
 ■『刃牙道』:武蔵、そろそろ本気出すか?の巻。まあ、このまま本部のおっさんが無事でいられるとは思えませんわな。
 ■『囚人リク』:変態・大場再登場!! の巻。白ブリーフの変態が再びレノマの前に!! ヤバしw
 ■『少年ラケット』:ヨル君順調の巻。まずは勝利したヨル君、次勝ってS級昇格なるか!?
 ■『Gメン』:肝田謎の深夜行動その2の巻。肝田、お前大丈夫かホントに!?
 ■『六道の悪女たち』:みんなで六道君の家で楽しく遊ぶの巻。『鮫島」『ペダル』の次に面白いかも。かなりイイです。
 ■『BEASTERS』:狼のレゴシ君の本能の巻。今回も非常にイイですね!!
 ■『放課後ウィザード倶楽部』:改造魔術時(チートウィザード)爆誕の巻。いや、ホント絵がどんどん良くなってる。上手いし面白い。

 とまあ、こんな感じの週刊少年チャンピオンでありました。

 さて。では、今週の『鮫島』ニュースのお時間です。 
 先週は、九日目の朝の国技館入りで、小結【闘海丸】の闘志に火が点くところが描かれましたが、今週はいよいよ取組直前、支度部屋から花道入場、そして土俵入りまでが描かれました。
 なので、あまり書くことはないのですが、今週は一つ、大変な事態というか、後々の伏線となるちょっとしたことが起きます。
 まず、【闘海丸】くんは、支度部屋でも気合満々で、付け人相手に汗をかいています。周りの力士たちも、
 「スゲェ気合入ってんな闘海丸関・・・」「コエーくらいだな・・・」「こりゃ今日の相手大変だぞ・・・」
 もう、【闘海丸】くんもブフーーーブフーーーと鼻息荒くおっかない顔つきです。
 一方の鯉太郎は、どうも右手が気になる様子。せっかくデータ力士でお馴染みの常松こと【松明】関が【闘海丸】関の「右の腕力(かいなちから)」について話をしているのに、イマイチ聞いてない様子。そして【松明】は、現在の【闘海丸】人気はすごいことになっているので、完全アウェーの空気になっているだろうとも、鯉太郎に告げます。まあ、【闘海丸】くんの「右」がヤバいことは、幕下時代にしっかり体験済みですから、大丈夫でしょう。
 それより気になるのが、鯉太郎の右手です。白水さんが、ほいよ、と投げてくれたテーピングを、キャッチできない鯉太郎。そして、その様子はきっちり【松明】も目撃しました。どうしたんだろう? という顔の【松明】です。
 そしていよいよ花道に入る【闘海丸】くんと鯉太郎。もう、【闘海丸】くんは、親友の将太くんがプロデュースした、女性に人気のかわいい力士ではありません。完全に鬼の形相で女性客たちもドン引きです。
 ここで、NHKアナウンサーとと虎城理事長の会話が入ります。
 虎城理事長「今場所の鮫島が上位相手にどこまでやれるのか・・・私も見てみたくはある」
 アナウンサー「しかし虎城さん・・・鮫島のテーピングだらけの体を見ても また休場という可能性も・・・」
 虎城理事長「生ぬるい場所ではないですからな・・・土俵は・・・残酷ではありますが・・・潰れたら潰れたでそれまでのこと・・・」
 というわけで、土俵に上がる二人の力士。人気者の【闘海丸】関には懸賞も多く懸かっているようですね。そして【闘海丸】関は、初日に横綱【泡影】に1敗しただけで、その後7連勝しているそうです。今日の鯉太郎との取組は勝ち越しがかかってるんですな。
 そして土俵に上がった鯉太郎にも、人気者【闘海丸】に負けない声援が! 空流部屋の弟弟子【豆助】も、その声援を聞いて、「おおっ!鯉太郎さんの声援も負けてないじゃないっスか! どこがアウェーなんスか!」と嬉しそうです。そんな【豆助】を見て、【白水】兄貴も嬉しそうです。
 「(誰に媚びるわけでもなく ただ単純に・・・純粋に・・・己の相撲を貫く・・・普通だったら嫌悪されてもおかしくないワガママなのに・・・危なっかしくて・・・ほっとけなくて・・・気になって・・・気が付けばみんなアイツにひきつけられている) ズリーよなー・・・アイツは・・・」
 この【白水】兄貴の顔はいい顔してますなあ! オレの自慢の弟だぜ、という誇り、なんでしょうな。
 そしていよいよ立ち会う鯉太郎と【闘海丸】。「行くぞ鮫島!! 幕下優勝決定戦(あのとき)の借りを倍にして返す!!」 と気合十分です。
 さあ時間いっぱい!! というところで、【松明】の顔アップがカットインされます。
 「オレの気にし過ぎだといいが・・・」
 というところで、ハッキョイ!! いよいよVS【闘海丸】戦の開始!! というところで今週は終わりです。いやー、まあ、鯉太郎の体がヤバいことは最初から分かっていますが、ついに自覚症状まで来てしまいました。力士は毎日交通事故に遭っているような衝撃をひと場所15日間続けるわけで、大変な負担になることはずっと語られてきていますので、「相撲に選ばれてない」小兵の鯉太郎の体はそろそろ限界のようで……まあ、だから本作のタイトルは『鮫島、最後の十五日』なわけですから、結末は最初から想像はついています。残酷ですなあ……。とにかく、最後まで応援を続け、毎週鯉太郎を応援したいですな。
 というわけで、最後に、毎週のテンプレを貼って終わります。
 <場所:9月場所>
 【鮫島】東前頭十四枚目(5月場所で東前頭十枚目)
 【白水】西小結
 【松明】東前頭六枚目。常松改め。本場所は7連勝中
 【大吉】序2段【豆助】序ノ口【目丸手】序二段【川口】不明
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 1日目:【飛天翔】西前頭十二枚目。石川改め。
 2日目:【宝玉光】西前頭十一枚目
 3日目:【舞ノ島】西前頭十枚目
 4日目:【巨桜丸】西前頭九枚目。新入幕力士
 5日目:【岩ノ藤】東前頭七枚目 
 6日目:【大山道】西前頭七枚目
 7日目:【蒼希狼】西前頭六枚目
 8日目:【丈影】東前頭四枚目。横綱の弟弟子
 9日目:【闘海丸】西小結。いよいよ三役戦!! 
  --------
 【王虎】&【猛虎】共に東大関
 【天雷】東関脇  【田上】番付不明※王虎の付け人をやってることが判明!!
 【闘海丸】西小結 他の力士は表にまとめた記事を見て下さい。
 【泡影】東横綱。第72代。29場所連続優勝中。63連勝中。モンゴル人。

