2016年01月

 というわけで、今日もWOWOWで録画した映画を観たのでその感想です。正確にいうと観たのは昨日だけど、これまた奇妙な映画であった。タイトルは『AFFLICTED』。日本語訳すると、「悩み」とか「●●に苦しめられた」とかそんな意味合いだと思う。例によって例のごとく、なんでまたこの映画を録画しようとしたのか、1ヶ月前の自分が全く記憶にないわたしであった。
 
  というわけで、今回も一体どういう映画なのか、さっぱり判らないまま見始めたのだが、開始してすぐに、この映画がいわゆる「POV」モノの低予算映画だと言うことが分かる。「POV」(=Point of View)とは、いわゆる一人称視点(First Person)の、作中人物がビデオカメラを回して撮ったもの、という設定の作品である。おそらくはその先鞭をつけた映画として一番有名なのは、1999年に公開された『The Blair Witch Project』だろう。今や誰もが4K画質で映像を残せる時代、自分で動画を撮影したことのある人なら十分実感できると思うが、異様に綺麗な映像をごく簡単に、いまやスマホでさえ余裕でフルHD動画を撮れる時代である。なので、『The Blair Witch Project』以降、さまざまなPOV作品が世にあふれている訳だが、本作もまた、とある二人組が、BLOGにUPする動画を撮影しているという設定である。物語としては、中国系(?)アメリカ人のデレクと、その親友クリフが世界一周の旅に出る、その旅先での行動を動画で公開するので、みんな観てねーというわけで、二人は多くの友人たちに見送られて旅立つところから始まる。なんでも、デレクは脳の血管に血栓が溜まる持病があり(このことがちょっとした伏線になっている)、これが最後の自由を謳歌する時間である、というわけで、思い出旅行でもあるらしい。
 スペインから始まった二人の旅は、出発して7日目、パリに至る。そしてその夜の出来事が大きく二人の運命を変えてしまうことになる。デレクがナンパした女がいて、ホテルに連れ込むことに成功するのだが、ホテルにしけこんだ二人を、クリフがドッキリで撮影しちゃおう、と部屋に乱入する、と、女はいない。そしてデレクは、血を流して失神している。なんだなんだ、何が起こった? よく分からないが、デレクは部屋に入るなりぶん殴られて、それっきり記憶がないという。幸い怪我はたいしたことはなかったのだが、翌日からデレクの体に異常な変化が起きてきて……とまあそんなお話である。
 はっきり言って、たいしたことのないお話なのだが、POVを駆使した映像は、これは一体どうやって撮影したんだ!? というようなモノが多く、デレクとクリフが本名のまま、共同監督&共同脚本を担当しているようだが、なかなかの技術と才能が垣間見える作品であった。ただし、POV以外の作品をこの二人が撮れるのかどうかはさっぱり分からない。現状では、一発ネタとしか言いようがないので。
 わたしが激賞しているPOV作品といえば、『Cloverfield』と『Chronicle』の2本だが、『Cloverfield』を撮ったMatt Reeves監督は(この人はJJ Abramsと子供の頃からの親友)、その後数々の作品を撮ってメジャー監督となり、2014年には『Dawn of the Planet of the Apes(猿の惑星 新世紀)』に抜擢されてビックバジェット作品を手がけるようになったし、『Chronicle』で監督デビューしたJosh Trank監督はその後、マーベルヒーロー映画『Fantastic 4』に抜擢された。そんな実例もある通り、今や才能ある新人が映画界に名乗りを上げるのに、POVという形式は非常に有効な形であるとも言える。何しろ機材に金がかからないし、登場人物も少数に絞り込むことができる。どうやら本作もクラウドファンディングで金を集めたようだけれど、低予算で実現できる形としては非常にやりやすい。
 おそらくは、POV作品で一番キモになるのは、「なんで登場人物は撮影しているのか」という初期設定だろう。大抵の場合は、なにか異常なことがあって、その真相を解明しに行く調査チームの記録映像、みたいな場合が多い。なので次に重要となるのは、その「異常なこと」だ。本作の場合は、デレクの体に起こる異常現象なのだが、これはこれで、結構面白かった。意外とチープなところはなく、しっかり撮られている。結構わたしは、やられた感があって、正直くやしい。クソ、結構いい画撮ってんなあ、というのが今回のわたしの感想である。まあ、物語はありがち? なので、素直に褒めてあげないもんね、と、とりあえずの負け惜しみを言っておこうと思います。
 というわけで、結論。
 『AFFLICTED』は、画的にはかなり悪くない。正直素人な二人組だが、相当頑張っていると思う。かと言って万人におススメかというと、そういうわけにも行かず、だがしかし、映画界に興味がある人には必見と言っていいような気もする。特に、日本の映画界の若手のみなさんには、少なくともこのレベル以上のものを撮って欲しい。なんで日本の低予算作品って、すぐにふざけちゃうんだろうな……この映画は、相当真面目に相当頑張ってますよ。以上。

↓ なんと、いきなり『Cloverfield』の続編の予告が公開されました。どんな話になるんだろう? 楽しみです。



 寒い。現在、わたしの部屋の室温7.4度。
 わたしは暑いのが苦手なので、冷房は容赦なく使うが、寒いのは着込めば結構耐えられるので、ほぼ暖房は使わない。まあ、そんなことはどうでもいいのだが、今日はあまりに寒くて午後は何もする気にならず、布団に入ったまま、WOWOWで録画した映画でも観るか……と、録画リストを見てみたところ、 『わたしは生きていける』という作品が録画されているのを発見した。何故録画しようと思ったか、全く心当たりがなく、なんだこれ? と思ったものの、上映時間が100分ほどと手ごろなので、とりあえず観てみるか、と再生をスタートした。すると、冒頭のキャストのクレジットが出て、一発で録画した理由を思い出した。この映画は、4週間後のアカデミー主演女優賞にノミネートされたSaoirse Ronanちゃんが主演しているから観ようと思ったのだった。ついでに言うと、次期SPIDER-MANを演じることが決まっている、Tom Holland君も出ているらしい。なるほど。ストーリーは全く分からないが、どんな話だろう? と思いながら鑑賞を開始した。そして、物語は全く予想外の展開で、かなり驚くことになったのである。

 上記の動画は、この映画の公式予告編だが、物語はほぼ語り尽くされている。わたしはこの動画を観ないまま、鑑賞を開始したので、どんなお話か全く知らなかった。
 冒頭、主人公の女の子がイギリスにやってくる。若干パンクじみたファッションに身を包んだ女の子。出迎えに来たのは、兄と妹のいる14歳の少年で、主人公の親戚らしい。そして何かと態度の悪い主人公。わたしはこの時点で、主人公の女の子の素行が悪くて、夏休みはイギリスの親戚の家に行くことになってしまって、そこで触れた自然や人々の温かさで、いい子になってアメリカに帰る、そんなハートウォーミング系の話かなと思った。
 が、物語は全く違う展開になる。空港もやけに軍人の警備が多かったり、空には戦闘機が編隊を組んで飛んでいたり、と言うような描写があって、冒頭から緊張感がなんとなく示される。そしてある日、子供たちが川に泳ぎに行ってピクニックをしていると、突然の突風と、爆音が空を轟かす。何かが起きた。皆であわてて家に帰り、テレビをつけると、ロンドンで核テロが勃発したことが報道されている。そこから物語は急展開し、どうやらヨーロッパで戦火が起こり、少女たちのいる家にも軍人がやってきて、女の子2人と男の子2人に分かれてしまう。その後、主人公の避難先にも戦火が迫って、幼い親戚の妹を伴って、みんなの家に戻ろうとするのだが……というようなお話であった。
 まあ、お話的には後半妙に血なまぐさくなってしまうのだが、戦争の理由とか背景が一切描かれないので、正直なところ、若干おとぎ話めいていて、起こる事象や映像そのものはやけにリアルであるけれど、わたしとしては最後までどうにも物語りに入り込めなかった。 
 で、役者としてはやはりSaoirse RonanちゃんとTom Holland君であろう。
 Saoirse Ronanちゃんは、以前も書いたがとにかく目が印象的な可愛い娘さんであろう。美しい青い瞳。正統派美人である。13歳で出演した『Atonement』 (邦題:つぐない)でアカデミー助演女優賞にノミネートされた、若手ナンバーワンクラスの演技派女優として注目を浴びている。この映画では珍しく「ちょっと問題児」な女の子を演じていたが、その背景も一応は描かれていて、演技としても非常に良かった。果たして4週間後、アカデミー主演女優賞を獲れるのか、わたしも楽しみである。まあ、ちょっと今回は難しいかな、とは思うけど。
 Tom Holland君は、先日の『IN THE HEART OF SEA』(邦題:白鯨との闘い)でもなかなかいい演技をしていたが、 今回も、かなりいい。おそらく主要メンバーで一番光ってるように思う。まあ、わたしとしては、今年一番観たいと思っている映画『CAPTAIN AMERICA:CIVIL WAR』で、とうとう参戦するSPIDER-MANの姿を観たいものだ。この少年は、今年20歳になるのかな。たぶん、けっこうイケメンに成長すると思いますよ。
 もう一人、Holland君のお兄ちゃん役で、Saoriseちゃんが好きになる少年を演じたのがGeorge MacKayという中途半端なイケメン君である。わたしはこの人のことを全く知らなかったのだが、どうも実生活でも、この映画での共演をきっかけにSaoriseちゃんと付き合ってるらしいですな。全く持ってけしからん。
 最後、どうもこの映画、妙にパーツパーツはリアルだし、結構金かかってるし、映像自体は非常に悪くない、特に照明・ライティングのセンスはいいね、と思って観ていたのだが、監督は『The Last King of Scottland』を撮ったKevin Macdonaldであった。なるほど、あの映画も結構良かったもんな、そうか、あの監督か、と納得である。

 というわけで、結論。
 あまりの寒さで引きこもるわたしが今日観た映画、『HOW I LIVE NOW』(邦題:わたしは生きていける)は、物語的には、完全にラノベである。ある種のファンタジーと言っていいかもしれない。ので、とりあえずSaorise Ronanちゃんや、Tom Holland君をチェックしたい人にはおススメだが、そうでない人はまあ、予告を観て興味が引かれるかどうか、で判断いただきたい。以上。

↓原作小説。海外ではかなり売れたそうです。あまり読む気にはなってません。今のところ。Amazonレビューによると、「純愛の感動作」ですって。
わたしは生きていける
メグ ローゾフ
理論社
2005-04

 年末に、山田洋次監督の『母と暮らせば』を観て、大いに感動し、その後、『小さいおうち』も観て、まったくもって今さらながら、やはり山田洋次監督はすげえなあ、と思ったわけであるが、同時に、わたしはすっかり黒木華ちゃんにぞっこんLOVEとなり、年末から現在に至るまで、華ちゃんの天然昭和フェイスが頭から離れないわけであります。だいたい、華ちゃんは1990年生まれのれっきとした平成生まれなのに、昭和顔ってなんなんだ、と思われる方も多かろうと思う。敢えて言おう。だが、それがいい。のである。
 で。どんどん華ちゃんが好きになったわたしとしては、当然ながらいろいろ調べさせてもらった。ほほう、大阪出身ね、ほほう、身長164cmね、ほほう、NODA・MAP出身ね、なるほどなるほど、タバコを吸うらしい? いいよ、全然OKだよ、などと、年末ごろのわたしは半ば変態じみた様子であったに違いない。そしてそんな時、華ちゃん主演の舞台演劇が年明けから始まるという情報を得た。……のだが、既にもうチケットは発売中で、わたしが気が付いた時はもう、あまりいい席はなかった。なので、どうしよう、せっかくの生のお姿を見られるチャンスなのだから、席はどこでもいいから行くか? と、かれこれ14日間ほど悩み、いや、やはり行くべきである!! とわたしの内なる叫びが聞こえたような気がするので、チケットを取得し、おととい観てきた。その舞台とは、『書く女』という作品である。
kakuonna
 ↑公演パンフの表紙ですが、どうですか。かわええ……そしてカッコイイ。
 物語は、パンフによれば日本最初の女性職業作家、樋口一葉の生涯を描くものである。しかし、わたしはこれほど樋口一葉のことを知らなかったのかと、若干愕然とし、また同時に情けなくも恥ずかしい思いをするに至ったのである。わたしの周りの人はご存知の通り、わたしは文学修士であり、それなりに勉強してきたつもりなのだが、国文学専攻ではないとはいえ、これほど無知とは、我ながら呆れてしまった。そんなことも知らなかったのか、と大変恥ずかしいのだが、わたしが樋口一葉という作家個人について初めて知ったことを以下にまとめると、大きなものは3つある。
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 ■本名について
 「樋口一葉」がペンネームであることは知っていたけれど、本名が「樋口夏子」ちゃんという可愛らしい名前であることすら知らなかった。なっちゃん……可愛いじゃないですか。どうでもいいけどわたしは、断然●●子という名に魅かれます。
 ■生涯について
 1872年(明治5年)生まれで、1896年(明治29年)に短い生涯を終えてしまったことも知らなかった。わずか24歳。死因は肺結核だそうだ。なんて気の毒な……。なお本舞台では、樋口一葉の『たけくらべ』を絶賛した森鴎外(=お医者さん。樋口一葉の10歳年上)が、腕利きのお医者さんを紹介してくれたことになってました。
 ■作家としての活動期
 一番わたしが驚いたのが、彼女のメジャー作品の大半は1894年12月から1896年2月までの14カ月間に集中して刊行されたものだそうで、その期間は「奇跡の14カ月」と言われているんだそうだ。マジか……全然知らなかった……。
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 おそらく、これらのことは国文学をちょっとでも勉強したことのある人には常識かもしれないけれど、わたしは何よりもあまりに若く亡くなり、そしてあまりに集中した作家生活だったことにかなり衝撃を受けた。
 で。今回の物語は、1891年(明治23年)、樋口夏子ちゃん(19歳)が入門してた歌塾「萩の舎」の内弟子生活から、新たな生活に踏み出そうとするあたりから始まる。この時既に、夏子ちゃんは父を亡くし、若干17歳で「戸主」になっている。つまり、一家の稼ぎ手であり、大きな義務と権限を持つ存在で、現代の世帯主なんかよりももっと重い。母と妹を養うのが義務であり、極めて重いプレッシャーを背負っている。本舞台では、そんな夏子ちゃんが「萩の舎」で出会った親友の伊藤夏子(この人も夏子、なので、この人は「いなつ」と呼ばれ、樋口夏子ちゃんは「ひなつ」と呼ばれる)と田邊龍子から、とある作家を紹介されるところから始まる。常にお金に困っていた樋口家は、「萩の舎」の内弟子としての給料ではとても妹の樋口くに、母の樋口たき、を養っていくことが出来ないため、「プロ小説家」になろうとしたわけだ。そしてその弟子入り先が、半井桃水(なからい とうすい)である。新聞記者でありながら、新聞小説も書いていた半井の元で、最初の修業を始めるのだが、ここでの経験が、どうやら決定的に樋口一葉を形作ったらしい。しかし、この半井という男は残念ながら若干のだめんず気質があり、第1幕は、イケメン半井に心惹かれながらも、半井の元を離れることを決意して、一人でバリバリ頑張るぞー! 行くぜ!! という威勢のいいところまでであった。
 ここまでの上演時間は1時間15分ぐらいだったと思う。そして15分ほどの休憩を経て、第2幕はとにかくお金に困っている樋口家が、夏子ちゃんの稼ぎだけではやっていけず、吉原の近くで荒物屋を開業したり、やっぱりそれではうるさくて集中できないので、店をたたんで引っ越したり、と執筆以外にもなにかと落ち着かない様子が描かれる。また、執筆の方は、「文学界」という雑誌に参加して経験を積んで、作家としての腕はどんどん上がっていく。そして亡くなる直前に出会った斎藤緑雨という小説家兼批評家との文学論争(?)が、おそらくはクライマックスだ。第2幕は上演時間1時間20分ほどだっただろうか。生の黒木華ちゃん体験はあっという間に終了を迎えてしまった。
 というわけで、以下、いろいろ思ったことを書いていこう。
 ■物語構成について
 ちょっとまず、うーむ? と思ったことは、なんとなく山場がないというか、比較的どんどんと話が進むので、盛り上がりが薄い。そういう意味では、劇的=ドラマチックではあまりない。運命の逆転のようなものもなく、いやあるんだけどごくあっさりしている。もちろんだからと言って面白くなかったかというとそんなことは全くなく、各役者の演技も確かで、もちろん、華ちゃんは抜群に良かった。
 ■黒木華ちゃんについて
 やっぱり、わたしは何度か書いているように、声フェチなんだと思う。華ちゃんの声が、わたしはどうも非常に好きなんだなと改めて感じた。今回は当然、ずっと和服、着物なわけだけど、所作もきっちり決まっていて、非常に美しかった。ちょっと笑わせるようなギャグシーンも、とても可愛らしい。やっばいな、マジ華ちゃんいいわ。
 ■競演陣について
 共演陣でわたしがこの人はいい、と思ったのが、やはり半井桃水を演じた平岳大氏と、樋口夏子ちゃんの妹、「樋口くに」を演じた朝倉あきさんだ。もう、平岳大氏は、平幹二郎の息子という看板は全く不要ですね。今回の舞台はたぶん、マイクナシの生声だったと思うのだが、岳大氏の声は明瞭に通るいい声だし、もちろんルックスもいいし、なにより堂々としていてカッコイイ。今回の芝居振りは非常に良かった。そういえば、NHK大河『真田丸』での武田勝頼役も、実に貫禄のある、強いけど悲しく儚い勝頼を演じてくれてましたね。それから朝倉あきさんは姉を支えるしっかり者としてとてもいい演技を見せてくれた。この人、ちょっと今後わたしは応援したいと思います。
 また、競演陣には一人、わたしが特別の思い入れのある人が出演していた。その名も、兼崎健太郎くん。何故わたしが彼に特別なものを感じるかというと、この人、かの『ミュージカル・テニスの王子様』で、王者・立海中学の真田副部長を演じてたのです。約10年近く前、わたしが『テニミュ』を10回ぐらい観に行ったことは以前書いた通りだが、中でもわたしは兼崎くん演じる真田副部長の持ち歌「風林火山」が大好きだったのです。しかも、兼崎くんは『テニミュ』キャストの中でもNo.1クラスに、異様に滑舌が良く、ああ、この人はすげえ訓練を重ねてるんだろうな、と当時から思っていた。なので、今回の再会は、わたしは本当に嬉しく思った。この10年、きっとサボらず常に研鑽を重ねてきたんだろうな、ということがひしひしと伝わる、見事な芝居振りでした。 
 ■音楽について
 今回、音楽として、舞台後方にピアノが置かれ、ピアニストが即興で生演奏する形であった。これはちょっと面白いと思った。
 ■終了後のトークショーについて
 実はわたしがおとといの公演チケットを取ったのは、終了後になんと山田洋次監督と、本舞台の主宰である永井愛さんのトークショーがあったからだ。どうやら、山田監督と永井さんは付き合いが長いようで、今回の舞台に華ちゃんを起用するにあたっては、永井さんが山田監督を通じて声をかけたんだそうだ。実のところ、本作は10年ぶり再演で、10年前の公演は、寺島しのぶさんが樋口一葉、筒井道隆氏が半井桃水を演じたそうです。このトークショーでは、結構、へえ~と思うことが聞けたけれど、もうちょっとだけ、司会進行には頑張ってほしかったな。20分ほどであっという間に終わってしまったのが残念。

 というわけで、結論。
 黒木華ちゃんは当面、わたしの大好き女優第一席として君臨するようです。今回の舞台は、もっといい席で見られたらもっと良かっただろうな……これから全国ツアーで回るそうなので、お近くの劇場へぜひ足をお運びください。わたしはさっそく、樋口一葉の作品を読み始めました。が、やっぱり「雅文調」は読むのが難しいね。やっと少し慣れてきたところです。あと、わたしの大好きな夏目漱石は、完全に同時代人なんだけど、漱石が作品を書くようになる頃にはもう、樋口一葉は亡くなっていたということも初めて知った。ああ、樋口一葉があと10年長生きしていたら、口語体の作品も書いていたかもしれないと思うと、本当に残念です。以上。

↓ まずはコイツから読み始めています。
たけくらべ (集英社文庫)
樋口 一葉
集英社
1993-12

 毎週木曜日は、今週の『鮫島』ニュースのお時間です。
 今週の週刊少年チャンピオンは全般的に大きな動きなしです。
 ■『弱虫ペダル』
 中間スプリントで、変態小鞠くんを撃破した泉田アブ一郎くん。そこにはあこがれの先輩、直線鬼こと新開さんが観に来てくれていました。新開さんは、戦いの前にいつも指を相手に突き出して、「バキュン」とポーズを決めるのですが、今回は泉田くんへ「バキュン」です。泉田くんは「今のは、あれは――ねぎらいのバキュンだ……!!」と理解してお礼を言ってレースに復帰しました。ちなみに、この「バキュン・ポーズ」は、元ネタがあって、わたしが一番応援している実在のレーサー、 Alberto Contador選手が勝利した時にいつもやるポーズなのです。新開くんは、宣戦布告に使いますが、コンタドールは1位でゴールした時に、ガッツポーズの代わりに使います。以上、豆知識でした。
 ■『牙刃道』:ジャック・ハンマー、本部のおっさんにやられっぱなしの中、ついに得意の「噛み付き」炸裂。 
 ■『囚人リク』:今週はイカレ原田の顔芸炸裂ww あの1ページに最高に笑ったww 
 ■ほか、『ニコべん!』『Gメン』『兄妹』『少年ラケット』は順調に面白い。単行本買ってもいいレベル。そして、『スメラギ・ドレッサーズ』がとうとう掲載順最後尾になってしまい、終わってしまうような嫌な予感がする……。だ、大丈夫なのか、心配だ……。

 さて。では、今週の『鮫島』ニュースです。
 先週は、まわしに手をかけた鯉太郎に、【大山道】兄貴のそっ首落としが炸裂したところで終了しましたが、その続きです。基本的に今週の土俵上は、何度も炸裂する【大山道】兄貴 素っ首落としを耐え続ける鯉太郎、ということで、時間にしておそらく10秒ほどの展開でした。なので、今週、主に描かれたのは、土俵の外で【大山道】兄貴を見守る山ノ上親方と【蒼希狼】のやり取りです。
 【大山道】兄貴は、いつもはスマートでクールな相撲を取る男ですが、鯉太郎との戦いは、激しく荒いものになっていく。【蒼希狼】はそのファイトに呆然とします。その様を見て、親方は言います「まるで獣のような剥き出しの闘争心・・・あそこにいるのは かつてのお前そのものだとは思わんか・・・」【蒼希狼】は、うつむいて、今さらあれには戻れない、相撲の道を選んだために、一番守りたかった大切な仲間が死んだんだ、仲間のために何が何でも勝ち、金を稼ぐというのが土俵に上がる理由だった、もう、相撲を取ることに何の意味もない、選択を間違えたんだ、と語ります。しかし、親方は言います。「選択の連続・・・それが生きることだ。選択が思い通りになるとは限らん。背負って歩け。最高も最悪も全部。死ぬまで 忘れたくとも忘れられないことは・・・わすれてはいけないことだ」折しも土俵上では、【大山道】兄貴の熱い戦いが続いています。その戦いの気迫は「蒼・・・・・・こっちに来い・・・蒼・・・」と叫んでいるかのよう。涙を流しながら【蒼希狼】は思います。「クソ・・・引っ張るなよ・・・」
 というところで今週は終了。いよいよ【蒼希狼】の心に、再び火が灯りそうですな。しかし、それよりわたしは鯉太郎が心配でなりません。15日間戦い続けることができるのか、これからも『鮫島』を応援させていただきますよ!!
 最後に、毎週のテンプレを貼って終わります。
 <場所:9月場所>
 【鮫島】東前頭十四枚目(5月場所で東前頭十枚目)
 【白水】西小結
 【松明】東前頭六枚目。常松改め。
 【大吉】序2段【豆助】序ノ口【目丸手】序二段【川口】不明
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 1日目:【飛天翔】西前頭十二枚目。石川改め。
 2日目:【宝玉光】西前頭十一枚目
 3日目:【舞ノ島】西前頭十枚目
 4日目:【巨桜丸】西前頭九枚目。新入幕力士
 5日目:【岩ノ藤】東前頭七枚目 
 6日目:【大山道】西前頭七枚目
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 【天雷】東関脇
 【蒼希狼】??? 最高位は小結
 ※右額の傷は、初入幕初日の【桐の里】戦で負ったもの
 ※現在の現役横綱は、モンゴル出身力士で「大横綱」と称されている模様 
  ただし、【蒼希狼】の過去話の時点なので、この9月場所も現役か不明。

 というわけで、結論。
 今週の『鮫島』も、現実時間では10秒くらいの進捗でした。鯉太郎と【蒼希狼】の割は組まれるのかな……早いとこ【蒼希狼】の番付を教えて下さい、佐藤先生!!

↓ わたし的に、コンタドールが一番カッコ良かったと思うのが2009年のツール・ド・フランスかな。本当は2012年のジロ・デ・イタリアの方が好きなんだけど、後にドーピング違反で優勝はく奪に……。
ツール・ド・フランス2009 スペシャルBOX [DVD]
ランス・アームストロング
ジェイ・スポーツ
2009-12-18

 と、いうわけで先日の日曜日に今年の大相撲初場所は千秋楽を迎えた。
 その千秋楽において、日本全国の大相撲ファンが注目したのは、大関【琴奨菊】関による10年ぶりの日本出身力士の優勝が決まるか!? というものであった。わたしも、かなり興奮しながらその瞬間をTVで観戦させていただいた一人である。
 ところで、相撲に全く興味のない方に一応説明しておくと、「日本出身力士」って何よ? 「日本人」って言えばいいじゃん? と思っている方もいるだろう。そりゃそうだよね。知らなきゃ、誰でもそう思うと思う。これはですね、2012年の5月場所で優勝した力士、【旭天鵬】関が、モンゴルから帰化した日本人ということなんですな。 彼は2005年に日本国籍を取得しているのです。なので、「日本人の優勝」と言うと、この2012年5月場所の【旭天鵬】関以来なので、まあ約4年ぶりという事になる。
 実はこの【旭天鵬】関が優勝した時も、日本人の優勝は、さかのぼると2006年初場所の【栃東】関以来だったので、6年ぶりとかなり久しぶりだったのだが、要するにこの【栃東】関の優勝から数えて10年目に、ようやく「日本出身力士」の優勝がかなった、というわけであります。 
 で。大相撲のヒエラルキーについても、ちょっとだけ説明しておこう。()内の数字は、平成28年初場所での人数です。
■横綱(3人)・・・神様クラス。引退しない限りずっと横綱。落ちることはない。
--------<超・巨大な壁>--------
■大関(4人)・・・選ばれし者たち。負け越すと「カド番」と呼ばれ、「カド番」で負け越すと地位喪失。
--------<巨大な壁>--------
■関脇(2人)・・・神への挑戦者たち。負け越し1回で地位喪失が基本。
■小結(2人)・・・神への挑戦者予備軍。負け越し1回で地位喪失が基本。
--------<大きな壁>--------
■前頭(31人)・・・筆頭から15~16枚目まで存在しているメジャーリーガー。通称「平幕」。
--------<大きな壁>--------
■十両(28人)・・・マイナーリーガー。定員東西14名ずつ。十両以上を「関取」と言い、●●関と呼ぶことが許される。付け人もついて大銀杏もやっと結うことが許されるなど十両以上とその下では大きく待遇が変わる。
--------<巨大な壁>--------
■幕下(120人)・・・正式には、幕下以下は「力士養成員」で7戦しかしない。定員は東西筆頭から60枚目の120名。
■三段目(200人)・・・定員は東西筆頭から100枚目までの200名。
■序二段(196人)・・・定員は特にナシ。もちろん、筆頭が一番上で枚数が下ほど下位。 
■序ノ口(45人)・・・番付最下位。怪我や病気で全休してしまうと番付外へ陥落
--------<ハードル>--------
■番付外・・・新弟子試験に合格した人、序ノ口から陥落した人。1番でも「前相撲」を取れば序ノ口に行ける。

 というわけで、普通の人が見るNHKの相撲中継は基本的に幕内(前頭より上)の取組なので、大相撲全体からするとほんの一握りのメジャーだけ、ということがお分かりであろう。で、そのメジャーの中でも、横綱を頂上として、大関、関脇、小結という三役が存在し、その下に前頭と呼ばれる平幕力士がいる。当然、全15戦の取組は、この3+4+2+2+31人=東西合わせて42人で行うわけだが、力の差が大きいので、例えば前頭15枚目にいる平幕下位の力士と横綱が闘うことは、事実上ない。基本的には自分の番付に近い力士と闘うのだが、大相撲の素人のわたしから見ると、一番厳しい闘いを強いられるのは、おそらく「前頭筆頭」という番付に位置する力士なのではないかと思う。
 何故そう思うか?
 まず、「前頭筆頭」という番付になると、ほぼ確実に、「全横綱・全大関・全関脇・全小結」という、確実に自分よりも強い力士との取組があるはずだ。今年の初場所で言うと、要するに全15戦中3+4+2+2=11戦が格上力士との闘いになる。また、「前頭筆頭」は当然、東西の二人いるので、自分と同格の力士とも闘う。もうこれで12戦である。残りの3戦だけ、自分より格下ということになるわけで、これは相当厳しい闘いだということが分かってもらえると思う。
 もちろん、平幕下位の力士も、事実上自分より格上ということになるが、平幕の力士たちの実力は、当然のことながら明らかな力の差はなく、三役以上とは比べ物にならない。
 なので、「前頭筆頭」という立場から勝ち越すには、同格の筆頭を含めて平幕力士との闘いを4戦全勝したとしても、三役以上から4勝以上勝たないといけない。これは相当厳しい戦いであろうと想像するので、わたしは「前頭筆頭」が一番厳しいのではないかと思うわけであります。

 実はここまで全部前置きです。
 わたしが愛し、応援しているのが【松鳳山】関であることは、何度も書いているが、先場所、去年の九州場所において、十両から幕内に復帰したばかりの【松鳳山】関は、これがまたものすごく頑張って、なんと驚きの13勝2敗という立派な結果を残し、今場所では、「西前頭筆頭」という番付となったのだ。わたしはこの番付が発表になったとき、もちろん上位番付は嬉しかったものの、あーーコイツは厳しいことになるな……という予感がしていた。理由はさんざん述べた通りである。全横綱、全大関と闘う宿命を背負う「前頭筆頭」。こりゃあ、頑張っても5勝から6勝ぐらいではなかろうか……と番付発表時から想像していたのだが……その予想は的中してしまった。
 結果は、5勝10敗である。この戦績をどう評価すべきか、というのが問題なのだが、わたしはこれを、本当によく頑張ってくれたと思うし、その15日にわたる闘いをねぎらいたいと思う。
 なにしろ、2日目には横綱【日馬富士】関から金星をあげ、さらに大関【豪栄道】関からも勝利をあげ、小結【勢】関にも勝てたのだから。まあ、だったら同格以下にも着実に勝利してあと2つ3つの白星を重ねて欲しかったが、実際、今場所の【松鳳山】関の相撲は、基本的に真っ向勝負の取組みが多く、観ていて非常に興奮したし、全取組通して、常に気合が入りまくっていたと思う。もちろんそれは当たり前かもしれないけれど、なんだかとても、もっと応援したくなる男であることを再認識しました。

 というわけで、結論。
 今場所は5勝10敗と厳しい成績となったけれど、オレは応援しているぜ! 頑張れ黒ブタ! ちなみに、平幕力士が横綱に勝利することを「金星」と言いますが、【松鳳山】関はこれで2回目の金星。金星は、毎月の給料に2万円×金星回数のお手当てが加算されるそうですよ。よかったね!! 松鳳山関、お疲れっした!! 来場所も応援します!!

 わたしがマラソンや登山、自転車など、主に持久系のスポーツををたしなんでいることは既に周りにはおなじみだが、このBlogでも何度か書いたように、「なんで走るの?」「なんでそんなつらいことをわざわざやるの?」と聞かれることがかなり頻繁にある。そして、その度に、わたしは心の中で、実際に走ったり山に登らんアンタには一生分かるわけねえだろうな、と思いつつ、「まあ、気持ちいいからっすね」と、さわやか営業スマイルで答えるようにしている。それは紛れもなく事実だから、そう答えているのだが、まあ、相手に伝わったかどうかは定かではない。わたしとしてはどうでもいいことだ。
 おととい観た映画は、そんなわたしの99億倍以上の冒険野郎(?)の実話を描くもので、なんと911で破壊されたワールド・トレード・センター(WTC)ビルの間に渡したワイヤーを、命綱なしで渡った男の物語、『THE WALK』である。

 もう、物語の説明は不要だろう。1974年、まだいろいろ細かい工事中のWTCビルの間にワイヤーを渡し、地上400m以上の上空を、本当に「命綱なし」で渡った男の実話を映画化したお話である。男の名前は、Philippe Petit。1949年生まれの現在69歳のフランス人。計算すると、当時は、誕生日前だから24歳ということか。
 わたしも、それなりに冒険野郎だし、高いところもそれほど苦手ではない。バンジージャンプもしたことがある。が、これは無理だ。まったくレベルというか次元が違う。おそらくはビル屋上のヘリに立つことすらできない。絶対無理。映画を観終わった今でも、なんでまたコイツはこんなことしたのか、さっぱりわからない。恐らくはもちろん、わたしのように、「気持ちいいから」というのが根本にあって、究極的には同じなんだろうと思う。でも、いくら何でも無理だ。イカれてる。
 ここにおそらく、「平凡人のわたし」と「本当にすげえ奴」を隔てる、乗り越えられない壁があるんだろうと思う。この壁は、おそらくは「命」そのものだ。命をかけられるか否か、が大きく違っている。命を落とすかも、というリスクを背負えるかどうかという話になるが、そもそも問題なのは、なぜ命をかけないといけないのか、ということだ。もちろん、当人は死ぬつもりは全くない。だから、映画でも描かれていたように、入念な準備を行って挑む。しかし幼いころから挑戦するまでの生き様や、準備の様子を非常に丁寧に描いてくれている映画であっても、やっぱり、なんでまた主人公がWTC綱渡りをやろうと思ったのか、本当のところはどうしても理解はできない。劇中では、主人公や仲間たちが、WTC綱渡りのことを「クーデター」と表現している。その言葉が指し示す意味は、法に則った正式な手続きを踏まない、暴力による政変ということだと思う。そして確かに主人公と仲間たちは、違法な手段によってある意味暴力的に、綱渡りを成し遂げる。が、一体何を変えたかったのか? 常識? という奴だろうか? おそらく、それが何なのかがこの映画での一番のポイントだろう。観た人それぞれが何かを感じるはずだと思う。
 というわけで、わたしも、いまだに主人公の本当の心の内はさっぱりわからないものの、それでもやはり、大いに感じるものがある映画であったが、今回はやっぱり監督と役者、そして音楽がとても良かったと思う。
 まず、監督は、『Back to the Future』シリーズや『Forest Gump』などでおなじみの、Robert Zemeckisである。この監督は一時期、3DCG作品にご執心だったものの、2012年の『Flight』からやっと実写に戻って来てくれたのだが、今回はとにかくすごい映像である。まあすでにWTCタワーはないわけで、CGがバリバリなわけだが、その映像の質感はもう、本物そのもの。凄いよ。まったく実物にしか見えない。やっぱり、アメリカ人にとっての、WTCビルへの愛と、今はもうなくなってしまったことへの哀しみがささげられてるんでしょうな。そして、肝心の綱渡りシーンも度肝を抜かされる映像で、いくら高いところが平気なわたしでも、本当に、大げさでなく、ものすごい手汗をかいた。この映画は、絶対に3Dで観た方がいい。それもなるべくでかいスクリーンで。IMAXがやっぱり一番オススメでしょうな。とにかく怖い.ぞくぞくすること請け合いであります。ちなみにわたしは、主人公がまだフランスで、師匠のサーカステントで綱渡りの特訓をしている頃に、あと3歩で渡り切るというところで、落っこちそうになるシーンがある。その時、持っていた安定棒を落としてしまうのだが、その棒が3Dで画面から降って来て、思わず客席で、「あっぶねえ!!」と思って避けちゃいました。とにかく、手に汗かきますよ。すごく。
 そして役者陣は、やっぱり主人公を演じたJoseph Gordon-Levitt君でしょうな。どうもわたし、コイツが非常に気に入っているんですよね。恐ろしく人が好さそうで、インチキっぽさも併せ持っていて、非常に不思議な奴だと思う。『(500)Days of Summer』はやっぱり傑作だと思うし、Nolanの『INCEPTION』『The Dark Knight Rises』なんかも非常に良かった。この男が監督をした、『Don Jon』も、わたしは結構悪くないと思っている。なかなか才能あふれる野郎なので、今後も期待したいですね。多くの大物監督に気に入られてるっぽいので、一度Eastwood監督作品あたりに出てもらいたいものである。今回も、非常に良かった。特に、地上400mのワイヤー上で、師匠に一番最初に習った心意気を見せるシーンは、結構グッときました。また、フランス語なまりの英語がとてもよろしい。どうやらコイツ、フランス文学大好きで、フランス語が実際にできるらしいね。アカデミー賞に全くかすりもしなかったのが残念。
 ほか、主人公の綱渡りの師匠を名優Sir Ben Kingsleyが演じているがとても良かったし、主人公の彼女を演じたCherlotte Le Bon嬢も可愛かった。この人はわたしは初めて見た顔で、非常に特徴のある顔のお嬢さんですね。悪くなかったです。それから、主人公が「共犯者たち」と呼ぶ仲間が何人か出てくるのだが、その中では、重度の高所恐怖症なのに、猛烈にビビりながらも頑張って主人公をサポートした数学教師を演じたCesar Domboy君が印象的でしたね。まだほとんどキャリアはないようだけれど、今後またどこかで出会いたいですな。
 で、最後。この映画で、わたしがひょっとしたら一番良かったと言ってもいいのでは? と密かに思っているのが、音楽だ。メインテーマ(?)は非常に軽快なJAZZ調のアップテンポな曲で、これが非常に気持ちいい爽快感がある。音楽を担当したのは、Alan Silvestri。Zemeckis監督作品おなじみの作曲家で、もちろん『Back to the Future』の音楽も彼の仕事である。よく考えると、この計画は、我々には大変おなじみの「ルパン三世」っぽいのだ。特に、WTCに潜入して、ワイヤーを張って、という準備段階が、もう「ルパン」そのもので、曲もJAZZ調で非常に「ルパン」っぽいと思った。実際、犯罪そのもので、主人公たちは逮捕されるわけだけど、その背景に流れる曲は「ルパン」のような、あの軽快なJAZZである。そんなところが、わたしはなんだかとても気に入ったのだと思う。そしてもう一つ、綱渡りのクライマックスでかかるのは、かのBeethovenの、誰もが知っている曲である。この曲が何だったのか、知りたい人は今すぐチケットを予約してください。わたしはこの曲が流れるシーン、とても良かったと思う。ええと、今すぐ答えだけ知りたい人は、こちらをクリックして下さい。物凄くマッチしていて、キマってましたよ。

  というわけで、結論。
 『THE WALK』は、とにかく映像がすごい。そして音楽も非常に良い。また、主役のJoseph Gordon-Levitt君も良い。わたしは去年NYに旅した時、911の跡地にも行ったが、この映画のことは知っていたので、今、跡地の隣にあるONE WORLD TRADE CENTERビルを見上げて、うわーーー・・・と思ったが、 まさに狂気としか言えない主人公の行動は、おそらくは観た人に何かを感じさせると思う。それがどんなものか、ぜひ観に行っていただきたいと思います。以上。

↓一応、これが原作(?)ですな。本人による自叙伝というべきか?
マン・オン・ワイヤー
フィリップ プティ
白揚社
2009-06

↓ そしてこちらが、実際の映像や再現フィルムで構成したドキュメンタリー。2009年のアカデミー賞長編ドキュメンタリー賞受賞作品です。





 ※おまけ。適当にパワポで作ってみた。東京スカイツリーと比較すると、こういう事らしいです。
WTC比較

 というわけで、毎週月曜日は恒例の週末映画興収データです。
 今日はさらっと行きます。

 ではさっそく、いつもの興行通信社の大本営発表です。
 1位:『信長協奏曲』が土日で6.15億稼いで首位。へえ。そんなに人気があったんだ。わたしの知り合いの女子がTVドラマを一生懸命観てたな、そういえば。最初の土日で6億を超えるというのは、最終的に30億以上は確実な数字。これは久しぶりにすごい数字ですよ。
 2位:『スターウォーズ/フォースの覚醒』:38日間累計で96億まで来た。問題は来週までに100億超えるかどうかだが、ちょっと微妙な雲行き。上映スクリーンも今後減るだろうし……。
 3位:『手裏剣戦隊ニンニンジャーVSトッキュウジャー』が土日で1億チョイ稼ぐ。しかし3位でこのレベルの数字というと、『信長』が強かったのと、さらには全国的に寒くて天気が悪かったこともやっぱり影響したかもね。
 4位:『妖怪ウォッチ』:37日間累計で51億ほど。これは勢いが止まってしまったと見える。やっぱり行っても55~56億ぐらいか。
 5位:『パディントン』:10日間で3億チョイか。実際悪くない、けれど、おそらく宣伝費かけすぎで見合ってない。
 6位:『シーズンズ 2万年の地球旅行』:10日間累計で2.5億ほど? ちょっと伸びないか。
 7位:『orange』:41日間累計で29億強か。でも30億超は確定ですな。凄い。
 8位:『ザ・ウォーク』土日で0.7憶か……厳しいなあ。観てきたので、明日レビュー書きます。面白かった。
 9位::『傷物語I 鉄血篇』:16日間累計で6億ぐらい? 大したものですな。
 10位:『ブリッジ・オブ・スパイ』:17日間累計で6億チョイ届かず? アカデミー賞ノミネートで粘ってほしい。

 そのほかランク外では、『白鯨との闘い』はまだ2億そこそこ、『母と暮らせば』が17億を超えたぐらい、『人生の約束』は依然苦しく4億ほど、『ピンクとグレー』は4億届かず、ぐらいと思われます。
 しかし毎週書いているような気がしますが、本当に洋画が売れない世の中になっちまいましたな。残念だ。本も売れないし映画も売れない、売れるのはほんの一握りのベストセラーだけ。しかも、内容よりも話題になることが優先される部分もあって、昭和に青春を過ごしたわたしは実に淋しい。
 せっかくのインターネッツの時代、もっと内容を重視したプロモーションやコミュニケーションが、ひと昔よりずっと簡単にできる世の中になったはずなんだが……。なんか、うまい仕組みを作ることができたら、一儲けできそうな気がするのですが、あくまで作品重視で、もっともっと、世に埋もれている面白い作品を世に知らしめる方法を思いついた方は、ぜひご連絡ください。ま、わたしも本気で考えてみようと思います。

 というわけで、結論。
 今週は『信長協奏曲』が6億超の非常にいい数字でスタートダッシュをかました。ま、土曜日の日中はずっとTV版を放送してたしね……CXのメディア力は相当低下していると思うけれど、なんとか一矢報いたってことですかね。なお、『SW』は6週終わって96億。100億超はもう大丈夫、だとは思うけれど、ちょっとこの後の伸びは苦しそうですな。
 あ、そうだ、『SW』に関しては先週一つニュースがありました。次の『Episode VIII』は、元々2017年5月公開予定だったのですが、2017年12月公開に変更になったそうです。はーー安心。これなら日本も同時公開になるでしょうな。5月のままだったら、絶対日本だけ夏公開とかヒドイことになるところだった……アッブねえ。あと、明日、『ザ・ウォーク』のレビュー書きますので、乞ご期待(?)。以上。

↓ 原作は漫画です。最新刊が出たばかり。これ、まだ連載中だよな? 映画はどう終わらせたんでしょう? それを知りたければ観に行けってことか……。

 というわけで、今日は今年1本目の宝塚歌劇、月組公演を観てきた。
 今回の演目は『舞音―MANON―』。かの有名なフランス文学『マノン・レスコー』の宝塚Verミュージカルである。プッチーニのオペラやバレエ、映画の題材としてもお馴染みのこの小説は、すでに2001年にも宝塚においてバウホール公演がなされていたそうだが、今回はまた別の設定でのオリジナル・ミュージカルである。

 今回の舞台は1920年代のフランス領インドシナ。そこに着任した貴族出身の将校が、美女マノンと出会って恋に落ちるお話である。マノンと言えば、いわゆる「ファム・ファタール」として文学史上でも有名な存在だが、要するに「男を破滅に導く女」である。しかし、マノンの場合、悪女や魔性の女というより、むしろ逆に、天真爛漫すぎて男がだめになっていくというもので、そこには打算や恣意はない。今回は、95分と短いので、出会いから主人公が恋するまでおよそ5分ぐらいなので、全く前知識なく観ていると、ええと、これって一体……と展開の速さに驚くかもしれない。でもまあ、宝塚作品にそういう細かい突っ込みは無粋極まりないので、まあ置いておくのが正しい鑑賞姿勢であろう。今回、わたしが一番、へえ~、と思ったのは、主人公の別人格というか、主人公の立場や建前を超越した、本音? のような別人格が、影となって常に主人公に付きまとう演出法である。これはちゃんと観ていればよく分かる仕掛けになっていて、なるほどと思えるものなのだが、もうちょっとだけ説明があっても良かったかもしれない。いや、いらないか、やっぱり。それを説明したらもっと無粋か。そうっすね。まあ、宝塚ファンの皆さんには不要であろうか。
 で。月組は、わたしは毎回必ず観劇しているわけではないけれど、わたしが初めて観たのは、以前花組公演のレビューを書いたときも触れたが、2010年の『スカーレット・ピンパーネル』である。当時のTOPスターは、霧矢大夢さん。そして、現在のTOPである龍真咲さん(りゅう まさき:通称まさお)は、現在の花組TOPスター明日海りおさん(通称:みりお)と事実上のダブル2番手であった。そしてたまたまわたしが観た回で、悪役のショーヴランを演じていたみりおちゃんをそれ以降応援してきたのだが(もうひとつの役を、まさおとみりおで役代わりで交互に演じていた)、たぶんこの時点ではまさおちゃんのほうが人気があったんじゃないかと思う。その後、まさおちゃんは見事月組のTOPとなり、みりおちゃんはその後に花組に移籍になってTOPとなった。それまで何かとまさおとみりおはセット扱いだったのだが、まさおが月組TOPになってからも、TOPお披露目公演の『ロミオとジュリエット』やその次の『ベルばら』では、TOPなのにまだ、みりおと役代わりで主役を演じられないこともあって、けっこう気の毒な扱いをされていたと思う(なお、みりおは『ベルばら』後に花組に移った)。
 しかし、そんなまさおちゃんだが、実際のところ、素顔の彼女は、わたしのセンスからすると、現TOPの中で一番女の子っぽい可愛い女子である。たぶん一番線が細く華奢で、舞台衣装・舞台メイクではない、素のまさおちゃんはとても可愛らしいと思う。その点で、男役としては、少年っぽい役が多かったような気がする。なので、いわゆるダンディー系の男役はほとんど演じていない。『風とともに去りぬ』では、男主役のレッド・バトラーではなく、なぜかヒロインのスカーレット・オハラを演らされていたし。おそらくは、まさおちゃんの線の細さと可愛らしさが、そういう配役になってしまったのだと思う。というわけで、まさおちゃんはTOPとしての美しさ、オーラを非常に高いレベルで持っているのに、今までどうも、THE 男役的な役を演じられなかった。今回の、マノンに恋する将校も、若干世間知らずっぽさの残るお坊ちゃんである。でもまあ、そこがまさおちゃんの魅力であるし、この役を轟理事あたりが演じたら全く別の話になってしまいそうだし、これはこれでいいんだろうな、と納得することにした。
 先日、とうとうまさおちゃんも、次の大劇場公演(宝塚6月、東京8月)をもって退団することを発表した。これで、2年前の「100周年TOPメンバー」は、花組のみりおちゃんだけが残ることになる(※正確に言えば、花組の100周年TOPは蘭寿とむさんと言うべきかも)。まさおが退団してしまうなんてとても淋しいけれど、きっとまさおなら、女優としてもっともっと輝けると思うよ。応援するから頑張っていただきたいと思う。
 そして最後に、毎回お約束の、今回のイケ台詞を発表します。
 ※イケ台詞=わたしが「かーっ!! カッコええ!!」と思った台詞のこと。
 「(マノンを後ろから抱きしめて)君はここにいる。わたしの腕の中に。君を得るためならわたしは何だってする・・・君は・・・わたしの女だ」 かーっ!! カッコええですのう!!
 
 というわけで、結論。
 月組公演『舞音―MANON―』は、まさおちゃんのカッコよさが十分楽しめる、かなりイケてるお話でした。なお、わたしの月組のイチオシは、珍しく娘役の海乃美月ちゃんです。超かわええ……前回の『1789』以来ぞっこんです。あと、今回のレビューショー『GOLDEN JAZZ』は、かなりノリノリですので、幕間ではグッズショップQuatre Revesへ走って、ミニタンバリンを買いましょう!! 相当楽しいですよ!! 以上。

↓ マノンと言うと、わたしの場合思い出すのはこれ。小学生だったかな、超エロくてドキドキしたわ……。当時のチラシとかポスターの写真は下のジャケ写とは全く別物の、超エロイものでした。
マノン [DVD]
烏丸せつこ
紀伊國屋書店
2013-10-26
 

 今日の昼に、今年のNHK大河ドラマ『真田丸』(の再放送)を観ていて、うーん、やっぱり三谷幸喜氏による脚本ってどうなんでしょうなあ……大河に向いているのかしらん……などとぼんやり思ったのだが、2004年に放送された三谷氏による『新選組!』をあまり面白いと思えなかったわたしは、今回の『真田丸』も、今のところ、ちょっと乗れてない感じである。まあ、最後まで観ないと面白かったかどうかすら判定できないので、毎週観るつもりでいるが、途中で観るのをやめちゃわないか、若干自分が心配である。
 で。そういや2004年の『新選組!』では、今回の『真田丸』の主役を演じる堺雅人氏は、沖田総司だったっけね、なんてことを思い出し、他のキャストはどんな感じだったっけ、とGoogle先生にお伺いを立ててみたところ、総司は藤原竜也氏で、堺雅人氏が演じてたのは山南敬助だということを思い出した。しかし、どうしても、堺雅人氏=沖田総司のイメージが頭から離れない。あれぇ!? なんでだっけ? というわけで、再びGoogle先生にお伺いを立ててみたところ、わたしが思った堺雅人=沖田総司は、映画『壬生義士伝』であったことが5秒で判明した。なるほど、超・勘違いでしたわ。しかし調べてみて、ああ、この映画泣けるんだよなあ、という事も思い出したのだが、どうも細部はあまり覚えていないことも判明し、たしか録画したのがあったはず…・・・とBlu-rayを探したら見つかったので、10年以上ぶりに見てみた。そして、うむ、やっぱり中井貴一氏は素晴らしい役者だ、ということを再認識したわけである。

 上記の動画は、松竹の公式動画なのだが、冒頭の3分ほどが観られるものの、とても予告とは言い難い。続きは300円で見られるよ、というプロモーション用である。なので、これだけでは全くわからないと思うが、物語は大正時代まで生き残った新撰組三番隊組長でおなじみの斎藤一と、「守銭奴」と呼ばれた新撰組撃剣師範、吉村貫一郎のお話である。わたしは上記3分動画を観て、あ、はいはい、これか、と物語の全体像を思い出すことに成功したが、上記の動画にあるように、老いた斎藤一が若き日の新撰組時代を回想する形で物語は進行する。実はわたしは浅田次郎先生の原作を読んでいないので、原作通りの流れなのか知らないし、さらに言うとわたしは戦国オタであるけれどあまり幕末の歴史に詳しくないので、史実通りなのかもよく分かっていない。
 しかし、わたしにはこの物語は、非常に現代性を持つものとして極めて興味深く写った。
 幕末社会……これは、現代に例えると、250年続いた巨大企業が倒産の危機にある物語として読み取れるのではなかろうか。
 安定した巨大企業グループの一員である岩手の子会社に在籍していた中間管理職のサラリーマンがいる。しかしグループ会社の連結業績はもはや建て直しのきかないレベルまで落ちてしまい、本社HDの取締役会は機能しないし、海外からのM&Aの脅威にさらされていて、給料も減り、もはや妻子を養うのも厳しい状態。まさに時代が変わろうとする端境期である。そんな時、江戸の本社持株会社からスピンアウトして、京都に本拠地を置いた、保守派の新撰組を名乗る一派がいた。福島の子会社が出資した新撰組へ行けば、給料もなかなかいいらしい。しかしそこでの業務は、端的に行って人殺しである。本社の言うことを聞かない連中を殺すのが仕事のテロ集団である。また、本社にやたらと噛み付いて、社長交代を求め、新会社を設立しようとする山口や鹿児島、高知の子会社連中もいるし、他の地方子会社も本社につくか、新会社につくか、グループ上げての大混乱にある。主人公たるサラリーマンは、株式会社岩手には恩義があるけれど、はっきり言って妻子も養えないのであれば、どうしようもない。ならばオレは、敢えて人殺しの悪名をかぶろう、グループ会社を守るため、そして愛する家族を養うために!
 ――と、この物語をまとめたら怒る人が多いかもしれない。
 人殺し=テロ、と言ってしまったら、日本の歴史を全否定、あるいは人類の歴史すらも全否定してしまうことにもなるので、かなり抵抗があるのだが、新撰組は、一面では恐怖で治安維持しようとしていたことも事実であろうから、そういう意味ではテロリストと言わざるをえまい。もちろん、それは21世紀の現代にぬくぬくと暮らしている身だから言えることだけど、彼らの死闘があって今の日本があるのもまた事実だろうから、誰が悪いという話ではない。しかし……確実に現代とは全く違う価値観が世を支配していた時代を、現代感覚で断罪することは出来ないが、はっきり言って恐ろしい時代である。
 だが、価値観の違いはあれど、主人公の行動は我々現代人の心に刺さるモノがあるのも事実であろう。間違いなく、会社が傾いても、それでも、なんとか頑張ろうとするのがやっぱり一番正しいと思う。まずは自分にできる全力を尽くすべきだ。かと言って、責任を取るべき役職者連中が全く責任を取らず、リストラで人を減らして生き残ろうとする姿を見れば、もはやこれまで、と思うのも理解できる。まあ、せっかく何とか頑張ろうとする若手の意見も聞かなかったり、責任も取らない役職者が一番悪いし、一方では何も変えようとせず、自らも変わろうとしないまま、そのうち業績も回復するだろ、という絶対に訪れない未来に期待して頭を低くしているだけの現場連中も悪質だ。
 株式会社江戸幕府ホールディングスの代表取締役社長だった徳川慶喜は、最終的には引退する決断を下した。そして山口や鹿児島の子会社が興した株式会社明治政府HDが、(株)江戸幕府HDを吸収合併し、大半の資産と人員を継承したわけだが、京都に本社を置いた株式会社新撰組は、その枠組みから外れ、消滅することとなってしまった。出資していた大株主の株式会社福島が徹底的に新会社につぶされたためだが、手段はテロとはいえ、新撰組という存在は、本気で「何とかしたい」と頑張ろうとした人々の集まりであったことも確かであろう。
 繰り返して言うが、誰が悪いという話ではない。
 これは、そういう時代の端境期、言葉を変えればそれまでの世が崩壊する時にあって、どう本人が「納得」するかという話である。人を殺しまくっていた斎藤一も、自分の「納得」した生き方をしたし、最後まで家族に金を残すことを考えた吉村貫一郎も、自身の「納得」のもとに行動した。結果として、斎藤一は大正の世まで生き残り、吉村貫一郎は江戸幕府とともに殉じたわけだが、斎藤一の言葉を借りると、「最も憎んだ男であり、ただ一人の親友と呼べる男」という間柄であり、それはきっと、二人ともに「納得」が行っていたからこそ、お互いを認め合うことが出来たのだろうと思った。ええと、うまくまとめられないけれど、何が言いたいかというと、わたしはもう、納得のいかないことはしたくないし、納得した道を生きて行きたいですな、ということです。