 というわけで、結論。
 今週はVS【闘海丸】戦のハッキョイ!! までが描かれました。そして、鯉太郎の体もいよいよ限界が、最後の時が近づいている描写も描かれています。もう毎週目が離せない『鮫島』ですが、なんとか、真っ暗なバットエンドで終わらず、美しく完結してもらいたいですね。そこんところ、よろしくお願いしますよ、佐藤先生!! 以上。

↓ しつこいですが、最新刊(9)は明日、10/7(金)発売です!! 絶対買いでお願いシャス!!
 

 先日、風邪でぶっ倒れている時、熱にうなされながらふとWOWOWで録画した映画を観た。なにもそんな時に映画を観なくても……と自分でも思ったし、きっと途中で寝ちゃうだろうな、とも思ったのだが、これがなかなかよろしい作りで、最後まで飽きず観てしまったのが、Bill Murray氏主演の『St.Vincent』(邦題:ヴィンセントが教えてくれたこと)という作品である。
 80年代から映画オタクの道を歩んできたわたしとしては、Bill Murray氏と言えば当時のTOPクラスのコメディアンで、もちろん一番有名なのは『GHOST BUSTERS』だと思うけれど、それ以外にも結構多くの作品に出演し続けており、何となくここ数年、再び演技派的な枠でまた出演が増えているような気がするおっさんである。わたし的には、2009年の『Zombieland』において本人役で登場した時が最高に笑えたのだが、この人はやっぱり生粋のコメディアンであるのが本来の姿だと思っていたので、最近の演技派風な変身は、なんとなく、片岡鶴太郎氏のようなイメージがある。ま、全然似ていませんが。