 というわけで、結論。
 中井貴一氏の演じる吉村貫一郎という男の生き様は、他人から見ると非常に、何なんだコイツ? と思われるものだったのかもしれない。けれど、そこには、明確に「納得」がある。なんというか、信念とか覚悟とか、そういう言葉ではなくて、「納得」という言葉が一番正しく表しているんじゃないかと思う。中井貴一氏の芝居振りも素晴らしく、10年以上ぶりに見る『壬生義士伝』は非常に心に響きました。未見の方はぜひ、ご覧ください。以上。

↓ やっぱりこれ、原作を読まないといけないね……。ちなみに、映画の前にTVドラマにもなっていたそうで、TV版で主人公・吉村貫一郎を演じたのは、ハリウッドスターKEN WATANABEこと渡辺謙さんだそうです。そっちも見たいなあ……。


 先日、恒川光太郎先生の新作、『ヘブンメイカー スタープレイヤーII』を読んで大いに面白かったという事をここで書いたのだが、その時も書いた通り、1巻目の話をすっかり忘れかけていたので、もう一度読んでみたいと思ったものの、本棚を探しても見つからず、おそらくは誰かに貸してそのままなんだろうという事が判明した。たぶんあの人に貸したような……という心当たりはあるものの、返せというのもかなり今更感があって、じゃあもう一度、電子書籍で買っちゃおう、という決断を下した。もちろん、わたしが愛用している電子書籍サイトのコインバックフェアが開催されるタイミングで買ったので、およそ半額だったのだが、安かったので同時に恒川先生のデビュー作、『夜市』も買った。この本も確実にわたしは持っていたはずなのだが、やはり本棚に見当たらず、どうも『スタープレイヤー』の1巻目と一緒に貸したんだろうと思われる。で、改めて読んでみて、両方とも確かに面白く満足であったが、今日はデビュー作の『夜市』の方のレビューとすることにしようと思います。
夜市 (角川ホラー文庫)
恒川 光太郎
角川グループパブリッシング
2008-05-24


 なお、『夜市』ではなくて、『スタープレイヤー』の方は、ちょっと探してみたら恒川先生自身が語っている動画があったので、貼っておきます。しかしこの動画……再生回数が780回(2016/01/21時点)って、どんだけ観られてないんだよ……せっかくこういうのを公開しても、この再生回数じゃあもったいないというか……営業や宣伝が仕事をしてるのか心配になるな……。
 ま、いいや。
 で、『夜市』である。この作品は以前も書いた通り、2005年に第12回日本ホラー大賞を獲った中編作品(長編でもないし短編というほど短くもない)で、書籍化に当たっては表題作ともう一つ、描き下ろしの『風の古道』という中編の2本が収録されているものである。しかも、その年の134回直木賞の候補作ともなった。デビュー作が直木賞候補とはなかなか珍しいような気もするが、いずれにせよ、非常に高い評価を受けたのであろう。実際、わたしも2005年当時に読んで、ほほう、これはなかなかイケますね、と偉そうに思っていた(当時わたしは小説編集者だったので、素直に認めたくないもんね! という心理があった)。
 わたしは初めて読んだとき、そして今回改めて読んでみて、変わらない感想を持ったのだが、やっぱりこの作品は、わたしが愛してやまないStephen Kingの持つ独特の空気感と、非常によく似ていると思う。特に、Stephen Kingの短編に非常に近い、ような気がする。そこら中でKing自身が語っているように、Kingが描くのは、日常のちょっとした隙間に存在する怪異である。日常の一本裏通り、と言ったらいいのかもしれない。ごく身近な世界のすぐ裏に存在するもの、とりわけKingの場合は、邪悪な存在が多いけれど、そういったごく身近な闇に潜むSuper Natural を描く短編がKingの得意技の一つである。
 ではまず、表題作『夜市』。どんな物語かというと、いつか、どこかで開かれる「夜市」という非・人間たちが集うイベントがあって、そこでは、必ず「欲しいもの」が売られているという。そんな「市」で、少年時代にとある取引をしてしまった男が、大人になってから、その時に手放したものを再び取り戻そうとするお話である。「夜市」にはひとつ、厳格なルールがあって、何かを買わないと元の世界に戻れない。 なので、一度「夜市」に迷い込んでしまったら、何かを買わないと行けないのだが、果たして男は、手放したものを見つけられるのか、そして見つけてもその代償に何を払うのか、が問題となるわけで、とてもデビュー作とは思えないクオリティの作品である。とても面白い。てゆうか興味深い。「欲しいものが必ずある」という設定は、なんとなくKing の『Needful Things』を思い起こすけれど、実際のところ全く違うお話になってます。『Needful Things』はわたしも大好きだけれど、話的には、ずっと邪悪ですな。
 もう一つの『風の古道』は街にある<綻び>から、人間が本来は入れない「古道」に迷い込んでしまった少年のお話だ。これもまた非常にStephen Kingっぽくて、具体的に似た話があったような気さえする。ほんの探検気分で入ってしまった「古道」で少年たちの顛末は、非常に厳しいエンディングを迎える。なんとなく、印象としてKingの作品は、意外と最後は何とか助かる話の方が多いような気がするけど(……いや、そんなことないか?)、恒川先生の描いた『夜市』も『風の古道』も、実に厳しく、ルールを破った罰がきっちりと下される。ただ、それはそれほど後味の悪いものではなく、登場人物には気の毒だとは思うけれど、どうにもできないことだし、その覚悟へと至る登場人物の心の持って行き方は、読んでいて決して不快ではない。非常に良いと思う。
 このような、日常のほんのすぐそばには、人間の人知を超えた何かがある、というお話は、Stephen Kingに限らず、実際のところ世には無数にあるわけだが、わたしとしては、恒川光太郎先生の描く世界は非常に楽しめたし、これからも読んでみたいと思わせるものでありました。まあ、『スタープレイヤー』シリーズはホラーでは決してないけれど、やはり同じように、日常のすぐそばにある不思議な世界を描くという意味では共通しており、よく考えてみれば、小説というものは、程度の差があっても、みな、すべからくそういうものであるべし、と当たり前のことを今さら思った。しかし、久しぶりに『夜市』や『スタープレイヤー』を読み直して楽しかったです。『スタープレイヤー』の3作目をまた今年の暮れあたりに出してくれないかなーと思うわたしであった。

 というわけで、結論。
 もし今、なんか面白い小説ないかなー、と思っている方。そしてまだ恒川光太郎先生の作品を読んだことのない方。そんなあなたには、『夜市』と『スタープレイヤー』は超おススメです。たぶん読書に慣れている人なら、『夜市』は2日もあれば読み終われるし、『スタープレイヤー』も、1週間程度、異世界旅行を楽しませてくれると思います。以上j。

↓ 久しぶりに読みたくなってきた&観たくなってきた。映画版は、主人公(?)を超苦しめる極めて邪悪な存在を、『SW:EP VII』のロア・サン・テッカを演じたことでわたしを驚かせた、MAX VON SYDOWおじいちゃんが超怪しく演じてます。相当イメージ通りだと思うんだけどな……。あ、もう絶版なんだ……。本棚漁ってみるか……。
ニードフル・シングス〈上〉 (文春文庫)
スティーヴン キング
文藝春秋
1998-07

ニードフル・シングス [DVD]
エド・ハリス
ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
2004-11-26




 

 毎週木曜日は、今週の『鮫島』ニュースのお時間です。
 今週の週刊少年チャンピオンも、『リク』がまたやってくれました。
 以下、『鮫島』以外のマンガは箇条書きにすることにします。
 ■『囚人リク』
 今回は久しぶりに顔芸が炸裂しました。怪しいジェントルマン「大場」の1ページドアップですw しかも、ですよ、先週、服に血が付くからと言っておもむろに服を脱ぎ、ブリーフ(名前入り)1枚になった変態・大場ですが、今週はレノマとバトルがあり、なんとそのブリーフを完全に「変態仮面」状にされて拘束・正座させられてしまいましたww そしてなぜか靴を頭にのせられて、絶頂の笑顔の大場氏…… そして次の見開きでは、ほぼ全裸の大場とレノマの握手……相当な変態です。もう、電車内で笑いをこらえるのがどれだけ大変だったか……瀬口先生のセンスに乾杯ッww
  ■『弱虫ペダル』
 2日目中間スプリント決着。当然の泉田くん勝利で安心しました。そしてそのスプリントラインの先には、新開さんが!! 泉田くんも久しぶりにまともにカッコ良くて良かったね。
 ■『牙刃道』:ジャック・ハンマーVS本部のおっさんスタート。
 ■ほか、『ニコべん!』、『Gメン』『兄妹』『少年ラケット』『AIの遺電子』もいつも通り良かったと思います。 応援している『スメラギ・ドレッサーズ』は、しばらく続いたバトルにけりがつく直前まできましたね。絵も、明らかに先週から変わってきており、以前に比べれば線も力強く、すっきりしてきましたが、まだまだ画力上昇の伸びしろアリという感じでしょうか。

  さて。では、今週の『鮫島』ニュースです。
 先週は、【大山道】兄貴の蹴手繰りを食らって鯉太郎がバランスを崩すところで 終わりましたが、その続きです。当然、鯉太郎がそのまま負けるはずもなく、かろうじてこらえ、逆に前に出て【大山道】兄貴にブチかまします。虎城理事長の解説によれば、落ちる瞬間に踏み残った足で前に出た、そうです。だが、体勢を立て直した鯉太郎はさらにブチかましに行きますが、タイミングのいい引き落としでなかなか【大山道】兄貴には当たりません。兄貴は思います。「いい力士だ・・・この引きによく喰らいついてくる・・・だが、視野が狭い・・・」「来るとわかっている直線的な動きに怖さはない・・・」しかし、兄貴の圧倒的な圧力に、鯉太郎は真正面からぶつかるだけでなく、横に変化、まわしを狙います。その展開の思わず【蒼希狼】も「大山兄!!」と叫びます。
 それまでのぶつかり合いから一転して膠着状態に陥った土俵上を見つめる【蒼希狼】と大山親方。親方は語ります。「大山道は今日・・・お前のために相撲を取ると言っておったよ・・・一緒だよ・・・大山道もお前も・・・」親方の話で、【大山道】兄貴も幼い頃は施設暮らしで、今も毎月稼いだ金を送金していること、そして兄貴が【蒼希狼】のことを気に掛けていたのも、程度の差はあれ己の境遇と重なったからかもしれない、みたいなことが語られます。しかし、【蒼希狼】は後援会会長の暴言が忘れられません。どうせ俺はただの金蔓、勢いを失った俺を邪魔者だと思ってんだろ、と親方に告げます。それに答える親方の言葉が泣かせる。「何を勘違いしているか知らんが お前はわたしの大事な息子だ そして大山道にとっても いつまでも手のかかる弟だ・・・」そして膠着状態を破る、【大山道】兄貴のそっ首落としが炸裂して―――今週はここまでです。
 まあ、常識的に考えて、鯉太郎が勝つのは分かりきっていますが、決着はあと2週ぐらいかかるのかな、来週決着かも、ですね。しかし……単行本のおさまりのいいところまで、だとすると、あと5話必要なんだよな……うーん、あと5週、続けるのかな、どうだろう……まあ、いずれにしても6連勝勝ちっぱなしでも、まだ大関以上とは割が組まれないですな。しかしすでに満身創痍の鯉太郎、ホントに15日間戦い抜けるのか、心配でなりませんが、これからも『鮫島』を楽しみに読ませてもらいます!!
最後に、毎週のテンプレを貼って終わります。
 <場所:9月場所>
 【鮫島】東前頭十四枚目(5月場所で東前頭十枚目)
 【白水】西小結
 【松明】東前頭六枚目。常松改め。
 【大吉】序2段【豆助】序ノ口【目丸手】序二段【川口】不明
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 1日目:【飛天翔】西前頭十二枚目。石川改め。
 2日目:【宝玉光】西前頭十一枚目
 3日目:【舞ノ島】西前頭十枚目
 4日目:【巨桜丸】西前頭九枚目。新入幕力士
 5日目:【岩ノ藤】東前頭七枚目 
 6日目:【大山道】西前頭七枚目
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 【天雷】東関脇
 【蒼希狼】??? 最高位は小結
 ※右額の傷は、初入幕初日の【桐の里】戦で負ったもの
 ※現在の現役横綱は、モンゴル出身力士で「大横綱」と称されている模様 
  ただし、【蒼希狼】の過去話の時点なので、この9月場所も現役か不明。

 というわけで、結論。
 今週の『鮫島』も、現実時間では15秒くらいの進捗でした。まあ、早く【蒼希狼】には誤解を解いてもらい、再び戦う男となってほしいですね。そもそも、【蒼希狼】の番付はどのくらいなんでしょうな……。
 あとですね、先週から引き続きわたしが応援している松鳳山関の情報ですが、さすがに前頭筆頭として、上位陣との取組がずっと続いており、昨日の段階で3勝8敗とすでに負け越してしまいました。しかし、今場所の各取り組みはかなり内容が良いように見えます。結構おしい場面が多かった。まあまだ残り4番、全部勝つ気合で頑張ってくれ!! 応援してるぞ松鳳山!! 以上。

↓ ちょっと応援している『AIの遺電子』の著者、山田胡瓜先生の作品。Kindleとか電子書籍でしか出てないっぽい。IT-Mediaで連載してたそうな。

 電撃文庫は依然としてライトノベル界におけるNo.1レーベルだと思うが、毎月1冊か2冊買って読んでいるものの、最近は既に実績のある作家先生の続編や新作しか読んでおらず、まったくの新人の作品はほとんど手に取っていない。まあ、実際面白そうなものがないから、ではあるが、毎年2月にデビューする「電撃小説大賞」の受賞作ぐらいは読んでみるかとは思っている。
 で。今月の1月刊で買って読んでみたのは、『魔法科高校の劣等生』でおなじみの、佐島 勤先生による別シリーズ、『ドウルマスターズ』の3巻である。
ドウルマスターズ (3) (電撃文庫)
佐島勤
KADOKAWA/アスキー・メディアワークス
2016-01-09

 この作品シリーズについて、詳しくは公式サイトを観てもらった方が早かろう。勝手に引用していいのかわからないが、1巻目のあらすじを引用すると、こんなお話である。
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――『ドウル』。
 それは、パイロットの『超能力』を拡張させ、物理的な戦闘力へと変換する人型機動兵器である。
 新米ドウルマスター・早乙女蒼生は地球の貧しい都市機構『オートン』に所属し、姉の朱理と共に横浜ポリス軍と交戦していた。
 強力な敵機体から最期の一撃を喰らいかけたその時、蒼生の類い希なるサイキック能力が覚醒、『エクサー』として目覚める。
 それを契機に、ドウルの最強最新鋭部隊『ソフィア』へ入隊を果たした蒼生は、宇宙(そら)へと向かう。
 そこでは、純白の専用機『ミスティムーン』を駆るエリートドウルマスター・玲音との運命の出会いが待っていた――。
 壮大な近未来宇宙を舞台に、少年と少女の『世界』を賭けた闘いが、今始まる。
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 簡単に言うと、超能力的な力を持った人間が操るロボット(=ドウル)があって、そのロボットを操縦する少年・少女の戦いの顛末を描くもので、まあ、要するに『ガンダム』的なお話である。そうだなあ、『ガンダムSEED』的な感じだろうか。どうやら、その世界観やロボットの設定において、かの名作ゲーム『Armored Core』のパクリじゃん的な物議を醸したそうだが、わたし的には別にどうでもいい。問題はこの物語が面白いのか否かである。
 実際のところ、この作品の面白さは各種の設定にあると言っても良さそうな気がする。キャラクターに関しては、まだ3巻で主人公もそれほど成長していないし、ロボット類もまだその真価を発揮していないので、どれだけ物語世界の状況を描いているかの方が重要な気がする。まあ、結局のところまだ導入と言っていいのかもしれない。
 まず、時代は2417年(かな?)。200年前に地下資源争奪を発端とした地球規模の大きな戦争があったと。で、今や荒廃した地球は、ドームで覆われた「ポリス」と呼ばれる複数の都市国家と、それ以外の「オートン」に分かれていて、単純に言えば「ポリス」=文明を維持した「持てる者」たちの住む特権社会で、「オートン」は「持たざる人々」の住むエリアというわけだ。さらに言えば、各ポリスもそれなりに仲が悪く、利害衝突なんかもあると。で、これらの対立構造の上には、ある種の上位レイヤーとして、各ポリスや一部のオートンにエネルギー供給を独占的に行っている「太陽系開発機構、別名・太陽系連盟」が存在していると。 太陽系連盟は、各ポリスの利害調整なんかもやっているわけで、自身の軍事力も持っている。その軍事力が強力なために各ポリスに対する発言力も強いと。で、その強力な軍事力を支えているのが、「エクサ―」と呼ばれる強力な能力者たちが操る「ドウル」で、ドウル自体はポリスやオートンも所有しているけど、その強さは「エクサ―」が駆るドウルとは到底比べ物にならない程度のもので、弱いと。そのエクサーたちを要する軍事組織は「ソフィア」と呼ばれていて、一応、立場的には公平(?)で、威力と武力によって調停をする存在である、そして、この世界には、「太陽系連盟」に対して反抗勢力があって、それは裏ではポリスに援助を受けていたりするのだが、とにかく太陽系連盟が気に入らない人たちの組織「ゲノムス」という連中もいる、とまあそんな世界を舞台としている。ちなみに、人類は宇宙進出もある程度果たしており、コロニー的な施設は宇宙にあって、「ドウル」は宇宙空間が得意なもの、地球上での重力下での戦いが得意なものみたいなものもあって、そのあたりも非常にガンダムチックである。
 わたしが一番、興味を惹かれたのが、本作の「ドウル」に用いられている「慣性中和」という技術だ。これって……現状の人類には、おそらくは「重力制御」と同じくらいの不可能レベルなのではなかろうか。なにしろ、「ドウル」はこの「慣性中和」が可能なので、
 ■質量兵器(=要するに、弾丸とか打撃とか)が無効。運動エネルギーをゼロに出来るから。
 ■パイロットの負荷Gがない。
 という特徴がある。こういうトンデモ科学理論は佐島先生の代表作たる『魔法科高校の劣等生』でもお馴染みで、それを非常に「それっぽく」説明し、非常に効果的に使っている。もちろん、結局のところ科学技術というよりも「超能力」的な作用によるものであるが、その「それっぽさ」は佐島先生の最大の持ち味であり魅力であろう。それは、明らかに長所であって、決して、ツッコミどころというような、ネガティブなポイントではない。小説は、それでいいのだとわたしは思っている。まあ、そういう意味では、本作はSFというよりファンタジーかもしれないけれど。
 で。お話的には1巻で主人公の少年が、選ばれし超・能力を秘めたエクサ―であることが判明し、元々オートンに住む民であったところを、ソフィアにスカウトされて、宇宙空間のコロニー的な施設にある訓練校へ行くと。その際、既にオートンの傭兵ドウル使い(=ドウルマスター)として実績のあった姉(=エクサーレベルではない)と、別のポリスで戦っていたドウルマスターの青年も一緒に訓練校にスカウトされると。そこで、ちょっと素性が謎(読者には謎ではない)の美少女ドウルマスターと出会って切磋琢磨する姿が描かれると。で、2巻では、ゲノムスとの戦闘時に、一緒に訓練を受けていた青年が殉職、したように見せて、じつはゲノムスの構成員だったという事が描かれる。
 そしてこの3巻では、それまで宇宙空間を舞台としていたが、今回の舞台は地球上になる。しかも海中での戦いがメインで、水中戦が得意な専用ドウルを駆る、敵方に寝返った元仲間の青年との戦いとなる。主人公や姉、それから美少女ドウルマスターたちは、自分専用機のドウルを持っているのだけど、今回は地球に訓練のために降下してきたので、その専用機がなく、苦戦を強いられる展開だ。ポイントは、これは2巻で既にほのめかされている通り、美少女はほぼ元・仲間が裏切ったことに感づいている一方で、主人公は全く分かってない、という点で、なかなかややっこしいことになっている。

 えーと、一生懸命説明しようとしたのですが、ダメだ、ぜんぜんこの作品の魅力を伝えられないな……。なんというか、最近のライトノベルにはあまりロボットアクションものは見当たらないような気がするけれど、本作は、ある意味王道な、正統派のガンダム的ロボットアクションで、わたしはまずまず楽しんで読んでいる。主人公の性格は、かのアムロ・レイのような複雑なものではないし、また一方で、刹那・F・セイエイ的な、冷静なオレ強ええ系男子でもなく、比較的優等生と言うか、よく考えるとこれまであまりいないタイプ? かもしれない。現在の3巻の段階では、若干おどおど君である一方で、好きな美少女のためにもっともっと強くなりたい、と焦っている状況です。
 また、あとがきにも書いてあるので、ちょっとだけネタバレですが、とあるキャラクターが今回の3巻では殉職してしまう。結構メイン級キャラだったので驚いたけれど、そんな出来事もあって、主人公の強くなりたい願望はよりいっそう強まっているので、今後、アナキン的なダークサイドに陥らないか、若干心配ですな。選ばれし者だし。それから、今回の3巻では、ソフィア陣営のエース・エクサーが10人揃って登場しますが、なかなか癖のありそうな連中ばかりで、今後、主人公の少年と美少女(この女子もエースの一人)、それから他の9人のエースたちの関係性もなかなか面白いことになりそうです。

 というわけで、結論。
 佐島 勤先生による『ドウルマスターズ』シリーズは、まだ始まったばかりで、キャラやロボットもまだ顔を見せ始めたばかりなので、今後の展開に期待したいというところでしょうか。わたしはまあ、続巻はしばらく買うと思います。十分に楽しめています。以上。

↓佐島先生の代表作は、まあこっちでしょうな。毎巻楽しませてもらってます。ええと、次の19巻は3月の発売ですな。楽しみです。
魔法科高校の劣等生 (18) 師族会議編 (中) (電撃文庫)
佐島勤
KADOKAWA/アスキー・メディアワークス
2015-11-10




 

 先週、劇場へ『CRIMSON PEAK』を観に行って、このBlogにも記事を書いたのだが、書き終わって、あれっ!? そういえば、主演の二人、Tom Hiddleston氏とMia Wasicowskaちゃんが一緒に出てる映画があったな、と思い出した。確かヴァンパイアものだったような、うーん、観たような、いや、WOWOWで録って、観たけど最初の30分ぐらいで寝ちゃって、それっきりかも、という事が判明したので、この期にもう一度最初から最後まできちんと観てみることにした。 それが日本では2013年12月に公開された『ONLY LOVERS LEFT ALIVE』という作品である。HDDを漁ってみたら、こんなこともあろうかと、ちゃんとまだ残してあった。さすが、抜かりない男としておなじみのわたしである。と、お約束の自画自賛をかましておこう。

 監督は、Jim Jarmusch。80年代後半から90年代に非常に活躍した男で、もちろん21世紀の今も現役監督して作品を発表しているのだが、ご存知の方も多いように、基本的にこの男の撮る作品は極めてシャレオツなイキフンが随所に漂っており、わたしは彼のすべての映画を見ているわけではないけれど、あまり好きな監督ではない。もちろん、その空気感は好きな人にはたまらん類のものであろうし、わたしも例えば『Night on Earth』(邦題:ナイト・オン・ザ・プラネット)という作品などは結構好きである。当時まだ若かったWinona Ryderちゃんが非常に可愛かったのを思い出す。
 しかし、やっぱり本作『ONLY LOVERS LEFT ALIVE』も、シャレオツ臭が全編から漂う「雰囲気満喫」ムービーであった。この映画、上映時間は122分だが、おそらくわたしなら、100分ほどに凝縮・編集できると思う。なにしろ、それっぽい無用なシーンが多く、雰囲気は抜群だけど、もうちょっと早く物語を進めてくんねーかなー、と思うことしきりである。ただ、繰り返すが、それが悪いというわけでは決してない。本作も、非常に質感高く、役者の演技も上等でなかなか面白かった。
 物語は、どうやら数百年、正確には良くわからないがひょっとしたら1000年以上、生き続けている吸血鬼、ヴァンパイアのお話である。本作に登場する吸血鬼は4人いて、主人公、その妻、二人が信頼するおじいちゃん吸血鬼、それから、妻の妹の若い吸血鬼(数百歳以上なので、あくまで若く「見える」だけ)、の4人である。
 主人公は、デトロイト在住で、音楽を愛し、21世紀の今では人を襲って血を吸う事のリスクを十分承知していて、悪徳医者から血を買って飲んで生活している。その生活スタイルは、とてもひっそりしていて、昼は寝ていて夜活動するわけだけれど、プロとして楽曲制作を自宅で一人でやっているのだが、秘密保持契約を結んだ若い代理人(この人は純粋な人間。主人公が吸血鬼であることは知らない)が、いろいろ代わりにやってくれている状況。ただ、その孤独な生活は、どうやら主人公の精神を苦しめ、実は密かに主人公はもう死にたがっているんじゃないかという事がほのめかされる。
 妻は、タンジールに住んでいて、近くには信頼するおじいちゃん吸血鬼が住んでいて、血はそのおじいちゃんが調達してくるものを分けてもらっている。もちろん、彼女も人を襲うリスクは避けていて、実際のところ、彼女も主人公も、現状では人類にとってほぼ無害と言っていいだろう。そしておじいちゃん吸血鬼は、小説を書いているらしいという事がチラッと描かれる。
 面白いのは、人類史上における偉大な音楽や文学作品は、実は彼らが創造したもので、それを人間に教えて発表させたという設定だ。シェイクスピアやシューベルトの作品は、この主人公やおじいちゃん吸血鬼が生み出したものなんだそうだ。へえ、そりゃ面白いとわたしは思った。それから、もう一つ設定として、ちょっとだけ重要(だけど具体的な説明はほとんどない)なのは、どうも吸血鬼が飲用する「血」は、現代の人間は穢れていて、飲むとマズイらしい。場合によっては、そんな穢れた血を飲むと、体調が悪くなってしまうらしい。一番美味いのはRHマイナスのO型だそうで、その血を調達するのが年々難しくなっているらしいことも描かれる。また、どうやら吸血鬼は、モノに触れるとその来歴などが分かるようで、一種のサイコメトラー的な力も持っているらしいことも描かれる。なので、基本的に外出時は常に手袋を着用している。
 ただ、ちょっと観ていて良く分からなかったのは、この主人公と妻がどうして遠く離れた地に住んでいるのか、ということだ。なんとなくほのめかされるが、どうもピンとこなかった。いずれにせよこの二人は愛し合っていて、日夜iPhoneのFaceTimeで顔を見ながら通話していると。で、主人公がやけに元気がないので、妻がデトロイトにやってくると。で、二人でひっそりとした生活を送ろうとするのだが、そこに、妻の妹がやって来る。問題はこの妹である。極めて天真爛漫なゆとりガールで、もちろん主人公はそんな妹の性格を知っているし、どうやら89年前(?)にもひどい目に遭ったらしく、大嫌いで顔も観たくないと思っていると。妹は、「えー、89年前のこと、まーだ怒ってるの!? 何それウケる―www」と、まったく反省していないとんでもないゆとり吸血鬼である。この構造は、なんだか昭和の男と平成GALの会話のようで、わたしは大いに面白かったし、ゆとりガールに対して大いに腹が立った。そして物語は、主人公がせっかく築き上げた落ち着いた生活を、このお騒がせゆとりガールにぶっ壊されてしまい……というものである。
 
 で。役者陣である。
 まず主人公吸血鬼を演じたのが、『CRIMSON PEAK』の記事でも散々書いた、マイティ・ソーの出来の悪い弟ロキでおなじみのTom Hiddleston氏。今回は、そのたたずまいや表情が非常に吸血鬼っぽくてとても良かった。今回はだめんずではないので、安心してください。
 妻を演じたのは、Tilda Swinton様。現在御年55歳。この人は人外の存在というオーラがとても強い、非常に独特の雰囲気のある方ですね。今回もとても良かった。 たぶん、わたしがこの人を初めて知ったのは、『Constatine』において天使ガブリエルを演じたときだと思う。人じゃないという凄い存在感は、この人ならではのものでありましょう。『The Chronicles of Narnia』の「白い魔女」が一番有名かな。高貴なオーラというか、人外の存在を演じさせたら、この人に勝る役者はそうそういないと思います。
 そしておじいちゃん吸血鬼を演じたのは、Jim Jarmusch作品の常連Sir John Hurt氏。御年75歳。わたしにとってこの人は、『The Elephant Man』のジョン・メリックであり、かの『ALIEN』で一番最初にフェイス・ハガーに寄生されて、チェスト・バスターが胸から飛び出して殉職するケイン役でおなじみだが、もうあれから35年近く経ち、すっかりいい感じのおじいちゃん役が多いですな。イギリスが誇る名優で、去年、ナイトの称号を授かったそうですが、現在がん闘病中だそうです。
 で、問題の天真爛漫ガールを演じたのが、『CRIMSON PEAK』でもヒロインを演じたMia Wasikowskaちゃん。平成生まれの現在26歳。彼女は何気にかなり多くの役をこの5年間に演じているが、一体、本来の彼女の性格はどうなんでしょうな。一度話をしてみたいものである。その機会は永遠に訪れないと思うけど。
 あと、調べてみて今驚いたのだが、主人公の若い代理人を演じたのは、Anton Yelchinじゃないか!! ええと、この人はですね、JJ版の『STARTREK』で、エンタープライズ号の操縦士チェコフを演じてる若者です。それから、『Terminator4』ではカイル・リース役も演ってましたな。あー全然気が付かなった。抜かったわ……。

 というわけで、結論。
 『ONLY LOVERS LEFT ALIVE』という映画は、Jim Jarmusch節の炸裂したシャレオツ映画ではあるけれど、今回はかなり面白いです。この映画も、Tom Hiddleston氏を愛してやまない淑女の皆様におすすめできるし、そうでない普通の映画好きの方にもオススメできると思います。ぜひ、レンタルや配信でご覧ください。以上。
 
↓ この映画、観てないんだよな……早くWOWOWで放送してくれないかなあ……。Mia Wasikowskaちゃん主演のオーストラリア大陸横断(?)ロードムービー。観たい……!!
奇跡の2000マイル [DVD]
ミア・ワシコウスカ
ポニーキャニオン
2015-12-16

 というわけで、毎週月曜日は恒例の週末映画興収データです。
 今日は、数字を簡単にまとめて、後半では先週発表になったアカデミー賞ノミネートを備忘録として簡単にまとめておこう。 

 ではまず、いつもの興行通信社の大本営発表から。
 1位:『スターウォーズ/フォースの覚醒』:31日間累計で90億強。やはり、予測ほどは伸びていないが、5Wで90億突破はすごい。ちょっと心配だけど、一応最終110億~130億は変えないでおこう。
 2位:『妖怪ウォッチ』:30日間累計で50億は突破した模様。前作は同期間で68億ぐらいだったはずなので、比率は先週同様で73%ほど。まさか60億まで行くのかな? 56億ぐらいと見てたけど。
 3位:『パディントン』:3日間で1.4億。悪くない。まあ興味なし。
 4位:『orange』:37日間累計で28億強か。これ、マジで30億超えるね。すげえ。
 5位:『シーズンズ 2万年の地球旅行』:3日間累計で1.1億ほど? まあ十分な滑り出しでしょうな。
 6位:『傷物語I 鉄血篇』:9日間累計で5億チョイ届かず。十分すぎる好成績だと思う。
 7位:『白鯨との闘い』:2日間累計で0.8億ほど。キツイなこれは……。わたしの感想はこちら
 8位:『ブリッジ・オブ・スパイ』:10日間累計で4億チョイ。これまた厳しい。わたしの感想はこちら
 9位:『ピンクとグレー』:9日間累計で3億弱。先週も書いたけど公開規模にしては悪くないと思う。最終5~6億?
 10位:『人生の約束』:9日間累計で3億チョイ。上記『ピンクとグレー』の3倍の公開規模でこれは厳しい。最終6~7億か?
 その他、『映画ちびまる子ちゃん』はほんと、何気に順調で6億超まで伸ばしている。『007スペクター』は30億超えは、ちょっと微妙になってきたか?ギリで届くぐらいか。『母と暮らせば』は、16億は超えた模様。18億台での着地になりそうな気配です。あとですね、『ガルパン』はホントすごいよ。まだ10億にチョイ届かずだけど、確実に10億は突破しそう。ほんと、これはもう頭が下がりますな。すごいわ。
 てゆうかですね、ハリウッド作品が何でここまで弱いのか……『白鯨との~』は、わたしが観た回は土曜の昼ですが、正真正銘おじいちゃんおばあちゃんばっかりでしたね。『クリムゾン・ピーク』なんてランクにも入らないし……残念だなあ……。というわけで、今週の興収状況は以上です。

 さて。以下に2016年第88回のアカデミー賞ノミネート一覧をまとめておこう。賞の部門別リストはそこら中に情報があるので、今回は作品ごとに、それぞれ何賞にノミネートされてるか、でまとめてみるか。全部はめんどくさいので、あくまでわたしの注目リストという事にしておこう。なお、発表は日本時間の2/29(月)の午前中です。WOWOW入ってて良かった!!
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 ■『The Big Short』 ◆邦題:『マネー・ショート 華麗なる大逆転』3/4(金)公開。
  ノミネート:【作品賞】【監督賞】【助演男優賞】※Christian Bale 【脚色賞】【編集賞】
  物語:リーマンショックの話。サブプライム焦げ付きを察知した的な。
    自分メモ:原作は文春文庫より。著者は『マネー・ボール』のマイケル・ルイス。久しぶりにRyan Goslingを観るべし。
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 ■『Bridge of Spies』 ◆邦題:『ブリッジ・オブ・スパイ』公開中。鑑賞済み。
 ノミネート:【作品賞】【助演男優賞】※Mark Rylance 【脚本賞】【美術賞】【録音賞】【作曲賞】
  物語:こちらへ
 自分メモ:わたしが激賞したスパイのおじさんが助演男優賞ノミネート! やったー!
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 ■『The Revenant』 ◆邦題:『レヴェナント 蘇えりし者』4月公開予定。日程未定。
 ノミネート:【作品賞】【監督賞】【主演男優賞】※Leonard DiCaprio 【助演男優賞】※Tom Hardy 【撮影賞】【美術賞】【編集賞】【衣装デザイン賞】【録音賞】ほか全12部門
 物語:実話ベースの超復讐劇。
 自分メモ:『SW』のへなちょこ君こと「ハックス将軍」が出てるのでチェックすべし。
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 ■『The Martian』 ◆邦題:『オデッセイ』2/5(金)公開
 ノミネート:【作品賞】【主演男優賞】※Matt Damon 【脚色賞】【美術賞】【音響編集賞】【録音賞】【視覚効果賞】
 物語:SFの古典「火星の人」
 自分メモ:監督賞はノミネートされず。これは3Dで観に行くべし。
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 ■『Spotlight』 ◆邦題:『スポットライト 世紀のスクープ』4月公開予定。日程未定。
 ノミネート:【作品賞】【監督賞】【助演男優賞】※Mark Ruffalo 【助演女優賞】※Rachel McAdams【脚色賞】【編集賞】
 物語:カトリック教会の神父の性的虐待のスキャンダルを暴く的な。
 自分メモ:たぶん観ない。ハルクでお馴染みのMark Ruffaloが獲れるといいけど、わたしはスパイのおじさん推しで。いや、ちがう、ロッキーことStallone推しだ!!
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 ■『Room』 ◆邦題:『ルーム』4月公開予定。日程未定。
 ノミネート:【作品賞】【監督賞】【主演女優賞】※Brie Larson 【脚色賞】
  物語:変態ジジイに監禁された女性が出産して子供産んで、監禁部屋から脱出して……な話。どうやら脱出後が重要らしい。
 自分メモ:Brie LarsonちゃんのB級美人ぶりはなかなか良い。ただ話は超重いので観に行くか微妙。もし主演女優賞を獲ったら観に行こう。
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 ■『Brooklyn』 ◆邦題:『ブルックリン』7月公開予定。ずいぶん先。まだ日本語公式サイトナシ。
 ノミネート:【作品賞】【主演女優賞】※Saoirse Ronan 【脚色賞】
 物語:1950年代の話だそうで。アイルランドからやってきた移民の少女の青春もの。
 自分メモ:シアーシャ・ローナンちゃんがとうとう主演女優賞ノミネート!『つぐない』で助演女優賞にノミネートされたのはもう9年前か。目の色が恐ろしく綺麗だけど、やっぱり10代の頃が最高に可愛かったなあ……。 
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 ■『MAD MAX:FuryRoad』 ◆邦題:『マッドマックス 怒りのデスロード』公開済み。鑑賞済み。
 ノミネート:【作品賞】【監督賞】【撮影賞】【美術賞】【編集賞】【音響編集賞】【録音賞】ほか10部門 
 物語:こちらへ
 自分メモ:いくらなんでも高評価すぎじゃね? わからねえ……。でも本当に受賞しそうな勢い。
----------以上が作品賞ノミネート。以下はオレ的注目作&願望メモ--------
 ■『The Danish Girl』 ◆邦題:『リリーのすべて』3/18(金)公開。
 ノミネート:【主演男優賞】※Eddie Redmayne 【助演女優賞】※Alicia Vikander【衣装デザイン賞】【美術賞】
 物語:実話ベースの人類初の性別適合手術を受けた男とその奥さんの話。
 自分用メモ:2年連続主演男優賞はまあないよね……? 観に行くか微妙。奥さんを演じるアリシア・ヴィキャンデルさんは結構美人ですな。スウェーデン人だそうで、本作よりわたしは彼女がロボットを演じた『Ex Machina』の方が気になる。一体いつ日本公開されるのでしょう……今のところ全く情報ナシ。ちなみに『Ex Machina』には、SWのポー・ダメロン隊長とハックス将軍の二人が出てるそうです。観たい!!
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 ■『Steve Jobs』 ◆邦題:『スティーブ・ジョブス』2/12(金)公開。
 ノミネート:【主演男優賞】※Michael Fassbender【助演女優賞】※Kate Winslet【脚本賞】【作曲賞】
 物語:説明するまでもなし。
 自分用メモ:株式会社林檎を憎むわたしはまあ観ないと思うが、ファスベンダーとケイト・ウィンスレットは応援したい。
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 ■『Carol』 ◆邦題:『キャロル』2/11(木)公開。
 ノミネート:【主演女優賞】※Cate Blanchett【助演女優賞】※Rooney Mara【脚色賞】【撮影賞】【作曲賞】【衣装デザイン賞】
 物語:原作はPatricia Highsmithの長編『The Prince of Salt』だそうです。河出書房より刊行済み。
 自分用メモ:「このうえもなく美しく、このうえもなく不幸なひと、キャロル」 このキャッチはすごく好き。いいね。観に行きます。最近、どうもケイト・ブランシェット様の美しさに目覚めた。
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 あとは、Stallone隊長が【助演男優賞】、Jennifer Lawrenceちゃんが【主演女優賞】にノミネートされたことぐらいかな。Jenniferちゃんはたぶん無理として、Stallone隊長が受賞したら、嬉しくて泣くな、きっと……。

 というわけで、結論。
 日本国内の興収は、今週は目立った動きナシです。
 そして、アカデミー賞は、観てない作品ばかりなのでなんとも言えないけど、『MADMAX』がまさかの受賞したら笑えますな。何じゃそりゃ、って意味で。まあ、あと1ヶ月、発表まで楽しみにしていよう。以上。
 
↓ とりあえず、読んでおくべきか? 『Money Ball』は非常に面白かったですな。

 「モービーディック」と言えば、日本では『白鯨』として知られる小説である。
 Herman Melvilleによるその小説は、アメリカ文学史上燦然と輝く古典として有名なわけだが、わたしも確か大学院生のころに読んで、かー、こりゃまた読みにくい、と思った覚えがある。さっきわたしの本棚を漁ってみたら、岩波文庫版の<上><中><下>の3冊が出てきた。奥付によると、1994年発行のものであるらしい。もう読んだのは20年以上前なので、「読みにくかった」という印象しか残っていないが、まあ、この作品が書かれたのは1851年、つまり江戸時代、幕末期なので、そりゃあ読みにくいのも当たり前と言ってよかろう。翻訳も、いわゆる古典めいたものなので、その読みにくさは結構ハンパない。
 ただ、その物語が実話をベースにしていることは、正直知らなかったというか、全く意識したことはなかった。岩波文庫の解説(なぜか<上>の巻末に掲載されている。<下>じゃなくて)にも、Melvilleが『白鯨』を書くに至った時代背景などは妙に詳しく書かれているけど、ちょっと引用してみると、「メルヴィルはこれを書くに当たっては、自分の海洋生活の体験を元としたことはいうまでもないとして、捕鯨についての多くの記録を渉猟したのである。たとえば、抹香鯨に1820年に沈められたエセクスという船があったり(略) しかし、そういう体験や勉強を基として、メルヴィルは測り知ることのできぬほど強力な想像力をはたらかせ」ることで、書いたものだそうだ(※岩波文庫版<上>P.331より)。なので、わたしは全くのフィクションだと思っていたし、まあそういう認識でいいのだと思う。
 というわけで、相変わらず無駄に前書きが長くなったが、昨日観た映画、『IN THE HEART OF THE SEA』(邦題:白鯨との闘い)は、Melvilleの『白鯨』を映画化したものではなく、その元となった実話(ベースの本)を映画化した作品で、まさしく、上記に引用した部分で触れられている「エセクス号」の物語だ。

 たぶん、一番世の中的に、へえ、そうなんだ? と誰もが思うポイントは、この物語は1820年という、日本で言うと江戸時代の話であるという事ではなかろうか。当時の世界情勢をちょっと振り返っておくと、まず舞台となるアメリカは、南北戦争よりずっと前であり、まだいたるところでインディアンが虐殺されている時代で、西海岸はまだスペインやメキシコ領だったり、今とは全く国境線も違う時代である。ヨーロッパはというと、ナポレオンが失脚してまだ数年しか経っていない頃合いで、ようやく、今のヨーロッパに近い(あくまでも近いだけで詳細はかなり違うけど)国境線が出来つつある頃だ。文化的に言うと、まだ文豪ゲーテは現役だし、ベートベンなんかも「第9」を書いているころである。日本はというと、当然鎖国中で、将軍家としては11代将軍家斉の時代である。そんな時代の話だということは、意外と誰しも、へえ~? と思うのではなかろうか。
 すなわち、産業革命前の世界であり、蒸気機関も生まれたばかりでまだ船の動力としては使われておらず、本作で登場する捕鯨船も、もちろんのこと帆船である。また当然電気もない。石油が発掘されて産業に利用されるのもまだ数十年後だし、ガス灯も、かろうじてイギリスで設置されていた程度で、普及していたとは言いがたい時代である。何が言いたいかというと、この時代、人類が夜を克服するための明りとして「油」は非常に貴重で、かつ需要も高かったということだ。そして当時のアメリカにおいて、さまざまな「油」がある中で、「鯨油」は重要な産業資源であったということである。
 なので、現代アメリカ人には捕鯨反対を声高に訴える連中がいるが、そもそもお前らが乱獲したんだろうが!! という歴史がある。もちろん、日本でも捕鯨は盛んであったようで、Wikipediaによれば享保から幕末にかけての130年間で21,700頭にも及んでいたそうである。もちろん、鯨油が欲しかったのは日本もそうだが、日本人は食糧としてもおいしくいただいていたわけである。
 ま、こんな話は今回はこの辺にしておこう。
 一応、こんな歴史的背景を知っておいたほうが、本作はより興味深いとは思うが、実は、本作の一番の見所は、わたしとしては捕鯨ではなく別のところにあった。
 まず、本作の物語の構造を簡単に説明しておくと、作家Melvilleが、エセックス号の事件の30年後に、唯一まだ存命の生存者に取材に行き、その生存者が少年の頃に遭遇した悲劇が回想として描かれる構成になっている。そして、エセックス号はいかなる航海を経て「白鯨」と出会い、沈没するに至ったのか、が語られる。そこでは、船長と一等航海士の確執があったことや、初めてクジラを仕留めたときの興奮などが描かれるが、わたしが一番の見所だと思うのは、エセックス号が白鯨によって沈められた後の、漂流の顛末である。そこで描かれる極限状態ゆえに、少年は老人となってMelvilleが取材に来るまで、「あの時何が起こったのか」を誰にも語ることが出来なかった。そのすさまじい様子は、ぜひ劇場で観ていただきたい。
 いわゆる「漂流もの」は、今までいろいろな映画で描かれているが、最近で言えば、まさかのアカデミー監督賞を受賞した『LIFE OF PI』だろうか。あの映画はなんとなくファンタジックなところがあって、ちょっと微妙だが、わたしのイチオシ「漂流」映画はやはり『CAST AWAY』であろう。わたしがあまり好きではない、Tom Hanksのベストアクトだとわたしは思っている作品だが、とにかく、漂流後のガリッガリに痩せたTom Hanksの、悟りを開いた仙人のような眼差しが凄まじい映画である。今回も、一等航海士を演じたマイティ・ソーことChris Hemsworthの、げっそり痩せた姿を観ることができる。あれって、CGかな? 本当に痩せたのかな? ちょっと、わたしにはよく分からなかったけど、結構衝撃的にげっそりしたマイティ・ソーは、劇場へ行って観る価値があると思う。
 役者陣としては、あと3人、わたしに深い印象を残した演技を披露してくれた。
 まず、事件当時最年少の船員を演じた、Tom Holland君である。彼は、日本では2013年に公開された『The Impossible』でスマトラ島沖地震による津波に遭う家族の長男を演じて注目を浴びたが、何しろ今後、彼をよく覚えておいて欲しいのが、次期『SPIDER-MAN』を演じることが決まっており、今年のGW公開の『CAP:CIVIL WAR』に早くも出てくることが噂されている。今年20歳になるのかな、まずまずのイケメンに成長するのではないかと思われる注目株である。本作でもなかなか悪くないです。本作で早めのチェックをお願いしたい。
 次は、Cillian Murphy氏である。もうかなりの作品に出ているが、わたしがこの男で忘れらないというか、この男を初めて観たのが、Danny Boyle監督の『28Days after』だ。冒頭、無人のロンドンをうろつく彼は非常に印象的だが、その前の、素っ裸で目覚めたばかりの彼の股間がモザイクナシでブラブラ映っているのが、わたしは椅子から転げ落ちそうになるほど驚いた。えええ!!? だ、大丈夫かこの映画!? と妙なことが心配になったものだ。本作では、Chris Hemsworthが一番信頼する航海士を演じており、彼もまたガリガリに痩せて髪はボサボサ髭ボーボーの姿を見せてくれる。
 で、3人目に挙げたいのが、若きQとしてお馴染みのBen Wishaw氏である。本作では、作家Melville役で出てくるのだが、この人、わたしとしてはどうにも『CLOUD ATLAS』でのBLシーンが強烈な印象が残っていて、3月公開の『The Danish Girl』(邦題:リリーのすべて)でも、2015年のアカデミー主演男優賞を受賞したEddie Redmayne氏と熱いラブシーンがありますね。どうにも、目つきからしてBL臭を感じさせる独特の空気感を持った男だが、どうやら本物らしく、同姓婚したそうです。別にわたしは偏見はないので、お幸せになっていただきたいものだが、全国の腐女子の皆様のアイドルとして日本でも人気が出るといいですな。※2016/01/18追記。この男、『Paddinton』で紳士過ぎる熊さんの声も演ってるんですな。へえ~。
 最後に監督のRon Howard氏であるが、さっきこの監督のフィルモグラフィーを調べてみたら、たぶんわたしは全作観ているんじゃないかということが判明した。手堅いベテラン監督で本作もいつも通り見せるところは見せながら落ち着いた演出であったと思う。見所となる「白鯨」のCGは質感も高く、本当に生きているようで申し分ナシである。が、やはり本作は3Dで観るべきだったのかもしれない。わたしは2D字幕で観てしまったが、3Dであればもっと迫力の映像だったのかも、とは思った。まあ、いずれにせよ、なるべく大きなクリーンで観ていただくのが一番であろう。 

 というわけで、結論。
 どうでもいいことばかり書いてしまったが、『IN THE HEART OF THE SEA』(邦題:白鯨との闘い)は、わたしとしては「白鯨」よりも、船内の緊張感や沈没後の漂流の様子のほうが見所だと思った。役者陣の熱演もなかなかですので、ぜひ、本作は劇場の大スクリーンで観ていただきたいものである。以上。

↓ Ron Howard監督は今、「ラングトン教授」シリーズ最新作、『INFERNO』を撮影中だそうですよ。
インフェルノ (上) (海外文学)
ダン・ブラウン
角川書店
2013-11-28

インフェルノ (下) (海外文学)
ダン・ブラウン
角川書店
2013-11-28




 

 どんな望みも10個叶えられるとしたら、何を願うか?
 つい先日わたしが読み終わった小説は、非常にファンタジックでいてリアルな、不思議な作品『ヘブンメイカー スタープレイヤーII』である。実はサブタイトルにある通り、この作品は、2014年に出版された『スタープレイヤー』という作品と同じ世界観で描かれており、続編ではないものの、シリーズ第2弾ということになる。前作とのつながりは、ネタバレになるので内緒ってことにしておこう。
ヘブンメイカー スタープレイヤー (2)
恒川 光太郎
KADOKAWA/角川書店
2015-12-02

 ちょっと探してみたら、前作のPVがあったので貼っておきます。

 著者の恒川光太郎先生は、2005年に『夜市』という作品で第12回日本ホラー小説大賞を受賞してデビューした方なのだが、今回の『スタープレイヤー』シリーズはまったくホラーではなく、異世界ファンタジー、と言っていいのかな。ここ数年で散々出版されているような、いわゆる「なろう系」によくあるような異世界召喚モノに基本的な骨格は近い。けれど、面白さは比べ物にならないぐらい高品位で、きわめて質の高いエンタテインメント小説であるとわたしは思う。
 物語は、唐突に始まる。
 ある日、主人公は顔から何から白塗りの、身長2メートルの謎の男から、「運命の籤引き」を引かされ、「1等:スタープレイヤー」を引き当てる。すると、どことも知らない異世界に飛ばされ、「スターボード」というタブレット端末のようなものを手にする。なんでも、「フルムメア」という存在が全てを統括しているらしいのだが、そこには、以下のような「スタープレイヤー」のルールが書いてある。
--------------
一.スタープレイヤーは、スターボードを使用し、<十の願い>という力を与えられる。
一.ただし、元の世界に戻るという願いは、スタートより百日後でないと叶えられない。
一.元の世界に戻る、と願ったら、残りの願いの数にかかわらず終了する。
一.願いはスターボードで文章の形にする必要がある。
一.文章を送ると、フルムメアが審査し、それが通れば、願いを確定させることができる。
一.抽象的だったり、観念的だったり、物理法則の土台を変えてしまうような願い、また十の制限をとったり、矛盾をはらんだ願いは却下される。
一.願いをかなえられるのはこの惑星の中だけであり、スターボードの地図に記入されていない場所には何もできない
--------------
 このルールの下で、いくつかポイントとなる点がある。
 ■願いを上手くつなげる文章にまとめることで、複数のことを実現できる
 →例えば、「最新型のポルシェ911を1台。なお、ガソリンは満タンであり、予備部品も5台分用意し、その整備工具や消耗品の油脂類10年分、整備場なども同時に召喚する」といったように書けば全部呼び出せるし、ついでにガソリンスタンドの設置や予備ガソリン1億ガロンとか、文章次第で、「1つの願い」として申請できる。
 ■まず、願いが通るかどうか審査があり、とりあえず審査だけしてキャンセルするのは自由。
 →まず、可能かどうかだけをチェックできるので、それを利用していろいろできる。また、死者を蘇らせることや、元の世界から特定の誰かを呼び出すことも可能。なので、何かの事故や病気で死んだら、18歳の肉体で蘇る、その際、記憶は引き継ぐ、とかそういう自分の死亡リスクについて願って保険をかけておくこともOK。