 映画は基本的に上記予告の通りに進む。この予告編は、劇場でも何度か観かけていたので、大体のストーリーは想像通りだった。しかし、わたしは、冒頭で『St.Vincent』というのがこの作品の原題なんだということを知って、ははあ、きっと、ダメ人間のクソジジイが子供と仲良くなって心を通わせて、きっと最後は死んじまうんだろうな、それで「St.Vincent(=聖ヴィンセント)」、すなわち「聖人」だったんだよあの人は、的な流れかな、と瞬時に想像した。
 そしてまずは結構冒頭から、主人公ヴィンセントのとんでもない「ダメ人間」ぶりがかなり続く。まあ、とにかく、汚いしだらしがないし、全く好きになれるキャラじゃあない。ので、真面目に生きることを信条とするわたしとしては、もう、勘弁してくれないかなあ……という気持ちになっていく。なんというか、アメリカ人のだらしなさと汚い街並みは去年NYCでも十分味わったので、たぶん、普通にリアルな描写なんだと思う。決して大げさでないというか。
 で、一方のちびっ子は、なかなかこれが大変な目に遭っているのに、お母さん思いだし大変礼儀もしっかりしていて、実にイイ子である。まったく「子どもシッター」としてやる気のないヴィンセントの言う事でも、ちゃんと考えて、意見も言うし、後を付いていく。こうして仲良くなって(?)いく二人だが、おそらく、ちびっ子がヴィンセントに魅かれていくのは、自分を「子ども扱いしない」で、「一人の人間」として扱ってくれたからなんだろうと思う。もちろん、ヴィンセントはそんなこと無意識であるのは間違いないし、心底、めんどくせえ、としか思っていない。だけど、競馬場だろうとバーだろうと、どこにでも一緒に連れて行くヴィンセントは、父と離れて暮らすことになったちびっ子には、間違いなく父親代わりであるし、普通に接してくれる大人に見えたんだろうと思う。
 最初のきっかけは、予告にある通り、いじめっ子にやられたところを助けてもらって、その後、喧嘩の仕方を教わるくだりだが、まあ、そういうのこそ、父親の姿として重なったんでしょうな。だから、とにかくちびっ子が不憫である。いい子だけに。ちなみに、このケンカして、あとでぶっ飛ばしてやったいじめっ子とも、きっちり仲直りして、後半ではすっかり友達になるという展開も、実に気持ちよくて、ほんとにこの子はいい子だよ、とわたしは大変嬉しくなった。ひでえ環境でも、いい子はいい子に育つんだなあ。
 で、物語は、だんだんとヴィンセントの過去や、ちょっとした悲しい秘密が明らかになって来る。これはネタバレだから書かないけれど、でも、これは断言しておくが、悲しいことがあったって、だからと言って自堕落に生きていい理由には100%ならない。むしろ、だからこそ、真面目に生きてほしいのがわたしの気持ちだが、ヴィンセントはそうではなかった。たった500ドルにも困る生活をどうしておくってんだお前!! と説教したくすらなる。だから、わたしには、残念ながら最後までヴィンセントはとても「聖人」とは思えなかった。
 しかし、やっぱり、ちびっ子にとってヴィンセントは、どうやら「一緒にいてくれる」だけでやはり頼りになるというか心の支えになったんだろう。そして、ヴィンセントも、言動はひでえ男のままではあるけれど、意外と素直というか優しい面はあって、周りの人々は放ってはおけない存在のようだ。そのへんはちょっと甘やかしているようにも見えるが、まあ、人間だもの。しょうがないよ。ヴィンセントも周りの人も、基本的には善意で生きているわけで、その辺の空気感は、たとえ甘くても、ま、心地いいものですね。最後にはしっかり泣かせに入るあたり、この映画の脚本はかなり上質だと思います。最後に、タイトルである『St.Vincent』の意味がしっかり分かる作りも、大変好ましいと思う。
 で、役者陣だが、主役のヴィンセントを演じたBill Murray氏はもういいとして、三人だけ備忘録としてメモしておこう。まず、ひ弱なちびっ子オリヴァー君を演じたのが、Jaeden Liebeherくんで、どうやら現在13歳ぐらいらしい。この映画は2014年US公開だったようなので、当時10歳だか11歳だったのかな。とても賢そうな、大変いい子でした。まあ、US子役はなかなか大成しないけど、きっとあと5年もすれば結構なイケメン君になりそうですな。すくすく育つことを祈ってます。そしてそのオリヴァーくんのお母さんを演じたのが、Meilssa MaCarthyさん46歳。彼女は先日大復活した女子版『GHOST BUSTERS』の太った科学者の彼女ですな。彼女も、Bill Murray氏同様に「サタデー・ナイト・ライブ」出身のコメディエンヌですが、彼女もまた、演技派枠に入りつつあって活躍してますね。今回は、真面目に働けど男運がないというか、必死に生きるお母さんをじんわり温かく演じてました。大変イイと思います。そして最後、ヴィンセントの馴染みの娼婦で妊娠中のロシア人女性を演じたのが、Naomi Wattsさん48歳。わたし的には、この人で一番思い出すのは、日本コンテンツとしても「貞子」でお馴染みの「リング」をハリウッドリメイクした『The Ring』かなあ……。1作目は意外と良くできてて面白かったと思うのだが……ま、いいや。そうだ、あと一人、知っている役者が出ていた。ヴィンセントが競馬場で会う、多分ヤクザの金貸しの男、その役を、Terrence Howard氏が演じてました。彼といえば、Jodie Forster女史の『The BRAVE ONE』とか、あとこの人は初代・ローディーですよ。『IRON MAN』におけるトニーの親友のUS-AIR FORCE所属の軍人さんで、後にWAR MACHINEスーツを着用してアベンジャーズ入りする彼ですな。彼は1作目しか出ていないけど、彼の方が2代目のDon Cheadle氏よりかっこいいと思います。
 で、本作の監督はというとTheodore Melfi氏という方で、わたしは知らない方です。脚本も監督自身が書いたそうですな。どうも長編は初めてみたいですね。お、マジか。この人はKimberly Quinnさんという女優の旦那らしいすな。主にTVシリーズで活躍している女優さんのようだが、本作でも、看護師役でちらっと出てました。