 こういったルールの元に、異世界での生活を余儀なくされた人々を描いているのが『スタープレイヤー』シリーズという小説である。生活を進めるうちに、いろいろな出来事が起き、最初のうちは、貴重な「十の願い」を無駄使いしてしまったり、後半になると、その異世界にもともと住んでいる現地人が出てきたり、また別のスタープレイヤーと出会ったり、非常に面白いお話となっている。
 2014年に出版された第1作は、主人公が女性であったが、今回の『ヘブンメイカー』は男が主人公。主人公の追想録と、主人公によってこの世界へ召喚された少年の物語が交互して語られるスタイルである。そして最後はその二つの物語が交差し、いろいろなことが判明するという仕組みになっていて、読んでいてわたしは実にワクワクした。また、第1作目とのつながりも、最後の方で示され、すっかり1作目の内容を忘れつつあるわたしは、もう一度読んでみようかとも思わされた。なお、実を言うと、本作の『ヘブンメイカー』というタイトルからして、「ああ、今回はあそこの話なんだ」と最初からピンと来るべきなのだが、わたしは1巻目の内容をだいぶ忘れてしまっていたので、最後の方で1巻の主人公の女性が出てくるまで、ぜんぜん気が付かなかった愚か者である。恒川先生、ごめんなさい。なので、1巻目を読んでこの物語が気に入った人ならば、本作のタイトルを見ただけでワクワクしたのかも知れない。ちなみに言うと、本作を読んでから、1作目を読むというように順番を逆にしても、なんら問題はないと思うし、本作単独でも、十分に楽しめます。
 というわけで、十の願いを(ほぼ)なんでもかなえられるとしたら、どんな願いを抱くか、がこの作品では一番の重要時になる。もちろん、最初は異世界での生活を快適にするための願いであろう。そして孤独に耐えられなければ、人を召喚したり、現地人と接触しようとするかもしれない。本作、『ヘブンメイカー』の主人公も、序盤はそういう流れで「願い」を消費してしまうが、様々なことを体験し、また多くの人々と出会う事で、「願い」は複雑で高度なものへと成長していく。そして、いよいよ最後の「願い」を使う時が訪れるが、その「願い」はとても重く、わたしはいたく感動した。感動? いや、なんだろう、清々しさというか、そうきたか、という納得であろうか。今回のエンディングは、わたしとしては前作よりも深く心に響いたような気がする。ああ、やっぱりもう一度前作を読み直そう。そう思ったわたしであった。しかし、これだけ面白いと、きっとまた映像化の話が出てくると思うが、くれぐれも、変なアニメや実写映画化は勘弁して欲しい。やるなら、きっちりと金をかけて、気合の入ったものをお願いしたいものである。

 というわけで、結論。
 恒川光太郎先生の『ヘブンメイカー スタープレイヤーII』という作品は、万人にお勧めできる非常に面白い小説である。この小説がどのくらい売れているか分からないが、もし10万部以上売れていなかったら、営業担当者は相当のヘボであろうと断言する。こういう作品を売らないでどうするんだよ、と怒鳴りつけてやりたい。実に面白く、そこらのクオリティの低い素人小説の5万倍は面白いと思います。以上。

↓ 1作目がこれ。本棚にどうしても見当たらないので、もう一度買うか……電子で。たぶん当分文庫にならないんだろうな……文庫になるとしたら、今年の夏フェアかなあ……。ちなみにこの1作目は、NHK-FMでラジオドラマ化されました。
スタープレイヤー (単行本)
恒川 光太郎
KADOKAWA/角川書店
2014-08-30

 世の女子の中で、わたしが常々、謎に思っている人々がいる。いわゆる「だめんず」を愛してやまない女子たちだ。「だめんず」とは、ごく簡単に言えば、「ダメ」な男のことで、具体的には、ヒモ体質の働かない男や口先だけの男、あるいは広義ではDV暴力野郎など、わたしに言わせればクズ同然のゲス野郎どものことである。なんでまた、そんなダメ男を好きになるわけ? と真面目に生きる男としてお馴染みのわたしとしては憤懣やるかたないわけだが、 実際に生息するそのような女子を見ると、つまりキミは人を見る目が無いわけですな、と結論付けることにしている。そしてそんな自分が大好きな残念女子なのであろう。なるべく近づかないのが一番だ。ちなみに、さきほどわたしがお世話になっている美しいお姉さまから聞いたところによると、夢を追いかけると言っていつまでもうだつの上がらない野郎もここに含まれ、残念ながら、あんたもその傾向があるじゃないの、と言われてしまった。マジか……。そしてそういう男の世話をしたくなるのは、女子的DNAにプログラミングされているので、ある程度はやむなしだそうだ。なるほど……なんともはや、神様は残酷である。
 で。昨日わたしが観た映画、『CRIMSON PEAK』は、そんな「だめんず」野郎に恋した女子がとんでもない目に遭うホラーテイストあふれる映画であった。

 わたしは、この映画をホラーだと思って、どんな超常現象に襲われるのか楽しみに劇場へ向かったのだが、劇場を出たわたしは、若干ぽかーん、である。昨日は14日、TOHO(トーフォー)の日で1100円で観られるので観に行ったのだが、定価で観ていたら、ちょっといたたまれず、どこかでタバコを吸いながらコーヒーでも飲んで、気持ちを落ち着けてから帰ろうと思ったに違いなかろう。
 物語は、年代がはっきり分からないけれど、おそらくは20世紀初頭ぐらいだと思う。日本的に言えば、おそらくは明治の終わりごろから大正初期ぐらいだと思えばイメージしやすいだろう。主人公の女子は、ちょっとしたお嬢様で、小説家志望の、日本で言えばハイカラガールである。そして彼女にはひとつ特徴があって、ま、視えるんですな。ヤバイものが。そんな霊感ハイカラお嬢様はNYに住んでいるわけだが、以前から、お嬢様は幽霊から「クリムゾン・ピークに気をつけろ……近寄ってはならぬ……」と警告を受けているのだが、何のことかよく分からずにいると。そんな彼女は、ある日、お父様の会社に出資のお願いのためにイギリスからやってきた準男爵様と出会うと。で、典型的だめんずの夢追い人である準男爵は、自分の領地内で粘土採掘事業を進めるための運転資金が欲しいのだが、しっかりしている父はあっさり断る、のだが、とある大事件が起きて、結局、そんなダメ野郎(しかも重度のシスコン野郎)にすっかりFall in Loveで、一緒にイギリスに行ってしまう。そして、そのお屋敷の建つ地が「クリムゾン・ピーク<真紅の山頂>」と呼ばれていることを知り……とまあそんな話で、ともかくお嬢様はひどい目に遭う展開である。冒頭からの雰囲気は、これは『The Shining』的なお話なのかな……? と思って観ていたのだが、結論としては全く違ってました。
 とにかく、この映画は、監督Guillermo del Toroの趣味が全面的に炸裂していて、映像はいつもの通り豪華と言えばいいのか、なんだろう、絢爛? な画を見せてくれるが、登場キャラクターはどうにも変であった。
 霊感ハイカラお嬢様を演じたのは、わたしも大好きな素朴ガール、Mia Wasikowskaちゃん。なんかこの娘さんは、剥きたてのゆで卵のようなつるっとした美しい肌ですね。日本的に言うと、能年玲奈ちゃんに似ているような気がする。1989年生まれのオーストラリア人。『Alice in Wonderland』で世界的に大ブレイク後、順調にキャリアを重ねてますな。日本では今年の夏公開かな、『Alice2』の予告も既に公開されてますね。
 とんでもないシスコンで夢追い人のだめんず準男爵様を演じたのは、これまた宇宙一ダメな弟、ロキを演じたことでお馴染みの、Tom Hiddleston氏。マイティー・ソーの義弟として、宇宙規模のだめんずぶりを発揮した彼であるが、今回の映画もまたひどい。ロキも若干マザコンだったし、今回も重度のシスコンで、なんでこんな男がモテるんだと、わたしとしては理解できないが、世の女子たちは、だがそれがいい、と言うのだろう。あのですね、もうちょっと、男を見る目を養なった方が、幸せになれると思いますよ。と、モテない男を代表して申し上げておこう。まったくもって、ガッデムである。
 で、そのシスコン野郎のお姉さまを優雅に、そして恐ろしく演じているのがJessica Chastainさん。今回はとんでもなくおっかない、サイコ女子を迫力たっぷりに演じてくれたのだが、やっぱりこの人、綺麗ですね。わたしはまた、彼女や弟が、実は人外の存在で……という展開かと思っていたのに、まったくそんなことはなく、その点は非常になーんだ、で終わってしまったような気がする。もうちょっとひねった脚本であればもっと面白かったのにな、と思いました。
 最後。霊感ハイカラお嬢様を密かに愛する純情青年医師を演じたのが、Charlie Hunnam氏。彼は、del Tro監督の前作『Pacific Rim』の主人公パイロットですな。なんか半端なロンゲで、かなりイメージと違うけれど、今回唯一の常識人で、彼もまたとんでもなくひどい目に遭う気の毒なお医者さん役であった。確か設定は眼科医だったかな? でも、その眼科医という設定は一切、どこにも何にも生かされず、それなら普通に外科医とかの方がよほど物語に絡めることができたような気がする。まあ、主人公の霊感ハイカラお嬢様は眼鏡っ子なので、そこだけっすね、接点は。

 というわけで、結論。
 『CRIMSON PEAK』という映画を観に行って、一番なるほど、と思ったのは、Tom Hiddleston氏の女性人気の高さである。30代(と思われる)美人女子の一人鑑賞がすごく多かった。観た劇場が日比谷シャンテだったからかな?? つまりあれか、世にはだめんず愛好女子が多いってことか。まったくもって残念なお知らせである。ええと、映画としては、まあまあです。期待は下回りました。とは言え、Tom Hiddleston氏を愛してやまない淑女の皆さんは、ぜひ劇場へお出かけください。以上。

↓ 確かこの映画では、Tom Hiddleston氏は、かの有名な作家F Scott Fitzgerardを演じてましたね。『The Great Gatsby』とか、『Benjamin Button』の著者ですよ。
ミッドナイト・イン・パリ [Blu-ray]
オーウェン・ウィルソン
角川書店
2013-10-25


 毎週木曜日は、今週の『鮫島』ニュースのお時間です。
 今週の週刊少年チャンピオンは、やっぱり『リク』がヤバかったですね。とうとう本性を出してきた「大場」というおっさんがすごい。無駄に慇懃無礼で丁寧な物腰の一方で、やっぱりキレたらこの人ヤバかった!! とりあえず松尾がボッコボコにされますが、殴る前にまず、服を脱いでパンイチに。しかもブリーフw そして名前入りww ヤバし。「やっぱりな・・・絶対に血が付くと思ってたんだよ!! 俺正解―――!! 脱いでて良かった―――!!」な、なにを言ってるんでしょう、このおっさんww  最高です。顔だけじゃなく、全身に山羊? の入れ墨入りです。やっぱりこのキャラも狂ってました。
 そのほかのマンガは、まあ通常運転でした。『ペダル』はもうさっさとスプリントライン通過してほしい。あとチョイというところで今週は終了。泉田君が負けたら超興ざめです。『刃牙道』はジャック・ハンマーVS本部のおっさんが始まりそうのところまで、愛する『ニコべん!』も大きな展開はないものの順調です。お、サイン会だと!!! どうしよう、行くべきか……ちょっと悩むとしよう。あとですね、応援している『スメラギ・ドレッサーズ』なんですが、今週ちょっと絵が変わったような気がします。ちょっとだけすっきりしてきたし、線に力がこもってきましたね。なんだろう? 明らかに描き方が変わってきています。あとはもうちょっとネームを減らせば……見違えるように読みやすくなるのだが……でもまあ、応援してます!!

 さて。では、今週の『鮫島』ニュースです。
 ついに始まった、鯉太郎VS【大山道】兄貴。今週は、立ち合い前に常松が言っていた通り、【大山道】兄貴のベテランの技? が炸裂して鯉太郎を翻弄するターンでした。当たりに行けば引き、一瞬の隙があれば強烈にブチかましてくる【大山道】兄貴の攻撃に、鯉太郎も翻弄されます。鯉太郎の真正面からのブチかましを、フッとかわす【大山道】兄貴に対して、場内からは逃げるなー!! というヤジが飛びますが、決して逃げているわけではありません。戦っている鯉太郎には、それが良くわかっています。「゛逃げ“の相撲ならどうってことねえんだ・・・大山道(コイツ)の厄介なとこは 引き技に来るとは到底思えねーほどの さっきを帯びた気迫を飛ばしてくるところだ かと思えば殺気など微塵も感じない状態から・・・突如殺気を纏って現れやがる・・・大山道の相撲は、間違いなく゛攻め“の相撲だ・・・」【大山道】兄貴は、それでも果敢に挑んでくる鯉太郎に、弟弟子【蒼希狼】の姿を見ます。「見てるか・・・蒼・・・やっぱりお前らは よく似てるよ・・・」そして今週最後のページでは、猛然と攻めてきた鯉太郎に、【大山道】兄貴の会心の蹴手繰りが炸裂して―――!! というところまででした。いやあ、やっぱり『鮫島』は最高ですね。熱いっすわ。今後も応援して行きますので、佐藤先生、頑張ってください!!
 最後に、毎週のテンプレを貼って終わります。
 <場所:9月場所>
 【鮫島】東前頭十四枚目(5月場所で東前頭十枚目)
 【白水】西小結
 【松明】東前頭六枚目。常松改め。
 【大吉】序2段【豆助】序ノ口【目丸手】序二段【川口】不明
 ------
 1日目:【飛天翔】西前頭十二枚目。石川改め。
 2日目:【宝玉光】西前頭十一枚目
 3日目:【舞ノ島】西前頭十枚目
 4日目:【巨桜丸】西前頭九枚目。新入幕力士
 5日目:【岩ノ藤】東前頭七枚目 
 6日目:【大山道】西前頭七枚目
 --------
 【天雷】東関脇
 【蒼希狼】??? 最高位は小結
 ※右額の傷は、初入幕初日の【桐の里】戦で負ったもの
 ※現在の現役横綱は、モンゴル出身力士で「大横綱」と称されている模様 
  ただし、【蒼希狼】の過去話の時点なので、この9月場所も現役か不明。

 というわけで、結論。
 今週の『鮫島』は、現実時間だと約15秒ぐらい進みました。 1分の取組として、あと3週ぐらいかかるのかな……そこに【蒼希狼】のことも入って、4週ぐらいですかね。決着を楽しみに待ちましょう。
 そしてですね、皆さん聞いてください!!! この前の日曜日から始まった、大相撲初場所なんですが、わたしの応援している松鳳山関が前頭筆頭として戦っているわけですが、 前頭筆頭という事は、要するに前半戦は大関や横綱との取組が組まれるわけで、実際、昨日時点で大関戦×1、横綱戦×3を戦ったわけですけど、なんと二日目に金星ですよ!!! 日馬富士VS松鳳山で、なんとあの黒ブタ野郎、勝ちおった!!! いやー、テレビ前で失神しそうなぐらい興奮しました。黒ブタこと松鳳山関、二日目は本当にカッコ良かったぞ。あんたのことも応援してるから頑張れ!!! 今場所勝ち越したら、マジで後援会に入ってやるからな!! 以上。

↓ 買うか……ちょっと勉強した方がいいかもな……。
大相撲力士名鑑 平成28年度
相撲編集部
ベースボール・マガジン社
2016-01

 だいぶ前に、(1)巻を買ってみて、おお、これは面白いと思っていた漫画が、いつのまにか単行本の(3)巻まで出ていたので、まとめて買ってきた。ので、(1)~(3)巻をまとめて紹介しよう。タイトルは『闘獣士』。週刊少年サンデーに不定期掲載される作品で、いつのまにか掲載されたりコミックス単行本が出たりするので、わたしとしてはちょっと困るのだが、そもそも、この(3)巻で完結したのかも良くわからない。どうなんだろう?? お話的にはきれいに区切りが良いところで終わっているが、続きもあり得る感じであるし、ここで終わりと言われても、そうですか、という気もする。 ああ、今、小学館のサイトを見たら、【完結】となっているからこれで終わりっぽいですな。※追記:終わってませんでした。もう(4)巻も発売になっており、ちゃんと話は続いてました。これまた泣ける!小学館の嘘つき!

 この物語は、亜人類やドラゴンのいるちょっと不思議な帝政ローマ時代を舞台として、グラディエーターとして戦う奴隷の少年と、その少年を育て鍛えた「翼竜族<ワイバーン>」の異種親子の物語である。今調べてみたら、なんと(1)巻は、版元の小学館のコミックスサイトで冒頭45Pぐらいまで試し読みができるので、そちらを見てもらった方がいいかも。非常に気合の入った、強い線と描き込みの美しい力作で、実際面白いので、超オススメである。
 (1)巻では、翼竜族<ワイバーン>の【デュランダル】と、奴隷剣闘士【フィン】のお話と、その話の前日譚的な、別の<人間とミノタウロスという異種兄弟>の話から成っている。これがまた泣かせるお話で、非常にいい。
 (2)巻と(3)巻は長い続き物の話で、3人の少年が、一人の幼馴染の少女を救うお話。その3人の少年を鍛えるのが、(1)巻の主人公のフィンで、これまた泣ける、いいお話。恐ろしくカッコ良く、フィンやデュランダルの登場シーンなどはバッチリ決まって、とても爽快感もある。
 ただ、実際のところお話そのものはありがちなものであり、どこかで聞いたような話といえば否定できない。だが、柿崎先生の描くビジュアルは極めて強く美しいもので、オンリーワンの才能と言って良いだろうと思う。
 著者の柿崎正澄先生は、わたしが知ったのはたしか、週刊ヤングマガジンに連載されていた『GREEN BLOOD』という作品だったと思うが、非常に力の入った気合のこもる絵で、物語も極めて骨太で非常に好きだった作家である。おっそろしく渋く、カッコイイ。
 しかし、わたしがとにかく残念だと思うことは、これだけしっかりとした絵が描けるにも関わらず、実際のところ、それほど売れていないことだ。おそらくは、『GREEN BLOOD』も打ち切りであったのだと思う。終盤は非常に駆け足になってしまって本当に残念に思ったものだ。
 このような、良質の作品は、残念ながら世にはものすごい数埋もれていて、実にもったいないのだが、果たしてわたしが営業や編集で携わっていたらもっと売れていたか、というと、まったくもって自信はない。ただ、とにかくもったいない。こうした才能をなんとかもっともっと、売り出せないものだろうか。今のわたしは、こうしてインターネッツという銀河の片隅でつぶやくことしかできないけれど、ほんの少しでも、柿崎先生を知る人間が増えたら、それ以上の喜びはない。

 というわけで、今日は短いけど結論。
 柿崎正澄先生による、『闘獣士―ベスティアリウス』は、非常に高い画力で描かれた、大変クオリティの高い漫画である。ので、最近なんか面白い漫画がないかな~と思っている人は、とりあえず試し読みを読んでみて、気に入ったらぜひ買ってください。以上。

↓ 柿崎先生の別の作品。柿崎先生の一番有名な作品は、全22巻まで連載が続いた『RAINBOW』だと思うけれど、あえてこちらをオススメ。やたらとカッコいい。

 というわけで、昨日は祝日で一日遅れとなったが、毎週恒例の週末映画興行データです。
 今日も、最初にUS国内のBOX OFFICE情報から行こう。何しろ『STAR WARS』が大変だ!! 先週お伝えした時は、公開17日間累計で、あっという間にUS歴代2位まできた、という状況だったが、ごくあっさり、公開20日目の2016/01/06時点で、それまでの1位だった『AVATAR』をぶっちぎり、現在毎日記録を更新し続けている。
 2016/01/01現在24日目までの累計値が発表されているが、なんと驚きの8.12億ドルである。日本円換算で954億円(1US$=117.5JPYとして。ちょっとだけ円高傾向ですな)。 これは一体どこまで伸びるのか。もはや前人未踏の記録であり、さっぱり見当がつかない。まあ、すげえなーと数字を毎週追っていくことにしようと思う。ちなみに、全世界でも絶好調を維持しており、World Wideでの興収は既に17.33億ドルまで積みあがっています。もう電卓の桁が足りないよ。2000億円超ってことですな。

 で。日本はどうだったのか。
 いつもの通り、興行通信社の大本営発表です。
 1位:『スターウォーズ/フォースの覚醒』:24日間累計で79億強。先週の予測はやっぱりちょっと甘すぎた。先週7日間の6掛け弱で推移。ま、先週はお正月だったし、これでも上等でしょう。今週の分を下方修正すると、累計100億は行くにしても、110億はちょっと微妙かもしれない。マズイな……。ただし、休日の1/11まで入れると累計82億だそうです。
 2位:『妖怪ウォッチ』:23日間累計で46億強。これは前作比で73.2%。ちょっと盛り返してきた。50億後半は行きそうですな。すげえ。
 3位:『傷物語I 鉄血篇』:3日間で2.6億。ホント、アニメは強い。けど西尾維新は興味なし。
 4位:『orange』:30日間累計で25億突破。すごい。ここまでとは。原作読んだけど興味なし。
 5位:『ブリッジ・オブ・スパイ』:3日間累計で1.7億ほど。うーん……劇場規模は『傷物語』の3倍なのに……。洋画は厳しいのう……。
 6位:『人生の約束』:2日間累計で1.0億ほど。ちょっと厳しいか。10億届くかどうか……。
 7位:『ピンクとグレー』:2日間累計で1.0億ほど。公開スクリーン数は100未満なので、この興収でも結構頑張ったと言えそう。原作は発売当時読んだ。普通にちゃんと読めたといったら失礼か。まずまず面白かった。
 8位:『母と暮らせば』:30日間累計で15億突破。17~18億ぐらいの着地かな?
 9位:『007スペクター』:先行含む41日間累計で27億突破。前作越え達成。30億行けるか、チョイ届かずか?
 10位:『映画ちびまる子ちゃん』:19日間累計で5憶強。何気に順調。悪くない。
 以下、わたしイチオシの『クリード―チャンプを継ぐ男―』は19日累計で3億チョイと厳しい。もっと売れねえかなあ。また、『杉原千畝』が37日累計で10億は超えた模様。一方の『海難1890』はいまだ7億弱と厳しい。『ガルパン』は相変わらずコンスタントに稼いで8億強。これ、10億行くかもよ……。

 ということで、ちょっと先週の『SW』の日本での興収予測はちょっと自信がなくなってきた……。やっぱりもう少し厳し目で見た方がいいかも。一応まだ、計算上100億は超えるはずなのだが、もはや130億とかは難しいと思う。110億に乗るかどうか、という感じです。
 しかし、ここ数年はやりの、小規模公開でガッチリ稼ぐ系のオタアニメの力はすごいですな。上にも書いた通り、『傷物語』は108スクリーンの公開しかなく、348スクリーンと3.2倍の規模で公開された『ブリッジ・オブ・スパイ』の1.5倍を稼いでいるわけで、要するに、1スクリーンあたりの稼ぎは、ええと4.8倍ってことでいいのかな? このような現象は、もはや全く珍しくなく、当たり前の光景になってきたけれど、これはもう、円盤がどんどん売れなくなってきている昨今では、ビジネスとして唯一の道なんだろうと思われますね。『ガルパン』ももうこれ、本当に10億行きそうだし、最近では『ハイ・スピード』も5億ぐらいは稼げそうだったし。劇場での物販やイベントなどを考えれば、十分利益は出ているだろうと思う。『ガルパン』はウハウハでしょうな。
 とはいえ、かつて何でもかんでもTVアニメになって質の低下が起きたように、今後、何でもかんでも「劇場版」を公開して、同じように儲かるわけでは決してなく、やっぱり作品のクオリティが一番重要なんでしょうな。ファンに愛され、その愛に応える作品に仕上がらないと、まあ当然そっぽを向かれるわけで、作品選びは勿論のこと、作品クオリティの向上もお願いしたいものであります。

 というわけで、結論。
 『SW』は現状82億チョイまで来た。わたしの予測ではもう80億は軽く超えていたはずなので、さっそく計算が狂って来ました。サーセン。内心では、そりゃそうかと思ってますが、わたしのいい加減な計算を信じた人がいたら、すみませんでした。。。以上。

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 日本における2013年の洋画興行において、おそらく業界関係者が一番驚いた作品は、なんと42.3億もの興行収入を上げた『TED』であろう。わたしも、こういう下ネタ満載のアメリカンギャグ映画が売れるとは全然思ってもみなかった。事実、 公開時は253スクリーンとやや小さめの規模で封切られ、3.2億、3.3億、2.98億と恐ろしく好調な週末興収を稼ぐに至って4週目からは373スクリーンにまで拡大され、その後も順調に興収を重ねたという近年まれに見る「後伸びヒット」をかました作品である。まあ要するに、当初はまったく期待されていなかった作品がグイグイ伸びたという非常に珍しい映画だ。
 監督したのは、Seth MacFarlane。いかにもモテそうにない愉快なおっさんだが、この『TED』はUS国内では2012年の6月公開で2億ドル以上の大ヒットとなり、2013年のアカデミー賞授賞式の司会を務めることとなった。しかし、生来の空気を読まないギャグ体質が残念ながら顰蹙を買い、本人ももう二度とアカデミー賞の司会はやらんと言っているようで、わたしもその年のアカデミー賞授賞式をWOWOWの中継で見たけれど、確かにひどかった。
 ま、そんなSeth MacFaelane氏だが、『TED』の大ヒットを受けて 調子に乗って制作した映画が『A Million Ways to Die in the West』(邦題:荒野はつらいよ~アリゾナより愛をこめて~)である。WOWOW放送を録画しておいた奴を、今日やっと観てみた。

 残念ながらこの映画は、US本国でも4313万ドルと、『TED』の5分の一程度しか稼げなかったし、日本でもまったく売れなかった作品である。あまりに売れなくてあっという間に公開が終わってしまったのでわたしもすっかり見逃してしまっていたのだが、改めて観てみて、なるほど、こりゃアカンと思った次第である。
 物語は、1882年アリゾナを舞台に、彼女に振られてふてくされて引きこもる羊飼いのまったくイケてないおっさん主人公が、街にやってきた悪党をやっつける話である。脚本的には特に見るところもなく、とにかくストーリーに関係ないギャグがそこらじゅうにちりばめられた、Seth MacFarlaneの、Seth MacFarlaneによる、Seth MacFarlaneのための映画であった。そのノリはまさしく悪ノリであり、ギャグもほぼすべてうんこ、SEX、人種差別的なもので、実に下品きわまる映画であった。別にわたしも下ネタに抵抗があるわけではないし、ギャグはギャグとして十分受け止めることのできる男だと思っているが、いかんせん、やりすぎというか、残念ながらまったく面白くないのが致命的である。
 この作品がWOWOWで放送されたのが1月4日なのだが、その日は放送をわたしは観ていたものの、開始19分で寝てしまい、おとといの夜、また観てみようと思って73分ぐらいのところでまた寝てしまい、ようやく今日、3度目にしてやっと最後までちゃんと見た。まあ、そんな映画です。
 この、Seth MacFarlaneという男は、脚本も書くし声優もやればアニメーター、歌手もこなすなど、恐ろしく才能あふれる男なのだとは思うが、ちょっとね……ちょっと無理です、わたしは。ただまあ、すべて確信犯としてやっているわけで、ファンはきっといるのだろう。実際、『TED』は大ヒットしたわけだし。まあ、去年公開された『TED2』は、US本国で8100万ドルに留まり、前作の半分以下に落ちてしまった。ただ日本では25億も稼いだのかな。それは非常に立派な数字である。ちなみにわたしは『TED』はそれほど面白いとは思っていないので、どうでもいいです。この人は。

 じゃあ、なんでわざわざ録画までして観たかというと、出演者がかなり豪華だからである。まず、主人公を振る元彼女を演じているのは、わたしが大好きな三大ハリウッド美女の一人、Amanda Seyfriedちゃんである。『TED2』でもヒロインを演じた彼女だが本作では、またひどい役で、彼女と言えばその大きな目がチャームポイントだが、「このギョロ目女が!!」とひどい言われようであった。そして主人公と恋に落ちて(?)拳銃のコーチをしてくれる女性を演じたのが、MADMAXのフェリオサでお馴染みのCharlize Theronで、本作でも非常に綺麗な美人さんであった。彼女は非常に良かったです。可愛くてカッコイイ。なんでまた主人公のようなイケてない男に恋に落ちたのかは全く理解できなかったけど。そして悪党を演じたのが、マスター・クワイ=ガン、あるいは戦うお父さん・ブライアン・ミルズこと、Liam Neeson氏である。しかしまた、なんでこの映画に出ることをOKしたんだろうか……と思うぐらいひどい扱いで、ケツ出しで失神するぐらいなら5万歩譲ってよしとしよう、だけど、そのケツにお花をブッ刺されて放置されるって……ここはさすがに笑わせてもらいました。そして、恋敵のイヤミな金持ちをNeil Patrick Harrisが演じていて、彼はブロードウェー・ミュージカルの活躍でも有名で、何度もTONNY賞授賞式の司会をしている男だ(2015年も彼でしたね)。本作では、これはたぶんミュージカルが元ネタなのでは? というギャグも多かったのだが、残念ながらわたしにはよく分からなかった。
 そのほか、カメオ出演でいろいろな有名役者が出ていて、おそらくはSeth MacFarlaneがそれだけUS本国では愛されキャラなんだろうな、ということは察することが出来た。チラッと、Back to the Futureのドク本人も出てくるし、今年公開の『DEAD POOL』でお馴染みのRyan Reynoldsも出てたし、ラストはJamie Foxxも当たり役Djangoの姿で出てくるし。まあ、そういう楽屋落ちめいたワイワイガヤガヤ感も、はっきり言って鼻につくと言うか、一人でよがってろ!! というわけで、わたしとしては冷める一方であった。

 というわけで、結論。
 『A Million Ways to Die in the West』、邦題『荒野はつらいよ~アリゾナより愛をこめて~』は、ちょっと日本人にはかなりのビーンボールで、悪球好きの岩鬼でも手が出せない、相当な大暴投であろうと思う。よって、普通のストライクゾーンの持ち主は、黙って見送るほうがよさそうだと思います。以上。

↓ 『TED』ならまだ普通の人にもかろうじて通じるんですが……。サーセン。『2』は観てないです。
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 わたしは映画の情報をいろいろなサイトから得ているが、予告編だけを集めたTrailer Addictというサイトは、少なくとも週に一回はチェックしている。公開前の新作は、予告編が公開されるとほぼ必ずこのサイトに登場するので、とりあえずこのサイトをチェックしていれば、大体の映画の予告は観ることができるので重宝している。
 で、たしか2013年の終わりごろ、このサイトにとある映画の予告編が登録され、わたしもすぐに観て、なんじゃあこりゃあ? と思った作品がある。その予告編を観た時は、ははあ、こりゃあエロ&グロのドD級映画で、日本公開はされないだろうな、と思っていたのだが、まったくわたしが知らない間に、2015年2月(?)に公開されていて、先日WOWOWで送されたので、録画してみた。原題は『NURSE 3D』。日本公開タイトルを『マッド・ナース』という作品である。

 上記の日本版予告は、センスゼロのD級臭がぷんぷんするものだが、字幕やキャッチのセンスがひどすぎるが故にそう見える、とも言える。US版予告の方がもうちょっとマシに見えるので一応紹介しておこう。

 どうですか? 比べるとずいぶん印象が違うでしょ? ただ、この映画を、いわゆるおバカムービーとして、世の好事家どもの目を引くために、敢えてセンスゼロの日本語版予告を作った配給の意図も分からないでもない。そうでもしないと、まったく人目につかないだろうし、実際のところ、くっそつまらない作品だからだ。上映時間は100分弱。まさにこれはまったくもって時間の無駄映画であるとわたしは断言してもいい。とにかく、いろいろなところが残念と言うか惜しいのだ。わたしならば、もうちょっとマシな作品に出来たと思う。と、まあ、いつも通りの言うだけ詐欺理論を以下に展開してみようと思います。
 まず、物語。脚本である。実は脚本的には、そんなにひどくない。実際似たような話はよくあるもので、きちんとしている。妙な飛躍や矛盾はなく、小説化したら面白いモノが出来るような気さえする。
 なので、ダメなのは、役者と監督だ。
 まず何と言っても、主役の狂っているナースを演じたPaz de la Huerta嬢が0点であろう。たしかに、そのボディーやファッションは、くっそエロイ。男としては、もうこんなナースがいたら、確実に目をそらさざるをえない。そのエロさ、極めて上物である。が、まず顔と髪型はダメだ。まったく美人でないし、なんか萎えさせるものがある。これは女性の目から観てもそう思うのではないかと思う。どうも、どこかで見た顔だと思っていたのだが、『PLATOON』のバーンズ軍曹でお馴染みのTom Berenger氏に似てるような気がする、とさっき発見した。似てないかな? というわけで、体は凄いけど、顔を見たら、チェンジを願いたい類のものであるので、わたしならこの方を起用しないだろう。そしてもうひとつ、この女優で致命的なのは、演技である。端的に言うと台詞のしゃべり方だ。あまりに下手でたどたどしく、わたしはその名前とひどいしゃべり方から、ああ、この方は英語が母国語じゃないんだろうな、と思った。しかし調べてみると、NY育ちの生粋のメリケン人であった。ということは、結論としては演技はド素人レベルということなのだろう。もし、主役が、このイカレナースに狙われる美人ナースを演じた女優がやっていたなら、もうちょっと違うというか、もっとよりそそる映画になったのではないかと思った。アカン。チェンジで。
 そして監督である。もうめんどくさいので、この監督のことを調べる気にもならないが、演出もまたド素人レベルである。無駄に過剰な露出を多用した光あふれるキラキラ感、無駄にスローモーションを使う安っぽさ、無駄に血まみれなD級感など、もう初めてビデオカメラを買ってもらった高校生が撮るレベルと変わらないものだった。なお、この映画の原題で分かるとおり、US公開時は3D作品として公開されている。こういう題材を3Dで撮ろうとした山師的センスは嫌いじゃない。3Dの飛び出しを意識した、無駄な3D用演出もいっぱいあるが(例えば喉からはさみがジャキーンと飛び出すとか)、いかんせんチープすぎてもうどうしようもない。せっかく、エロシーン満載なのだから、おお、こういう3Dの使い方があったか!! と唸らせるような、もうちょっと斬新な3D演出を考えて欲しかった。日本では3D版の公開はなかったようだが、まあ、わたしとしては3Dで観たかったけれど、この程度の3D演出なら通常公開されただけでもありがたいと監督は思うべきだろう。
 なお、衣装デザインは、フィリピン出身のZaldy Gocoという男が担当しているのだが、ナース服はピツピツの超ミニだし、私服もふくめてとにかく、くっそエロイ。このデザイナーは、マイケル・ジャクソンのステージやシルク・ド・ソレイユ、あるいはLady GAGAちゃんの衣装を担当したこともあるそうで、この映画でも、まあ唯一? の見所であったかもしれない。悪くないです。そのエロさは。

 結局、日本では完全にイロモノ作品として小規模公開にとどまったが、たぶん、まったく同じ脚本でも、主演女優と監督が別であれば、普通に面白いセクシー・サスペンス映画として普通に公開できたと思う。実に残念である。もうひとつついでに残念なことと言えば、WOWOW放送で観たので、R+15レベルに抑えられており、まるで深夜放送のオタク用萌えアニメのような、「謎の光」が多すぎて、非常に興ざめであったことを記録にとどめておこう。まったくもって、勘弁していただきたいものであった。

 というわけで、結論。
 『NURSE 3D』、日本公開タイトル『マッド・ナース』は、実に観る時間がもったいないクソ映画であった。脚本が普通にしっかりしているだけに、主演女優のイマイチさ、演出のチープさが極めて残念であった。一流女優&一流監督なら、間違いなく普通に面白かったと思います。以上。

↓なるほど、Blu-rayでは「謎の光」解禁版があるんですな。ほんと、そんな点もオタクアニメみたいだ。しかしどうせなら、3D版の発売もあってしかるべきだろうに……。
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 時は1989年。当時、わたしは大学ででドイツ語を勉強しており、ドイツ人の教授や教員も多い中、ひとつのニュースが我々を心底驚かせた。もちろん、「ベルリンの壁」崩壊のニュースである。それ以前に、学部内ではドイツ人教員たちを交えて、何度も「本当にベルリンの壁崩壊は起こりうるのか?」ということを議論していたのだが、まだインターネッツなるものがまったくなかった時代、情報源は(当時の西)ドイツの新聞だけであり、わざわざドイツの新聞(しかも確か2・3日遅れ)を都内の一流ホテルに買いに行ったなんてこともあった。そして買ってきた新聞をコピーして、皆で読んだものだ。今でもはっきり覚えているが、東欧諸国が次々に民主化されていく中、直前までわたしの知る5人ぐらいの(西)ドイツ人たちは、「東西ドイツ統合はありえない」と言っていたのだが、ごくあっさりその時は訪れ、ベルリンの壁は民衆の手で、ぶっ壊されたわけである。
 昨日わたしが観た映画は、1961年に、たった一日で建設されたベルリンの壁がきわめて重要な意味を持つ映画『BRIDGE OF SPIES』である。今回はネタバレアリで書きます。

 まず、上記が正式予告編である。基本的に実話ベースの物語だが、まあそりゃあ脚色もあるんだろう。ただ、この予告は、時系列もかなり入れ替えられているし、極めて重要な要素が、一切触れられていない。それは、この物語が、1人のスパイと1人のパイロットの交換の話ではない点だ。分かりにくいかな、要するに、1対1じゃないのです。ここが、非常にポイントになる。
 アメリカ側がとり返したい人間は、偵察機のパイロット1人だけじゃなくて、もう1人、ベルリンに留学していて、ベルリンの壁が出来た日に、バカみたいに壁建設中の東側の警官に近づいて、逮捕されたアメリカ人ゆとり学生もいるのです。もちろん、悪いのはそのゆとり学生ではなくて、東ドイツ政府ではあるけれど、のこのこ壁に近づいてまんまと逮捕されるのは、アメリカ政府としては実に迷惑な話で、実際にアメリカ政府はそのゆとり学生を切り捨てようとするのだが、主人公はあくまで彼も助けようとすると。そこが、今回の映画では、実は一番の交渉のポイントになっている。
 アメリカ側が逮捕したスパイ1人を返すので、そっちが拘留しているアメリカ人2人を返せ。そういう、圧倒的不利な条件下での交渉に当たるわけだ。しかも、ソヴィエトと東ドイツという2国を相手に交渉しないといけない。さらに言うと、当時のアメリカ政府は、いわゆる東ドイツ、正式名称Deutsh Demokratsche Republikのことを、国家として承認していない。ひじょーーーに難しい案件だ。状況をまとめるとこうなる。
-----------------------------
 ■ソヴィエトの思惑
 ・アメリカが逮捕したスパイと、偵察機パイロットの1対1の交換ならすぐに応じてもいい。
 ・アメリカに逮捕されたスパイがペラペラしゃべられてはマズイので、取り返したい。
 ・その交換までに、アメリカ人パイロットを拷問にかけて、知りたいことをしゃべらせる気満々。
 ■東ドイツの思惑
 ・ゆとり学生を返す代わりに、ソヴィエトのスパイをよこせ
 ・それはアメリカに対して東ドイツを「国家」として認めさせたいから。
 ・また、親分であるソヴィエトに対して貸しを作っておきたい。
 ■アメリカの思惑
 ・偵察機は機密情報満載であり、パイロットも「知りすぎている男」である
 ・なので、一刻も早く、ペラペラしゃべりだす前に取り返したい。死んでてくれたほうが良かった。
 ・ベルリンで捕まったゆとり学生は単なる小僧なのでどうでもいい。
 ・なので、さっさとソヴィエトと交渉して来い。
-----------------------------
 こうしてみると、この構造の中で最も非・人道的なのは、たぶんアメリカだろう。
 まず、そもそもの、ソヴィエト人スパイについて、アメリカの国内世論は死刑を要求する。そんな奴は有罪に決まってる、死刑も当然じゃ! というのが、アメリカの世論。なので、「あんなスパイを弁護するなんて、あの弁護士も悪党だ!!」というわけで、さんざん主人公およびその家族は嫌がらせや脅迫に遭う。まったくもってひどい話だが、その背景には、冷戦機運の高まりによる、アメリカ国民たちの不安がある。核戦争が起こるかも、と本気で怯えている時代である。自分で核を使っといて、何なんだコイツら、と我々日本人なら思うかもしれない。わたしはカチンと来た。
 そんな国内情勢で、自宅を銃撃されて脅されても、主人公は、スパイ逮捕の際の法的問題点があるので(捜査令状がなかった)、最高裁まで行けば、無実まで勝ち取れるかも、と思いながら、とにかく死刑はダメだと主張する。それは、スパイを生かしておくことは、アメリカにとっての保険であるという理論で(※主人公は保険専門の弁護士である)、アメリカだってスパイを運用しているのだから、万一、アメリカ人のスパイがソヴィエト内で逮捕されたときの交換の材料になりうるだろ、という主張をすることで、何とか死刑を免れることに成功する。そして、その万一、が起こってしまったというわけだ。
 この展開は、時間経過が演出・脚本上まったく良くわからないので、なんだか次々に同時に起こったような錯覚を受けるが、年代を照らし合わせてみると、冒頭のスパイの逮捕から、アメリカ人パイロットが捕虜になり、ベルリンの壁が築かれるまでの間には、おそらく3~4年の時間が経っているはずだ。ここがきちんと描写されないので、裁判もあっという間に結審が出たように思え、なんとなく話がすっきり腑に落ちないような気がした。

 また、自国の人間に対する態度もかなり違う。
 アメリカが逮捕したスパイは、実に真面目と言うか義理堅いおじさんで、一切アメリカが知りたいことはしゃべらない。まったく黙秘で実に毅然としている。アメリカ側がそのスパイを拷問するような描写はなかったが、スパイは一切口を閉ざして秘密は漏らさなかった。主人公は、あなたを国に帰すのはいいんだけど、国に帰ってひどい目に遭わないか? 秘密をしゃべったと疑われて殺されないか? と心配する。そしてスパイは、交換時に自分がどう扱われるか、で分かるから観ていなさい、と告げて、主人公とお別れし、母国へ戻る。どうなったか気になる人は観に行ってください。
 一方、ソヴィエト側は捕虜としたパイロットを拷問するが、こちらも口を割らないで耐える。しかし、肝心の母国、アメリカの政府筋はなかなかひどい。捕まったパイロットに対して、出動前のブリーフィングでは、「もし何かあったら確実に機を爆破しろ、そして死ね。捕虜になることは許さない」として、自殺用の毒まで渡している。なので、なんであの野郎みすみす捕まってんだよ!! ちゃんと言われたとおり死ね!! とさえ思っている。だから、パイロットはやっと交換成立で帰ってきても、誰もが冷たい目で見る。一言も、温かい言葉はなかった。そんな、非常に対照的な態度が、わたしとしては今回の一番の見所だと思った。
 もちろん、ベルリンで捕まった学生に対しては、まったく誰も何も気にかけない。しかも、そういう態度なので、こんな重要なミッションを、民間人の弁護士に任せて、ほぼ自分たちは何もしない。「壁」ができたばかりの、極めて治安的にも危険な東側のベルリンへも、同行しない。ほぼ丸投げである。その点もわたしは非常に驚いた。
 要するに、アメリカ政府としては、正直どうでもいい案件であったのではないかという気がした。パイロットが死のうと、学生がどうなろうと、そして主人公が危険な目に遭おうと、「当局は一切関知しない」のである。もう、まるでイーサン・ハントだよ!! まさしくMISSION:Impossibleですな。
 というわけで、ははあ、アメリカって国は、やっぱりそういう国か。なんてことも味わえる映画である。アメリカという国は、基本的に移民からなる国であり、「アメリカ人」と呼べる人はいないんじゃないかという気すらするが、この映画の主人公はこう言った。「アメリカ人とは、アメリカ憲法を尊重・遵守する人のことを指すのだ」と。確かにそれは非常に分かりやすい考え方だと理解できるものだ。だからこそ、主人公は、自分は「アメリカ憲法の精神を遵守するアメリカ人である」という誇りに基づいて行動するわけで、スパイであろうと人権的にかつ合法的に裁くべきであるという信念があるわけだし、また、外国で不当に拘留されたアメリカ人を放っておけないのだ。実に法に誠実な男であり、Tom Hanksの芝居振りも、まあいつも通りだけれど、見ごたえ十分であった。なお、主人公の弁護士は実在の人物、James Donovan氏だが、彼はこの事件のすぐ後に起きた「ピッグス湾事件」の際にも、CIAに頼まれてカストロ首相との交渉役を果たし、見事1000人以上のアメリカ人救出に成功したそうです。知らなかったよ……つか、そっちのほうも映画になりそうな気がしますな。本当に凄い人ですね。これは尊敬に値するわ。
 で。役者陣としては、Tom Hanksよりも、逮捕されたスパイのルドルフ・アベルを演じたMark Rylanceの演技が一番光っていたように思う。非常に不思議な存在感があって、実にカッコ良かったとさえ思う。あまりにこのスパイのおじさんがかっこよくて、正直他の役者はもうどうでもいいです。
 監督は、いわずと知れたSteven Spielberg。演出振りは、とりわけどこが素晴らしいとか、わたしは特に感じるところはなかったが、まあとにかくこの映画はかなり金がかかっているな、と思われるシーンが多い。なんというか、街の質感とか偵察機のようなものだったりが、本物そのもので、ベルリンやニューヨークといった街並みに、当時の空気感が濃厚に出ていて、まったく安っぽさはない。そういう点では、まさしくのこ映画はスピルバーグ作品であった。
 脚本は、コーエン兄弟でお馴染みのJoel Coen&Ethan Coenである。ただ、わたしはこの兄弟の作品はあまり好きじゃないんだよね……『No Country for Old Man』『True Grit』の二つだけ、わたしは好き。今回の作品を、まあ3番目に入れてもいいかな。
 本当は、冷戦期と言うことで、去年公開された映画『Child 44』との関連で何か書こうと思ったけれど、もうこれ以上は長いのでやめときます。あの映画は、冷戦期のソヴィエト国内を描いた映画なので、対比としては非常に面白いと思う。
 あと最後にひとつ、自分用備忘録:かなり多くのドイツ語シーンがあるが、ドイツ語は一切字幕なし。だけど、主人公が東ベルリンで絡まれるチンピラたちの台詞など、ほぼ理解できた。オレのドイツ語力はまだそれなりに生きてるらしい。安心したわ。

 というわけで、結論。
 『BRIDGE OF SPIES』という映画は、まあ結論としては十分面白かった。けど、どうももやもやするものがあって、それは一体何なんだろうと、この文章を書きながらずっと思っていたのですが、どうやら、わたしはこの映画の脚本ではなくて、宣伝プロモーションに文句があるのだということに気が付いた。要するにわたしは、予告とは全然違う映画だったことに、イラついているようです。もっと売り出すべきポイントがあるだろうに……。
 なので、そんなことは関係なく、映画単体で評価すると、この映画はズバリおススメです!! 面白かったよ、とても。以上。

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 おととい、『居眠り磐音』シリーズという、人気時代小説について、つらつらと書いたが、昨日の朝の通勤電車の中で、とうとう完結となる、第51巻『旅立ノ朝』を読み終わってしまった。本当に終わってしまった『磐音』。なんとも非常に淋しく、そして、同時にまた非常にすがすがしい、気持ちのいいエンディングであった。

 主人公・坂崎磐音は、元々は九州豊後の「関前藩」という架空の藩に属する藩士。父は中老。江戸詰めの磐音は、多額の借財を抱える藩政改革に燃え、朋友の二人とともに関前に帰国する。が、 国家老の陰謀により、朋友を上意討ちする役目を背負わされる。婚約者の兄である朋友を斬ることで役目を果たすも、すべてを失った磐音は故郷を去り、江戸市井の長屋に住まう浪人となった。ちなみに磐音は剣の達人でめっぽう強いのですが、「まるで年老いた猫が日向ぼっこしながらうとうと眠っている」ような剣風・スタイルなので、タイトルは「居眠り磐音」なのだと思います。
 とまあ、こんな主人公が、うなぎ料理屋でうなぎ割きのバイトを得て、つましく暮らしながらも、両替商の用心棒に雇われたことを契機に、波乱にとんだ生き方が始まるのだが、その51巻にわたる物語は本当に面白かった。
 たぶん、この長ーい物語は、いくつかのパートに分けられると思う。序盤の磐音は、町奉行所の手伝いをしたり、困っている市井の人々を助けたり、また 古巣の関前藩のために、藩内部の陰謀を阻止したり、関前藩の特産品を江戸で売るビジネスモデルを作ってあげたり、まあとにかく、いろいろな人の、いろいろな事件や困難を助けてあげるという話が続く。いろいろな人と出会って、非常に人脈も広がり、そしてみんなが磐音が大好きになる展開ですね。その人々も、市井の人もいれば、非常に高い身分の人もいて、さまざまな人が、坂崎磐音という男に借りができる。こう書くと、なんだそりゃと思うかもしれないけれど、1巻1巻非常に面白くて、途中でやめる気には全くならない魅力があると思う。やっぱり、この作品は、磐音が出会う人々も非常に生き生きとしていて、キャラクター小説として極めて上等であろう。
 転機となるのは、14巻の、将軍家日光社参に同行する話だろうと思う。 ここで、磐音は、将軍家と接点ができる。ちなみに、時代背景としては、10代将軍・家治の時代。第1巻が1772年のことで、この14巻の出来事は正確な年号は原本を探して確認してみないとわからないな。いつぐらいだろう? たぶん、1777~1778年ぐらいじゃないかな。いずれにせよ、将軍は家治で、この14巻で、将軍家治の長男、家基(15歳ぐらい?)と磐音は親交を結ぶことになる。そして、このことが磐音の運命を決定的に変えてしまうわけです。というのも、家基が1779年に16歳で亡くなってしまうから。これは歴史上の事実。で、この『居眠り磐音』という物語においては、非常に優秀で賢かった家基が、田沼意次に批判的であったために、意次の手の者によって暗殺された、という展開になっていて、そこから磐音と田沼意次の長ーい戦いの話になっていく。それが32巻。ああ、サーセン。これ、ネタバレですね。
 14巻から32巻までの間も、磐音にとっては大きな出来事がいくつもあって、まず、遊女になってしまった元・婚約者が、吉原のTOP大夫になって、山形のお大尽に見受けされた話があって、その後、ずっと磐音のことが大好きだったおこんさんを嫁にもらったと。で、さらには剣の師匠の養子になって、道場の後継になると。そのような磐音にとっては非常に大きな人生の転機があるので、おこんさんとともに故郷の両親に会いに行ったと。これが20巻ぐらいまでのお話。で、帰って来て、主人公坂崎磐音が、佐々木磐音と名前が変わるのが23巻かな。
 で、33巻からは、磐音&おこんさん夫婦は長い流浪の旅に出る。田沼意次が磐音の命を狙っているから。で、旅の途中で長男も生まれて、もちろん刺客もバンバン襲ってくると。ちなみに、歴史上、家基の死から、田沼意次が失脚するまでは、確か7年の歳月が経ってるはず。なので、わたしは7年ずっと旅を続けるのかな? と思っていたのですが、磐音の旅は3年(?)で終わって江戸に戻ってくると。ま、そこからまたいろいろな戦いがありつつ、すべての決着はきちんとついて、エンディングとしては、もうこれ以上ないとわたしは思う。
 もちろん、実際のところ、続けようと思えばまだまだ物語は続けられるはずだ。
 最終巻では、旅の途中で生まれた長男、坂崎空也も16歳まで成長し、凛々しく、そして強く育った姿を我々読者は味わうことができる。磐音の母や元・婚約者には、「空也はおこんさん似で、磐音の若い頃よりずっとイケメン」とか言われちゃうし。そんな空也を物語の中心にして、話を続ける手は十分にあるはずだと思う。だけど、きっとそれは、今、佐伯先生が書くべき物語ではないのだとも思う。佐伯先生の体の具合もあるし、到底数巻程度で終わる話じゃないだろうから、今からそれを書いてくださいと願うのは、酷な話であろう。もちろん、佐伯先生が書きたくなったら、止めないけれど、でもやっぱり、ここがまさしく幕の引き時であり、余韻を残しながら、物語は実に美しく完結できたのではないかと思う。佐伯先生、お疲れ様でした。わたしは『居眠り磐音』を最後まで読めて、とても幸せでした。