 というわけで、結論。
 ふと観てみた『St.Vincent』(邦題:ヴィンセントが教えてくれたこと)は、まあ想像の範囲内ではあるけれど、空気感としては大変好ましく、ハートウォーミング系作品としては上質な部類に入ると思います。格付けサイトでの評価もまずまずだし、おそらく万人にお勧めできる作品なのではなかろうか。ただ、真面目に生きるわたしとしては、残念ながら主人公ヴィンセントを聖人とは思えないし、もうチョイ、きちんと生きた方がええんとちゃいますか、というのが、わたしの結論であります。以上。
 
↓わたくし、この映画を中1の時かな、丸の内ピカデリーだったと思うけど、観に行きました。もちろん、有楽町マリオンができる前の、旧ピカデリーっす。なので、Bill Murray氏というと必ずこの映画を思い出す……。
パラダイス・アーミー [DVD]
ビル・マーレー
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2016-12-02

 というわけで、毎週月曜日は恒例の週末映画興行データです。
 先週はようやく風邪も落ち着いたものの、月末で忙しかったすなあ。そんな中、夜イーストウッド監督の『ハドソン川の奇跡』を観てきました。実はわたし、TOHOシネマズの「シネ・マイレージ」がかなり貯まっていて、大体2年に1回、「1か月フリーパスポート」をもらえるわけですが、現在ももらえるマイルが貯まっているものの、どのタイミングでパスポートをもらうべきか? が非常に難しくて、今回タダで観ようと思えば観られるのに、つい、お金を払って観ました。うーん、普段なら観ないけれど、タダなら観るか、というような映画の多いときにパスポートに交換しようと思いつつ……タイミングが難しい……。
 ま、そんなことはどうでもいいので、今週も、もう、さっさと本題に入りましょう。