 最後に、自分用備忘録として、結構気に入っていたサブキャラたちがどうなったかだけ、まとめておこう。ああ、これもネタバレかも。サーセン。
 ■奈緒:磐音の元・婚約者であり、元・吉原のTOP花魁、白鶴太夫。現・前田屋奈緒。一番可哀想な女子かもしれない。姉を兄の親友(=姉の夫)に斬られ、その親友を斬った兄を、婚約者(=磐音)に斬られ、お家断絶となり、遊女に身を落とし、山形で紅花栽培をする大金持ちに身請けされて、やっと幸せになれると思ったらその亭主にも死なれ、頑張って女手一つで子供を育てながら紅花栽培を続けるも、まーた悪い奴に栽培・販売権を奪われそうになり、江戸で紅屋(=要するに当時の最高級コスメショップ)開店に至って、またようやく落ち着いたと思ったら、50巻、51巻で語られるように、松平定信のいわゆる寛政の改革により、江戸ではコストカット・贅沢禁止が世を覆ったため、故郷の関前で紅花栽培を行うことに。とまあこの女子は本当に波乱に満ちた人生をたどる。でも、最終的に故郷に帰ることができて、本当に良かった。故郷での紅花栽培も51巻では苦労の末にようやく花開いて、感慨もひとしおでしょう。第1巻の悲劇も、約20年の時を経てようやく、本当の意味で決着できたね。あとはもう、幸せにおなりなさい。
 ■幸吉くん:磐音が浪人生活を始めるにあたって、うなぎ割きのバイトを紹介してくれた、「本所深川生活の師匠」。初登場時は10歳にも行ってなかったんじゃなかったけか? そんな幸吉くんも、50巻で、めでたく幼馴染のおそめちゃんと結婚できました。良かったな、幸吉。お前のこと、結構気に入ってたぜ。最後にちゃんと出番がもらえて嬉しかったよ。この二人の行く末がきちんと語られたのが一番うれしかったかも。
 ■辰平&お杏さん:江戸と福岡という遠距離恋愛を成就させたナイスカップル。結婚後は福岡住まい。でも、50巻での磐音の宿願達成時には、辰平も江戸にいてほしかったなあ。51巻では、故郷の関前に向かった磐音一家と入れ違いに江戸に来ていたので、成長した空也にも会えずだったのがとでも残念。まあ、空也には、51巻の完結後の未来に、確実に会えるだろうからいいかな……。
 ■利次郎&霧子ちゃん:この二人は、50巻では、とある極秘ミッションで関前に行っていたので、やはりこの二人も磐音の宿願達成時には江戸不在だった。まあ、51巻では大活躍だからいいかな……。霧子に怒られてばかりだった利次郎よ、お前も本当に強くなったな。二人で幸せにな。
 ■向田源兵衛:50巻でいきなり再登場した向田源兵衛殿。わたし、あなたのことすっかり忘れてました。調べたら、26巻に出てきたあの人だったのね。向田殿も、帰る家が出来て良かったね。小梅村は、あんたに任せたぜ。若僧どもをしっかり支えてやってくれよ。
 ■福坂家:磐音の仕えた関前藩主一族。しかし……殿、福坂実高様。あのね……ずっと言いたかったんだけど、はっきり言ってアンタが無能なせいで、どれだけ磐音が苦労したか、わかってんのか!! 51巻でようやく、隠居し、俊次に家督を譲ったけど、遅せえよ!! かなりの事件が、全部お前の無能のせいだぞ。しかし51巻での堂々とした俊次はカッコ良かったよ。さすが磐音に鍛えられた男。お前に関前藩は任せたぜ。
 ■武左衛門一家:まあはっきり言って、武左衛門の空気を読まないアホさ加減は最後まで直らなかったけど、50巻のラストで亡くなる、どてらの金兵衛さんの死を一番悲しんだのはお前さんらしいね。娘たちがしっかり者に育ったのは、お前さんを反面教師として生きてきたからなんだから、そういう意味では、大いに貢献したな。早苗ちゃんも母になり、秋世ちゃんも紅屋の江戸本店店長で頑張ってるし、息子二人もしっかり職人として生きる道を見つけたし、お前さん、ホント幸せだよ。良かったな。
 ■品川柳次郎一家:武左衛門とともに、磐音の用心棒時代の仲間。君も貧乏旗本とはいえ、お有ちゃんという嫁ももらって幸せそうだね。磐音と出会えて、本当に良かったな。最後まで、お前は一番の常識人だったな。幸せになるんだぞ。
 ■笹塚孫一&木下一郎太:南町奉行所コンビ。笹塚様、50巻で久しぶりに会えて良かったよ。一郎太も元気で良かった。江戸の町は二人に任せたぜ。
 ■チーム今津屋:今津屋さんも磐音と出会えて良かったね。50巻でも、相変わらずの大盤振る舞いで、ほんとに今津屋さんには世話になったね。由蔵さんもそろそろ引退だろうけど、後身をしっかり育ててください。
 ■関前藩士たち:中井半蔵様、やっとバカ殿が隠居して、実は一番安心してるのはアナタでしょうな。51巻では磐音の父、正睦様もやっと隠居できて、後任の国家老を押し付けられてしまったけど、ワンポイントリリーフなのは承知してるわけで、磐音の代わりに坂崎家に養子になった、磐音の義弟、遼次郎のことはアンタに任せたよ。遼次郎もなかなか見どころのある奴だからな。
 
 ああ、いっぱいキャラクターがいすぎて、もうキリがない!!!
 磐音は、50巻、51巻では、とりわけ空也に、「運命」を語る場面がある。波乱万丈の人生だけど、それも運命のままに生きてきただけだ、と。ただし、磐音が言いたいのは、何もかも運命で決まっているから、なにも抗えないとか、努力したってしょうがない、みたいな意味では断じてない。むしろ全く逆で、運命は自分の行いで決まる、不断の努力や、人へのふるまい、そういった、すべて自分の選択した道が、運命を定めるものであり、運命は自分自身が切り拓き、変えることができるものなのだ、ということを磐音は息子である空也に伝えたかったのだと思う。いわばこれも、「人間賛歌」なんでしょうな。JOJO的に言うと。わたしは深く共感します。
 ま、磐音も心配しなくていいよ。空也は、分かってる男だもの。だって、あんたの息子だぜ。51巻、完結のラストで旅立つ空也。帰って来た時、どんな奴になっているか。それは佐伯先生に書いてもらうのではなく、最後まで読んできた我々読者が、それぞれに想像するのが、一番正しいのだと思います。
 (※2016/01/11追記:なんと!!! 空也主役の新シリーズが始まりました!!! マジかとさっそく読みましたが、もうすげえ感無量というか、最高です。記事は↑のリンクへ) 

 というわけで、結論。 
 ついに完結してしまった『居眠り磐音』シリーズ。わたしは大変楽しめました。佐伯先生、ありがとうございました!!! なんか、また最初から読みたくなってきたよ。ちょっと、かなり本棚の奥の方に置いてしまったような気がするので、週末は本棚発掘作業でもするか。

↓ 1巻は2002年か……あの年は、ワールドカップもあって、楽しい年だったなあ……。もう14年前か……老いたわけだよ、オレも……。

 毎週木曜日は、今週の『鮫島』ニュースのお時間です。
 年末~お正月休み明けの2週間ぶりです。

 2016年一発目のチャンピオンの発売ということで、まずはいつも通り今週の週刊少年チャンピオン概況です。 が、今週もとりわけ驚愕の展開はなく、若干あっさり目というか、ごく普通に通常運転でありました。
 『弱虫ペダル』は、いよいよ残り100mまで進展しました。はっきり言って、ここで泉田アブ一郎君が負けたら、もうこの漫画は読まなくなるかもしれません。こんな変態小鞠ごときに、王者箱根学園の主将を任された男が負けるなんて展開は、到底容認できません。さっさと圧勝していただきたいものですね。 『牙刃道』はガイア捕縛の詳細と、満を持して(?)、ジャック・ハンマーが武蔵戦に名乗りを上げるところまで、ですが、一番最後の徳川御大のセリフが気になるヒキとなって終了。ちょっと飽きてきました。『リク』は、大場という名の、顔の半分がTATOO&ぬいぐるみを抱いた気持ち悪い謎のおっさんが本性を現しつつあるところまで。この大場というキャラがどんな顔芸を見せてくれるかが今後注目されますね。恐ろしいことになりそうです。で、今週もやっぱり『ニコべん!』がいい感じです。メインヒロイン(?) の梅宮さんが「友達」という言葉にカーッと顔を赤くするなんて、いいじゃないですか。次号センターカラーだそうで、グイグイ人気が出ることを希望します。あとですね、いつも何もコメントしてませんでしたが、『兄妹―少女探偵と幽霊警察官の奇怪事件簿』という漫画がありまして、まあ、前作の『名探偵マーニー』とあまり変わらない、学園推理モノなんですが、殺された警察官だった兄がいて、幽霊となって現れた兄自身とともに、その事件の真相を追う女子高生の物語を軸に、1話~3話ぐらい?完結のエピソードが描かれている漫画で、まあ、前作よりもちょっと面白いとは思ってます。で、今週ついに、主人公を含めて5人の仲間が集まった感じで、主人公が赤川蛍、その仲間として緑川楓、黄多川礼、桃園霧子、とこれまで出てきた主要キャラの名前には「色」が含まれていたのですが、今週は最後の一人、青葉真琴というキャラが登場して、一番のメインストーリーが進んだような気がします。これは……ちょっと来週から気になりますね。気になるといえば、わたしが推している『スメラギドレッサーズ』の掲載順が一番後ろになってしまい……おまけにまた今週もやけに読みづらく……これはフラグ点灯なのかも……もうチョイ頑張ってくれ……!!

  さて。では、今週の『鮫島』ニュースです。
  年末は、【蒼希狼】の回想が終了して、いよいよ六日目当日の朝の模様が描かれて終わりました。そして今週、ようやく土俵の上で、鯉太郎と大山道が立ち会います。
 「見せてやるよ 蒼・・・・・・ 変わっちまったオマエに・・・ 目を背けることのできない取組を・・・」そんな決意のもと、鯉太郎とぶつかる大山道兄貴。鯉太郎から見ると、大山道兄貴がそんな気持ちでいることはわかりません。なぜなら大山道兄貴はベテランであり、ポーカーフェイスを保っているから。鯉太郎は心の中で思います。「何でくる・・・読めねえな・・・さすがはベテランか・・・冷めた顔(ツラ)しやがって・・・そう簡単には 熱は上がらねえか・・・」しかし、立ち合いの瞬間、一気にプレッシャーの湧き上がる大山道兄貴に、鯉太郎も驚きを隠せない。「何だコイツ・・・冷めるどころか・・・沸騰してんじゃねーかよ・・・」大山道兄貴の熱に、鯉太郎もさらに気合が入ります。解説の虎城理事長も思わずニヤリ。「ほう・・・面白い・・・鮫島の熱を大山道が上手くかわすと見ていたが・・・逆に薪をくべるか・・・」 そしてとうとうハッキヨイ!! 立ち合いです!! いつも通り全身全霊でぶつかる鯉太郎。しかしその先には……!!! というところで、今週は終了。はーー……読んでるこちらも肩に力入るわ……来週以降が楽しみでしょうがないですね。果たしてどのような結末となるのか。再び【蒼希狼】は、失ってしまった情熱を 取り戻せるのか、期待してますよ!! 佐藤先生!!

 最後に、毎週のテンプレを貼って終わります。
 <場所:9月場所>
 【鮫島】東前頭十四枚目(5月場所で東前頭十枚目)
 【白水】西小結
 【松明】東前頭六枚目。常松改め。
 【大吉】序2段【豆助】序ノ口【目丸手】序二段【川口】不明
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 1日目:【飛天翔】西前頭十二枚目。石川改め。
 2日目:【宝玉光】西前頭十一枚目
 3日目:【舞ノ島】西前頭十枚目
 4日目:【巨桜丸】西前頭九枚目。新入幕力士
 5日目:【岩ノ藤】東前頭七枚目 
 6日目:【大山道】西前頭七枚目
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 【天雷】東関脇
 【蒼希狼】??? 最高位は小結
 ※右額の傷は、初入幕初日の【桐の里】戦で負ったもの
 ※現在の現役横綱は、モンゴル出身力士で「大横綱」と称されている模様 
  ただし、【蒼希狼】の過去話の時点なので、この9月場所も現役か不明。

 というわけで、結論。
 今週の『鮫島』は、いよいよ取組開始です。VS大山道戦はあと3~4週ぐらいでしょうか。単行本の切りのいいところまでだとすると、あと7週ぐらい必要なんですが、そこまで引っ張るのかな……? うーん、そこまではいかないよね? 分からんけど、応援してます!! そして記事には全く関係ありませんが、わたしの応援している松鳳山関が、今週末からの初場所は、前頭筆頭ですよ!!! いいとこ見せて、また三役に復帰するんだ松鳳山!! お前のことも応援してるぜ!!!

↓ 明日はチャンピオンコミックス発売日です。今月は以下4冊を買って応援します!!




 もうずいぶん前、わたしの記録によると2004年のことのようだ。
 当時、急速に時代小説が流行し始めており(もっとも、とっくに流行っていたのだと思うが、わたしが、これは売れてるな、と意識したのがこの頃)、それじゃ、市場調査として、最近何かと評判の佐伯泰英先生の作品を読んで、どんなものか知っておくべきだな、と思ったことがそもそものきっかけであった。
 その当時、なぜ佐伯先生が注目され始めていたかというと、とにかく筆が速く、「月刊佐伯」と呼ばれるほど毎月新刊が発売になることで有名になっていて、へえ、そんなにすごい作家なんだ、と思って、まずはその代表作とされる作品を読んでみようと思った次第である。
 その時、わたしが買ったのは2作あって、一つは『密命』シリーズと呼ばれるもの。
 




 このシリーズは既に2011年に完結しだが、確かわたしが1巻目を買って、こりゃあ面白い、次の巻を読もう、と思った時にはすでに10巻ぐらいまで出ていて、こいつはヤバイ作品にはまっちまったな、と思ったものである。その後最終巻26巻まで、非常に楽しませていただいたわけで、最後の結末は、はっきり言ってちょっとだけ不満だけれど、十分に面白い作品だったと思う。
  そしてもう一つ、わたしが買って読んでみたのが、『居眠り磐音 江戸双紙』というシリーズである。

 こちらも、わたしが1巻目を買った時は、たしかまだ10巻までは出てなかったかな。この『磐音』も、とにかく1巻目から大変面白く、これまた、長ーい付き合いとなったわけで、いよいよ2016年1月4日に最終巻となる第50巻・51巻の2冊が同時刊行となり、とうとうその物語は完結を迎えたのである。 

 というわけで、おとといの発売日にこの2冊を買い、さっそく読み始めたところ、くそう、面白い、けど終わっちゃう、もったいない、落ち着け、ゆっくり味わって読むんだ!! と思いながら読んでいたのに、昨日の帰りの電車内でまずは第50巻の『竹屋ノ渡』を読み終わってしまった。
 この第50巻での舞台は、1793年なので、最初の1巻が1772年だから、作中時間は21年か。ずいぶん時間も経過して、当たり前だけどその分、キャラクターの年齢もずいぶん上がったものだ。1巻の主人公、磐音は27歳。そして完結巻で48歳ってことか。なるほど、わたしの年齢を少し追い越されてしまったのか。そういう意味でも、感慨深いんだな、とさっき気が付いた。
 で。
 どうしようかな、この第50巻の話にすべきか、シリーズ全体の話にするか。
 完結にあたっての感想は、本当の完結巻51巻を読んでからにすることにして、今日は、なんでまた、この佐伯先生の作品がここまで人気が出たか、についての考察にしておこう。
 (2016/01/08追記:読み終わりました。こちらへどうぞ)
 実は、一番最初に読んだとき、ああ、これは売れますよ、そりゃそうだ、と思ったことがある。それは完結を迎えた今でも考えは変わっていないので、総括的な話として、自分用備忘録であるここにまとめてみよう。
 わたしが2004年に初めて読んで、一番最初に思ったことは、以下の二つである。
 ■愛すべき主人公
 わたしが読んだ、『密命』も『磐音』も、ともに共通するのは、
 ・主人公は、強い。剣の達人である。
 ・一方で、優しく、藩から抜けて江戸市井に暮らす浪人さん。
 ・しかし浪人であっても、元の主家を想い、藩のために行動する。
 ※特に『密命』は、そのタイトル通り藩からの密命で、脱藩した経緯アリ。
 ・主人公の人柄は、周りの人々の信頼を得、誰もが主人公を頼りにし、また助けてもくれる。
 といった特徴があり、読んでいて非常に心地いいのである。
 こういった、物語の筋書きよりもキャラクターに魅せられる作品は、世間的にはキャラクター小説と呼ばれているが、映画でも漫画でも小説でも、何でもいいけれど人はたいてい、物語に共感するというよりそのキャラクターにより深く共感するものだとわたしは思っている。たとえば……そうだなあ、いい例えかどうかわからないけど……『DIE HARD』という映画があるでしょ? で、おそらく誰しも見たことのある映画だと思うんだけど、いきなり、シリーズ3作目のストーリーって覚えてる? と聞かれて、きっちり答えられる人はあまりいないと思う。だけど、「たしか、あれでしょ、NYの街が舞台で、またマクレーン刑事が超絶ピンチで、黒人のおっさんとNY中を駆け回る話だよね?」みたいに、どんな出来事だったか覚えてない、けど、そのキャラクターは明確に覚えてるわけだ。もちろん、そのキャラクターが遭遇する事件や出来事が面白くないと、作品として「今回はイマイチだったな」という判定になってしまうけれど、主人公というキャラクターが愛すべき存在であれば、今回はダメでも、「まあ、次に期待するか」という事は思ってもらえるかもしれない。このような、キャラクター造詣という点で、1巻目は非常に重要なわけだが、わたしが初めて読んだ佐伯先生の作品、『密命』と『磐音』は、読者の気持ちをグッと掴むにふさわしい人物描写がなされており、何度も書くが、「読んでいて心地いい」でのある。故に、これは売れるとわたしは思った次第である。
 ■飢えていた読者
 恐らくは、少なくともわたしのような40代以上の日本人にとっては、TVの時代劇ドラマというものは確実に慣れ親しんできたもので、誰しもがきっと、何らかの番組を観ていた経験はあるはずだ。改めて考えると、そういったいわゆるTV時代劇は、たいていが江戸時代を舞台にし、場所も江戸市井であることが多い。そして主人公は基本的に正義の男で、腕も立ち、そして優しく周りから愛されるキャラクターである。そういったドラマをずっと普通に観て楽しんできた我々にとって、小説の世界では、ドラマの原作となった池波正太郎先生や司馬遼太郎先生の作品群だったり、あるいは、舞台は江戸でないことが多いけれど藤沢周平先生の作品だったりが、ド定番として存在してきたわけだ。
 しかし、である。そういったド定番は、もちろんのこと多くのファンが存在し、名作ぞろいであるけれど、一つだけ、極めて残念な共通点がある。それはズバリ、先生方がすでに亡くなっており、「もう新刊が出ない」という点だ。なので、TV時代劇が好きな我々おっさんは、小説を読みたくても、既にド定番作品はとっくに読んでいて、その流れを汲む「新刊の発売」に飢えていたのだとわたしは考えている。折しも、TVからはどんどん時代劇が減っていき、その「飢餓感」に近いものが醸成され、高まっていたのではなかろうか。たぶん、そんな背景があって、佐伯先生の作品は売れていく下地ができていたのではないかと思う。しかも、「月刊佐伯」である。次々に刊行される新刊は、そういった「飢えていた読者」にとってはこの上ないごちそうに見えたのではなかろうか。さらに加えていうと、当時はまだ少なかった、「文庫書き下ろし」というスタイルである。普通、文芸小説は大判の単行本が出て、そのあとで文庫化されるのが通常の売り方だが、「文庫書き下ろし」として買いやすくしたことも、ヒットの要因だと思う。今はもうそこらじゅうの出版社が文庫書き下ろしを当たり前に出しているが、その先鞭をつけたのは、間違いなく時代小説とライトノベルであろう。
 時代劇が好きだったり、藤沢周平先生の作品が好きな皆さんは、おそらくは「口の肥えたうるさ型の」人々が多かろうと思う。だからもちろん、面白くなければ、売れることはない。佐伯先生の作品が、そのような「優しくない読者」をも、きっちりと掴むことができたのは、はやり前述の「心地よさ」であったのではないかと思うが、わたしの知り合いのとあるおじさんなどは、佐伯先生の作品はちょっと軽いというかぬるい、藤沢先生の作品と一緒にするな、と言っていたので、そりゃあ読んだ全員がはまったわけではなかろう。しかし、かえってその軽さのようなものは、今までの時代小説にはなかった「女性読者」という新たな読者層開拓にも成功するのではないかという気もした。故に、こりゃあ売れるな、と思ったわけで、実際、どうやら佐伯先生の作品は、特に『磐音』あたりは女性読者も多いそうです。出版界としては大変喜ばしい才能の登場と言って良かろうと思う。

 ああ、いかん。まーた長くなってしまった。
 というわけで、結論。
 今回の『磐音』完結は、わたしとしては非常に感慨深い思いでページをめくっているわけである。佐伯先生は、50巻で完結させる、という決意があったそうだが、51巻での完結となったわけで、50巻を読み終わった今、たしかに、もう一つきっちりさせなきゃいけないことがあるな、とわたしも納得のストーリー展開である。読み終わった50巻では、主人公磐音の宿願が果たされた。また、ただ一人残っていた、決着を付けなければならない剣者との立ち合いも済んだ。だが、最後にまだ、磐音にはやらなくてはならないことが残っている。それをきっちり51巻で描いてくれるのだろう。非常に楽しみに、そして惜しみつつ、大切に1ページ1ページ堪能したい。ああ、もうちょっとで終わってしまう。これで終わりとは、淋しいのう……。以上。

↓ 『磐音』はNHKでドラマ化されていました。わたしは全部は見ていないけど、結構イメージと違ってたり、逆にイメージにピッタリだったり、キャスト的にどうなんしょう。アリなんですかね……?

 というわけで、毎週月曜日恒例の週末興行データを1日遅れでまとめてみた。
 既に順位は昨日書いたので、まずはそれぞれの映画の累計興収がどのくらいになったかを簡単にまとめ、今日は『STAR WARS』が一体どのくらいまで累計値を伸ばすか、過去データと照合しながら考えてみようと思う。

 昨日書いた通り、順位はいつもの興行通信社の大本営発表です。
 1位:『スターウォーズ/フォースの覚醒』:17日間累計で64憶! 予想よりかなりいいね。
 2位:『妖怪ウォッチ』:16日間累計で37.8憶。これもかなりいい。
 3位:『orange』:23日間累計で21憶。ほぼ予想通り。大したもんだ。
 4位:『母と暮らせば』:23日間累計で12.7憶。予想よりちょっと良くない。最終18億も厳しいか?
 5位:『007スペクター』:先行含む36日間累計で25.6憶。まずまず順調。前作よりかなりいい。
 6位:『映画ちびまる子ちゃん』:12日間累計で3.6憶。興味なし。
 7位:『杉原千畝』:30日間累計で9.4憶。まだ10億届かずか。最終15億は無理だ。
 8位:『クリード チャンプを継ぐ男』:12日間累計で2.3憶。もっと売れてくれ!!
 9位:『ガールズ&パンツァー』:44日間累計で7.6憶。すげえ。まあ、作品への愛、なんでしょうな。
 10位:『仮面ライダーゴースト 超MOVIE大戦ジェネシス』:23日間累計で6.1憶。ちょっと厳しい。

 とまあ、こんな数字になっている。
 で、取り急ぎ、こんなグラフを作ってみた。
グラフB_累計
 これは、もう見てもらえばわかる通り、ここ数年の大ヒットタイトルの累計興行収入の値を週ごとにグラフ化したものである。
 01W・・・最初の公開週末の数字。土曜公開なら土日の2日分、金曜公開なら3日分。
 02W・・・次の月曜から日曜までを加えた9日間の累計興収。(金曜公開なら10日間)
 03W・・・そのまた次の月曜から日曜までを加えた16日間の累計興収。(金曜公開なら17日間)
 以下同じです。
 この、折れ線の「傾きが急」であれば、グイグイ伸びてる、そして「フラット、なだらか」になると勢いは止まった、という事ができる。ええと、わかるよね?
 このグラフで分かることは、とにかく『アナ雪』がすげえいつまでもグイグイ稼いでいたという事で、普通は大ヒット作品でも10~13週ぐらいで興行ランクから消えるけれど、なんと『アナ雪』は23週目までランク15位までに存在していました。
 で、もうひとつ分かることは、100億を超えるには、「ロングで売れないとダメ」ということである。
 ここで取り上げた作品で100憶を超えたのは、『アナ雪』と『トイストーリー3』だけですが、緑の『トイスト3』に注目。去年大ヒットした『ジュラシック・ワールド』や、初動の数字が『SW』と似ている『ハリポタ』最終作のように、だいたい7週(=約2カ月)でほぼ伸びは止まってしまうと、ギリギリ100憶には到達しない。『トイスト3』のように、あと2~3週、もうひと伸びしないと、100億は厳しいのである。面白いよね。
 で、もうひとつ、グラフを作ってみた。 グラフA_週ごと
 こちらは、週ごとの興行収入の動き。毎週7日間でいくら稼いだかというもの。
 ここで注目というか説明が必要なのは、グラフに示した(1)(2)(3)のポイントであろうと思うので、説明します。
 まず、(1)。これは、最初のグラフと同じように、公開した週末だけの数字なので、実質2日間分です(金曜公開なら3日分)。だから数字としては小さい。
 で、02Wは、翌月曜から日曜までの7日間。03Wは次の7日間、というようになってます。
 黄色い折れ線の『ジュラシック・ワールド』や、グレーの折れ線の『ハリポタ』のように、02Wをピークに、03W以降はガクーーンと下がるのが普通で、02Wと03Wで半減なんてことも、全然普通に起こりうる。なので、(2)(3)のように、【前の週7日間の興収】<【次の週7日間の興収】と、増えることは通常ない、と断言してもいいぐらい。
 じゃ、なんで(2)(3)は前の週より稼いだのかというと、(2)と(3)は、映画興行におけるちょっとした特殊なポイントなんですが、分かる人いますか?
 ヒント。(2)の『トイスト3』は2010年7月10日公開。(3)の『アナ雪』は2014年3月14日公開。
 これで分かる人は、理解力が早い人です。
 映画の興行市場では、年に3回だけ、前の週よりも興収が伸びることが起こるタイミングがありまして、(2)はズバリ「お盆休み」の週です。そして、(3)が「ゴールデンウィーク」の週ですね。ここは、やはり前週よりも伸びることが良くある。ちなみに、グレーの折れ線の『ハリポタ』の05Wも、ピクッと数字の落ちが和らいでいますが、ここもお盆週であります。また、『ジュラシックW』の02Wがすごい数字ですが、ここもお盆週なのです。
 そしてもうひとつ、ここに挙げた例では見えないけれど、3つ目のタイミングはお正月です。
 この、「お盆」「GW」「お正月」以外に、前週よりも伸びる場合は絶対ないかというと、もちろん絶対ではない。たとえば、何かの賞を獲って注目されたとかね。近年でわたしが覚えているのは、Ben Affleck監督の『ARGO』とかは、とっくに公開は終わってたのだが、まさかのアカデミー作品賞を受賞して、急にまた興収が伸びたなんてこともある。あと邦画では『おくりびと』なんかもそのパターンでしたな。それから、去年の「シルバーウィーク」とか呼ばれてる9月の連休期間も、前の週よりも伸びた作品がかなりありましたね。黄色い折れ線の『ジュラシック・ワールド』の08Wがちょっとピクッと上がってますよね? ここがまさしく去年のシルバーウィークの週なのです。ま、考えてみれば、休みが多ければ興収が上がるのも当たり前ですが。

 また、このグラフで要注目は、『アナ雪』『トイスト3』の03W、04Wまで、一度もグラフが下向きにならなかった点であろう。要するに、最初の週よりも次の週、そのまた次の週、と増加したのだ。普通は02Wをピークに下がっていくのに、04Wまで落とさない。ここも、100億突破には重要なポイントであろう。
 これはどういうことか。
 おそらくは、真っ先に観に行く熱心なファン以外を取り込めたという事なのだと思う。それはつまり、観客の層を広げることに成功したという事だ。そしてそのためには、わたしの嫌いなカタカナ用語を使うと「ヴァイラル効果」、いわゆる「口コミ」での伝播が重要になって来る。これはインターネッツの発達した現代において、相当重要なことで、おそらくはもう、TVCMをバンバン流すよりも、作品によってはよっぽど効果があるはずだ。まあ、もちろん口コミがうまく効くために絶対に必要な条件は、「その作品が面白いこと」でしょうな。去年の夏に公開された、とある邦画のようにボロカスに叩かれるとあっという間にその作品の生命は断たれると言っても過言じゃない。恐ろしい世の中になったものである。

 で。じゃあ、『STAR WARS:The Force Awakens』は一体どうなのよ、という今日の結論です。
 まず整理しておこう。100憶を超えるような作品は、
 ■4週目ぐらいまで落ちることなくグイグイ伸びる
   →今のところ3週目まで落ちナシ。まあそれもお正月効果で、4週目はやっぱり落ちるだろうな……。
   →3週目までで64憶という数字はわたしがデータを記録し始めた2010年以降で最高。
     (※『ジュラシックW』の59.5憶がそれまでの最高だった)
 ■観客層の拡大が必要
   →ちょっとこれは分からない。単価の推移でちびっ子&シニア層増加は推定可能か?
   →ただし3D料金があるので、単価からの推定はほんの気休め程度かな。。。
 ■そもそも面白くなくちゃダメ
   →微妙だな……わたしはもちろん十分楽しめた。もう2回見たぐらいだし。
   →しかしながら、やっぱり、心から楽しむには『SW』熱が高くないとダメか?
 ■出来れば、GWやお盆のような、第2ロケット点火!が欲しい
   →うーん、もう「お正月」ロケットは使っちゃた。
   →GWまでのロングランはちょっと考えにくい。難しそう……。
   →今やそこら中に出来た、「4DX」の高稼働を期待したい。
 ■8週目ぐらいまでには100憶を超えている(アナ雪:6週、トイスト8週、風立ちぬ9週)。
   →まだ予断を許さないが、まあ大丈夫じゃないかと根拠なく思うが、ちょっとだけ数字でシミュレーションしてみよう。
 『STAR WARS:The Force Awakens』の各週の興収と累計の予測
 【01W】1,619百万(確定)
 【02W】2,217百万(確定)対前週136.9% 累計3,836百万
 【03W】2,564百万(確定)対前週115.6% 累計6,401百万
 ここから先の、対前週の落ち率を、『ハリポタ』や『ジュラシックW』の平均値で置いてみる。
 【04W_Sim】1,906百万、対前週74.3%、累計8,307百万※シミュレーション値
 【05W_Sim】1,505百万、対前週78.9%、累計9,812百万※シミュレーション値
 【06W_Sim】1,205百万、対前週80.1%、累計11,016百万※シミュレーション値
 【07W_Sim】645百万、対前週53.6%、累計11,662百万※シミュレーション値
 【08W_Sim】568百万、対前週88.2%、累計12,231百万※シミュレーション値
 となる。ただし、上で書いた通り、『ハリポタ』も『ジュラシックW』も、「お盆」ブーストがかかっているので、06W、08Wがやけに落ち率が少ない。ので、その分を補正して75%、50%に置き直すと、08W終了時点で累計11,847百万ぐらいにはなる。ちょっとそれでもかなり良すぎるかもな……。 長々と書いてきましたが、今日試算してみたかった結論は以上です。

 というわけで、結論。
 わたしの愛する『STAR WARS』最新作、『The Force Awakens』は、よっぽどのことがない限り、100億超はほぼ確実。最大で130憶、最小で110憶、と、結局、2週間前の一番最初の予想から変わりなし、です。一応、根拠は上記の計算を見てください。以上。

↓ わたしはMS-Accessでごく単純なデータベースを作って数字を管理してます。なので、OfficeはPROじゃないとダメです。しかしそろそろ365にしないとダメかなあ……。

 というわけで、2016年の最初の興行収入データは、アメリカの模様からお伝えします。
 結論から先に言うと、『STAR WARS:The Force Awakens』は、まだ公開して17日しか経っていない時点で、全米興行収入の歴代TOP2位まで行きました。長らく、2位だった『TITANIC』をあっさりブチ抜いてしまったとのことです。また、現在まだ1位を堅持している『AVATAR』すらも抜いてしまう可能性が出てきましたな。2016/01/03時点での、全米歴代ベストは以下の通り。※1US$=119.7JPY
 1位:『AVATAR』・・・$760,507,625=901億円 
 2位:『STAR WARS:The Force Awakens』・・・$740,265,583=886億円
 3位:『TITANIC』・・・$658,672,302=788億円
 4位:『Jurassic World』・・・$652,270,625=780億円
 5位:『Marvel's The Avengers』・・・$623,357,910=746億円
 6位:『The Dark Knight』・・・$534,858,444=640億円
 7位:『STAR WARS:Episode I The Phantom Menace』・・・$474,544,677=568億円
 8位:『STAR WARS』(EP:IV,1977)・・・$460,998,007=551億円
 9位:『Avengers:Age of Ultron』・・・$459,005,868=549億円
 10位:『The Dark Knight Rises』・・・$448,139,099=536億円
 ※これ以降のランクはこちらへどうぞ
 公開規模は、結構まちまちで、1位の『AVATAR』が約3450Theaterでの公開、2位の『SW:EPVII』で4130Theaterということで、日本とその規模を比較すると、そうだなあ、だいたい日本の公開スクリーン数は、最近は字幕版、吹替え版、3D版とかVerごとに1スクリーンカウントするので、それをノーカンにしたときの最大がおそらくは500ぐらいだと思うので、アメリカの公開規模は日本のおよそ6~7倍ぐらいだと認識していいと思う。まあ、もちろん作品によって結構違うと思うけれど。
 ちなみに、人口比率で言うと、日本の人口126,958千人(2015/07/01現在)に対してアメリカ合衆国は321,774千人(国連データより)なので、日本の2.53倍の人が暮らしている。なお日本は明確に人口減少の傾向にあるが、アメリカ合衆国はきっちり増加降傾向だ。ちょっと調べた国連のURLを自分用備忘録として記録しておこう。http://www.un.org/en/development/desa/population/ このページの右下コラムのData>Profiles of Ageing2015参照のこと。
 何が言いたいかというと、アメリカは日本に比べて人口は2.53倍なのに、映画館は6倍ぐらいはあるというわけで、それはつまり映画という産業がまだ日本よりも娯楽の中で上位に位置しているんだろうな、という事である。ま、さすがエンタメ超大国ですな。日本人よりも映画が好きってことで。
 
 で。
 日本の2016年初週末となった1/2-1/3の興行収入データは明日まとめて更新しようと思います。
 一応、まだ数字は不明ながら、興行通信社の大本営発表の順位だけは出ています
 (※2016/01/05追記:数字データまとめました→こちらへ)
 1位:『スター・ウォーズ:フォースの覚醒』・・・順調に行けば50億超えてるでしょうな。12/27時点で38億まで来てる。数字の発表が楽しみ。ちなみに、50億超えていても、『ハリポタ』最終作も3Wで53憶まで行ったので、すげえと驚くほどの数字じゃない。どうせまた各メディアは派手に報道しそうな気はするけど。
 2位:『妖怪ウォッチ』・・・こちらも、順調なら35憶ぐらいか? 12/27時点で23憶突破。なお、前作は3W目で54憶を超えていた。なので、前作比較で言えば相当落ちてる。数字自体はすごいけど。
 3位:『orange』・・・順調なら20億は軽く超えているだろう。12/27時点で14.5憶。原作の完結5巻を読んだけど、サーセン。まったくわたしは面白いと思えず。しかし映画は大ヒットですな。すごい数字だと思う。
 4位:『母と暮らせば』・・・順調なら15億弱~超えたか? ぐらいでしょうか。いいですね。年末年始の二宮くんの露出でこの映画にいい影響が出るとよいのですが。12/27時点では10億をチョイ超えたぐらいだった。
 5位:『007スペクター』・・・まあまだ25億行ったかどうかぐらいだろうか。超えたかな。12/27時点で22億ほど。
 6位:『映画ちびまる子ちゃん』・・・3億以上5億未満ぐらいか? 12/27時点で1.3憶。
 7位:『杉原千畝』・・・10億超えたかどうかぐらいか? 12/27時点で7.6憶ほどだったはず。
 8位:『クリード チャンプを継ぐ男』・・・まだ3億行ってないかなあ? 12/27時点で1億未満。
 9位:『ガールズ&パンツァー』・・・すげえ。7Wでまだランクイン。8億ぐらいか? 12/27時点で6.7億ほど
 10位:『仮面ライダー』・・・ちょっとパワーダウンだなあ……7億に乗ったかどうか……12/27時点で4.8憶

 またたぶん今夜か明日には数字が分かると思うので、もう一度日本の興収データはきちんとまとめようと思います。その時、今までのわたしが蓄積してきた過去データと比較して、一体日本では『SW』がどのくらいまで伸びそうか、シミュレーションも入れようと思います。今日は以上。

  

 というわけで、今日もWOWOWで録画したけど観てなかった映画です。
 タイトルは『PUSH』。日本語タイトルには「光と闇の能力者」という、若干中二病めいたサブタイトルがついていて、HDDを整理していて、一体なんだこれ、なんでこんなの録画したんだろう? と我ながら謎であった。ストーリーも役者もまったく記憶にない。一体全体、どんな映画だっけ? と思いながら、とりあえず再生ボタンをPUSHしてみた。

 すると、冒頭にちょっとしたアクションシーンがあって、どうやらその日本語サブタイトルどおり、何らかの能力者の話であることがぼんやり分かってくる。そしてオープニングタイトルが来て、ナチスドイツが進めていた、超能力者開発プロジェクトがあって、それを連合国側が引き継ぎ、とある組織が誕生したことがざっと説明される。そして現代に時が移る。どうやら、香港? らしいアジアの街並み。そこを行く男……と、主人公と思われる男が出てきて、ああそうか、と気が付いた。その男は、今やCAPTAIN AMERICAでお馴染みのChris Evansであった。なるほど、こいつの主演作だからオレは録画しようと思ったんだ、と、ようやく思い出した。
 この映画は、2009年公開なので、CAP公開前になるのかな。Chirs Evansの体つきは、まだCAPほどのマッチョじゃない。なるほど、彼が出ているから録画したのかと納得したものの、面白いのかね? とまだ半信半疑で観始めたのだが、結論から言うと、まあまあ、てとこだろうか。クソ映画といったらかわいそうだけど、超面白かったかというとそれほどでもなかった。
 物語自体は、正直穴だらけというか説明不足? というべきか、よく意味が分からないところがある。主人公は幼少時に、その組織に父親を殺されて、香港に逃げて暮らしていると。で、どうやら香港は、そういう組織から外れた能力者がいっぱいいて、コミュニティ的なつながりがあると。で、そこに組織から逃れてきた能力者が一人現れる。同時に主人公の下には、一人の少女が現れて、その逃れてきた能力者を助けないと、死ぬ運命にあると言う。正直その冒頭の流れさえわたしには意味不明だったのだが、まあそういう流れになって、途中で、香港の地元の能力者たちが主人公に協力したり、また一方では中国人ローカル組織も絡んできて、3つ巴の逃亡者争奪戦が始まる、とまあそんなお話。サーセン。我ながら全然まとめられないや。
 面白いのは、まさしく中二めいた設定の能力者たちで、いろいろな能力者が出てくるところかな。
 Mover:その名の通り、物体を動かせる能力者。サイコキネシス的なもので、銃弾をはじくことも出来る。主人公はこの能力者。この能力者は敵方にもいる。
 Watcher:予知能力者。未来を視ることができる。Dakota Fanningちゃん演じる少女のほか、複数いる。
 Sniffer:匂いを嗅ぐ者、ということで、物体に残る匂い(?)からその持ち主の場所やその物体の過去が分かる。サイコメトラー見たいなものですな。
 Shadow:Snifferから人や物を隠せる能力者。地味。
 Shifter:物質を別のものに作り変える能力者。これも地味。
 Pusher:これが鍵となる能力者で、何人かいるのだが、記憶を人の頭に押し込める能力者。要するに、人を自由に操れると言うことで、コイツに見つめられるとアウト、ある意味で無敵能力。
 このほかにも、大声を出して音波攻撃が出来る能力者とか、骨格をいじくれる(?)能力とか、記憶を消すだけの能力者とか地味なのも何種類か出てくるが、なんとも変なのは、みんな自分の能力を活かしきっていないというか、もうちょっとうまくやれるんじゃね? という妙なバトルシーンが多く、Mover同士で殴り合いの喧嘩してもしょうがないだろうに、ねえ、とまあなんともぽかーんと成り行きを見守ってしまった。
  というわけで、脚本的にはちょっと問題ありだし、演出も別に普通。役者陣、Chris Evans とDakota Fanningちゃんの二人だけ、見る価値ありと言っておこう。Dakotaちゃんはこの当時15歳。現在21歳かな? あきらかに、現在非常に売れっ子となってしまったブサカワガールこと、妹のElle Fanningちゃんより可愛いと思うのだが、なんか最近は妹ばっかりで、Dakotaちゃんを見かけないですな。 この映画の、15歳のDakotaちゃんはやっぱり相当可愛かったです。あ、今、Wikiで知ってへえ~と思ったのですが、DakotaちゃんとElleちゃんの姉妹で、トトロのサツキちゃんとメイちゃん姉妹の吹き替えをやったそうですよ。へえ。そうなんだ。それってわたしが持ってるBlu-rayもFanning姉妹Verなのかな? 後で調べてみよっと。

 というわけで、結論。
 まあ、結論も何もないのだが、『PUSH』という映画は別にどうでもいい映画でした。ただ、CAPがCAPを演じる前にどんな映画に出てたのか知りたい人、あるいは、15歳のかわいいDakota Fanningちゃんを観ておきたいという人は、どうぞご覧ください。以上。

↓とりあえず、もってない人は買いでしょうな。全日本国民が持っていてしかるべきだと存じます。
となりのトトロ [Blu-ray]
ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン
2012-07-18
 

 年末にWOWOWで録画した映画を整理していて、あ、こんなの録ったっけ、と観た映画が結構あるのだが、その中のひとつが、この映画であります。原題は『Children of Men』、人類の子供たち、と訳せばいいのだろうか?日本での公開タイトルは『トゥモロー・ワールド』である。

 2006年の公開なので、もう9年前と古い映画だからなのか、日本語字幕入りの予告が見当たらなかった。監督は、この映画の7年後に、『GRAVITY』で世界を驚かすことになるAlfonso Cuaron。この監督は、『Harry Potter』シリーズの第3作『Prisoner of Azkaban』でも見せたように、ステディカムの名手(?)と言っていいと思うのだが、とにかく、これは一体どうやって撮ったんだ? というような映像を見せる男である。とにかく、CGを絶妙に使って長回しに見せる特殊な技能を得意としている。
 『GRAVITY』を観た人なら覚えているだろう。異常にワンカットが長い。正確に言うと、長く見える、のだが、とにかくカメラが止まらない長回し(に見える)ショットを使うのだ。『GRAVITY』でも、冒頭の5分ぐらいは一切カメラが止まらないし、エンディングで地球に帰還したライアン博士が着水して、必死に水面に上がって、立ち上がるまで、の一切もカメラが止まらない、ように見せている。凄い演出技術である。わたしは、やたらと短いカットを繋いだり、手持ちカメラで撮影したブレブレの画を繋げて臨場感を出していると勘違いしている監督が大嫌いなのだが、このCuaronという男は違う。きっちりとステディカムで役者を捕らえながら、ブレなく動き回る画を明確に捕らえる。こいつは本物だ、とわたしは以前から思っていた。

 本作『Children of Men』でも、そういう超長回し、に見える画がいくつか入っている。実は、わたしはそれらのシーンを本当の長回しで撮ったのだと勘違いしていたが、Wikiによれば、シーンを繋げるCG処理などで、うまーーく長回しに見せているのだそうだ。全然気が付かなかった。超自然。これは本当にすげえと仰天した。
 この映画を観てから、ぜひWikipediaの解説を読んでみて欲しい。Julianne Moore扮する反政府組織のリーダーが襲撃されるシーンと、最後の方の壮絶な戦闘シーン、この二つは本当に圧巻ですよ。わたしは観ていて、本気で長回しワンカットだと思ったので、一体全体これはどうやって撮ったんだ!? ともう大興奮したほどだ。いはやは驚いた。この映画は、そういう映像技術の面でわたしの度肝を抜いたわけで、正直、物語的にはイマイチだけど、観終わって本当に大満足であった。劇場に観に行かなかったことが悔やまれる。

 で。物語はというと、原因はさっぱり不明だけど、全人類が生殖能力を失ってしまい、子をなすことがなくなって久しい世界が舞台。たしか、西暦2027年。で、全人類で最も若い18歳の男が死亡するところから物語が始まる。世界は滅びへ向かいつつあり、イギリスだけがまだ政府機能が生きていて、厳格な鎖国政策によって国境を封鎖している状況の中、主人公は政府組織に属する公務員だが、ある日、元妻の反政府組織のリーダーに、国内移動許可証を入手することを頼まれる。まったく気が進まないながらも、やむなく協力する主人公は、元妻と行動を共にする黒人女性が「妊娠している」ことを知り、驚愕する。その女性を、「ヒューマン・プロジェクト」という船に引き渡すというのだが、その過程にはいくつもの難関が待っていて――というお話である。

 主人公を演じたのは、Clive Owen。はっきり言ってイケてないし、結構な作品に出演しているものの、特に印象に残らないイギリス男である。なんかこの人は、いつも頭から血を流しているような印象がわたしにはあるが、まあ、なんとなくいつもピンチに陥っている困った顔の男だ。ま、どうでもいい。
 元妻を演じたのは、前述の通りJulianne Moore。わたしはこの女優もそんなに好きではない。別に嫌いではないし、彼女にはまったく罪はないのだが、『Hannibal』で主人公クラリス・スターリング役を前作『The Silence of the Lambs』でアカデミー主演女優賞を獲ったJodie Fosterから引き継いだ時の演技が、わたしとしてはまったくクラリスにふさわしくない、と思ってしまって以来、どうも偽クラリスとしか思えなくなってしまった。ホントごめんなさい。
 役者的に一番印象的なのが、なんと凄いロンゲで登場するMichael Caineであろう。『The Dark Knight』などでみせるようなイギリス紳士的なイメージがお馴染みだが、一瞬、誰? と思うほどの容貌で驚いた。渋いいい役で出ています。それから、『12Years a Slave』で主役を張ったChiwtel Ejiofor君が、反政府組織のナンバーツーで出てきますな。あと、その部下に、『Pacific Rim』で主役のパイロットを演じたCharlie Hunnam君がこれまたロンゲで誰だか分からないような顔で出てきますので、ちょっとだけチェックしてやってください。凄い好戦的なイヤな野郎のあいつです。

 しかし、この映画が示す2027年の世界は非常に恐ろしい世界だと思う。子供が生まれないと言うことは、確実に世界はあと100年も持たないと言うわけだ。そういえば先月だったかに、中国が「一人っ子政策」をやめる、というニュースが報道されていたと思うが、まあ今更でしょうな。人口が減少して、生産人口の割合が減れば、確実に国力は低下する。もちろん現代日本が抱える、おそらくは最大の社会的問題であろう。ま、中国の一人っ子政策も、実際のところ有名無実で、金で何とでもなると聞いたこともあるし、地方ではとっくに無視されているとも聞いたことがある。まあ、あの国がどうなろうとどうでもいいが、この映画で示された未来で、一番ありそうだとわたしが思ったのが、国家が自殺を認めていることだ。しかも安楽死できる薬剤を頒布しているらしい。これって……あと何10年かすれば、日本でも認められるのではなかろうか。死ぬ権利を国家が認める事態。それは介護や老後破産など、もはや絶望しか見えないこの国では、本当に起こりうる事態なのではなかろうか、と、結構わたしは本気で思います。まあ、そうなったら人類絶滅のカウントダウンですかね。

 というわけで、結論。
 『Children of Men』という映画における、監督Alfonso Cuaron氏の卓越した技術と、物語の背景となる世界観は、一見の価値アリだと思います。もの凄い技術だと思う。『GRAVITY』でアカデミー監督賞を受賞して以後、さらにどんな作品を獲るのか、楽しみに待っていようと思います。以上。

↓まさか観てない人はいないですよね? 超名作。凄い。ぜひとも3Dで観ていただきたい。そして、この映画の邦題を「ゼロ・グラビティ」とした配給社はセンスゼロと言わざるを得まい。この映画のタイトルは、あくまで『グラヴィティ=重力』です。
ゼロ・グラビティ 3D &amp; 2D ブルーレイセット(初回限定生産)2枚組 [Blu-ray]
サンドラ・ブロック
ワーナー・ホーム・ビデオ
2014-04-23

 というわけで、2016年一発目は小説です。今日の夕方読み終わった。
 
人魚の眠る家
東野 圭吾
幻冬舎
2015-11-18

 もはや説明の必要はなかろう。現在の日本小説界の売上において、おそらくはナンバーワンに君臨する東野圭吾先生の最新作『人魚の眠る家』である。東野先生の作品を読むのは久しぶりだが、やはりきっちりと面白かった。
 そもそもわたしは、東野先生の初期作品はたぶんほとんど読んでいる。確かきっかけは、広末涼子ちゃん主演の『秘密』だったような気がするが、あの映画を観る前に小説を読んで、こりゃあ面白いとその当時までに発表された作品は全部読んだと思う。去年映画化された『天空の蜂』を読んだのも、この当時のことだ。余談ながら、あの映画は当時19歳(?)の広末涼子ちゃんがウルトラ可愛いのだが、うーん、やっぱり原作小説のほうが面白いかな。が、その後はなんとなく読まなくなってしまい、ここ最近では『使命と魂のリミット』や『ナミヤ雑貨店の奇跡』ぐらいしか読んでおらず、新刊を買うのは数年ぶりだ。その、わたしにとっては最近読んだ『ナミヤ雑貨店の奇跡』は、東野先生の作品では久しぶり(?)のファンタジー要素のあるハートウォーミングストーリーだったが、わたしの東野先生に対する認識は、ミステリー作家ではなく、社会派というか、社会的な問題を扱うエンタテインメント作家というものである。今回の『人魚の眠る家』もそのような、日本の臓器移植や脳死という極めて重い、社会的なテーマを扱った作品であった。

 物語は、とある夫婦の娘さんが、プールでおぼれてしまうという痛ましい事件から始まる。
 すぐさま救命措置がなされ、心臓は動き出すが、心停止時間が長く、脳に深刻なダメージを追ってしまい、脳波はフラット、自律呼吸も停止してしまう。このような状態になると、臓器移植法に従って、いくつかの選択肢が親族には提示されるらしい。
 1)臓器移植のドナーとなることを希望する
 →そうなると、法に従った脳死判定を行う。
 →ただし結果はどうあれ、判定後でも臓器移植は断ることは可能。
 →ただし、脳死と判定された場合は、法的に「死亡」とされ延命処置は停止。
 →結果的に心停止へ至る。
 2)希望しない
 →延命処置(主に人工呼吸器による)を継続。
 →心停止に至るまで継続
 →成人の場合はそう長くはもたないが、子供の場合は長期間心臓が動き続けることも。
 つまり、「脳死」という状態を正式に宣告されるには、「脳死判定」を受けないといけないわけで、医師はたとえ脳波がフラットで自律呼吸が停止していても、「脳死」であると言うことは許されておらず、「おそらく脳死状態であろう」としか言えないのだそうだ。そして「脳死」判定を受けるかどうかは、親族に委ねられる。判定を受けたあとでも、臓器移植は断ることは出来る。しかし、脳死=死亡とされれば延命措置は停止される。それは心臓が「止まる」のを待つのではなく、心臓を「止める」行為に等しい。
 これは、本当に、極めて重い。そのような立場に身を置かない限り、到底どうすべきかなんてことは想像すら出来ない。
 
 この作品は、こんな悲劇に見舞われた夫婦の物語だ。
 まず、夫婦は既に別居をしていて、離婚間際にあるが、娘が小学校に入るまでは、ということでまだ離婚はしていない。というのも、母親の方は、非常に教育熱心で小学校受験に集中しているので、離婚は面接に影響するから、とまあそんな理由だ。この二人が別居に至ったのは、夫の方の浮気が原因ではあるけれど、もはや関係修復は無理であると夫はあきらめているし、妻から歩み寄ることもまずないと。
 こう書くと、妻のほうがちょっと問題があるようにも思えるかもしれないが、まあ、奥さんは普通に優しい母親であると思う。で、父親の方は、妻に浮気がばれてさっさと浮気相手とは別れているあたりも、やけにあっさりしているというか、淡白のように思えるが、父としてはやっぱり普通に優しいお父さんだとは思う。
 こんな夫婦なのだが、父親の方は、とあるハイテク機器メーカーの社長で、聴覚障害者にカメラの映像を電気信号として脳に認識させたり、脊椎損傷で首から下が麻痺状態にある人の脳の電気信号を受信して機械の腕を動かすとか、そういった技術の研究をしている。肝心なのは、あくまで脳は正常だけれど、体に問題がある場合の補助機械の開発、という点だ。
 夫婦は、話し合って、「脳死判定」を受けることにする。娘の臓器がどこかで役に立つのなら、という、悩み抜いての決断だ。しかし、脳死判定を受ける直前に、娘の手が動いたように感じた夫婦は、直前で中止を願い、そのまま延命処置の継続を選択する。そして父親は、自らの会社で行っている研究を思い出し、脳は正常な場合の補助の逆に、脳が活動停止している娘の体を電気的な信号で動かすことを思いつくのだが――という話である。

 この物語は、そういった脳が機能停止してしまったけれど、心臓は動いている娘を死体としてみることが出来るかどうか、という話である。途中で出てくる、臓器移植があれば助かる少女の話もまた痛ましく、非常に難しいというか、心情的に極めてつらい話だ。わたしは、この物語のエンディングは明確にハッピーエンドだと思うが、おそらくは読む人によってかなり思うことは違うだろう。
 けれど、ひどい言い方だが、死んでしまった人間は何も思えないわけで、やはり、これも親孝行と同じで、生きている残された家族が、自分を許せるかどうかが問題なのだから、自分が納得すできるようにすればいいのだと思う。そこで他人がとやかく言う資格はない。
 だから、結論としては、日々、悔いのないように生きる事が大切だということですな。
 まあ、当たり前の結論だけど、それが難しいわけで、まったく、生きるってのは本当に、毎日が試練ですな。

 というわけで、結論。
 なんかまともなことが書けませんでしたが、東野圭吾先生による『人魚の眠る家』は非常に重いテーマを扱いながら、きちんと読者にひとつの生き方のヒントのようなものを提示してくれる、優れた作品であると思います。以上。

↓東野先生のファンタジーと言えば、やっぱり『秘密』かな? でも、この作品も非常に不思議な、あたたかいお話です。
ナミヤ雑貨店の奇蹟 (角川文庫)
東野 圭吾
KADOKAWA/角川書店
2014-11-22

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