 では、 さっそくいつもの興行通信社の大本営発表です。

 1位:『君の名は。』が6週連続1位。すでに累計128億円突破だそうです。動員数は、900万人を超えたけどまだ1,000万人には達していない。ちなみに『ポニョ』が155億だったので、それはもう余裕で抜き去りそうですな。凄すぎて、言うことないす。この週末だけでも7.9億稼いだそうで、前週末比較で 91%ぐらい? 異様なほど落ち率が低いので、まだまだ稼ぎそうですね。すげえ。
 2位:『ハドソン川の奇跡』が9日間合計で、たぶん6~7億ぐらいは到達していると予想。当初予測の15億は行けそうな予感です。かなり頑張ってますね。上映時間は96分だったかな、結構短めです。というわけでわたしも観てきました。わたしは元々イーストウッド監督が大好きなので、もう大満足です。ただし、それほど感動するとか、超最高、というものではなく、イーストウッド監督らしい、醒めた視点のカメラが印象的でした。大人にはお勧めです。
 3位:『映画 聲の形』が16日間で12億~13億ぐらいと見積もる。何度も言ってますが、スクリーン数が少ないのにこの数字は大ヒットですね。もう15億は余裕で超えるでしょう。ひょっとしたらもう、15億近くまで稼いでいるかも。いやそこまではまだ行ってないかな。自信なしです。
 4位:『SCOOP』が公開土日で1.56億だそうで、これは数字的にはちょっと物足りないと関係者は思っているはずだと思う。このペースでは、10億超えるのが精いっぱいかも。15億はちょっと壁になるか。ほぼ興味なし。
 5位:『怒り』が16日間で。10億には届いたかな、と予想。もうチョイ行ったか? いずれにせよ、依然、興行数値としてはやや厳しめでしょうか。
 6位:『闇金ウシジマくんPart3』が9日間合計で5億届いたかどうかぐらい? と予想。まあ、あまり興味なし。原作コミックは1巻しか読んでいません……。
 7位:『シン・ゴジラ』が67日合計で……今週も難しいな……75~76億ぐらい? だと思います。新宿TOHOではふたたびIMAX上映もやってるようですが、21時台の回だからなあ……。さっき、今日のチケット販売状況を見たところ。1/3ぐらいの入りですな。IMAXだからレイト扱いもないんだろうな……。
 8位:『四月は君の嘘』が16日間合計で12億ぐらい? と予想。原作漫画も読んでいないので、全然詳しくないので書くことなしです……。
 9位:『真田十勇士』が9日間合計で4~5億ぐらい? と予想。NHK大河の『真田丸』は、現在、信繁こと幸村はまだ高野山の九度山に蟄居中。どうやら来週から大坂の陣へ向けて大きく話が動きそうですよ。
 10位:『アングリーバード』が公開土日で1億程度、じゃないでしょうか。アプリゲームでおなじみの怒れる鳥野郎ですが、わたし的にはむしろよく日本で公開したな、と思うぐらいです。まあ、どういう客層なのか想像がつかないですが、やっぱりちびっ子向けなんでしょうか? 面白いんすかね? WOWOWで放送されたら観てみますわ。

 とまあ、こんな週末だったようです。 
 そういえば先週は、『JOJO』でおなじみの『ジョジョの奇妙な冒険Part4』の実写映画制作発表がなされましたな。わたしも連載開始からずっと読んでいるし、紙で単行本全巻持っているのに電子書籍でも全巻買ってしまったほどなので、いわゆる『JOJO』好きであるのは間違いないわけです。おまけにわたしは「第4部」の「杜王町篇」が大好きなので、ニュースを見て、な、なんだってーーーー!? とびっくりしたわけですが……どうなんでしょうなあ……まあ、一つだけ言うとしたら、承太郎を演じる伊勢谷友介氏はきっと相当カッコいいでしょうな。しかしあの帽子と髪が一体化している状態がどうなるのか、そこだけ観たいすね。それ以外は……まあ、別に……WOWOWで観れば十分かな……。
 というわけで、結論。 
 『君の名』のヒットは依然継続中。150億越えはもう見えた。どこまで伸びるか毎週要チェックですね。そして、意外と早くランクから消えてしまった『超高速!参勤交代リターンズ』が最終的にどのくらいになるかが気になります。まだ10億超えたどうかぐらいだと思うから、前作越えはもはや厳しいかなあ……どうでしょう……。以上。

 わたしは宝塚ファン歴まだ6年ほどのビギナーだが、一番最初に観たのが2010年1月の星組公演であり、以来、完全に当時のTOPスター柚希礼音さん、通称ちえちゃんにぞっこんLOVEとなったわけで、既に宝塚歌劇を卒業し、女性に戻ったちえちゃんであるが、わたしは今も大いに応援し、卒業後のコンサートにもせっせと通っているわけである。
 そのちえちゃんが、今度は初めて女性役として、ミュージカルに主演すると聞いて、わたしが観に行かないわけがない。当然わたしは、チケットの先行予約から参戦し、無事にチケットをGetして、今日、観てきたわけである。
 作品のタイトルは、ミュージカル『バイオハザード―ヴォイス・オブ・ガイア―』。そう、CAPCOM謹製の大ヒットゲームでおなじみの、そしてハリウッド映画でもおなじみの、あの『バイオ』である。 

 わたしは『バイオハザード』のゲームは、「1」「2」「3」「コード・ベロニカ」の4作をプレイして結構やりこんだことがあるので、一応それなりに世界観は知ってるつもりである。特に「1」「2」「3」はノーコンティニューでのタイムアタックまでやりこんだので、思い入れもそれなりにある。20世紀の話なので、改めてもうそんな昔か……と感慨も深い。
 そのわたしが、次のちえちゃんの作品は『バイオハザード』だということを知って、驚かないわけがなかろう。はっきり言って、すげえびっくりした。「バイオ!? ミュージカル!? ちえちゃんが!? ナンデ? バイオ、ナンデ!?」と思わず反応したのも我ながら無理はないと思う。
 ハリウッド映画版でもおなじみのとおり、普通に考えて『バイオハザード』という作品とミュージカルは、まず結びつかない。なにしろ、ゾンビを相手に戦いながら、アイテムを獲りつつ、謎を解いていくゲームだ。どうやってミュージカルにするんだ!? とわたしもさっぱり予想がつかなかった。
 というわけで、わたしは今日、実のところ結構な不安を胸に赤坂ACTシアターに赴いたわけである。同行してくれた美人ヅカ友のMちゃんも、当然ちえちゃんのことはよく知っているわけだが、「あたし、ゲームは全くやったことないんですけど、お話分かるのかしら?」と若干心配気味である。わたしも、そう聞かれても、「どうだろう、分かんねえけど、分からんことがあったら、終了後、解説してあげる」としか言いようがない。そんな、そこはかとない不安感を抱えながら、幕は上がったのである。
 結論から言うと、ゲームの設定は100%関係ない。全くもってゲームは関係してない。ので、ゲームを知らなくても、ハリウッド版の映画を見ていなくても、大丈夫、であった。その点は心配している方がいれば、問題なし、と断言できる。ちゃんと観ていれば、ストーリーはきっちり分かるので問題なしである。
 そしてこれまた結論から言うと、ちゃんとミュージカルであった。ちゃんと、というと大変失礼だが、ちえちゃんの歌も予想してたよりずっと多いし、一回、ちえちゃんのバレリーナとしての美しい舞もあるので、ちえちゃんファンも心配なし、である。男性キャストも、きっちり実力のある方ばかりなので、歌もお見事である。つまり、だ。要するにわたしは結構楽しめたし、満足であったのだ。
 大まかなストリーを説明すると、まず冒頭、アラスカで氷漬けとなっていた生物から謎のウィルスが発見され、それが全世界に広まると。ゲームや映画の「バイオ」では、人が造ったウイルスであり、人間の悪意がそこに存在しているわけで、今回は自然発生(?)ウィルスなので、その点が大きく違っていた。そして世界がゾンビに満ちて久しい世となり、舞台はクロアチアに移る。そこで暮らす人々はゾンビに怯えながらも何とか生きていて、その村(?)には、記憶を失ったリサ・マーチンという女性がいると。で、どうやらゾンビに襲われてもゾンビ化しなかった少女がシシリアの南にあるなんとかって島にいるという情報がもたらされ、村の医師であるダンが、その少女がワクチンを作るカギだ、ということで、イタリア北部(?)のUS-AIR FORCEの基地に行けば飛行機でそのなんとか島に行ける、自分はUS国籍だからなんとかなるだろ、というわけで、有志を募って遠征に出る。で、残されたリサも、とある事件が起こってそれを追う、そして徐々に自分の過去を取り戻す――的な感じの流れである。
 ちなみに、上演時間は、第1幕がちょうど1時間、休憩が20分、第2幕が1時間20分ほど、であった。12時開演の回だったが、15時前には終わったので、まあ、普通かな、いやちょっと短いか。
 まあ、わたしとしては十分楽しめたわけで、見どころ・聴きどころはやっぱりちえちゃんの歌とダンスであろう。そういう意味では、ちえちゃんファンじゃない人が観て楽しめるのかどうかは、実際よくわからない。まあ、わたしの見る限り、今日来場していたお客さんは、わたしを含め10割方はちえちゃんファンだと思うので、その点では興行として問題なしだろうと思う。
 ただ、作品クオリティとしては、厳しく言うと、並、であろうと思う。別に感動するわけではないし、超面白い!! というお話でもない。歌自体も、ちえちゃんの声は素晴らしいけれど、曲も詩も、それほどグッとくるものはなかったというのが正直な感想だ。音響も、ACTシアターでの観劇はわたしはかなり久しぶりだが、若干音が割れ気味のような気もしたので、あまり素晴らしいとは言えなかった。ちなみに、音楽は生オケでした。背後にバンドがちゃんといて演奏してくれていました。
 なので、極論すれば、ちえちゃんの、ちえちゃんによる、ちえちゃんファンのための公演であろうか。ま、わたしはまさしくそのちえちゃんファンなので、特に文句はありません。つーかむしろ、きっちりとちえちゃんの歌を聞かせてくれてありがとう、である。今回は明確に女性の役だったので、発声も変わってくるのかと想像していたが、いつもの野太い(?)声ではないけど明らかにちえちゃんヴォイスで、なんかナチュラルなちえちゃんの声、のように感じました。なので、わたしとしては大変満足です。
 本音を言うと、ちえちゃんには名作といわれるようなミュージカルに、主演じゃなくていいのできっちり出演し、その実力を見せつけてほしいと思う。たとえば、「レ・ミゼラブル」のエポニーヌとかね。ちえちゃんが「On my Own」を歌ったら超シビレると思うんだけど、もはやちえちゃんクラスは主演じゃないとダメなんだろうな……。キャラも合わないかなあ……イケると思うんだけどな……。まあ、宝塚OGのみなさんは様々なミュージカルに出演して活躍しているので、ちえちゃんの今後についても全く心配していないけれど、いっそ劇団 新感線の『五右衛門ロック』とか『薔薇とサムライ』みたいなのにも出てほしいですな。 天海祐希先輩のように、大いに活躍していただきたいと心から願っております。

 というわけで、結論。
 ミュージカル『バイオハザード―ヴォイス・オブ・ガイア―』は、実は若干不安だったのだが、観てみたら十分楽しめるものであった。事前「バイオ」知識不要である。だが、まあ、ちえちゃんファンにとっては歌もダンスも見どころ・聴きどころいっぱいであるのは間違いないけれど、そうでない人が観て面白いかどうかは、わたしには分からない。なので、ちえちゃんファンなら迷わずGO!だし、そうでない人は、ま、最初から行こうとは思わないだろうからどうでもいいか。ちえちゃんファンとして、注文を付けるとしたら、今後は名曲・名作と言われるような作品に出てほしいと思います。 歌でグッとくるような、なんかいい作品ないすかね……。新感線にも出てほしいなあ……ま、今後もずっと応援し続けるのは間違いないと思います。そして今後の活躍を心から楽しみにしております。以上。

↓ 最新作はもう「7」すね。PS4買うってのもアリだな……なんか久々にやってみたい気分す。
 

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